JP6195716B2 - 抗癌剤耐性診断マーカー - Google Patents

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本発明は、抗癌剤の効果の診断試薬およびキット、ならびに抗癌剤の効果の試験方法などに関する。
従来の細胞障害性抗癌剤とは異なる作用メカニズムを有する抗癌剤として、ゲフィチニブ等の分子標的薬が開発され臨床応用されるようになった。ゲフィチニブ等の分子標的薬は、活性型EGFR変異等の特徴を有する癌細胞に劇的な抗腫瘍効果をもたらすが、従来の細胞障害性抗癌剤と同様に、耐性癌が出現するためそれらによる治療には限界がある。そこで、それらの耐性癌を特徴付けるマーカーにより耐性癌の性質を診断する方法を開発すると共に、それらの癌の増殖を阻害する、あるいは転移を阻害するような治療方法を開発することにより患者の生存延長に寄与することが期待されている。
これまで、ゲフィチニブにより治療された肺癌から生じる耐性癌として、治療ターゲットであるEGFRに2次的に生じる遺伝子変異(ゲートキーパー変異)を治療中に獲得した癌の出現が耐性癌の50%程度に同定された。この耐性癌に対してはこの2次変異を有するEGFRをも阻害可能なEGFR阻害剤により克服可能であることが示された。また、ゲフィチニブ治療中にMET遺伝子増幅という特徴を獲得した癌の出現が耐性癌の20%に同定され、この耐性癌に対してはゲフィチニブとMET阻害剤の2剤併用により克服し得ることが示された。
しかしながら、ゲフィチニブ耐性肺癌には未知の性質を有し、治療方法が確立されていないものも存在する。また、EGFR以外をターゲットとする分子標的薬に対して耐性となった肺癌、あるいは他の癌種で分子標的薬に耐性となった耐性癌においてもどのような性質の耐性癌が生じ、どのような治療方法が有効であるかは未知である。
ところで、癌遺伝子である受容体型チロシンキナーゼAXLについては、以下の報告がある。
非特許文献1では、AXLが発現亢進することによりEGFR阻害剤に対して耐性を獲得する肺癌の存在が同定されており、また、このような耐性癌細胞はAXLの発現または活性を阻害することにより増殖及び運動能を抑制することが可能であることが示されている。
非特許文献2では、癌細胞から可溶性AXLが分泌されることが示されている。
Nat Genet. 2012 Jul 1;44(8):852−60 J Cell Physiol. 1996 Sep;168(3):737−44
本発明の目的は、癌に対する抗癌剤の治療効果の簡便な判定を実現することである。

本発明者らは、抗癌剤に対する耐性を獲得した癌細胞から分泌されるタンパク質について鋭意検討した結果、受容体型チロシンキナーゼAXLの細胞外ドメインフラグメントが、抗癌剤に耐性の癌などに対する特異的なバイオマーカーとして利用できることを見出した。したがって、本発明者らは、AXL細胞外ドメインフラグメントの濃度を測定することにより、癌に対する抗癌剤の治療効果を簡便に判定し得ることを着想し、本願発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
〔1〕AXL細胞外ドメインフラグメントに親和性を有する物質を含む、癌に対する抗癌剤の効果の診断試薬。
〔2〕AXL細胞外ドメインフラグメントに親和性を有する物質が、AXL細胞外ドメインフラグメントに対する抗体である、〔1〕の診断試薬。
〔3〕抗癌剤が肺癌に対する抗癌剤である、〔1〕または〔2〕の診断試薬。
〔4〕抗癌剤の効果が抗癌剤に対する耐性である、〔1〕〜〔3〕のいずれかの診断試薬。
〔5〕抗癌剤がEGFR阻害剤、MET阻害剤およびプラチナ製剤からなる群より選ばれる1以上の抗癌剤である、〔4〕の診断試薬。
〔6〕抗癌剤の効果が、AXL阻害剤に対する感受性である、〔1〕〜〔3〕のいずれかの診断試薬。
〔7〕AXL阻害剤に対する感受性が、AXL阻害剤による癌の増殖および/または浸潤および/または転移の抑制である、〔6〕の診断試薬。
〔8〕AXL細胞外ドメインフラグメントに親和性を有する物質、およびAXL細胞外ドメインフラグメントを含む、癌に対する抗癌剤の効果の診断キット。
〔9〕以下(a)および(b)の工程を含む、癌に対する抗癌剤の効果の試験方法:
(a)被験体由来の生体サンプル中のAXL細胞外ドメインフラグメントの濃度を測定する工程;および
(b)測定されたAXL細胞外ドメインフラグメントの濃度を、AXL細胞外ドメインフラグメントの濃度と癌に対する抗癌剤の効果との間の関係を示す基準と比較する工程。
