図1及び図2は、本発明の自動変速機TMの実施形態を示している。自動変速機TMは、筐体1内に回転自在に軸支した、内燃機関(エンジン)等の駆動源ENGが出力する駆動力がロックアップクラッチLC及びダンパDAを有するトルクコンバータTCを介して伝達される入力部としての入力軸2と、入力軸2と同心に配置された出力ギアからなる出力部3とを備えている。
出力部3の回転は、図外のデファレンシャルギア、またはプロペラシャフトを介して車両の左右の駆動輪に伝達される。尚、トルクコンバータTCに代えて、摩擦係合自在に構成される単板型、または多板型の発進クラッチを設けてもよい。
筐体1内には、第1〜第4の4つの遊星歯車機構PGS1〜4が入力軸2と同心に配置されている。第1遊星歯車機構PGS1は、サンギアSaと、リングギアRaと、サンギアSaとリングギアRaとに噛合するピニオンPaを自転及び公転自在に軸支するキャリアCaとからなる所謂シングルピニオン型の遊星歯車機構(キャリアを固定してサンギアを回転させると、リングギアがサンギアと異なる方向に回転するため、マイナス遊星歯車機構、またはネガティブ遊星歯車機構ともいう。尚、リングギアを固定してサンギアを回転させると、キャリアがサンギアと同一方向に回転する。)で構成されている。
図3に第1から第4の4つの遊星歯車機構PGS1〜PGS4の共線図を示す。本明細書において、共線図は、サンギア、キャリア、リングギアの3つの要素の相対回転速度の比を直線(速度線)で表すことができる図と定義する。共線図において、3つの要素は、ギア比(リングギアの歯数/サンギアの歯数)に対応する間隔で並ぶ。
図3の上から2段目に示す第1遊星歯車機構PGS1の共線図を参照して、第1遊星歯車機構PGS1の3つの要素Sa,Ca,Raを、共線図の並び順に左側から夫々第1要素、第2要素及び第3要素とすると、第1要素はサンギアSa、第2要素はキャリアCa、第3要素はリングギアRaになる。
ここで、サンギアSaとキャリアCa間の間隔とキャリアCaとリングギアRa間の間隔との比は、第1遊星歯車機構PGS1のギア比をhとして、h:1に設定される。尚、共線図において、下の横線と上の横線(4th及び6thと重なる線)は夫々回転速度が「0」と「1」(入力軸2と同じ回転速度)であることを示している。
第2遊星歯車機構PGS2も、サンギアSbと、リングギアRbと、サンギアSb及びリングギアRbに噛合するピニオンPbを自転及び公転自在に軸支するキャリアCbとからなる所謂シングルピニオン型の遊星歯車機構で構成される。
図3の上から1段目(最上段)に示す第2遊星歯車機構PGS2の共線図を参照して、第2遊星歯車機構PGS2の3つの要素Sb,Cb,Rbを、共線図の並び順に左側から夫々第4要素、第5要素及び第6要素とすると、第4要素はリングギアRb、第5要素はキャリアCb、第6要素はサンギアSbになる。サンギアSbとキャリアCb間の間隔とキャリアCbとリングギアRb間の間隔との比は、第2遊星歯車機構PGS2のギア比をiとして、i:1に設定される。
第3遊星歯車機構PGS3も、サンギアScと、リングギアRcと、サンギアSc及びリングギアRcに噛合するピニオンPcを自転及び公転自在に軸支するキャリアCcとからなる所謂シングルピニオン型の遊星歯車機構で構成される。
図3の上から3段目に示す第3遊星歯車機構PGS3の共線図を参照して、第3遊星歯車機構PGS3の3つの要素Sc,Cc,Rcを、共線図の並び順に左側から夫々第7要素、第8要素及び第9要素とすると、第7要素はサンギアSc、第8要素はキャリアCc、第9要素はリングギアRcになる。サンギアScとキャリアCc間の間隔とキャリアCcとリングギアRc間の間隔との比は、第3遊星歯車機構PGS3のギア比をjとして、j:1に設定される。
第4遊星歯車機構PGS4も、サンギアSdと、リングギアRdと、サンギアSd及びリングギアRdに噛合するピニオンPdを自転及び公転自在に軸支するキャリアCdとからなる所謂シングルピニオン型の遊星歯車機構で構成される。
図3の上から4段目(最下段)に示す第4遊星歯車機構PGS4の共線図を参照して、第4遊星歯車機構PGS4の3つの要素Sd,Cd,Rdを、共線図の並び順に左側から夫々第10要素、第11要素及び第12要素とすると、第10要素はリングギアRd、第11要素はキャリアCd、第12要素はサンギアSdになる。サンギアSdとキャリアCd間の間隔とキャリアCdとリングギアRd間の間隔との比は、第4遊星歯車機構PGS4のギア比をkとして、k:1に設定される。
第1遊星歯車機構PGS1のサンギアSa(第1要素)は、入力軸2に連結されている。また、第4遊星歯車機構PGS4のリングギアRd(第10要素)は、出力ギヤからなる出力部3に連結されている。
また、第1遊星歯車機構PGS1のキャリアCa(第2要素)と第2遊星歯車機構PGS2のキャリアCb(第5要素)と第3遊星歯車機構PGS3のリングギアRc(第9要素)とが連結されて、第1連結体Ca−Cb−Rcが構成されている。また、第1遊星歯車機構PGS1のリングギアRa(第3要素)と第4遊星歯車機構PGS4のサンギアSd(第12要素)とが連結されて、第2連結体Ra−Sdが構成されている。また、第3遊星歯車機構PGS3のキャリアCc(第8要素)と第4遊星歯車機構PGS4のキャリアCd(第11要素)とが連結されて、第3連結体Cc−Cdが構成されている。
