本発明の圧電アクチュエータの実施の形態の一例について、図面を参照して詳細に説明する。
図1(a)は本発明の圧電アクチュエータの実施の形態の一例を示す概略斜視図であり、図1(b)は図1(a)に示す圧電素子の概略斜視図、図1(c)は図1(a)のA−A線断面図、図1(d)は図1(a)のB−B線で切断した断面図である。また、図2(a)は図1(a)に示すB−B線で切断した断面図、図2(b)は図1(a)に示すC−C線で切断した断面図である。
図1および図2に示す例の圧電アクチュエータ1は、複数の内部電極12および複数の圧電体層13が積層された積層体14と、積層体14の一方主面に設けられた複数の表面電極15と、複数の内部電極12と複数の表面電極15と電気的に接続する複数の側面電極16とを有する圧電素子11、および圧電素子11の一方主面に接合されたフレキシブル基板2とを備えた圧電アクチュエータ1であって、複数の内部電極12は、一層おきに設けられた第1の内部電極121と、積層体14の一方主面側に配置されて第1の内部電極121と対向するように一層おきに設けられた第2の内部電極122と、積層体14の他方主面側に配置されて第1の内部電極121と対向するように一層おきに設けられた第3の内部電極123とを含み、複数の表面電極15は、第1の内部電極121と電気的に接続された第1の表面電極151と、第2の内部電極122と電気的に接続された第2の表面電極152と、第3の内部電極123と電気的に接続された第3の表面電極153とを含み、フレキシブル基板2は、第1の表面電極151と電気的に接続された第1の配線導体221と、第2の表面電極152と電気的に接続された第2の配線導体222と、第3の表面電極153と電気的に接続された第3の配線導体223とを含んでいる。
本例の圧電アクチュエータ1は圧電素子11を有しており、圧電素子11を構成する積層体14は、複数の内部電極12と複数の圧電体層13とが積層されて板状に形成されてなるものである。そして、圧電アクチュエータ1は複数の内部電極12が積層方向に重なる活性部とそれ以外の不活性部とを有し、例えば長尺状に形成されている。携帯端末のディスプレイまたは筐体に取り付ける圧電アクチュエータ1の場合、積層体14の長さとしては、例えば18mm〜28mmが好ましく、22mm〜25mmが更に好ましい。積層体14の幅は、例えば1mm〜6mmが好ましく、3mm〜4mmが更に好ましい。積層体14の厚みは、例えば0.2mm〜1.0mmが好ましく、0.4mm〜0.8mmが更に好ましい。
積層体14を構成する複数の内部電極12は、複数の圧電体層13を形成するセラミックスと同時焼成により形成されたもので、圧電体層13と交互に積層されて圧電体層13を上下から挟んでいる。具体的には、一層おきに設けられた第1の内部電極121と、積層体14の一方主面側に配置されて第1の内部電極121と対向するように一層おきに設けられた第2の内部電極122と、積層体14の他方主面側に配置されて第1の内部電極121と対向するように一層おきに設けられた第3の内部電極123と含んでいる。積層体14の上側に第2の内部電極122および第1の内部電極121が配置され、積層体14の下側に第3の内部電極123および第1の内部電極121が配置されることにより、それらの間に挟まれた圧電体層13に駆動電圧を印加するものである。この形成材料として、例えば圧電セラミックスとの反応性が低い銀や銀−パラジウム合金を主成分とする導体、あるいは銅、白金などを含む導体を用いることができるが、これらにセラミック成分やガラス成分を含有させてもよい。
図1および図2に示す例では、第1の内部電極121の端部が積層体14の対向する一対の側面のうちの一方に導出され、第2の内部電極122の端部および第3の内部電極123の端部が積層体14の対向する一対の側面のうちの他方に導出されている。携帯端末のディスプレイまたは筐体に取り付ける圧電アクチュエータの場合には、内部電極12の長さは、例えば17mm〜25mmが好ましく、21mm〜24mmが更に好ましい。内部電極12の幅は、例えば1mm〜5mmが好ましく、2mm〜4mmが更に好ましい。内部電極12の厚みは、例えば0.1μm〜5μmが好ましい。
積層体14を構成する圧電体層13は、圧電特性を有するセラミックスで形成されたもので、このようなセラミックスとして、例えばチタン酸ジルコン酸鉛(PbZrO3−PbTiO3)からなるペロブスカイト型酸化物、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、タンタル酸リチウム(LiTaO3)などを用いることができる。圧電体層13の1層の厚みは、低電圧で駆動させるために、例えば0.01〜0.1mmに設定することが好ましい。また、大きな屈曲振動を得るために、200pm/V以上の圧電定数d31を有することが好ましい。