本発明によれば、癌に対する抗癌剤(例、EGFR阻害剤およびMET阻害剤等の分子標的薬ならびにプラチナ製剤)の治療効果を簡便に判定でき、また、癌に対する抗癌剤の治療効果を簡便にモニタリングできる。例えば、本発明によれば、AXL細胞外ドメインフラグメントを測定することにより、抗癌剤治療前の癌細胞の集団における、EGFR阻害剤耐性能を有するAXL陽性癌細胞の存在を診断すること、ひいては、癌に対するEGFR阻害剤の効果を予測することが可能である。また、AXL細胞外ドメインフラグメントを測定することにより、抗癌剤治療中に抗癌剤に耐性を獲得したAXL陽性癌細胞の出現を診断すること、ひいては、癌に対する抗癌剤の効果を予測することが可能である。また、プラチナ製剤等の細胞障害性抗癌剤による治療中に耐性を獲得するとともに副次的にEGFR阻害剤に対する耐性をも獲得したAXL陽性癌細胞の出現を診断することも可能である。さらに、AXL細胞外ドメインフラグメントを測定することにより、AXL阻害剤に感受性の癌を診断すること、例えば、ALX阻害剤により癌の増殖および/または癌の浸潤および/または転移を抑制する治療が有効な癌を予測することが可能である。
また、本発明によれば、抗癌剤に耐性の癌で多量のAXL細胞外ドメインフラグメントが認められること、ならびにこのような多量のAXL細胞外ドメインフラグメントの測定は容易であることから、癌に対する抗癌剤の治療効果を容易に判定できる。
図1は、ヒト非小細胞肺癌に由来する種々の細胞(HCC4006、GR2w、GR1m、GR3m、およびGR5m)のEGFR阻害剤(ゲフィチニブ)感受性を示す図である(n=4)。HCC4006は、EGFR阻害剤(ゲフィチニブ)感受性細胞HCC4006を表す。GR2w、GR1m、GR3m、およびGR5mは、それぞれ、HCC4006を2週間、1ヶ月、3ヶ月および5ヶ月ゲフィチニブに暴露することにより樹立されたEGFR阻害剤(ゲフィチニブ)耐性細胞を表す。略号は、以下同様である。 図2は、EGFR阻害剤(ゲフィチニブ)感受性細胞(HCC4006)、および種々のEGFR阻害剤(ゲフィチニブ)耐性細胞(GR2w、GR1m、GR3m、およびGR5m)におけるAXL発現および可溶性AXL分泌、ならびにEMTマーカーの発現を示す図である。sAXLおよびAXLは、ぞれぞれ、可溶性AXLおよび全長AXLを表す。略号は、以下同様である。 図3は、EGFR阻害剤(ゲフィチニブ)感受性細胞(HCC4006)、および当該感受性細胞から分画された細胞(HCC4006−AXLおよびHCC4006−AXL−TW)の、EGFR阻害剤(ゲフィチニブ)に対する耐性を示す図である(n=4)。HCC4006−AXLは、EGFR阻害剤(ゲフィチニブ)感受性細胞(HCC4006)から分画されたAXL陽性細胞を表す。HCC4006−AXL−TWは、このようなAXL陽性細胞から分画された、高い運動能を有する細胞を表す。 図4は、ヒト非小細胞肺癌に由来する種々の細胞(HCC827、GR5mおよびGRPR)のEGFR阻害剤(ゲフィチニブ)および/またはMET阻害剤(PHA−665752)感受性を示す図である(n=4)。HCC827は、EGFR阻害剤(ゲフィチニブ)感受性細胞HCC827を表す。GR5mは、HCC827を5ヶ月ゲフィチニブに暴露することにより樹立されたゲフィチニブ耐性細胞を表す。GRPRは、HCC827をゲフィチニブに3ヶ月暴露し、次いでPHA−665752に3ヶ月暴露することにより樹立された、ゲフィチニブおよびPHA−665752の双方に耐性である細胞(HCC827−GRPR)を表す。G−P−:ゲフィチニブおよびPHA−665752の双方の非存在下で処理;G+P−:ゲフィチニブ(1μM)の存在下およびPHA−665752の非存在下で処理;G−P+:ゲフィチニブの非存在下およびPHA−665752(1μM)の存在下で処理;G+P+:ゲフィチニブ(1μM)およびPHA−665752(1μM)の双方の存在下で処理。略号は、以下同様である。 図5は、EGFR阻害剤(ゲフィチニブ)感受性細胞(HCC827)、EGFR阻害剤(ゲフィチニブ)耐性細胞(GR5m)、ならびにEGFR阻害剤(ゲフィチニブ)およびMET阻害剤(PHA−665752)耐性細胞(GRPR)におけるAXL発現およびsAXL分泌、ならびにEMTマーカーの発現を示す図である。sMETおよびMETは、ぞれぞれ、可溶性METおよび全長METを表す。略号は、以下同様である。 図6は、MET阻害剤(PHA−665752)感受性細胞(H1993)、およびMET阻害剤(PHA−665752)耐性細胞(PR5m、PR5m−AXLおよびPR5m−TW)におけるAXL発現およびsAXL分泌、ならびにEMTマーカーの発現を示す図である。H1993は、MET阻害剤(PHA−665752)感受性細胞H1993を表す。PR5mは、H1993を5ヶ月PHA−665752に暴露することにより樹立されたPHA−665752耐性細胞を表す。PR5m−AXLは、耐性細胞PR5mから分画されたAXL陽性細胞を表す。PR5m−TWは、耐性細胞PR5mから分画された、高い運動能を有する細胞を表す。略号は、以下同様である。 図7は、EGFR阻害剤(ゲフィチニブ)感受性細胞(HCC4006)、およびプラチナ製剤(シスプラチン)耐性細胞(HCC4006−CRおよびHCC4006−CR−GR)におけるAXL発現およびsAXL分泌、ならびにEMTマーカーの発現を示す図である。