以下,本発明を具体化した実施の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態は,電子写真方式のプリンターにおいて本発明を具体化したものである。
図1に,本形態の画像形成装置1の概略構成を示す。画像形成装置1は,中間転写ベルト30を有する,いわゆるタンデム方式のカラープリンターである。中間転写ベルト30は導電性を有する無端状のベルト部材であり,その図1中両端部がローラー31,32によって支持されている。画像形成時には,図1中右側のローラー31が反時計回りに回転駆動される。これにより,中間転写ベルト30および図1中左側のローラー32はそれぞれ,図中に矢印で示す方向に従動回転する。
中間転写ベルト30のうち,図1中右側のローラー31に支持されている部分の外周面には,2次転写ローラー40が設けられている。2次転写ローラー40は,中間転写ベルト30へ向けて軸と垂直の方向(図1中左向き)に圧接されている。中間転写ベルト30と2次転写ローラー40とが接触している部分には,中間転写ベルト30上のトナー像を用紙Pに転写させる転写ニップN1が形成されている。2次転写ローラー40は,画像形成時には,回転する中間転写ベルト30への圧接による摩擦力によって従動回転する。
また,中間転写ベルト30のうち,図1中左側のローラー32に支持されている部分の外周面には,ベルトクリーナー41が設けられている。ベルトクリーナー41は中間転写ベルト30の外周面に圧接されている。また,その圧接によって接触している部分により,転写ニップN1において用紙Pに転写されなかった転写残トナーなどを回収する回収領域42が形成されている。
中間転写ベルト30の図1中下部には左から右に向かって順に,イエロー(Y),マゼンタ(M),シアン(C),ブラック(K)の各色の画像形成部10Y,10M,10C,10Kが配置されている。画像形成部10Y,10M,10C,10Kはいずれも,該当色のトナー像を形成して中間転写ベルト30上に転写するためのものである。画像形成部10Y,10M,10C,10Kはいずれも,その構成は同じである。このため,図1では,画像形成部10Yによって代表して符号をつけている。
画像形成部10Y,10M,10C,10Kは,円筒状の静電潜像担持体である感光体11,および,その周囲に配置された帯電器12,現像装置14,および感光体クリーナー16を有している。また,感光体11と中間転写ベルト30を挟んで対向する位置には,1次転写ローラー15が配置されている。さらに,各色の画像形成部10Y,10M,10C,10Kの図1中下方には,露光装置13が配置されている。帯電器12は,感光体11の表面を均一に帯電させるためのものである。露光装置13は,画像データに基づいたレーザー光を各感光体11の表面に照射させ,静電潜像を形成するためのものである。現像装置14は,収容しているトナーを感光体11の表面に付与するためのものである。
1次転写ローラー15は,中間転写ベルト30へ向けて軸と垂直の方向(図1中下向き)に圧接されている。この圧接により,中間転写ベルト30と各感光体11とが接触している部分にはそれぞれ,各色の感光体11上のトナー像を中間転写ベルト30上に転写させる1次転写ニップが形成されている。感光体クリーナー16は,感光体11上から中間転写ベルト30上に転写されなかったトナーを回収するためのものである。
なお,図1では,帯電器12としてローラー形状をしたローラー帯電方式のものを示しているが,本発明はこれに限るものではない。コロナ放電方式の帯電チャージャー,ブレード状の帯電部材,またはブラシ状の帯電部材等を用いても良い。また,感光体クリーナー16として,板状でその一端部が感光体11の外周面に接触しているものを示しているが,本発明はこれに限るものではない。その他のクリーニング部材,例えば固定ブラシ,回転ブラシ,ローラーまたはそれらのうちの複数の部材を組み合わせたものを使用することができる。あるいは,感光体11上の未転写トナーを現像装置14により回収するクリーナーレス方式を採用すれば,感光体クリーナー16はなくてもよい。
また,中間転写ベルト30の図1中上方には,各色のトナーを収容したホッパー17Y,17M,17C,17Kが配置されている。これらに収容されている各色のトナーはそれぞれ,該当色の現像装置14へと適宜補給される。
中間転写ベルト30の回転方向における画像形成部10Kの下流側であって転写ニップN1の上流側の位置には,中間転写ベルト30上に転写されたトナー像の像濃度を検出するための濃度センサー20が設けられている。濃度センサー20は,中間転写ベルト30の外周面を検出位置としている。濃度センサー20は,例えば画像濃度の調整に用いられる,検出位置に向かって光を照射する投光部とその反射光を受光する受光部とを有するものである。
画像形成装置1の下部には,着脱可能な給紙カセット51が装着されている。給紙カセット51の図1中右側より上方に向かっては,搬送経路50が設けられている。そして,給紙カセット51に積載により収容された用紙Pは,その最上部のものより1枚ずつ給紙ローラー52によって搬送経路50に送り出されるようになっている。給紙ローラー52により送り出された用紙Pの搬送経路50には,1対のレジストローラー53,転写ニップN1,定着装置100,排紙ローラー54がこの順で配置されている。搬送経路50のさらに下流側である画像形成装置1の上面には,排紙部55が設けられている。レジストローラー53は,用紙Pを転写ニップN1へ送り出すタイミングを調整するためのものである。定着装置100は,定着ニップN2において用紙Pを加熱しつつ加圧することにより,用紙Pに転写されたトナー像の定着処理を行うためのものである。
次に,本形態の画像形成装置1による,通常の画像形成動作の一例について簡単に説明する。以下の説明は,給紙カセット51に収容されている用紙Pに,4色のトナーを用いてカラー画像を形成する場合における画像形成動作の一例である。
通常のカラー画像の形成時には,まず,中間転写ベルト30および各色の感光体11はそれぞれ,図1に矢印で示す向きに所定の周速度で回転される。そして,感光体11の外周面は,帯電器12によりほぼ一様に帯電される。帯電された感光体11の外周面には,露光装置13によって画像データに応じた光が投射され,静電潜像が形成される。続いて,静電潜像は現像装置14によって現像され,感光体11上にはトナー像が形成される。
各感光体11上に形成されたトナー像は,1次転写ローラー15によって中間転写ベルト30上に転写(1次転写)される。これにより,中間転写ベルト30上には,イエロー,マゼンタ,シアン,ブラックのトナー像がこの順で重ね合わされる。そして,重ね合わされた4色のトナー像は,中間転写ベルト30の回転によって転写ニップN1に搬送される。また,中間転写ベルト30に転写されず,1次転写ローラー15を過ぎた後も感光体11上に残留している転写残トナーは,感光体クリーナー16によって掻き取られ,感光体11上から除去される。
