前面衝突時の折れ変形性能の向上を図りつつ、特に歩行者等の上方からの衝突物衝突時の緩衝促進と走行時の剛性維持を図るという相反する要求を両立して満足するという目的を、ボンネットアウタパネルとボンネットインナパネルを有するボンネットの後部が車体にヒンジを介して軸支され、その前部に車体側と係合するストライカが設けられた自動車のボンネット構造であって、上記ボンネットインナパネルに、中央***部と後側***部が車両前後方向に並んで設けられ、その間に深絞り溝が車幅方向に延設され、当該3つの部位の前と左右の周囲を囲うコ字状で、上記深絞り溝よりも深い枠状溝が設けられ、上記中央***部の前傾面と上記ボンネットインナパネルの前端部との間に、ストライカ取付部から上方に離間して、スティフナが架設されるという構成にて実現した。
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図面は自動車のボンネット構造を示し、図1はエンジンルームの上方を開閉可能に覆うボンネットを備えた自動車の前部斜視図である。
図2はボンネットアウタパネルを取外した状態で自動車のボンネット構造を示す斜視図、図3は図2に示す自動車のボンネット構造の側面図、図4はボンネット構造を車幅方向中央部で縦断した状態にて示す断面図、図5の(a)は図4のボンネット前部の拡大断面図、図5の(b)は図4のボンネット後部の拡大断面図、図6はボンネットインナパネルの平面図、図7はボンネットインナパネルに対するヒンジレインフォースメントの取付け構造を示す側面図、図8は図6の状態からスティフナを取外した状態で示すボンネットインナパネルの前部拡大平面図、図9は図8に示す自動車のボンネット構造の斜視図である。
図10は図6におけるスティフナ、及びその周辺部分の拡大図であり、図11は図2における中央***部31の前側コーナー部、及びその周辺部分の拡大図である。図12の(a)〜(d)は車両前突時におけるボンネットの変形状態を順に示す概略側面図であり、図13は衝突時にボンネットに加わる荷重の時間変化を示すグラフである。
なお、図12において、αは通常時(前突前)のストライカ71の位置を示し、また、図中、矢印Fは車両前方を示し、矢印Rは車両後方を示す。
図1に示すように、本実施形態の自動車の前部上面には、エンジンルーム100を覆うボンネット10(フード)を備えている。
ボンネット10は、エンジンルーム100を開閉するようにその後部が車体にボンネットヒンジ20を介して軸支され、ボンネット10の外面を形成し、鉄板製のボンネットアウタパネル25(以下、「アウタパネル25」という。)と、アウタパネル25よりも内面側に配置され、アルミ二ウム、またはアルミ合金性のボンネットインナパネル26(以下、「インナパネル26」という。)を有する。アウタパネル25とインナパネル26とは互いの間に隙間を有して対向し、アウタパネル25の外周縁部をインナパネル26の外周縁部側に折り返すヘミング加工によってインナパネル26の外周縁部をアウタパネル25の外周縁部により挟み込むようにして一体に形成している。
アウタパネル25を取り外した状態のインナパネル26を平面視した図2、及び図6に示すように、上記インナパネル26の外周縁部には、前辺部26F、左右の側辺部26L,26R、及び後辺部26Bを有している。さらに、上記インナパネル26の外周縁部には、前辺部26Fと左右の側辺部26L,26Rによって平面視内側(中央側)よりも厚みが薄く、且つ平面視した状態で後方が開放されたコの字状の外側枠部3を形成している。
外側枠部3には、該外側枠部3に沿って連続する凹溝形状であるとともに、平面視で後方が開放されたコの字状の枠状溝30が形成されている。
枠状溝30は、前辺部26Fに沿って凹状に形成された車両前後方向に延びる横溝27と、右側辺部26Rに沿って凹状に形成された車両前後方向に延びる側溝29と、左側辺部26Lに沿って凹状に形成された車両前後方向に延びる側溝28とで溝形成方向に沿って連続して形成している。
また、図2、図3、図4、及び図6に示すように、インナパネル26における外側枠部3の内側に、該外側枠部3よりも中央部が上方に***した中央***部31と、該中央***部31よりも後側に有し、インナパネル26の後辺部26Bに沿った後側***部32が車両前後方向に並んで設けられている。
上記インナパネル26における中央***部31と後側***部32との間には、補強部としての凹溝形状の深絞り溝33が車幅方向に形成されている。
中央***部31、後側***部32、及び深絞り溝33は、平面視コ字状に外側枠部3、すなわち、車幅方向両側の側溝28,29、及び横溝27によって3方から囲繞するように設けている(図2、及び図6参照)。
ここで、上述の後側***部32は、図5の(b)、図7に示すように、前低後高状に傾斜する前壁32aと、側壁32bとを有すると共に、該後側***部32の上面前縁には、ボンネット10後端から前方に離間して車幅方向に延びて、アウタパネル25を支持する凸部32cが設けられており、この凸部32cにより上述の深絞り溝33の溝深さを更に深く形成するとともに、後側***部32の後縁に凸部を設ける構造に対して、ヒンジ支持剛性の向上およびアウタパネル25後部の張り剛性向上を図るように構成している。
また、上述の凸部32cの形状により、図5の(b)に示すように、車幅方向に延びる少なくとも1つの稜線X1を形成している。
上述の深絞り溝33は、複数回のプレス加工により深さの深い凹溝形状に形成されたものである。
上述の深絞り溝33は、図4,図5の(b)に示すように、中央***部31側に形成した深絞り主溝33bと、該深絞り主溝33bの底面よりも中央***部31側に一段深く形成した深絞り副溝33aが形成されており、この深絞り副溝33aの形成により、該深絞り副溝33aに沿う複数の稜線X2,X3,X4が形成されている。
図2,図6に示すように、上述の深絞り溝33は、平面視でその車幅方向中央部が車両前方に突出するように湾曲しており、湾曲中央部33cが、深絞り溝33の車幅方向両外側に備えた後述するヒンジレインフォースメント40の前端よりも車両前方に位置している。
上述の深絞り溝33の湾曲構造により、ヒンジレインフォースメント40前端よりも前方部位までヒンジ支持剛性の向上を図り、さらに、該湾曲構造により、深絞り溝33の口開き変形に対する剛性向上を図るように構成したものである。
前述の中央***部31は、衝突物との衝突時に衝撃エネルギを吸収するものであり、図2に示すように、中央***部31の上面31uは凹凸形状(ラダー状構造)に形成している。
すなわち、該中央***部31は、図2,図3,図4、及び図6に示すように、上部前側に位置して車幅方向に延びる凸部31aと、この凸部31aの後方において車幅方向に延びる凸部31bと、この凸部31bのさらに後方において車幅方向に延びる凸部31cと、中央***部31の上部後側に位置して車幅方向に延びる凸部31dと、上記各凸部31a,31b間、凸部31b,31c間、凸部31c,31d間において車幅方向の延びる凹部31e,31f,31gと、を有して、中央***部31の上面31uを下側部分と比較して慣性質量を有するとともに高い剛性で構成している。
