以下、本発明の実施の形態を、本発明に係る制御回路を電力系統に連系するインバータ装置に用いた場合を例として、図面を参照して具体的に説明する。
図1は、第1実施形態に係るインバータ装置を説明するための図である。図2は、第1実施形態に係るインバータ装置が電力系統に複数連系した電力システムを示す図である。
インバータ装置Aは、いわゆるパワーコンディショナと呼ばれるものである。インバータ装置Aは、図1に示すように、インバータ回路2、制御回路3、電流センサ4、電圧センサ5、および、直流電圧センサ6を備えており、電力系統Bに連系している。インバータ装置Aは、直流電源1が出力する直流電力をインバータ回路2によって交流電力に変換して電力系統Bに出力する。なお、図示しないが、インバータ回路2の出力側には、交流電圧を昇圧(または降圧)するための変圧器が設けられている。
また、図2に示すように、インバータ装置Aが連系している電力系統Bには、他のインバータ装置Aも連系している。図2においては、5つのインバータ装置A(A1〜A5)が電力系統Bに連系している電力システムを示している。なお、実際の電力システムにおいては、より多くのインバータ装置Aが連系しているが、説明の簡略化のために極端に少ないケースを示している。
図2に示す矢印は、通信を行っていることを示している。すなわち、インバータ装置A1はインバータ装置A2とのみ相互通信を行っており、インバータ装置A2はインバータ装置A1およびインバータ装置A3とのみ相互通信を行っている。また、インバータ装置A3はインバータ装置A2およびインバータ装置A4とのみ相互通信を行っており、インバータ装置A4はインバータ装置A3およびインバータ装置A5とのみ相互通信を行っており、インバータ装置A5はインバータ装置A4とのみ相互通信を行っている。
図1に戻って、直流電源1は、直流電力を出力するものであり、太陽電池を備えている。太陽電池は、太陽光エネルギーを電気エネルギーに変換することで、直流電力を生成する。直流電源1は、生成された直流電力を、インバータ回路2に出力する。なお、直流電源1は、太陽電池により直流電力を生成するものに限定されない。例えば、直流電源1は、燃料電池、蓄電池、電気二重層コンデンサやリチウムイオン電池であってもよいし、ディーゼルエンジン発電機、マイクロガスタービン発電機や風力タービン発電機などにより生成された交流電力を直流電力に変換して出力する装置であってもよい。
インバータ回路2は、直流電源1から入力される直流電力を交流電力に変換して出力するものである。インバータ回路2は、図示しないPWM制御インバータとフィルタとを備えている。PWM制御インバータは、図示しない3組6個のスイッチング素子を備えた三相インバータであり、制御回路3から入力されるPWM信号に基づいて各スイッチング素子のオンとオフとを切り替えることで直流電力を交流電力に変換する。フィルタは、スイッチングによる高周波成分を除去する。なお、インバータ回路2は、これに限られない。例えば、PWM制御インバータは、単相インバータであってもよいし、マルチレベルインバータであってもよい。また、PWM制御に限定されず、フェーズシフト制御など他の方式を用いるものであってもよい。
電流センサ4は、インバータ回路2の三相の出力電流の瞬時値をそれぞれ検出するものである。電流センサ4は、検出した瞬時値をディジタル変換して、電流信号Iu,Iv,Iw(3つの電流信号をまとめて「電流信号I」と記載する場合がある。)として制御回路3に出力する。電圧センサ5は、インバータ装置Aの三相の連系点電圧の瞬時値をそれぞれ検出するものである。電圧センサ5は、検出した瞬時値をディジタル変換して、電圧信号Vu,Vv,Vw(3つの電圧信号をまとめて「電圧信号V」と記載する場合がある。)として制御回路3に出力する。直流電圧センサ6は、インバータ回路2の入力電圧を検出するものである。直流電圧センサ6は、検出した電圧をディジタル変換して、電圧信号Vdcとして制御回路3に出力する。
制御回路3は、インバータ回路2を制御するものであり、例えばマイクロコンピュータなどによって実現されている。本実施形態に係る制御回路3は、インバータ回路2の入力電圧、出力無効電力、出力電流、および、系統周波数の制御を行っている。このうち、系統周波数については、電力系統Bに連系しているすべてのインバータ装置A(A1〜A5)(図2参照)が協調して制御を行う。
以下に、本発明に係る系統周波数の制御システムについて、図3〜図6を参照して説明する。
図3は、インバータ装置Aの系統周波数制御系を説明するための図である。
図3(a)は、一般的なインバータ装置のモデルを示している。インバータ装置が出力する有効電力をP、無効電力をQ、インバータ装置の出力電流のd軸成分およびq軸成分をIdおよびIq(各目標値をId*およびIq*)としている。なお、d軸成分およびq軸成分は、後述する三相/二相変換処理および回転座標変換処理によって変換された後の回転座標系の二相の成分である。また、インバータ装置の内部位相が連系点電圧の位相に完全に追従していると仮定すると、出力電圧のq軸成分はVq=0となり、d軸成分はVd=V(連系点電圧の実効値)となるので、
P=Vd・Id+Vq・Iq=V・Id
Q=Vd・Iq−Vq・Id=V・Iq
となっている。
本発明では、出力有効電力を調整することで系統周波数の変動を抑制するので、系統周波数変動抑制のための制御系を図3(a)のモデルに追加する。図3(b)は、系統周波数変動抑制のための制御系を追加したモデルを示している。図3(b)では、電力系統の角周波数ωの目標値からの偏差Δωを入力されて系統周波数補償値ΔId*を出力する系統周波数制御系を追加して、系統周波数補償値ΔId*を出力電流のd軸成分の目標値Id*に加算するようにしている。なお、電力システムの制御では、一般的に、周波数より角周波数(周波数に2πを乗算したもの)が用いられるので、本明細書でも角周波数を用いている。