一方,給紙カセット51に収容されている用紙Pは,最上部のものから1枚ずつ搬送経路50に引き出される。引き出された用紙Pは,搬送経路50に沿って転写ニップN1に搬送される。用紙Pの転写ニップN1への突入タイミングは,中間転写ベルト30上のトナー像の転写ニップN1への突入タイミングと一致するように,レジストローラー53によって調整される。これにより,転写ニップN1において,重ね合わされた4色のトナー像が用紙Pに転写(2次転写)される。
トナー像が転写された用紙Pは,さらに搬送経路50の下流側へと搬送される。つまり,用紙Pは,定着装置100によってトナー像が定着された後,排紙ローラー54によって排紙部55に排出される。なお,転写ニップN1を通過した後も中間転写ベルト30上に残留する転写残トナーは,回収領域42においてベルトクリーナー41によって回収される。これにより,中間転写ベルト30上から除去される。
次に,本形態の定着装置100について説明する。図2は,定着装置100の概略構成図である。図2に示すように,定着装置100は,定着ローラー110,加圧ローラー120を有している。定着ローラー110と加圧ローラー120とは平行に配置され,いずれも回転可能に支持されている。また,定着ローラー110は,定着ニップN2を通過する用紙Pのトナー像を担持している面の側に配置されている。また,定着ローラー110は,定着ニップN2を通過する用紙Pを加熱するためのヒーター130を内部に有する加熱側の構成である。
一方,加熱側の構成と搬送経路50を挟んで対向する加圧側の加圧ローラー120は,定着ローラー110へ向けて軸と垂直の方向に圧接されている。これにより,定着ローラー110と加圧ローラー120との間には,用紙Pに定着処理を行う定着ニップN2が形成されている。なお,画像形成時には,定着ローラー110が,図2中矢印で示す方向に回転駆動される。そして,その回転する定着ローラー110への圧接による摩擦力により,加圧ローラー120が従動回転する。
定着ローラー110の最外周は,定着ニップN2を通過した用紙Pが張り付いたままとならないよう,離型性の高い表面層111により構成されている。表面層111の内周側には,定着ローラー110の外周面と用紙Pとの密着性を高めるための弾性層112が設けられている。また,弾性層112の内側は,十分な強度と耐熱性を有する基材である芯金113により構成されている。芯金113は中空形状のものであり,その内部空間には,ヒーター130が配置されている。ヒーター130は,定着ローラー110が例えば定着処理を行うための所定の温度となるよう,これを加熱するためのものである。
加圧ローラー120においても,その最外周は離型性の高い表面層121により構成されている。また表面層121の内周側には,弾性層122が設けられている。さらに加圧ローラー120の最も内側は,芯金123により構成されている。
本形態では,定着ローラー110および加圧ローラー120の表面層111,121にはいずれも,PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)チューブを用いている。なおこの他にも,表面層111,121として,PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)やETFE(テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体)等のフッ素系樹脂材料を,フッ素系チューブまたはフッ素系コーティングとして用いることもできる。
また本形態では,定着ローラー110および加圧ローラー120の弾性層112,122にはいずれも,シリコーンゴムを用いている。なお,シリコーンゴムの発泡体であるシリコーンゴムスポンジなど,その他のシリコーン材料を用いることもできる。
また,定着装置100は,定着ローラー110の表面を清掃するための定着クリーナー140を有している。前述したように,定着ローラー110は,定着ニップN2を通過する用紙Pのトナー像を担持している面の側の構成である。このため,定着ローラー110の表面は,用紙Pが定着ニップN2を通過する際には,その用紙Pが担持するトナーと接触する。定着ローラー110の最外層は,離型性の高い表面層111により構成されている。しかし,用紙Pの担持するトナーが定着ローラー110の表面に付着することを完全には防止できず,定着ローラー110の表面にはトナーが付着することがある。
そして,定着ローラー110の表面に大量のトナーが付着している場合には,これが定着ニップN2において用紙Pに移り,用紙Pには目視できるほどの汚れが発生してしまうおそれがある。また,後述するように,超微粒子(UFP)の発生量が多くなってしまうおそれもある。よって,これらのような事態を回避するため,定着クリーナー140は,定着ローラー110の表面のトナーを除去するものである。
定着クリーナー140は,図2に示すように,巻出ローラー141,巻取ローラー142,圧接ローラー143,クリーニングウェブ144を有している。クリーニングウェブ144は,定着ローラー110の表面のトナーを自身に付着させることにより,定着ローラー110の表面からトナーを除去するためのものである。このため,クリーニングウェブ144は,定着ローラー110の表面層111よりも,トナーが付着しやすい材質のものである。巻出ローラー141には,クリーニングウェブ144の未使用部分がロール状にセットされており,巻出ローラー141から巻き出されたクリーニングウェブ144は,巻取ローラー142により巻き取られる。
圧接ローラー143には,巻出ローラー141から巻き出され,巻取ローラー142によって巻き取られる前のクリーニングウェブ144が巻き掛けられている。また,圧接ローラー143は,これに巻き掛けられているクリーニングウェブ144を挟んで定着ローラー110と対向する位置に設けられており,クリーニングウェブ144を定着ローラー110の表面に圧接するためのものである。クリーニングウェブ144は,圧接ローラー143による定着ローラー110との圧接箇所において,定着ローラー110の表面のトナーを回収する。
また,クリーニングウェブ144によって回収されたトナーが再度,定着ローラー110に付着することを防ぐため,巻取ローラー142は図2中矢印で示す方向に回転駆動される。これにより,従動回転される巻出ローラー141よりクリーニングウェブ144の未使用の部分が巻き出され,その未使用部分が定着ローラー110に接触することとなる。つまり,巻取ローラー142によって巻き取られるクリーニングウェブ144の部分は,定着ローラー110より回収したトナーが付着した使用済みの部分である。なお,クリーニングウェブ144のたるみを除去するため,巻出ローラー141はその巻出方向に回転しづらいようにされている。
定着クリーナー140による定着ローラー110のクリーニングは,定着ローラー110を回転させつつ行う。定着ローラー110が回転することにより,定着ローラー110の表面はクリーニングウェブ144の圧接箇所に対して移動する。これにより,定着クリーナー140は定着ローラー110の表面を全周,クリーニングすることができる。
