図1から図12を参照して、実施の形態における工作機械の保持装置について説明する。本実施の形態においては工作機械として、ドリルやエンドミル等の工具を製造する工具研削盤を例示して説明する。また、加工プログラムに基づいて自動的にワークを加工する数値制御式の工作機械を例示して説明する。
図1は、本実施の形態における工作機械の概略斜視図である。工作機械10は、工場等の床面に設置されるベッド11を備える。工作機械10は、ベッド11の上面から立設するコラム13を備える。コラム13は、Y軸スライドベース12を介してベッド11に支持されている。コラム13の前面には、回転砥石5を回転させる砥石頭18が配置されている。砥石頭18は、Z軸スライドベース14を介してコラム13に支持されている。
工作機械10は、ワーク1を保持するワーク主軸頭20を備える。工作機械10は、ワーク主軸頭20をW軸の周りに回転可能に支持する旋回台17を備える。旋回台17は、X軸スライドベース16を介してベッド11に支持されている。
本実施の形態の工作機械10は、ワーク1に対して回転砥石5を相対移動させる移動装置を備えている。X軸スライドベース16は、ボールねじ機構により矢印91に示すX軸方向に移動可能に形成されている。旋回台17およびワーク主軸頭20は、X軸方向に移動可能に形成されている。Y軸スライドベース12は、ボールねじ機構により矢印92に示すY軸方向に移動可能に形成されている。コラム13、砥石頭18および回転砥石5は、Y軸方向に移動可能に形成されている。Z軸スライドベース14は、ボールねじ機構により矢印93に示すZ軸方向に移動可能に形成されている。砥石頭18および回転砥石5は、Z軸方向に移動可能に形成されている。
また、移動装置は、旋回台17が回転することにより、W軸方向にワーク主軸頭20およびワーク1を回転させることができる。更に、ワーク主軸頭20は、ワーク1をA軸方向に回転させることができる。
このように、本実施の形態の工作機械10の移動装置は、3つの直動軸と2つの回転送り軸とにより相対移動を実施する。本実施の形態の工作機械10は、制御装置を備える。それぞれの軸方向の相対移動を実施する移動装置は、制御装置により制御されている。砥石頭18の内部にはモータが配置され、モータが駆動することにより回転砥石5を回転させることができる。
工作機械10は、ワーク1に対して回転砥石5を相対移動しながらワーク1を研削することができる。この結果、ワーク1を所望の形状に研削加工することができる。なお、工作機械としては、この形態に限られず、切削加工を行う工作機械や放電加工機等の任意の工作機械を採用することができる。
本実施の形態では、工作機械の保持装置として、ワーク主軸頭20を例示して説明する。被保持物はワークに相当する。本実施の形態におけるワーク主軸頭20は、棒状のワーク1を着脱可能に形成されている。
図2に、本実施の形態における第1のワーク主軸頭の概略断面図を示す。ワーク主軸頭20は、ワーク1を支持しながら回転するスピンドル33と、スピンドル33を覆うように形成されているハウジング34とを含む。スピンドル33は、回転軸の周りに回転する回転部材として機能する。
スピンドル33は、円筒状に形成され、ハウジング34に回転可能に支持されている。スピンドル33の回転軸は、A軸の回転中心線に相当する(図1参照)。スピンドル33の一方の端部は、軸受け44a,44bを介してハウジング34に支持されている。スピンドル33の他方の端部は、軸受44cを介してハウジング34に支持されている。
本実施の形態のワーク主軸頭20は、ビルトインタイプの回転機を含む。ハウジング34の内面には、ステータ41が配置されている。スピンドル33の外面にはロータ42が配置されている。ステータ41およびロータ42により回転機が構成されている。
ワーク主軸頭20は、ワーク1を固定する固定部材としてのコレット31と、コレット31をスピンドル33に固定するためのアダプタ32とを含む。コレット31のワーク1を保持する端部には、コレット31の中心軸の方向に延びるスリットと称される切断部が複数形成されている。コレット31は、ワーク1を挿入する端部の内径が変化することによりワーク1を保持したり開放したりする。コレット31は、ワーク1の大きさに応じて取り替え可能に形成されている。コレット31のワーク1が挿入される端部と反対側の端部には、プルスタッド35が固定されている。
