以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
まず、図1〜図4を参照して、一実施形態に係る静電気保護部品の構成を説明する。図1は一実施形態に係る静電気保護部品を示す斜視図、図2は図1の静電気保護部品が備える素体の構成を示す分解斜視図、図3は図1に示すIII−III線に沿った断面構成を示す図、図4は図2に示すIV−IV線に沿った断面構成を示す図である。
本実施形態に係る静電気保護部品1は、電子機器の回路基板に実装され、ESDから電子機器を保護する電子部品である。図1〜図4に示すように、静電気保護部品1は、略直方体形状を呈する素体3と、素体3の互いに対向する両端面3a,3bに形成される第一外部電極4A及び第二外部電極4Bと、素体3の内部に配置されたコイル20と、素体3の内部に配置されたESD吸収性能を有するESDサプレッサ10と、を備えている。以下、素体3の積層方向をZ方向(上下方向)、積層方向の端面及び断面における短手方向をX方向、長手方向をY方向とする。
第一外部電極4Aは、素体3の外表面である端面3aの全面を覆い且つその一部が当該端面3aと隣り合う四側面上に回り込むようにして形成されている。第二外部電極4Bは、素体3の外表面である端面3bの全面を覆い且つその一部が当該端面3bと隣り合う四側面上に回り込むようにして形成されている。
素体3は、複数の絶縁体層2が積層されて構成されている。各絶縁体層2は、略長方形状を有している。各絶縁体層2は、電気絶縁性を有する絶縁体であり、絶縁体グリーンシートの焼結体から構成される。実際の素体3では、各絶縁体層2は、その間の境界が視認できない程度に一体化されている。
素体3の底面3cは、図示しない実装基板の部品搭載面に対面する面である。この底面3cには、底面3cの長手方向(図のY方向)における両端部の位置に、一対の底面電極5A及び底面電極5Bが配置されている。底面電極5Aは第一外部電極4Aと接続され、底面電極5Bは第二外部電極4Bと接続される(図4参照)。
コイル20は、素体3の内部において絶縁体層2の積層方向に併置される第一導体21、第二導体22、第三導体23、第四導体24の端部同士が、各スルーホール導体31,32,33で接続されることにより構成されている。第一〜第四導体21〜24は、絶縁体層2の積層方向に、素体3の底面3cに近い方から、第一導体21、第二導体22、第三導体23及び第四導体24の順に併置されている。
スルーホール導体31は、第一導体21と第二導体22との間に位置し、第一導体21と第二導体22とを電気的に接続する。スルーホール導体32は、第二導体22と第三導体23との間に位置し、第二導体22と第三導体23とを電気的に接続する。スルーホール導体33は、第三導体23と第四導体24との間に位置し、第三導体23と第四導体24とを電気的に接続する。各スルーホール導体31〜33は、コイル20の一部として機能する。
第四導体24の端部E1は、素体3の端面3aまで引き出され当該端面3aに露出しており、第一外部電極4Aと接続される(図4参照)。第一導体21の端部E2は、素体3の端面3bまで引き出され当該端面3bに露出しており、第二外部電極4Bと接続される。第四導体24の端部E1はコイル20の一端に対応し、第一導体21の端部E2はコイル20の他端に対応する。よって、コイル20は、第一及び第二外部電極4A,4Bと電気的に接続される。コイル20の直流抵抗は第一及び第二外部電極4A,4Bにおいて測定することができ、その値は21Ω以下とされている。
ESDサプレッサ10は、積層方向において、コイル20よりも素体3の底面3cに近い位置に形成されている。ESDサプレッサ10は、同一の絶縁体層2に互いに離間して配置される第一放電電極6A及び第二放電電極6Bと、第一放電電極6Aと第二放電電極6Bとを接続する放電誘発部7と、放電誘発部7を覆う空洞部8と、を含んで構成されている。
