JP6210886B2 - 防振手段が設けられた工具ホルダ - Google Patents
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Description
ところが、ボーリング加工やフライス加工などを行ってゆく過程においては、回転切削工具が取り付けられた長尺の工具ホルダを被加工材に押し込む際に、回転切削工具に発生する抵抗力により振動(びびり振動)が生じ、加工精度の不良や加工能率の低下を引き起こしたり、長尺の工具ホルダの工具寿命を短くする虞があった。
特許文献1には、軸方向の端部に切刃を保持する鋼材製アーバであって、前記アーバの外周面に溶射層を有する防振アーバが開示されている。
また、特許文献2には、長尺の工具本体の先端には切れ刃チップが装着されて、被削材の深部が切削できるようにした工具であって、工具本体の一部には、防振効果を高める目的で、超硬合金の如き高剛性材料の使用された深部加工用の防振工具において、前記工具本体には、その軸心に沿って、基部側直径が先端側直径より大きなテーパ部を有する穴が後端より穿設され、該テーパ部に適合するテーパ部を有する前記高剛性材料からなる丸棒が前記穴に挿入されて、前記穴の入口近傍に螺設されたねじ部に螺合する押込みねじにより、前記丸棒が工具本体内に圧接固定されるようにした深部加工用の防振工具が開示されている。
特許文献3には、先端部に切刃を装着したシャンク部を有する切削工具において、該シャンク部の後端部から軸心に沿って穿設された穴部と、該穴部に挿入された高剛性棒と、該高剛性棒と該穴部の内周面とが形成する間隙に充填されたエポキシ樹脂系接着剤と、該シャンク部の後端部に嵌合する押圧固定具と、を備え、且つ、該高剛性棒は該押圧固定具により押圧固定されている切削工具が開示されている。
特許文献6には、切削時のびびり振動を抑制するための減衰用部材であって、剛性体と
粘弾性体とから構成され、前記剛性体の一方の先端部近傍に前記粘弾性体を備え、他方の先端部が切削工具のシャンクを把持する部分に保持可能な形状を有し、前記粘弾性体を介して前記剛性体を前記シャンクに当接させることで切削時のびびり振動を抑制する切削工具の減衰用部材が開示されている。
すなわち、特許文献1及び特許文献2は、アーバ部を高剛性化して、切削加工時に発生する「びびり振動」(振動)を抑制しているが、アーバ部を高剛性化するには、高価な高剛性材料を採用することが必要となったり、その高剛性材料をアーバ部に加工する際の加工コストが嵩んだりといった工具加工費の増大が懸念される。
本発明は、上記問題点に鑑みて為されたものであり、切削加工時に発生するびびり振動をはめあい機構で抑制する防振手段が設けられた工具ホルダを提供することを目的とする。
本発明の防振手段が設けられた工具ホルダは、長尺のアーバ部と、前記アーバ部の先端側に設けられると共に工具が装着される工具取付具と、前記アーバ部の基端側に工作機械の回転駆動軸に取り付けるためのシャンク部とを有し、前記工具を用いて切削加工時に生じるびびり振動を抑制する防振手段が前記アーバ部に設けられた工具ホルダにおいて、前記アーバ部は、長手方向に分割された棒体であって、前記分割された一方の棒体の端部に凸状の軸部が形成されていると共に、前記分割された他方の棒体の端部に前記軸部が嵌り込む凹状の孔部が形成されていて、前記防振手段は、前記軸部が孔部に嵌り込んで構成される「はめあい機構」からなり、前記防振手段において、前記孔部の内径Dと前記軸部の外径dとの差Δdが、−20μm≦Δd≦10μmの範囲とされ、前記軸部の軸心方向高さlが、20mm≦l≦50mmの範囲とされ、前記孔部の軸心方向深さLが、L≧lとされていて、前記防振手段において、前記孔部の内周面と前記軸部の外周面とが面接触する部分の接触面積Sが、600mm 2 <S<3000mm 2 の範囲とされていて、前記防振手段の配備位置tは、前記アーバ部の基端側からの位置t 1 がt 1 ≧30mm、且つ当該アーバ部の先端側からの位置t 2 がt 2 ≧30mmの範囲とされていることを特徴とする。
図1は、アーバ部5が軸心方向に向かって突出状に備えられると共に、そのアーバ部5に本発明の防振手段10が設けられている工具ホルダ1を模式的に示した側面図である。