積層体14の一方主面には、内部電極12と電気的に接続された複数の表面電極15が設けられている。図1および図2に示す形態における複数の表面電極15は、大きな面積の第1の表面電極151、小さな面積の第2の表面電極152および第3の表面電極153で構成されている。例えば、第1の表面電極151は第1の内部電極121と電気的に接続され、第2の表面電極152は一方主面側に配置された第2の内部電極122、第3の表面電極153は他方主面側に配置された第3の内部電極123と電気的に接続されている。携帯端末のディスプレイまたは筐体に取り付ける圧電アクチュエータの場合には、第1の表面電極151の長さは、例えば17mm〜23mmが好ましく、19mm〜21mmが更に好ましい。第1の表面電極151の幅は、例えば1mm〜5mmが好ましく、2mm〜4mmが更に好ましい。第2の表面電極152および第3の表面電極153の長さは、例えば1mm〜3mmとするのが好ましい。第2の表面電極152および第3の表面電極153の幅は、例えば0.5mm〜1.5mmとするのが好ましい。
また、圧電アクチュエータ1は、圧電素子11の一方主面に接合されたフレキシブル基板2を有している。フレキシブル基板2は、例えば樹脂製のベースフィルム21の表面に3本の配線導体22(第1の配線導体221、第2の配線導体222、第3の配線導体223)が設けられたフレキシブル・プリント配線基板である。
そして、フレキシブル基板2の一部が圧電素子11の一方主面に導電性接合材3を介して接合され、配線導体22が導電性接合材3を介して表面電極15と電気的に接続されている。具体的には、第1の配線導体221が第1の表面電極151と電気的に接続され、
第2の配線導体222が第2の表面電極152と電気的に接続され、第3の配線導体223が第3の表面電極153と電気的に接続されている。このフレキシブル基板2は、例えば一方の端部で圧電素子11と接合され、他方の端部で外部回路(コネクタ)と接合されている。
なお、本例では、さらに圧電素子11との接合部及びその近傍を除く領域にカバーフィルム23が設けられている。圧電素子11と重なる領域およびその近傍領域はカバーフィルム23が設けられていないことで、カバーフィルム23の厚みによる影響を受けることなく、確実な電気的接続が得られる。
導電性接合材3としては、導電性接着剤やはんだ等が用いられるが、好ましくは導電性接着剤であるのがよい。例えばアクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂、あるいは合成ゴムなどの樹脂接着剤32中に、例えば金、銅、ニッケル、または金メッキした樹脂ボールなどからなる導電粒子31を分散させてなる導電性接着剤を用いることで、はんだに比べて振動によって生じる応力を低減することができるためである。より好ましくは、導電性接着剤の中でも異方性導電材であるのがよい。異方性導電材は、電気的接合を担う導電粒子31と接着を担う樹脂接着剤32からなり、一つの導電粒子31が表面電極15と配線導体22とに接している。すなわち、表面電極15と配線導体22との間にあるそれぞれの導電粒子31が表面電極15と配線導体22とに接している。この異方性導電材は、厚み方向には導通が取れ、面内方向には絶縁が取れるため、狭ピッチの配線においても異極の表面電極間で電気的にショートすることがなく、フレキシブル基板2との接続部をコンパクトにすることができる。
また、導電性接合材3が圧電素子11とフレキシブル基板2との重なる領域から当該重なる領域の外側まで延在している部分を有していてもよい。なお、延在した導電性接合材3は、当該延在した領域において圧電素子11またはフレキシブル基板2と接合されている。なお、延在した距離d1は、例えば0.05mm〜1.5mmに設定される。
この構成によれば、延在した導電性接合材3により圧電素子11とフレキシブル基板2との接合面積が増すことによって、接合強度が高まるとともに振動を吸収する効果が高まる。また、破壊起点が延在した導電性接合材3の端部へ移動することにより破壊しにくくなる。その結果、長時間駆動してもフレキシブル基板2が圧電素子11から剥がれるのを抑制できる。
また、本例の圧電アクチュエータ1は、図3に示すように、フレキシブル基板2の上方から見て圧電素子11と重なる領域に固着された補強板4を備えていてもよい。補強板4とは、フレキシブル基板2の圧電素子11との接合領域を補強するためのもので、例えばガラスエポキシ(FR−4)、コンポジット(CEM−3)、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリエステルなどの樹脂、ステンレス、アルミニウムおよびそれらの合金などの金属で、例えば厚み50〜200μmとされたものである。