また、本実施形態の自動変速機TMは、第1ブレーキB1からなる1つの切換機構と、第1から第3の3つのクラッチC1〜C3、及び第2から第4の3つのブレーキB2〜B4とからなる6つの係合機構とを備える。第1クラッチC1は、油圧作動型の湿式多板クラッチであり、第1遊星歯車機構PGS1のサンギアSa(第1要素)と第3連結体Cc−Cdとを連結する連結状態と、この連結を断つ開放状態とに切換自在に構成されている。
第2クラッチC2は、油圧作動型の湿式多板クラッチであり、第1遊星歯車機構PGS1のサンギアSa(第1要素)と第2遊星歯車機構PGS2のリングギアRb(第4要素)とを連結する連結状態と、この連結を断つ開放状態とに切換自在に構成されている。第3クラッチC3は、油圧作動型の湿式多板クラッチであり、第2遊星歯車機構PGS2のサンギアSb(第6要素)と第2連結体Ra−Sdとを連結する連結状態と、この連結を断つ開放状態とに切換自在に構成されている。
第1ブレーキB1は、2ウェイクラッチであり、第3連結体Cc−Cdの正転(入力軸2の回転方向と同一方向への回転)を許容し、逆転を阻止する逆転阻止状態と、第3連結体Cc−Cdを筐体1に固定して、第3連結体Cc−Cdの回転を阻止する固定状態とに切換自在に構成されている。第2ブレーキB2は、油圧作動型の湿式多板ブレーキであり、第3遊星歯車機構PGS3のサンギアSc(第7要素)を筐体1に固定する固定状態と、この固定を解除する開放状態とに切換自在に構成されている。
第3ブレーキB3は、油圧作動型の湿式多板ブレーキであり、第2遊星歯車機構PGS2のサンギアSb(第6要素)を筐体1に固定する固定状態と、この固定を解除する開放状態とに切換自在に構成されている。第4ブレーキB4は、油圧作動型の湿式多板ブレーキであり、第2遊星歯車機構PGS2のリングギアRb(第4要素)を筐体1に固定する固定状態と、この固定を解除する開放状態とに切換自在に構成されている。
各クラッチC1〜C3及び各ブレーキB1〜B4は、トランスミッション・コントロール・ユニットからなる制御部ECU(図1参照)により、車両の走行速度等の車両情報に基づいて、状態が切り換えられる。
入力軸2の軸線上には、駆動源ENG及びトルクコンバータTC側から、第1クラッチC1、第3遊星歯車機構PGS3、第4遊星歯車機構PGS4、第1遊星歯車機構PGS1、第3クラッチC3、第2遊星歯車機構PGS2、第1クラッチC1の順番で配置されている。
そして、第4ブレーキB4が第2遊星歯車機構PGS2の径方向外方に配置され、第3ブレーキB3が第3クラッチC3の径方向外方に配置され、第1ブレーキB1は第3遊星歯車機構PGS3の径方向外方に配置され、第2ブレーキB2は第1クラッチC1の径方向外方に配置されている。このように、4つのブレーキB1〜B4を遊星歯車機構、またはクラッチの径方向外方に配置することにより、ブレーキB1〜B4を遊星歯車機構及びクラッチと共に入力軸2の軸線上に並べて配置した場合に比べて、自動変速機TMの軸長の短縮化を図ることができる。尚、第4ブレーキB4を第2クラッチC2の径方向外方に配置し、第3ブレーキB3を第2遊星歯車機構PGS2の径方向外方に配置してもよい。
次に、図3及び図4を参照して、実施形態の自動変速機TMの各変速段を確立させる場合を説明する。
1速段を確立させる場合には、2ウェイクラッチたる第1ブレーキB1を逆転阻止状態(図4の「R」)とし、第2ブレーキB2及び第3ブレーキB3を固定状態とする。第1ブレーキB1を逆転阻止状態とすることで、第3連結体Cc−Cdの逆転が阻止される。また、第2ブレーキB2を固定状態とすることで第3遊星歯車機構PGS3のサンギアSc(第7要素)の回転速度が「0」になる。そして、第3連結体Cc−Cdの回転速度も「0」になる。
これにより、第3遊星歯車機構PGS3の第7から第9の3つの要素Sc,Cc,Rcが相対回転不能なロック状態となり、第3遊星歯車機構PGS3のリングギアRc(第9要素)を含む第1連結体Ca−Cb−Rcの回転速度も「0」になる。そして、出力部3が連結された第4遊星歯車機構PGS4のリングギアRd(第10要素)の回転速度が図4に示す「1st」となり、1速段が確立される。
尚、1速段を確立させるためには第3ブレーキB3を固定状態とする必要はないが、1速段から後述する2速段へスムーズに変速できるように1速段で固定状態とさせている。また、1速段でエンジンブレーキを効かせる場合には、2ウェイクラッチからなる第1ブレーキB1を固定状態(図4の「L」)に切り換えればよい。