アダプタ32は、コレット31とスピンドル33との間に配置されている。アダプタ32は、締結部材としてのボルト51によりスピンドル33に固定されている。なお、締結部材としては、アダプタ32を締め付けることができる任意の部材を採用することができる。
スピンドル33の内部には、スピンドル33の回転軸に沿って延びるドローバー37が配置されている。ドローバー37の周りには、ばね43が配置されている。ドローバー37には、係合爪36が係合している。係合爪36は、周方向に複数個が配置されている。また、係合爪36は、プルスタッド35に係合する。
ドローバー37は、ばね43により矢印94に示す方向に付勢されている。係合爪36は、ばね43の付勢力により、矢印94に示す方向に引っ張られる。係合爪36は、端部が閉じる向きに付勢されてプルスタッド35に係合する。そして、プルスタッド35およびコレット31が引き込まれる側に付勢される。この結果、コレット31の傾斜部31aがアダプタ32の傾斜部32aに押圧される。コレット31の端部の内径が小さくなり、ワーク1を固定することができる。コレット31に保持されたワーク1は、スピンドル33と一体的に回転する。
ワーク主軸頭20は、ドローバー37を駆動する駆動装置を含む。本実施の形態の駆動装置は油圧にて駆動する。駆動装置は、ピストン38を含む。ピストン38の周りには、加圧された制御油が注入される油室39a,39bが形成されている。ワーク1を加工する場合には、油室39bに制御油が供給される。ピストン38によるドローバー37の押圧が回避される。
一方で、ワーク1を取り外す場合には、油室39aに加圧された制御油が供給される。ピストン38は、矢印95に示す向きに移動する。そして、ドローバー37が押圧され、更に、プルスタッド35およびコレット31が外側に向かって押圧される。この結果、アダプタ32の傾斜部32aに対するコレット31の傾斜部31aの押圧が解除される。コレット31の端部の内径が大きくなり、ワーク1を取り外すことができる。
図3に、本実施の形態における第1のワーク主軸頭の先端の部分の拡大概略断面図を示す。アダプタ32は、筒状に形成された筒状部32dと、筒状部32dから外側に向かって突出するつば部32bとを有する。本実施の形態のつば部32bは、スピンドル33の回転軸に垂直な方向に突出している。アダプタ32の筒状部32dは、コレット31を挿入する挿入穴32fを有する。
本実施の形態のつば部32bは、ワーク主軸頭20を正面から見たときに、円環状に形成されている。ボルト51は、周方向に等間隔を空けて複数個が配置されている。本実施の形態では、8個のボルト51が配置されている。ボルト51は、つば部32bの領域に配置されている。ボルト51は、スピンドル33の回転軸にほぼ平行な方向に挿入されている。ボルト51を締め付けることにより、アダプタ32がスピンドル33に固定される。第1のワーク主軸頭では、つば部32bの外周部がスピンドル33に接触している。
ワーク主軸頭20は、ボルト51が配置されている領域に空洞部81を形成する空洞部構成手段を含む。空洞部構成手段は、つば部32bのスピンドル33に対向する領域の外周部に形成された凸部32cを有する。凸部32cは、周方向に延びるように形成されている。凸部32cがスピンドル33に接触することにより、凸部32cの内側に平面状の空洞部81が形成されている。つば部32bのスピンドル33が配置される側の端部に空洞部81が形成されている。空洞部81は、凸部32cに沿って周方向に形成されている。空洞部81の径方向の長さは、凸部32cの径方向の長さよりも長くなっている。空洞部81は、ボルト51が配置されている領域に形成され、ボルト51は、空洞部81を貫通している。
本実施の形態のワーク主軸頭20は、ボルト51を締め付けるトルクを変化させることにより、ワークの芯出しを行う。工作機械10のA軸の回転中心線、すなわちスピンドル33の回転軸71にワーク1の中心軸を一致させる様に、アダプタ32の傾きおよび位置を調整する。