また,図2に示す定着クリーナー140の位置は,定着ローラー110のクリーニングを行っているときのものである。定着クリーナー140は,定着ローラー110のクリーニングを行わないときには,図2中左方向に移動した位置にある。つまり,クリーニングを行わない間,クリーニングウェブ144は定着ローラー110の表面より離間した状態とされる。クリーニングウェブ144が定着ローラー110の表面に接触している間,定着ローラー110にはある程度の負荷がかかった状態となる。つまり,クリーニングウェブ144を常に定着ローラー110の表面に接触させておくことは,定着ローラー110の寿命の観点から好ましくないからである。
そして,以上のような構成の定着装置100では,その動作時においてUFPが発生する。UFPは,一般的には,100nm以下の粒径のものである。UFPは,具体的には,ヒーター130による加熱が行われる定着処理時などにおいて,定着ローラー110や加圧ローラー120の弾性層112,122から発生する。すなわち,定着処理時には定着ローラー110および加圧ローラー120が加熱されることにより,その弾性層112,122をなすシリコーンゴムから揮発成分であるシロキサンが生成される。そして,生成されたシロキサンが凝集することにより,UFPが発生するものと解されている。なお,シリコーンゴムに限らず,例えばシリコーンスポンジなど,その他のシリコーン材料を用いた場合にもUFPが発生する。
さらに,UFPはトナーからも発生する。用紙Pに担持されたトナーは,定着処理時には加熱しつつ加圧されることにより溶融し,用紙Pに定着される。そして,その溶融する際のトナーより,UFPが発生するのである。さらに,定着ローラー110の表面にトナーが付着している場合にはその定着ローラー110の表面に付着しているトナーからもUFPが発生する。ヒーター130による加熱が行われる際には,定着ローラー110の表面のトナーも加熱されることとなるからである。
図3に,画像形成装置1の制御構成の概略を示す。画像形成装置1は,エンジン部60,定着温度制御部70,定着クリーナー制御部71,コントローラー部90を有している。エンジン部60は,装置全体の制御処理を行うCPU61と,UFP発生傾向判定部Aと,トナー付着状態値カウント部Bと,本体付属の不揮発性メモリ62とを有している。
また,図3に示すように,画像形成装置1は,各種ユニット80およびそれらユニット付属の不揮発性メモリ81を有している。各種ユニット80には例えば,トナーボトルやイメージングユニット,定着装置100などが含まれる。そして,各種ユニット付属の不揮発性メモリ81として,例えばトナーボトルに付属のメモリにはトナー残量など,イメージングユニットに付属のメモリにはこれを用いて画像形成を行った印字枚数などが記憶されている。また,定着装置100に付属のメモリには,定着装置100について予め定めた寿命までの印刷可能な枚数などが記憶されている。
CPU61は,ユーザーにより入力された印刷ジョブや装置各部の状態などに基づいて,画像形成装置1による画像形成動作に係る演算や,装置の各部に動作指示を行うものである。本形態の本体付属の不揮発性メモリ62には,例えば,後に詳述する温度閾値ATなどの各種の閾値や,ジョブや環境の条件ごとに予め定められた定着装置100の最適な設定温度などが記憶されている。
定着温度制御部70は,定着装置100の温度がこれから実行するジョブに最適な温度となるよう,ヒーター130を自動制御するものである。ジョブには,画像形成を行う印刷ジョブのみならず,休止状態の装置を画像形成が実行可能な状態とするウォームアップや,印刷ジョブが入力された際にこれをすぐに実行できる状態としておく待機状態なども含まれる。
また,ジョブに最適な温度は,システム速度,装置の環境の温度や湿度,使用する紙の種類などを総合的に判断し,設定される。例えば,印刷ジョブにおいて用紙Pが定着ニップを通過する際の速度であるシステム速度が速いほど,定着処理温度は高く設定される。用紙Pが定着ニップN2の通過に要する時間が短いほど,単位時間あたりに用紙Pに与える熱量を多くしなければならないからである。また,装置環境の温度が低いほど,定着処理温度は高く設定される。さらに,厚紙など,使用する用紙Pの種類が,定着ニップN2の通過時に定着装置100から奪う熱量の多いものであるときほど,定着処理温度は高くされる。
よって,定着温度制御部70は,ジョブの実行時には,そのジョブに係る定着装置100の最適な設定温度をCPU61より受信し,定着装置100の温度がその受信した設定温度となるようヒーター130を制御する。また,定着装置100の最適な設定温度は,ジョブや環境などの条件ごとに予め定められており,前述したように,不揮発性メモリ62に記憶されている。
定着クリーナー制御部71は,CPU61の指示により,定着クリーナー140の制御を行うものである。すなわち,定着クリーナー制御部71は,定着クリーナー140の巻取ローラー142によるクリーニングウェブ144の巻き取り動作を制御する。さらには,定着クリーナー140の定着ローラー110に対する圧接および離間の切り替え動作を制御する。
UFP発生傾向判定部Aは,これから実行するジョブが,UFPの発生しやすい条件のジョブであるか否かを判定するものである。ここで,図4および図5に,定着装置100における定着処理温度とUFPの発生との関係を示す。
図4は,UFPの発生率を温度ごとに示したグラフ図である。縦軸に示すUFPの発生率は,設定温度をそれぞれ190℃と195℃とした定着装置100において,ともに同じ量のトナーを加熱溶融させた際に発生したUFPの個数を測定して得られた値である。なお,トナーの加熱は,図4の横軸にt1で示すときに開始している。つまり,t1以前に発生しているUFPに係る縦軸にXで示す発生率は,トナーによるものではなく,定着装置100の定着ローラー110や加圧ローラー120の弾性層112,122より発生したUFPによるものである。そして,図4より,定着処理温度が高いほど,単位時間あたりに発生するUFPの量が多くなる傾向にあることがわかる。
また,図5は,UFPの発生量を温度ごとに示したグラフ図である。すなわち,設定温度をそれぞれ190℃と195℃とした定着装置100において,ともに同じ量のトナーを加熱溶融させた際に発生したUFPの総量を示している。そして,図5より,定着処理温度が高いほど,定着装置100より発生するUFPの総量は多くなる傾向にあることがわかる。よって,図4および図5より,定着装置100の設定温度が高い条件下で実行されるジョブほど,発生するUFPの量が多くなる傾向にあることがわかる。なお,厳密にはトナーの色や種類によってUFPの発生量が異なるが,定着装置100の設定温度が高いほどUFPが発生しやすくなる傾向については同じである。