2速段を確立させる場合には、2ウェイクラッチたる第1ブレーキB1を逆転阻止状態(図4の「R」)とし、第2ブレーキB2及び第3ブレーキB3を固定状態とし、第3クラッチC3を連結状態とする。第1ブレーキB1を逆転阻止状態とすることで、第3連結体Cc−Cdの正転が許容される。また、第2ブレーキB2を固定状態とすることで、第3遊星歯車機構PGS3のサンギアSc(第7要素)の回転速度が「0」になる。また、第3ブレーキB3を固定状態とすることで、第2遊星歯車機構PGS2のサンギアSb(第6要素)の回転速度が「0」になる。
また、第3クラッチC3を連結状態とするで、第2連結体Ra−Sdの回転速度が、第2遊星歯車機構PGS2のサンギアSb(第6要素)の回転速度と同一速度の「0」になる。そして、出力部3が連結された第4遊星歯車機構PGS4のリングギアRd(第10要素)の回転速度が図3に示す「2nd」となり、2速段が確立される。
3速段を確立させる場合には、2ウェイクラッチたる第1ブレーキB1を逆転阻止状態とし、第2ブレーキB2及び第3ブレーキB3を固定状態とし、第2クラッチC2を連結状態とする。第1ブレーキB1を逆転阻止状態とすることで、第3連結体Cc−Cdの正転が許容される。また、第2ブレーキB2を固定状態とすることで、第3遊星歯車機構PGS3のサンギアSc(第7要素)の回転速度が「0」になる。また、第3ブレーキB3を固定状態とすることで、第2遊星歯車機構PGS2のサンギアSb(第6要素)の回転速度が「0」になる。
また、第2クラッチC2を連結状態とすることで、第2遊星歯車機構PGS2のリングギアRb(第4要素)の回転速度が、入力軸2に連結された第1遊星歯車機構PGS1のサンギアSa(第1要素)の回転速度と同一速度の「1」となる。第2遊星歯車機構PGS2のサンギアSb(第6要素)の回転速度が「0」、リングギアRb(第4要素)の回転速度が「1」となるため、キャリアCb(第5要素)の回転速度、即ち第1連結体Ca−Cb−Rcの回転速度は、i/(i+1)となる。そして、出力部3が連結された第4遊星歯車機構PGS4のリングギアRd(第10要素)の回転速度が図3に示す「3rd」となり、3速段が確立される。
4速段を確立させる場合には、2ウェイクラッチたる第1ブレーキB1を逆転阻止状態とし、第2ブレーキB2を固定状態とし、第2クラッチC2及び第3クラッチC3を連結状態とする。第1ブレーキB1を逆転阻止状態とすることで、第3連結体Cc−Cdの正転が許容される。また、第2ブレーキB2を固定状態とすることで、第3遊星歯車機構PGS3のサンギアSc(第7要素)の回転速度が「0」になる。
また、第3クラッチC3を連結状態とすることで、第2遊星歯車機構PGS2のサンギアSb(第6要素)と第2連結体Ra−Sdとが同一速度で回転する。これにより、第1遊星歯車機構PGS1と第2遊星歯車機構PGS2との間では、キャリアCa(第2要素)とキャリアCb(第5要素)とが連結され、リングギアRa(第3要素)とサンギアSb(第6要素)とが連結されることとなり、第3クラッチC3を連結状態とする4速段においては、第1遊星歯車機構PGS1と第2遊星歯車機構PGS2とで4つの回転要素からなる1つの共線図を描くことができる。
そして、第2クラッチC2を連結状態とすることで、第2遊星歯車機構PGS2のリングギアRb(第4要素)の回転速度が、第1遊星歯車機構PGS1のサンギアSa(第1要素)の回転速度と同一速度の「1」となり、第1遊星歯車機構PGS1と第2遊星歯車機構PGS2とで構成される4つの回転要素のうちの2つの回転要素の回転速度が同一速度の「1」となる。
従って、第1遊星歯車機構PGS1及び第2遊星歯車機構PGS2の各要素が相対回転不能なロック状態となり、第1遊星歯車機構PGS1及び第2遊星歯車機構PGS2の全ての要素の回転速度が「1」となる。そして、第3連結体Cc−Cdの回転速度がj/(j+1)となり、出力部3が連結された第4遊星歯車機構PGS4のリングギアRd(第10要素)の回転速度が図3に示す「4th」となり、4速段が確立される。
5速段を確立させる場合には、2ウェイクラッチたる第1ブレーキB1を逆転阻止状態とし、第2ブレーキB2を固定状態とし、第1クラッチC1及び第2クラッチC2を連結状態とする。第1ブレーキB1を逆転阻止状態とすることで、第3連結体Cc−Cdの正転が許容される。また、第2ブレーキB2を固定状態とすることで、第3遊星歯車機構PGS3のサンギアSc(第7要素)の回転速度が「0」になる。
また、第1クラッチC1を連結状態とすることで、第3連結体Cc−Cdの回転速度が第1遊星歯車機構PGS1のサンギアSa(第1要素)の回転速度と同一速度の「1」になる。そして、出力部3が連結された第4遊星歯車機構PGS4のリングギアRd(第10要素)の回転速度が図3に示す「5th」となり、5速段が確立される。
尚、5速段を確立させるためには第2クラッチC2を連結状態とする必要はない。しかしながら、4速段及び後述する6速段では第2クラッチC2を連結状態とする必要があるため、5速段から4速段へのダウンシフト、及び5速段から後述する6速段へのアップシフトをスムーズに行えるように5速段でも連結状態とさせている。