図4は、アダプタを固定するボルトを締め付けたときのワーク主軸頭の先端の部分の拡大概略断面図である。周方向に配置されている複数のボルト51のうち、1つのボルト51を矢印96に示す様に締め付ける。すなわち、締め付けるときのトルクを大きくする。ボルト51を締め付けるトルクを大きくすると、空洞部81が縮小すると共に、つば部32bが変形する。つば部32bが湾曲することにより、アダプタ32を矢印97に示す向きに僅かに傾けることができる。すなわち、アダプタ32の中心軸を傾けることができる。これに対して、スピンドル33の回転軸71は不変である。このため、ボルト51を締め付けるトルクを大きくすることにより、コレット31に保持されるワーク1の中心軸を矢印97に示す向きに傾けることができる。なお、図4は、本発明の説明のためにつば部32bの変形を誇張して記載している。
本実施の形態のアダプタ32のつば部32bは、弾性変形が可能に形成されている。このような弾性変形が可能なつば部32bとしては、例えば、鉄やステンレス鋼にて形成することができる。更に、つば部32bは、ボルト51にて締め付けたときに変形可能な厚さにて形成されている。
次に、本実施の形態の被保持物の芯出し方法、すなわちワークの中心軸の調整方法について説明する。図5は、本実施の形態の第1のワーク主軸頭において、ワーク1の芯出しの調整を行っている時の概略断面図である。図5には、アダプタ32をスピンドル33に固定する複数のボルトのうち、ボルト51aおよびボルト51bが示されている。本実施の形態のワーク1の芯出し方法では、ワーク1、コレット31およびプルスタッド35の代わりに一体型のテストバー2を用いる。
始めに、スピンドル33にアダプタ32を固定する工程を実施する。この工程では、複数個のボルト51a,51bを予め定められたトルクにて均等に締め付ける。また、空洞部81が押し潰されない強さのトルクにて、ボルト51a,51bを締め付ける。
次に、テストバー2を装着していない状態にて、アダプタ32の傾斜部32aの内面にダイヤルゲージ61を接触させる。そして、アダプタ32を回転させた時の振れ量を測定して予備的なアダプタ32の芯出しを行う工程を実施する。
図6に、予備的なアダプタの芯出しを行うときの振れ量を説明する模式図を示す。図5および図6を参照して、ダイヤルゲージ61にて測定を行った線65は、理想的な線66からずれている。線65の中心65aは、理想的な線66の中心を通る回転軸71から逸脱している。このように、アダプタ32の中心軸の位置がスピンドル33の回転軸71の位置からずれている場合には、全てのボルト51a,51bを緩めて、アダプタ32の中心軸を移動させる工程を実施する。例えば、プラスチックハンマー等でアダプタ32を叩くことによりアダプタ32の中心軸を移動する。スピンドル33の回転軸71に対するアダプタ32の中心軸の相対位置を調整する。この後に、予め定められたトルクまでボルト51a,51bを均等に締め付ける。この予備的な調整を実施することにより、スピンドル33の回転軸71に対してアダプタ32の中心軸を近づけることができる。
しかしながら、予備的なアダプタ32の位置の調整を実施しても、ダイヤルゲージ61にて測定を行った線65の中心65aが回転軸71と合致せずにずれる場合がある。この時には、傾斜部32aの振れ量が最小となる位相を記録しておくことが好ましい。すなわち、ダイヤルゲージ61の読みが最小になる点64の位相を記録しておくことが好ましい。ダイヤルゲージ61の読みが最小になる点64の位相は、たとえば、所定の基準方向に対する角度θにて特定することができる。
図7に、本実施の形態におけるテストバーの側面図を示す。本実施の形態では、テストバー2をアダプタ32に装着する前に、テストバー2の傾斜部2aの振れ量の測定を行う。テストバー2の中心軸72を回転軸として回転可能なように、テストバー2の両側の端部を支持部材62にて支持する。この状態にて、傾斜部2aにダイヤルゲージ61を接触させる。テストバー2を中心軸72の周りに回転させながらダイヤルゲージ61を読み取ることにより、振れ量が最大となる位相を特定することができる。すなわち、ダイヤルゲージ61の読みが最大になる点の位相を特定することができる。このテストバー2の振れ量が最大となる位相は記録しておくことが好ましい。
