JP6201164B2 - 活性エネルギー線硬化性ナノカーボン分散液、その製造方法及びそれを用いた活性エネルギー線硬化型コーティング剤 - Google Patents

活性エネルギー線硬化性ナノカーボン分散液、その製造方法及びそれを用いた活性エネルギー線硬化型コーティング剤 Download PDF

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Description

本発明は、高分散性且つ長期間にわたって分散性が維持できる活性エネルギー線硬化性ナノカーボン分散液、その製造方法及びそれを用いた活性エネルギー線硬化型導電性コーティング剤に関する。具体的には、N−置換(メタ)アクリルアミド、ポリビニルピロリドン及びナノカーボンからなる活性エネルギー線硬化性ナノカーボン分散液、該分散液の製造方法及びそれを用いた活性エネルギー線硬化型導電性コーティング剤、該コーティング剤から形成されるコーティング膜に関する。
近年、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ(PDP)等のフラットパネルディスプレイ(FPD)及びスマートフォン、PC等のタッチパネルの普及により、帯電防止性や導電性が付与された光学用透明粘着剤・接着剤、ハードコート剤、透明性粘着・接着フィルムやシートなどの需要が著しく増加してきた。それは、一般的な粘着剤・接着剤、ハードコート剤等はプラスチック材料で構成されているため電気絶縁性が高く、そのままでは静電気の発生、塵埃の付着による電子表示部材の損傷が生じ易い問題があったためである。
静電気の発生を防ぐため、従来から界面活性剤、低分子イオン成分(無機塩、有機塩、イオン液体等)(特許文献1、2)や高分子帯電防止成分(分子中に第4級アンモニウム塩のユニットを有するオリゴマー、ポリマー等)(特許文献3)を粘着剤、接着剤、ハードコート剤等のコーティング剤の主成分に添加し混合する方法が用いられている。しかしながら、界面活性剤や低分子イオン成分を添加した場合、これらの低分子成分が徐々にブリードアウトし、コーティング膜の表面が汚れたり、持続的に帯電防止効果を維持できなかったりする。一方、ブリードアウトの少ない高分子帯電防止成分を添加した場合、アクリル系ポリマーを主成分とするコーティング剤との相溶性が悪く、コーティング膜の透明性が低下すると共に十分な帯電防止性能が付与されず、しかも、環境の湿度に依存することが避けられない。
ポリアニリン、ポリチオフェンやポリピロール等の導電性高分子は、高導電率と低ブリードアウト性を有することから、導電性や帯電防止性組成物の構成成分として注目されてきた。しかし、これらの導電性高分子は非常に凝集力が高いため、多くの有機溶媒に不溶で、バインダー樹脂中にも均一に分散できないことがあり、各種プラスチック基材に対する密着性やコーティング膜の成形性に劣り、また、塗膜が形成されても硬くて脆いため機械的強度が不十分という問題があった。そこで、特許文献4には、スルホコハク酸を含むドーパントでドープすることで相溶性の良い導電性ポリマーが提案された。また、特許文献5には、導電性ポリマー、光カチオン重合性モノマー、光酸発生剤と溶媒を混合して、紫外線硬化することによって導電性樹脂膜の機械的強度と基材への密着性を改善した技術が提案された。ところが、これらの組成物は酸性であるため、インジウム錫酸化物系透明電極(ITO電極)を腐食するという新たな問題が浮かんできた。
一方、カーボンナノチューブなどのカーボン系フィラーが高い電気伝導性と優れた機械的特性を有し、しかも中性であることから、電子材料分野での利用が盛んに検討されている。しかしながら、カーボン系フィラーは空気を抱き込んだ嵩高い疎水性表面を有するため、水や有機溶媒、樹脂などに対する濡れ性が悪く、分散媒体中に分散させることが大きな課題となっている。また、カーボン系フィラー同士のファンデアワールス力が強いので、一旦分散されても、再凝集が生じ易く、取り扱いが煩雑である。特にカーボンナノチューブはアスペクトが非常に大きいので、常に絡まっている状態で存在し、分散剤による吸着力が弱い場合、分散剤の脱着で分散状態が破壊し易くなり、分散の経時安定性が十分に得られないという問題があった。
そこで、カーボンナノチューブなどのカーボン系フィラーの分散性改善の目的で、種々の物理的分散処理や化学的表面修飾の試みが行われている。例えば、特許文献6には、強いせん断攪拌力を有するビーズミルなどの高速攪拌型分散機で攪拌・混合することによりカーボンナノチューブをモノマーもしくはモノマー溶液中に微分散させてから重合反応させる、カーボンナノチューブが微分散状態で分散された導電性合成樹脂の製造方法、特許文献7には、カーボンナノチューブ凝集体の表面に磁性体を付着させることで、複数のカーボンナノチューブ凝集体が磁気的な力で互いに引っ張り合うことになり、カーボンナノチューブが凝集体から引き剥がされる、安定した分散体の取得技術が提案されている。また、特許文献8には、フェニレン系ポリマーをカーボンナノチューブに付着させ、カーボンナノチューブ複合体を製造してから溶媒中に分散させる方法、特許文献9には、超音波分散機を用いてカーボンナノチューブをアクリル樹脂の水溶液中に分散させた後、アクリル樹脂を析出させてることにより表面を樹脂にて処理したカーボンナノチューブを得る技術、特許文献10には、強酸処理と超音波処理との組み合わせによりカーボンナノチューブの末端を開口させ、その開口部をオクタデジルアミンで修飾する、有機溶媒に分散可能なカーボンナノチューブの合成方法を開示している。しかし、これらの方法は、特殊な機器処理又は複雑な化学処理を必要とし、操作が煩雑で、工業的に有利な方法とは言えない。また、カーボンナノチューブの切断や導電性の低下を招く問題があった。
さらに、特許文献11には、カーボンナノチューブの存在下で過酸化フルオロアルカノイルをラジカル開始剤として用い、アクリル酸、アクリロイルモルホリン、N,N−ジメチルアクリルアミド及びN−(1,1−ジメチル−3−オキソブチル)アクリルアミドを重合させてカーボンナノチューブ含有オリゴマーを合成し、有機溶媒への親媒性を付与した可溶性カーボンナノチューブとして提案されている。しかしながら、これらのカーボンナノチューブ含有オリゴマーは両末端に必ず開始剤由来のフッ素官能基を有する有機フッ素化合物であり、自然環境において極めて難分解のため、環境有害化学物質としてその使用量の削減や全面廃止が求められている。
一方、物品の表面を樹脂でコーティングする方法として、紫外線(UV)や電子線(EB)などの活性エネルギー線照射による方法は、硬化時間が短く、加熱しないので省エネルギーで安全性が高く、また塗膜の硬度、耐摩耗性、耐薬品性等が良好であることから、家電部品の塗装、携帯電話ボディの塗装、自動車部品の塗装等幅広く応用されている。これらの分野においても、導電性や帯電防止性が要求されるため、カーボンナノチューブなどのカーボン系フィラー配合のUV硬化型コーティング組成物の開発が盛んに行われている。例えば、特許文献12には、カーボンナノチューブのジメチルホルムアミド(DMF)分散液を基板上にコーティングしてから、100℃でDMFを蒸発させ、カーボンナノチューブ堆積層を形成し、その後有機溶剤系UVコーティング剤を堆積層に積層させ、同様に100℃で乾燥、UV照射により導電性ハードコートを製造する方法、特許文献13には、導電性ポリマーを分散剤として用いてカーボンナノチューブの水或いは有機溶剤の分散液を調製してから、硬化性組成物と混合し、基材上に塗布、乾燥、硬化させる方法、特許文献14には、分散剤として酸性官能基或いは塩基性官能基を有する化合物を配合したカーボンナノチューブの有機溶剤系分散液を調製してから、多官能アクリレート系モノマー及び光重合開始剤と混合、塗布、乾燥、EB照射で硬化させる方法、特許文献15には、分散剤アミン変性アクリルポリマー、カーボンナノチューブと有機溶剤の分散液を調製、UV硬化性樹脂と混合した後、遠心分離で得られた上澄み液を基材上に塗布、乾燥、UV硬化により透明導電性塗膜を製造する方法が開示されている。しかしながら、これらの従来技術は、カーボンナノチューブの分散に水或いは有機溶媒が必須であり、水又は溶剤を除去するために加熱乾燥を行うことが必要となり、生産性が低いという問題があった。また、大量溶剤の除去に伴い(例えば、特許文献14のコーティング組成物中の溶剤は90重量%程度)、当然ながら、乾燥後の塗膜中のカーボンナノチューブを含め、各種構成成分の分散状態が変化し、得られる硬化膜の透明性、表面平滑性と表面光沢性が十分に満足できない問題がある。さらに、導電性ポリマーや酸性官能基を有する化合物の使用によりITO電極が腐食される問題も回避できない。
