JP6207064B2 - アンテナ基板の製造方法 - Google Patents
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Description
本発明は、可撓性を有するアンテナ基板であって、フッ素樹脂を主成分とする誘電層と、この誘電層の少なくとも一方の面に積層されるアンテナエレメント層とを備え、上記アンテナエレメント層における少なくとも一方の面の十点平均粗さ(Rz)が0.2μm以上4μm以下である。
以下、本発明の第1実施形態から第3実施形態に係るアンテナ基板について、図面を参照しつつ説明する。
まず、本発明の第1実施形態に係るアンテナ基板1について、図1及び図2を参照しつつ説明する。
アンテナエレメント層11は情報の送受信を行う部分である。このアンテナエレメント層11は、誘電層10の一方の面に積層されており、平面視櫛歯状にパターン形成されている。このようなアンテナエレメント層11は、例えば誘電層10の一方の面に積層される金属層をエッチングすることによって形成されている。この金属層は、導電性を有する材料で形成可能であるが、銅箔、アルミニウム箔等によって形成することで、容易かつ確実に所望形状のパターンを形成することができる。また、アンテナエレメント層11は、防錆処理層を含んでいることが好ましい。
アンテナエレメント層11は、上述のように防錆処理層を含んでいることが好ましい。この防錆処理層は、アンテナエレメント層11の表面が酸化することによる接合強度の低下を抑制するものである。この防錆処理層としては、コバルト、クロム又は銅を含むことが好ましく、コバルト又はコバルト合金を主成分として含むことがさらに好ましい。防錆処理層は、1層として形成しても複数層として形成してもよい。防錆処理層は、めっき層として形成してもよい。このめっき層は、単一金属めっき層又は合金めっき層として形成される。単一金属めっき層を構成する金属としてはコバルトが好ましい。合金めっき層を構成する合金としては、例えばコバルト−モリブデン、コバルト−ニッケル−タングステン、コバルト−ニッケル−ゲルマニウム等のコバルト系合金などが挙げられる。
誘電層10はアンテナエレメント層11が積層されるものである。この誘電層10は、フッ素樹脂を主成分とする。この誘電層10は、フッ素樹脂以外に、必要に応じて任意成分を含んでいてもよい。
カップリング剤は、アンテナエレメント層11と誘電層10のフッ素樹脂との間に化学結合を形成するために使用される。このカップリング剤としては、シランカップリング剤が好ましく、中でも、N原子又はS原子を含む官能基(以下、「反応性官能基」ともいう)を持つシランカップリング剤がより好ましい。上記反応性官能基を持つシランカップリング剤は、加水分解基(−OCH3、−OC2H5、−OCOCH3等)が加水分解されることでアンテナエレメント層11の一方の面にシランカップリング反応により固定される。一方、シランカップリング剤は、後述するように誘電層10に対して上記反応性官能基において化学結合するものと推定される。
フッ素樹脂は、高分子鎖の繰り返し単位を構成する炭素原子に結合する水素原子の少なくとも1つが、フッ素原子又はフッ素原子を有する有機基(以下「フッ素原子含有基」ともいう)で置換されたものをいう。フッ素原子含有基は、直鎖状、分岐状又は環状の有機基中の水素原子の少なくとも1つがフッ素原子で置換されたものであり、例えばフルオロアルキル基、フルオロアルコキシ基、フルオロポリエーテル基等が挙げられる。
誘電層10の任意成分としては、例えばエンジニアリングプラスチック、難燃剤、難燃助剤、顔料、酸化防止剤、反射付与剤、隠蔽剤、滑剤、加工安定剤、可塑剤、発泡剤等が挙げられる。
カバーレイ12はアンテナエレメント層11を外力や水分等から保護するものである。このカバーレイ12は、カバーフィルム13及び接着層14を備えている。
カバーフィルム13は、接着層14を介して誘電層10及びアンテナエレメント層11に積層されている。このカバーフィルム13は、アンテナ基板1が車載用のアンテナとして使用される場合には透明性が高いことが好ましい。カバーフィルム13の透明性としては、誘電層10と同程度の光透過率を有することが好ましい。
接着層14は、カバーフィルム13を誘電層10に固定するものである。この接着層14の材質としては、特に限定されるものではないが、柔軟性や耐熱性に優れたものが好ましく、例えばポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ブチラール樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。特に、アンテナ基板1が車載用のアンテナとして使用される場合等のように透明性が要求される用途では、アクリル樹脂がより好ましい。
アンテナ基板1は、例えば
(1)防錆処理層形成工程
(2)塗工工程、
(3)乾燥工程
(4)接着工程、
(5)パターニング工程、及び
(6)カバーレイ積層工程を備える製造方法で得られる。