さらに、補強板4には屈曲部41が設けられていてもよい。屈曲部41とは、フレキシブル基板2が補強板4の厚み方向(圧電素子11の積層方向)に折れ曲がった部位のことである。この構成によれば、補強板4によってフレキシブル基板2の振動が吸収されるとともに、振動が補強板4の屈曲部41に達した際、屈曲部41によってさらに振動エネルギーを吸収され、振動が減衰する。その結果、フレキシブル基板2は長時間駆動してもはがれにくくなる。
上述したように、フレキシブル基板2は、第1の表面電極151と電気的に接続された第1の配線導体221と、第2の表面電極152と電気的に接続された第2の配線導体2
22と、第3の表面電極153と電気的に接続された第3の配線導体223とを含んでいる。
圧電素子11の分極時には、積層体14の上半分の領域と下半分の領域とで、分極方向が逆になるようにプラスマイナス逆に電圧を印加するために、第1の表面電極151、第2の表面電極152および第3の表面電極153が設けられている。そして、このように分極された圧電素子11に、従来のような2本の配線導体(第1の表面電極151に接続された配線導体、第2の表面電極152および第3の表面電極153に接続された配線導体)が設けられたフレキシブル基板2を接合することで、2本の配線導体へ電圧を印加したときに、上半分の領域が伸びたときは下半分の領域が縮み、上半分の領域が縮んだ時は下半分の領域が伸びるという撓み振動をさせることができる。圧電アクチュエータ1はいわゆるバイモルフ型の圧電アクチュエータであって、表面電極15から電気信号が入力されて一方主面および他方主面が屈曲面となるように屈曲振動するものである。
ところが、積層体14の上半分の領域と下半分の領域とで幅や長さのバラツキや厚みバラツキがあることがあり、同じ電圧を印加しても変位量が全く同一とならない場合がある。このような場合に、2本の配線導体を備えたフレキシブル基板2では、あとから再度分極電圧を変えて分極をすることにより調整することができない。
これに対し、フレキシブル基板2の配線導体22をそれぞれの表面電極15に対応するように設けたことで、圧電素子11にフレキシブル基板2を接合した後の圧電アクチュエータ1の状態で、積層体14の上半分の領域と下半分の領域とにそれぞれ分極電圧を印加できるので、圧電アクチュエータ1に撓み量の個体差があったとしても分極電圧値を変更して再調整することで、撓み量をそろえることができる。したがって、優れた圧電特性の圧電アクチュエータ1を得ることができる。
ここで、図に示すように、圧電素子11は長尺状の板体であって、第1の表面電極151は積層体の一方主面の長手方向の一端から他端方向へ延設され、第2の表面電極152および第3の表面電極153は積層体14の長手方向の他端部において間に間隙部を設けて積層体14の幅方向に配置されている。そして、フレキシブル基板2は圧電素子11の他端部から長手方向に延出されるように接合され、平面視で第1の配線導体221が第2の配線導体222と第3の配線導体223との間に配置されているのが好ましい。
圧電素子11(積層体14)が長尺状の板体である場合には、圧電素子11は長手方向に屈曲振動する。そのため、圧電素子11の長手方向と交差する方向(短手方向)へフレキシブル基板2を延出させる、言い換えれば圧電素子11の長辺からフレキシブル基板2を延出させると、圧電素子11の振動によってフレキシブル基板2が幅方向にねじれやすくなり、フレキシブル基板2が圧電素子11から剥がれやすくなる可能性がある。これに対して、フレキシブル基板2が圧電素子11の他端部から長手方向に延出されるように接合されていることで、圧電素子11の振動によってフレキシブル基板2がねじれにくくなるので、フレキシブル基板2が圧電素子11から剥がれる可能性が低減されて信頼性の高い圧電アクチュエータ1となる。このとき、圧電素子11の他端から離れた第1の表面電極151に接続されている第1の配線導体221が、圧電素子11の他端部に設けられた第2の表面電極152および第3の表面電極153にそれぞれ接続された、第2の配線導体222と第3の配線導体223との間に配置されていると、フレキシブル基板2の幅方向における配線導体の配置バランスがよいので、圧電素子11の振動によるフレキシブル基板2のねじれがより小さいものとなり、フレキシブル基板2が圧電素子11から剥がれる可能性がより低減されてより信頼性の高い圧電アクチュエータ1となる。
また、図1および図4に示すように、フレキシブル基板2の幅が圧電素子11の幅と同
じかまたはこれよりも狭いのが好ましい。このようにすることで、圧電アクチュエータ1を携帯端末、電子機器などに搭載する際に場所をとらず、小型化や狭スペースへの搭載に貢献できる。また、フレキシブル基板2が圧電素子11から幅方向にはみ出す部分、すなわち圧電素子11の振動によってねじれやすい部分がないので、フレキシブル基板2が圧電素子11から剥がれる可能性がより低減されてより信頼性の高い圧電アクチュエータ1となる。