電流制御系、PWMおよびインバータ主回路のダイナミクスは、電力制御系のダイナミクスと比較すると高速のため、無視することができる。図3(c)は、これらを無視して近似したモデルである。なお、Id’*=Id*+ΔId*である。
図3(c)のモデルにおいて系統周波数制御系だけに注目したモデルを、図3(d)に示している。
図4は、電力システム全体の系統周波数制御系を説明するための図である。各インバータ装置A1〜A5が出力する有効電力をそれぞれΔP1〜ΔP5だけ変動させ、電力系統に供給される有効電力は、これらを合算した変動量ΔPだけ変動する。電力系統の角周波数ωは、供給される有効電力Pの変動により変動する。周波数変動モデルとして、非特許文献1に記載の等価発電機モデルを用いる。この等価発電機モデルは、系統内の全ての発電機が完全な同期運転を行っていると仮定し、下記(1)式として定式化される。ここで、等価慣性定数Mは並解列する発電機の慣性定数に応じて更新する。ダンピングDは負荷の大きさに応じて更新する。また、有効電力の変動(外乱)ΔPwには、負荷変動や太陽電池の出力変化による変動などが含まれる。図4が、系統周波数(系統角周波数)の変動を各インバータ装置Aの有効電力調整によって抑制するシステムを表している。
ただし、この場合、各インバータ装置Aが協調して出力有効電力を調整するわけではないので、各インバータ装置Aが調整する出力有効電力は、内部で設定されているゲインや、配置場所、直流電源1の特性などによって定まってしまう。例えば、インバータ装置A1については他のものの半分だけ出力有効電力を調整させ、インバータ装置A2〜A5については均等に調整させるとか、各インバータ装置Aの容量に応じて調整させるということができない。
次に、各インバータ装置Aが協調して出力有効電力を調整するための方法について説明する。
複数の制御対象の状態の値を同じ値に収束させるコンセンサスアルゴリズムが知られている(非特許文献2,3参照)。各制御対象を頂点とし各制御対象間の通信状態を辺で表したグラフとして表現した場合、当該グラフがグラフ理論における無向グラフで連結であれば、コンセンサスアルゴリズムを用いて各制御対象の状態の値を同じ値に収束させて、コンセンサスを達成することができる。例えば、図2に示す電力システムの通信状態をグラフで表現すると、図5(a)のようになる。頂点A1〜A5がそれぞれインバータ装置A1〜A5を表し、矢印付きの辺が各インバータ装置間の通信状態を表している。各辺は相互通信を行うことを示しており、当該グラフは無向グラフである。当該グラフの任意の2つの頂点に対して通信経路が存在しているので、当該グラフは連結である。したがって、図2に示す電力システムの場合、コンセンサスを達成することができる。また、図5(b)、(c)に示すグラフも無向グラフで連結であるので、図2の電力システムにおける各インバータ装置A1〜A5の通信状態がこれらのグラフで示される場合にも、コンセンサスを達成することができる。このように、インバータ装置Aが、電力システムに接続しているインバータ装置Aのうち、少なくとも1つのインバータ装置Aと相互通信を行っており、電力システムに接続している任意の2つのインバータ装置Aに対して通信経路が存在している状態(以下ではこの状態を「連結状態」と言う。)であればよく、電力システムに接続しているすべてのインバータ装置Aと通信を行っている必要はない。
本実施形態では、各制御対象の状態の値を同じ値に収束させるのではなく、重み付けを行って、重み付け後の値を同じ値に収束させる。すなわち、各インバータ装置Aの重み付け値Wiをそれぞれ設定しておき、状態の値を重み付け値Wiで除算することで重み付けを行い、重み付け後の値を同じ値に収束させる。これにより、各状態の値は重み付け値Wiに応じた値に収束する。例えば、W1=W2=W3=W4=1、W5=10とすれば、インバータ装置A5の状態の値は、インバータ装置A1〜A4の状態の値の10倍の値に収束する。
図6は、図4に示すシステムにコンセンサスアルゴリズムと重み付けとを追加したものであり、各インバータ装置Aが協調して有効電力を調整することで系統周波数の変動を抑制する制御システムを表している。
コンセンサスアルゴリズムによって、補償値ΔIdi *を重み付け値Wiで除算した補償値ΔIdi’(=ΔIdi */Wi)が同じ値に収束する。収束値をΔIdα’とすると、各インバータ装置Aiは、補償値ΔIdi *=Wi・ΔIdα’に応じた有効電力を調整することになる。つまり、重み付け値Wiに応じた有効電力を調整することになる。したがって、例えば、W1=W2=W3=W4=1、W5=10とすれば、インバータ装置A5に、インバータ装置A1〜A4の10倍の有効電力を調整させることができる。
図1に戻って、制御回路3は、電流センサ4より入力される電流信号I、電圧センサ5より入力される電圧信号V、および、直流電圧センサ6より入力される電圧信号Vdcに基づいてPWM信号を生成して、インバータ回路2に出力する。制御回路3は、無効電力制御部30、入力電圧制御部31、系統周波数制御部32、協調補正値生成部33、加算器34、電流制御部35、指令信号生成部36、PWM信号生成部37、重み付け部38、通信部39、および、系統周波数検出部40を備えている。
無効電力制御部30は、インバータ回路2の出力無効電力を制御するためのものである。図示していないが、無効電力制御部30は、電流センサ4が検出した電流の瞬時値と電圧センサ5が検出した電圧の瞬時値とからインバータ回路2の出力無効電力を算出し、その目標値との偏差に対してPI制御(比例積分制御)を行い、無効電力補償値を出力する。無効電力補償値は、目標値Iq*として電流制御部35に入力される。なお、無効電力制御部30の制御はPI制御に限られず、I制御(積分制御)などの他の制御を行うようにしてもよい。
