以下に、本発明の実施形態に係る定着装置及び画像形成装置の一例を、図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下の例に限定されるものではない。
〈1.第1の実施形態:検出センサと分離爪とを一体に構成し、風量を制御する定着装置の例〉
図1は、本発明の第1の実施形態に係る定着装置1の概略構成図であり、一部ブロック図で示す。図1に示すように、本実施形態の定着装置1は、定着ベルト2と、加圧部材である加圧ローラ3とを備える。さらに、本実施形態の定着装置1は、定着ベルト2及び加圧ローラ3のニップ部17よりも用紙搬送方向下流側に設けられた、ノズル7と、分離爪8と、ガイド板9と、検出センサ10とを備え、また、検出センサ10からの信号が送られる制御部11を備える。
定着ベルト2は、無端状の弾性部材で構成されており、駆動ローラである定着ローラ4と従動ローラである加熱ローラ5及びテンションローラ6とに支持張架されている。なお、本実施形態の定着ベルト2、定着ローラ4、加熱ローラ5、及び、テンションローラ6で本発明の定着部材を構成する。
定着ベルト2は、例えばPI(ポリイミド)で構成される基体表層にPFA(テトラフルオロエチレン)がコーティングされた弾性部材で構成される。定着ローラ4は外径50〜90mmの円柱状の部材で構成され、芯金上に例えば10〜30mmの厚さの弾性層を有する。加熱ローラ5は、内部にハロゲンヒータ13を内蔵した外径50〜90mmの円柱状の部材で構成され、表面にPFTE(ポリテトラフルオロエチレン)がコーティングされている。テンションローラ6は、中心の外径が10〜20mmの逆クラウン形状の円柱部材で構成され、定着ローラ4と加熱ローラ5に張架する定着ベルト2の内側に配置されている。
加熱ローラ5がハロゲンヒータ13に加熱されることによって定着ベルト2が加熱される。このとき、定着ベルト2は160℃〜210℃に制御される。そして、加熱された定着ベルト2は、定着ローラ4が回転駆動することによって図面時計回りに回転走行する。また、定着ベルト2はテンションローラ6によって所定のテンション、例えば100〜500Nが付与される。
加圧ローラ3は、外径50〜90mmの円柱状の部材で構成され、芯金上に例えば1〜20mmの厚さの弾性層を有しており、図示しない加圧機構により定着ベルト2を挟んで定着ローラ4に圧接するように設けられている。加圧ローラ3は、回転走行する定着ベルト2に連動して回転する。本実施形態では、加圧ローラ3の表面の線速度は220〜500mm/sである。
なお、本実施形態では、加圧ローラ3は定着ベルト2に従動する例としたが、加圧ローラ3を駆動ローラとして構成してもよい。また、加圧ローラ3に加熱するヒータを設けてもよい。
そして、定着ベルト2と加圧ローラ3とが当接する部分でニップ部17が形成される。トナー像を担持した用紙がニップ部17を通過することで、所定の温度に制御された定着ベルト2と加圧ローラ3によってトナーが溶融し、用紙に定着する。
ノズル7は、ニップ部17の下流側に設けられ、ノズル7からニップ部17近傍、特にニップ部17を通過した用紙のトナー付着面と定着ベルト2表面との間に所定の風速のエアーが噴射されるように構成されている。より詳細には、ノズル7から、定着ベルト2の表面に沿うようにエアーを噴射し、用紙のトナー面を定着ベルト2から離すように構成されている。
ノズル7先端の開口は、定着ローラ4の長軸方向に沿って細長い形状に構成されており、その長手方向が、定着ローラ4の長軸方向に沿ってニップ部17とほぼ平行となるよう設けられている。これにより、ニップ部17を通過した用紙に一様に空気を噴射することができる。ノズル7から噴出される空気の風量は、ノズル7の後端に設けられているファン12の回転数を変えて噴出される空気の風速を変えることで調整することができる。
分離爪8は、ニップ部17の下流側に設けられ、その先端が加圧ローラ3に摺接し、支軸14を回転軸として揺動可能に支持されている。図2は、本実施形態の定着装置1における分離爪8とガイド板9とを上面から見たときの概略構成図である。図2に示すように、分離爪8は、後述するガイド板9の切り込み部9aに配置されており、加圧ローラ3の長手方向に沿って複数(図2では5個)設けられている。そして、分離爪8は、図示しないバネにより、3g程度の軽い力で加圧ローラ3に押圧されている。また、分離爪8は、その断面が、先端に行くにしたがって薄くなるような三角形状の部材で構成されており、用紙と接する側の表面が、ガイド板9の表面とほぼ面一となるように設けられている。