さらに,印刷ジョブにおいては,定着ニップN2を通過するトナーの量が多いほど,UFPの発生量は多くなる傾向にある。つまり,用紙Pの面積に占める画像の面積の割合であるカバレッジが高い画像形成を実行する印刷ジョブほど,UFPの発生量は多くなる。あるいは,多くの用紙Pに連続して画像形成を行う印刷ジョブにおいては,加熱溶融されるトナーの総量が多くなることにより,UFPの発生量は多くなる。また,定着装置100は,一般的に,画像形成を行った枚数が少なく新しい状態であるほど,UFPが多く発生することが知られている。つまり,定着装置100の残り寿命が長いほど,実行されるジョブにおいて発生するUFPの量は多くなる傾向にある。
また,図6は,UFPの発生率を,画像形成動作の開始前における休止時間ごとに示したグラフ図である。図6には,休止時間を3時間とした場合と,1時間とした場合とについて,その後,それぞれ定着処理を開始させた定着装置100より発生したUFPの発生率について示している。なお,休止時間を3時間とした場合,1時間とした場合についてはともに,その後の定着処理に係る設定温度やトナー量などの条件は同じである。そして,図6に示すように,UFPの発生率は,3時間休止した後の方が,1時間だけ休止した後よりも多くなる傾向にあることがわかる。すなわち,休止時間が長いほど,その後に実行されるジョブにおけるUFPの発生量が多くなる傾向にあることがわかる。
よって,UFP発生傾向判定部Aは,上記の傾向のうち少なくとも1つに基づいて,ジョブの実行前に,そのジョブがUFPの発生しやすい条件の多発生傾向のジョブであるか否かを判定する。
トナー付着状態値カウント部Bは,定着ローラー110の表面に付着しているトナー量を指標する値を,トナー付着状態値としてカウントするものである。定着ローラー110のトナーの付着量は,画像形成を行った用紙Pの枚数が多いほど,多くなる。また,カバレッジの高い画像形成を行ったときほど,定着ローラー110には多くのトナーが付着する。また,1枚の用紙Pについてのカバレッジが低い画像形成であっても,そのような画像形成を多く行うほど,定着ローラー110のトナーの付着量は多くなる。つまり,定着ローラー110のトナーの付着量は,画像形成を行った各用紙Pについてのカバレッジを積算した値であるカバレッジの積算値が高いほど,多くなる。
さらに,定着ニップN2を通過した用紙Pが搬送経路50を適切に搬送されず,定着ローラー110の表面に貼り付いたままとなってジャムが発生することがある。そして,ジャムが発生し,そのジャムに係る用紙Pを定着ローラー110から除去した後には,用紙Pに担持されていたトナーが定着ローラー110の表面に付着したままとなりやすい。すなわち,定着装置100におけるジャムの発生回数が多いほど,定着ローラー110のトナーの付着量は多くなる。
よって,トナー付着状態値カウント部Bは,定着ローラー110のトナー付着量に相関する値である画像形成を行った用紙Pの枚数,行った画像形成のカバレッジの積算値,定着装置100のジャムの積算回数のうちの少なくとも1つを,トナー付着状態値としてカウントする。なお,定着クリーナー140によってクリーニングが行われることにより,定着ローラー110の表面に付着していたトナーはほとんど除去される。よって,定着クリーナー140によるクリーニングが行われた場合,トナー付着状態値カウント部Bのカウントしていたトナー付着状態値は初期化される。
コントローラー部90は,外部のパソコンなどに接続されて指示入力を受けるものである。例えば,画像形成の指令をパソコンから受信することにより,画像形成装置1には印刷ジョブが発生する。さらに,エンジン部60とコントローラー部90とで,ドットカウンター値などの各種の情報がやりとりされる。
そして,本形態の画像形成装置1では,ジョブの実行中に,定着ローラー110に付着しているトナーが,用紙Pに移ったときにその用紙Pにおいて目立つ汚れが発生するほどにまで多くなった場合,定着クリーナー140によるクリーニングを行う。具体的には,ジョブの実行中に,トナー付着状態値カウント部Bのカウントするトナー付着状態値が,そのトナー付着状態値について予め定めた閾値である汚れ防止閾値以上となったときに,定着クリーナー140によるクリーニングを行う。これにより,本形態の画像形成装置1では,用紙Pに目立つ汚れが発生しないようにされている。
ここで,上記の汚れ防止閾値に基づいて行われるクリーニングは,用紙Pに目立つ汚れが発生することを防止するために行われる汚れ防止クリーニングである。つまり,汚れ防止クリーニングが行われる前の定着ローラー110の表面には,用紙Pに目立つ汚れが発生しない程度のトナーが付着していることがある。よって,その状態で定着装置100を昇温させるジョブを実行した場合,定着ローラー110の表面に付着しているトナーからUFPが発生する。よって,UFPの発生しやすい条件の多発生傾向のジョブを実行する場合には,定着ローラー110トナー付着量は少ない状態であることが好ましい。
そこで,本形態の画像形成装置1では,入力された今回のジョブが多発生傾向のジョブであり,かつ,その実行前における定着ローラー110のトナー付着量が多い状態である場合には,今回のジョブの実行前に,UFPを抑制するためのクリーニングを行う。定着ローラー110のトナー付着量が多い状態で多発生傾向のジョブを実行した場合には,大量のUFPが発生してしまうからである。
今回のジョブが多発生傾向のジョブであるか否かの判定は,UFP発生傾向判定部Aによって行われる。UFP発生傾向判定部Aによる多発生傾向ジョブか否かの判定は,前述したように,今回のジョブにおける定着装置100の設定温度により行うことができる。定着装置100の設定温度が高いほど,UFPは発生しやすくなる傾向にあるからである。
また,カバレッジの高い画像を形成するほど,加熱溶融するトナー量が多いことにより,UFPの発生量は多くなる傾向にある。さらには,1枚の用紙Pに係る画像形成のカバレッジは低い場合であっても,複数の用紙Pに画像形成を行う印刷ジョブにおいては加熱溶融するトナー量は多くなる。このため,今回の印刷ジョブにおいて行われる全ての画像形成に係るカバレッジを合計した合計値が高い値であるほど,そのジョブのUFPの発生量は多くなる傾向にある。よって,UFP発生傾向判定部Aによる多発生傾向ジョブか否かの判定は,今回のジョブにおけるカバレッジの合計値によって行うこともできる。
また,UFP発生傾向判定部Aによる多発生傾向ジョブか否かの判定は,今回のジョブを実行する際の定着装置100の残り寿命によって行うこともできる。定着装置100の残り寿命が長いほど,その定着装置100より発生するUFPの量は多くなる傾向にあるからである。また,UFP発生傾向判定部Aによる多発生傾向ジョブか否かの判定は,前回のジョブから今回のジョブまでの休止時間によって行うこともできる。休止時間が長いほど,その後に開始されるジョブにおいて発生するUFPの量は多くなる傾向にあるからである。
すなわち,UFP発生傾向判定部Aは,定着装置100の設定温度,カバレッジの合計値,定着装置100の残り寿命,休止時間の条件のうちの少なくとも1つに基づいて,今回のジョブが多発生傾向ジョブか否かの判定を行う。具体的には,UFP発生傾向判定部Aは,今回のジョブにおけるこれらの条件が,その条件について予め定められた閾値以上か否かを判定することにより,多発生傾向ジョブか否かの判定を行うことができる。