入力電圧制御部31は、インバータ回路2の入力電圧を制御するためのものである。入力電圧制御部31は、入力電圧を制御することで、入力電力を制御して、インバータ回路2の出力有効電力を制御する。入力電圧制御部31は、直流電圧センサ6より入力される電圧信号Vdcとその目標値である入力電圧目標値Vdc*との偏差ΔVdcを入力され、PI制御を行い、有効電力補償値を出力する。なお、入力電圧制御部31の制御はPI制御に限られず、I制御などの他の制御を行うようにしてもよい。
系統周波数検出部40は、電力系統Bの角周波数ωを検出するものである。系統周波数検出部40は、電圧センサ5より電圧信号Vを入力されて連系点電圧の角周波数を検出し、これを電力系統Bの角周波数ωとして出力する。なお、角周波数の検出方法は、PLL方式やゼロクロス点間カウント方式など、一般的に用いられる手法を利用すればよい。
系統周波数制御部32は、系統周波数を制御するためのものである。系統周波数制御部32は、インバータ回路2が出力する有効電力を調整することで、系統周波数を制御する。系統周波数制御部32は、系統周波数検出部40より出力される角周波数ωとその目標値である系統周波数目標値ω*との偏差Δωを入力され、PI制御を行い、系統周波数補償値を出力する。系統周波数補償値は、加算器34に入力される。なお、系統周波数制御部32の制御はPI制御に限られず、I制御などの他の制御を行うようにしてもよい。また、系統周波数検出部40が系統周波数fを検出して、系統周波数制御部32が系統周波数fとその目標値f*との偏差Δfを入力されて、系統周波数補償値を出力するようにしてもよい。
協調補正値生成部33は、各インバータ装置Aと協調するための協調補正値を生成するものである。協調補正値生成部33の詳細については、後述する。
加算器34は、系統周波数制御部32より入力される系統周波数補償値に、協調補正値生成部33より入力される協調補正値を加算して、補正補償値ΔIdi *を算出する。入力電圧制御部31から出力される有効電力補償値は、加算器34から出力される補正補償値ΔIdi *を加算されて、目標値Id*として電流制御部35に入力される。また、加算器34は、算出した補正補償値ΔIdi *を、重み付け部38にも出力する。
電流制御部35は、インバータ回路2の出力電流の制御を行うためのものである。電流制御部35は、電流センサ4より入力される電流信号Iに基づいて電流補償値を生成し、指令信号生成部36に出力する。
図7は、電流制御部35の内部構成を説明するための機能ブロック図である。
電流制御部35は、三相/二相変換部351、回転座標変換部352、LPF353、LPF354、PI制御部355、PI制御部356、静止座標変換部357、および、二相/三相変換部358を備えている。
三相/二相変換部351は、いわゆる三相/二相変換処理(αβ変換処理)を行うものである。三相/二相変換処理とは、三相の交流信号をそれと等価な二相の交流信号に変換する処理であり、三相の交流信号を静止した直交座標系(以下、「静止座標系」という。)における直交するα軸とβ軸の成分にそれぞれ分解して各軸の成分を足し合わせることで、α軸成分の交流信号とβ軸成分の交流信号に変換するものである。三相/二相変換部351は、電流センサ4から入力された三相の電流信号Iu,Iv,Iwを、α軸電流信号Iαおよびβ軸電流信号Iβに変換して、回転座標変換部352に出力する。
三相/二相変換部351で行われる変換処理は、下記(2)式に示す行列式で表される。
回転座標変換部352は、いわゆる回転座標変換処理(dq変換処理)を行うものである。回転座標変換処理とは、静止座標系の二相の信号を回転座標系の二相の信号に変換する処理である。回転座標系は、直交するd軸とq軸とを有し、連系点電圧の基本波と同一の角速度で同一の回転方向に回転する直交座標系である。回転座標変換部352は、三相/二相変換部351から入力される静止座標系のα軸電流信号Iαおよびβ軸電流信号Iβを、連系点電圧の基本波の位相θに基づいて、回転座標系のd軸電流信号Idおよびq軸電流信号Iqに変換して出力する。
回転座標変換部352で行われる変換処理は、下記(3)式に示す行列式で表される。
LPF353およびLPF354は、ローパスフィルタであり、それぞれd軸電流信号Idおよびq軸電流信号Iqの直流成分だけを通過させる。回転座標変換処理によって、α軸電流信号Iαおよびβ軸電流信号Iβの基本波成分が、それぞれd軸電流信号Idおよびq軸電流信号Iqの直流成分に変換されている。つまり、LPF353およびLPF354は、不平衡成分や高調波成分を除去して、基本波成分のみを通過させるものである。
PI制御部355は、d軸電流信号Idの直流成分と目標値との偏差に基づいてPI制御を行い、電流補償値Xdを出力するものである。入力電圧制御部31より出力される有効電力補償値に補正補償値ΔIdi *が加算されて、d軸電流信号Idの目標値Id*として用いられる。PI制御部356は、q軸電流信号Iqの直流成分と目標値Iq*との偏差に基づいてPI制御を行い、電流補償値Xqを出力するものである。無効電力制御部30より出力される無効電力補償値が、q軸電流信号Iqの目標値Iq*として用いられる。
静止座標変換部357は、PI制御部355およびPI制御部356からそれぞれ入力される電流補償値Xd,Xqを、静止座標系の電流補償値Xα,Xβに変換するものであり、回転座標変換部352とは逆の変換処理を行うものである。静止座標変換部357は、いわゆる静止座標変換処理(逆dq変換処理)を行うものであり、回転座標系の電流補償値Xd,Xqを、位相θに基づいて、静止座標系の電流補償値Xα,Xβに変換する。