図5を参照して、次に、アダプタ32にテストバー2を装着する。この時に、テストバー2の傾斜部2aの振れ量が最大となる位相と、前の工程にて計測したアダプタ32の傾斜部32aの振れ量が最小となる位相とを合わせるようにテストバー2を取り付けることが好ましい。この方法により、アダプタ32にテストバー2を装着したときの振れ量が最大になる。すなわち、アダプタ32、スピンドル33、およびテストバー2に起因する振れ量が最大になり、次の複数のボルトの締め付けによるワークの芯出しを実施した時に、芯振れを矯正する効果を大きくすることができる。
次に、ゲージラインGLより予め定められた距離をあけた測定点にダイヤルゲージ61を配置する。ゲージラインGLは、アダプタ32の端面(口元)を通る線である。スピンドル33を回転させてテストバー2を回転させることにより、測定点における回転時の位相およびテストバー2の振れ量を測定する。このような測定は、テストバー2の中心軸に沿って、複数の測定点にて行うことができる。図5に示す例では、スピンドル33の回転軸71に対して、テストバー2の中心軸72が傾斜している。
次に、複数のボルト51a,51bのうち、テストバー2の先端が傾いている方向と反対側に配置されているボルト51bを更に締め付ける増し締め工程を実施する。なお、テストバー2の先端が傾いている方向と反対側の位置にボルトが配置されていない場合には、反対側の位置に近接する2つのボルトを締め付けることができる。ボルト51bを矢印96に示すように締め付けることにより、矢印97に示すように中心軸72を傾けて、回転軸71に近づけることができる。すなわち、テストバー2の傾きを修正することができる。ワーク1を取り付けた場合には、スピンドル33の回転軸71に対するワーク1の傾きを修正することができる。
このように、テストバー2の振れ量を測定にて、振れ量が最大となる位相に対して180°反対側に配置されているボルト51bを増し締めすることにより、中心軸72を回転軸71とほぼ平行な状態にすることができる。本実施の形態では、ボルトを増し締めする場合に、増し締めしたボルトの位相(回転位置)とトルクを記録する。
ここで、中心軸72の傾きを調整すると、テストバー2の中心軸72が回転軸71に対してほぼ平行であっても位置がずれている場合がある。すなわち、中心軸72の傾きの調整はできているが位置の調整ができていない場合がある。この場合には、再び複数のボルト51a,51bを緩めて、プラスチックハンマー等で叩くことにより、スピンドル33に対するアダプタ32の相対位置を調整する。
次に、再びボルト51a,51bを締め付ける。この時に、前回の増し締めしたボルト51bは、増し締めした後のトルクにて締め付ける。前回の中心軸72の傾きを調整したときのトルクと同一のトルクにて、ボルト51a,51bを締め付けることにより、中心軸72を回転軸71に平行にすることができる。このために、中心軸72の傾きの再調整が不要になる。または、中心軸72の傾きの再調整が必要であっても、軽微な中心軸72の傾きの調整にて芯出しを行うことができる。
このように、回転軸71に対する中心軸72の位置および傾きの調整を繰り返すことにより、テストバー2の中心軸72を回転軸71に一致させることができる。すなわち、ワーク1を取り付けた場合には、ワーク1の中心軸72を回転軸71に一致させることができる。
本実施の形態のワーク主軸頭にて、芯出しの調整を行った結果の例を表1に示す。この調整例では、ワークに対応する部分の直径が12mmであるテストバーを用いている。また、ゲージラインGLより120mm離れた測定点の振れ量を測定している。
本実施の形態の芯出し調整方法では、芯出しの調整を行う前には振れ量が6μmであったが、芯出しの調整を行うことにより、振れ量を2μmにすることができている。ゲージラインから直径の10倍の距離にて離れた測定点における振れ量を2μmにすることができており、優れた振れ精度にて芯出しの調整を行うことができる。ボルトを締め付けたときの中心軸の傾きの変化は微小であるために、微調整も容易に行うことができる。また、ボルトを締め付けたり緩めたりすることにより、何度でも調整のやり直しを実施することができる。