また,UFPを抑制するクリーニングの実行に係る定着ローラー110のトナー付着量が多いか否かの判定についても,トナー付着状態値カウント部Bのカウントするトナー付着状態値により行うことができる。具体的には,トナー付着状態値カウント部Bのカウントするトナー付着状態値が,予め定めたUFP抑制閾値以上である場合に,定着ローラー110のトナー付着量が多いと判定することができる。このUFP抑制クリーニングにおけるUFP抑制閾値は,上記の汚れ防止クリーニングにおける汚れ防止閾値よりも低い値である。
そして,今回のジョブが多発生傾向のジョブであり,さらに定着ローラー110のトナー付着量が多いと判定される場合には,そのジョブの実行前に,定着クリーナー140によりUFP抑制クリーニングを行う。そして,UFP抑制クリーニングを予め行うことにより定着ローラー110に付着しているトナーを減少させ,その減少した分,ジョブの実行時におけるUFPの発生量を低減することができる。
一方,今回のジョブが多発生傾向のジョブではないと判定される場合,または,定着ローラー110のトナー付着量がUFP抑制閾値未満であると判定される場合には,定着クリーナー140によるクリーニングを行わずにジョブを開始する。多発生傾向のジョブではない場合,定着ローラー110のトナー付着量が少ない場合には,予め定着ローラー110に付着しているトナーを除去しなくても,実行したジョブにおいて発生するUFPの量が少ないからである。すなわち,問題となるほどの量のUFPが発生しないからである。
次に,本形態の画像形成装置1における,画像形成動作の手順の一例について,図7のフローチャートにより説明する。図7に示す例では,UFP発生傾向判定部Aは,今回のジョブが多発生傾向ジョブか否かの判定を,今回のジョブにおける定着装置100の設定温度により行う。このため,図7の例におけるUFP発生傾向判定部Aは,今回のジョブの定着装置100の設定温度を,CPU61より取得することができる。
また,トナー付着状態値カウント部Bは,トナー付着状態値として印字枚数Nをカウントする。すなわち,図7に示すフローが開始されたときにおけるトナー付着状態値カウント部Bの印字枚数Nの値は,前回の定着クリーナー140によるクリーニングの実施後に行われた画像形成に係る用紙Pの枚数である。
そして,図7に示すように,UFP発生傾向判定部Aは,画像形成装置1に印刷ジョブの実行指示があると,まず,その今回のジョブにおける定着装置100の設定温度Tを取得する(S101)。そして,取得した温度Tが,温度閾値AT以上か否かを判定する(S102)。ここで,温度閾値ATは,温度Tがその値以上である場合に,そのジョブがUFPの発生量の多くなる条件の多発生傾向のジョブと判断される値に予め定められたものである。温度閾値ATの値は予め実験などを行うことにより取得することができ,例えば,195℃に定めることができる。
このため,UFP発生傾向判定部Aは,温度Tが温度閾値AT以上である場合(S102:YES),今回のジョブが多発生傾向のジョブであると判定する。この場合,CPU61は,トナー付着状態値カウント部Bより印字枚数Nを取得し,取得した印字枚数NがUFP抑制閾値BN1以上か否かを判定する(S103)。UFP抑制閾値BN1は,印字枚数Nがその値以上である場合には,定着ローラー110のトナー付着量が,そのまま多発生傾向のジョブを実行したときに大量のUFPが発生してしまうおそれがあるほど多い状態を基準として予め定められた値である。すなわち,ステップS103では,トナー付着状態値に基づいて,ジョブの実行前の定着ローラー110のトナー付着量が,多発生傾向のジョブにおいてUFPが大量に発生するほどの量であるか否かを判定する。UFP抑制閾値BN1は予め実験などを行うことにより取得することができ,例えば,100枚に定めることができる。
そして,印字枚数NがUFP抑制閾値BN1以上である場合には(S103:YES),CPU61は定着クリーナー制御部71に対し,定着クリーナー140による定着ローラー110のクリーニングを行うよう指示する(S104)。前述したように,定着クリーナー140による定着ローラー110のクリーニングは,定着ローラー110を回転させることにより行う。図7の例では,UFP抑制クリーニング(S104)において,定着ローラー110を2回転させることにより行う。また,定着クリーナー140による定着ローラー110のクリーニングを行った後,トナー付着状態値カウント部Bの印字枚数Nの値を初期化し(S105),今回の印刷ジョブを開始する(S106)。
一方,温度Tが温度閾値AT未満である場合(S102:NO)には,今回のジョブが多発生傾向のジョブではないと判断されるため,定着ローラー110のクリーニングおよび印字枚数Nの初期化を行わずに,今回の印刷ジョブを開始する(S106)。また,今回のジョブが多発生傾向のジョブであると判断される場合(S102:YES)であっても印字枚数NがUFP抑制閾値BN1未満である場合(S103:NO)においても,定着ローラー110のクリーニングなどを行わずに,今回の印刷ジョブを開始する(S106)。
続いて,印刷ジョブが開始されることにより,定着装置100のヒーター130は,設定温度Tまで昇温される。また,CPU61は,開始された印刷ジョブにおいて,トナー付着状態値カウント部Bより印字枚数Nを取得し,取得した印字枚数Nが汚れ防止閾値BN2以上か否かを判定する(S107)。汚れ防止閾値BN2は,印字枚数Nがその値以上である場合には,定着ローラー110のトナー付着量が,用紙Pに移ったときにその用紙Pにおいて目立った汚れが発生してしまうおそれがあるほど多い状態を基準として予め定められた値である。すなわち,ステップS107では,トナー付着状態値に基づいて,ジョブの実行中の定着ローラー110のトナー付着量が,用紙Pに移ったときに用紙Pにおいて目立つ汚れが発生するほどの量であるか否かを判定する。なお,汚れ防止閾値BN2は,前述したように,上記のUFP抑制閾値BN1よりも高い値の閾値である。汚れ防止閾値BN2についても,予め実験などを行うことにより取得することができ,例えば,300枚に定めることができる。
そして,印字枚数Nが汚れ防止閾値BN2以上である場合には(S107:YES),CPU61は定着クリーナー制御部71に対し,定着クリーナー140による定着ローラー110のクリーニングを行うよう指示する(S108)。この汚れ防止クリーニング(S108)においても,上記のUFP抑制クリーニング(S104)と同様,定着ローラー110を2回転させることにより行う。また,汚れ防止クリーニングを行った後,トナー付着状態値カウント部Bの印字枚数Nの値を初期化し(S109),今回の印刷ジョブに係る画像形成を行う(S110)。すなわち,各色の画像形成部10ではトナー像が形成されるとともに,給紙カセット51より用紙Pが搬送経路50に給紙される。形成されたトナー像は転写ニップN1において用紙Pに転写され,定着ニップN1において定着処理がなされた後,排紙される。