静止座標変換部357で行われる変換処理は、下記(4)式に示す行列式で表される。
二相/三相変換部358は、静止座標変換部357から入力される電流補償値Xα,Xβを、三相の電流補償値Xu,Xv,Xwに変換するものである。二相/三相変換部358は、いわゆる二相/三相変換処理(逆αβ変換処理)を行うものであり、三相/二相変換部351とは逆の変換処理を行うものである。
二相/三相変換部358で行われる変換処理は、下記(5)式に示す行列式で表される。
なお、本実施形態では、インバータ装置Aが三相のシステムである場合について説明したが、単相のシステムであってもよい。単相のシステムの場合、電流制御部35は、インバータ回路2の出力電流を検出した単相の電流信号に対して制御を行えばよい。
指令信号生成部36は、電流制御部35より入力される電流補償値Xu,Xv,Xwに基づいて指令信号を生成して、PWM信号生成部37に出力する。
PWM信号生成部37は、PWM信号を生成するものである。PWM信号生成部37は、キャリア信号と指令信号生成部36より入力される指令信号とに基づいて、三角波比較法によりPWM信号を生成する。例えば、指令信号がキャリア信号より大きい場合にハイレベルとなり、指令信号がキャリア信号以下の場合にローレベルとなるパルス信号が、PWM信号として生成される。生成されたPWM信号は、インバータ回路2に出力される。なお、PWM信号生成部37は、三角波比較法によりPWM信号を生成する場合に限定されず、例えば、ヒステリシス方式でPWM信号を生成するようにしてもよい。
重み付け部38は、加算器34より入力される補正補償値ΔIdi *に重み付けを行うものである。重み付け部38には、重み付け値Wiがあらかじめ設定されている。重み付け部38は、補正補償値ΔIdi *を重み付け値Wiで除算した重み付け後の補正補償値ΔIdi’を通信部39および協調補正値生成部33に出力する。
重み付け値Wiは、インバータ装置Aに調整させる出力有効電力の大きさ(調整量)に応じてあらかじめ設定しておく。例えば、インバータ装置A1(図2参照)の容量がインバータ装置A2〜A5の容量より大きいので、インバータ装置A1の調整量を大きくしたい場合(インバータ装置A2〜A5の調整量をできるだけ小さくしたい場合)は、インバータ装置A1の重み付け値W1には、他のインバータ装置A2〜A5の重み付け値W2〜W5と比べて大きな値を設定する。重み付け値W2〜W5については、調整量を平等にするために同じ値とすればよい。なお、重み付け値Wiの設定方法は限定されず、例えば、インバータ装置Aに接続されている太陽電池パネルの大きさに応じて設定するようにしてもよい。
通信部39は、他のインバータ装置Aの制御回路3との間で通信を行うものである。通信部39は、重み付け部38より重み付け後の補正補償値ΔIdi’を入力され、他のインバータ装置Aの通信部39に送信する。また、通信部39は、他のインバータ装置Aの通信部39から受信した補償値ΔIdj’を、協調補正値生成部33に出力する。なお、通信方法は限定されず、有線通信であってもよいし、無線通信であってもよい。
例えば、インバータ装置Aが図2に示すインバータ装置A2の場合、通信部39は、重み付け後の補正補償値ΔId2’をインバータ装置A1およびA3の通信部39に送信し、インバータ装置A1の通信部39から補償値ΔId1’を受信し、インバータ装置A3の通信部39から補償値ΔId3’を受信する。
次に、協調補正値生成部33の詳細について説明する。
協調補正値生成部33は、重み付け部38より入力される重み付け後の補正補償値ΔIdi’(以下では、「補償値ΔIdi’」と省略して記載する)と、通信部39より入力される、他のインバータ装置Aの補償値ΔIdj’とを用いて、各インバータ装置Aと協調するための協調補正値を生成する。補償値ΔIdi’と補償値ΔIdj’とが異なっていても、協調補正値生成部33での演算処理が繰り返されることで、補償値ΔIdi’と補償値ΔIdj’とが共通の値に収束する。図1に示すように、協調補正値生成部33は、演算部331、乗算器332および積分器333を備えている。
演算部331は、下記(6)式に基づく演算を行う。すなわち、演算部331は、通信部39より入力される各補償値ΔIdj’から、重み付け部38より入力される補償値ΔIdi’をそれぞれ減算し、減算結果をすべて加算した演算結果uiを乗算器332に出力する。
例えば、インバータ装置Aがインバータ装置A2の場合(図2参照)、演算部331は、下記(7)式の演算を行い、演算結果u2を出力する。
乗算器332は、演算部331から入力される演算結果uiに所定の係数εを乗算して積分器333に出力する。係数εは、0<ε<1/dmaxを満たす値であり、あらかじめ設定されている。dmaxは、通信部39が通信を行う他のインバータ装置Aの数であるdiのうち、電力システムに接続しているすべてのインバータ装置Aの中で最大のものである。つまり、電力システムに接続しているインバータ装置Aのなかで、一番多くの他のインバータ装置Aと通信を行っているものの通信部39に入力される補償値ΔIdj’の数である。なお、係数εは、演算結果uiが大きく(小さく)なりすぎて、協調補正値の変動が大きくなりすぎることを抑制するために、演算結果uiに乗算されるものである。したがって、協調補正値生成部33での処理が連続時間処理の場合は、乗算器332を設ける必要はない。
積分器333は、乗算器332から入力される値を積分することで協調補正値を生成して出力する。積分器333は、前回生成した協調補正値に乗算器332から入力される値を加算することで協調補正値を生成する。協調補正値は、加算器34に出力される。