図6,図8,図9に示すように、中央***部31の凹部31e、凹部31gには、軽量化用の開口部46…が複数開口形成されている。
加えて、図6に示すように、上述の中央***部31の各凸部31a,31b,31c,31dと、後側***部32の凸部32cとにおけるトップデッキ面には、インナパネル26をアウタパネル25に対して接着固定する充填剤47(図6において小径の白抜き丸印にて示す)が設けられるものである。
なお、図示の便宜上、図2,図3,図7〜図9においては充填剤47の図示を省略している。
上述の中央***部31は、図2,図6に示すように、上記インナパネル26の前辺部26Fから前低後高状に傾斜しながら凸部31aまで立ち上がる傾斜前面31hと、凸部31dから斜め後方下方に延びる傾斜後面31iと、中央***部31の上部左右から斜め下方外方に延びる左右の各傾斜側面31j,31kと、を備えている。
また、図3,図4及び図5(a)に示すように、インナパネル26の車幅方向中央部の前部(前辺部26F)には、ボンネット10を閉じた状態において、車体側に設けたラッチ(図示省略)に係合することによりロックされるストライカ71が下方に突出した状態で設けられている。
図4,図5(a)及び図8に示すように、インナパネル26の車幅方向中央部の前部(前辺部26F)には、ストライカ取付部72が設けられ、ストライカ取付部72において、インナパネル26の前部に上方側から補強部材としてのストライカレインフォースメント50を介在させた状態で、ウェルドナット73が溶着された取付板74(リテーナ)を配置している。
さらに、ストライカ取付部72において、取付板74は、ストライカレインフォースメント50にリベット接合するとともに、ストライカ71の基部、インナパネル26の前部、ストライカレインフォースメント50のそれぞれを貫通する貫通孔75が形成され(図5(a)参照)、該貫通孔75に下側から挿通したボルト76をウェルドナット73に螺合することで一体に締結している。
なお、図8中の符号77は、取付板74とストライカレインフォースメント50とのリベット接合に用いるリベットを示している。
図4、及び図5(a)に示すように、ストライカレインフォースメント50は、インナパネル26の前部に上側から配置されているが、ストライカレインフォースメント50のさらに上方には、該ストライカレインフォースメント50と離間させて後述するスティフナ60を配置している。
ストライカレインフォースメント50は、このスティフナ60に対して、中央***部31の後部の***高さ(H1(図3、及び図7参照))以上の間隔を隔てた下方に離間して配置している。
図4、及び図5(a)に示すように、ストライカレインフォースメント50は、インナパネル26の前部(前辺部26F)に備えたストライカ取付部72から、横溝27の段差27aを跨いで中央***部31の傾斜前面31hの下部に架け渡されている。
すなわち、上記ストライカのストライカレインフォースメント50は、上記中央***部31の前部において横溝27の段差27aの溝幅方向の両側に架け渡されている。
これにより、ストライカレインフォースメント50と、これに対向するインナパネル26における対向部分との間に閉断面空間Sを構成している(図5(a)参照)。
図4、及び図5(a)に示すように、上記スティフナ60は、衝突に対するボンネット10先端部の変形抵抗力を補う板状の補強部材であり、中央***部31の傾斜前面31hとインナパネル26の前端部との間において、上述したようにストライカ取付部72、及びストライカレインフォースメント50から上方に離間して架設されている。
そして、上述の深絞り溝33と枠状溝30とスティフナ60とにより、通常時のボンネット10剛性を確保しつつ、中央***部31と後側***部32とスティフナ60とにより、全体的に慣性質量をボンネット10上部に集中させつつ、上下方向のクラッシュストロークを大きくし、衝突時にボンネット10が示す荷重特性をあらわす図13に示すように、衝突物緩衝時の反力を初期に高く、後期に低く持続する反力特性を確保するように構成している。
図2,図6及び図10に示すように、上述のスティフナ60には、後述するが、上下複数の開口61,62が形成されており、上側の開口61と下側の開口62との間には上下方向に湾曲して車幅方向に延びる横ビード63が形成されており、該横ビード63の左右両部には、車幅方向外方に湾曲して前後方向に延びる縦ビード64,64が形成されており、これら補強ビード63,64それ自体が折れ起点となって衝突物の緩衝ストロークが低減することを防止すべく構成している。
図2、及び図6に示すように、上記スティフナ60は、車幅方向の中央部に位置し、平面視略矩形の略平板状の鋼材製であり、図5(a)に示すように、ストライカレインフォースメント50に対して車両上方に所定間隔を隔てて対向するとともに、アウタパネル25の下面と対面する位置に配置されている。
このようなスティフナ60の平板状の部分は、図2,図6及び図10に示すように前後両端から下方に向けて複数の脚部67(67F,67R)が延設された本体部65と、該本体部65の幅方向両側から車幅方向に片持ち状に延びる延設部66とで一体に構成されている。
さらに、図2,図3,図4,図5(a)及び図6に示すように、スティフナ60は、本体部65の後端部に、3本の後方脚部67Rを形成するとともに、本体部65の前端部に、2本の前方脚部67Fを形成している。
後方脚部67Rは、本体部65の幅方向の中央部と本体部65の幅方向の両側部にそれぞれ配設し(図2,図6及び図10参照)、いずれも本体部65の後端から下方、且つ後方に延設され、先端は、傾斜前面31hの上部の接合箇所にボルト締結により接合可能にフランジ状に形成している(図4,図5(a)参照)。
前方脚部67Fは、スティフナ60の車幅方向において3つの後方脚部67Rと互い違いになる位置に配設し(図2,図6及び図10参照)、いずれも本体部65の前端から下方に延設され、先端は、インナパネル26の前辺部26Fの接合箇所にボルト締結により接合可能にフランジ状に形成している(図4,図5(a)参照)。
図2,図3,図4,図5(a)及び図6に示すように、傾斜前面31hの上部における、後方脚部67Rとの接合箇所は、周辺部分に対してドーム状に***したスティフナ***状接合部35を形成している。
3つのスティフナ***状接合部35は、図2,図6及び図10に示すように、傾斜前面31hの上部においてそれぞれ同じ高さで車幅方向に所定間隔を隔てた箇所に設けている。
また、このスティフナ60には、図10に示すように、外周縁よりも平面視内側において、外周縁に沿うような略環状の環状溝ビード68を形成している。なお、この環状溝ビード68は、車両前後方向に沿った縦断面形状が、車両下方に向けて略半円状に突出した断面形状となるように形成している。