第一放電電極6Aは、端部11Aと、絶縁体層2の長手方向(図のY方向)に延在する側面部12Aと、を有している。第一放電電極6Aの端部11Aは、スルーホール導体34により、接続導体30Aと接続される。接続導体30Aは、スルーホール導体35により、底面電極5Aと接続される。これにより、第一放電電極6Aは、底面電極5Aと電気的に接続される。第二放電電極6Bは、端部11Bと、絶縁体層2の長手方向に延在する側面部12Bと、を有している。第二放電電極6Bの端部11Bは、スルーホール導体36により、接続導体30Bと接続される。接続導体30Bは、スルーホール導体37により、底面電極5Bと接続される。これにより、第二放電電極6Bは、底面電極5Bと電気的に接続される。よって、第一放電電極6Aと第二放電電極6Bとを含んで構成されるESDサプレッサ10は、底面電極5A,5Bを通して第一及び第二外部電極4A,4Bと電気的に接続される。第一外部電極4Aと第二外部電極4Bとの間で、ESDサプレッサ10とコイル20とは並列接続される。
第一放電電極6Aの側面部12Aと第二放電電極6Bの側面部12Bとは、絶縁体層2の短手方向(図のX方向)に隣り合うように配置しており、互いに離間して対向している。これにより、第一放電電極6Aと第二放電電極6Bとの間にギャップ部GPが形成される(図3参照)。このような構成により、第一外部電極4A及び第二外部電極4Bに所定以上の電圧が印加されると、第一放電電極6Aと第二放電電極6Bとの間のギャップ部GPにおいて、放電が生じる。
放電誘発部7は、第一放電電極6A及び第二放電電極6Bと底面電極5A,5Bとの間に配置され、第一放電電極6A及び第二放電電極6Bと接する。放電誘発部7は、第一放電電極6Aと第二放電電極6Bとを接続しており、第一放電電極6Aと第二放電電極6Bとの間の放電を発生し易くする機能を有する。
空洞部8は、コイル20側から見て、第一及び第二放電電極6A,6Bの側面部12A,12Bと、放電誘発部7と、を覆うように形成されている(図3及び図4参照)。空洞部8は、放電時における第一放電電極6A、第二放電電極6B、絶縁体層2及び放電誘発部7の熱膨張を吸収する機能を有する。
次に、各構成要素の材料について詳細に説明する。
第一外部電極4A及び第二外部電極4Bは、Ag、Pd、Au、Pt、Cu、Ni、Al、Mo、又はWを含有する導体材料によって構成される。第一外部電極4A及び第二外部電極4Bは、合金として、Ag/Pd合金、Ag/Cu合金、Ag/Au合金、又はAg/Pt合金などを用いることができる。また、第一放電電極6A及び第二放電電極6Bは、Ag、Pd、Au、Pt、Cu、Ni、Al、Mo、又はWを含有する導体材料によって構成される。例えば、第一放電電極6A及び第二放電電極6Bは、合金として、Ag/Pd合金、Ag/Cu合金、Ag/Au合金、又はAg/Pt合金などを用いることができる。
絶縁体層2は、Fe2O3、NiO、CuO、ZnO、MgO、SiO2、TiO2、Mn2O3、SrO、CaO、BaO、SnO2、K2O、Al2O3、ZrO2、又はB2O3などの中の単独材料によって構成される。また、これらの二種類以上を混合させたセラミック材料によって構成される。また、ガラスが含有されていてもよい。絶縁体層2には、低温焼結を可能とするために酸化銅(CuO又はCu2O)が含有されていることが好ましい。
第一〜第四導体21〜24、各接続導体30A,30B、及び各スルーホール導体31〜37は、例えばAg又はPdなどの導体材料を含んでいる。第一〜第四導体21〜24、各接続導体30A,30B、及び各スルーホール導体31〜37は、上記導体材料を含む導電性ペーストの焼結体として構成される。