本実施形態では、制御回路3をディジタル回路として実現した場合について説明したが、アナログ回路として実現してもよい。また、各部が行う処理をプログラムで設計し、当該プログラムを実行させることでコンピュータを制御回路3として機能させてもよい。また、当該プログラムを記録媒体に記録しておき、コンピュータに読み取らせるようにしてもよい。
本実施形態において、協調補正値生成部33は、重み付け部38より入力される補償値ΔIdi’と、通信部39より入力される、他のインバータ装置Aの補償値ΔIdj’とを用いて、協調補正値を生成する。補償値ΔIdi’が各補償値ΔIdj’の相加平均値より大きい場合、演算部331が出力する演算結果uiは負の値になる。そうすると、協調補正値は小さくなり、補償値ΔIdi’も小さくなる。一方、補償値ΔIdi’が各補償値ΔIdj’の相加平均値より小さい場合、演算部331が出力する演算結果uiは正の値になる。そうすると、協調補正値は大きくなり、補償値ΔIdi’も大きくなる。つまり、補償値ΔIdi’は各補償値ΔIdj’の相加平均値に近づいていく。この処理が各インバータ装置Aそれぞれで行われることにより、各インバータ装置Aの補償値ΔIdi’は同じ値に収束する。コンセンサスアルゴリズムを用いることで制御対象の状態の値が同じ値に収束することは、数学的にも証明されている(非特許文献1,2参照)。本実施形態の場合、補償値ΔIdi’が制御対象の状態の値である。
以下に、図2に示す電力システムにおいて、各インバータ装置Aが協調して出力有効電力を調整することで系統周波数の変動を抑制することを確認したシミュレーションについて説明する。図6に示す制御システムを用いてシミュレーションを行った。
インバータ装置A1の系統周波数制御部32の比例ゲインKp1を「1」、積分ゲインKi1を「2」、インバータ装置A2の系統周波数制御部32の比例ゲインKp2を「1」、積分ゲインKi2を「0.5」、インバータ装置A3の系統周波数制御部32の比例ゲインKp3を「2」、積分ゲインKi3を「3」、インバータ装置A4の系統周波数制御部32の比例ゲインKp4を「5」、積分ゲインKi4を「1」、インバータ装置A5の系統周波数制御部32の比例ゲインKp5を「0.5」、積分ゲインKi5を「0.3」とし、連系点電圧V1〜V5を「1[p.u.]」、Mを「9[s]」、Dを「2[p.u.]」としている。図8ないし図10は、当該シミュレーションの結果を示すものである。
図8および図9は、インバータ装置A1〜A5の重み付け部38に設定されている重み付け値W1〜W5を、W1=W2=W3=W4=W5=1としたものであり、各インバータ装置Aが協調して出力有効電力を調整することを確認するためのものである。図8は比較のためのもので、協調を行わなかった場合(すなわち、図4に示す制御システムを用いた場合)のものであり、図9は協調を行った場合(すなわち、図6に示す制御システムを用いた場合)のものである。
どちらも、シミュレーション開始から10秒後に、外乱ΔPwとして0.5[p.u.]をステップ注入した。図8(a)および図9(a)は、系統角周波数の偏差Δωの時間変化を示している。また、図8(b)および図9(b)は、各インバータ装置A1〜A5の出力有効電力の調整量の時間変化を示している。本シミュレーションは、有効電力を増加させる外乱ΔPwを注入して、各インバータ装置A1〜A5が出力有効電力を抑制するように調整するものである。各図(b)においては、出力有効電力を増加させる場合をプラスとしているので、調整量(抑制量)はマイナスの値で示されている。
図8の場合、系統角周波数の変動をすぐに抑制することができているが、各インバータ装置A1〜A5の調整量は、各ゲインに応じた値に固定されている。したがって、各インバータ装置A1〜A5の調整量を制御することができない。図8(b)の場合、インバータ装置A3の出力有効電力が最も多く抑制されており、この調整量を小さくすることができない。
図9の場合も、図8の場合と同様に、系統角周波数の変動をすぐに抑制することができている。また、図9の場合、シミュレーション開始から約24秒で、各インバータ装置A1〜A5の調整量が同じ値に収束している。すなわち、各インバータ装置A1〜A5が、協調して出力有効電力を調整している。
図2の電力システムの通信状態が図5(b)、(c)に示すグラフとなる場合についてもそれぞれシミュレーションを行った。これらの場合も、図9の場合と同様に、系統角周波数の変動をすぐに抑制することができ、各インバータ装置A1〜A5の調整量が同じ値に収束することが確認できた。また、図5(b)のグラフの場合の方が、図9の場合(図5(a)のグラフの場合)より、収束するまでの時間が短く、図5(c)のグラフの場合は収束するまでの時間がさらに短くなった。なお、シミュレーション結果の図示は省略している。
図10は、インバータ装置A1〜A5の重み付け部38に設定されている重み付け値W1〜W5を、W2=W3=W4=W5=1とし、W1を時間とともに変化させたものであり、重み付け値によって各インバータ装置Aの出力有効電力の調整量が変化することを確認するためのものである。図10の場合も、シミュレーション開始から10秒後に、外乱ΔPwとして0.5[p.u.]をステップ注入した。図10(a)は、系統角周波数の偏差Δωの時間変化を示しており、図10(b)は、各インバータ装置A1〜A5の出力有効電力の調整量の時間変化を示している。シミュレーション開始時には重み付け値W1を「1」としているが、シミュレーション開始から30秒後に「2」に変更し、60秒後に「4」に変更し、90秒後に「8」に変更し、120秒後に「16」に変更している。