6速段を確立させる場合には、2ウェイクラッチたる第1ブレーキB1を逆転阻止状態とし、第1から第3の3つのクラッチC1〜C3を連結状態とする。第1ブレーキB1を逆転阻止状態とすることで、第3連結体Cc−Cdの正転が許容される。
また、第2クラッチC2及び第3クラッチC3を連結状態とすることで、4速段で説明したように、第1遊星歯車機構PGS1と第2遊星歯車機構PGS2の各要素が相対回転不能な状態となり、第2連結体Ra−Sdの回転速度が「1」となる。また、第1クラッチC1を連結状態とすることで、第3連結体Cc−Cdの回転速度が「1」となる。
従って、第4遊星歯車機構PGS4は、キャリアCd(第11要素)とサンギアSd(第12要素)とが同一速度の「1」となり、各要素が相対回転不能なロック状態となる。そして、出力部3が連結された第4遊星歯車機構PGS4のリングギアRd(第10要素)の回転速度が図3に示す「6th」の「1」となり、6速段が確立される。
7速段を確立させる場合には、2ウェイクラッチたる第1ブレーキB1を逆転阻止状態とし、第3ブレーキB3を固定状態とし、第1クラッチC1及び第2クラッチC2を連結状態とする。第1ブレーキB1を逆転阻止状態とすることで、第3連結体Cc−Cdの正転が許容される。
また、第3ブレーキB3を固定状態とすることで、第2遊星歯車機構PGS2のサンギアSb(第6要素)の回転速度が「0」になる。また、第2クラッチC2を連結状態とすることで、第2遊星歯車機構PGS2のリングギアRb(第4要素)の回転速度が、第1遊星歯車機構PGS1のサンギアSa(第1要素)の回転速度と同一速度の「1」となり、第2遊星歯車機構PGS2のキャリアCb(第5要素)を含む第1連結体Ca−Cb−Rcの回転速度がi/(i+1)となる。
また、第1クラッチC1を連結状態とすることで、第3連結体Cc−Cdの回転速度が、入力軸2に連結された第1遊星歯車機構PGS1のサンギアSa(第1要素)の回転速度と同一速度の「1」になる。そして、出力部3が連結された第4遊星歯車機構PGS4のリングギアRd(第10要素)の回転速度が図3に示す「7th」となり、7速段が確立される。
8速段を確立させる場合には、2ウェイクラッチたる第1ブレーキB1を逆転阻止状態とし、第3ブレーキB3を固定状態とし、第1クラッチC1及び第3クラッチC3を連結状態とする。第1ブレーキB1を逆転阻止状態とすることで、第3連結体Cc−Cdの正転が許容される。
また、第3ブレーキB3を固定状態とすることで、第2遊星歯車機構PGS2のサンギアSb(第6要素)の回転速度が「0」になる。また、第3クラッチC3を連結状態とすることで、第2連結体Ra−Sdの回転速度が第2遊星歯車機構PGS2のサンギアSb(第6要素)の回転速度と同一速度の「0」になる。また、第1クラッチC1を連結状態とすることで、第3連結体Cc−Cdの回転速度が第1遊星歯車機構PGS1のサンギアSa(第1要素)の回転速度と同一速度の「1」になる。そして、出力部3が連結された第4遊星歯車機構PGS4のリングギアRd(第10要素)の回転速度が図3に示す「8th」となり、8速段が確立される。
9速段を確立させる場合には、2ウェイクラッチたる第1ブレーキB1を逆転阻止状態とし、第3ブレーキB3及び第4ブレーキB4を固定状態とし、第1クラッチC1を連結状態とする。第1ブレーキB1を逆転阻止状態とすることで、第3連結体Cc−Cdの正転が許容される。
また、第3ブレーキB3を固定状態とすることで、第2遊星歯車機構PGS2のサンギアSb(第6要素)の回転速度が「0」になる。また、第4ブレーキB4を固定状態とすることで、第2遊星歯車機構PGS2のリングギアRb(第4要素)の回転速度も「0」となる。このため、第2遊星歯車機構PGS2の各要素Sb,Cb,Rbは相対回転不能なロック状態となり、第2遊星歯車機構PGS2のキャリアCb(第5要素)を含む第1連結体Ca−Cb−Rcの回転速度も「0」になる。
また、第1クラッチC1を連結状態とすることで、第3連結体Cc−Cdの回転速度は第1遊星歯車機構PGS1のサンギアSa(第1要素)の回転速度と同一速度の「1」となる。そして、出力部3が連結された第4遊星歯車機構PGS4のリングギアRd(第10要素)の回転速度が図3に示す「9th」となり、9速段が確立される。
10速段を確立させる場合には、2ウェイクラッチたる第1ブレーキB1を逆転阻止状態とし、第4ブレーキB4を固定状態とし、第1クラッチC1及び第3クラッチC3を連結状態とする。第1ブレーキB1を逆転阻止状態とすることで、第3連結体Cc−Cdの正転が許容される。
また、第3クラッチC3を連結状態とすることで、第2連結体Ra−Sdと第2遊星歯車機構PGS2のサンギアSb(第6要素)とが同一速度で回転する。また、第4ブレーキB4を固定状態とすることで、第2遊星歯車機構PGS2のリングギアRb(第4要素)の回転速度が「0」になる。また、第1クラッチC1を連結状態とすることで、第3連結体Cc−Cdの回転速度が第1遊星歯車機構PGS1のサンギアSa(第1要素)の回転速度と同一速度の「1」となる。そして、出力部3が連結された第4遊星歯車機構PGS4のリングギアRd(第10要素)の回転速度が図3に示す「10th」となり、10速段が確立される。