放電誘発部7は、Fe2O3、NiO、CuO、ZnO、MgO、SiO2、TiO2、Mn2O3、SrO、CaO、BaO、SnO2、K2O、Al2O3、ZrO2、又はB2O3などの中の単独材料によって構成される。また、これらの二種類以上を混合させた材料によって構成される。放電誘発部7には、Ag、Pd、Au、Pt、Ag/Pd合金、Ag/Cu合金、Ag/Au合金、又はAg/Pt合金などの金属粒子が含有されていることが好ましい。また、RuO2などの半導体粒子が含有されていることが好ましい。また、ガラス又は酸化錫(SnO又はSnO2)が含有されていてもよい。放電誘発部7に含有されている金属粒子の融点は、第一〜第四導体21〜24に含有されている導体材料の融点よりも高い。
次に、静電気保護部品1のESD吸収性能が、コイル20の直流抵抗の値により受ける影響について、図5〜図7を参照して説明する。
図5は、図1に示す静電気保護部品1のESD吸収性能がコイル20の直流抵抗の値により受ける影響を評価する方法を説明する模式図である。図5に示すように、チップ抵抗Rと、コイルLと、ESDサプレッサSと、を基板上に実装して評価を行う。チップ抵抗RとコイルLとは直列接続されている。チップ抵抗R及びコイルLとESDサプレッサSとは並列接続されている。図5に示された回路では、チップ抵抗RとコイルLとが静電気保護部品1のコイル20に相当し、ESDサプレッサSが同じく静電気保護部品1のESDサプレッサ10に相当する。すなわち、ESDサプレッサSは、ESDサプレッサ10と同様に、第一放電電極、第二放電電極、放電誘発部、及び空洞部を有している。
チップ抵抗RがコイルLに接続されていない状態で、コイルL自体の巻線による抵抗値は1Ωである。このコイルLに、抵抗値が1Ω、2Ω、5Ω、10Ω、20Ω、及び50Ωのチップ抵抗Rをそれぞれ直列接続することにより、チップ抵抗RとコイルLとの合成抵抗(直流抵抗Rdc)の値をそれぞれ1Ω、2Ω、3Ω、6Ω、11Ω、21Ω、及び51Ωと変化させる。なお、チップ抵抗RがコイルLに接続されていない状態はチップ抵抗Rの値が0Ωであることに相当し、このときの直流抵抗Rdcの値はコイルL自体の巻線による抵抗値に等しく1Ωである。このようにして直流抵抗Rdcの値を変化させることは、仮想的に本実施形態におけるコイル20の直流抵抗の値を1Ω、2Ω、3Ω、6Ω、11Ω、21Ω、及び51Ωと変化させることに対応する。
この回路上では、ESDサプレッサSは3.5kV以上の電圧において作動する。コイルLとESDサプレッサSとの間には、ESDサプレッサSが作動しない2kV又はESDサプレッサSが作動する8kVの充電電圧をそれぞれ印加させて、放電を発生させる。この放電電圧をオシロスコープで捕捉し、そのピークの電圧値をピーク電圧として計測する。また、ピーク電圧から30nsec後にかかる電圧値をクランプ電圧として計測する。
図6は2kVの充電電圧印加時におけるコイルLの直流抵抗Rdcの値に対する放電電圧の値を示すグラフ、図7は8kVの充電電圧印加時におけるコイルLの直流抵抗Rdcの値に対する放電電圧の値を示すグラフである。図6及び図7における横軸はコイルLの直流抵抗Rdcの値を示しており、グラフ上の四角点は直流抵抗Rdcの値がそれぞれ1Ω、2Ω、3Ω、6Ω、11Ω、21Ω、及び51Ωである場合の放電電圧の値をプロットしたものである。図6及び図7の(a)はピーク電圧の値を示すグラフ、図6及び図7の(b)はクランプ電圧の値を示している。