また、図4に示すように、平面視で、第2の配線導体222および第3の配線導体223は第2の表面電極152と第3の表面電極153との間から引き出されていてもよい。このようにすることで、第1の配線導体221、第2の配線導体222および第3の配線導体223をフレキシブル基板2の幅方向の中央部に配置することとなるので、圧電素子11の振動によるフレキシブル基板2のねじれがより小さいものとなり、フレキシブル基板2が圧電素子11から剥がれる可能性がより低減されてより信頼性の高い圧電アクチュエータ1となる。
この場合において、第2の配線導体222の先端部および第3の配線導体223の先端部は、櫛歯状になっているのがよい。このようにすることで、第2の配線導体222および第3の配線導体223を幅の小さいものとしても、第2の表面電極152および第3の表面電極153との接続部における第2の配線導体222および第3の配線導体223の面積を大きくすることができるので接続信頼性を確保することができる。
さらに、図5に示すように、フレキシブル基板2における圧電素子11と重なる重なり領域に近接してくびれ部20が設けられていて、フレキシブル基板2における重なり領域の上からくびれ部20の少なくとも一部にかけて補強板4が設けられているのが好ましい。このようなくびれ部20の存在によって、くびれ部20での変形性がよいことで携帯端末、電子機器などへの搭載容易性が向上するとともに、補強板4によって圧電素子11の振動がフレキシブル基板2を伝達していくのを抑制することができ、不要な振動によるノイズを抑制することができる。また、フレキシブル基板2における重なり領域の上からくびれ部20の少なくとも一部にかけて補強板4が設けられていることにより、接合領域である重なり領域から離れた位置でフレキシブル基板2が曲がりやすくなり、接合領域に応力が加わり難くなるので、フレキシブル基板2の曲げに対する接合強度が増し、信頼性が向上する。
なお、圧電素子11の他方主面を平坦にしておくことにより、例えば振動を加える対象物(例えば後述する振動板など)に他方主面を貼り合わせたときに、振動を加える対象物と一体となって屈曲振動を起こしやすくなり、全体として屈曲振動の効率を上げることができる。
次に、本実施の形態の圧電アクチュエータ1の製造方法について説明する。
まず、圧電体層13となるセラミックグリーンシートを作製する。具体的には、圧電セラミックスの仮焼粉末と、アクリル系,ブチラール系等の有機高分子からなるバインダーと、可塑剤とを混合してセラミックスラリーを作製する。そして、ドクターブレード法、カレンダーロール法等のテープ成型法を用いることにより、このセラミックスラリーを用いてセラミックグリーンシートを作製する。圧電セラミックスとしては圧電特性を有するものであればよく、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PbZrO3−PbTiO3)からなるペロブスカイト型酸化物等を用いることができる。また、可塑剤としては、フタル酸ジブチル(DBP),フタル酸ジオクチル(DOP)等を用いることができる。
次に、内部電極12となる導電性ペーストを作製する。具体的には、銀−パラジウム合
金の金属粉末にバインダーおよび可塑剤を添加混合することによって導電性ペーストを作製する。この導電性ペーストを上記のセラミックグリーンシート上に、スクリーン印刷法を用いて内部電極12のパターンで塗布する。さらに、この導電性ペーストが印刷されたセラミックグリーンシートを複数枚積層し、所定の温度で脱バインダー処理を行なった後、900〜1200℃の温度で焼成し、平面研削盤等を用いて所定の形状になるよう研削処理を施すことによって、交互に積層された内部電極12および圧電体層13を備えた積層体14を作製する。
積層体14は、上記の製造方法によって作製されるものに限定されるものではなく、内部電極12と圧電体層13とを複数積層してなる積層体14を作製できれば、どのような製造方法によって作製されてもよい。
その後、銀を主成分とする導電性粒子とガラスとを混合したものに、バインダー,可塑剤および溶剤を加えて作製した銀ガラス含有導電性ペーストを、表面電極15のパターンで積層体14の主面および側面にスクリーン印刷法等によって印刷して乾燥させた後、650〜750℃の温度で焼き付け処理を行ない、表面電極15および側面電極16を形成する。
そして、表面電極15または側面電極16に電圧を印加して、圧電体層13の分極処理を行い、圧電素子が作製される。
なお、表面電極15と内部電極12とを電気的に接続する場合、圧電体層13を貫通するビアを形成して接続しても、積層体14の側面に側面電極を形成しても良く、どのような製造方法によって作製されてもよい。