そして、平面視において、スティフナ60における環状溝ビード68の内側には、車幅方向略中央において、車両前方側に2つの前方開口孔62,62と、2つの前方開口孔62,62の後方に1つの後方開口孔61を開口形成している(図10参照)。
さらに、スティフナ60には、前方開口孔62と後方開口孔61との間において車幅方向に延びる横ビード63と、横ビード63の車幅方向両端近傍において車両前後方向に延びる2つの縦ビード64とを形成している(図10参照)。
加えて、縦ビード64よりも車幅方向外側の部分は、3つの平面視略三角形状の三角開口孔によって、平面視トラス形状に形成している。より詳しくは、車両前方側に頂点が位置する第1三角開口孔165を、縦ビード64の車幅方向外側に隣接して開口形成している(図10参照)。
さらに、第1三角開口孔165から車幅方向外側に所定間隔を隔てた位置に第1三角開口孔165より大きく、かつ車両後方側に頂点が位置する第2三角開口孔166を開口形成し、第2三角開口孔166から車幅方向外側に所定間隔を隔てた位置に第1三角開口孔165より小さく、かつ車両前方側に頂点が位置する第3三角開口孔167を開口形成している(図10参照)。
これら第1三角開口孔165、第2三角開口孔166、及び第3三角開口孔167によって、スティフナ60における縦ビード64よりも車幅方向外側部分を、平面視トラス形状に形成している。
前方開口孔62、及び後方開口孔61は、ストライカ連結部材(ストライカレインフォースメント50、及び取付板74)のスポット溶接箇所SP1,SP2,SP3(図8参照)に対して、溶接機の先端が挿入可能な大きさに形成している。
より詳しくは、前方開口孔62は、図10に示すように、車両前後方向に長い平面視略矩形に開口形成している。この前方開口孔62は、インナパネル26にスティフナ60を接合した状態において、ストライカレインフォースメント50における前側部分が露出する車両前後方向の長さで開口形成している(図8参照)。
さらに、前方開口孔62は、車幅方向外側の縁端が、ストライカレインフォースメント50における車幅方向の縁端よりも内側に位置するようにして、車幅方向に所定間隔を隔てて2つ開口形成している。
後方開口孔61は、図10に示すように、車幅方向に長い平面視長楕円形状における車両前方側の縁端を、車両前方へ突出するように湾曲させた形状で開口形成している。この後方開口孔61は、ストライカレインフォースメント50における車幅方向の長さより僅かに長い車幅方向の長さで、かつ平面視においてストライカレインフォースメント50の後側部分が露出する位置に開口形成している。
なお、上述した前方開口孔62、後方開口孔61、第1三角開口孔165、第2三角開口孔166、及び第3三角開口孔167は、バーリング加工によって開口したのち、フランジ状に折り曲げた縁端によって形成している。
横ビード63は、図10に示すように、平面視において後方開口孔61における車幅方向の長さよりも車幅方向の長さが長く、かつ車幅方向中央が車両後方へ向けて突出するように湾曲した形状に形成している。なお、この横ビード63は、図2に示すように、車両前後方向に沿った縦断面が、車両下方に向けて略半円状に突出した縦断面形状となるように形成している。
縦ビード64は、図10に示すように、平面視において前方開口孔62の前端近傍から、後方開口孔61の略中央近傍に至る車両前後方向の長さで、車幅方向外側に向けて突出するように湾曲した形状に形成している。
この縦ビード64は、車幅方向外側に湾曲した頂部近傍が、横ビード63における車幅方向の端部に近接するように配設している。なお、縦ビード64は、横ビード63と同様に、車幅方向に沿った縦断面形状が、車両下方に向けて略半円状に突出した縦断面形状となるように形成している。
なお、図10中の符号47bはアウタパネル25とスティフナ60との間に介在する発泡ウレタンの充填剤である。
また、図2,図6,図8,図9及び図11に示すように、中央***部31の傾斜前面31hには、第1開口部43と第2開口部45との2種類の開口部が設けられている。
第1開口部43は、傾斜前面31hの車幅方向の両側のコーナー部31fc、すなわち中央***部31の前側コーナー部31fcにおいて、該中央***部31の傾斜前面31hと傾斜側面31j、31kとを分断するように上下方向に長いスリット状に形成している。
第1開口部43の内部には、柱状部44が設けられ、該柱状部44は、スリット状の第1開口部43の幅方向の間に位置する。
詳述すると、図2,図3,図6,図8,図9及び図11に示すように、柱状部44は、縦長のスリット状の第1開口部43の幅方向の間に備え、該第1開口部43を幅方向の傾斜前面31h側で開口する第1開口前側部43Fと傾斜側面31j、31k側で開口する第1開口後側部43Rとに分断し、第1開口前側部43Fと第1開口後側部43Rとに挟まれるように形成している。
このように中央***部31の第1開口部43の上下両端に柱状に架設された柱状部44には、上下方向に沿って肉厚となるビード44aを形成している。
また、図2,図4,図5(a),図6,図8〜図11に示すように、上述した枠状溝30における横溝27には、中央***部31の前側コーナー部31fcにおける、横溝27と側溝28,29との境界部分(溝合流箇所)も含めて、横溝本体27bと、該横溝本体27bよりも溝幅方向の内側(インナパネル26の中央側)に有し、横溝本体27b底面に対して高さが異なる段状とした段差27aとで形成している。
段差27aは、車幅方向に沿って延びるその略全長を横溝本体27bよりも一段深い凹溝状の段差として形成している(図4,図5(a)参照)。
ところで、インナパネル26の前部の幅方向の中央に対して車両右側部分は、下方にエンジンの吸気孔等の部品(図示省略)が配設されているため、図3,図8及び図9に示すように、上方に膨出した膨出部36が形成されており、段差27aは、膨出部36を通過するように形成している。よって、段差27aは、インナパネル26の膨出部36に相当する箇所においては横溝本体27bよりも一段高い凸状の段差として形成している。
図2,図4,図5(a),図6,図8〜図11に示すように、段差27aは、横溝27を段状(凹溝状、或いは凸状)に形成することによって、該段差27aの幅方向内側の稜線としての段差内側稜線X7と、該段差27aの幅方向外側の稜線としての段差外側稜線X8とが形成されている。
同図に示すように、横溝本体27bには、前辺部26Fを凹溝状に形成することによって、該横溝本体27bの溝幅方向内側の稜線としての横溝本体内側稜線X9と、該横溝本体27bの溝幅方向外側の稜線としての横溝本体外側稜線X10とが形成されている。
そして、図2,図6,図8,図9,図11に示すように、枠状溝30における側溝28,29は、インナパネル26の車幅方向両側の側辺部26L,26Rを凹溝状に形成することによって、該側溝28,29の車幅方向内側の稜線としての側溝内側稜線X11と、該側溝28,29の車幅方向外側の稜線としての側溝外側稜線X12とが形成されている。