HCC4006は、ゲフィチニブ感受性肺癌細胞HCC4006を表す。HCC4006−CRは、HCC4006を4ヶ月シスプラチンに暴露することにより樹立されたシスプラチン耐性細胞を表す。HCC4006−CR−GRは、HCC4006−CRを1μMゲフィチニブに2週間暴露することにより樹立された、シスプラチンおよびゲフィチニブの双方に耐性である細胞を表す。略号は、以下同様である。 図8は、EGFR阻害剤(ゲフィチニブ)感受性細胞(HCC4006)のEGFR阻害剤(ゲフィチニブ)に対する感受性、ならびにプラチナ製剤(シスプラチン)耐性細胞(HCC4006−CRおよびHCC4006−CR−GR)のEGFR阻害剤(ゲフィチニブ)に対する耐性を示す図である(n=4)。 図9は、ヒト非小細胞肺癌に由来する種々の細胞(HCC4006、GR2w、およびGR5m)の運動能を示す図である(n=3)。 図10は、ヒト非小細胞肺癌に由来する種々の細胞(H1993、PR5m、PR5m−AXL、およびPR5m−TW)の運動能を示す図である(n=3)。 図11は、ヒト非小細胞肺癌に由来する種々の細胞〔HCC4006、HCC4006−CR(CR)、およびHCC4006−CR−GR(CR−GR)〕の運動能を示す図である(n=3)。 図12は、RNA干渉による、プラチナ製剤(シスプラチン)およびEGFR阻害剤(ゲフィチニブ)耐性細胞(HCC4006−CR−GR)におけるAXL遺伝子の発現阻害を示す図である。si−N.C.は、ネガティブコントロールsiRNAを示す。si−AXL−1、si−AXL−2、およびsi−AXL−3の標的配列は、実施例に示したとおりである。 図13は、RNA干渉によりAXL遺伝子の発現が阻害されたプラチナ製剤(シスプラチン)およびEGFR阻害剤(ゲフィチニブ)耐性細胞(HCC4006−CR−GR)の運動能を示す図である(n=3)。
本発明の試験方法は、以下(a)および(b)の工程を含み得る:
(a)被験体由来の生体サンプル中のAXL細胞外ドメインフラグメントの濃度を測定する工程;および
(b)測定されたAXL細胞外ドメインフラグメントの濃度を、AXL細胞外ドメインフラグメントの濃度と癌に対する抗癌剤の効果との間の関係を示す基準と比較する工程。
AXLは、受容体チロシンキナーゼサブファミリーに属し、他の受容体チロシンキナーゼと類似の構造を有するが、免疫グロブリンおよびフィブロネクチンIII型の繰り返し配列からなる細胞外ドメインによって特徴付けられる。AXLは、そのリガンドである成長停止特異的遺伝子6(Gas6)として公知のビタミンK依存性タンパク質によって活性化され、細胞内シグナル伝達系を介して細胞増殖などを制御する(例えば、O‘Bryanら、Molcular and Cellular Biology,1991,Vol.11,No.10,pp.5016−5031を参照。また、ヒトAXLについては、GenBankアクセッション番号:NP_001699.4を参照のこと。)
本明細書中で用いられる場合、用語「AXL細胞外ドメインフラグメント」とは、外部ドメイン排出(Ectodomain Shedding)により排出されるAXL細胞外ドメインのポリペプチド(即ち、可溶性AXL)またはそのポリペプチドの分解産物をいう。本明細書では、AXL細胞外ドメインフラグメントを、可溶性AXLということがある。
上記(a)において、被験体としては、癌に罹患している哺乳動物、または癌に罹患している可能性がある哺乳動物が挙げられる。哺乳動物としては、例えば、霊長類、愛玩動物、使役動物が挙げられる。具体的には、哺乳動物としては、例えば、ヒト、チンパンジー、イヌ、ネコ、ウシ、ヒツジ、ウマ、ブタ、ウサギ、マウス、ラットが挙げられるが、好ましくは、ヒトである。
本明細書中で用いられる場合、用語「癌」とは、AXL遺伝子の増幅を伴い得る癌をいう。このような癌としては、例えば、肺癌(例、扁平上皮がん、腺がんおよび大細胞がん等の非小細胞癌、ならびに小細胞癌)、消化器系癌(例、胃癌、小腸癌、大腸癌、直腸癌)、膵臓癌、腎臓癌、肝臓癌、胸腺癌、脾臓癌、甲状腺癌、副腎癌、前立腺癌、膀胱癌、卵巣癌、子宮癌(例、子宮内膜癌、子宮頚癌)、骨癌、皮膚癌、脳腫瘍、肉腫、黒色腫、芽細胞腫(例、神経芽細胞腫)、腺癌、扁平細胞癌、固形癌、上皮性癌、中皮腫が挙げられる。
好ましい被験体の例は、特定の抗癌剤による治療が検討されている癌患者である。特定の抗癌剤としては、例えば、EGFR阻害剤、MET阻害剤およびAXL阻害剤等の分子標的薬、ならびにプラチナ製剤等のDNA複製阻害剤が挙げられる。EGFR阻害剤としては、例えば、ゲフィチニブ(gefitinib)、エルロチニブ(erlotinib)、セツキシマブ(cetuximab)、ラパチニブ(lapatinib)、ZD6474、CL−387785、HKI−272、XL647、PD153035、CI−1033、AEE788、BIBW−2992、EKB−569、PF−299804が挙げられる。MET阻害剤としては、例えば、PHA−665752、SU11274、XL−880、XL−184、ARQ 197、AMG208、AMG458、CE−355621、MP470が挙げられる。AXL阻害剤としては、例えば、R428、MP470、XL880、BMS777607が挙げられる。プラチナ製剤としては、例えば、シスプラチン(cisplatin)、オキサリプラチン(oxaliplatin)、カルボプラチン(carboplatin)、ネダプラチン(nedaplatin)が挙げられる。