後進段を確立させる場合には、2ウェイクラッチたる第1ブレーキB1を固定状態とし、第3ブレーキB3を固定状態とし、第2クラッチC2を連結状態とする。また、第3ブレーキB3を固定状態とし、第2クラッチC2を連結状態とすることで、第1連結体Ca−Cb−Rcの回転速度がi/(i+1)となる。また、第1ブレーキB1を固定状態とすることで、第3連結体Cc−Cdの回転が阻止され、第3連結体Cc−Cdの回転速度が「0」になる。そして、出力部3が連結された第4遊星歯車機構PGS4のリングギアRd(第10要素)の回転速度が図3に示す逆転の「Rvs」となり、後進段が確立される。
尚、図3中の破線で示す速度線は、4つの遊星歯車機構PGS1〜PGS4のうち動力伝達する遊星歯車機構に追従して他の遊星歯車機構の各要素が回転(空回り)することを表している。
図4は、上述した各変速段におけるクラッチC1〜C3、ブレーキB1〜B4の状態を纏めて表示した図であり、第1から第3の3つのクラッチC1〜C3、第2ブレーキB2から第4ブレーキB4の列の「○」は連結状態、または固定状態を示し、空欄は開放状態を示している。また、第1ブレーキB1の列の「R」は逆転阻止状態を示し、「L」は固定状態を示している。
また、下線を付した「R」及び「L」は第1ブレーキB1の働きで第3連結体Cc−Cdの回転速度が「0」となることを示している。また、「R/L」は、通常時は逆転阻止状態の「R」であるが、エンジンブレーキを効かせる場合には固定状態の「L」に切り換えることを示している。
また、図4には、第1遊星歯車機構PGS1のギア比hを2.734、第2遊星歯車機構PGS2のギア比iを1.614、第3遊星歯車機構PGS3のギア比jを2.681、第4遊星歯車機構PGS4のギア比kを1.914とした場合における各変速段の変速比(入力軸2の回転速度/出力部3の回転速度)、及び公比(各変速段間の変速比の比。所定の変速段の変速比を所定の変速段よりも1段高速側の変速段の変速比で割った値。)も示しており、これによれば、公比を適切に設定できることが分かる。
次に、図5を参照して、ツーウェイクラッチについて詳しく説明する。第1ブレーキB1は、第3連結体Cc−Cdを筐体1に固定する固定状態と、第3連結体Cc−Cdの正転を許容し逆転を阻止する逆転阻止状態とに切換自在なツーウェイクラッチで構成されている。このツーウェイクラッチの一例を図5に示して具体的に説明する。
図5の第1ブレーキB1としてのツーウェイクラッチTWは、第3連結体Cc−Cdに連結されるインナーリングTW1と、インナーリングTW1の径方向外方に間隔を存して配置されると共に筐体1に連結されるアウターリングTW2と、インナーリングTW1とアウターリングTW2との間に配置される保持リングTW3とを備える。
インナーリングTW1には、外周面に複数のカム面TW1aが形成されている。保持リングTW3には、カム面TW1aに対応させて複数の切欠孔TW3aが設けられている。この切欠孔TW3aには、ローラTW4が収容されている。また、ツーウェイクラッチTWは、図示省略した噛合機構を備える。
噛合機構は、アウターリングTW2と保持リングTW3とを連結するアウター連結状態と、インナーリングTW1と保持リングTW3とを連結するインナー連結状態とに切換自在に構成されている。
また、ローラTW4の径は、図5(a)に示すように、ローラTW4がカム面TW1aの中央部に存するときは隙間Aが開き、図5(b)及び(c)に示すように、ローラTW4がカム面TW1aの端部に存するときにはインナーリングTW1及びアウターリングTW2に接触するように、設定されている。
噛合機構で、アウターリングTW2と保持リングTW3とが連結されたアウター連結状態であるときは、インナーリングTW1が正転及び逆転のどちらに回転しようとしても、図5(b)及び(c)に示すように、保持リングTW3も筐体1に固定されているため、ローラTW4がカム面TW1aの端部に位置することとなる。
このとき、ローラTW4がカム面TW1aとアウターリングTW2の内周面とに挟まれて、インナーリングTW1の回転が阻止される。即ち、ツーウェイクラッチTWは固定状態となる。
図示省略した噛合機構は、インナーリングTW1と保持リングTW3とを連結するインナー連結状態では、図5(b)に示すように切欠孔TW3aがカム面TW1aの一方の端部に位置する状態となるように構成されている。
図5における時計回り方向を逆転方向とすると、このツーウェイクラッチTWは、インナーリングTW1と保持リングTW3とを連結するインナー連結状態とすることにより、逆転阻止状態となる。
また、本実施形態の自動変速機TMが搭載される車両には、シフトポジションを前進レンジ、ニュートラルレンジ、後進レンジ、の何れかに切換自在なシフトバイワイヤ形式のシフトレバー42(シフトポジション検出部)と、油圧制御回路43の油の温度(油温)を検出する油温検出部43aと、車両の走行速度を検出する車速検出部44と、エンジンブレーキ状態であるか否かを検出するエンジンブレーキ判定部46と、駆動源ENGの回転数を検出する駆動源回転数検出部48と、入力軸2の回転数を検出する入力回転速度検出部50と、ブレーキペダルのオン、オフを検出するブレーキペダル検出部54と、アクセルペダルのオン、オフを検出するアクセル開度検出部56とが設けられている。