次に、フレキシブル基板2および補強板3を用意する。例えば、あらかじめ所望の形状に加工された例えば厚み125μmのポリイミドシート(補強板用多数個取りシート)を、フレキシブル基板2(ベースフィルム21)が多数配列されたシート(ベースフィルム用多数個取りシート)の配線導体22が設けられていない側の面の所定の位置に、熱硬化型接着剤を用いて貼り合せる。ここで、屈曲部31を有する補強板3は、フレキシブル基板2をシートから金型等を用いて切り離す際(個片にする際)に、補強板3もあわせて最終形状に加工されてもよく、金型などであらかじめ最終形状に加工した補強板3を所定の位置に最初から貼り合せてもよい。
次に、導電性接合部材を用いて、フレキシブル基板2を圧電素子11に接続固定(接合)する。
まず、圧電素子11の所定の位置に例えば半田、銀ペースト、異方性導電材などからなる導電性接合部材用ペーストをスクリーン印刷等の手法を用いて塗布形成する。その後、フレキシブル基板2を当接させた状態で導電性接合部材用ペーストを硬化させることにより、フレキシブル基板2を圧電素子11に接続固定する。なお、導電性接合部材用ペーストは、フレキシブル基板2側に塗布形成しておいてもよい。
導電性接合部材が導電性接着剤の場合であって、導電性接着剤を構成する樹脂が熱可塑性樹脂からなる場合は、導電性接着剤を圧電素子11またはフレキシブル基板2の所定の位置に塗布形成した後、圧電素子11とフレキシブル基板2とを導電性接着剤を介して当接させた状態で加熱加圧することで、熱可塑性樹脂が軟化流動し、その後常温に戻すことで、再び熱可塑性樹脂が硬化し、フレキシブル基板2が圧電素子11に接続固定される。
また、上述では、導電性接着剤を圧電素子11またはフレキシブル基板2に塗布形成す
る手法を示したが、予めシート状に形成された導電性接着剤のシートを圧電素子11とフレキシブル基板2との間に挟んだ状態で加熱加圧して接合してもよい。
さらに、所望の形状をした金型を用いて、後述するフレキシブル基板2を圧電素子11に接合すると同時に、補強板3をフレキシブル基板2に固着し、補強板3に屈曲部31を形成するようにしてもよい。
以上の方法により、圧電アクチュエータ1を作製することができる。
なお、作製された圧電アクチュエータ1に容量値のずれがあった場合には、分極電圧値を調整することで容量値を再調整する。分極電圧と容量値に相関があるため、分極電圧値を調整することで容量値を調整し、圧電アクチュエータ1の容量ばらつきを抑えることが可能である。
通常、フレキシブル基板が圧電素子に接続された状態の圧電アクチュエータにおいて、フレキシブル基板に設けられる配線導体が2本の場合、積層体の対向する一対の側面のうちの他方に導出された一方主面側(上側)の内部電極と他方主面側(下側)の内部電極とが電気的に接続されて同時に電圧が印加されるため、容量値のばらつきによって圧電アクチュエータの変位が目標値からずれている際に、再調整が不可能であった。
これに対し、本発明の圧電アクチュエータ1は、フレキシブル基板2に設けられる配線導体22が3本であって、圧電素子10の一方主面側(上側)の内部電極12と電気的に接続された配線導体22と他方主面側(下側)の内部電極12と電気的に接続された配線導体22とがそれぞれ独立して存在しているため、一方主面側(上側)の内部電極12と他方主面側(下側)の内部電極12とに独立して電圧を印加することができるため、圧電アクチュエータ1に容量値のずれがあった場合に、一方主面側(上側)と他方主面側(下側)とに個別に電圧を印加することができる。
本実施形態の圧電振動装置は、図6に示すように、圧電アクチュエータ1と、圧電アクチュエータ1を構成する圧電素子11の他方主面に接合された振動板81とを有するものである。なお、圧電素子11の一方主面に接合されたフレキシブル基板2は図6では省略している。
振動板81は、例えば矩形状の薄板である。振動板81は、アクリル樹脂やガラス等の剛性および弾性が大きい材料を好適に用いて形成することができる。また、振動板81の厚みは、例えば0.4mm〜1.5mmに設定される。
振動板81は、圧電素子11の他方主面に、接合部材82を介して接合されている。接合部材82を介して、振動板81に他方主面の全面が接合されていてもよく、略全面が接合されていてもよい。
接合部材82は、フィルム状の形状を有している。また、接合部材82は、振動板81よりも柔らかく変形しやすいもので形成されており、振動板81よりもヤング率,剛性率,体積弾性率等の弾性率や剛性が小さい。すなわち、接合部材82は、圧電アクチュエータ1(圧電素子11)の駆動によって振動板81を振動させたときに変形可能であり、同じ力が加わったときに、振動板81よりも大きく変形するものである。そして、接合部材82の一方主面(図の+z方向側の主面)には積層体11の他方主面(図の−z方向側の主面)が全体的に固着され、接合部材82の他方主面(図の−z方向側の主面)には振動板81の一方主面(図の+z方向側の主面)の一部が固着されている。