好ましい被験体の別の例は、特定の抗癌剤による治療効果がモニタリングされている癌患者である。癌患者はまた、特定の抗癌剤による治療効果の低下が認められた場合に、別の抗癌剤による治療に切り替えるかどうかの判断が求められている患者であってもよい。抗癌剤は、上述した抗癌剤と同様であり得る。
本発明において用いられ得る生体サンプルは、上述の被験体から採取された生体サンプルであり得る。生体サンプルは、AXL細胞外ドメインフラグメントが存在するサンプルである限り特に限定されず、例えば、血液、血清、血漿、尿、唾液、腹水、組織試料、細胞試料、組織抽出液、細胞抽出液が挙げられる。なお、侵襲性の低さの観点からは、上記のうち、血液、血清、血漿、尿、唾液が好ましい。必要に応じて、生体サンプルは、測定前に、事前に処理されてもよい。このような処理としては、例えば、遠心分離、抽出、濃縮、分画、細胞固定、組織固定、組織凍結、組織薄片化が挙げられる。
AXL細胞外ドメインフラグメントの濃度の測定は、例えば、AXL細胞外ドメインフラグメントに対して親和性を有する物質(後述)を用いて行うことができる。測定はまた、免疫学的手法により行なわれてもよい。このような免疫学的手法としては、例えば、酵素免疫測定法(EIA)(例、直接競合ELISA、間接競合ELISA、サンドイッチELISA)、放射免疫測定法(RIA)、蛍光免疫測定法(FIA)、免疫クロマト法、ルミネッセンス免疫測定法、スピン免疫測定法、ウエスタンブロット法、ラテックス凝集法が挙げられる。AXL細胞外ドメインフラグメントの濃度の測定を可能とする上記以外の方法としては、例えば、LC−MSが挙げられる。
上記(b)において、測定されたAXL細胞外ドメインフラグメントの濃度が、AXL細胞外ドメインフラグメントの濃度と癌に対する抗癌剤の効果との間の関係を示す基準と比較され得る。基準は、AXL細胞外ドメインフラグメントの濃度の高低と、抗癌剤の効果の強弱(抗癌剤への感受性または耐性)との間の相対的な関係を示すものであり得る。例えば、測定されたAXL細胞外ドメインフラグメントの濃度が相対的に高い場合には、AXL阻害剤の治療効果が高い可能性があり、または他の抗癌剤(例、上述したようなEGFR阻害剤およびMET阻害剤等の分子標的薬、ならびにプラチナ製剤等のDNA複製阻害剤)の治療効果が低い可能性がある。また、測定されたAXL細胞外ドメインフラグメントの濃度が相対的に低い場合には、AXL阻害剤の治療効果が低い可能性があり、または他の抗癌剤(例、上述したようなEGFR阻害剤およびMET阻害剤等の分子標的薬、ならびにプラチナ製剤等のDNA複製阻害剤)の治療効果が高い可能性がある。本発明の場合、基準として、特定の基準値を設けてもよい。このような基準値として、AXL阻害剤に感受性である患者、または他の抗癌剤に耐性である患者で高い陽性率(基準値以上)を示し、かつ、AXL阻害剤に耐性である患者、または他の抗癌剤に感受性である患者で高い陰性率(基準値未満)を示し得る、AXL細胞外ドメインフラグメントの濃度を設定してもよい。このような基準値の例は、カットオフ値である。基準値の算出方法は、本分野において周知である。
本発明によれば、癌患者が、特定の抗癌剤に対して感受性であるのか、または耐性であるのかを判定することができる。このような判定は、例えば、被験体に投与する抗癌剤の決定に有用である。例えば、測定されたAXL細胞外ドメインフラグメントの濃度が相対的に高い場合には、癌患者は、AXL阻害剤に対して感受性である可能性があり、AXL阻害剤による治療効果が高い可能性がある。また、この場合には、癌の浸潤および/または転移が生じる可能性が相対的に高いと考えられる。さらに、この場合には、他の抗癌剤(例、上述したようなEGFR阻害剤およびMET阻害剤等の分子標的薬、ならびにプラチナ製剤等のDNA複製阻害剤)に対して耐性である可能性があり、当該抗癌剤による治療効果が低い可能性がある。一方、測定されたAXL細胞外ドメインフラグメントの濃度が相対的に低い場合には、癌患者は、AXL阻害剤に対して耐性である可能性があり、AXL阻害剤による治療効果が低い可能性がある。また、この場合には、癌の浸潤および/または転移が生じる可能性が相対的に低いと考えられる。さらに、この場合には、他の抗癌剤(例、上述したようなEGFR阻害剤およびMET阻害剤等の分子標的薬、ならびにプラチナ製剤等のDNA複製阻害剤)に対して感受性である可能性があり、当該抗癌剤による治療効果が高い可能性がある。