特開2008−231240号公報 特開2008−13636号公報 特開2008−231196号公報 特開2008−260897号公報 特開2010−202704号公報 特開2003−308734号公報 特開2007−063107号公報 WO2008−143233号公報 特開2008−280450号公報 特開平8−12310号公報 特開2006−248840号公報 特開2010−516018号公報 特開2007−63481号公報、特開2008−56765号公報 特開2009−67932号公報、特開2009−67933号公報 特開2008−179787号公報
本発明は、特殊な分散技術や分散設備を要さず、水や有機溶剤を特に含有させる必要がなく、カーボンナノチューブなどのナノカーボンが本来の特性を損なうことなく高度に分散され、しかも長期保存時に分離や凝集をせず、且つ優れた活性エネルギー線硬化性を有するナノカーボン分散液及びその製造方法を提供することを課題とする。
また、該活性エネルギー線硬化性ナノカーボン分散液が配合された、各種基材に対する密着性、成膜性が良好で、優れた平滑性、透明性、硬度、耐擦傷性、耐久性と導電性、帯電防止性を併せ持つコーティング膜を形成でき、しかも高硬化速度を有する活性エネルギー線硬化型コーティング剤を提供することを課題とする。
さらに、本発明は、このような活性エネルギー線硬化性ナノカーボン分散液、活性エネルギー線硬化型コーティング剤及びそれから形成されるコーティング膜、導電性樹脂組成物、インキ、粘・接着剤を提供することを課題とする。
本発明者はこれらの課題を解決するために鋭意検討を行った結果、N−置換(メタ)アクリルアミドとポリビニルピロリドンの混合溶液中にナノカーボンを分散させることにより活性エネルギー線硬化性ナノカーボン分散液が得られることを見出し、また、該分散液をベースにした活性エネルギー線硬化型コーティング剤、導電性樹脂組成物、インキ、粘・接着剤が得られることを見出した。該活性エネルギー線硬化型コーティング剤を基材表面に塗布、硬化させることによりコーティング膜を形成させることができ、これにより上記課題を解決し、本発明に到った。
すなわち、本発明は、
(1)ナノカーボン、N−置換(メタ)アクリルアミドとポリビニルピロリドンからなることを特徴とする活性エネルギー線硬化性ナノカーボン分散液、
(2)前記ナノカーボンがカーボンナノチューブ(単層、2層、多層タイプ、カップスタック型)、カーボンナノファイバー、カーボンナノホーン、フラーレン又はグラフェンから選ばれる少なくとも1種である前記(1)記載の活性エネルギー線硬化性ナノカーボン分散液、
(3)前記ナノカーボンの配合量が0.01〜20重量%である前記(1)または(2)に記載の活性エネルギー線硬化性ナノカーボン分散液、
(4)前記N−置換(メタ)アクリルアミドが、1気圧下、融点100℃以下であり、活性エネルギー線重合性(メタ)アクリルアミド系のモノマー及び/又はオリゴマーである前記(1)〜(3)のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化性ナノカーボン分散液、
(5)前記N−置換(メタ)アクリルアミドが、(メタ)アクリロイルモルホリン、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ビスヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシブチル(メタ)アクリルアミドから選ばれる1種以上のモノマー、又はこれらのモノマーを構成モノマーとして含むオリゴマーである前記(1)〜(4)いずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化性ナノカーボン分散液、
(6)前記N−置換(メタ)アクリルアミド系のモノマー及び/又はオリゴマーは、単独又は2種以上の混合品として用い、25℃における粘度が0.5〜500mPasであることを特徴とする前記(1)〜(5)いずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化性ナノカーボン分散液、
(7)前記ポリビニルピロリドンの分子量が重量平均で500〜60万であることを特徴とする前記(1)〜(6)いずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化性ナノカーボン分散液、
(8)前記ポリビニルピロリドンの配合量が0.05〜15重量%であることを特徴とする前記(1)〜(7)いずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化性ナノカーボン分散液、
(9)N−置換(メタ)アクリルアミドとポリビニルピロリドンの混合溶液にカーボンナノチューブを加え、物理的衝撃を与えることによってナノカーボンを分散させることを特徴とする活性エネルギー線硬化性ナノカーボン分散液の製造方法、
(10)N−置換(メタ)アクリルアミドとポリビニルピロリドンの混合溶液において、溶液中のポリマー粒子径が1〜2000nmであることを特徴とする前記(10)に記載の活性エネルギー線硬化性ナノカーボン分散液の製造方法、
(11)分散されずに残ったナノカーボン及び/又は再凝集したナノカーボン由来の凝集物を除去することを特徴とする前記(9)又は(10)に記載の活性エネルギー線硬化性ナノカーボン分散液の製造方法、
(12)分散液中に含まれるナノカーボンが分散前に添加したナノカーボンに対して50重量%以上であることを特徴とする前記(9)〜(11)いずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化性ナノカーボン分散液の製造方法、
(13)前記(1)〜(8)のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化性ナノカーボン分散液を含有し、且つ構成成分としてナノカーボンを0.01重量%以上、ポリビニルピロリドンを0.05重量%以上、N−置換(メタ)アクリルアミドを10重量%以上含有した活性エネルギー線硬化型コーティング剤、
(14)前記(13)記載の活性エネルギー線硬化型コーティング剤を基材の少なくとも一つの面上に塗布し、活性エネルギー線を照射して形成した導電性コーティング膜、導電性フィルム、導電性シート又は導電性テープ、
(15)前記(1)〜(8)のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化性ナノカーボン分散液を含有する活性エネルギー線硬化型導電性樹脂、
(16)前記(1)〜(8)のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化性ナノカーボン分散液を含有する活性エネルギー線硬化型導電性インキ、