一方,印字枚数Nが汚れ防止閾値BN2未満である場合(S107:NO)には,定着ローラー110のクリーニングおよび印字枚数Nの初期化を行わずに,今回の印刷ジョブに係る画像形成を行う(S110)。
また,1枚の用紙Pについて画像形成が行われることにより,トナー付着状態値カウント部Bはこれをカウントする(S111)。続いて,その画像形成後に今回の印刷ジョブに係る次の画像形成を行う場合には(S112:NO),ステップS107に戻って上記の処理を繰り返す。一方,その画像形成が今回の印刷ジョブの最後の画像形成である場合には,今回の印刷ジョブを終了する(S112:YES)。
そして,図7に示す手順によって画像形成動作を行うことにより,UFPの発生量を抑制することができる。今回のジョブが定着温度が高くUFPの発生しやすい条件の多発生傾向のジョブであり,定着ローラー110のトナー付着量が多い状況においては,そのジョブの実行前に,定着ローラー110のクリーニングを行うからである。つまり,UFPの発生源の1つである定着ローラー110に付着したトナーが除去された状態で,ジョブが実行されるからである。
一方,今回のジョブが多発生傾向のジョブではない場合,または,多発生傾向のジョブではあるが定着ローラー110のトナー付着量が少ない場合には,定着ローラー110のクリーニングを行うことなくジョブが実行される。これらのような場合には,定着ローラー110にはトナーがほとんど付着していない,あるいは付着していてもその付着しているトナーより発生するUFPの量が問題となるほどの量ではないからである。そして,定着ローラー110のクリーニングを行わずに今回のジョブを実行することができるため,画像形成の生産性を低下させることがない。
また,定着ローラー110のクリーニングの際には,定着ローラー110にはある程度の負荷がかかる。すなわち,定着ローラーのクリーニングの頻度を最小限とすることにより,定着ローラー110の寿命の低下を防止することができる。なお,画像形成装置1にジョブが入力された場合であっても,そのジョブが終了するまで,UFP抑制クリーニング,汚れ防止クリーニングは実行されないこともある。
続いて,本形態の画像形成装置1における,図7とは異なる画像形成動作の手順の一例について,図8のフローチャートにより説明する。図8に示す例では,図7の例とは異なり,UFP発生傾向判定部Aは,今回のジョブが多発生傾向ジョブか否かの判定を,今回のジョブにおける合計カバレッジにより行う。
合計カバレッジは,今回のジョブにおいて行われるすべての画像形成に係るカバレッジを合計した値である。このため,図8の例において,コントローラー部90は,入力された今回のジョブについての合計カバレッジを算出する。なお,図8の例において,カバレッジは,用紙Pの外周に沿って設けられた余白部分を除いた領域である画像形成領域の面積に対するトナー像の面積の割合により求めた値を用いている。しかし,この他にも,用紙Pの全体の面積に対するトナー像の面積により求めた値をカバレッジとして用いてもよい。さらに,UFP発生傾向判定部Aは,コントローラー部90より,今回のジョブに係る合計カバレッジを取得することができる。また,トナー付着状態値カウント部Bは,図8の例でも図7の例と同様に,トナー付着状態値として印字枚数Nをカウントする。
そして,図8に示すように,UFP発生傾向判定部Aは,画像形成装置1に印刷ジョブの実行指示があると,まず,その今回のジョブにおける合計カバレッジCを取得する(S201)。そして,取得した合計カバレッジCが,カバレッジ閾値AC以上か否かを判定する(S202)。ここで,カバレッジ閾値ACは,合計カバレッジCがその値以上である場合に,そのジョブがUFPの発生量の多くなる条件の多発生傾向のジョブと判断される値に予め定められたものである。カバレッジ閾値ACの値についても予め実験などを行うことにより取得することができ,例えば,A4サイズの用紙Pの画像形成領域にベタ画像を形成する場合のカバレッジを100%として,2000%に定めることができる。
また,UFP発生傾向判定部Aは,合計カバレッジCがカバレッジ閾値AC以上である場合(S202:YES),今回のジョブが多発生傾向のジョブであると判定する。この場合,CPU61は,図7の例と同様に,トナー付着状態値カウント部Bより印字枚数Nを取得し,取得した印字枚数NがUFP抑制閾値BN1以上か否かを判定する(S203)。印字枚数NがUFP抑制閾値BN1以上である場合には(S203:YES),定着ローラー110のクリーニング(S204)を行った後,印字枚数Nの値を初期化し(S205),今回の印刷ジョブを開始する(S206)。
一方,合計カバレッジCがカバレッジ閾値AC未満である場合(S202:NO)には,図7と同様,定着ローラー110のクリーニングなどを行わずに,今回の印刷ジョブを開始する(S206)。また,合計カバレッジCがカバレッジ閾値AC以上である場合(S202:YES)であっても印字枚数NがUFP抑制閾値BN1未満である場合(S203:NO)についても,定着ローラー110のクリーニングなどを行わずに,今回の印刷ジョブを開始する(S206)。今回の印刷ジョブを行う手順は,図8の例においても図7の例と同様である(S207〜S212)。よって,図8の例においても,UFPの発生量を抑制することができるとともに,画像形成の生産性の低下および定着ローラー110の寿命の低下を防止することができる。
次に,本形態の画像形成装置1における,図7および図8の例とは異なる画像形成動作の手順の一例について,図9のフローチャートにより説明する。図9に示す例では,上記の例とは異なり,UFP発生傾向判定部Aは,今回のジョブが多発生傾向ジョブか否かの判定を,定着装置100の残り寿命により行う。
残り寿命は,CPU61において,定着装置100に付属の不揮発性メモリ81に記憶されている予め定めた寿命までの印刷可能な枚数より,その定着装置100によって画像形成を行った枚数を減ずることによって算出することができる。図9の例におけるUFP発生傾向判定部Aは,CPU61より,定着装置100の残り寿命を取得することができる。また,トナー付着状態値カウント部Bは,図9の例においても,トナー付着状態値として印字枚数Nをカウントする。
そして,図9に示すように,UFP発生傾向判定部Aは,画像形成装置1に印刷ジョブの実行指示があると,まず,定着装置100の残り寿命Lを取得する(S301)。そして,残り寿命Lが,寿命閾値AL以上か否かを判定する(S302)。ここで,寿命閾値ALは,残り寿命Lがその値以上である場合に,そのジョブがUFPの発生量の多くなる条件の多発生傾向のジョブと判断される値に予め定められたものである。寿命閾値ALの値についても予め実験などを行うことにより取得することができ,例えば,予め定めた寿命までの印刷可能な枚数が30万枚の定着装置100について,29万9千枚に定めることができる。