また、本発明によれば、特定の抗癌剤による治療効果を経時的にモニタリングすることができる。このようなモニタリングは、例えば、特定の抗癌剤による治療効果の低下が認められた場合に、別の抗癌剤による治療に切り替えるかどうかの判断に有用である。例えば、測定されたAXL細胞外ドメインフラグメントの濃度が相対的に高い状態が維持されている場合には、癌患者は依然として、AXL阻害剤に対して感受性である可能性があり、AXL阻害剤による治療効果が引き続き高い可能性がある。また、この場合には、依然として、他の抗癌剤(例、上述したようなEGFR阻害剤およびMET阻害剤等の分子標的薬、ならびにプラチナ製剤等のDNA複製阻害剤)に対して耐性である可能性があり、当該抗癌剤による治療効果が低い可能性がある。一方、測定されたAXL細胞外ドメインフラグメントの濃度が相対的に低い状態が維持されている場合には、癌患者は依然として、AXL阻害剤に対して耐性である可能性があり、AXL阻害剤による治療効果が引き続き低い可能性がある。また、この場合には、依然として、他の抗癌剤(例、上述したようなEGFR阻害剤およびMET阻害剤等の分子標的薬、ならびにプラチナ製剤等のDNA複製阻害剤)に対して感受性である可能性があり、当該抗癌剤による治療効果が引き続き高い可能性がある。
さらに、本発明によれば、癌患者において、癌の浸潤および/または転移が生じる可能性が高いのか、または低いのかを判定することができる。このような判定は、例えば、癌患者の予後の予測に有用である。例えば、測定されたAXL細胞外ドメインフラグメントの濃度が相対的に高い場合には、癌の浸潤および/または転移が生じる可能性が相対的に高いと考えられる。一方、測定されたAXL細胞外ドメインフラグメントの濃度が相対的に低い場合には、癌の浸潤および/または転移が生じる可能性が相対的に低いと考えられる。
本発明の試験方法は、上記(b)の代わりに、(b’)測定されたAXL細胞外ドメインフラグメントの濃度を指標として、癌に対する抗癌剤の効果を判断する工程を含んでいてもよい。本工程は、上記(b)と同様に行うことができる。本発明の試験方法はまた、このような判断に基づき、投与する抗癌剤(例、上述したようなEGFR阻害剤、MET阻害剤およびAXL阻害剤等の分子標的薬、ならびにプラチナ製剤等のDNA複製阻害剤)を決定する工程、および/または投与する抗癌剤を別の抗癌剤(例、EGFR阻害剤、MET阻害剤およびAXL阻害剤等の分子標的薬、ならびにプラチナ製剤等のDNA複製阻害剤)に切り替えるか否かを決定する工程を含んでいてもよい。本発明の試験方法はさらに、このような決定に基づき、抗癌剤を投与する工程を含んでいてもよい。
本発明は、癌に対する抗癌剤の効果の診断試薬を提供する。本発明の試薬は、AXL細胞外ドメインフラグメントに親和性を有する物質を含む。本発明の診断試薬は、キットの形態であってもよい。本発明の診断試薬は、本発明の試験方法を行なうために好適に用いることができる。
本明細書中で用いられる場合、用語「AXL細胞外ドメインフラグメントに親和性を有する物質」とは、AXL細胞外ドメインフラグメントに結合する能力を有する物質をいう。AXL細胞外ドメインフラグメントに親和性を有する物質は、AXLの細胞外領域からなるポリペプチドまたはその部分ペプチドに親和性を有する物質であり得る。AXL細胞外ドメインフラグメントに親和性を有する物質としては、例えば、AXL細胞外ドメインフラグメントに対する抗体、AXL細胞外ドメインフラグメントに対するアプタマー、ならびに成長停止特異的遺伝子6(Gas6)およびAXLに結合する能力を保持する成長停止特異的遺伝子6(Gas6)変異体が挙げられる。
AXL細胞外ドメインフラグメントに対する抗体は、AXL細胞外ドメインフラグメントに特異的に結合し得る抗体である限り特に限定されない。例えば、AXL細胞外ドメインフラグメントに対する抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体のいずれでもよい。抗体はまた、抗体のフラグメント(例、Fab、F(ab’))、組換え抗体(例、scFv)であってもよい。抗体は、プレート等の基板上に固定された形態、またはストリップ等の支持体中に含侵された形態で提供されてもよい。抗体は、AXL細胞外ドメインフラグメントまたはその部分ペプチド(例、α鎖の部分ペプチド、β鎖の細胞外領域の部分ペプチド)を抗原として用いて、自体公知の方法により作製できる。抗原は、c−METのアミノ酸配列情報を参考にして適宜作製できる。また、培養癌細胞の上清から得られるAXL細胞外ドメインフラグメントを、抗原として用いてもよい。
ポリクローナル抗体は、例えば、AXL細胞外ドメインフラグメントまたはその部分ペプチドを抗原として、市販のアジュバント(例、完全または不完全フロイントアジュバント)とともに、動物の皮下あるいは腹腔内に2〜3週間おきに2〜4回程度投与し、最終免疫から約3〜約10日後に全血を採取して抗血清を精製することにより取得できる。抗原は、AXL細胞外ドメインフラグメントまたはその部分ペプチドを、キャリアタンパク質(例、ウシ血清アルブミン、KLH)に架橋した複合体であってもよい。抗原を投与する動物としては、例えば、ラット、マウス、ウサギ、ヤギ、ウシ、モルモット、ハムスターなどの哺乳動物が挙げられる。