防錆処理層形成工程はアンテナエレメント層11を形成するための金属箔等の導体膜の少なくとも一方の面の全部又は一部に防錆処理層を形成する工程である。この防錆処理層形成工程は、金属イオンを含む防錆溶液を導体膜の少なくとも一方の面の全部又は一部に塗工した後に、防錆溶液を乾燥させることで行われる。金属イオンとしては、コバルトイオン、クロムイオン及び銅イオンのイオンが好ましく、コバルトイオンがより好ましい。防錆溶液の塗工方法としては、公知の種々の方法を採用でき、例えば防錆溶液に導体膜を浸漬する方法、防錆溶液を導体膜に塗布する方法が挙げられる。防錆溶液の乾燥は、自然乾燥及び強制乾燥のいずれであってもよい。このように防錆溶液を乾燥させることで、導体膜の少なくとも一方の面の全部又は一部に防錆溶液中の金属イオンに由来する金属酸化物の防錆処理層が形成される。
塗工工程は、上記導体膜(アンテナエレメント層11)にシランカップリング剤を含む組成物(以下、「カップリング剤含有組成物」ともいう)を塗工し、上記導体膜に上述のカップリング剤を化学結合させるために行われる。
カップリング剤含有組成物は、上記シランカップリング剤等のカップリング剤及び溶剤を含み、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の任意成分を含んでいてもよい。
溶剤としては、カップリング剤を溶解し得るものであれば特に限定されるものではなく、例えばメタノール、エタノール等のアルコール類、トルエン、ヘキサン、水などが挙げられる。ただし、溶剤としては、保存安定性の面から、エトキシシラン系のアミノシランカップリング剤にはエタノールが好ましく、メトキシシラン系のアミノシランカップリング剤にはメタノールが好ましい。
任意成分としては、酸化防止剤、粘度調整剤、界面活性剤等が挙げられる。酸化防止剤としては、例えば鉄、糖、レダクトン、亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸(ビタミンC)等が挙げられる。
乾燥工程は、上記カップリング剤含有組成物を乾燥させるために行われる。この乾燥工程は、自然乾燥及び強制乾燥のいずれで行ってもよいが、自然乾燥が好ましい。また、カップリング剤含有組成物の乾燥後は導体膜の加熱処理を行うことが好ましい。加熱処理を行うことにより、導体膜の少なくとも一面の全部又は一部に、より確実にカップリング剤を固定させることできる。加熱処理は、例えば恒温槽にて100℃〜130℃で1分〜10分間加熱することで行うことができる。
接着工程は、フッ素樹脂を主成分とする誘電層10の少なくとも組成物塗工面に上記導体膜を接着する工程である。この接着工程は、例えば誘電層10の一方の面に導体膜(アンテナエレメント層11)を載置した状態で加圧加熱することで行われる。接着工程は、公知の熱プレス機を用いて行うことができる。接着工程は、低酸素濃度下、例えば窒素雰囲気下での真空プレスにより行うことが好ましい。接着工程を低酸素濃度下で行うことにより、導体膜(アンテナエレメント層11)の一方の面(接着面)の酸化を抑制し密着力の低下を抑制できる。
パターニング工程は、誘電層10の表面に所定パターンのアンテナエレメント層11を形成する工程である。このパターニング工程は、導体膜の積層後に行われ、例えば公知のエッチング手法により行うことができる。
カバーレイ積層工程は、アンテナエレメント層11を覆うようにカバーレイ12を積層する工程である。このカバーレイ積層工程は、例えばカバーフィルム13に接着層14を予め形成したカバーレイ12を、アンテナエレメント層11を覆うように載置した後、加圧加熱により接着層14を介して誘電層10にカバーフィルム13を固定することで行われる。これにより、カバーフィルム13が接着層14を介して誘電層10に固定される。
当該アンテナ基板1は、誘電層10がフッ素樹脂を主成分とすることで誘電層10の比誘電率(εr)及び誘電正接(tanδ)を小さくすることができる。また、アンテナエレメント層11の少なくとも一方の面の十点平均粗さ(Rz)を0.2μm以上4μm以下とすることで、接合性を十分に確保しつつ、表皮効果による伝送遅延の発生を抑制し、抵抗減衰や漏洩減衰の増加による伝送損失を小さくすることができる。そのため、当該アンテナ基板1は、高周波信号の伝送特性に優れ、高速大容量無線通信に対応できる。その結果、当該アンテナ基板1は、車載用のアンテナや携帯電話等の情報通信端末などのアンテナとして好適に使用することができる。
次に、本発明の第2実施形態に係るアンテナ基板について図3を参照しつつ説明する。なお、図3においては、図1及び図2のアンテナ基板1と同一の要素について同一の符号を付してあり、以下における重複説明を省略する。
グランド層21は、アンテナエレメント層11の接地電極として機能するものである。このグランド層21は、誘電層10の他方の面の全体に形成されている。
カバーレイ22は、グランド層21を保護するものであり、グランド層21に積層されている。このカバーレイ22は、カバーフィルム23及び接着層24を備えている。これらのカバーフィルム23及び接着層24の構成については、上述したカバーレイ12と同様である。
次に、本発明の第3実施形態に係るアンテナ基板について図4から図6を参照しつつ説明する。図4から図6においては、図1及び図2のアンテナ基板1と同一の要素について同一の符号を付してあり、以下における重複説明を省略する。
アンテナエレメント層30は、図1及び図2のアンテナ基板1のアンテナエレメント層11と基本的に同様であるが、アンテナエレメント層30が平面視蛇腹形状に形成されている点で異なっている。このアンテナエレメント層30は、電子部品33と接続されている。