図10に示すように、系統角周波数の変動をすぐに抑制することができており、シミュレーション開始から約24秒で、各インバータ装置A1〜A5の調整量が同じ値に収束している。また、重み付け値W1を「2」に変更した後は、インバータ装置A2〜A5の調整量は小さく(図10(b)においての値は大きく)なり、インバータ装置A1の調整量は大きく(図10(b)においての値は小さく)なっている。つまり、インバータ装置A2〜A5の調整量の一部を、インバータ装置A1が負担するようになった。インバータ装置A2〜A5の調整量は、インバータ装置A1の調整量の半分になっている。さらに、重み付け値W1を「4」に変更した後は、インバータ装置A2〜A5の調整量は、インバータ装置A1の調整量の4分の1になっている。また、重み付け値W1を「8」に変更した後はインバータ装置A2〜A5の調整量がインバータ装置A1の調整量の8分の1になり、重み付け値W1を「16」に変更した後はインバータ装置A2〜A5の調整量がインバータ装置A1の調整量の16分の1になっている。このように、重み付け値によって各インバータ装置Aの出力有効電力の調整量が変化することを確認することができた。
本実施形態によると、協調補正値生成部33は、補償値ΔIdi’と補償値ΔIdj’とに基づく演算結果を用いて、協調補正値を生成する。各インバータ装置A1〜A5の協調補正値生成部33がこれを行うことで、すべてのインバータ装置A1〜A5の補償値ΔIdi’が同じ値に収束する。したがって、各インバータ装置A1〜A5の補正補償値ΔIdi *は、それぞれの重み付け値W1〜W5に応じた値になる。各インバータ装置A1〜A5の出力有効電力の調整量は補正補償値ΔIdi *に基づいて調整されるので、各インバータ装置A1〜A5の出力有効電力の調整量を、重み付け値W1〜W5に応じて調整することができる。
また、電力システムに接続されている各インバータ装置Aがそれぞれ少なくとも1つのインバータ装置A(例えば、近隣に位置するものや、通信が確立されたもの)とだけ相互通信を行っており、電力システムが連結状態であればよく、1つのインバータ装置Aや監視装置が他の全てのインバータ装置Aと通信を行う必要はない。したがって、システムが大がかりにならない。また、あるインバータ装置Aが故障した場合や、あるインバータ装置Aを削減した場合でも、他の全てのインバータ装置Aがいずれかのインバータ装置Aと通信可能であり、電力システムが連結状態であればよい。また、インバータ装置Aを増加する場合は、そのインバータ装置Aが少なくとも1つのインバータ装置Aと相互通信を行うようにすればよいだけである。したがって、インバータ装置Aの増減に柔軟に対応できる。
上記第1実施形態においては、インバータ装置Aが直流電源1からの入力を変換して電力系統Bに出力する場合について説明したが、これに限られない。例えば、インバータ装置Aは蓄電池システムの充放電を行うためのインバータ装置であってもよいし、電力調整可能な負荷用のインバータ装置であってもよい。これらのインバータ装置Aでは、蓄電池に充電する(または放電させる)有効電力または負荷で消費する有効電力を調整する。つまり、系統周波数が上昇した場合は充電または消費する有効電力を増加させ、系統周波数が下降した場合は、充電または消費する有効電力を減少させる。これらの場合でも、有効電力の調整を他のインバータ装置Aとの間で協調して行うことができる。太陽光発電や風力発電などでは、できるだけ出力有効電力の調整を行いたくない。したがって、太陽光発電や風力発電などで用いられるインバータ装置Aの重み付け値Wを小さい値にして、蓄電池システムまたは負荷で用いられるインバータ装置Aの重み付け値Wを大きい値にする。これにより、太陽光発電や風力発電などによる出力有効電力をあまり調整することなく、蓄電池に充電する(または放電させる)有効電力や負荷に消費させる有効電力を調整することで、外乱による系統周波数の変動を抑制することができる。なお、蓄電池システムや負荷用のインバータ装置の場合、入力電圧を制御する変わりに出力有効電力を制御する場合がある。具体的には、入力電圧制御部31に代えて出力有効電力制御部を設け、インバータ回路2の出力有効電力を算出し、その目標値との偏差に対してPI制御を行って有効電力補償値を出力する。
上記第1実施形態のように、太陽電池などの直流電源1からの入力を変換して電力系統Bに出力するインバータ装置Aの場合、系統周波数が上昇したときに出力有効電力を抑制するように調整を行い、系統周波数が下降したときに出力有効電力を増加させるように調整を行う。したがって、出力有効電力を増加させる余地を残しておくために、MPPT制御(最大電力点追従制御)によって最大電力を出力するよう制御するのではなく、最大の9割程度の出力に制御しておく必要がある。
または、系統周波数が下降した場合には通信状態を変化させるようにする必要がある。すなわち、通常または系統周波数が上昇した場合の通信ネットワークから、MPPT制御を行っているインバータ装置Aを除いた通信ネットワーク(つまり、蓄電池または負荷用のインバータ装置Aと最大の9割程度の出力に制御しているインバータ装置Aだけで構成された通信ネットワーク)に切り替える必要がある。切り替え後の通信ネットワークを構成するインバータ装置Aは、通信によって協調して有効電力を増加させるように調整を行う。通信ネットワークの切り替えは、系統周波数検出部40が検出した系統角周波数ωに基づいて、通信部39が通信相手を変更することで、各インバータ装置Aがそれぞれ自分で行う。
例えば、図5(a)のグラフに示す通信ネットワークから、MPPT制御を行っているインバータ装置A1,A4を除いた通信ネットワーク(図5(d)参照)に切り替える場合、インバータ装置A1はインバータ装置A2との通信を遮断し、インバータ装置A2もインバータ装置A1との通信を遮断する。また、インバータ装置A3はインバータ装置A4との通信を遮断して、代わりにインバータ装置A5と通信を行う。インバータ装置A4はインバータ装置A3およびA5との通信を遮断する。インバータ装置A5はインバータ装置A4との通信を遮断して、代わりにインバータ装置A3と通信を行う。これにより、図5(d)のグラフに示す通信ネットワークに切り替えられ、インバータ装置A2,A3,A5が協調して有効電力を増加させるように調整を行う。インバータ装置A1,A4は有効電力を増加させる調整を行わない。系統周波数が下降した状態を解消したら、各インバータ装置Aの通信部39は通信相手を元に戻すことで、図5(a)のグラフに示す通信ネットワークに切り替える。