工具ホルダ1は、被加工材に対してボーリング加工、中ぐり加工やフライス加工など切削加工を行う際に用いられるものである。この工具ホルダ1は、工作機械の回転駆動軸(スピンドル軸)に取り付けられるようになっていて、その回転駆動軸の回転駆動力を、アーバ部5の先端側に取り付けられたエンドミル、ボーリングヘッドなどの工具13に伝達して、被加工材に対して切削加工を行うようになっている。
アーバ部5の軸心方向の先端側には、突起状の工具取付具11が設けられている。工具取付具11は、荒切削用の工具や仕上切削用の工具などの仕様の異なる工具13(切刃)をアーバ部5に取り付けるアタッチメントである。この突起状の工具取付具11を、工具13に設けられた取付孔部12に嵌合させて、その工具13と工具取付具11とをボルトなどの締結具(図示せず)で固定する。
取り付けるためのミーリングチャックであってもよい。
ところで、このように締結された工具13を用いて、被加工材にボーリング加工やフライス加工などの切削加工を行うと、工具13に発生する抵抗力により長尺のアーバ部5に振動が生じてしまう虞がある。特に、工具突き出し長さ/工具径(L2/d1)の値が大きい場合、切削加工時にアーバ部5に大きな振動が生じてしまい、工具ホルダの動剛性を大きく低下させてしまう。
本発明に係る防振手段10が設けられた工具ホルダ1は、長尺のアーバ部5に、このアーバ部5の振動を抑制する防振手段10が設けられているものである。
このアーバ部5は、長手方向に少なくとも2つ以上に分割された棒体であり、その分割された一方の棒体6の端部に凸状(円柱状)の軸部7が形成されていると共に、分割された他方の棒体8の端部に軸部7が嵌り込む凹状(円筒状)の孔部9が形成されている。この軸部7の外径d及び孔部9の内径Dは、アーバ部5の外径d2との比率によって設定されるようになっている。例えば、軸部7の外径dとアーバ部5の外径d2との比率は、d:d2=2:3とされる。
詳しくは、「はめあい機構」における寸法差Δdが−20μm≦Δd≦10μmの範囲の略「しまりばめ」状態であり、且つ軸部7の軸心方向高さlが20mm≦l≦50mmの範囲であると、孔部9の内周面と軸部7の外周面とが密着するように面接触し、その接触面において大きな押圧力が発生する。このとき、押圧力は、工具ホルダ1が回転してアーバ部5に曲げ変形が加えられる際に、孔部9の内周面と軸部7の外周面との間(摺動面)に摩擦エネルギを生じさせる。
なお、寸法差Δdが−20μmよりも小さい値、あるいは10μmよりも大きい値の場合は、「はめあい機構」のすべり面における摩擦(摩擦エネルギ)が生じ難く、防振手段のダンパ(減衰)効果が小さくなるため、アーバ部5に発生する振動を抑制ないしは防止することが困難である。
また、防振手段10の配備位置tを設定することによって、アーバ部5に生じる振動を効果的に抑制することができる。
図1(a)に示すように、防振手段10の配備位置tは、アーバ部5の基端側に近い部分(アーバ部5の長手方向中央より基端側)とされている。
なお、アーバ部5の基端側のみを防振手段10の配備位置tの基準とすると、アーバ部
5の長さによって先端側の配備位置t2が変わるため、アーバ部5の基端側および先端側からそれぞれ30mm以上離れた位置としている。
図2に示すように、横軸に示された寸法差Δdが−20μm≦Δd≦10μmの範囲において、縦軸に示される粘性μが約100kg/sより大きい値となり、(粘性μの最大値、約500kg/s)、アーバ部5に生じる振動エネルギが「はめあい機構」にて摩擦エネルギに変換されていることがわかる。
一方、軸部7と孔部9とからなる「はめあい機構」の形状及び寸法を別の観点から、設定することもできる。別の観点とは、孔部9の内周面と軸部7の外周面とが面接触する部分の接触面積Sを設定することである。
また、孔部9の内径Dと軸部7の外径dとの差Δd[μm]と、孔部9の内周面と軸部7の外周面とが面接触する部分の接触面積S[mm2]とは、−26000≦Δd・S≦13000の範囲とされているとよい。
[実験例]
次に、本発明に係る防振手段10が設けられた工具ホルダ1を用いて、被加工材にボーリング加工を実施した結果を述べる。