なお、図1では、エンジンブレーキ判定部46を制御部ECUとは別のもののように示しているが、実際には、制御部ECUがエンジンブレーキ判定部46の機能を果たしている。
制御部ECUは、シフトレバー42のシフトポジションの情報、油温検出部43aからの油圧制御回路43の油の温度(油温)の情報、車速検出部44からの車両の走行速度の情報、エンジンブレーキ判定部46からのエンジンブレーキ状態であるか否かの情報、駆動源回転数検出部48からの駆動源ENGの回転数の情報、入力回転速度検出部50からの入力軸2の回転数の情報、ブレーキペダル検出部54からのブレーキペダルのオン、オフの情報、アクセル開度検出部56からのアクセルペダルのオン、オフの情報を受信する。
次に、図6及び図7を参照して、本実施形態の自動変速機TMにおいて、車両が後進側に走行中であって且つ運転者のシフト操作によりシフトポジションが後進レンジから前進レンジに切り換えらた場合の制御部ECUの作動を説明する。制御部ECUは、図6に示すフローチャートの処理を所定のサイクルタイムで実行する。
なお、図6のフロー及び図7では、第1ブレーキB1が固定状態である場合(B1→L)を前提条件としている。図8では、第1ブレーキB1が逆転阻止状態(R)であるとき(B1→R)の状態の遷移を示している。図7及び図8の「Map」は、制御部に記憶されたマップデータに基いて通常制御することを示している。また、本実施形態においては、車両の走行速度は絶対値でしか計測できず、車速の前後進の切り分けができないものを用いていることとして、説明する。
図6のフローでは、まず、ステップ1で後進側に走行中のときに、運転者のシフト操作によりシフトポジションが後進レンジから前進レンジに切り換えられたか否かを判定する。後進レンジのままである場合には、そのまま今回の処理を終了する。ステップ1で前進レンジに切り換えられた場合には、ステップ2に進み、アイドルニュートラル係合状態であるか否かを判定する。
なお、本実施形態において、アイドルニュートラル係合状態とは、制御部ECUが、入力軸2は自由に回転できると共に、出力部3の回転は阻止されるように、第3ブレーキB3を固定状態とし、第3クラッチC3を連結状態とする状態と定義する。
ステップ2でアイドルニュートラル係合状態でない場合には、ステップ3に進みニュートラル制御(N(D禁止))中であるか否かを判定する。ニュートラル制御(N(D禁止))中でない場合には、ステップ4に進み、1速インギヤ中であるか否かを判定する。1速インギヤ中でない場合には、ステップ5に進み、車両の走行速度としての車速V(この場合は、後進方向の車速)が第1所定速度未満となったか否かを判定する。
ステップ4で車速Vが第1所定速度未満となっていない場合、換言すれば、車速Vが第1所定速度以上である場合には、ステップ6に進み、車速Vが、第1所定速度よりも速い速度であり且つアイドルニュートラル係合状態に移行する条件としての車速である第2所定速度以下であるか否かを判定する。
ステップ6で、車速Vが第2所定速度以下である場合には、ステップ7に進み、第3ブレーキB3を連結状態とさせたまま(係合させたまま)、第2クラッチC2を開放状態(off)とすると共に第3クラッチC3を連結状態(on)として、アイドルニュートラル係合状態(I/Nモード)に移行して今回の処理を終了する。
ステップ6で、車速Vが第2所定速度以下でない場合、換言すれば、車速Vが第2所定速度を超える場合には、ステップ8に分岐し、ニュートラル状態となるように係合機構を制御する(例えば、第3ブレーキB3のみを固定状態のままとして、第2クラッチC2を開放状態とするなど)ニュートラル制御(N(D禁止))を実行して今回の処理を終了する。
ステップ3で、ニュートラル制御(N(D禁止))中である場合には、ステップ9に分岐し、車速Vが第1所定速度未満であるか否かを判定する。車速Vが第1所定速度未満でない場合、換言すれば、車速Vが第1所定速度以上である場合には、ステップ8に分岐し、ニュートラル制御(N(D禁止))を実行してそのまま今回の処理を終了する。
ステップ9で、車速Vが第1所定速度未満である場合には、ステップ10に進み、第3ブレーキB3を固定状態としたまま、第2クラッチC2を開放状態(off)とすると共に第2ブレーキB2を固定状態(on)とする1速インギヤモードを実行して今回の処理を終了する。
また、ステップ4で、1速インギヤモード実行中である場合には、ステップ10に分岐して、そのまま、1速インギヤモードを実行させて今回の処理を終了する。また、ステップ5で、車速Vが第1所定速度未満である場合には、ステップ10に分岐して、1速インギヤモードを実行させて今回の処理を終了する。