上記第1実施形態においては、各インバータ装置A1〜A5の連系点電圧V1〜V5(図6参照)が同じであることを前提に、重み付け値W1〜W5を設定する場合について説明しているが、連系点電圧V1〜V5が異なる場合は、重み付け値W1〜W5の設定方法が変わってくる。すなわち、連系点電圧V1〜V5が異なると、各インバータ装置A1〜A5が同じ電流を出力するようにしても、出力有効電力は異なってしまう。したがって、各インバータ装置A1〜A5の出力有効電力の調整量を同一にするためには、重み付け値W1〜W5を同一の値にするのではなく、連系点電圧V1〜V5の逆数に比例する値とする必要がある。例えば、V1=V2=V3=V4=2V5の場合(すなわち、V5がV1〜V4の半分の場合)、W1=W2=W3=W4=1、W5=2とすることで、出力有効電力の調整量を同一にすることができる。
上記第1実施形態においては、演算部331に設定する演算式を上記(6)式とした場合について説明したが、これに限られない。インバータ装置A1〜A5の補償値ΔIdi’を同じ値に収束させる他の式を用いるようにしてもよい。
例えば、演算部331に設定する演算式を下記(8)式とした場合にも、補償値ΔIdi’を同じ値に収束させることができる。diは、通信部39が通信を行う他のインバータ装置Aの数、すなわち、通信部39に入力される補償値ΔIdj’の数である。
また、演算部331に設定する演算式を下記(9)〜(11)式とした場合にも、補償値ΔIdi’を同じ値に収束させることができる。
上記第1実施形態においては、各インバータ装置Aの重み付け値として、固定値があらかじめ設定されている場合について説明したがこれに限られない。各インバータ装置Aの重み付け値を変更可能にしてもよい。
図11は、第2実施形態に係るインバータ装置Aを説明するための図である。図11においては、制御回路3のみを記載しており、制御回路3のうち第1実施形態に係る制御回路3(図1参照)と共通する部分の記載を省略している。第2実施形態に係るインバータ装置Aは、インバータ回路2の温度に応じて重み付け値Wiを変更する点で、第1実施形態に係るインバータ装置Aと異なる。図11に示すように、第2実施形態に係るインバータ装置Aは、制御回路3に温度検出部41および重み付け値設定部42をさらに備えている。
図示しないが、インバータ回路2のヒートシンクには温度センサが取り付けられている。温度検出部41は、当該温度センサが検出した温度を検出し、検出した温度を重み付け値設定部42に出力する。重み付け値設定部42は、温度検出部41より入力される温度に応じた重み付け値Wiを重み付け部38に設定する。インバータ回路2の温度が高い場合、インバータ回路2に負担がかかっていると考えられるので、さらに大きく出力有効電力を増加させるのは難しい。したがって、調整量を小さくするようにした方がいい。本実施形態では、温度検出部41より入力される温度をあらかじめ設定しているしきい値と比較し、温度がしきい値より大きい場合に重み付け値Wiを小さい値に変更する。なお、複数のしきい値を設定しておき、重み付け値Wiを段階的に変更するようにしてもよい。また、温度検出部41より入力される温度から重み受け値Wiを線形的に算出する算出式を設定しておき、当該算出式の算出結果を設定するようにしてもよい。
第2実施形態によると、インバータ装置Aのインバータ回路2に負担がかかりすぎてインバータ回路2の温度が高くなった場合、重み付け値Wiが小さい値に変更される。これにより、当該インバータ装置Aの出力有効電力の調整量が小さくなり、その分、他のインバータ装置Aの出力有効電力の調整量が大きくなる。これにより、当該インバータ装置Aの出力有効電力がさらに大きく増加される事態になることを防ぐことができる。また、第2実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
なお、インバータ装置Aが、系統周波数が上昇した場合にのみ有効電力の調整(抑制)に加わる場合(すなわち、系統周波数が下降した場合には有効電力の調整(増加)に加わらない場合)、上記とは逆に、検出された温度が大きいときに調整量(抑制量)を大きくするようにしてもよい。つまり、抑制量を大きくすることで出力有効電力を減少させて、当該インバータ装置Aの負担を軽くして、他のインバータ装置Aがその分を負担するようにしてもよい。
図12は、第3実施形態に係るインバータ装置Aを説明するための図である。図12(a)は、第3実施形態に係るインバータ装置Aの制御回路3のみを記載しており、制御回路3のうち第1実施形態に係る制御回路3(図1参照)と共通する部分の記載を省略している。第3実施形態に係るインバータ装置Aは、日時や時刻によって重み付け値Wiを変更する点で、第1実施形態に係るインバータ装置Aと異なる。図12(a)に示すように、第3実施形態に係るインバータ装置Aは、制御回路3に時計部43および重み付け値設定部42’をさらに備えている。
時計部43は、日付および時刻(以下では、合わせて「日時」とする))を重み付け値設定部42’に出力する。