UFP発生傾向判定部Aは,残り寿命Lが寿命閾値AL以上である場合(S302:YES),今回のジョブが多発生傾向のジョブであると判定する。この場合,CPU61は,上記の例と同様,トナー付着状態値カウント部Bより印字枚数Nを取得し,取得した印字枚数NがUFP抑制閾値BN1以上か否かを判定する(S303)。印字枚数NがUFP抑制閾値BN1以上である場合には(S303:YES),定着ローラー110のクリーニング(S304)を行った後,印字枚数Nの値を初期化し(S305),今回の印刷ジョブを開始する(S306)。
一方,残り寿命Lが寿命閾値AL未満である場合(S302:NO)には,上記の例と同様,定着ローラー110のクリーニングなどを行わずに,今回の印刷ジョブを開始する(S306)。残り寿命Lが寿命閾値AL以上である場合(S302:YES)であっても印字枚数NがUFP抑制閾値BN1未満である場合(S303:NO)についても,定着ローラー110のクリーニングなどを行わずに,今回の印刷ジョブを開始する(S306)。今回の印刷ジョブを行う手順は,図9の例においても上記の例と同様である(S307〜S312)。よって,図9の例においても,UFPの発生量を抑制することができるとともに,画像形成の生産性の低下および定着ローラー110の寿命の低下を防止することができる。
続いて,本形態の画像形成装置1における,上記の例とは異なる画像形成動作の手順の一例について,図10のフローチャートにより説明する。図10に示す例では,上記の例とは異なり,UFP発生傾向判定部Aは,今回のジョブが多発生傾向ジョブか否かの判定を,前回のジョブから今回のジョブまでの休止時間により行う。
休止時間は,本形態においては,前回のジョブが終了して装置が休止状態となったときにカウントが開始され,今回のジョブが入力されたときまでにカウントしている時間である。このため,図10の例におけるCPU61は,装置の休止時間のカウントを行う。さらに,UFP発生傾向判定部Aは,CPU61より,これがカウントした休止時間を取得することができる。あるいは,エンジン部60に,休止時間をカウントし,これをUFP発生傾向判定部Aに出力する休止時間カウント部を有していてもよい。また,トナー付着状態値カウント部Bは,図10の例においても,トナー付着状態値として印字枚数Nをカウントする。
そして,図10に示すように,UFP発生傾向判定部Aは,画像形成装置1に印刷ジョブの実行指示があると,まず,前回のジョブから今回のジョブまでの休止時間tを取得する(S401)。そして,取得した休止時間tが,休止時間閾値At以上か否かを判定する(S402)。ここで,休止時間閾値Atは,休止時間tがその値以上である場合に,そのジョブがUFPの発生量の多くなる条件の多発生傾向のジョブと判断される値に予め定められたものである。休止時間閾値Atの値についても予め実験などを行うことにより取得することができ,例えば,1時間に定めることができる。
このため,UFP発生傾向判定部Aは,休止時間tが休止時間閾値At以上である場合(S402:YES),今回のジョブが多発生傾向のジョブであると判定する。この場合,CPU61は,上記の例と同様,トナー付着状態値カウント部Bより印字枚数Nを取得し,取得した印字枚数NがUFP抑制閾値BN1以上か否かを判定する(S403)。印字枚数NがUFP抑制閾値BN1以上である場合には(S403:YES),定着ローラー110のクリーニング(S404)を行った後,印字枚数Nの値を初期化し(S305),今回の印刷ジョブを開始する(S406)。
一方,休止時間tが休止時間閾値At未満である場合(S402:NO)には,上記の例と同様,定着ローラー110のクリーニングなどを行わずに,今回の印刷ジョブを開始する(S406)。休止時間tが休止時間閾値At以上である場合(S402:YES)であっても印字枚数NがUFP抑制閾値BN1未満である場合(S403:NO)についても,定着ローラー110のクリーニングなどを行わずに,今回の印刷ジョブを開始する(S406)。今回の印刷ジョブを行う手順は,図10の例においても上記の例と同様である(S407〜S412)。なお,図10の例では,今回の印刷ジョブを終了する場合には(S412:YES),休止時間tを初期化するとともに,休止時間tのカウントを開始する。そして,図10の例においても,UFPの発生量を抑制することができるとともに,画像形成の生産性の低下および定着ローラー110の寿命の低下を防止することができる。
さらに,本形態の画像形成装置1における,上記の例とは異なる画像形成動作の手順の一例について,図11のフローチャートにより説明する。図11に示す例におけるUFP発生傾向判定部Aは,図7に示す例と同様に,今回のジョブが多発生傾向ジョブか否かの判定を,今回のジョブにおける定着装置100の設定温度により行う。このため,図11の例におけるUFP発生傾向判定部Aについても,今回のジョブの定着装置100の設定温度をCPU61より取得することができる。
しかし,図11の例では,図7の例とは異なり,多発生傾向ジョブの実行前におけるクリーニングを,定着ローラー110のトナーの付着量が多い状況ほど,その除去効果が高いクリーニングにより行う。また,トナー付着状態値カウント部Bは,図11の例においても,トナー付着状態値として印字枚数Nをカウントする。
そして,図11に示すように,UFP発生傾向判定部Aは,画像形成装置1に印刷ジョブの実行指示があると,まず,その今回のジョブにおける定着装置100の設定温度Tを取得する(S501)。そして,取得した温度Tが,温度閾値AT以上か否かを判定する(S502)。
UFP発生傾向判定部Aは,温度Tが温度閾値AT以上である場合(S502:YES),今回のジョブが多発生傾向のジョブであると判定する。この場合,CPU61は,上記の例と同様,トナー付着状態値カウント部Bより印字枚数Nを取得し,取得した印字枚数NがUFP抑制閾値BN1以上か否かを判定する(S503)。印字枚数NがUFP抑制閾値BN1以上である場合には(S503:YES),定着ローラー110を2回転させるUFP抑制クリーニング(S504)を行う。
一方,印字枚数NがUFP抑制閾値BN1未満である場合には(S503:NO),さらに,印刷枚数NがUFP抑制閾値BN3以上か否かを判定する(S507)。UFP抑制閾値BN3は,UFP抑制閾値BN1よりも低い値に予め定められた値である。印刷枚数NがUFP抑制閾値BN3以上である場合には(S507:YES),軽UFP抑制クリーニングを行う(S508)。軽UFP抑制クリーニング(S508)は,定着ローラー110を1回転だけさせることにより行うクリーニングである。
定着ローラー110のクリーニングにおけるトナーの除去効果は,定着ローラー110を回転させた回数が多いほど高いものとなる。つまり,軽UFP抑制クリーニング(S508)は,UFP抑制クリーニング(S504)よりもトナーの除去効果の低いクリーニングである。なお,UFP抑制閾値BN3についても予め実験などを行うことにより取得することができ,例えば,50枚に定めることができる。
そして,UFP抑制クリーニング(S504)および軽UFP抑制クリーニング(S508)のいずれを行った後においても,印字枚数Nの値を初期化し(S505),今回の印刷ジョブを開始する(S506)。