図6の(a)に示すように、2kVの充電電圧を印加した場合のピーク電圧の値は、コイルLの直流抵抗Rdcの値が大きくなるほど増加する傾向となっている。すなわち、コイルLの直流抵抗Rdcの値が大きくなるほどピーク電圧の抑制効果が低くなり、ピーク電圧が劣化することを示している。特に、コイルLの直流抵抗Rdcの値が21Ωを超えると、このピーク電圧の劣化は顕著となる。また、コイルLの直流抵抗Rdcの値が21Ω以下の領域では、直流抵抗Rdcの値が11Ω以下になると、ピーク電圧の値が急激に減少する傾向を示す。同様に、直流抵抗Rdcの値が2Ω以下になると、ピーク電圧の値が急激に減少する傾向を示す。すなわち、直流抵抗Rdcが21Ω以下の領域におけるピーク電圧の抑制効果は、直流抵抗Rdcの値が11Ω以下になる点を境に高まり、2Ω以下となる点を境に更に高まる。
図6の(b)に示すように、2kVの充電電圧を印加した場合のクランプ電圧の値も、ピーク電圧の値と同様、コイルLの直流抵抗Rdcの値が大きくなるほど増加する傾向となっている。すなわち、コイルLの直流抵抗Rdcの値が大きくなるほどクランプ電圧の抑制効果が低くなり、クランプ電圧が劣化することを示している。特に、直流抵抗Rdcの値が21Ωを超えると、このクランプ電圧の劣化は顕著となる。なお、一般的にクランプ電圧の値は100V以下にすることが要求されているが、直流抵抗Rdcの値が21Ω以下である場合のクランプ電圧の値は51V以下であり、100V以下という要求値を十分満たしているため好ましい。また、コイルLの直流抵抗Rdcの値が21Ω以下の領域では、直流抵抗Rdcの値が11Ω以下になると、クランプ電圧の値が急激に減少する傾向を示す。同様に、直流抵抗Rdcの値が2Ω以下になると、クランプ電圧が急激に減少する傾向を示す。すなわち、直流抵抗Rdcが21Ω以下の領域におけるクランプ電圧の抑制効果は、直流抵抗Rdcの値が11Ω以下になる点を境に高まり、2Ω以下となる点を境に更に高まる。
図7の(a)に示すように、8kVの充電電圧を印加した場合のピーク電圧の値は、コイルLの直流抵抗Rdcの値が大きくなるほど増加する傾向となっている。すなわち、コイルLの直流抵抗Rdcの値が大きくなるほどピーク電圧の抑制効果が低くなり、ピーク電圧が劣化することを示している。特に、コイルLの直流抵抗Rdcの値が21Ωを超えると、このピーク電圧の劣化は顕著となる。また、コイルLの直流抵抗の値が21Ω以下の領域では、直流抵抗Rdcの値が11Ωより大きいときにはピーク電圧の値がほぼ横ばいであるのに対し、直流抵抗Rdcの値が11Ω以下になるとピーク電圧の値が減少する傾向を示す。さらに、直流抵抗Rdcの値が2Ω以下になると、ピーク電圧は急激に減少する傾向を示す。すなわち、直流抵抗Rdcが21Ω以下の領域におけるピーク電圧の抑制効果は、直流抵抗Rdcの値が11Ω以下になる点を境に高まり、2Ω以下となる点を境に更に高まる。
図7の(b)に示すように、8kVの充電電圧を印加した場合のクランプ電圧の値も、ピーク電圧の値と同様、コイルLの直流抵抗Rdcの値が大きくなるほど増加する傾向となっている。すなわち、コイルLの直流抵抗Rdcの値が大きくなるほどクランプ電圧の抑制効果が低くなり、クランプ電圧が劣化することを示している。特に、コイルLの直流抵抗Rdcの値が21Ωを超えると、このクランプ電圧の劣化は顕著となる。なお、コイルLの直流抵抗Rdcの値が21Ω以下である場合のクランプ電圧の値は45.2V以下であり、上述の100V以下という要求値を十分満たしているため好ましい。また、コイルLの直流抵抗Rdcの値が21Ω以下の領域では、直流抵抗Rdcの値が11Ωより大きいときにはクランプ電圧の値がほぼ横ばいであるのに対し、直流抵抗Rdcの値が11Ω以下になるとクランプ電圧の値が減少する傾向を示す。さらに、直流抵抗Rdcの値が2Ω以下になると、クランプ電圧は急激に減少する傾向を示す。すなわち、直流抵抗Rdcが21Ω以下の領域におけるクランプ電圧の抑制効果は、直流抵抗Rdcの値が11Ω以下になる点を境に高まり、2Ω以下となる点を境に更に高まる。