図8,図9,図11に示すように、横溝本体外側稜線X10と側溝外側稜線X12とは、中央***部31の前側コーナー部31fcにおいて連続して繋がり、平面視コ字状の枠状溝30の全体において途切れることのない連続した枠状溝30の外側稜線を形成している。
同図に示すように、横溝本体内側稜線X9と側溝内側稜線X11とは、中央***部31の前側コーナー部31fcにおいて繋がり、膨出部36に相当する箇所に関わらず、平面視コ字状の枠状溝30の全体において途切れることのない連続した枠状溝30の内側稜線を形成している。
一方、段差内側稜線X7、及び中央***部31の下部に形成された下側稜線X6は、図2,図6,図8,図9及び図11に示すように、中央***部31の前側コーナー部31fcにおいて、第1開口部43によって寸断されている。
詳しくは、インナパネル26の前部を拡大してあらわした図8,図9及び図11に示すように、上述の中央***部31の上部と下部とには、略環状の上側稜線X5、下側稜線X6が形成されており、第1開口部43は、上述した稜線X5〜X10のうち、段差内側稜線X7に加えて上側稜線X5、及び下側稜線X6を分断する。
具体的に、中央***部31の前側コーナー部31fcにおいて、下側稜線X6と、該下側稜線X6よりも前方に位置し、段差27aの内側に形成された段差内側稜線X7は、第1開口部43の下端部によって分断されるが、さらに前方で形成した段差外側稜線X8、横溝本体内側稜線X9、及び横溝本体外側稜線X10については、第1開口部43の下端部によって分断されない長さで形成している(図9及び図11参照)。
これにより、上述したように、第1開口部43によって分断されない横溝本体内側稜線X9は、外側枠部3において側溝内側稜線X11と連続して形成するとともに、横溝本体外側稜線X10は、外側枠部3において側溝外側稜線X12と連続して形成している。
また、図2,図3,図6,図8,図9,図10及び図11に示すように、第2開口部45は、車幅方向に長い横長形状に形成し、傾斜前面31hにおける第1開口部43とスティフナ接合部としてのスティフナ***状接合部35の間に、上側稜線X5から下方に離間して設けられている。
具体的には、図2,図3,図6,図8,図9,図10及び図11に示すように、第2開口部45は、傾斜前面31hにおけるスティフナ***状接合部35の配置位置と同じ高さに形成され、第2開口部45とスティフナ***状接合部35は、車幅方向に1列に並設されている(特に図11中のラインL1参照)。
ところで、図2、図3、及び図4に示すように、ボンネット10は、該ボンネット10の後部下側に配置されたカウルサイドパネル190の上端折り曲げ部190aにボンネットヒンジ20を介して開閉可能に取り付けられている。
図2、及び図3に示すように、上記カウルサイドパネル190は、ダッシュロアパネル120を上方から覆うように配設したカウル部200の一部として車幅方向両側に配設され、エプロンレインフォースメント(図示省略)の付け根部に位置している。
なお、図3中の符号48はカウルシールであり、図4,図5(b)中の符号130はカウルパネルであり、符号140はカウルフロントパネルであり、符号150はカウルフロントレインフォースメントであり、符号170はカウルグリルであり、符号180はカウルグリルフロントである。
上述のボンネットヒンジ20は、図7にも示すように、カウルサイドパネル190の上端折曲げ部190aにボルト、ナットなどの取付け部材21を用いて固定されるボディ側ヒンジブラケット22と、このボディ側ヒンジブラケット22にヒンジピン23を介して連結されるボンネット側ヒンジブラケット24とを備えており、このボンネット側ヒンジブラケット24が上述のボンネット10の後端部左右両サイド下面に連結固定されている。
また、図2,図6,図7に示すように、後側***部32の側壁32bの側方から深絞り溝33の側方を通って上述の中央***部31の後端にかけて左右のヒンジレインフォースメント40,40が取付けられている。
図6,図7に示すように、このヒンジレインフォースメント40は正面視で凹形状に形成されており、図7に示すように、該ヒンジレインフォースメント40の前後両部はリベット41,41を用いて、インナパネル26に結合されると共に、ヒンジレインフォースメント40の前後方向中間部はボルト、ナットなどの取付け部材42,42を用いて、インナパネル26および、ボンネット側ヒンジブラケット24に共締め固定されている。
このように、ヒンジレインフォースメント40を、後側***部32の側方から深絞り33溝の側方を通って中央***部31の後端まで延ばすことにより、左右のヒンジレインフォースメント40,40間に車幅方向に架け渡される深絞り溝33で、ボンネット10の車幅方向中央部位の上下曲げ剛性を高めることができると共に、ヒンジレインフォースメント40により深絞り溝33の口開き変形やボンネット10後部の上下曲げ変形を防止すべくその剛性向上を図るように構成している。
すなわち、中央***部31を有するボンネット10において、ボンネット10後部のヒンジ支持剛性を高め、走行振動や走行風の風圧などに起因するボンネット10の撓みや振動の発生を防止するように構成したものである。
ところで、図3,図6に示すように、インナパネル26のロック部を構成するストライカレインフォースメント50と上述のヒンジレインフォースメント40との間の部位には、車両前突時にボンネット10の上方への屈曲を促進する山折れ起点52が設けられている。
この実施例では、上述の山折れ起点52は、インナパネル26の下面、詳しくは側溝28,29の底壁部から上方に窪んだ窪形状部53と、この窪形状部53から上方に延びる第1の縦壁としての中央***部31の傾斜側面31j,31kとで形成されている。
上述の山折れ起点52,52を設けることで、図6に示すように、左右の山折れ起点52,52を車幅方向に結ぶ山折れラインL3が形成されている。
上述の山折れ起点52,52よりも後方の部位に、図3,図6に示すように、車幅方向に延びて車両前後方向の耐力以上の入力荷重で下向きに変形する補強部としての深絞り溝33と、ヒンジレインフォースメント40前端とが車幅方向に並んで設けられている。
上述の深絞り溝33とヒンジレインフォースメント40の前端とは、何れも剛性変化点として作用し、これら深絞り溝33とヒンジレインフォースメント40前端とが車幅方向に並ぶことで、通常時のボンネット10後部の曲げ剛性およびヒンジ支持剛性の向上を図るように構成している。
また、剛性変化点としての深絞り溝33とヒンジレインフォースメント40前端とが車幅方向に並ぶことにより、前突時に当該剛性変化点に応力が集中して、深絞り溝33およびヒンジレインフォースメント40前端が下向きに変形(下折れ、谷折れ)し、ボンネットヒンジ20を車体に押付ける曲げモードにして、下折れ変形を促進すると共に、荷重分散を図るように構成している。
つまり、ボンネット10のヒンジ支持剛性の確保と、車両前突時におけるボンネット10後部の後退防止とを両立するように構成したものである。