(17)前記(1)〜(8)のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化性ナノカーボン分散液を含有する活性エネルギー線硬化型導電性粘着剤、導電性接着剤
を提供するものである。
本発明の活性エネルギー線硬化性ナノカーボン分散液はN−置換(メタ)アクリルアミド、ポリビニルピロリドンとカーボンナノチューブから構成されており、N−置換(メタ)アクリルアミドのアミド基とポリビニルピロリドンの環状アミド構造の相互作用により、カーボンナノチューブ等のナノカーボンの分散性が向上されると同時に凝集力が抑制され、ほぼ理想に近いカーボンナノチューブの独立分離が達成でき、且つ安定的に分散状態を維持することができる。
また、該ナノカーボン分散液をベースにし、必要に応じて 活性エネルギー線重合開始剤、多官能アクリル系モノマーやオリゴマー、各種熱可塑性樹脂組成物と混合して使用することによって様々な用途に用いることが可能な、高硬化速度を有する導電性、帯電防止性の活性エネルギー線硬化型コーティング剤などを提供することができる。このようなコーティング剤は長期保存時に分離や凝集することなく、各種基材に対する密着性、成膜性が良好で、紙類、フィルム、シート、板、光情報記録媒体等の基材表面に塗布し、活性エネルギー線で硬化させることにより透明導電性コーティング膜を形成することができる。このようにして形成されたコーティング膜は、表面平滑性と表面光沢性が高く、透明性と導電性や帯電防止性が良好であり、また、硬度、耐擦傷性と耐久性等に優れている。
本発明に用いられるN−置換(メタ)アクリルアミド系モノマー及び/又はオリゴマーは活性エネルギー線による硬化速度が速く、また、アミド基を有するため、各種基材との密着性が高く維持されると同時にカーボンナノチューブ等のナノカーボン表面のフェノール系水酸基やカルボキシル基との間に水素結合を形成しやすいため、カーボンナノチューブ等のナノカーボンを基材表面に均一に分散したネットワークを形成でき、連続的なコーティング膜を形成し易いと考えられる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の活性エネルギー線硬化性ナノカーボン分散液はN−置換(メタ)アクリルアミド、ポリビニルピロリドンとナノカーボンから構成される。
本発明の分散液をなす1成分のN−置換(メタ)アクリルアミドは、1気圧下、融点100℃以下の活性エネルギー線重合性(メタ)アクリルアミド系のモノマー又はオリゴマーである。
N−置換(メタ)アクリルアミドのモノマーとしては、(メタ)アクリロイルモルホリン、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ビスヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシブチル(メタ)アクリルアミドが挙げられる。これらのモノマーは単独で使用してもよいし、また2種類以上併用してもよい。
N−置換(メタ)アクリルアミドオリゴマーは前記N−置換(メタ)アクリルアミドモノマーの単独重合、又は他の共重合可能なビニル系単量体との共重合で合成された、重量平均分子量が1万以下で、1気圧下、融点100℃以下のオリゴマーである。また、他の共重合可能なビニル系単量体としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
N−置換(メタ)アクリルアミドのモノマー及び/又はオリゴマーは、単独又は2種以上の混合品として用いることができる。単独品も混合品も、25℃における溶液粘度が0.5〜500mPasであることが好ましく、また、1.0〜350mPasが特に好ましい。溶液粘度が0.5〜500mPasの範囲内であれば、ポリビニルピロリドンが良分散状態となって、ポリマーの粒子径が小さく、ナノカーボンを均一に分散させることができる。
本発明のエネルギー線硬化性分散液をなす別の1成分は、ポリビニルピロリドン(PVP) である。PVPはN−置換(メタ)アクリルアミドに可溶なものであり、ビニルピロリドンの単独重合により得られるホモポリマー及び/又は他の重合性化合物との共重合により得られるコポリマーが挙げられる。
本発明のPVPがビニルピロリドンと他の重合性化合物との共重合体である場合、構成単位であるビニルピロリドンが5モル%以上、好ましく10モル%以上、さらに好ましくは20モル%以上である。5モル%未満であると、十分なナノカーボン分散促進効果を付与することが困難であり、均一な高分散性分散液を得られなくなる恐れがある。
前記他の重合性化合物としては、アルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、不飽和ニトリルモノマー、不飽和カルボン酸、アミド基含有モノマー、メチロール基含有モノマー、アルコキシメチル基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、多官能性モノマー、ビニルエステル、オレフィンなど分子鎖中に反応性二重結合をもつラジカル重合化合物が挙げられる。
アルキル(メタ)アクリレートの例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ラウリルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ラウリルメタクリレートなどが挙げられる。
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えばヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N−メチルヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ジヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、及びヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
不飽和ニトリルモノマーの例としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが挙げられる。
不飽和カルボン酸の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、モノアルキルイタコネート等がある。
このような重合性化合物は、1種類に限らず、複数の種類を組み合わせて使用してもよい。
本発明に用いるPVPを取得するために、公知の方法によってビニルピロリドンの単独重合又は他の重合性化合物と共重合を行うことができる。重合方法としては、特に限定されるものではなく、公知のラジカル重合法により実施可能である。例えば、アルコール、酢酸エチルなどの有機溶媒中の溶液重合、有機溶媒の変わりに水を使用する水溶液重合、懸濁重合、乳化重合、塊状重合法などが挙げられる。有機溶媒中の溶液重合法を採用する場合、重合溶媒としては、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルアルコール、エチルアルコールなどの単独もしくは混合で用いることができる。
ラジカル重合開始剤として、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスバレロニトリル等のアゾ化合物系触媒や、ベンゾイルパーオキシド、過酸化水素等の過酸化物系触媒、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウムなどの過硫酸塩系触媒等を用いることができる。重合開始剤の使用量は、重合性単量体100重量%に対して0.05〜10重量%、好ましくは0.2〜3重量%である。