また,温度Tが温度閾値AT未満である場合(S502:NO)には,上記の例と同様,定着ローラー110のクリーニングなどを行わずに,今回の印刷ジョブを開始する(S506)。温度Tが温度閾値AT以上である場合(S502:YES)であっても印字枚数NがUFP抑制閾値BN3未満である場合(S507:NO)についても,定着ローラー110のクリーニングなどを行わずに,今回の印刷ジョブを開始する(S506)。今回の印刷ジョブを行う手順は,図11の例においても上記の例と同様である(S509〜S514)。なお,図11の例において,ステップS509の判定に用いる汚れ防止閾値BN2は,上記のUFP抑制閾値BN1およびUFP抑制閾値BN3のいずれよりも高い値の閾値である。
そして,図11の例では上記のように,多発生傾向ジョブの実行前にUFPを抑制するクリーニングを行う場合には,定着ローラー110のトナーの付着量が多い状況ほど,定着ローラー110が回転する回数が多く,トナーの除去効果の高いクリーニングを行う。定着ローラー110のトナーの付着量がそれほど多くない状況においては,トナーの除去効果の低いクリーニングで十分だからである。また,定着ローラー110が回転する回数が多いほど,そのクリーニングに要する時間は長いものとなる。すなわち,UFPを抑制するクリーニングを行う場合であっても,定着ローラー110のトナーの付着量がそれほど多くない状況においては,これを短時間で完了させることにより,画像形成の生産性の低下を防止することができる。この場合にはさらに,定着ローラー110が受ける負荷を低減させることもできる。よって,図11の例においても,UFPの発生量を抑制することができるとともに,画像形成の生産性の低下および定着ローラー110の寿命の低下を防止することができる。
また,上記の図7から図11の例において,トナー付着状態値カウント部Bは,トナー付着状態値として,画像形成を行った用紙Pの積算枚数である印字枚数Nをカウントするものとして説明している。しかし,前述したように,トナー付着状態値としては,印刷枚数N以外にも,画像形成を行ったカバレッジの積算値,定着装置100にて発生したジャムの積算回数を用いることができる。すなわち,図7から図11に示す例において,トナー付着状態値カウント部Bは,印刷枚数Nに替えて,画像形成を行ったカバレッジの積算値あるいは定着装置100におけるジャムの発生回数をカウントするものであってもよい。また,トナー付着状態値カウント部Bが定着装置100におけるジャムの発生回数をカウントするものである場合,トナー付着状態値カウント部Bには,印刷ジョブの実行中に定着装置100にてジャムが発生したときに,これをカウントさせればよい。
そして,トナー付着状態値カウント部Bに画像形成を行ったカバレッジの積算値をカウントさせる場合には,UFP抑制閾値,汚れ防止閾値をそれぞれ,画像形成を行ったカバレッジの積算値についての閾値とすればよい。また,トナー付着状態値カウント部Bに定着装置100におけるジャムの発生回数をカウントさせる場合には,UFP抑制閾値,汚れ防止閾値をそれぞれ,定着装置100におけるジャムの発生回数についての閾値とすればよい。これらの場合においても,UFP抑制閾値,汚れ防止閾値はいずれも,予め実験を行うことなどにより定めることができる。
また,上記の図7から図11の例においては,多発生傾向のジョブであるか否かの判定を行い,多発生傾向のジョブであると判定された場合に,トナー付着状態値に基づいて定着ローラー110のトナー付着量が多いか否かの判定を行っている。しかし,この順は逆であってもよい。すなわち,トナー付着状態値に基づく定着ローラー110のトナー付着量の判定を行い,トナー付着状態値がUFP抑制閾値以上である場合に,多発生傾向のジョブであるか否かの判定を行うこととしてもよい。
また,UFP発生傾向判定部Aは,今回のジョブにおける定着装置100の設定温度Tおよび合計カバレッジC,今回のジョブの開始時における定着装置100の残り寿命Lおよび休止時間tの条件のうちの2以上に基づいて,今回のジョブが多発生傾向ジョブか否かの判定を行うものであってもよい。すなわち,例えば,これら条件のうちの少なくとも1つが,その条件についての閾値以上である場合には,今回のジョブが多発生傾向のジョブであると判定することができる。
また,トナー付着状態値カウント部Bは,画像形成を行った用紙Pの積算枚数,画像形成を行ったカバレッジの積算値,定着装置100にて発生したジャムの積算回数のうちの2以上をトナー付着状態値としてカウントすることもできる。そして,例えば,カウントした複数のトナー付着状態値のうちの少なくとも1つが,そのトナー付着状態値についての閾値以上である場合に,定着ローラー110のクリーニングを行うこととすればよい。またこの場合には,定着ローラー110のクリーニング後,カウントしているすべてのトナー付着状態値を初期化すればよい。
以上詳細に説明したように,本形態の画像形成装置1は,今回のジョブの実行前に,今回のジョブが,UFPの発生量の多い条件の多発生傾向ジョブか否かを判定するUFP発生傾向判定部Aを有する。そして,今回のジョブが多発生傾向ジョブであり,かつ,トナー付着状態値がUFP抑制閾値以上である場合には,そのジョブの実行前に,定着装置100のクリーニングを行う。これにより,実行されるジョブにおけるUFPの発生量を低減させることができる。一方,今回のジョブが多発生傾向ジョブではない場合,または,トナー付着状態値がUFP抑制閾値未満である場合には,定着装置100のクリーニングを行うことなく,ジョブを実行する。これにより,画像形成の生産性および定着装置100の寿命を低下させるおそれのあるクリーニングの頻度を,最小限にすることができる。よって,UFPの発生量が抑制されているとともに,画像形成の生産性および定着装置の寿命の低下が防止されている画像形成装置が実現されている。
なお,本実施の形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。従って本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。例えば,本発明はカラープリンターに限らず,例えば,公衆回線経由で印刷ジョブの送受信を行うような画像形成装置にも適用可能である。また例えば,定着ローラー110のクリーニングは定着クリーナー140の構成によるものに限られず,例えば,定着ローラー110の表面にこれをクリーニングするローラーを圧接させるものであってもよい。また例えば,定着ローラー110のクリーニングは,クリーニングシートを用いるものであってもよい。つまり,クリーニングシートを収容するクリーニング部よりこれを定着ニップN2に通過させ,その通過するクリーニングシートによって定着ローラー110のトナーを回収するものであってもよい。
また例えば,定着装置の加熱構成は,定着ローラー110の内部にヒーター130を備える構成のものに限らず,電磁誘導加熱方式のものであってもよい。また例えば,定着装置の加熱構成は,定着ローラー110ではなく,加圧ローラー120が有していてもよい。さらには,定着ローラー110と加圧ローラー120とがいずれも,加熱構成を有していてもよい。