図2,図3,図7に示すように、補強部としての深絞り溝33は凹溝により形成されており、図7に示す如く、上述のヒンジレインフォースメント40の前端が該深絞り溝33(つまり凹溝)前縁まで車両前方に延びている。
そして、ヒンジレインフォースメント40によって上記凹溝(深絞り溝33)の口開き変形に対する補強を図って、軽量高剛性化を図ると共に、車両前突時には上記深絞り溝33が強力に下折れ変形を促進し、ボンネットヒンジ20が車体に押付けられることで、前突荷重の分散を図るように構成している。
図6,図7に示すように、上述のヒンジレインフォースメント40の前端は、中央***部31の傾斜後面31iの下縁よりも前方で、傾斜後面31iの上縁と同等乃至後方の側方に位置するように設けられている。
これにより、中央***部31の下縁部を、上述のヒンジレインフォースメント40で補強して、軽量高剛性化を図ると共に、ヒンジレインフォースメント40の前端位置で通常時の剛性をコントロールし得るように構成している。
図3,図6に示すように、補強部としての深絞り溝33に対して、ヒンジレインフォースメント40よりも上方に前突荷重伝達経路Z(具体的には中央***部31の上面31uと傾斜側面31j,31k)が車両前後方向に延設されている。
これにより、前突荷重伝達経路Z(中央***部31の上面31uと傾斜側面31j,31k)がヒンジレインフォースメント40よりも上方に存在することで、衝突初期に荷重を確実に後方へ伝達すると共に、ヒンジレインフォースメント40と前突荷重伝達経路Zとの間の上下方向のオフセット量の確保により、下折れ変形をより一層確実に促進するように構成している。
上述の前突荷重伝達経路Z(中央***部31の上面31uと傾斜側面31j,31k)の後方において、深絞り溝33と、ヒンジレインフォースメント40前端とを車幅方向に並んで設けることにより、図6に示すように、当該左右のヒンジレインフォースメント40,40前端を車幅方向に結ぶ谷折れラインL4が形成されている。
図6に示すように、上述の補強部としての深絞り溝33は、インナパネル26上面から下方に窪んだ凹形状部と、該凹形状部から下方に延びる第2の縦壁33w(詳しくは、図6に示す深絞り溝33の溝底部と左右の側溝28,29との間の縦壁)とで形成されており、この第2の縦壁33wにより通常時の剛性確保を図るように構成している。
さらに、図3に示すように、上述の窪形状部53と、第1の縦壁である中央***部31の傾斜側面31j,31kとから成る山折れ起点52を設け、この山折れ起点52の後方部位に、上述の凹形状部と第2の縦壁33wとで形成された深絞り溝33を設けることにより、山折れ起点52と補強部(深絞り溝33)とで変形による荷重吸収量の増大を図り、またヒンジレインフォースメント40に付勢される前突荷重を、下向きに折れ変形する当該ヒンジレインフォースメント40から車体に荷重分散させて、ボンネット10後部の後退を抑制するように構成したものである。
ところで、図6に平面図で示すように、上述のインナパネル26には、上述の山折れラインL3、谷折れラインL4に加えて、中央***部31の傾斜前面31hにおいて第2開口部45、後方脚部67R、及び第1開口前側部43Fを車幅方向に結ぶ谷折れラインL1(衝突物との衝突時に谷折れ変形するライン)と、中央***部31の前側コーナー部31fcに形成された左右の柱状部44,44をその下部から上部に結んだ後に、柱状部44,44上部相互間を、凸部31a後面に沿って車幅方向に結ぶプリ山折れラインL2(前置山折れ起点部)と、が形成されている。
図12の(a)〜(d)は車両前突時におけるボンネット10の変形状態を順に示す概略側面図である。
図12の(a)に示すように、車両前突時には、まずプリ山折れラインL2(前置山折れ起点部)に応力が集中すると共に、前突荷重伝達経路(中央***部31の上面31uと傾斜側面31j,31k)を介して、後方に荷重が伝達される。
次に、図12の(b)に示すように、プリ山折れラインL2が曲がり、ボンネット10が山折れ変形すると共に、上述の前突荷重伝達経路から後方に伝達される荷重により、剛性変化点(深絞り溝33とヒンジレインフォースメント40の前端)に応力が集中して、深絞り溝33が谷折れ変形を開始する。
次に、図12の(c)に示すように、深絞り溝33の谷折れ変形の進行により、ボンネットヒンジ20のボンネット側ヒンジブラケット24が車体に緩衝して、応力を分散する一方で、ボンネット側ヒンジブラケット24と車体との干渉により行き場を失った応力が山折れ起点52に集中する。
次に、図12の(d)に示すように、上述の山折れ起点52により中央***部31が山折れ変形して、荷重を吸収することで、前突荷重のボンネット10後方への伝達量を低減させると共に、深絞り溝33がさらに谷折れ変形することで、前突荷重のボンネット10後方への伝達量をより一層減少させるので、ヒンジピン23への後退荷重が減少して、ボンネット10後部の車両後方への移動を防止する。このため、ボンネット10はヒンジピン23の前方において三つ折り状態に変形する。
以上詳述したように、上記実施例の自動車のボンネット構造は、アウタパネル25とインナパネル26を有するボンネット10の後部が車体400にヒンジとしてのボンネットヒンジ20を介して軸支され、その前部に車体400側と係合するロック部としてのストライカ71が設けられた自動車のボンネット構造であって、インナパネル26に、中央***部31と後側***部32が車両前後方向に並んで設けられ、その間に深絞り溝33が車幅方向に延設され、当該3つの部位31,32,33の前と左右の周囲を囲うコ字状で、深絞り溝33よりも深い枠状溝30が設けられ、中央***部31の傾斜前面31hとインナパネル26の前辺部26F(前端部)との間に、ストライカ取付部72から上方に離間して、スティフナ60が架設されたものである(図3,図4,図5(a),図10参照)。
上記構成によれば、両***部(中央***部31、及び後側***部32)と両溝(深絞り溝33、及び枠状溝30)とスティフナ60により、走行時のボンネット10の剛性を確保しつつ、両***部31,32とスティフナ60により、全体的に慣性質量をボンネット10上部に集中させた慣性質量部Mを構成しつつ(図3参照)、クラッシュストロークを長くとり、図13に示すように、衝突時荷重に対して初期tAに高く後期tBに低く持続する反力特性を達成できる。
この発明の一実施形態においては、ストライカ71のストライカレインフォースメント50が、中央***部31の後部の***高さH(図3、及び図7)以上にスティフナ60から下方に離間して、横溝27の段差27aに対して前方から後方へ架け渡されたものである(図3,図4,図5(a)参照)。
上記構成により、中央***部31の荷重変形ストローク(クラッシュストローク)確保と、***部(中央***部31、及び後側***部32)外周に有する枠状溝30前部(横溝27)の剛性(すなわち、枠剛性)の向上とを両立することができる。