振動板81よりも変形可能な接合部材82で圧電素子11と振動板81とを接合することで、圧電アクチュエータ1から振動が伝達されたとき、変形可能な接合部材82が振動板81よりも大きく変形する。
このとき、振動板81から反射される逆位相の振動を変形可能な接合部材82で緩和することができるので、圧電アクチュエータ1(圧電素子11)が周囲の振動の影響を受けずに振動板81へ強い振動を伝達させることができる。
中でも、接合部材82の少なくとも一部が粘弾性体で構成されていることで、圧電アクチュエータ1(圧電素子11)からの強い振動を振動板81へ伝える一方、振動板81から反射される弱い振動を接合部材82が吸収することができる点で好ましい。例えば、不織布等からなる基材の両面に粘着剤が付着された両面テープや、弾性を有する接着剤を含む構成の接合部材を用いることができ、これらの厚みとしては例えば10μm〜2000μmのものを用いることができる。
接合部材82は、単一のものであっても、いくつかの部材からなる複合体であっても構わない。このような接合部材82としては、例えば、不織布等からなる基材の両面に粘着剤が付着された両面テープや、弾性を有する接着剤である各種弾性接着剤等を好適に用いることができる。また、接合部材82の厚みは、圧電アクチュエータ1(圧電素子11)の屈曲振動の振幅よりも大きいことが望ましいが、厚すぎると振動が減衰されるので、例えば、0.1mm〜0.6mmに設定される。ただし、本発明の圧電振動装置においては、接合部材82の材質に限定はなく、接合部材82が振動板81よりも固く変形し難いもので形成されていても構わない。また、場合によっては、接合部材82を有さない構成であっても構わない。
このような構成を備える本例の圧電振動装置は、電気信号を加えることによって圧電アクチュエータ1(圧電素子11)を屈曲振動させ、それによって、振動板81を振動させる圧電振動装置として機能する。なお、振動板81の長さ方向における他方端部(図の−y方向端部や振動板81の周縁部等を、図示せぬ支持部材によって支持しても構わない。
本例の圧電振動装置は、圧電素子11の平坦な他方主面に振動板81が接合されている。これにより、圧電素子11と振動板81とが強固に接合された圧電振動装置とすることができる。
また、本例の圧電振動装置は、優れた圧電特性の圧電アクチュエータ1を用いて構成されていることから、高性能の圧電振動装置とすることができる。
本実施形態の携帯端末は、図7〜図9に示すように、圧電アクチュエータ1と、電子回路(図示せず)と、ディスプレイ91と、筐体92とを有しており、圧電アクチュエータ1を構成する圧電素子11の他方主面がディスプレイ91または筐体92に接合されていることを特徴とする。なお、図6は本発明の携帯端末を模式的に示す概略斜視図であり、図8は図7に示すA−A線で切断した概略断面図、図9は図7に示すB−B線で切断した概略断面図である。圧電素子11の一方主面に接合されたフレキシブル基板は図8および図9では省略している。
本例では、圧電アクチュエータ1はディスプレイ91のカバーとなる筐体92の一部に取り付けられ、この筐体92の一部が振動板922として機能するようになっている。
筐体92は、1つの面が開口した箱状の筐体本体921と、筐体本体921の開口を塞ぐ振動板922とを有している。この筐体92(筐体本体921および振動板922)は
、剛性および弾性率が大きい合成樹脂等の材料を好適に用いて形成することができる。
振動板922の周縁部は、筐体本体921に接合材93を介して振動可能に取り付けられている。接合材93は、振動板922よりも柔らかく変形しやすいもので形成されており、振動板922よりもヤング率,剛性率,体積弾性率等の弾性率や剛性が小さい。すなわち、接合材93は変形可能であり、同じ力が加わったときに振動板922よりも大きく変形する。
接合材93は、単一のものであっても、いくつかの部材からなる複合体であっても構わない。このような接合材93としては、例えば不織布等からなる基材の両面に粘着剤が付着された両面テープ等を好適に用いることができる。接合材93の厚みは、厚くなりすぎて振動が減衰されないように設定されており、例えば0.1mm〜0.6mmに設定される。ただし、本発明の携帯端末においては、接合材93の材質に限定はなく、接合材93が振動板922よりも固く変形し難いもので形成されていても構わない。また、場合によっては、接合材93を有さない構成であっても構わない。
電子回路(図示せず)としては、例えば、ディスプレイ91に表示させる画像情報や携帯端末によって伝達する音声情報を処理する回路や、通信回路等が例示できる。これらの回路の少なくとも1つであってもよいし、全ての回路が含まれていても構わない。また、他の機能を有する回路であってもよい。さらに、複数の電子回路を有していても構わない。なお、電子回路と圧電アクチュエータ1とは図示しない接続用配線で接続されている。