分離爪8が設けられることによって、加圧ローラ3に付着した用紙を分離できるので、ニップ部17を通過した用紙が加圧ローラ3に巻き込まれるのを防ぐことができる。また、分離爪8は、先端側が薄く構成されることで、ニップ部17を通過した用紙を加圧ローラ3から分離する際に分離爪8先端に用紙の先端が衝突してしまうのを防ぐことができる。また、分離爪8の先端とは反対側の端部を肉厚にすることで、分離爪8の強度を保つことができる。
ガイド板9は、加圧ローラ3の長軸方向に沿って設けられた板状の部材で構成されており、図2に示すように、ニップ部17側において、分離爪8が配置される切り込み部9aが複数(図2では5箇所)設けられた櫛歯状の部材で構成されている。このとき、ガイド板9の加圧ローラ3側の端部は、分離爪8の先端よりも下流側に位置するように構成されている。また、ガイド板9は、支軸15で支持され、ニップ部17の下流側に固定されている。そして、ニップ部17を通過して分離爪8によって加圧ローラ3から分離された用紙は、ガイド板9に沿って搬送される。
分離爪8及びガイド板9は、耐熱性及び離型性に優れた材料を用いて形成され、例えば、PFAコーティングや、PTFEコーティングがなされた材料を用いて形成することができる。これにより、分離爪8及びガイド板9に用紙上のトナーが付着して、そのトナーが固着することを防ぐことができる。
検出センサ10は、図2に破線で示すように、複数の分離爪8のうち、例えば中心部分に位置する1つの分離爪8に一体に構成されており、分離爪8の後端に設けられた突出部16に接触するように設けられている。また、検出センサ10は、ガイド板9上を搬送される用紙の搬送経路を妨げない位置に設けられ、例えば、分離爪8の用紙と接する面とは反対側の面側に設けられている。この検出センサ10では、用紙が分離爪8表面を通過する際に分離爪8先端にかかる荷重を検出する。
図3は、定着装置1のニップ部17を通過した用紙Sが分離爪8及びガイド板9上を搬送される様子を示す図である。図3に示すように、用紙Sの分離爪8側への荷重が大きい場合には、用紙Sが矢印A1で示す方向に分離爪8を押圧するため、分離爪8は矢印A2で示すように支軸14を中心に回動する。分離爪8が回動することで検出センサ10にかかる荷重が変化するので、この変化分が検出センサ10で検出される。そして、検出センサ10では、図2の一点鎖線xで示す部分にかかる荷重を検出することができる。
検出センサ10としては、分離爪8先端にかかる荷重を検出できるセンサであればよく、例えばロードセル、ひずみゲージ、圧電素子等を用いることができる。なお、本実施形態では、検出センサ10は分離爪8の回転中心となる支軸14に対して分離爪8先端とは反対側に設けられる。したがって、検出センサ10では、分離爪8先端への荷重の増加分は荷重の減少分として検出される。
制御部11は、検出センサ10で検出された値に基づき、ノズル7から噴射される空気の風量を制御する。例えば、検出センサ10において、閾値を超える荷重を計測した場合には、ノズル7から噴射される空気の風量を下げるように、ファン12の回転数を制御する。
次に、本実施形態の定着装置1の制御方法について説明する。図4は、本実施形態の定着装置1の制御方法の一例を示すフローチャートである。
未定着のトナー像を担持した用紙Sが定着装置1に送り込まれると、定着ベルト2及び加圧ローラ3の回転により、用紙Sがニップ部17に狭持されて搬送される。そして、ニップ部17を通過した用紙Sは、ノズル7から噴出される空気によって分離爪8側に押圧されながら搬送されてくる。そして、ニップ部17から排出された用紙Sが分離爪8を押圧するタイミングでセンサチェックを行う(ステップS1)
センサチェックでは、ニップ部17から排出された用紙Sによって分離爪8にかかった荷重を検出センサ10によって検出する。そして、検出された荷重は電気信号に変換され、その電気信号が制御部11に送られる。