モノクローナル抗体は、例えば、細胞融合法により作製できる。例えば、AXL細胞外ドメインフラグメントまたはその部分ペプチドを市販のアジュバントと共にマウスに2〜4回皮下または腹腔内に投与し、最終投与の約3日後に脾臓あるいはリンパ節を採取し、白血球を採取する。この白血球と骨髄腫細胞(例、NS−1)を細胞融合して該因子に対するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを得る。細胞融合としては、PEG法、電圧パルス法が挙げられる。所望のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、周知のEIAまたはRIA法等を用いて抗原と特異的に結合する抗体を、培養上清中から検出することにより選択できる。モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマの培養は、インビトロ、またはマウスもしくはラット、好ましくはマウス腹水中等のインビボで行うことができ、抗体はそれぞれハイブリドーマの培養上清および動物の腹水から取得できる。モノクローナル抗体は、IgG、IgM、IgA、IgE等のいずれのアイソタイプであってもよい。
AXL細胞外ドメインフラグメントに親和性を有する物質は、必要に応じて、標識用物質で標識された形態で提供されてもよい。標識用物質としては、例えば、FITC、FAM等の蛍光物質、ルミノール、ルシフェリン、ルシゲニン等の発光物質、H、14C、32P、35S、123I等の放射性同位体、ビオチン、ストレプトアビジン等の親和性物質などが挙げられる。
本発明の試薬は、AXL細胞外ドメインフラグメントに親和性を有する物質に加えて、さらなる構成要素を含むキットの形態で提供されてもよい。この場合、キットに含まれる各構成要素は、互いに隔離された形態、例えば、異なる容器(例、チューブ)に格納された形態で提供されてもよい。例えば、AXL細胞外ドメインフラグメントに親和性を有する物質が標識用物質で標識されていない場合、このようなキットは、標識用物質をさらに含んでいてもよい。このようなキットはまた、ポジティブコントロールとして、AXL細胞外ドメインフラグメントを含んでいてもよい。
本発明の試薬がキットの形態で提供される場合、キットは、AXL細胞外ドメインフラグメントに親和性を有する物質の種類に応じたさらなる構成要素を含んでいてもよい。例えば、AXL細胞外ドメインフラグメントに親和性を有する物質が抗体である場合、キットは、2次抗体(例、抗IgG抗体)、2次抗体の検出試薬をさらに含んでいてもよい。
本発明の試薬がキットの形態で提供される場合、キットは、生体サンプルを採取し得る器具をさらに含んでいてもよい。生体サンプルを採取し得る器具は、被験体から生体サンプルを入手可能である限り特に限定されないが、例えば、注射器等の採血器具が挙げられる。
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
実施例1:ゲフィチニブ耐性細胞株の樹立およびそのゲフィチニブ感受性の解析
ゲフィチニブ(EGFR阻害剤)感受性細胞株HCC4006(ヒト非小細胞肺癌由来、Clin Cancer Res 2006;12:7117−7125.)を、2週間、1ヶ月、3ヶ月または5ヶ月ゲフィチニブ(1μM)に暴露することにより、ゲフィチニブ耐性細胞株を樹立した(それぞれGR2w、GR1m、GR3m、GR5m)。これらのゲフィチニブ耐性細胞株を各種濃度のゲフィチニブに暴露し、次いで72時間後の生存細胞の割合をMTS法でアッセイすることにより、各細胞株のゲフィチニブ感受性を解析した。
その結果、ゲフィチニブ感受性細胞は、ゲフィチニブ暴露期間に依存してゲフィチニブに対する耐性を獲得することが示された(図1)。
実施例2:ゲフィチニブ耐性細胞特異的可溶性AXLの検出及び上皮間葉移行マーカーの発現解析
実施例1で樹立したゲフィチニブ耐性細胞株による可溶性AXLの分泌を、限外濃縮した培養上清(Supernatant)に対してAXL細胞外ドメインを認識する抗体(UniProt accession:P30530登録のアミノ酸配列において30〜140位のアミノ酸残基からなる組換え体断片を抗原として用いて作製されたモノクローナル抗体)によるウェスタンブロットにより評価した。併せて、細胞抽出液(Lysate)において、AXL、並びに間葉系マーカーおよび上皮系マーカーの上皮間葉移行マーカー(EMT)についてウェスタンブロットを行った。
その結果、可溶性AXLの分泌は、EGFR阻害剤に対する耐性獲得に伴って亢進することが確認された。また、耐性獲得に伴うAXLの発現亢進と間葉系マーカー(N−cadherin、Vimentin、ZEB1)の発現亢進と共に、上皮系マーカー(E−cadherin)の発現抑制が認められた(図2)。