以上より、コイルLが接続されたESDサプレッサSによるピーク電圧及びクランプ電圧の抑制効果は、コイルLの直流抵抗Rdcの値を小さくすればするほど高まり、特に、21Ω以下にすると効果的に高めることができる。また、11Ω以下にするとより効果的であり、2Ω以下にすると更に効果的である。
ここで、上述のように、直流抵抗Rdcの値を変化させることは、本実施形態におけるコイル20の直流抵抗の値を変化させることに対応する。したがって、静電気保護部品1のESD吸収性能は、コイル20の直流抵抗の値を21Ω以下にすることにより効果的に向上させることができる。また、11Ω以下にするとより効果的であり、2Ω以下にすると更に効果的である。
次に、図8を参照して静電気保護部品1の製造方法の一例について説明する。図8は、図1に示す静電気保護部品1の製造方法の一例を示すフロー図である。ただし、製造方法は特に限定されず、各工程の順番を変更してもよく、工程内の具体的手法を変更してもよく、他の工程によって製造してもよい。
まず、絶縁体層2を構成する材料のスラリーを調合し(S1)、絶縁体層2用のシートを形成する(S2)。具体的には、酸化銅(CuO)を含む所定量の誘電体粉末と、有機溶剤及び有機バインダを含む有機ビヒクルと、を混合し、絶縁体層2用のスラリーを調合する。誘電体粉末には、Mg、Cu、Zn、Si、又はSrの酸化物(他の誘電体材料でもよい)を主成分として含む誘電体材料を用いることができる。その後、ドクターブレード法などによって、PETフィルム上にスラリーを塗布し、厚さ20μm程度のグリーンシートを形成する。なお、各絶縁体層2におけるスルーホール導体31〜37の形成予定位置には、レーザ加工によって貫通孔が形成されている。
ステップS2において絶縁体層2用のシートを形成した後、当該シートの所定の位置に、放電誘発材料スラリー、導体ペースト、及び溶剤(空洞用ラッカー)をそれぞれ印刷する(S3)。放電誘発材料スラリーの印刷は、絶縁体層2用のシートに、焼成後の放電誘発部7を形成するための放電誘発材料スラリーを調合して塗布することにより行う(S3A)。具体的には、所定量に秤量した酸化錫、絶縁体、及び導体の各粉末と、有機溶剤及び有機バインダを含む有機ビヒクルと、を混合し、放電誘発材料スラリーを調合する。例えば、酸化錫として工業用のSnO2を使用でき、絶縁体として誘電体粉末を使用できる。誘電体粉末には、Mg、Cu、Zn、Si、又はSrの酸化物(他の誘電体材料でもよい)を主成分として含む誘電体材料を用いることができる。導体粉末として、Ag/Pd粉を用いることができる(Ag、Pd、Au、Pt、又はその混合物若しくは化合物などでもよい)。酸化錫の粒子とAg/Pd合金の金属粒子が混在する状態となるように、各粉末を十分に混合する。
導体ペーストの印刷は、絶縁体層2用のシートに、導体パターンを形成するための導体ペーストをスクリーン印刷などによって塗布することにより行う(S3B)。導体パターンは、第一〜第四導体21〜24、第一及び第二放電電極6A,6B、各接続導体30A,30B、及び各底面電極5A,5Bである。各導体パターンは、スクリーン印刷した後、乾燥することによって形成される。スルーホール導体31〜37に対応する貫通孔には、各導体パターンの形成の際に導体ペーストが充填される。
空洞用ラッカーの印刷は、ステップS3Aにおいて印刷された放電誘発材料スラリーと、ステップS3Bにおいて印刷された第一及び第二放電電極6A,6Bの側面部12A,12Bを形成するための導体ペーストと、を覆うように、焼成後に空洞部8を形成するための空洞用ラッカーを塗布することにより行う(S3C)。