本発明に用いられるPVPの分子量が重量平均で500〜60万、好ましくは1000〜50万である。PVPの分子量が重量平均で500未満の場合、ナノカーボンの再凝集抑制効果が十分に得られず、一旦分散されたナノカーボンの再凝集を起こしてしまう可能性がある。一方、60万を超えると、N−置換(メタ)アクリルアミドとPVPの混合溶液中のポリマー粒子径が増大し、又は、分散液粘度が増加し、PVPの溶解時間もナノカーボンの分散に要する時間も大幅に延長する必要があり、生産性の低下を招くことになると共に分散不十分の状態に陥る可能性もある。
本発明の活性エネルギー線硬化性ナノカーボン分散液中のPVPの配合量は、0.05〜15重量%であり、中でも0.1〜10重量%が好ましく、また0.5〜8重量%が特に好ましい。PVP含有量が0.05重量%未満では ナノカーボンに対する分散促進効果と再凝集抑制効果が共に十分に得られない場合がある。また、PVP含有量が15重量%を超えると、PVPの分子量にもよるが、分散液の粘度が増加するため、ナノカーボンの分散性が低下し、十分な導電性、帯電防止性を付与できない場合がある。
本発明に用いられるナノカーボンは直径がナノメートル単位の炭素粒子で構成される物質であり、その材料の形状において、少なくとも1辺の長さが1000nm以下、好ましくは500nm以下で、具体的には、カーボンナノチューブ(単層・二層・多層タイプ、カップスタック型)、カーボンナノファイバー、カーボンナノホーン、フラーレン又はグラフェンを挙げることができる。
これらのナノカーボンの中でも、カーボンナノチューブ(CNT)は電気伝導性が高く、また高強度、高弾性、熱伝導性が高く、耐薬品性が優れる等の特徴があり、好適である。
CNTは、炭素によって作られる六員環ネットワーク(グラフェンシート)を丸めて形成された単層あるいは2層、多層の同軸中空の管状構造の炭素結晶である。単層CNTはシングルウォールカーボンナノチューブ(SWCNT)、2層CNTはダブルウォールカーボンナノチューブ(DWCNT)、また多層CNTはマルチウォールカーボンナノチューブ(MWCNT)とも呼ばれている。ナノカーボンとして従来公知のCNTが使用でき、特に限定されないが、通常は直径0.4〜200nm(好ましく2〜100nm)、長さ0.1〜数百μm程度(好ましく0.5〜100μm)である。尚、当該チューブの長さ、直径は、AFM(原子間力顕微鏡)を用いて、所定範囲内に存在する100個以上の構造体について測定し、90%以上の個数が入る範囲とする。
カーボンナノファイバーは特に限定されるものではなく、通常の炭素繊維、カーボンファイバーとも呼び、即ち、直径100〜200nm程度、長さ5〜20μmの極細カーボン繊維である。具体的には、アクリル繊維を使った炭素繊維(PAN系)、ピッチを使った炭素繊維(PITCH系)が挙げられる。特に、気相法により合成された繊維径150nm、繊維長10〜20μmのカーボンナノファイバー(昭和電工株式会社製のVGCF)は、炭素の結晶がきれいに並んでおり、導電性に優れ、好ましく用いられる。
カーボンナノホーンはナノカーボンの一種であり、グラフェン(グラファイトシート)を円錐形に丸めた構造をしており、直径は2〜5nm、長さ40〜50nmで不規則な形状を持ち、数百本寄り集まって直径100nm程度の球形集合体を形成している。例えば、日本電気株式会社製のカーボンナノホーンや開孔カーボンナノホーンが挙げられる。
また、本発明に使用されるナノカーボンについて、特に精製や表面処理、化学修飾などをする必要はないが、表面処理等をされたものを使用しても良い。表面処理の種類については特に制限はないが共有結合を利用したもの(例えば、カルボキシル基等による変性等)、非共有結合を利用したものなどが挙げられる。
本発明に用いられるナノカーボンはそれぞれの目的に応じて単独で使用してもよいし、また2種類以上併用してもよい。これらのナノカーボンは通常市販品のまま使用可能であるが、カーボンナノチューブ、特に比較的安価の多層カーボンナノチューブにおいて、CNT同士の絡まり合いによって形成される数十μm程度の凝集体として存在する場合は、ビーズミル分散処理、超音波分散処理などの物理的な分散処理を実施してからの使用がより好ましい。
本発明の活性エネルギー線硬化性ナノカーボン分散液中の前記ナノカーボンの配合量は0.01〜40重量%であり、中でも0.05〜20重量%、特に0.1〜10重量%が好ましい。前記分散液中のナノカーボンの配合量が0.01%未満の場合、十分な導電性や帯電防止性を付与できない可能性がある。また、ナノカーボンの配合量が40重量%を超えると、分散液の粘度が著しく増加し、分散に掛かる時間が長くなるだけではなく、均一に分散できず、透明性の低下を招くことがある。
本発明の活性エネルギー線硬化性ナノカーボン分散液は、N−置換(メタ)アクリルアミドとポリビニルピロリドン(PVP)の混合溶液にナノカーボンを加え、物理的衝撃を与えることによってナノカーボンを分散させる方法で製造される。具体的には、所定分子量のPVPをN−置換(メタ)アクリルアミドに加え、必要に応じて加熱、撹拌や超音波などの物理的処理を行い、PVPをN−置換(メタ)アクリルアミド中に均一に溶解させ、所定濃度の混合溶液を調製する。該混合溶液中にナノカーボンを所定量添加し、機械的処理等の物理的衝撃を与え、均一な分散液を得ることができる。機械的な処理として、ビーズミル、ボールミル、ジェットミル、バス型超音波、プローブ型超音波等を用いる処理が挙げられる。
前記N−置換(メタ)アクリルアミドとPVP混合溶液中のPVPポリマー粒子径は1〜2000nmであることが好ましく、また、ポリマー粒子径は2〜1000nmが好ましく、4〜500nmが特に好ましい。ポリマー粒子径が1nmより小さい場合、CNT等のナノカーボンの再凝集を十分に抑制できず、大きいサイズ凝集体が残存してしまう恐れがある。一方、ポリマー粒子径が2000nmより大きくなると、ナノカーボンの周りに均一に配置することは困難で、ナノカーボンの分散不良が発生しやすくなる。
N−置換(メタ)アクリルアミドとPVPの混合溶液中にナノカーボンを分散させる際、分散処理の時間は任意であるが、10分間から20時間程度が好ましく、更に30分間から10時間が特に好ましい。また、ナノカーボンの配合量とPVPの分子量にもよるが、必要に応じて分散処理前或いは分散処理中に加熱処理を重ねて実施してもよい。
本発明の製造方法に従って、ナノカーボンが均一に分散される分散液を容易に得ることができる。N−置換(メタ)アクリルアミドの品種、PVPの分子量と配合比にもよるが、ナノカーボンの分散時間を短縮させるため、特に高粘度(25℃において粘度は5000mPasを超える)分散液において、一部分散されず残ったナノカーボン及び/又は再凝集したナノカーボン由来の凝集物を物理的な処理方法で除去することができる。除去方法は特に限定しないが、例えば、フィルターによりろ過分離、遠心分離機による遠心分離等が挙げられる。ろ過分離の場合は、自然ろ過でも分離可能であるが、より効率よい減圧ろ過(吸引ろ過)、加圧ろ過が好ましい。ろ過に用いられるフィルターは、ガラス繊維フィルター、メンブランフィルター等が挙げられる。フィルターの保留粒子径は小さい程よいが、通常0.1〜3.0μmのものを用いることができる。また、遠心分離の場合は、回転数が500rpm〜50,000rpm、時間は10分〜から48
時間の間で行えば良い。さらに、除去されたナノカーボン由来の凝集物を再度ビーズミル処理による再利用はできる。
本発明の製造方法で得られる分散液中に含まれるナノカーボンが分散前に添加したナノカーボンに対して50重量%以上である。即ち、除去される未分散と再凝集ナノカーボンの合計は添加したナノカーボンに対して50重量%未満である。