次に、制御部11において、送られてきた電気信号に基づいて、検出センサ10によって検出された荷重が、設定されてある所定の閾値よりも高いか否かを判断する(ステップS2)。ここで、「閾値」は、ニップ部17を通過した用紙Sが分離爪8やガイド板9に強く接触することに起因する爪スジや、加圧ローラ3への傷の発生が起こらない値に設定されている。検出された荷重が閾値以上である場合(ステップS2でYES)には、制御部11は、ノズル7から噴出される風量を下げるようにファン12の回転数を制御する(ステップS3)。
ファン12の回転数は、風量が予め決められた風量(例えば1/2や1/3)となるように制御してもよいし、また、荷重が閾値を下回るように段階的又は連続的に下がるように制御してもよい。その他、分離爪8にかかる荷重と風量とを対応づけたテーブルを参照して、荷重が閾値を下回るようにファン12の回転数を制御してもよい。
風量を下げた後は、再度センサチェックを行い、前述と同様にして分離爪8にかかる荷重と所定の閾値との比較を行う。そして、検出センサ10によって検出された荷重が閾値よりも下回った場合(ステップS2でNO)には、風量をそのままの値で維持する。
また、センサチェックは、例えば0.1秒毎に行い、検出結果を随時風量の制御に反映させるようにしてもよい。この場合には、1枚の用紙が分離爪8上を搬送される期間中、用紙Sの分離爪8等への接触状態を最適に保つことができる。したがって、1枚の用紙Sの中でトナーの付着量の違いによって、用紙Sの「こし」が各領域で異なる場合にも、随時風量を最適に維持しながら用紙Sを搬送することができる。
また、図4では、ステップ2で「NO」の場合にはセンサチェックは終了となっているが、用紙Sの分離爪8への接触状態をより最適に保つ為に、「NO」の場合でも絶えずセンサチェックを行うようにしても良い。したがって、ステップS2の結果に関わらず、例えば0.1秒毎に絶えずセンサチェックを行うことで、用紙Sと分離爪との接触状態をより最適に保つことができる。
風量の下げ量は、分離爪8にかかる荷重が閾値を下回るように設定されればよいが、より好ましくは、閾値よりも低く設定した「目標値」を下回るように設定されるのが好ましい。例えば、爪スジや、加圧ローラ3への傷が起こらないように設定された閾値を5gfとした場合、目標値を4gfに設定する。このように、閾値よりも低い目標値を設定し、分離爪8にかかる荷重が目標値を下回るように風量を制御することで、トナーの付着量の違いなどによって急に分離爪8にかかる荷重が大きくなった場合にも爪スジや加圧ローラ3への傷の発生を抑制することができる。この「目標値」は、「閾値」と、最低限必要な「風量」とを考慮して決定される。
以上のように、本実施形態の定着装置1によれば、ノズル7から噴出する風量を下げることによって用紙Sが分離爪8側に押される力を低減できる。これにより、用紙Sへの爪スジや、分離爪8が用紙Sに押圧されることによる加圧ローラ3への傷を抑制することができる。そして、用紙の銘柄、筋目方向、トナーの付着量、使用環境によって使用する用紙Sのこしが異なる場合にも、随時、検出センサ10で分離爪8と用紙Sとの接触状態を検出することで、爪スジや、加圧ローラ3への傷の発生を防止することができる。
以上のように、本実施形態の定着装置1では、エア分離方式で用紙Sを分離する場合においても、検出センサ10を備えることで、画像への爪スジや、加圧ローラ3への傷を防止することができ、画像ノイズの抑制を図ることができる。さらに、加圧ローラ3への傷の発生が防止されるので、装置の劣化を防ぐことができる。
本実施形態の定着装置1では、複数の分離爪8のうち1つの分離爪8に対して1つの検出センサ10を設ける構成としたが、複数の分離爪8のうち、選択された複数の分離爪8に対してそれぞれ検出センサ10を設けてもよい。その他、全ての分離爪8に対して1つずつ検出センサ10を設けてもよい。
複数の検出センサ10を設けた場合には、それぞれの検出センサ10で検出された荷重の平均を取って、その平均値に基づいて風量を制御しても良いし、複数の検出センサ10のうち、検出された最大の荷重と最小の荷重に基づいて風量を制御してもよい。
また、本実施形態の定着装置1では、加圧ローラ3の長軸方向に沿った噴出口を有するノズル7を1つ設けたが、複数のノズルを加圧ローラ3の長軸方向に沿って設けてもよい。複数のノズルを設ける場合には、複数の検出センサ10で場所毎の荷重を検出し、その検出結果に基づいて、ノズル毎に風量を制御することができる。