詳述すると、ストライカ71のストライカレインフォースメント50が、中央***部31の後部の***高さH以上にスティフナ60から下方に離間して配置する構成としたため、歩行者等が衝突時にストライカ71のストライカレインフォースメント50にスティフナ60が干渉して中央***部31の荷重変形が阻害されることがなく、ストライカレインフォースメント50を有するような硬い所に対してもしっかりと中央***部31の荷重変形ストロークを確保することができる。
すなわち、ストライカ71のストライカレインフォースメント50は、横溝27の段差27aを跨ぐように架け渡すことで、該ストライカレインフォースメント50と、インナパネル26の前部の間に側面視閉断面構造S(図4参照)が構成されるようにインナパネル26の前部の剛性を補強することができる。
従って、中央***部31の荷重変形ストローク(クラッシュストローク)を確保することにより歩行者の衝突安全性が向上するとともに、インナパネル26の前部の剛性向上により通常走行時の剛性を維持することができ、双方の要求を両立して満足することができる。
またこの発明の一実施形態においては、中央***部31の前側コーナー部31fcに、中央***部31の上下稜線としての中央***部31の上側稜線X5、及び中央***部31の下側稜線X6を寸断する一対のスリットとしての第1開口部43(第1開口前側部43F、第1開口後側部43R)と、該第1開口部43に挟まれた柱状部44が設けられたものである(図2,図3,図6,図8,図9及び図11参照)。
上記構成によれば、歩行者等上方からの衝突物衝突時に中央***部31の前側コーナー部31fcによる変形抵抗増大を防ぐ一方、通常走行時の剛性を維持し、衝突物衝突時における初期の反力を向上してエンジンルーム100内の部品や前輪のスタートタワー等の剛性の高い部品との干渉(いわゆる底付き)を防ぐことができる。
詳述すると、中央***部31の上面31uを、中央***部31の周方向に連続する前側コーナー部31fcや傾斜面31h,31i31j,31k(壁面)によって支持する構成の場合、歩行者等上方からの衝突物衝突時に中央***部31の変形抵抗が大きすぎる一方で、中央***部31の上面31uを、中央***部31の前側コーナー部31fcを除いて傾斜面31h,31i31j,31k(壁面)だけで安定して支持することが困難である。
これに対して、本実施例では、中央***部31の前側コーナー部31fcに、中央***部31の上下稜線X5,X6を寸断する第1開口部43(一対のスリット)と、該第1開口部43に挟まれた柱状部44を設けることにより、中央***部31の上面31uを中央***部31の周方向に連続する前側コーナー部31fcによって支持せずに、壁や柱の集まりによって支持するができる。
これにより、中央***部31は、通常の支持力を確保しながら衝突時には安定して荷重変形することができるため、歩行者等上方からの衝突物衝突時に中央***部31の前側コーナー部31fcによる変形抵抗増大を防ぐ一方、通常走行時の剛性を維持し、衝突物衝突時における初期の反力を向上してエンジンルーム100内等の部品との干渉(いわゆる底付き)を防ぐことができる。
またこの発明の一実施形態においては、中央***部31の前部に段差27aが設けられ、スリットとしての第1開口部43は、段差27aの内側と外側との各稜線X7,X8のうち段差内側稜線X7のみを寸断する形状である(図9及び図11参照)。
上記構成によれば、衝突時の荷重吸収変形が容易なまま、インナパネル26の外側枠部3(枠状溝30の形成部分)の剛性(枠剛性)を維持することができる。
詳述すると、中央***部31の前部に段差27aが設けられ、第1開口部43は、段差内側稜線X7のみを寸断する形状とすることで衝突時に中央***部31の荷重吸収変形は促進される。
具体的には、横溝27の幅方向の内側(中央***部31側)には、台形溝形状の段差27aが形成され、該段差27aには、該段差27aを構成する稜線としての段差内側稜線X7と段差外側稜線X8とが、段差27aの溝幅方向の各側に車幅方向に沿って延びている。そして、第1開口部43は、段差27aを構成する2重の稜線X7,X8のうち内側(中央***部31側)の段差内側稜線X7のみを寸断する形状で形成している(図11参照)。
このように、第1開口部43により、段差内側稜線X7を寸断する形状とすることで中央***部31の前側コーナー部31fcの剛性を脆弱化することができ、衝突時に中央***部31の荷重吸収変形を促進することができる。
その一方で、第1開口部43は、段差27aを構成する2重の稜線のうち内側(中央***部31側)の段差内側稜線X7のみを寸断するため、段差外側稜線X8や横溝本体27bの稜線(横溝本体内側稜線X9、横溝本体外側稜線X10)は寸断せずに少なくとも横溝本体内側稜線X9、及び横溝本体外側稜線X10については、枠状溝30の全長に渡って延びている。
これにより、アルミ、又はアルミ合金で形成したインナパネル26であっても、該インナパネル26の外側枠部3(枠状溝30)周辺の剛性を確保することができる。
また、上記実施例の自動車のボンネット構造は、アウタパネル25とインナパネル26を有するボンネット10の後部が車体400にヒンジとしてのボンネットヒンジ20を介して軸支され、インナパネル26の前部にスティフナ60と車体400側と係合するストライカ71が設けられた自動車のボンネット構造であって、インナパネル26におけるストライカ取付部72の後方に形成された傾斜前面31hにおいて、スティフナ接合部としてのスティフナ***状接合部35と、車幅方向両端に傾斜前面31hの上側稜線X5を寸断する第1開口部43とが設けられ、傾斜前面31hにおける該第1開口部43とスティフナ***状接合部35の間には、上側稜線X5から下方に離間して第2開口部45が設けられたものである(図2,図3,図6,図8,図9,図10及び図11参照)。
上記構成により、傾斜前面31hの第2開口部45が上側稜線X5から離れているので、ボンネット10の閉止荷重に耐えるようスティフナ60を支持できると共に、衝突物衝突時には、第1開口部43と第2開口部45により傾斜前面31hを荷重吸収変形させることができる。
この発明の一実施形態においては、第2開口部45とスティフナ***状接合部35が車幅方向に1列に並設されたものである(図2,図3,図6,図8,図9,図10及び図11の特に、図6中の谷折れラインL1参照)。
上記構成によれば、傾斜前面31hの上側稜線X5から離れた位置に設けた第2開口部45を、スティフナ***状接合部35と、傾斜前面31hにおいて同じ高さに配置することにより、衝突物の衝突時に傾斜前面31hの折れ変形を促進することができ、衝突時の衝撃吸収を適切に行うことができる。
またこの発明の一実施形態においては、スティフナ60は、本体部65に対して、スティフナ***状接合部35から第2開口部45に重なる位置まで車幅方向両側に片持ち状に延びる延設部66が設けられたものである(図2,図6及び図10参照)。