ディスプレイ91は、画像情報を表示する機能を有する表示装置であり、例えば、液晶ディスプレイ,有機ELディスプレイ等の既知のディスプレイを好適に用いることができる。なお、ディスプレイ91は、タッチパネルのような入力装置を有するものであっても良い。また、ディスプレイ91のカバー(振動板922)が、タッチパネルのような入力装置を有するものであっても構わない。さらに、ディスプレイ91全体や、ディスプレイ91の一部が振動板として機能するようにしても構わない。
携帯端末は、アンテナなどを介してデータの送受信などを行う通信手段(通信部)を有しているものである。たとえば、スマートフォンに代表される携帯電話や、タブレットPC、ノート型PCと言ったモバイル機器、ゲーム機などが挙げられる。
ここで、圧電アクチュエータ1と筐体92(振動板922)とが該筐体92(振動板922)よりも変形可能な接合部材を用いて接合されているのが好ましい。すなわち、図8および図9においては接合部材82が変形可能な接合部材である。
筐体92よりも変形可能な接合部材82で圧電アクチュエータ1と筐体92とを接合することで、圧電アクチュエータ1から振動が伝達されたとき、変形可能な接合部材82が筐体92よりも大きく変形する。この接合部材82は、圧電アクチュエータ1の駆動によって筐体92を振動させたときに変形可能であり、同じ力が加わったときに、筐体92よりも大きく変形するものである。このような接合部材82は、例えばフィルム状の形状を有している。そして、筐体92よりも柔らかく変形しやすいもので形成されており、筐体92よりもヤング率,剛性率,体積弾性率等の弾性率や剛性が小さい。
このとき、筐体92から反射される逆位相の振動を変形可能な接合部材82で緩和することができるので、圧電アクチュエータ1が周囲の振動の影響を受けずに筐体92へ強い振動を伝達させることができる。
中でも、接合部材82の少なくとも一部が粘弾性体で構成されていることで、圧電アク
チュエータ1からの強い振動を筐体92へ伝える一方、筐体92から反射される弱い振動を接合部材82が吸収することができる点で好ましい。例えば、不織布等からなる基材の両面に粘着剤が付着された両面テープや、弾性を有する接着剤を含む構成の接合部材を用いることができ、これらの厚みとしては例えば10μm〜2000μmのものを用いることができる。
本例では圧電アクチュエータ1が筐体92に接合されたものを示したが、圧電アクチュエータ1がディスプレイ91に接合されていてもよく、この場合、圧電アクチュエータ1とディスプレイ91とが該ディスプレイ91よりも変形可能な接合部材を用いて接合されているのが好ましい。
また、本実施形態の携帯端末は、ディスプレイ91または筐体92が、耳の軟骨または気導を通して音情報を伝える振動を生じさせることを特徴とする。本例の携帯端末は、振動板(ディスプレイ91または筐体92)を直接または他の物を介して耳に接触させて、耳の軟骨に振動を伝えることによって音情報を伝達することができる。すなわち、振動板(ディスプレイ91または筐体92)を直接または間接的に耳に接触させて、耳の軟骨に振動を伝えることによって音情報を伝達することができる。これにより、例えば、周囲が騒がしいときにおいても音情報をクリアに伝達することができ、騒音下でもクリアに音声が聞え、難聴者でも音声を認識することが可能な携帯端末を得ることができる。なお、振動板(ディスプレイ91または筐体92)と耳との間に介在する物は、例えば、携帯端末のカバーであっても良いし、ヘッドホンやイヤホンでも良く、振動を伝達可能な物であればどんなものでも構わない。また、振動板(ディスプレイ91または筐体92)から発生する音を空気中に伝播させることにより、音情報を伝達するような携帯端末であっても構わない。さらに、複数のルートを介して音情報を伝達するような携帯端末であっても構わない。
本例の携帯端末によれば、優れた圧電特性の圧電アクチュエータ1を用いて構成されていることから、高音質の携帯端末を得ることができる。
また、本実施形態の音響発生器10は、図10に示すように、上述の圧電アクチュエータ1と、圧電アクチュエータ1が取り付けられており、圧電アクチュエータ1の振動によって圧電アクチュエータ1とともに振動する振動板20と、振動板20の外周部に設けられた枠体30とを備えているものである。
圧電アクチュエータ1は、電圧の印加を受けて振動することによって振動板20を励振する励振器である。圧電アクチュエータ1の主面と振動板20の主面とがエポキシ系樹脂等の接着剤により接合され、圧電アクチュエータ1が屈曲振動することにより、圧電アクチュエータ1が振動板20に一定の振動を与えて音を発生させることができる。