本発明の活性エネルギー線硬化型コーティング剤はナノカーボン分散剤を必須成分として含有し、且つ構成成分としてナノカーボンが0.01重量%以上、PVPが0.05重量%以上、N−置換(メタ)アクリルアミドが10重量%以上含有することである。中でも、ナノカーボンが0.02重量%以上、PVPが0.1重量%以上、N−置換(メタ)アクリルアミドが20重量%以上であることが好ましい。これらの含有量を達成できない場合、ナノカーボンの分散性不良や安定性不良、導電性や帯電防止性を十分に付与できない場合があり、また、活性エネルギー線による硬化性が悪化する可能性がある。
本発明において、エネルギー線硬化型中に更にナノカーボン分散促進剤としてオキサゾリン系化合物を配合することができる。オキサゾリン系化合物とは、2−オキサゾリン官能基一つ以上を有する単官能、二官能、多官能のオキサゾリン化合物であり、オキサゾリン基の優れた両親媒性及びカルボキシル基やフェノール性水酸基との高い反応性のため、本発明のコーティング剤中に添加することによりナノカーボン(表面にカルボキシル基、フェノール性水酸基を有する)の分散が促進されると同時に、分散安定性や貯蔵安定性が向上する。
本発明においてナノカーボン分散促進剤としたオキサゾリン化合物は、分子量数十〜数百の単分子化合物、分子量数百〜数千のオリゴマー、分子量数千〜数万のポリマーから選ばれる1種又は必要に応じて2種以上を組み合わせて使用することができる。これらのオキサゾリン化合物の使用量は、オキサゾリンの官能基数や分子量によって調整できるので、特に制限されることはない。一般にナノカーボンに対して、0.01〜1000重量%、中でも0.1〜500重量%添加されることが好ましい。
本発明において、活性エネルギー線硬化型コーティング剤中に更にナノカーボン分散促進剤として有機系イオン性化合物を配合することができる。有機系イオン性化合物としては、イオン性ビニルモノマー及び/又はそれらを構成成分としたオリゴマー、ポリマーが挙げられる。具体的には、イオン性ビニルモノマーとは、カチオンとアニオンの組み合わせたオニウム塩であり、また、カチオンとして(メタ)アクリレート系或いは(メタ)アクリルアミド系のアンモニウムイオンやイミダゾリウムイオン、アニオンとしてはCl-、Br-、I-等のハロゲンイオン又はOH-、CHCOO-、NO -、ClO -、PF -、BF -、HSO -、CHSO -、CFSO -、CHSO -、CSO -、(CFSO-、SCN-等の無機酸アニオンまたは有機酸アニオンが挙げられる。
本発明に用いられるイオン性ビニルモノマーは、本発明者等が先に出願した特許文献16記載の方法で製造できる。
特許文献16:特開2011−012240号公報、
特開2011−074216号公報、
特開2011−140448号公報、
特開2011−140455号公報、
特開2011−153109号公報
これは、有機系イオン性化合物のイオンとナノカーボンのπ電子との相互作用によりナノカーボンの分散が促進されているものと、本発明者らは推察している。また、有機系イオン性化合物はイオン電導性を有するため、導電性や帯電防止性を付与することができる。イオン性ビニルモノマーも活性エネルギー線硬化性であるので、本発明の活性エネルギー線硬化型コーティング剤の主成分と共重合することにより、ブリードアウトせず、永久的な導電性や帯電防止性付与の補助効果及びナノカーボンの分散安定性や貯蔵安定性の向上効果が期待できる。
本発明のナノカーボン分散促進剤とした有機系イオン性化合物は、分子量数十〜数百の単分子化合物、分子量数百〜数千のオリゴマー、分子量数千〜数万のポリマーから選ばれる1種又は必要に応じて2種以上を組み合わせて使用することができる。これらの有機系イオン性化合物の使用量は、イオン対の官能基数や分子量によって調整できるので、特に制限されることはない。一般にナノカーボンに対して、0.01〜1000重量%、中でも0.1〜500重量%添加されることが好ましい。
本発明の活性エネルギー線硬化型コーティング剤において、2個以上のエチレン基を有する多官能(メタ)アクリレートまたは多官能(メタ)アクリルアミドを添加することができる。N−置換(メタ)アクリルアミドと多官能(メタ)アクリレートまたは多官能(メタ)アクリルアミドとの優れた相溶性を利用し、分散液の粘度を適切に調整し、ナノカーボンの分散安定性を向上させ、又基材表面に均一な架橋性コーティング膜を形成することができるので、製膜性や耐擦傷性などのコーティング膜の性能を向上させることができる。
このような多官能(メタ)アクリレートとしては、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスルトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1、6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジテトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート等のモノマーとオリゴマーが挙げられる。
このような多官能(メタ)アクリレートの市販品としては、例えば、アロニックスM−400、M−450、M−305、M−309、M−310、M−315、M−320、TO−1200、TO−1231、TO−595、TO−756(以上、東亞合成製)、KAYARD
D−310、D−330、DPHA、DPHA−2C(以上、日本化薬製)、ニカラックMX−302(三和ケミカル社製)等が挙げられる。
また、多官能(メタ)アクリルアミドとしては、メチレンビスアクリルアミド、メチレンビスメタアクリルアミド、エチレンビスアクリルアミド、エチレンビスメタアクリルアミド、ジアリルアクリルアミド等のモノマーとウレタンアクリルアミド(特開2002−37849)等のオリゴマーが挙げられる。
これらの多官能(メタ)アクリレートと多官能(メタ)アクリルアミドは、1種類でも、複数の多官能モノマー、オリゴマーを組み合わせて使用してもよい。また、このような多官能モノマー、オリゴマーを使用する場合、本発明のN−置換(メタ)アクリルアミドに対して0.1〜25000重量%含有させることが好ましく、また1〜10000重量%含有させることが特に好ましい。含有量が0.1重量%未満ではその添加効果が認められず、25000重量%を越えると、架橋率が高くなるため、塗膜の硬度、耐擦傷性は向上するが、弾力性が失われて割れやすくなる。
本発明の活性エネルギー線硬化型コーティング剤において、さらに熱可塑性樹脂を添加することができる。この熱可塑性樹脂は、N−置換(メタ)アクリルアミドに可溶なものであり、コーティング剤の粘度調整やナノカーボンの分散安定性向上に有効である。又、基材表面に平滑なコーティング膜を形成することができるので、製膜性や硬度、耐擦傷性、耐久性等のコーティング膜の性能を向上させることができる。
このような熱可塑性樹脂としては、ポリアクリル系、ポリエステル系、ポリカーボネート系、ポリウレタン系、ポリビニル系の熱可塑性樹脂が挙げられる。1種類でも、複数樹脂を組み合わせて使用してもよい。これらの熱可塑性樹脂の分子量は数量平均で10万以下が好ましく、さらに7万以下が特に好ましい。熱可塑性樹脂の分子量が数量平均で10万を超えると、コーティング剤の粘度が増加し、樹脂の溶解時間もナノカーボンの分散時間も大幅に延長する必要があり、生産性の低下を招くことになる。
これらの熱可塑性樹脂を使用する場合、本発明のN−置換(メタ)アクリルアミド対して0.01〜500重量%含有させることが好ましく、また0.05〜100重量%含有させることが特に好ましい。含有量が0.01重量%未満ではその添加効果が認められず、500重量%を越えると、コーティング剤の粘度が大幅に増加するため、ナノカーボンの分散性が悪化し、十分な導電性、帯電防止性を付与できない場合がある。