上記構成によれば、延設部66を設けることにより前方脚部67F、及び後方脚部67Rやスティフナ***状接合部35(脚部)の数を増やすことがなく、また第2開口部45の形状に関係なく、ボンネット10の閉止操作に対応するスティフナ60の張り剛性補強範囲を拡大できると共に、延設部66を片持ち状に設けることにより、第2開口部45を延設部66によって上方から覆うことができるため、第2開口部45の形成領域の荷重吸収変形の反力が低くなりすぎることを防ぐことができる。
またこの発明の一実施形態においては、第1開口部43の内部に柱状部44が設けられたものである(図2,図3,図6,図8,図9及び図11参照)。
上記構成によれば、柱状部44で傾斜前面31hの上部を適度に補強し、衝突物との衝突による大荷重入力の際には円滑に荷重吸収変形させることができる。
またこの発明の一実施形態においては、スティフナ60は、インナパネル26の前辺部26F(前端部)と傾斜前面31hの上部に接合され、傾斜前面31hと、該傾斜前面31hの上端から後方に向かって延びる上面31uとを有するとともにインナパネル26の外側枠部3(枠部)よりも上方に***した***部としての中央***部31、及び後側***部32が形成され、該***部(31,32)の上面31uが所定の質量を有することを特徴とする(図2,図3及び図4参照)。
上記構成によれば、スティフナ60と、上面31uが所定の質量を有する***部(中央***部31、及び後側***部32)とが連結することで、ボンネット10上部に慣性質量部M(図3参照)を形成することができ、図13に示すように、衝突物との衝突時には、衝突初期tAに高い反力を発生し、衝突後期tBに第1開口部43、及び第2開口部45によって変形を促進し、低い反力を安定して発生させることができる。
また、上述したように、自動車のボンネット構造は、自動車の意匠面となるアウタパネル25、及び該アウタパネル25と対向するインナパネル26で形成したボンネット10と、車両前部における車体400の後端近傍に対して、ボンネット10の後端を開閉自在に軸支するヒンジとしてのボンネットヒンジ20と、車両前部における車体の前端近傍に対して、ボンネット10の前端を着脱自在に連結するストライカ71と、インナパネル26の上面26uに配設されて、ストライカ71が取り付けられるストライカ取付部72とで構成した自動車のボンネット構造であって、インナパネル26における前端近傍の上面に、アウタパネル25を車両下方から支持するボンネットスティフナとしてのスティフナ60を備え、該スティフナ60を、ストライカ取付部72に対して車両上方に所定間隔を隔てて対向配置したスティフナ60の略平板状の部分である本体部65及び延設部66と、該本体部65、及びインナパネル26を連結する連結部としての前方脚部67F、及び後方脚部67Rとで一体形成し、スティフナ60に、ストライカ取付部72と対向するとともに、車両前後方向に並置するように開口形成した前方開口孔62、及び後方開口孔61と、前方開口孔62、及び後方開口孔61の間において、車両上方または車両下方に突設するとともに、車幅方向に延びる横ビード63と、該横ビード63における車幅方向の両端近傍において、車両上方または車両下方に突設するとともに、車両前後方向に延びる縦ビード64とを備え、平面視において、横ビード63を、車両前後方向に突出するように湾曲した形状に形成し、縦ビード64を、車幅方向に突出するように湾曲した形状に形成したものである(図2,図6及び図10参照)。
上記構成によれば、車両上方からの衝突荷重を吸収する衝撃吸収性と、アウタパネル25の支持剛性とを両立して確保することができる。□
具体的には、横ビード63及び縦ビード64をスティフナ60に形成したことにより、自動車のボンネット構造は、前方開口孔62、及び後方開口孔61近傍におけるスティフナ60の剛性低下を抑制することができる。
さらに、例えば、車幅方向に略直線状に延びる横ビード、及び車両前後方向に略直線状に延びる縦ビードを形成した場合に比べて、スティフナ60は、横ビード63及び縦ビード64を湾曲した形状に形成したことにより、該スティフナ60の剛性を向上することができる。
より詳しくは、例えば、指先で押下してボンネット4を閉じた場合、アウタパネル25を介して充填剤47bがスティフナ60を車両下方に押圧することになる。このため、充填剤47bの塗布位置が荷重入力箇所となり、荷重入力箇所への引張荷重が、スティフナ60における面内方向に生じることになる。
この際、横ビードに作用する引張荷重の引張方向と、平面視における横ビードの短手方向とが略一致すると、横ビードは、溝形所の底部分を起点にして口開き変形し易い特徴がある。
例えば、略直線状の横ビードの場合、平面視における短手方向が一様に前後方向となるため、横ビードの短手方向と引張荷重の引張方向とが、車幅方向における広範囲で略一致し易くなる。このため、略直線状の横ビードに引張荷重が作用すると、溝形状の底部分を起点とした口開き変形が発生するおそれがある。
これに対して、車両前後方向へ突出するように湾曲した横ビード63の場合、平面視における短手方向が一様な方向とならないため、引張荷重の引張方向と横ビード63の短手方向とが交差し易い、すなわち略一致し難くなる。
このため、湾曲した横ビード63、及び縦ビード64は、引張荷重が作用しても、略直線状の横ビード、及び縦ビードに比べて、溝形状の底部分を起点とした口開き変形を抑制することができる。これにより、スティフナ60は、略直線状の横ビード及び縦ビードに比べて、該スティフナ60の剛性を向上することができる。
加えて、横ビード63の両端に近接して縦ビード64を形成したことにより、スティフナ60は、横ビード63における車幅方向の両端近傍を補強することができる。このため、スティフナ60は、剛性変化点である横ビード63における車幅方向の両端に応力が集中することを抑制できる。
これにより、自動車のボンネット構造は、ストライカ連結部材(ストライカレインフォースメント50、及び取付板74)に対するサービスホールである前方開口孔62、及び後方開口孔61を開口形成した場合であっても、スティフナ60の剛性を確保することができる。
このため、自動車のボンネット構造は、車両上方からの衝突荷重が加わった際、衝突荷重を十分吸収する前にスティフナ60が完全に押し潰されることを防止できる。□
従って、自動車のボンネット構造は、湾曲した横ビード63及び縦ビード64によって、車両上方からの衝突荷重を吸収する衝撃吸収性と、アウタパネル25の支持剛性とを両立して確保することができる。
この発明の一実施態様として、横ビード63を、車両後方へ向けて突出するように湾曲した形状に形成した場合、後方開口孔61における車両前方側の前方縁端を、車両前方へ向けて突出するように湾曲した形状に形成し、横ビード63を、車両前方へ向けて突出するように湾曲した形状に形成した場合、前方開口孔62における車両後方側の後方縁端を、車両後方へ向けて突出するように湾曲した形状に形成したものである。
例えば、本実施例では、車両後方へ向けて突出するように湾曲した形状に横ビード63を形成し、後方開口孔61における車両前方側の前方縁端を、車両前方へ向けて突出するように湾曲した形状に形成している(図6、及び図1参照)。この構成により、自動車のボンネット構造は、スティフナ60の変形をより抑制することができる。