また、ワークの芯出しの調整を行うときに、複数のボルトを締め付けるトルクを記録することにより、傾きの再調整を容易に行うことができる。例えば、前述のように増し締め時のトルクを記録することにより、再調整の際に記録したトルクと同一の大きさのトルクにて締め付けることができる。なお、アダプタを取り外す際には、ボルトのトルクに加えてスピンドルに対するアダプタの位相(相対的な回転位置)も記録しておくことが好ましい。アダプタを再び取り付ける場合には、取り外す前の位相と同一の位相にすることにより、容易に芯出しの調整を行うことができる。
または、トルクの増加幅に対する振れ量の変化幅を記録することにより、増し締めする場合のトルクの増量を適切に設定することができる。この結果、短時間にて芯出しの調整を行うことができる。
図8に、本実施の形態における第2のワーク主軸頭の先端の部分の拡大概略断面図を示す。第2のワーク主軸頭においては、スピンドル33の端面の外周部に凸部33aが形成されている。凸部33aは、周方向に沿って延びる様に形成されている。つば部32bのスピンドル33と対向する端面は平面状に形成されている。凸部33aがつば部32bに接触することにより、凸部33aの内側に空洞部81が形成されている。空洞部81は、ボルト51が配置されている領域に形成されている。そして、ボルト51は、空洞部81を貫通している。
第2のワーク主軸頭においても、ボルト51を締め付けることにより、つば部32bが変形して芯出しの調整を行うことができる。スピンドル33の端部に空洞部81が形成されている構成によっても上記と同様の効果を得ることができる。このように、凸部は、つば部とスピンドルとが対向する領域の外周部において、つば部およびスピンドルのうち少なくとも一方に形成することができる。たとえば、つば部およびスピンドルの両方に、凸部を形成しても構わない。
図9に、本実施の形態における第3のワーク主軸頭の先端の部分の拡大概略断面図を示す。第3のワーク主軸頭においては、空洞部81がアダプタ32の内部に形成されている。空洞部81は、ボルト51が配置されている領域に形成されている。空洞部81は、周方向に延びている。ボルト51は、空洞部81を貫通している。この構成においても、ボルト51を締め付けることにより、つば部32bが変形して芯出しの調整を行うことができる。アダプタ32の内部に空洞部81が形成されている構成によっても上記と同様の効果を得ることができる。このように、空洞部構成手段は、凸部に限られず、締結部材が配置されている領域に周方向に延びる空洞部を形成する任意の構成を採用することができる。
図10に、本実施の形態における第4のワーク主軸頭の先端の部分の拡大概略断面図を示す。第4のワーク主軸頭のアダプタ32は、筒状部32dおよびつば部32bを含むアダプタ本体部32gと、スペーサ54とを含む。本実施の形態におけるスペーサ54は、スピンドル33とつば部32bとの間に配置される。スペーサ54は、平面形状が円環状に形成されている。
図11に、本実施の形態における第4のワーク主軸頭の概略正面図を示す。コレット31のワーク1を取り付ける側の端部には、切断部31bが形成されている。アダプタ32を締め付ける締結部材としては、第1の締結部材としてのボルト51が用いられている。更に、第2の締結部材としてのボルト52が用いられている。ボルト51およびボルト52は、交互に周方向に配置されている。本実施の形態においては、8個のボルト51が等間隔で配置されており、8個のボルト52が等間隔で配置されている。
図10は、図11のA線に沿って切断したときの概略断面図である。スペーサ54には、ボルト51の位置に対応するように、複数個のねじ穴54aが形成されている。つば部32bは、ボルト51によりスペーサ54に固定されている。
図12に、本実施の形態における第4のワーク主軸頭の先端の部分の他の拡大概略断面図を示す。図12は、図11におけるB線に沿って切断したときの断面図である。スペーサ54には、ボルト52が配置される位置に、スペーサ54を貫通する貫通穴54bが形成されている。ボルト52は、スペーサ54を貫通してスピンドル33に固定されている。このように、ボルト52は、スペーサ54をスピンドル33に固定している。アダプタ本体部32gは、スペーサ54を介してスピンドル33に固定されている。