以上より、EMTの進行を伴う、EGFR阻害剤に対する耐性獲得の過程において、AXLの発現および可溶性AXLの分泌が亢進することが示された。
実施例3:AXLに陽性であり、かつゲフィチニブに耐性能を有する細胞の単離および解析
ゲフィチニブ(EGFR阻害剤)感受性細胞株HCC4006中のAXL陽性細胞を、抗AXL抗体を吸着させた磁性粒子(ダイナビーズ)により分画した(HCC4006−AXL)。さらにその分画から、トランスウェルチャンバーを通過した細胞を、運動性の高い細胞として分画した(HCC4006−AXL−TW)。これらの細胞分画のゲフィチニブ感受性をMTSアッセイにより比較した。
その結果、AXL陽性細胞AXLおよびAXL陽性高運動性細胞AXL−TWは、ゲフィチニブに対して親細胞株よりも耐性であった(図3)。
以上より、EGFR阻害剤感受性癌細胞中にAXL陽性細胞が存在すること、およびこのようなAXL陽性細胞がゲフィチニブに耐性能を有することが示された。
実施例4:HCC827由来耐性細胞株の樹立および解析
EGFR阻害剤(ゲフィチニブ)感受性細胞株HCC827(ヒト非小細胞肺癌由来、Clin Cancer Res 2006;12:7117−7125.)をゲフィチニブ(EGFR阻害剤,1μM)に5ヶ月暴露することにより、ゲフィチニブ耐性細胞株(GR5m)を樹立した。また、HCC827をゲフィチニブに3ヶ月暴露した後、PHA−665752に3ヶ月暴露することによりEGFR阻害剤およびMET阻害剤の組合せに耐性の細胞株(HCC827−GRPR)を樹立した。
その結果、樹立細胞株GR5mは、ゲフィチニブ単独には耐性であったが、EGFR阻害剤(ゲフィチニブ)及びMET阻害剤(PHA−665752、Cancer Res 2003;63:7345―7355.)を参照)の組合せには感受性であった(図4)。また、樹立細胞株HCC827−GRPRは、EGFR阻害剤(ゲフィチニブ)及びMET阻害剤(PHA−665752)の双方に耐性であった(図4)。
実施例5:HCC827由来耐性細胞における可溶性AXLの分泌
実施例4で作製したHCC827由来耐性細胞株における可溶性AXLの分泌を解析した。
その結果、EGFR及びMETの両方に依存性を示すゲフィチニブ耐性細胞株HCC827−GR5mでは可溶性METの分泌が認められたが、ゲフィチニブ及びMET阻害剤の双方に耐性であるHCC827−GRPRは、可溶性METの低い分泌および可溶性AXLの分泌を示した(図5)。また、HCC827−GRPRは、N−cadherinの発現亢進を示し(図5)、EMTの進行を呈した。
以上より、ゲフィチニブ耐性となったMET遺伝子増幅肺癌細胞をさらにMET阻害剤で治療するモデルケースにおいても、EMTの進行を伴う耐性癌にAXL発現および可溶性AXL分泌の亢進が認められることが示された。
実施例6:H1993由来MET阻害剤耐性細胞の樹立および解析
MET遺伝子増幅を示し、かつMET阻害剤感受性を示すH1993細胞株(ヒト非小細胞肺癌由来、Cancer Res 2007;67:2081−2088.)より、MET阻害剤PHA−665752に対する耐性細胞株を樹立した(PR5m)。この細胞株から、AXL陽性細胞を、抗AXL抗体を吸着させた磁性粒子(ダイナビーズ)で分画した(PR5m−AXL)。また、PR5mから、トランスウェルチャンバーを通過した細胞を、運動性の高い細胞として分画した(PR5m−TW)。これらの細胞のAXL発現および可溶性AXL分泌、ならびにEMTマーカーの発現をウェスタンブロットで解析した。
その結果、PR5m−AXL、およびPR5m−TWでは、AXLの発現および可溶性AXLの分泌が認められ、また、間葉系マーカー(N−cadherin、Vimentin、ZEB1)の発現の亢進が認められた(図6)。
以上より、MET阻害剤耐性細胞中に、AXL陽性でEMTが進行した細胞が存在することが示された。
実施例7:シスプラチン耐性細胞株の樹立および解析
HCC4006を段階的に濃度を上げたシスプラチン(0.5〜25μM)に4ヶ月暴露することによりシスプラチン耐性細胞株(HCC4006−CR)を樹立した。さらに、シスプラチン耐性細胞株HCC4006−CRを1μMゲフィチニブに2週間暴露することにより、シスプラチンおよびゲフィチニブの双方に耐性である細胞株(HCC4006−CR−GR)を樹立した。これらの細胞株におけるAXL発現および可溶性AXL分泌、ならびにEMTマーカー発現をウェスタンブロットにより解析した。また、ゲフィチニブへのこれらの細胞株の耐性を評価した。
その結果、シスプラチン耐性化に伴い間葉系マーカー(N−cadherin、TWIST1等)の発現と共にAXL発現および可溶性AXL分泌の亢進が認められた(図7)。また、シスプラチンおよびゲフィチニブの双方に耐性である細胞株(HCC4006−CR−GR)では、マーカーの発現の変動が顕著に認められた(図7)。さらに、可溶性AXL分泌が認められるシスプラチン耐性細胞株HCC4006−CRは、ゲフィチニブに部分的に耐性であった(図8)。