ポリアクリル系熱可塑性樹脂は、N−置換(メタ)アクリルアミドの単独重合により得られるホモポリマー及び/又は他の重合性化合物との共重合により得られるコポリマーが挙げられる。他の重合性化合物としては、前記同様なアルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、不飽和ニトリルモノマー、不飽和カルボン酸、アミド基含有モノマー、メチロール基含有モノマー、アルコキシメチル基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、多官能性モノマー、ビニルエステル、オレフィンなど分子鎖中に反応性二重結合をもつラジカル重合化合物が挙げられる。このような重合性化合物は、1種類に限らず、複数の種類を組み合わせて使用してもよい。
本発明において、公知の方法によってN−置換(メタ)アクリルアミドの単独重合及び/又は他の重合性化合物と共重合を行うことができる。重合方法としては、特に限定されるものではなく、前記同様な開始剤、溶媒等を用いて、公知のラジカル重合法により実施可能である。
本発明の活性エネルギー線硬化型コーティング剤は、各種要求特性に応じて、活性エネルギー線硬化性ナノカーボン分散液と同時に、各種汎用の改質剤や添加剤、水や有機溶剤、各種重合性化合物、ポリマー等を更に混合して用いることができる。また、分散剤とその他の各成分の添加順位は特に制限されることがなく、ナノカーボンが均一且つ安定的に分散されると良い。
本発明の活性エネルギー線とは、活性種を発生する化合物(光重合開始剤)を分解して活性種を発生させることのできるエネルギー線と定義される。このような活性エネルギー線としては、可視光、紫外線、電子線、赤外線、X線、α線、β線、γ線等の光エネルギー線が挙げられる。ただし、一定のエネルギーレベルを有し、硬化速度が速く、しかも照射装置が比較的安価で、小型である点から、紫外線や電子線を使用することが好ましい。
本発明の活性エネルギー線硬化型コーティング剤を硬化させる際には、電子線を用いる場合は光重合開始剤を添加する必要がないが、紫外線を用いる際、光重合開始剤を添加しておく。光重合開始剤は、活性エネルギー線として電子線を用いる場合には特に必要はないが、紫外線を用いる場合には必要となる。光重合開始剤はアセトフェノン系、ベンゾイン系、ベンゾフェノン系、チオキサントン系等の通常のものから適宜選択すればよい。光開始剤のうち、市販の光開始剤としてはチバ・スペシャルティーケミカルズ社製、商品名Darocure1116、Darocure1173、IRGACURE184、IRGACURE369、IRGACURE500、IRGACURE651、IRGACURE754、IRGACURE819、IRGACURE907、IRGACURE1300、IRGACURE1800、IRGACURE1870、IRGACURE2959、IRGACURE4265、IRGACURE TPO、UCB社製、商品名ユベクリルP36等を用いることができる。これらの光重合開始剤は1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの光重合開始剤の使用量は特に制限されていないが、一般に活性エネルギー線硬化型コーティング剤に対して、1〜10重量%、中でも2〜5重量%が添加されることが好ましい。1重量%未満では十分な硬化性が得られず、10%を越えると塗膜の強度低下や黄変をきたす可能性がある。
本発明の活性エネルギー線硬化型コーティング剤は、本来水や有機溶剤を含有する必要のないものであるが、コーティング剤の粘度調整、形成されるコーティング膜の膜厚調整、平滑性や光沢性をさらに向上させる目的で水や有機溶剤を添加してもよい。有機溶剤を用いる場合、トルエン、テトラヒドロフラン、N−メチルピロリドン、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等が挙げられる。水や有機溶剤を添加する場合、基板上にコーティング組成物を塗布後、加熱による水や有機溶剤を除去し、活性エネルギー線照射を行えばよい。また、コーティング剤の適切粘度範囲が塗布方法によって変わるが、塗布温度20〜100℃において、1〜10000mPasであることが好ましい。
本発明の活性エネルギー線硬化型コーティング剤を基材上に塗布する際に、膜厚が0.2〜500μmとなるように均一に塗布できれば、その塗布方法は問わない。塗布方法としては、スピンコート法、スプレーコート法、ディッピング法、グラビアロール法、ナイフコート法、リバースロール法、スクリーン印刷法、バーコーター法等通常の塗膜形成法が用いられることができる。また、塗布する基材としては、紙、布、不織布、ガラス、ポリエチレンテレフタレート、ジアセテートセルロース、トリアセテートセルロース、アクリル系ポリマー、ポリ塩化ビニル、セロハン、セルロイド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリオレフィン等のプラスチック及び金属等のプレート、シート、フィルム等が用いられる。
本発明の活性エネルギー線硬化型コーティング剤及びこれらから作製されたコーティング膜等の成形品の透明性、導電性や帯電防止性、耐久性、耐擦傷性等の塗膜特性を阻害しない範囲で、顔料、染料、界面活性剤、ブロッキング防止剤、表面平滑剤(追加)、レベリング剤、分散剤、消泡剤、酸化防止剤、紫外線増感剤、防腐剤等の他の任意成分を併用してもよい。
本発明の導電性コーティング膜、導電性フィルム、導電性シート又は導電性テープは、活性エネルギー線硬化型コーティング剤を基材の少なくとも一つの面上に塗布し、活性エネルギー線を照射して形成することができる。
本発明の活性エネルギー線硬化型導電性樹脂は、活性エネルギー線硬化性ナノカーボン分散液を含有する活性エネルギー線硬化型導電性樹脂である。
本発明の活性エネルギー線硬化型導電性インキは、活性エネルギー線硬化性ナノカーボン分散液を含有するエネルギー線硬化型導電性インキである。
本発明の活性エネルギー線硬化型導電性粘着剤、導電性接着剤は、活性エネルギー線硬化性ナノカーボン分散液を含有する活性エネルギー線硬化型導電性粘着剤、導電性接着剤である。
以下、実施例によって本発明をさらに説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下において、部及び%はそれぞれ重量部及び重量%を示す。
実施例及び比較例に用いた材料は以下の通りである。
(1)N−置換アクリルアミド
アクリロイルモルホリン:興人フィルム&ケミカルズ製「ACMO」
N,N−ジメチルアクリルアミド:興人フィルム&ケミカルズ製「DMAA」
N,N−ジエチルアクリルアミド:DEAA
ジメチルアミノプロピルアクリルアミド:興人フィルム&ケミカルズ製
「DMAPAA」
N−ヒドロキシエチルアクリルアミド:興人フィルム&ケミカルズ製「HEAA」
N−ビニルピロリドン:NVP
N−ヒドロキシエチルメタクリルアミド:HEMAA
N−メチル−N−ヒドロキシエチルアクリルアミド:MHEAA
各種N−置換アクリルアミドの粘度値を表1に示す。
(2)ナノカーボン
MWCNT:多層カーボンナノチューブ(Nanocyl社製NC−7000)
平均繊維径9.5nm、平均繊維長1.5μm
B−MWCNT:MWCNTのビーズミル処理品
ビーズミル処理は下記通り実施した。
N−メチルピロリドン 39.8g、MWCNT 0.8gとビーズ(ジルコニア社製Φ0.5mm) 160gを湿式ビーズ見る装置(アイメックス社製 RMB-08)のベッセル内に加え、1000rpmで1.5時間攪拌することでによってビーズミル処理を行った。その後、溶液を1Lのビーカーにビーズごと全て入れ、イオン交換水を加えて軽く振り、上澄みを取り出していくことで上澄み中に浮遊するカーボンナノチューブと底に沈降するジルコニアビーズを分けた。この操作を何度も繰り返し、カーボンナノチューブとジルコニアビーズを完全に分けた後、上澄みをろ過し、80℃で4h真空乾燥させ、黒色粉末としてビーズミル処理カーボンナノチューブ(B−MWCNT)を得た。