図10および図12を参照して、アダプタ本体部32gのつば部32bの外周部には、空洞部構成手段として機能する凸部32cが形成されている。凸部32cは、つば部32bとスペーサ54とが対向する領域に形成されている。凸部32cの内側には、空洞部81が形成されている。空洞部81は、つば部32bの端部に形成されている。ボルト51は、空洞部81を貫通する領域に配置されている。このように、第4のワーク主軸頭の空洞部81は、アダプタ32の内部に形成されている。
第4のワーク主軸頭におけるワークの芯出しの調整方法では、始めにボルト52によりスペーサ54をスピンドル33に固定する工程を実施する。複数個のボルト52は、予め定められたトルクにて均等に締め付けることが好ましい。次に、ボルト51を締め付けることにより、スペーサ54につば部32bを固定する工程を実施する。この工程においても、複数個のボルト51は、予め定められたトルクにて均等に締め付けることが好ましい。
次に、第1のワーク主軸頭の芯出し方法と同様に、アダプタ32の予備的な芯出しを実施する。この工程では、ボルト52を用いる。テストバー2を装着していない状態にて、アダプタ本体部32gの傾斜部32aの内面にダイヤルゲージ61を接触させる。そして、アダプタ32を回転させた時の振れ量を測定する。アダプタ32の中心軸の位置がスピンドル33の回転軸の位置からずれている場合には、ボルト52を緩めて、アダプタ32の中心軸を移動させる工程を実施する。この後に、予め定められたトルクにて再びボルト52を均等に締め付ける。
次に、テストバー2を装着して所定の測定点における振れ量を測定する。測定した振れ量に基づいてテストバー2の傾きを調整する工程を実施する。この工程では、ボルト51を増し締めする。振れ量が最大になる位置と反対側に配置されているボルト51を増し締めすることにより、つば部32bが変形して、スピンドル33の回転軸71に対するテストバー2の中心軸72の傾きを調整することができる。
ボルト51は、つば部32bをスペーサ54に固定しているが、つば部32bをスピンドル33に固定していない。一方で、ボルト52は、スペーサ54をスピンドル33に固定している。このために、例えば、テストバー2の中心軸72がスピンドル33の回転軸71に対してほぼ平行であるが、位置がずれている場合には、ボルト52を緩める工程を実施する。次に、アダプタ32がずれている方向と反対側からプラスチックハンマー等で叩くことにより、スピンドル33に対するアダプタ32の相対位置を調整することができる。次に、複数のボルト52を予め定められたトルクにて均等に締め付ける。
第4のワーク主軸頭では、ワーク1の中心軸72の傾きがボルト51の締め付け時のトルクにより定まる。このために、ボルト52を緩めた後に再びボルト52を予め定められたトルクにて均等に締め付けると、回転軸71に対する中心軸72の傾きを維持することができる。中心軸72の位置のずれを調整後にボルト52を再び締め付けた場合にもテストバー2の中心軸72の傾きが維持される。このために、中心軸72の傾きの再調整が不要になる。または、中心軸72の傾きの再調整が必要であっても軽微な調整にて芯出しの調整を行うことができる。このように、第4のワーク主軸頭では、ワーク1の芯出しの調整を容易に行うことができる。
ところで、コレット31の大きさは、ワーク1の大きさに対応して選択される。ワーク1が所定の範囲を超えて大きくなったり小さくなったりした場合には、コレット31を支持するアダプタ32も交換する場合がある。
アダプタ32を交換する場合には、スピンドル33に対するアダプタ32の位相(相対的な回転位置)を記録する。次に、ボルト52を取り外すことにより、アダプタ本体部32gにスペーサ54が固定された状態で、アダプタ32をスピンドル33から取り外すことができる。このときに、スペーサ54に対するアダプタ本体部32gの傾きが維持される。