ステップ2でアイドルニュートラル係合状態である場合には、ステップ11に分岐して、車速Vがエンジンストールの虞が無い第3所定速度以下となったか否かを判定する。ここで、第3所定速度は、第1所定速度よりも遅い速度であって、トルクコンバータへの入力負荷が低く、エンジンストール発生の虞の無い速度に設定されている。
車速Vが第3所定速度未満でない場合、換言すれば、車速Vが第3所定速度以上である場合には、ステップ7に進み、引き続きアイドルニュートラル制御を実行して、今回の処理を終了する。
ステップ11で車速Vが第3所定速度以下である場合には、ステップ12に分岐し、第3クラッチC3を開放状態(off)とし、第2ブレーキB2を固定状態(on)として、アイドルニュートラル係合状態を終了させ、今回の処理を終了する。
なお、アイドルニュートラル係合状態であるときに駆動輪がロックして滑っている場合には、制御部ECUは、このロックを解除できるように係合機構C1〜C3、B2〜B4を適宜制御する。
また、本実施形態では、図7(b)に示す如くアイドルニュートラル係合状態(I/N)のときに、第1ブレーキB1を固定状態(L)から逆転阻止状態(R)に切り替える。このアイドルニュートラル係合(I/N)中に第1ブレーキB1を切り換えについて、図9のフローチャートを参照して詳しく説明する。
制御部ECUは、まずステップ21で、アイドルニュートラル係合状態であるか否かを確認する。アイドルニュートラル係合状態でない場合には、そのまま今回の処理を終了する。アイドルニュートラル係合状態である場合には、ステップ22に進み、第1ブレーキB1が固定状態(L)から逆転阻止状態(R)への切り換え途中であるか否かを確認する。
ステップ22で第1ブレーキの切り換え途中でない場合には、ステップ23に進み、第1ブレーキB1が固定状態(L)であるか否かを確認する。第1ブレーキB1が固定状態(L)ではなく逆転阻止状態(R)であるときには、そのまま今回の処理を終了する。
ステップ23で、第1ブレーキB1が固定状態(L)であるときには、ステップ24に進み、第3クラッチC3に供給される油圧が、第3クラッチC3が完全に締結されたとみなせる程度に設定された設定値以上であるか否かを確認する。第3クラッチC3に供給される油圧が、設定値未満である場合には、そのまま今回の処理を終了する。
ステップ24で、第3クラッチC3に供給される油圧が、設定値以上である場合には、ステップ25に進み、車両の減速度が所定値以下であるか否かを確認する。ここで、本実施形態では、所定値を、第1ブレーキB1の切り換えがスムーズに行うことができる程度の荷重が車両の減速によって加わる値に設定している。車両の減速度は、例えば、ブレーキ液圧からのブレーキ制動力の推定、車両の走行路の勾配推定値などを用いて判定してもよい。
ステップ25で、車両の減速度が所定値以下である場合には、ステップ26に進み、第1ブレーキB1を固定状態(L)から逆転阻止状態(R)に切り換える処理を実行させて、今回の処理を終了する。
ここで、第1ブレーキB1に比較的大きな荷重が加わっている場合、切換機構としての第1ブレーキB1を固定状態(L)から逆転阻止状態(R)にスムーズに切り換えることができない。本実施形態においては、車両の減速度が所定値以下である場合に、第1ブレーキB1を固定状態(L)から逆転阻止状態(R)に切り換えるため、車両の減速度に伴う大きな荷重が加わっていないときに第1ブレーキB1を切り換えることができる。従って、第1ブレーキB1をスムーズに切り換えることができる。
ステップ22で第1ブレーキの切り換え途中である場合には、ステップ26に進み第1ブレーキB1を固定状態(L)から逆転阻止状態(R)に切り換える処理を実行させて、今回の処理を終了する。
なお、アイドルニュートラル係合状態となることなく後進インギヤ(RVS)から1速インギヤ(LOW)に移行する場合には、例えば、図7(a)、(c)などの場合には、1速インギヤに移行した後、第1ブレーキB1を固定状態から逆転阻止状態に切り換える。但し、アイドルニュートラル係合状態とならない場合であっても、1速インギヤに移行する前に、第1ブレーキB1を固定状態から逆転阻止状態に切り換え、第2ブレーキB2を固定状態として、2速インギヤとし、その後、第3クラッチC3を開放状態に切り換えて1速インギヤとするようにしてもよい。
本実施形態の自動変速機TMによれば、後進走行中であって車速が第2所定速度以下、第1所定速度以上である場合には、入力軸2は自由に回転できると共に、出力部3の回転は阻止されるように、第2クラッチC2を開放して、第3クラッチC3を係合し、アイドルニュートラル係合状態となるように係合機構を制御する。また、車速が第2所定速度を超える場合には、出力部3の回転を阻止すると、駆動輪がロックして滑る虞がある。
従って、車速が第2所定速度を超える場合には、ニュートラルとして、第1所定速度未満まで車速が落ちるのを待ち、第1所定速度未満まで減速してから1速インギヤとするようにしている。