(3)ポリビニルピロリドン:
PVP0.25(和光純薬製、重量平均分子量0.25万)
PVP1(東京化成製、重量平均分子量1万)
PVP4(東京化成製、重量平均分子量4万)
PVP36(和光純薬製、重量平均分子量36万)
PVP63(東京化成製、重量平均分子量63万)
(4)多官能モノマー
DPHA:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
PETA:ペンタエリスリトールトリアクリレート
B−577:ウレタンアクリレート(荒川工業社製ビームセット577)
(5)熱可塑性樹脂:
PDMAA:「DMAA」のホモポリマー(重量平均分子量1.8万)
PC:ポリカーボネート(帝人社製、AD5503)(重量平均分子量3.2万)
(6)分散促進剤
TMBO:テトラメチレンビスオキサゾリン
PVOZO:2−ビニル−2−オキサゾリンのホモポリマー
(重量平均分子量2.7万)
D−SCN:アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムチオシアナート
(7)その他のモノマー
HEA:ヒドロキシエチルアクリレート
4HBA:ヒドロキシブチルアクリレート
IBOA:イソボルニルアクリレート
THFA: テトラヒドロフルフリルアクリレート
POA:2−フェノキシエチルアクリレート
(8)有機溶剤
NMP:N−メチルピロリドン
EtOH:エチルアルコール
DMF:N,N−ジメチルホルムアミド
実施例及び比較例における各種物性の測定方法と評価方法は以下の通りである。
《分散性》:
分散処理後のナノチューブ分散液又はコーティング剤の状態を光学顕微鏡(HiROX社製、デジタル光学顕微鏡パワーハイスコープKH-2700)により観察を行い、黒色率を算出し、分散性を数値として4段階で評価した。なお、観察用サンプルの作製と黒色率の算出方法は下記通りである。
サンプル作製:分散液又はコーティング剤5μLを取り、ホールスライドガラスに1滴を滴下し、溶液の流動が収まった時点で顕微鏡観察を行い、写真を撮影する。
黒色率算出:任意の点10ヶ所における光学顕微鏡画像(図1)を白黒画像(図2)にし、計算式1に準じて黒色率を算出した。黒色率が低いほど、分散性が良い。
計算式1
黒色率(%)=黒色ピクセルの数/(黒色ピクセルの数+白色ピクセルの数)×100
◎:黒色率が0.01%未満
○:黒色率が0.01%以上、且つ1%未満
△:黒色率が1%以上、且つ10%未満
×:黒色率が10%以上
《分散安定性(貯蔵安定性)》:
調製後の分散液又はコーティング剤を用い、25℃で90日間静置し、その後の状態を光学顕微鏡により観察を行い、黒色率を算出し、分散性を数値として前記同様4段階で評価した。
《塗膜硬化性》:
形成直後の塗膜を用い、1秒当たりに紫外線エネルギーは10mJ/cm2を照射し、塗膜の表面がベタつかなくなるまでに必要な照射時間を硬化時間として測定し、塗膜の硬化性を4段階で評価した。
◎:優れている(硬化時間は30秒以内。)
○:良い(硬化時間は30秒以上、2分以内)
△:やや悪い(硬化時間は2分以上、5分以内。)
×:悪い(硬化時間は5分以上。)
塗膜平滑性:作製した硬化膜の表面を目視で観察し、平滑性において、4段階で評価した。
◎:優れている(透明で表面が平滑、つやあり)
○:良い(僅かな曇りで表面が平滑、半つや)
△:やや悪い(僅かな曇りや凹凸があり、つや消し)
×:悪い(極度な曇りや凹凸があり、つや消し)
《塗膜透明性》:
JIS K 7105に基づき、ヘイズメーター(NDH−2000:日本電色工業社製)を用い、PETフィルムと硬化膜の全光線透過率を測定した後、PETフィルムの透過率を差し引き、塗膜自体の透過率を算出し、透明性を数値として評価した。透過率が高いほど、透明性が良い。
《導電性・帯電防止性》:
型板 (縦110×横110mm) を用い、カッターナイフで塗膜を裁断し、温度25℃、相対湿度60%に調整した恒温恒室機に入れ、24時間静置し、表面抵抗率測定用試料を得た。JIS
K 6911 に基づき、デジタルエレクトロメーター(R8252型:エーディーシー社製)を用いて測定を行った。
《塗膜硬度》:
JIS K 5400
に基づき、鉛筆硬度試験を行った。Hの数値番号が大きいほど、硬度が高く、Bの数値番号が大きいほど、硬度が低い。
《耐擦傷性》:
スチールウールを#0000のスチールウールを用いて、200g/cm2の荷重をかけながら塗膜の上で10往復させ、傷の発生の有無を評価した。
◎:膜の剥離や傷の発生がほとんど認められない;
○:膜に僅かな細い傷が認められる;
△:膜全面に筋状の傷が認められる;
×:膜の剥離が生じる。
《耐久性》:
塗膜を40℃、90%RHの恒温槽内にて3日間保管し、膜の外観の変化を目視で評価した。
◎:外観に変化がない;
○:白化などの外観変化が僅かに認められるが問題のないレベル;
△:白化などの外観変化が僅かに認められる;
×:白化などの外観変化が著しく認められる;
分散液実施例1〜20、分散液比較例1〜6
N−置換アクリルアミドとポリビニルピロリドンを表1に示す割合で混合し、バス型超音波装置(Elma社製、S30H Elmasonic,出力80W)を用いて、25℃で30分処理し、混合溶液を得た。混合溶液から少量サンプルを分取りし、動的光散乱(シスメックス社製、DLS Zetasizer Nano)によりポリマー粒子径を測定し、結果を表2に示す。表1に示す所定量の混合溶液にナノカーボンを加え、バス型超音波装置を用いて、20〜80℃で30〜120分処理し、ナノカーボン分散液を作製した。該ナノカーボン分散液は紫外線、電子線等の活性エネルギー線照射によって、硬化できるため活性エネルギー線硬化性ナノカーボン分散液と言う。該活性エネルギー線硬化性ナノカーボン分散剤分散性と分散安定性を前記方法で評価し、結果を表2に示す。
コーティング剤実施例1〜20、コーティング剤比較例1〜6
分散液実施例1〜20と分散液比較例1〜6で得られたナノカーボン分散液に分散促進剤、多官能モノマー、熱可塑性樹脂、必要に応じて有機溶剤を表1に示す割合で添加し、20〜80℃でバス型超音波装置により30〜120分混合し、コーティング剤を得た。該コーティング剤の分散性と分散安定性を前記方法で評価し、結果を表3に示す。その後、得られた100重量部を計量し、光開始剤としてDarocure1173(BASF
旧チバ・スペシャルティーケミカルズ社製)3重量部を加え、混合溶解して、活性エネルギー線硬化型コーティング剤を作製した。
厚さ100μmのポリエチレンテレフタラート(PET)フィルムを貼付したガラス製又はPET製の試料板(縦200×横200×厚さ5mm)を動かないように水平面に固定し、板の先方の端に前記の試験用コーティング組成物を帯状に滴下して、バーコーター(RDS60)で全体に均等な力がかかるように両端を押さえ、回転させずに同じ速さ(5cm/sec)で手前まで引いて塗布し、塗膜の形成性を評価した。次に塗布面を上向きにして紫外線照射を行って硬化させ、コーティング膜を得た。紫外線硬化条件は、出力300W、単位当たり出力50W/cmの高圧水銀灯1本を設置した紫外線照射装置(オーク製作所 モデルOHD320M)を使用し、1秒当たりに紫外線エネルギーは10mJ/cmであるように試料板とランプの距離を調節した。塗膜の表面がベタつかなくなるまでに必要な照射時間を硬化時間として測定し、塗膜の硬化性を評価した。また、硬化した各種コーティング膜を用いて、前記各種物性の評価を行った。評価結果を表4に示す。
分散剤実施例1と分散剤比較4の分散液の光学顕微鏡写真を図3と図4に示す。それぞれの黒色率は00.05%と21%であった。