グランド層31は、アンテナエレメント層30の接地電極として機能するものである。このグランド層31は、アンテナエレメント層30に隣接し、誘電層10の一方の面側に積層されている。グランド層31は、配線34を介して電子部品33と接続されている。グランド層31は、アンテナエレメント層30をパターン形成するときに同時に形成することができる。
カバーレイ32は、カバーフィルム35及び接着層36を備えている。このカバーレイ32は、図1及び図2のアンテナ基板1のカバーレイ12と基本的に同様であるが、このカバーレイとは切欠37を有する点で異なっている。この切欠37は、電子部品33が実装される部分に対応して形成されている。すなわち、カバーレイ32は、切欠37によって電子部品33と干渉しないようになされている。
電子部品33は、アンテナ基板3においてインピーダンス整合等の役割を果たすものである。この電子部品33は、アンテナエレメント層30、グランド層31及び配線34と接続されている。電子部品33としては、特に限定はなく、例えば整流回路等が挙げられる。
配線34は、アンテナエレメント層30、グランド層31及び電子部品33を相互に接続し、またアンテナ基板3を外部機器と接続するときに利用されるものである。この配線34は、複数の配線部を有する配線パターンとして形成されている。配線34は、アンテナエレメント層30及びグランド層31をパターン形成するときに同時に形成することができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、後述の実施形態の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
10 誘電層
11,30 アンテナエレメント層
12,22,32 カバーレイ
13,23,35 カバーフィルム
14,24,36 接着層
21,31 グランド層
33 電子部品
34 配線
37 切欠
Claims (13)
- 可撓性を有するアンテナ基板の製造方法であって、
フッ素樹脂を主成分とする誘電層と、
この誘電層の少なくとも一方の面に積層されるアンテナエレメント層とを備え、
上記誘電層が積層されるアンテナエレメント層の面の十点平均粗さ(Rz)が0.2μm以上4μm以下であり、
上記誘電層のフッ素樹脂と上記アンテナエレメント層との間に化学結合を有し、
上記化学結合が電離放射線照射により形成され、
上記化学結合が、上記誘電層と上記アンテナエレメント層との界面に存在するカップリング剤を介して形成されているアンテナ基板の製造方法。 - 上記フッ素樹脂の比誘電率(εr)が3以下、誘電正接(tanδ)が0.004以下である請求項1に記載のアンテナ基板の製造方法。
- 上記誘電層のJIS K 7350−2:2008に規定する暴露試験後の曲げ弾性率が20GPa以上である請求項1又は請求項2に記載のアンテナ基板の製造方法。
- 上記誘電層の光透過率が70%以上である請求項1、請求項2又は請求項3に記載のアンテナ基板の製造方法。
- 上記誘電層のJIS K 7350−2:2008に規定する暴露試験後の光透過率が70%以上である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のアンテナ基板の製造方法。
- JIS C 5016:1994に規定する耐屈曲性試験における屈曲回数が400回以上である請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のアンテナ基板の製造方法。
- JIS C 5016:1994に規定する耐折性試験における断線までの回数が400回以上である請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のアンテナ基板の製造方法。
- 上記カップリング剤がN原子又はS原子を含む官能基を持つシランカップリング剤である請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のアンテナ基板の製造方法。
- 上記誘電層がフッ素樹脂の分子間に電離放射線照射により形成される化学結合を有している請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のアンテナ基板の製造方法。
- 上記誘電層のフッ素樹脂が、テトラフルオロエチレン・ヘキサオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、又はテトラフルオロエチレン−パーフルオロジオキソール共重合体(TFE/PDD)である請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のアンテナ基板の製造方法。
- 上記アンテナエレメント層を覆い、かつフッ素樹脂を主成分とするカバーフィルムをさらに備える請求項1から請求項10のいずれか1項に記載のアンテナ基板の製造方法。
- 車載用のアンテナとして使用される請求項1から請求項11のいずれか1項に記載のアンテナ基板の製造方法。
- 上記アンテナエレメント層に電気的に接続される配線と、上記配線及び上記アンテナエレメント層のうちの少なくとも一方に電気的に接続される電子部品とをさらに備える請求項1から請求項12のいずれか1項に記載のアンテナ基板の製造方法。
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