これにより、車両が後進方向に走行している状態であっても、トルクコンバータのタービンが逆回転することを阻止できる。従って、本実施形態の自動変速機TMによれば、後進レンジから前進レンジに切り換えたときのトルクコンバータへの高い負荷の入力を防止し、エンジンストールを防止することができる。なお、後進走行中であって車速が第1所定速度未満であるときは、トルクコンバータへの高い負荷の入力の虞が無い。このため、直ちに1速インギヤに移行することができる。
また、アイドルニュートラル係合状態のときは、車両の減速度が所定値以下であるときに、切換機構としての第1ブレーキB1を固定状態(L)から逆転阻止状態(R)に切り換える。これにより、比較的大きな荷重が加わっている状態で切換機構としての第1ブレーキB1を固定状態(L)から逆転阻止状態(R)に切り換えることを阻止することができ、第1ブレーキB1をスムーズに切り換えることができ、アイドルニュートラル係合状態から1速インギヤ状態にもスムーズに移行することができる。
なお、本実施形態の自動変速機TMにおいては、何れか1つの変速段(例えば、10速段)を省略して前進9速段の変速を行うように構成してもよい。
また、本実施形態では、シフトポジションの切換えをシフトバイワイヤ形式のシフトレバー操作で行うものを説明した。しかしながら、シフトポジションの切換え方法については、これに限らず、例えば、ボタンの押圧などによってシフトポジションを切り換えるように構成されていてもよい。この場合、例えば、ボタンの押圧信号から選択されたシフトポジションを判断するように構成することもできる。
また、本実施形態においては、切換機構に係る荷重を車両の減速度に基づいて判定したものを説明したが、本発明は、これに限らず、切換機構に係る荷重を推定して、切換機構をスムーズに切り換えられるときに、固定状態(L)から逆転阻止状態(R)に切り換えるように構成されていれば、他の車両情報に基づいて判定させてもよい。
例えば、後進段で走行中にエンジンブレーキが作用している場合には、固定状態(L)から逆転阻止状態(R)へ切り換えようとするときに、この切り換えを阻害するような荷重が加わっていない状態となる。このため、後進段でエンジンブレーキが作用しているときにシフトポジションが切り換えられた場合には、アイドルニュートラル係合状態に移行する前に、切換機構の切り換えを実行するように構成してもよい。エンジンブレーキが作用しているか否かは、例えば、車両の走行速度に対する駆動源ENGの回転速度の変化やトルクコンバータのスリップ量(トルコンスリップ率)などに基づいて判定することができる。
この場合の具体例を、図10に示す他の実施形態のフローチャートを参照して、詳しく説明する。図10のフローチャートに示すように、まず、ステップ31で、運転者のシフト操作によりシフトポジションが後進レンジから前進レンジに切り換えられたか否かを確認する。切り換えられていない場合には、そのまま今回の処理を終了する。
ステップ31で前進レンジに切り換えられている場合には、ステップ32に進み、アイドルニュートラル係合状態であるか否かを確認する。アイドルニュートラル係合状態でない場合には、ステップ33に進み、第1ブレーキB1が逆転阻止状態(R)であるか否かを確認する。第1ブレーキB1が逆転阻止状態(R)でない場合には、ステップ34に進み、第1ブレーキB1が固定状態(L)から逆転阻止状態(R)へ切り換えられる途中であるか否かを確認する。
第1ブレーキB1が固定状態(L)から逆転阻止状態(R)へ切り換えられる途中でない場合には、ステップ35に進み、トルクコンバータのスリップ率が規定値以上であるか否かを確認する。ここで、規定値は、エンジンブレーキが利き始めるときの値に設定されている。即ち、トルクコンバータのスリップ率が規定値以上の場合には、エンジンブレーキが利いている状態ということになる。
ステップ35でスリップ率が規定値以上である場合には、エンジンブレーキが利いているため、ステップ36に進み、第1ブレーキB1を固定状態(L)から逆転阻止状態(R)へ切り換えて、今回の処理を終了する。
ステップ32でアイドルニュートラル係合状態である場合には、ステップ37に分岐し、アイドルニュートラル係合状態ときの制御を実行させて、今回の処理を終了する。
ステップ33で第1ブレーキB1が逆転阻止状態(R)である場合には、ステップ37に分岐し、アイドルニュートラル係合状態ときの制御を実行させて、今回の処理を終了する。
ステップ34で、第1ブレーキB1が固定状態(L)から逆転阻止状態(R)へ切り換えられる途中である場合には、ステップ36に進み、引き続き、第1ブレーキB1を固定状態(L)から逆転阻止状態(R)へ切り換える制御を実行させて、今回の処理を終了する。
ステップ35で、スリップ率が規定値未満である場合には、ステップ37に分岐し、アイドルニュートラル係合状態ときの制御を実行させて、今回の処理を終了する。この場合には、アイドルニュートラル係合状態とのときに第1ブレーキB1を固定状態(L)から逆転阻止状態(R)へ切り換えることとなる。
なお、実施形態の説明中で用いたすべてのフローチャートは、所定の周期で繰り返し実行される。