JP6189819B2 - 高強度高延性鋼板 - Google Patents

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Description

本発明は、自動用薄鋼板などとして有用な高強度高延性鋼板に関し、詳しくは、鋼板の強度・延性バランス向上技術に関するものである。
自動車用鋼板は一般にスポット溶接性が要求されるため、C含有量が0.2質量%以下の低炭素鋼で製造されていた。しかしながら、接合技術として、摩擦撹拌接合(FSW)や、機械締結に代表される非溶融系接合技術や、異種材料としてアルミニウムまたはアルミニウム合金を用いる場合は、鋼板側の機械的特性(以下、単に「特性」ともいう。)を劣化させない温度域での接合しか実施されないため、従来用いられていなかったC含有量が0.2質量%超の鋼板についても利用できる状況が生まれつつある。
一方で、自動車用鋼板への成形性に対する要望は非常に強い。一般に超高強度鋼板(超ハイテン)に対しては、降伏強度(YS)、引張強度(TS)、伸び(EL)、伸びフランジ性(λ)といった特性が要求され、それらのバランス向上が進められているが、引張強度(TS)を一定にした場合に降伏強度(YS)と伸びフランジ性(λ)は両立できるが、伸び(EL)と降伏強度(YS)または伸びフランジ性(λ)を両立させることは難しい。
具体的な要求特性として、引張強度(TS)が980MPa以上において、降伏比YR(=YS/TS)が0.8以上、引張強度(TS)×伸び(EL)が14000MPa・%以上で、伸びフランジ性(λ)が35%以上を確保しうる鋼板の開発が要望されている。
980MPa級以上の高強度鋼板において、高強度化と高延性確保を両立させるため、これまでは残留オーステナイトによるTRIP効果を活用したTRIP鋼やTBF鋼等を用いる手段が検討されてきた(例えば、特許文献1〜3参照)。
たとえば、特許文献1には、鋼組織を、フェライト、マルテンサイト、残留オーステナイトに加えて、焼き戻しマルテンサイトを含有させたものとすることで、TS−ELバランスが高く、伸びフランジ性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板が提案されている。しかしながら、この技術は、高いYRを兼備させることを技術的思想とする本発明とは異なり、YRをむしろ低下させることで加工性を確保することを意図したものであり、TS×ELで20000MPa%を超えつつ、60%を超えるλを実現しうるものの、0.8以上のYRは兼備しておらず、上記要望レベルを満足させるものでない。
また、特許文献2には、Mn、SiおよびAlの含有量を適正に制御しつつ、板厚の1/4深さにおける鋼組織を制御することで、高強度・高延性と伸びフランジ性を向上させた高強度冷延鋼板が提案されている。しかしながら、この技術も、上記特許文献1と同じく、YRを低下させることで加工性を確保することを意図したものであり、少なくとも、0.8以上のYRは兼備しておらず、やはり上記要望レベルを満足させるものでない。
また、特許文献3には、フェライト主体の鋼組織にTi、MoおよびVを含有させることで、上記要望レベルを満足する、伸びと伸びフランジ性と高降伏比を兼備した高張力冷延鋼板が提案されている。しかしながら、この技術は、フェライト主体の鋼組織をベースとするものであり、パーライト主体の鋼組織をベースとする本発明とは、そもそも技術的思想が全く異なるものである。
特開2009−102714号公報 特開2014−65975号公報 特開2008−174802号公報
そこで本発明の目的は、引張強度(TS)が980MPa以上で、降伏比YR(=YS/TS)が0.8以上、引張強度(TS)×伸び(EL)が14000MPa・%以上で、伸びフランジ性(λ)が35%以上を確保しうる、強度−延性バランスに優れた高強度高延性鋼板を提供することにある。
本発明の第1発明に係る高強度高延性鋼板は、
成分組成が、質量%で、
C:0.4〜0.8%、
Si:0.8〜3.0%、
Mn:0.1〜0.6%
を含み、残部が鉄および不可避的不純物からなり、
鋼組織が、全組織に対する面積率で、
パーライトを80%以上、
残留オーステナイトを5%以上
含むとともに、
前記パーライトの平均ラメラ間隔が0.5μm以下であり、
方位差15°以上の大角粒界で囲まれたフェライトの有効結晶粒径が20μm以下であり、かつ、
円相当直径0.1μm以上の炭化物が400μm当たり5個以下である
ことを特徴とする。
本発明の第2発明に係る高強度高延性鋼板は、
上記第1発明において、
成分組成が、質量%で、さらに、
Cu、Ni、CrおよびMoの1種または2種以上を合計で0.5%以下含むものである。
本発明の第3発明に係る高強度高延性鋼板は、
上記第1または第2発明において、
成分組成が、質量%で、さらに、
V、TiおよびNbの1種または2種以上を合計で0.2%以下含むものである。
本発明によれば、パーライトを主要組織としつつ、そのラメラ間隔を小さくして降伏強度(YS)を高めるとともに、有効フェライト粒を微細化することで伸びフランジ性(λ)を高め、さらに残留オーステナイトを分散させることで伸び(EL)を高めることによって、引張強度(TS)が980MPa以上で、降伏比YR(=YS/TS)が0.8以上、引張強度(TS)×伸び(EL)が14000MPa・%以上で、伸びフランジ性(λ)が35%以上を確保しうる、強度−延性バランスに優れた高強度高延性鋼板を提供できるようになった。
本発明に係る高強度高延性鋼板を製造するための熱処理条件を模式的に示す図である。
本発明者らは、上記課題を解決するために、パーライト鋼からなる鋼板において、その機械的特性として、引張強度(TS)が980MPa以上で、降伏比(YR[=YS/TS])が0.8以上、引張強度(TS)×伸び(EL)が14000MPa・%以上で、伸びフランジ性(λ)が35%以上を確保しうる方策について種々検討を重ねてきた。
上記検討の結果、微細なラメラ状のセメンタイトとフェライトで構成されるために降伏強度(YS)、引張強度(TS)および伸びフランジ性(λ)に優れるパーライト組織を母相組織としつつ、そのラメラ間隔を微細にして特に降伏強度(YS)を高めるとともに、パーライトの局部変形能を支配する有効フェライト径を微細にすることで伸びフランジ性(λ)を高め、さらに残留オーステナイト(以下、「残留γ」とも表記する。)を分散させることで伸び(EL)を高めることが可能なことを見出した。
そして、本発明者らは、上記知見に基づいてさらに検討を進めた結果、本発明を完成するに至った。
以下、まず本発明に係る高強度高延性鋼板(以下、「本発明鋼板」ともいう。)を特徴づける鋼組織(以下、単に「組織」ということもある。)について説明する。
〔本発明鋼板の鋼組織〕
上述したとおり、本発明鋼板は、パーライトを主要組織として残留γを所定量含有するものであるが、パーライトのラメラ間隔、有効フェライト粒径および炭化物の存在密度が制御されている点に特徴を有するものである。
<パーライト:全組織に対する面積率で80%以上>
均一かつ微細なラメラ状のフェライトとセメンタイトが混在する組織であるパーライトを母相とすることで、降伏強度(YS)、引張強度(TS)および伸びフランジ性(λ)を高めることができる。このような作用を有効に発揮させるためには、パーライトは全組織に対する面積率で80%以上、好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上存在させることが必要である。
<残留γ:全組織に対する面積率で5%以上>
残留γは延性の向上に有用であり、このような作用を有効に発揮させるためには、全組織に対する面積率で5%以上、好ましくは5.5%以上、さらに好ましくは6%以上存在させることが必要である。
なお、パーライトおよび残留γ以外の残部組織として、初析フェライトの他、ベイナイトやマルテンサイトおよびそれらの焼戻し組織の混入が許容できる。
<パーライトの平均ラメラ間隔:0.5μm以下>
パーライトを構成するフェライトとセメンタイトの間隔を微細化することで、フェライト中に存在する転位の平均自由行程を短くすることによって降伏強度(YS)を高めることができる。所要の降伏強度(YS)を得るためには、パーライトの平均ラメラ間隔は0.5μm以下、好ましくは0.4μm以下、さらに好ましくは0.3μm以下とする必要がある。
<方位差15°以上の大角粒界で囲まれたフェライトの有効結晶粒径が20μm以下>
変形の単位となる同じ結晶方位を向いた領域(「ブロック」または「ノジュール」とも呼ばれる。)のサイズを微細化することで、破壊を防止し、伸びフランジ性(λ)を向上させることができる。所要の伸びフランジ性(λ)を得るためには、方位差15°以上の大角粒界で囲まれたフェライトの有効結晶粒径(「有効フェライト粒径」ともいう。)は20μm以下、好ましくは18μm以下、さらに好ましくは16μm以下とする必要がある。
<円相当直径0.1μm以上の炭化物:400μm当たり5個以下>
破壊の起点となる粗大な球状炭化物を減少させることで、破壊を防止することができる。このような作用を有効に発揮させるためには、円相当直径0.1μm以上の炭化物は400μm当たり5個以下、好ましくは4個以下、さらに好ましくは3個以下とする必要がある。
〔パーライトおよび残留γの面積率、パーライトの平均ラメラ間隔、有効フェライト粒径、ならびに、球状炭化物のサイズおよびその存在密度の各測定方法〕
ここで、パーライトおよび残留γの面積率、パーライトの平均ラメラ間隔、有効フェライト粒径、ならびに、球状炭化物のサイズおよびその存在密度の各測定方法について説明する。
<パーライト面積率の測定方法>
パーライトの面積率は、鋼板を切断して板厚方向断面を鏡面研磨した試料をピクラール(ピクリン酸5%+エタノール)でエッチングし、板厚の1/4位置における組織を倍率1500倍で5視野のSEM(走査型電子顕微鏡)観察を行い、点算法によって求めた。
<残留γの面積率の測定方法>
残留γの面積率は、鋼板の1/4の厚さまで研削した後、化学研磨してからX線回折法により測定した(ISIJ Int.Vol.33,(1933),No.7,p.776)。なお、本発明においては、X線回折装置として、(株)リガク製 2次元微小部X線回折装置(RINT−RAPIDII)を用い、X線としてCo−Kα線を用いた。
<パーライトの平均ラメラ間隔の測定方法>
パーライトの平均ラメラ間隔は、上記パーライトの面積率の測定と同様にして板厚方向断面試料を作製し、板厚の1/4位置を倍率5000倍で10枚写真撮影し、各写真において最も微細なラメラを決定し、このラメラに直角となるように線分を引き、その線分の長さと線分を横切るラメラの数からラメラ間隔を求め、合計10本の線分について測定したラメラ間隔を平均することによって求めた。
<有効フェライト粒径の測定方法>
有効フェライト粒径は、上記パーライトの面積率の測定と同様にして板厚方向断面試料を作製し、板厚1/4位置について、EBSP解析装置およびFE−SEMを用いてステップ間隔0.25μmの測定条件にて3視野測定し、以下のようにして求めた。すなわち、フェライト−フェライト間の結晶方位差が15°以上となる点を有効結晶粒界としてフェイズマップ上にマッピングし、有効結晶粒界で囲まれたフェライト相の面積を画像解析ソフトを用いて測定し、各粒の面積から円相当直径を求め、その平均値を有効フェライト粒径とした。なお、本発明の実施例においては、EBSP解析装置として、テクセムラボラトリーズ製OIMシステム(ver.4.0)を、FE−SEMとして、フィリップス社製XL30S−FEGを、画像解析ソフトとして、フィリップス社製Image−Proを、それぞれ用いた。
<球状炭化物のサイズおよびその存在密度の測定方法>
球状炭化物のサイズおよびその存在密度については、鋼板の抽出レプリカサンプルを作製し、0.8μm×1μmの領域3視野について倍率100000倍のTEM(透過型電子顕微鏡)像を観察した。そして、画像のコントラストから白い部分を炭化物粒子と判別してマーキングし、画像解析ソフトにて、前記マーキングした各炭化物粒子の面積から円相当直径を算出するとともに、400μm当りに存在する、円相当直径0.1μm以上の炭化物粒子の個数を求めた。なお、複数個の炭化物粒子が重なり合う部分は観察対象から除外した。なお、本発明の実施例においては、画像解析ソフトとして、上記と同じく、フィリップス社製Image−Proを用いた。
次に、本発明鋼板を構成する成分組成について説明する。以下、化学成分の単位はすべて質量%である。また、各成分の「含有量」を単に「量」と記載することもある。
〔本発明鋼板の成分組成〕
C:0.4〜0.8%
Cは、パーライト組織および残留オーステナイト組織を実現するため、従来鋼より多量に含有させる必要がある。このような作用を有効に発揮させるためには、Cを0.4%以上、好ましくは0.45%以上、さらに好ましくは0.5%以上含有させる必要がある。ただし、C量が過剰になると、過共析領域となり、粗大なセメンタイトが形成されて延性を劣化させるので、C量は0.8%以下、好ましくは0.75%以下、さらに好ましくは0.7%以下とする。
Si:0.8〜3.0%
Siは、残留オーステナイトが分解して炭化物が生成するのを有効に抑制する元素である。このような作用を有効に発揮させるためには、Siを0.8%以上、好ましくは0.9%以上、さらに好ましくは1.0%以上含有させる必要がある。ただし、Siを過剰に含有させても、上記効果が飽和してしまい、経済的に無駄であるばかりでなく、熱間脆性を引き起こすため、Slは3.0%以下、好ましくは2.5%以下、さらに好ましくは2.0%以下とする。
Mn:0.1〜0.6%
Mnは、フェライトの形成を防止するために一定量の含有が必要である。このような作用を有効に発揮させるためには、Mnを0.1% 以上、好ましくは0.15%以上、さらに好ましくは0.2%以上含有させることが必要である。ただし、Mn量が過剰になると、パーライトの形成を抑制してベイナイトが形成されるため、Mn量は従来鋼より低減する必要があり、0.6%以下、好ましくは0.55%以下、さらに好ましくは0.5%以下とする。
本発明の鋼は上記元素を必須の成分として含有し、残部は鉄および不可避的不純物であるが、不可避的不純物のうち、Pは0.05%以下、さらには0.03%以下、特に0.02%以下に、Sは0.01%以下、さらには0.005%以下、特に0.003%以下に、Alは0.2%以下、さらには0.15%以下、特に0.1%以下に、それぞれ制限するのが推奨される。
本発明の鋼は、その他、本発明の作用を損なわない範囲で、以下の許容成分を含有させることができる。
Cu、Ni、CrおよびMoの1種または2種以上:合計で0.5%以下
これらの元素は、鋼の強化元素として有用であるとともに、残留γの安定化や所定量の確保に有効な元素である。このような作用を有効に発揮させるためには、これらの元素は合計量で0.001%以上、さらには0.01%以上含有させることが推奨される。ただし、これらの元素を過剰に含有させても上記効果が飽和してしまい、経済的に無駄であるので、これらの元素は合計量で0.5%以下、さらには0.3%以下とするのが好ましい。
V、TiおよびNbの1種または2種以上:合計で0.2%以下
これらの元素は、析出強化および組織微細化の効果があり、高強度化に有用な元素である。このような作用を有効に発揮させるためには、これらの元素を合計量で0.01%以上、さらには0.02%以上含有させることが推奨される。ただし、これらの元素を過剰に含有させても、上記効果が飽和してしまい、経済的に無駄であるので、これらの元素は合計量で0.2%以下、さらには0.1%以下とするのが好ましい。
次に、上記本発明鋼板を得るための好ましい製造条件を以下に説明する。
〔本発明鋼板の好ましい製造方法〕
本発明鋼板は、上記成分組成を満足する鋼材を、熱間圧延し、ついで冷間圧延した後、例えば下記の工程(1)〜(3)の条件にて熱処理を行って製造することができる(図2参照)。
[熱処理条件]
(1)冷延板を均熱温度T1:Ac3〜[Ac3+100℃]に加熱してその温度で均熱時間t1:5〜3600s保持した後、
(2)上記均熱温度T1から後記冷却停止温度T2までを平均冷却速度CR:10℃/s以上で冷却した後、
(3)冷却停止温度T2:300〜500℃で保持時間t2:10〜1200s保持後、室温まで冷却する。
以下、上記熱処理条件が推奨される理由について説明する。
<均熱温度T1:Ac3〜[Ac3+100℃]で均熱時間t1:5〜3600s保持>
鋼組織をオーステナイト化するためにオーステナイト単相域の温度で所定時間加熱(均熱)する必要があるので、均熱温度T1はAc3以上、さらには[Ac3+10℃]以上、特に「Ac3+20℃」以上で、均熱時間t1は5s以上、さらには20s以上、特に60s以上とするのが推奨される。ただし、均熱温度T1を高くしすぎたり、均熱時間t1を長くしすぎたりすると、オーステナイト粒が粗大化してその後の冷却過程で形成されるパーライトの有効フェライト粒径が過大となり局部延性が劣化するので、均熱温度T1は[Ac3+100℃]以下、さらには[Ac3+90℃]以下、特に[Ac3+80℃]以下で、均熱時間t1は3600s以下、さらには1200s以下、特に300s以下とするのが推奨される。なお、均熱時間t1を長くしすぎることには生産性が低下する問題も生じる。
なお、Ac3は、鋼板の化学成分から、レスリー著、「鉄鋼材料科学」、幸田成靖 訳、丸善株式会社、1985年、p.273に記載の式より、下記式(1)を用いて求めることができる。
Ac3(℃)=910−203√[C]+44.7[Si]−30[Mn]+700[P]+400[Al]+400[Ti]+104[V]−11[Cr]+31.5[Mo]−20[Cu]−15.2[Ni]・・・式(1)
ただし、[ ]は、各元素の含有量(質量%)を示す。
<(2)均熱温度T1から冷却停止温度T2までを平均冷却速度CR:10℃/s以上で冷却>
フェライトの形成を防止するために一定以上の冷却速度で冷却を行う必要があるので、平均冷却速度CRは10℃/s以上、さらには15℃/s以上、特に20℃/s以上とするのが推奨される。
<(3)冷却停止温度T2:300〜500℃で保持時間t2:10〜1200s保持>
パーライトを形成させるとともに、残留γを残存させるためにパーライト変態を促進させて、均一な組織を形成しつつ、その際に形成されるパーライトのラメラ間隔を微細化して降伏応力を高める。また、変態時間を適正に調整することで、残留γを残存させて伸びを確保するとともに、パーライト中の炭化物(セメンタイト)の球状化を防止し、球状炭化物の形成を防止する。このような作用を有効に発揮させるため、冷却停止温度T2は300〜500℃、さらには320〜480℃、特に340〜460℃とし、保持時間t2は10〜1200s、さらには15〜1000s、特に20〜800sとするのが推奨される。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することももちろん可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
下記表1に示す成分の鋼を真空溶製で製造した後、熱間鍛造で板厚25mmの鋼板にした後、熱間圧延を施した。熱間圧延の条件は、本発明鋼板の最終組織および特性に本質的な影響を及ぼさないが、本実施例では1150℃に加熱し30min保持した後、2.5mmまで圧延して熱延板とした。この熱延板に酸洗を施して表面のスケールを除去した後、1.6mmまで冷間圧延を施して冷延板とした。
そして、上記冷延板を出発材として、下記表2に示す条件で熱処理を施した。
上記熱処理後の各鋼板について、上記[発明を実施するための形態]の項で説明した測定方法により、パーライトおよび残留γの面積率、パーライトの平均ラメラ間隔、有効フェライト粒径、ならびに、球状炭化物のサイズおよびその存在密度を測定した。
また、上記熱処理後の各鋼板について、強度−延性バランスを評価するために、引張試験により、降伏強度YS、引張強度TSおよび伸び(全伸び)ELを測定した。なお、引張試験は、JIS 5号試験片を作製して、JIS Z 2241に従って実施した。また、各鋼板の伸びフランジ性λを評価するため、日本鉄鋼連盟規格JFST1001に準じて穴広げ率を測定した。
測定結果を下記表3に示す。同表において、上記熱処理後の鋼板の特性が、引張強度(TS)が980MPa以上で、降伏比YR(=YS/TS)が0.8以上、引張強度(TS)×伸び(EL)が14000MPa・%以上で、伸びフランジ性(λ)が35%以上のものを合格(○)とし、それ以外のものを不合格(×)とした。
上記表3に示すように、発明鋼(評価が○のもの)である鋼No.1〜3、13〜23は、本発明の成分規定の要件を満足する鋼種を用い、推奨の条件で熱処理した結果、本発明の組織規定の要件を充足する発明鋼であり、機械的特性が合格基準を満たしており、強度−延性バランスに優れた高強度強延性鋼板が得られることを確認できた。
これに対して、比較鋼(評価が×のもの)である鋼No.4〜12は、本発明の成分規定および組織規定の要件の少なくともいずれかを充足せず、特性が合格基準を満たしていない。
すなわち、鋼No.6、7、10〜12は、本発明の成分規定の要件を満足する鋼種を用いているものの、推奨の製造条件を一部外れる条件で製造しているため、組織規定の要件を充足せず、特性が劣っている。
一方、鋼No.4、5、8、9は、推奨の製造条件で製造しているものの、本発明の成分規定の要件を一部外れる鋼種を用いているため、組織規定の要件を充足せず、特性が劣っている。
以上より、本発明の適用性が確認された。

Claims (3)

  1. 成分組成が、質量%で、
    C:0.4〜0.8%、
    Si:0.8〜3.0%、
    Mn:0.1〜0.6%
    を含み、残部が鉄および不可避的不純物からなり、
    鋼組織が、全組織に対する面積率で、
    パーライトを80%以上、
    残留オーステナイトを5%以上
    含むとともに、
    前記パーライトの平均ラメラ間隔が0.5μm以下であり、
    方位差15°以上の大角粒界で囲まれたフェライトの有効結晶粒径が20μm以下であり、かつ、
    円相当直径0.1μm以上の炭化物が400μm当たり5個以下である
    ことを特徴とする高強度高延性鋼板。
  2. 成分組成が、質量%で、さらに、
    Cu、Ni、CrおよびMoの1種または2種以上を合計で0.5%以下含むものである請求項1に記載の高強度高延性鋼板。
  3. 成分組成が、質量%で、さらに、
    V、TiおよびNbの1種または2種以上を合計で0.2%以下含むものである請求項1または2に記載の高強度高延性鋼板。
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