本実施形態の定着装置1は、定着部材として定着ベルト2を用いたベルト定着方式としたが、定着部材として定着ローラのみを用いたローラ定着方式であっても、本実施形態と同様の構成を適用することができる。また、定着部材の加熱手段は、ハロゲンランプなどのヒータに限られるものではなく、誘導加熱方式も採用可能である。
また、本実施形態では、検出センサ10として荷重を検出するセンサを用いたが、分離爪への接触状態が検出できるセンサであれば、種々の構成を用いることができる。たとえば、用紙Sの分離爪8への接触面積を検出することで、用紙Sの分離爪8への接触状態を測る構成としてもよい。この場合には、検出センサ10として例えば圧力センサ等を用いることができる。さらに、本実施形態では、ガイド板9は支軸15で固定される例としたが、支軸15を回転軸として揺動可能に取り付けてもよい。
〈2.第2の実施形態:検出センサとガイド板とを一体に構成し、風量を制御する定着装置の例〉
次に、本発明の第2の実施形態に係る定着装置について説明する。図5は、本実施形態の定着装置20の要部の概略構成図である。また、図6は、本実施形態の定着装置20における分離爪8とガイド板9とを上面から見たときの図である。本実施形態の定着装置20は、検出センサ21を設ける位置が第1の実施形態における定着装置1と異なる例である。また、本実施形態の定着装置20は、分離爪8が支軸14によって固定支持されており、ガイド板9が支軸15を回転軸として揺動可能に支持されている点で、第1の実施形態における定着装置1と異なる。その他の構成は図1と同様であるから図示を省略する。また、図5及び図6において、図1及び図2に対応する部分には同一符号を付し、重複説明を省略する。
本実施形態の定着装置20は、検出センサ21がガイド板9と一体に構成されている。検出センサ21は、搬送される用紙の搬送経路を妨げない位置に設けられ、例えば、ガイド板9の用紙と接する面とは反対側の面に接して設けられている。また、本実施形態では、図6において破線で示すように、検出センサ21は、例えばガイド板9の長手方向の中心位置に一つ設けられている。この検出センサでは、用紙がガイド板9表面を通過する際のガイド板9先端にかかる荷重が検出される。
検出センサ21としては、ガイド板9先端にかかる荷重を検出できるセンサであればよく、例えばロードセル、ひずみゲージ、圧電素子等を用いることができる。なお、本実施形態では、検出センサ21はガイド板9の回転中心となる支軸14に対してガイド板9先端側とは反対側に設けられる。したがって、検出センサ21では、ガイド板9先端への荷重の増加分は、実際には荷重の減少分として検出される。
図7は、定着装置20において、ニップ部17を通過した用紙Sが分離爪8及びガイド板9上を搬送される様子を示す図である。図7に示すように、用紙Sのガイド板9側への荷重が大きい場合には、用紙Sが矢印A1で示す方向にガイド板9を押圧するため、ガイド板9は矢印A2で示すように支軸15を中心に回動する。ガイド板9が回動することで検出センサ21にかかる荷重が変化するので、この変化分が検出センサ21で検出される。そして、検出センサ21では、図6の一点鎖線xで示す部分にかかる荷重を検出することができる。
本実施形態の定着装置20においても、図4を用いて説明した制御方法と同様にして風量を制御する。第1の実施形態では、用紙Sの搬送時において、用紙Sが分離爪8側に押圧されることによる分離爪8先端にかかる荷重を測定したが、本実施形態では、ガイド板9先端にかかる荷重を測定することで風量が制御される。
ところで、用紙上のトナーの付着量によっても、風量による用紙Sのガイド板9側への押し付けられ方は変わるため、ニップ部17を通過した用紙Sのガイド板9側への接触状態は加圧ローラ3の長軸方向において一定ではない。ガイド板9は、一枚の部材で構成されるため、用紙Sからの押圧が最大となる部分の荷重が検出センサ21に反映される。このため、本実施形態では、ガイド板9への荷重が最大の部分に合わせて風量を制御し、爪スジや、加圧ローラ3への傷を、加圧ローラ3の長軸方向に沿って全体的に抑制することができる。
なお、本実施形態では、分離爪8は支軸8で固定される例としたが、支軸14を回転軸として揺動可能に取り付けてもよい。その他、第1の実施形態と同様、種々の変更が可能である。
〈3.第3の実施形態:検出センサを隣り合う分離爪間に設け、風量を制御する定着装置の例〉