具体的には、車両後方へ向けて突出するように湾曲した横ビード63に対して、後方開口孔61の前方縁端を、車両後方へ向けて突出するように湾曲した形状に形成した場合、横ビード63の湾曲形状と、後方開口孔61の前方縁端形状とが略平行となることで、後方開口孔61と横ビード63との間における剛性が低くなり易い。
このため、例えば、後方開口孔61と横ビード63との間に車両上方からの荷重が加わった際、後方開口孔61と横ビード63との間における変位量が大きくなり、横ビード63が口開き変形するおそれがある。□
さらに、後方開口孔61の前方縁端を、車両後方へ向けて突出するように湾曲した形状とした場合、後方開口孔61の前方縁端における車幅方向の両端の曲率が大きくなるため、応力集中箇所となるおそれがある。
このため、後方開口孔61に近接して横ビード63を形成した場合、横ビード63における車幅方向の両端、及び後方開口孔61の前方縁端における車幅方向の両端に、より応力集中し易くなり、車両上方からの荷重が繰返し加わった際、亀裂が発生するおそれがある。
これに対して、車両後方へ向けて突出するように湾曲した形状に横ビード63を形成し、後方開口孔61の前方縁端を、車両前方へ向けて突出するように湾曲した形状に形成することにより、スティフナ60は、横ビード63の湾曲形状と後方開口孔61の前方縁端形状とが略平行となる場合に比べて、後方開口孔61と横ビード63との間における剛性低下を抑制することができる。
さらに、車両前方へ向けて突出するように湾曲した形状に後方開口孔61の前方縁端を形成したことにより、後方開口孔61の前方縁端における車幅方向の両端の曲率を小さくすることができる。このため、スティフナ60は、後方開口孔61の前方縁端における車幅方向の両端に応力が集中することを抑制でき、かつより大きな大きさで後方開口孔61を開口形成することができる。
加えて、後方開口孔61に近接して横ビード63を形成した場合であっても、車幅方向外側ほど、後方開口孔61の前方縁端と、横ビード63とが離間することになる。このため、スティフナ60は、車両上方からの荷重が繰返し加わった場合であっても、横ビード63における車幅方向の両端、あるいは前方縁端における車幅方向の両端からの亀裂の発生を抑制することができる。
従って、自動車のボンネット構造は、後方開口孔61における前方縁端と、横ビード63とを、向かい合うように突出した湾曲形状に形成したことにより、スティフナ60の変形をより抑制することができる。
またこの発明の一実施態様として、スティフナ60における車幅方向の大きさを、ストライカ取付部72よりも幅広に形成し、スティフナ60における縦ビード64よりも車幅方向外側部分を、複数の略三角形状の三角開口孔によってトラス形状に形成することができる(図2、及び図10参照)。
例えば、本実施例では、スティフナ60における縦ビード64よりも車幅方向外側部分を、第1三角開口孔165、第2三角開口孔166、及び第3三角開口孔167によってトラス形状に形成したことにより、自動車のボンネット構造は、アウタパネル25を支持するのに必要な車幅方向の大きさ、及び剛性を維持したまま、スティフナ60を軽量化することができる。
さらに、縦ビード64に隣接する第1三角開口孔165の縁端形状と、縦ビード64の湾曲形状とが略平行とならないため、スティフナ60は、第1三角開口孔165と縦ビード64との間における部分の剛性低下を抑制することができる。
従って、自動車のボンネット構造は、スティフナ60における車幅方向外側部分をトラス形状に形成したことにより、車両上方からの衝突荷重を吸収する衝撃吸収性と、アウタパネル25の支持剛性とをより確実に両立して確保することができる。
また、上述した実施例の自動車のボンネット構造は、アウタパネル25とインナパネル26とを有するボンネット10の後部が車体400にヒンジとしてのボンネットヒンジ20を介して軸支された自動車のボンネット構造であって、インナパネル26には、車両正面視で上方に突出する形状の中央***部31と、その後方に位置する後側***部32とが前後方向に並んで設けられ、両***部31,32の間に深絞り溝33が車幅方向に延設され、後側***部32の側方から深絞り溝33の側方を通り中央***部31の後端にかけてヒンジレインフォースメント40が延設されたものである(図2,図4,図6参照)。
この構成によれば、ヒンジレインフォースメント40を、後側***部32の側方から深絞り溝33の側方を通って中央***部31の後端まで延ばすことにより、左右のヒンジレインフォースメント40,40間に車幅方向に架け渡される深絞り溝33で、ボンネット10の車幅方向中央部位の上下曲げ剛性を高めることができると共に、ヒンジレインフォースメント40により深絞り溝33の口開き変形やボンネット10後部の上下曲げ変形を防止すべくその剛性向上を図ることができる。
要するに、中央***部31を有するボンネット10において、ボンネット10後部のヒンジ支持剛性を高めて、走行振動や走行風の風圧などに起因するボンネット10の撓みや振動の発生を防止することができる。
また、この発明の一実形態においては、深絞り溝33は、平面視でその車幅方向中央部が車両前方に突出するよう湾曲しており、湾曲中央部33cがヒンジレインフォースメント40前端よりも車両前方に位置しているものである(図6参照)。
この構成によれば、上述の深絞り溝33の湾曲構造により、ヒンジレインフォースメント40前端よりも前方部位までヒンジ支持剛性の向上を図ることができ、また、該湾曲構造により、深絞り溝33の口開き変形に対する剛性向上をも図ることができる。
さらに、この発明の一実施形態においては、インナパネル26の左右両側部に、深絞り溝33よりも下方に窪む側溝28,29が前後方向に延設され、該側溝28,29の側部における深絞り溝33よりも下方位置にヒンジレインフォースメント40が固定されたものである(図7参照)。
この構成によれば、上述の側溝28,29にて深絞り溝33や後側***部32を補強することができると共に、ヒンジレインフォースメント40は深絞り溝33よりも下方位置に固定されているので、このヒンジレインフォースメント40上方におけるインパクタ緩衝用のクラッシュスペース(つまり衝突物緩衝用のクラッシュスペース)の拡大を図ることができる。
この発明のヒンジは、ボンネットヒンジ20に対応し、以下、同様に、
前傾面は、傾斜前面31hに対応し、
インナパネルの前端部は、インナパネル26の前辺部26Fに対応し、
***部は、中央***部31、及び後側***部32に対応し、
上記中央***部の上下稜線は、中央***部31の上側稜線X5、及び中央***部31の下側稜線X6に対応し、
スリットは、第1開口部43に対応し、
段差の内側の稜線は、段差内側稜線X7に対応するも、この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではない。