JP6189819B2 - 高強度高延性鋼板 - Google Patents
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Description
成分組成が、質量%で、
C:0.4〜0.8%、
Si:0.8〜3.0%、
Mn:0.1〜0.6%
を含み、残部が鉄および不可避的不純物からなり、
鋼組織が、全組織に対する面積率で、
パーライトを80%以上、
残留オーステナイトを5%以上
含むとともに、
前記パーライトの平均ラメラ間隔が0.5μm以下であり、
方位差15°以上の大角粒界で囲まれたフェライトの有効結晶粒径が20μm以下であり、かつ、
円相当直径0.1μm以上の炭化物が400μm2当たり5個以下である
ことを特徴とする。
上記第1発明において、
成分組成が、質量%で、さらに、
Cu、Ni、CrおよびMoの1種または2種以上を合計で0.5%以下含むものである。
上記第1または第2発明において、
成分組成が、質量%で、さらに、
V、TiおよびNbの1種または2種以上を合計で0.2%以下含むものである。
上述したとおり、本発明鋼板は、パーライトを主要組織として残留γを所定量含有するものであるが、パーライトのラメラ間隔、有効フェライト粒径および炭化物の存在密度が制御されている点に特徴を有するものである。
均一かつ微細なラメラ状のフェライトとセメンタイトが混在する組織であるパーライトを母相とすることで、降伏強度(YS)、引張強度(TS)および伸びフランジ性(λ)を高めることができる。このような作用を有効に発揮させるためには、パーライトは全組織に対する面積率で80%以上、好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上存在させることが必要である。
残留γは延性の向上に有用であり、このような作用を有効に発揮させるためには、全組織に対する面積率で5%以上、好ましくは5.5%以上、さらに好ましくは6%以上存在させることが必要である。
なお、パーライトおよび残留γ以外の残部組織として、初析フェライトの他、ベイナイトやマルテンサイトおよびそれらの焼戻し組織の混入が許容できる。
パーライトを構成するフェライトとセメンタイトの間隔を微細化することで、フェライト中に存在する転位の平均自由行程を短くすることによって降伏強度(YS)を高めることができる。所要の降伏強度(YS)を得るためには、パーライトの平均ラメラ間隔は0.5μm以下、好ましくは0.4μm以下、さらに好ましくは0.3μm以下とする必要がある。
変形の単位となる同じ結晶方位を向いた領域(「ブロック」または「ノジュール」とも呼ばれる。)のサイズを微細化することで、破壊を防止し、伸びフランジ性(λ)を向上させることができる。所要の伸びフランジ性(λ)を得るためには、方位差15°以上の大角粒界で囲まれたフェライトの有効結晶粒径(「有効フェライト粒径」ともいう。)は20μm以下、好ましくは18μm以下、さらに好ましくは16μm以下とする必要がある。
破壊の起点となる粗大な球状炭化物を減少させることで、破壊を防止することができる。このような作用を有効に発揮させるためには、円相当直径0.1μm以上の炭化物は400μm2当たり5個以下、好ましくは4個以下、さらに好ましくは3個以下とする必要がある。
ここで、パーライトおよび残留γの面積率、パーライトの平均ラメラ間隔、有効フェライト粒径、ならびに、球状炭化物のサイズおよびその存在密度の各測定方法について説明する。
パーライトの面積率は、鋼板を切断して板厚方向断面を鏡面研磨した試料をピクラール(ピクリン酸5%+エタノール)でエッチングし、板厚の1/4位置における組織を倍率1500倍で5視野のSEM(走査型電子顕微鏡)観察を行い、点算法によって求めた。
残留γの面積率は、鋼板の1/4の厚さまで研削した後、化学研磨してからX線回折法により測定した(ISIJ Int.Vol.33,(1933),No.7,p.776)。なお、本発明においては、X線回折装置として、(株)リガク製 2次元微小部X線回折装置(RINT−RAPIDII)を用い、X線としてCo−Kα線を用いた。