次に、本発明の第3の実施形態に係る定着装置について説明する。図8は、本実施形態の定着装置30の要部の概略構成図である。本実施形態の定着装置30は、検出センサ31の構成が第1の実施形態と異なる例である。また、本実施形態の定着装置30は、分離爪8及びガイド板9が、それぞれの支軸14,15によって固定支持されている。その他の構成は図1と同様であるから図示を省略する。また、図8において、図1に対応する部分には同一符号を付し、重複説明を省略する。
本実施形態では、検出センサ31は、隣合う分離爪8の間に設けられたセンサ用爪部32に一体に設けられており、センサ用爪部32は支軸33を回転軸として揺動可能に支持されている。図9は、本実施形態の定着装置30における分離爪8とセンサ用爪部32とガイド板9とを上面から見たときの概略構成図である。
図9に示すように、センサ用爪部32は、分離爪8と同様、ガイド板9の加圧ローラ3側先端に設けられた切り込み部9aに配置されており、センサ用爪部32の先端はガイド板9先端よりも加圧ローラ3側に突出するように構成されている。また、図8に示すように、センサ用爪部32は、分離爪8と同様、その断面が先端に行くにしたがって薄くなるような三角形状の部材で構成されており、用紙と接する側の表面がガイド板9の表面とほぼ面一となるように設けられている。本実施形態において、センサ用爪部32は加圧ローラ3に摺接していてもしていなくてもよい。
本実施形態において、検出センサ31では、用紙がセンサ用爪部32の表面を通過する際のセンサ用爪部32の先端にかかる荷重が検出される。そして、センサ用爪部32の先端にかかる荷重を検出することで、分離爪8側にかかる荷重を検出する。検出センサ31としては、第1の実施形態及び第2の実施形態と同様のセンサを用いることができる。
図10は、定着装置30のニップ部17を通過した用紙Sが分離爪8及びガイド板9上を搬送される様子を示す図である。図10に示すように、用紙Sのセンサ用爪部32側への荷重が大きい場合には、用紙Sが矢印A1で示す方向にセンサ用爪部32を押圧するため、センサ用爪部32は矢印A2で示すように支軸33を中心に回動する。センサ用爪部32が回動することで検出センサ31にかかる荷重が変化するので、この変化分が検出センサ31で検出される。そして、検出センサ31では、図9の一点鎖線xで示す部分にかかる荷重を検出することができる。
本実施形態の定着装置30においても、図4を用いて説明した制御方法と同様にして風量を制御する。第1の実施形態では、用紙Sの搬送時において、用紙Sが分離爪8側に押圧されることによる分離爪8先端にかかる荷重を測定したが、本実施形態では、センサ用爪部32先端にかかる荷重を測定し、この結果に基づいて風量を制御する。
以上のように、本実施形態では、検出センサ31を分離爪8とは別途形成したセンサ用爪部32に一体に形成する。このように、センサ用爪部32を分離爪8とは別に形成する場合、センサ用爪部32を分離爪8よりも揺動しやすく構成できる。このため、本実施形態では、第1の実施形態のように検出センサ10を分離爪8と一体に形成する場合に比べて、接触状態に対する感度を高めることができ、用紙Sへの爪スジや、加圧ローラ3に傷が発生するのをより早い段階で防止することができる。
なお、本実施形態では、分離爪8及びガイド板9は、それぞれ、支軸14,15で固定される例としたが、支軸14,15を回転軸として揺動可能に取り付けてもよい。その他、第1の実施形態と同様、種々の変更が可能である。
〈4.第4の実施形態:検出センサと分離爪とを一体に構成し、分離爪を制御する定着装置の例〉
次に、本発明の第4の実施形態に係る定着装置について説明する。図11は、本実施形態の定着装置40の要部の概略構成図である。本実施形態の定着装置40は、分離爪8の位置を調整するための調整部材41を有し、分離爪8の位置を制御する点で第1の実施形態の定着装置1と異なる例であり、その他の構成は図1と同様であるから図示を省略する。また、図11において、図1に対応する部分には同一符号を付し、重複説明を省略する。
図11に示すように、本実施形態の定着装置40における分離爪8の支軸14は調整部材41の開口部42に挿通されており、アクチュエータ(図示を省略する)によって開口部42内を摺動移動するように構成されている。