振動板20は、張力がかかっている状態でその周縁部が枠体30に固定されていて、圧電素子アクチュエータ1の振動によって圧電アクチュエータ1とともに振動するようになっている。この振動板20は樹脂や金属等の種々の材料を用いて形成することができ、例えば厚さ10〜200μmのポリエチレン、ポリイミド、ポリプロピレン等の樹脂フィルムで振動板20を構成することができる。樹脂フィルムは金属板などに比べて弾性率および機械的なQ値の低い材料であるため、振動板20を樹脂フィルムにより構成することで、振動板20を大きな振幅で屈曲振動させ、音圧の周波数特性における共振ピークの幅を広く、高さを低くして共振ピークとディップとの差を低減することができる。
枠体30は、振動板20の周縁部で振動板20を支持する支持体として機能し、例えばステンレスなどの金属、樹脂など種々の材料を用いて形成することができる。この枠体3
は、図10(b)に示すように一つの枠部材(上枠部材301)からなるものでもよく、図10(c)に示すように二つの枠部材(上枠部材301および下枠部材302)からなるものでもよい。この場合、二つの枠部材で振動板20を挟むことで、振動板2の張りを安定させることができる。なお、上枠部材301および下枠部材302は、それぞれの厚みが例えば100〜5000μmとされる。
本例の音響発生器10においては、図10(b)および図10(c)に示すように、圧電アクチュエータ1から振動板20の表面の少なくとも圧電アクチュエータ1の周辺部までを覆うように設けられた樹脂層40をさらに有するのが好ましい。樹脂層40としては、例えばアクリル系樹脂を用いることができる。かかる樹脂層40に圧電アクチュエータ1(圧電素子11)を埋設することで適度なダンパー効果を誘発させることができるので、共振現象を抑制して、音圧の周波数特性におけるピークやディップを小さく抑えることができる。なお、図10(b)および図10(c)に示すように、樹脂層40は上枠部材301と同じ高さとなるように形成されていてもよい。
このような音響発生器10は、優れた圧電特性の圧電アクチュエータ1を用いて構成されていることから、高音質の音を発することができる。
次に、音響発生器を搭載した電子機器について、図11を用いて説明する。図11は、実施形態に係る電子機器50の構成を示す図である。なお、図には、説明に必要となる構成要素のみを示しており、一般的な構成要素についての記載を省略している。
図11に示すように、本例の電子機器50は、音響発生器10と、音響発生器10に接続された電子回路60と、電子回路60および音響発生器10を収容する筐体70とを備え、音響発生器10から音響を発生させる機能を有する。
電子機器50は、電子回路60を備える。電子回路60は、たとえば、コントローラ50aと、送受信部50bと、キー入力部50cと、マイク入力部50dとから構成される。電子回路60は、音響発生器10に接続されており、音響発生器10へ音声信号を出力する機能を有している。音響発生器10は電子回路60から入力された音声信号に基づいて音響を発生させる。
また、電子機器50は、表示部50eと、アンテナ50fと、音響発生器10とを備える。また、電子機器50は、これら各デバイスを収容する筐体70を備える。なお、図11では、1つの筐体70にコントローラ50aをはじめとする各デバイスがすべて収容されている状態をあらわしているが、各デバイスの収容形態を限定するものではない。本実施形態では、少なくとも電子回路60と音響発生器10とが、1つの筐体70に収容されていればよい。
コントローラ50aは、電子機器50の制御部である。送受信部50bは、コントローラ50aの制御に基づき、アンテナ50fを介してデータの送受信などを行う。キー入力部50cは、電子機器50の入力デバイスであり、操作者によるキー入力操作を受け付ける。マイク入力部50dは、同じく電子機器50の入力デバイスであり、操作者による音声入力操作などを受け付ける。表示部50eは、電子機器50の表示出力デバイスであり、コントローラ50aの制御に基づき、表示情報の出力を行う。
そして、音響発生器10は、電子機器50における音響出力デバイスとして動作する。なお、音響発生器10は、電子回路60のコントローラ50aに接続されており、コントローラ50aによって制御された電圧の印加を受けて音響を発することとなる。
図11では、電子機器50が携帯用端末装置であるものとして説明を行ったが、電子機器50の種別を問うものではなく、音響を発する機能を有する様々な民生機器に適用されてよい。たとえば、薄型テレビやカーオーディオ機器は無論のこと、音響を発する機能を有する製品、例を挙げれば、掃除機や洗濯機、冷蔵庫、電子レンジなどといった種々の製品に用いられてよい。
本例の電子機器50によれば、音質の向上した音響発生器1を用いて構成されていることから、高音質の電子機器を得ることができる。また、筐体70を備えることで、低周波数の音圧を上昇させることができる。