パーライトの平均ラメラ間隔は、上記パーライトの面積率の測定と同様にして板厚方向断面試料を作製し、板厚の1/4位置を倍率5000倍で10枚写真撮影し、各写真において最も微細なラメラを決定し、このラメラに直角となるように線分を引き、その線分の長さと線分を横切るラメラの数からラメラ間隔を求め、合計10本の線分について測定したラメラ間隔を平均することによって求めた。
有効フェライト粒径は、上記パーライトの面積率の測定と同様にして板厚方向断面試料を作製し、板厚1/4位置について、EBSP解析装置およびFE−SEMを用いてステップ間隔0.25μmの測定条件にて3視野測定し、以下のようにして求めた。すなわち、フェライト−フェライト間の結晶方位差が15°以上となる点を有効結晶粒界としてフェイズマップ上にマッピングし、有効結晶粒界で囲まれたフェライト相の面積を画像解析ソフトを用いて測定し、各粒の面積から円相当直径を求め、その平均値を有効フェライト粒径とした。なお、本発明の実施例においては、EBSP解析装置として、テクセムラボラトリーズ製OIMシステム(ver.4.0)を、FE−SEMとして、フィリップス社製XL30S−FEGを、画像解析ソフトとして、フィリップス社製Image−Proを、それぞれ用いた。
球状炭化物のサイズおよびその存在密度については、鋼板の抽出レプリカサンプルを作製し、0.8μm×1μmの領域3視野について倍率100000倍のTEM(透過型電子顕微鏡)像を観察した。そして、画像のコントラストから白い部分を炭化物粒子と判別してマーキングし、画像解析ソフトにて、前記マーキングした各炭化物粒子の面積から円相当直径を算出するとともに、400μm2当りに存在する、円相当直径0.1μm以上の炭化物粒子の個数を求めた。なお、複数個の炭化物粒子が重なり合う部分は観察対象から除外した。なお、本発明の実施例においては、画像解析ソフトとして、上記と同じく、フィリップス社製Image−Proを用いた。
C:0.4〜0.8%
Cは、パーライト組織および残留オーステナイト組織を実現するため、従来鋼より多量に含有させる必要がある。このような作用を有効に発揮させるためには、Cを0.4%以上、好ましくは0.45%以上、さらに好ましくは0.5%以上含有させる必要がある。ただし、C量が過剰になると、過共析領域となり、粗大なセメンタイトが形成されて延性を劣化させるので、C量は0.8%以下、好ましくは0.75%以下、さらに好ましくは0.7%以下とする。
Siは、残留オーステナイトが分解して炭化物が生成するのを有効に抑制する元素である。このような作用を有効に発揮させるためには、Siを0.8%以上、好ましくは0.9%以上、さらに好ましくは1.0%以上含有させる必要がある。ただし、Siを過剰に含有させても、上記効果が飽和してしまい、経済的に無駄であるばかりでなく、熱間脆性を引き起こすため、Slは3.0%以下、好ましくは2.5%以下、さらに好ましくは2.0%以下とする。
Mnは、フェライトの形成を防止するために一定量の含有が必要である。このような作用を有効に発揮させるためには、Mnを0.1% 以上、好ましくは0.15%以上、さらに好ましくは0.2%以上含有させることが必要である。ただし、Mn量が過剰になると、パーライトの形成を抑制してベイナイトが形成されるため、Mn量は従来鋼より低減する必要があり、0.6%以下、好ましくは0.55%以下、さらに好ましくは0.5%以下とする。
これらの元素は、鋼の強化元素として有用であるとともに、残留γの安定化や所定量の確保に有効な元素である。このような作用を有効に発揮させるためには、これらの元素は合計量で0.001%以上、さらには0.01%以上含有させることが推奨される。ただし、これらの元素を過剰に含有させても上記効果が飽和してしまい、経済的に無駄であるので、これらの元素は合計量で0.5%以下、さらには0.3%以下とするのが好ましい。