図12は、調整部材41の斜視図である。図12に示すように、調整部材41は、例えばコ字状の部材で構成され、調整部材41の向かい合う側壁面には、開口部42が設けられている。この開口部42は、用紙Sの搬送方向に対して斜め下側に傾斜した細長い形状の孔で形成されている。本実施形態では、分離爪8の支軸14が調整部材41の開口部42を摺動移動することで分離爪8の先端が加圧ローラ3から退避するように移動する。
図13は、定着装置40のニップ部17を通過した用紙Sが分離爪8及びガイド板9上を搬送される様子を示す図である。図13に示すように、用紙Sの分離爪8側への荷重が大きい場合には、用紙Sが矢印A1で示す方向に分離爪8を押圧するため、分離爪8は矢印A2で示すように支軸14を中心に回動する。分離爪8が回動することで検出センサ10にかかる荷重が変化するので、この変化分が検出センサ10で検出される。
次に、本実施形態の定着装置40の制御方法について説明する。図14は、本実施形態の定着装置40の制御方法の一例を示すフローチャートである。
未定着のトナー像を担持した用紙が定着装置40に送り込まれると、定着ベルト2及び加圧ローラ3の回転により、用紙Sがニップ部17に狭持されて搬送される。そして、ニップ部17を通過した用紙Sは、ノズル7から噴出される空気によって分離爪8側に押圧されながら搬送されてくる。そして、ニップ部17から排出された用紙Sが分離爪8を押圧するタイミングでセンサチェックを行う(ステップS10)
センサチェックでは、排出された用紙Sによって分離爪8にかかった荷重を検出センサ10によって検出する。そして、検出された荷重は電気信号に変換され、その電気信号が制御部11に送られる。
次に、制御部11において、送られてきた電気信号に基づいて、検出センサ10によって検出された荷重が、設定されてある所定の閾値よりも高いか否かを判断する(ステップS11)。ここで、「閾値」は、ニップ部17を通過した用紙Sが分離爪8やガイド板9に強く接触することに起因する爪スジや、加圧ローラ3への傷の発生が起こらない値に設定されている。検出された荷重が閾値以上である場合(ステップS11でYES)には、制御部11はアクチュエータを制御し、分離爪8を加圧ローラ3から退避させる(ステップS12)。
分離爪8の退避位置は、分離爪8にかかる用紙Sの荷重が閾値を下回る位置に制御されればよく、調整部材41の開口部42を分離爪8の支軸14が摺動移動することで調整される。分離爪8を移動した後は、再度センサチェックを行い、前述と同様にして分離爪8にかかる荷重と所定の閾値との比較を行う。そして、検出センサ10によって検出された荷重が閾値よりも下回った場合(ステップS2でNO)には、分離爪8はそのままの位置で維持する。
本実施形態においても第1の実施形態と同様、図14のステップS12において、分離爪8の位置は分離爪にかかる荷重が閾値を下回るように制御されればよいが、より好ましくは、閾値よりも低く設定した「目標値」を下回るように設定されるのが好ましい。「目標値」の設定については、第1の実施形態と同様である。
本実施形態では、分離爪8を加圧ローラ3から離れるように退避させる(図13参照)ことで、用紙Sから分離爪8にかかる押圧力を弱めることができる。これにより、爪スジや、加圧ローラ3への傷の発生を防止することができる。
〈5.第5の実施形態:検出センサと分離爪とを一体に構成し、分離爪を制御する定着装置の例〉
次に、本発明の第5の実施形態に係る定着装置について説明する。図15は、本実施形態の定着装置50の要部の概略構成図である。本実施形態の定着装置50は、分離爪8の位置を調整するための調整部材51の構成が第4の実施形態の定着装置40と異なる例であり、その他の構成は図11と同様であるから図示を省略する。また、図15において、図1及び図11に対応する部分には同一符号を付し、重複説明を省略する。
図15に示すように、本実施形態の定着装置50における分離爪8の支軸14は調整部材51の開口部52に挿通されており、アクチュエータ(図示を省略する)によって開口部52内を摺動するように構成されている。
図16は、調整部材51の斜視図である。図16に示すように、調整部材51は、例えばコ字状の部材で構成され、調整部材51の向かい合う側壁面には、開口部52が設けられている。この開口部52は、加圧ローラ3の円周に沿って弧を描くような弓状の形状の孔で構成されている。本実施形態では、分離爪8の支軸14が調整部材51の開口部52を摺動移動することで分離爪8の先端が加圧ローラ3から退避するように移動する。そして、本実施形態では、調整部材51の開口部52が弓状に形成されているので、分離爪8の先端は加圧ローラ3の外周面に沿って移動する。