本発明の防振手段10が設けられた工具ホルダ1として、工具外径d1が53mm、工具突き出し長さL2が275mm、防振手段10の配備位置tがアーバ部5の基端側から90mmの工具ホルダ1Aと、工具外径d1が53mm、工具突き出し長さL2が275mm、防振手段10の配備位置tがアーバ部5の基端側から180mmの工具ホルダ1Bを用意する。また、工具ホルダ1A、工具ホルダ1Bともに、軸部7の外径dを約30m
m、長さlを約50mm、孔部9の内径Dを約30mm、長さLを約50mmとする。
そして、表1にボーリング加工の条件を示す。
図3に工具ホルダ1の動剛性を示し、図4にアーバ部5に振動が発生した際における工具13の切込み量を示す。
つまり、本発明の防振手段10が設けられた工具ホルダ1Aは、「はめあい機構」によりアーバ部5が高い動剛性(高減衰能化)を有するようになり、アーバ部5に発生する振動を抑制することができる。
本発明の防振手段10が設けられた工具ホルダ1Aを用いて被加工材に対してボーリング加工を行うと、比較例の工具ホルダCを用いている場合よりも深く切削することが可能である。
図5は、防振手段10の配備位置tが異なった工具ホルダ1A、工具ホルダ1Bの動剛性を示す図である。
図5(a)に示すように、アーバ部5の基端側から90mmの位置t1に防振手段10を配備した場合の工具ホルダ1Aは、アーバ部5における振動周波数が約400Hzから約480Hzまでの範囲において、加速度が増加していることが読み取れる。
図5を見ながら工具ホルダ1Aと工具ホルダ1Bとを比較してみると、工具ホルダ1Aの方が工具ホルダ1Bよりアーバ部5に発生する振動を効果的に抑制していることがわかる。すなわち、工具ホルダ1Aの方が、工具ホルダ1Bよりも高い動剛性を有していることがわかる。
以上の実験結果より、軸部7と孔部9とからなる「はめあい機構」の形状及び寸法を設定することで、防振手段10のダンパ効果が高くなり、アーバ部5が高減衰能化される。それゆえ、アーバ部5に生じる振動を抑制することが可能となる。
防振手段10においての「はめあい機構」は、孔部9の内周面と軸部7の外周面とが面接触する部分の接触面積Sが、600mm2<S<3000mm2の範囲とされている。
このように、本発明の防振手段10が設けられた工具ホルダ1は、切削加工時に発生するアーバ部5の振動エネルギを「はめあい機構」で摩擦エネルギに変換してアーバ部5を高減衰能化することで、切削加工時に発生するアーバ部5の振動を抑制するものである。
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。
2 シャンク部
3 円錐部材
4 円板部材
5 アーバ部
6 一方の棒体
7 軸部
8 他方の棒体
9 孔部
10 防振手段
11 工具取付具
12 取付孔部
13 工具(回転切削工具)
Claims (1)
- 長尺のアーバ部と、前記アーバ部の先端側に設けられると共に工具が装着される工具取付具と、前記アーバ部の基端側に工作機械の回転駆動軸に取り付けるためのシャンク部とを有し、前記工具を用いて切削加工時に生じるびびり振動を抑制する防振手段が前記アーバ部に設けられた工具ホルダにおいて、
前記アーバ部は、長手方向に分割された棒体であって、
前記分割された一方の棒体の端部に凸状の軸部が形成されていると共に、前記分割された他方の棒体の端部に前記軸部が嵌り込む凹状の孔部が形成されていて、
前記防振手段は、前記軸部が孔部に嵌り込んで構成される「はめあい機構」からなり、
前記防振手段において、前記孔部の内径Dと前記軸部の外径dとの差Δdが、−20μm≦Δd≦10μmの範囲とされ、前記軸部の軸心方向高さlが、20mm≦l≦50mmの範囲とされ、前記孔部の軸心方向深さLが、L≧lとされていて、
前記防振手段において、前記孔部の内周面と前記軸部の外周面とが面接触する部分の接触面積Sが、600mm 2 <S<3000mm 2 の範囲とされていて、
前記防振手段の配備位置tは、前記アーバ部の基端側からの位置t 1 がt 1 ≧30mm、且つ当該アーバ部の先端側からの位置t 2 がt 2 ≧30mmの範囲とされている
ことを特徴とする防振手段が設けられた工具ホルダ。
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