以上より、プラチナ製剤に対する耐性獲得に伴うEMTの進行とAXL発現および可溶性AXL分泌との関連性、ならびにプラチナ製剤暴露によりEGFR阻害剤に対する耐性能を獲得する細胞の存在が示された。
実施例8:可溶性AXL分泌陽性細胞の運動能の解析
先の実施例に記載した種々の細胞の運動能を、トランスウェルマイグレーションアッセイ(Oncogene 2012;31:1493―1503.を参照)により測定した。
その結果、HCC4006由来耐性細胞株では、可溶性AXLの分泌亢進に相関して運動能の亢進が認められた(図9)。H1993由来耐性細胞株では、PR5mが親株よりも運動能が亢進していたが、AXL(可溶性AXL分泌)陽性分画でさらに運動能の亢進が認められた(図10)。可溶性AXL分泌が認められたHCC4006由来シスプラチン耐性細胞株、およびシスプラチンおよびゲフィチニブの双方に耐性である細胞株でも、運動能の亢進が認められた(図11)。癌細胞が浸潤および転移する能力は、トランスウェルマイグレーションアッセイにより細胞の運動能を測定することにより、評価できることが知られている(International Journal of Cancer 2012;130:555−566.を参照)。
以上より、可溶性AXLの分泌が、細胞の運動能と強く相関することが示された。したがって、可溶性AXLの測定により、癌細胞の浸潤および/または転移する能力を評価できると考えられる。
実施例9:AXLノックダウンによる運動能の阻害
運動能の亢進が認められたHCC4006−CR−GR(シスプラチンおよびゲフィチニブの双方に耐性である、HCC4006由来細胞株)のAXLをsi−RNAにより阻害し、AXL阻害が運動能へ及ぼす影響をトランスウェルマイグレーションアッセイにより解析した。si−AXL−1は、AXL遺伝子の第1標的配列(CCAGCACCUGUGGUCAUCUUACCUU、配列番号1)に対する第1si−RNAを示す。si−AXL−2は、AXL遺伝子の第2標的配列(GAGCUGCGGGAAGAUUUGGAGAACA、配列番号2)に対する第2si−RNAを示す。si−AXL−3は、AXL遺伝子の第3標的配列(CCAGGAACUGCAUGCUGAAUGAGAA、配列番号3)に対する第3si−RNAを示す。
その結果、AXLのノックダウンにより細胞の運動能が顕著に抑制された(図12、13)。
以上より、AXLが抗癌剤に耐性を示す細胞の運動能に機能的に関与していることが示された。
また、図12、13に示した結果より、AXLの発現量と抗癌剤に耐性を示す細胞の運動能との間には相関性があると考えられる。さらには、AXLの発現量と可溶性AXLの量との間にも相関性があると考えられる。したがって、可溶性AXLの測定により、抗癌剤に対する耐性を示す癌のうち、AXL阻害剤による治療が有効な癌(例えば、AXL阻害剤により癌細胞の運動能を抑制し、それによって癌の浸潤および/または転移を抑制する治療が有効な癌)を診断できると考えられる。
本発明は、例えば、癌に対する抗癌剤の効果の試験に有用であり、また、診断試薬およびキットとして有用である。

Claims (8)

  1. 可溶性AXLまたはその分解産物に親和性を有する物質を含む、癌に対する抗癌剤の効果の診断試薬であって、該抗癌剤がMET阻害剤、プラチナ製剤およびAXL阻害剤からなる群より選ばれる1以上の抗癌剤である、診断試薬
  2. 可溶性AXLまたはその分解産物に親和性を有する物質が、可溶性AXLまたはその分解産物に対する抗体である、請求項1記載の診断試薬。
  3. 抗癌剤が肺癌に対する抗癌剤である、請求項1または2記載の診断試薬。
  4. 抗癌剤の効果が、MET阻害剤またはプラチナ製剤に対する耐性である、請求項1〜3のいずれか一項記載の診断試薬。
  5. 抗癌剤の効果が、AXL阻害剤に対する感受性である、請求項1〜3のいずれか一項記載の診断試薬。
  6. AXL阻害剤に対する感受性が、AXL阻害剤による癌の増殖および/または浸潤および/または転移の抑制である、請求項記載の診断試薬。
  7. 可溶性AXLまたはその分解産物に親和性を有する物質、および可溶性AXLまたはその分解産物を含む、癌に対する抗癌剤の効果の診断キットであって、該抗癌剤がMET阻害剤、プラチナ製剤およびAXL阻害剤からなる群より選ばれる1以上の抗癌剤である、診断キット
  8. に対する抗癌剤の効果の試験方法であって、
    (a)被験体由来の生体サンプル中の可溶性AXLまたはその分解産物の濃度を測定する工程および
    (b)測定された可溶性AXLまたはその分解産物の濃度を、可溶性AXLまたはその分解産物の濃度と癌に対する抗癌剤の効果との間の関係を示す基準と比較する工程を含み、
    該抗癌剤がMET阻害剤、プラチナ製剤およびAXL阻害剤からなる群より選ばれる1以上の抗癌剤である、試験方法
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