図17は、定着装置50のニップ部17を通過した用紙Sが分離爪8及びガイド板9上を搬送される様子を示す図である。図17に示すように、用紙Sの分離爪8側への荷重が大きい場合には、用紙Sが矢印A1で示す方向に分離爪8を押圧するため、分離爪8は矢印A2で示すように支軸14を中心に回動する。分離爪8が回動することで検出センサ10にかかる荷重が変化するので、この変化分が検出センサ10で検出される。
本実施形態の定着装置50においても、図14を用いて説明した制御方法と同様にして分離爪8の位置を制御する。本実施形態では、分離爪8は、加圧ローラ3の外周面に沿って加圧ローラ3から退避するように移動することができる。このため、加圧ローラ3に対する分離爪8の角度が変わりにくく、分離爪8の移動により分離爪8の先端が加圧ローラ3に刺さることを防ぐことができる。その他、本実施形態においても第1及び第4の実施形態と同様の効果を得ることができる。
以上、第1〜第5の実施形態について説明したが、適宜組み合わせて実施することも可能である。例えば、検出センサの検出結果に基づいて、制御部において風量及び分離爪の位置を制御することで、用紙から分離爪側にかかる押圧力を弱める構成としてもよい。また、検出センサはガイド板及び分離爪の両方に設けても良い。その他、種々の組み合わせが可能である。
〈6.第6の実施形態:画像形成装置〉
次に、上述した定着装置を用いた画像形成装置について説明する。
図18は、本発明の第6の実施形態に係る画像形成装置100の概略構成図である。本実施形態の画像形成装置100は、電子写真方式により用紙に画像を形成するものであり、イエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)及びブラック(Bk)の4色のトナーを重ね合わせるタンデム形式のカラー画像形成装置である。また、本実施形態の画像形成装置は、第1の実施形態における定着装置1を有する。
図18に示すように、本実施形態の画像形成装置100は、原稿搬送部110と、用紙収納部120と、画像読取部130と、画像形成部140と、中間転写ベルト150と、2次転写部170と、定着装置1とを備える。
原稿搬送部110は、原稿をセットする原稿給紙台111と、複数のローラ112とを有している。原稿搬送部110の原稿給紙台111にセットされた原稿Gは、複数のローラ112によって、画像読取部130の読み取り位置に1枚ずつ搬送される。画像読取部130は、原稿搬送部110によって搬送された原稿G又は原稿台113に載置された原稿の画像を読み取って、画像信号を生成する。
用紙収納部120は、装置本体の下部に配置されており、用紙Sのサイズに応じて複数設けられている。この用紙Sは、給紙部121により給紙されて搬送部123に送られ、搬送部123によって転写位置である2次転写部170に搬送される。また、用紙収納部120の近傍には、手差部122が設けられている。この手差部122からは、用紙収納部120が収納されていないサイズの用紙やタグを有するタグ紙、OHPシート等の特殊紙が転写位置へ送られる。
画像読取部130と用紙収納部120の間には、画像形成部140と中間転写ベルト150が配置されている。画像形成部140は、イエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)、ブラック(Bk)の各色のトナー像を形成するために、4つの画像形成ユニット140Y,140M,140C,140Kを有する。
第1の画像形成ユニット140Yはイエローのトナー像を形成し、第2の画像形成ユニット140Mはマゼンダのトナー像を形成する。また、第3の画像形成ユニット140Cは、シアンのトナー像を形成し、第4の画像形成ユニット140Kは、ブラックのトナー像を形成する。これら4つの画像形成ユニット140Y,140M,140C,140Kは、それぞれ同一の構成を有しているため、ここでは代表して第1の画像形成ユニット140Yについて説明する。