コーティング剤実施例1のコーティング膜をガラス基板ごと電気炉に入れ、空気中で400℃、30分間加熱することによって有機物を分解させた。その後、ガラス基板表面に白金蒸着を施し、電子顕微鏡(日本電子製、Scanning Erectron Microscope(SEM)、JSM-6700)で観察し、均一分布されているカーボンナノチューブ膜の電子顕微鏡画像を得た(図5に示す)。
実施例、比較例の結果から、N−置換(メタ)アクリルアミドを含有しない場合、ナノカーボンが均一に分散できなかった。一方、ポリビニルピロリドンを配合しない場合、ナノカーボンが分散できるが、再凝集は起こりやすく、安定的な分散液を得られなかった。また、N−置換(メタ)アクリルアミドの粘度が高すぎると、又はポリビニルピロリドンの分子量が高すぎると、ポリマーの粒子径が大きくなり、良好な混合溶解を得られなく、結果は良好なナノカーボン分散性やコーティング剤が得られなく、平滑性や透明性の高い紫外線硬化コーティング膜も取得できず、また塗膜の硬度、耐擦傷性や耐久性等の物性が十分に評価できるレベルにもならなかった。即ち、本発明で提案したN−置換(メタ)アクリルアミド、ポリビニルピロリドンとナノカーボンかるなる分散液、コーティング剤は、分散性と分散安定性が満足でき、高硬化速度を有し、得られるコーティング膜の表面平滑性、透明性が高く、導電性や帯電防止性に優れ、硬度、耐擦傷性と耐久性が同時に満足できた。
評価用の写真 評価用の写真(白黒) 実施例の分散した写真 比較例の凝集した写真 分散した顕微鏡写真
以上説明してきたように、本発明の活性エネルギー硬化性ナノカーボン分散液、活性エネルギー硬化型コーティング剤は、N−置換(メタ)アクリルアミド、ポリビニルピロリドンとナノカーボンを必須成分として構成され、分散性と分散安定性に優れ、これらを基材上に塗布し、紫外線等の活性エネルギー線で照射させることによって、高速度で硬化し、表面平滑性が高く、透明性、導電性や帯電防止性を併せ持ち、得られる塗膜の硬度が高く、耐擦傷性と耐久性改善されたコーティング膜を形成することができる。本発明の分散液、コーティング剤は粘・接着剤、ハードコート、塗料、インキ等に通常用いられる親水性、疎水性、又は両親媒性のポリマー、オリゴマー、モノマーとの相溶性が良好であり、フィラー、顔料等の添加剤と容易に混合、分散し、さらに該ナノカーボンの導電性、帯電防止性能が高いため、帯電防止性、透明性、高硬度、耐擦傷性と耐久性が同時に提供でき、紫外線硬化型ハードコート剤、帯電防止剤組成物、粘・接着剤組成物、塗料、インキ等の樹脂にあらかじめ添加して使用する場合等にも好適に用いることができる。

Claims (15)

  1. ナノカーボン、N−置換(メタ)アクリルアミド或いはN−ビニルピロリドン又はN−ビニルカプロラクタムとポリビニルピロリドンからなることを特徴とする活性エネルギー線硬化性ナノカーボン分散液であって、前記ポリビニルピロリドンの分子量が重量平均で500〜60万、かつ、ポリビニルピロリドンの配合量が0.05〜15重量%であることを特徴とする活性エネルギー線硬化性ナノカーボン分散液。
  2. 前記ナノカーボンがカーボンナノチューブ(単層、2層、多層タイプ、カップスタック型)、カーボンナノファイバー、カーボンナノホーン、フラーレン又はグラフェンから選ばれる少なくとも1種である請求項1記載の活性エネルギー線硬化性ナノカーボン分散液。
  3. 前記ナノカーボンの配合量が0.01〜20重量%である請求項1または2に記載の活性エネルギー線硬化性ナノカーボン分散液。
  4. 前記N−置換(メタ)アクリルアミド或いはN−ビニルピロリドン又はN−ビニルカプロラクタムが、1気圧下、融点100℃以下であり、活性エネルギー線重合性(メタ)アクリルアミド或いはN−ビニルピロリドン又はN−ビニルカプロラクタムのモノマー及び/又はオリゴマーである請求項1〜3のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化性ナノカーボン分散液。
  5. 前記N−置換(メタ)アクリルアミドが、(メタ)アクリロイルモルホリン、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ビスヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシブチル(メタ)アクリルアミドから選ばれる1種以上のモノマー、又はこれらのモノマーを構成モノマーとして含むオリゴマーである請求項1〜4いずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化性ナノカーボン分散液。
  6. 前記N−置換(メタ)アクリルアミド或いはN−ビニルピロリドン又はN−ビニルカプロラクタムのモノマー及び/又はオリゴマーは、単独及び/又は2種以上の混合品として用い、25℃における粘度が0.5〜500mPasであるのことを特徴とする請求項1〜5いずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化性ナノカーボン分散液。
  7. N−置換(メタ)アクリルアミド或いはN−ビニルピロリドン又はN−ビニルカプロラクタムとポリビニルピロリドンの混合溶液にナノカーボンを加え、物理的衝撃を与えることによってナノカーボンを分散させることを特徴とする活性エネルギー線硬化性ナノカーボン分散液の製造方法。
  8. N−置換(メタ)アクリルアミド或いはN−ビニルピロリドン又はN−ビニルカプロラクタムとポリビニルピロリドンの混合溶液において、溶液中のポリマー粒子径が1〜2000nmであることを特徴とする請求項7に記載の活性エネルギー線硬化性ナノカーボン分散液の製造方法。
  9. 分散されずに残ったナノカーボン及び/又は再凝集したナノカーボン由来の凝集物を除去することを特徴とする請求項7又は8に記載の活性エネルギー線硬化性ナノカーボン分散液の製造方法。
  10. 分散液中に含まれるナノカーボンが分散前に添加したナノカーボンに対して50重量%以上であることを特徴とする請求項7〜9いずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化性ナノカーボン分散液の製造方法。
  11. 請求項1〜6のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化性ナノカーボン分散液を含有し、且つ構成成分としてナノカーボンを0.01重量%以上、ポリビニルピロリドンを0.05重量%以上、N−置換(メタ)アクリルアミド或いはN−ビニルピロリドン又はN−ビニルカプロラクタムを10重量%以上含有した活性エネルギー線硬化型コーティング剤。
  12. 請求項11記載の活性エネルギー線硬化型コーティング剤を基材の少なくとも一つの面上に塗布し、活性エネルギー線を照射して形成した導電性コーティング膜、導電性フィルム、導電性シート又は導電性テープ。
  13. 請求項1〜6のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化性ナノカーボン分散液を含有する活性エネルギー線硬化型導電性樹脂。
  14. 請求項1〜6のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化性ナノカーボン分散液を含有する活性エネルギー線硬化型導電性インキ。
  15. 請求項1〜6のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化性ナノカーボン分散液を含有する活性エネルギー線硬化型導電性粘着剤、導電性接着剤。
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