重み付け値設定部42’は、時計部43より入力される日時に応じた重み付け値Wiを重み付け部38に設定する。太陽の位置は時刻によって変化するので、建物などの影がかかる領域は時刻によって変化する。また、太陽の軌道は日付によって変化する(例えば、夏至と冬至で太陽の軌道は大きく異なる)ので、建物などの影がかかる領域は日付によっても変化する。インバータ装置Aに接続されている太陽電池パネルに影がかかる場合、当該太陽電池パネルで発電される電力は小さくなる。この場合、インバータ装置Aの出力電力をさらに大きく抑制することは避けたいし、出力電力をさらに大きく増加させることも難しいので、調整量を小さくしたい。本実施形態では、影がかかる太陽電池パネルをあらかじめ調査しておき、影がかかる太陽電池パネルが接続されているインバータ装置Aの重み付け値Wiを、影がかかる日時に小さい値に切り替えるようにしている。また、影がかかる面積が大きいほど重み付け値Wiを小さくするようにしている。具体的には、重み付け値設定部42’は、図12(b)に示す重み付け値Wiのテーブルをメモリに記憶してあり、時計部43より入力される日時に対応する重み付け値Wiを読み出して設定する。図12(b)においては、1月の9:00〜12:00に太陽電池パネルに影がかかるので、この日時に通常より小さい値が設定されている。なお、重み付け値Wiは、日付に関係なく時刻によってのみ変更するようにしてもよいし、時刻に関係なく日付によってのみ変更するようにしてもよい。
第3実施形態によると、インバータ装置Aに接続されている太陽電池パネルに影がかかる日時においては、重み付け値Wiが小さい値に変更され、出力有効電力の調整量が小さくなる。これにより、影によって発電される電力が小さくなるときには、調整量を小さくすることができる。また、第3実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
図13は、第4実施形態に係るインバータ装置Aを説明するための図である。図13においては、制御回路3のうち第1実施形態に係る制御回路3(図1参照)と共通する部分の記載を省略している。第4実施形態に係るインバータ装置Aは、インバータ回路2の出力有効電力に応じて重み付け値Wiを変更する点で、第1実施形態に係るインバータ装置Aと異なる。図13に示すように、第4実施形態に係るインバータ装置Aは、制御回路3に有効電力算出部44および重み付け値設定部42”をさらに備えている。
有効電力算出部44は、インバータ回路2の出力有効電力Pを算出するものであり、電流センサ4より入力される電流信号Iu,Iv,Iwと、電圧センサ5より入力される電圧信号Vu,Vv,Vwとから出力有効電力Pを算出する。有効電力算出部44は、算出した出力有効電力Pを重み付け値設定部42”に出力する。
重み付け値設定部42”は、有効電力算出部44より入力される出力有効電力Pに応じた重み付け値Wiを重み付け部38に設定する。出力有効電力Pが大きい場合、インバータ装置Aの容量に対して余裕がないので、さらに大きく出力有効電力を増加させるのは難しい。したがって、本実施形態においては、調整量を小さくするようにしている。すなわち、重み付け値設定部42”は、有効電力算出部44より入力される出力有効電力Pをあらかじめ設定しているしきい値と比較し、出力有効電力Pがしきい値より大きい場合に重み付け値Wiを小さい値に変更する。なお、複数のしきい値を設定しておき、重み付け値Wiを段階的に変更するようにしてもよい。また、出力有効電力Pから重み受け値Wiを線形的に算出する算出式を設定しておき、当該算出式の算出結果を設定するようにしてもよい。
第4実施形態によると、インバータ装置Aの出力有効電力Pが大きい場合、重み付け値Wiが小さい値に変更される。これにより、当該インバータ装置Aの出力有効電力の調整量が小さくなって、出力有効電力が調整される。また、第4実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
なお、インバータ装置Aが、系統周波数が上昇した場合にのみ有効電力の調整(抑制)に加わる場合(すなわち、系統周波数が下降した場合には有効電力の調整(増加)に加わらない場合)、上記とは逆に、出力有効電力Pが大きいときに調整量(抑制量)を大きくするようにしてもよい。つまり、出力有効電力Pが大きい場合、インバータ装置Aの容量に対して余裕がないので、調整量(抑制量)を大きくし、出力有効電力Pが小さい場合に調整量(抑制量)を小さくする。
なお、直流電源1の発電量によって重み付け値Wiを変更するようにしてもよい。また、直流電源1が太陽電池の場合は日射量によって、直流電源1が風力タービン発電機などにより生成された交流電力を直流電力に変換して出力する装置の場合は風量によって、重み付け値Wiを変更するようにしてもよい。また、インバータ装置Aが蓄電池のインバータ装置である場合、蓄電池の充電量によって、重み付け値Wiを変更するようにしてもよい。例えば、充電余力があるときは重み付け値Wiを大きくするようにしてもよい。また、売電価格に応じて重み付け値Wiを変更するようにしてもよい。
上記第1〜4実施形態においては、本発明に係る制御回路を電力系統に連系するインバータ装置に用いた場合について説明したが、これに限られない。例えば、太陽光発電を行う発電所(例えば、メガソーラ)や、風力発電を行う発電所(ウインドファーム)で用いられるインバータ装置の制御回路として、本発明に係る制御回路を用いるようにしてもよい。これらの場合、各インバータ装置が協調して有効電力を調整することで、メガソーラやウインドファーム内での系統周波数の変動を抑制することができる。
本発明に係る制御回路、インバータ装置、電力システム、および、制御方法は、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明に係る制御回路、インバータ装置、電力システム、および、制御方法の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。