第1の画像形成ユニット140Yは、ドラム状の感光体141と、感光体の周囲に配置された帯電部142と、露光部143と、現像部144と、クリーニング部145を有している。感光体141は、駆動モータ(図示を省略する)によって半時計回りに回転する。帯電部142は感光体141に電荷を与え感光体141の表面を一様に帯電する。露光部143は、原稿Gから読み取られた画像データに基づいて、感光体141の表面に対して露光検査を行い感光体141に静電潜像を形成する。
現像部144は、感光体141に形成された静電潜像にイエローのトナーを付着させる。これにより、感光体141の表面は、イエローのトナー像が形成される。なお、第2の画像形成ユニット140Mの現像部144は、感光体141にマゼンダのトナーを付着させ、第3の画像形成ユニット140Cの現像部144は、感光体141にシアンのトナーを付着させる。そして、第4の画像形成ユニット140Kの現像部144は、感光体141にブラックのトナーを付着させる。
感光体141上に付着したトナーは、中間転写ベルト150に転写される。クリーニング部145は、中間転写ベルト150に転写した後感光体141の表面に残留しているトナーを除去する。
中間転写ベルト150は、無端状に形成されており、駆動モータ(図示を省略する)で感光体141の回転方向とは逆方向の時計回りに回転する。中間転写ベルト150における各画像形成ユニット140Y,140M,140C,140Kの感光体141と対向する位置には、1次転写部151が設けられている。この1次転写部151は、中間転写ベルト150にトナーと反対の極性を印加することで、感光体141上に形成されたトナー像を中間転写ベルト150に転写させる。
そして、中間転写ベルト150が回転することで、中間転写ベルト150の表面には、4つの画像形成ユニット140Y,140M,140C,140Kで形成されたトナー像が順次転写される。これにより、中間転写ベルト150上には、イエロー、マゼンダ、シアン及びブラックのトナー像が重なり合いカラー画像が形成される。
中間転写ベルト150の近傍で、かつ搬送部123の上流側には、2次転写部170が配置されている。2次転写部170は、ローラ状に形成されており、搬送部123によって送られてきた用紙Sを中間転写ベルト150側に押圧する。そして、2次転写部170は、搬送部123によって送られてきた用紙S上に中間転写ベルト150に形成されたカラーのトナー画像を転写する。クリーニング部152は、用紙Sに転写した後中間転写ベルト150の表面に残留しているトナーを除去する。
2次転写部170の、用紙Sが搬送される上流側(排出側)には、定着装置1が設けられている。定着装置1では、用紙Sに転写されたトナー像を、加圧加熱により用紙Sに定着させる。定着装置1の構成については第1の実施形態で説明した通りである。
定着装置1の下流には、切換ゲート124が配置されている。切換ゲート124は、定着装置1を通過した用紙Sの搬送経路を切り換える。すなわち、切換ゲート124は、片面画像形成におけるフェースアップ排紙を行う場合に、用紙Sを直進させる。これにより、用紙Sは、一対の排紙ローラ125によって排紙される。また、切換ゲート124は、片面画像形成におけるフェースダウン排紙及び画面画像形成を行う場合に、用紙Sを下方に案内する。
フェースダウン排紙を行う場合は、切換ゲート124によって用紙Sを下方に案内した後に、用紙反転搬送部126によって表裏を反転して上方に搬送する。これにより、用紙Sは、一対の排紙ローラ125によって排紙される。両面画像形成を行う場合は、切換ゲート124によって用紙Sを下方に案内した後に、用紙反転搬送部126によって表裏を反転し、再給紙路127により再び転写位置へ送られる。
また、一対の排紙ローラ125の下流側に、用紙Sを折ったり、用紙Sに対してステーブル処理等を行ったりする後処理装置を配置してもよい。
本実施形態の画像形成装置100では、定着装置1において、用紙Sへの爪スジや、加圧ローラ3に傷が発生することを防止することができるので、部品の劣化を防ぎ、故障の原因を防ぐことができる。
本実施形態では、定着装置1として、第1の実施形態に係る定着装置1を適用する例を示したが、その他、第2〜第5の実施形態に係る定着装置を適用することもできる。また、本実施形態ではカラー画像形成装置を例として説明したが、モノクロ画像形成装置に第1〜第5の実施形態の定着装置を適用することもできる。また、画像形成装置としては複写機に限らず、プリンタやファクシミリ、あるいは複数の機能を備える複合機であっても良い。