これらの元素は、析出強化および組織微細化の効果があり、高強度化に有用な元素である。このような作用を有効に発揮させるためには、これらの元素を合計量で0.01%以上、さらには0.02%以上含有させることが推奨される。ただし、これらの元素を過剰に含有させても、上記効果が飽和してしまい、経済的に無駄であるので、これらの元素は合計量で0.2%以下、さらには0.1%以下とするのが好ましい。
本発明鋼板は、上記成分組成を満足する鋼材を、熱間圧延し、ついで冷間圧延した後、例えば下記の工程(1)〜(3)の条件にて熱処理を行って製造することができる(図2参照)。
(1)冷延板を均熱温度T1:Ac3〜[Ac3+100℃]に加熱してその温度で均熱時間t1:5〜3600s保持した後、
(2)上記均熱温度T1から後記冷却停止温度T2までを平均冷却速度CR:10℃/s以上で冷却した後、
(3)冷却停止温度T2:300〜500℃で保持時間t2:10〜1200s保持後、室温まで冷却する。
鋼組織をオーステナイト化するためにオーステナイト単相域の温度で所定時間加熱(均熱)する必要があるので、均熱温度T1はAc3以上、さらには[Ac3+10℃]以上、特に「Ac3+20℃」以上で、均熱時間t1は5s以上、さらには20s以上、特に60s以上とするのが推奨される。ただし、均熱温度T1を高くしすぎたり、均熱時間t1を長くしすぎたりすると、オーステナイト粒が粗大化してその後の冷却過程で形成されるパーライトの有効フェライト粒径が過大となり局部延性が劣化するので、均熱温度T1は[Ac3+100℃]以下、さらには[Ac3+90℃]以下、特に[Ac3+80℃]以下で、均熱時間t1は3600s以下、さらには1200s以下、特に300s以下とするのが推奨される。なお、均熱時間t1を長くしすぎることには生産性が低下する問題も生じる。
なお、Ac3は、鋼板の化学成分から、レスリー著、「鉄鋼材料科学」、幸田成靖 訳、丸善株式会社、1985年、p.273に記載の式より、下記式(1)を用いて求めることができる。
Ac3(℃)=910−203√[C]+44.7[Si]−30[Mn]+700[P]+400[Al]+400[Ti]+104[V]−11[Cr]+31.5[Mo]−20[Cu]−15.2[Ni]・・・式(1)
ただし、[ ]は、各元素の含有量(質量%)を示す。
フェライトの形成を防止するために一定以上の冷却速度で冷却を行う必要があるので、平均冷却速度CRは10℃/s以上、さらには15℃/s以上、特に20℃/s以上とするのが推奨される。
パーライトを形成させるとともに、残留γを残存させるためにパーライト変態を促進させて、均一な組織を形成しつつ、その際に形成されるパーライトのラメラ間隔を微細化して降伏応力を高める。また、変態時間を適正に調整することで、残留γを残存させて伸びを確保するとともに、パーライト中の炭化物(セメンタイト)の球状化を防止し、球状炭化物の形成を防止する。このような作用を有効に発揮させるため、冷却停止温度T2は300〜500℃、さらには320〜480℃、特に340〜460℃とし、保持時間t2は10〜1200s、さらには15〜1000s、特に20〜800sとするのが推奨される。
Claims (3)
- 成分組成が、質量%で、
C:0.4〜0.8%、
Si:0.8〜3.0%、
Mn:0.1〜0.6%
を含み、残部が鉄および不可避的不純物からなり、
鋼組織が、全組織に対する面積率で、
パーライトを80%以上、
残留オーステナイトを5%以上
含むとともに、
前記パーライトの平均ラメラ間隔が0.5μm以下であり、
方位差15°以上の大角粒界で囲まれたフェライトの有効結晶粒径が20μm以下であり、かつ、
円相当直径0.1μm以上の炭化物が400μm2当たり5個以下である
ことを特徴とする高強度高延性鋼板。 - 成分組成が、質量%で、さらに、
Cu、Ni、CrおよびMoの1種または2種以上を合計で0.5%以下含むものである請求項1に記載の高強度高延性鋼板。 - 成分組成が、質量%で、さらに、
V、TiおよびNbの1種または2種以上を合計で0.2%以下含むものである請求項1または2に記載の高強度高延性鋼板。
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