アダプタ32を取り外した後に、別のアダプタを取り付けて加工を実施する。この後に再びアダプタ32を使用する場合には、スピンドル33に対するアダプタ32の位相を、アダプタ32を取り外す前の位相と同一にする。次に、複数のボルト52を予め定められたトルクにて均等に締め付ける。この方法により、スピンドル33の回転軸に対してワーク1の中心軸をほぼ平行にすることができる。または、ワーク1の中心軸72の傾きの再調整が必要な場合でも、軽微な傾きの調整を実施すればよい。このために、ワーク1の芯出しの調整を容易に行うことができる。
このように、第4のワーク主軸頭では、ボルト51のトルクの調整によりスペーサ54に対するアダプタ本体部32gの傾きの調整を一度実施すれば、ボルト52を緩めたり、アダプタ32をスピンドル33から取り外したりしても、容易にワーク1の芯出しの調整を行うことができる。
スペーサ54としては、ボルト51,52を締め付けても変形量が小さいように、つば部32bよりも高い剛性を有する材質にて形成されることが好ましい。スペーサ54は、例えば、焼き入れを行うことにより、硬度を高めた金属にて形成することができる。
なお、ボルト51を締め付けることにより、スペーサ54が僅かに変形する場合がある。例えば、ボルト51を増し締めすると、ねじ穴54aの領域がつば部32bに向かって近づくように変形する場合がある。このような変形が生じても、前述と同様の方法により芯出しの調整を実施することができる。ボルト51の締め付け時のトルクを調整することによりワーク1の傾きを調整することができる。また、ボルト52のトルクおよびスピンドル33に対するアダプタ32の位相を記録しておくことにより、アダプタ32を取り外した後に、再び取り付ける場合にも容易に芯出しの再調整を行うことができる。
第4のワーク主軸頭において、空洞部構成手段としての凸部32cは、つば部32bの外周部に形成されているが、この形態に限られず、凸部は、つば部32bとスペーサ54とが対向する領域において、つば部32bおよびスペーサ54のうち少なくとも一方の外周部に形成することができる。たとえば、つば部の外周部およびスペーサの外周部の両方に凸部が形成されていても構わない。
ところで、第4のワーク主軸頭は、アダプタ本体部32gの筒状部32dの外面において、つば部32bが形成されている部分に沿って、切欠き部32eが形成されている。切欠き部32eは、周方向に延びている。切欠き部32eは、つば部32bの表面の延長上に形成されている。切欠き部32eが形成されることにより、ボルト51を締め付けた場合のつば部32bの変形を促進することができる。つば部32bを変形させるためのトルクを小さくすることができて、容易に芯出しの調整を行うことができる。
なお、切欠き部32eは、前述の第1のワーク主軸頭、第2のワーク主軸頭、および第3のワーク主軸頭にも形成することができる。更に、前述の空洞部の複数の形態は、適宜組み合わせることができる。すなわち、空洞部は、スピンドルの端部、つば部の端部、およびつば部の内部のうち少なくとも一つの領域に形成することができる。
本実施の形態においては、被保持物としてのワークを保持する保持装置を例示して説明したが、この形態に限られず、工具や回転砥石を保持する保持装置にも本発明を適用することができる。たとえば、本発明の保持装置をエンドミル等の工具を保持する主軸装置に配置することができる。または、工作機械が工具を交換する工具交換装置を備える場合には、工具交換装置に本発明の工具を保持する保持装置を採用することができる。または、ワークを交換するワーク交換装置を備える場合には、ワーク交換装置に本発明の保持装置を採用することができる。
被保持物を固定する固定部材としては、コレットに限られず、被保持物を固定可能な任意の部材を採用することができる。たとえば、被保持物がドリル等の工具の場合には、固定部材として工具と一体的に交換され、工具を保持する工具ホルダを採用することができる。
上記の実施の形態は、適宜組み合わせることができる。上述のそれぞれの図において、同一または相等する部分には同一の符号を付している。なお、上記の実施の形態は例示であり発明を限定するものではない。また、実施の形態においては、特許請求の範囲に示される実施の形態の変更が含まれている。