ステップS3における印刷後、放電誘発材料スラリー、導体ペースト、及び空洞用ラッカーが印刷された絶縁体層2用のシートを、順次積層させ(S4)、プレスし(S5)、個々の静電気保護部品1の大きさになるように積層体を切断する(S6)。ステップS4における積層の順序は、焼成後に形成される各構成の積層方向における順序が、回路基板に対する実装面である素体3の底面3cに近い方から順に、各底面電極5A,5B、各接続導体30A,30B、放電誘発部7、第一及び第二放電電極6A,6B、空洞部8、及び第一〜第四導体21〜24となるように編集する。
続いて、ステップS8において切断されて出来た各素体のバレル研磨を行う(S7)。これにより、角部や稜線が丸められた素体3を得た上で、当該素体3を所定の条件(例えば、大気中で850〜950℃で2時間)焼成する(S8)。このとき、空洞用ラッカーが素体3の内部で消滅することによって、第一及び第二放電電極6A,6Bの側面部12A,12Bと放電誘発部7とを覆う空洞部8が形成される。また、第一放電電極6A及び第二放電電極6B、放電誘発部7、及び空洞部8を含んで構成されるESDサプレッサ10が形成される。ここで、ESDサプレッサ10が有する容量や電圧などの特性について測定を行う(S9)。このとき、底面電極5A,5Bには第一及び第二放電電極6A,6Bだけが電気的に接続されるので、底面電極5A,5BにおいてESDサプレッサ10単独の特性を測定することができる。その後、素体3に第一及び第二外部電極4A,4B用の導体ペーストを塗布し(S10)、所定条件(例えば、大気中で600〜800℃で2時間)にて熱処理を行い、第一及び第二外部電極4A,4Bを焼き付ける(S11)。
続いて、静電気保護部品1についての特性検査を行う(S12)。特に、コイル20が有する特性について測定を行う。第一及び第二外部電極4A,4Bにはコイル20の両端部E1,E2が接続されるので、第一及び第二外部電極4A,4Bにおいてコイル20の特性測定を行うことができる。その後、第一及び第二外部電極4A,4Bの表面にめっきを施す(S13)。めっきは、電解めっきが好ましく、例えば、Ni/Sn、Cu/Ni/Sn、Ni/Pd/Au、Ni/Pd/Ag、Ni/Agなどを用いることができる。以上によって、静電気保護部品1が完成する。
以上のように、本実施形態の静電気保護部品1においては、第一外部電極4Aと第二外部電極4Bとの間で、ESDサプレッサ10とコイル20とは並列接続され、コイル20の直流抵抗の値は21Ω以下である。これにより、ピーク電圧及びクランプ電圧の抑制効果を効果的に高めることができ、ESD吸収性能を効果的に向上させることが可能となる。このESD吸収性能は、コイル20の直流抵抗の値を11Ω以下にするとより効果的であり、2Ωにすると更に効果的である。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。
例えば、第一放電電極6A及び第二放電電極6Bの構成は、図2に示す構成に限定されず、長さや幅、ギャップ部GPの大きさを適宜変更してもよく、同一の絶縁体層2内に配置されていなくてもよい。
また、放電誘発部7や空洞部8の配置は図2〜図4に示すものに限定されない。例えば放電誘発部7は、ESDサプレッサ10と底面電極5A,5Bとの間に配置されていなくてもよく、第一放電電極6A及び第二放電電極6Bと接続する限り、ESDサプレッサ10とコイル20との間に配置されていてもよい。空洞部8は、ESDサプレッサ10と放電誘発部7との間に配置されていてもよく、コイル20側から見てESDサプレッサ10や放電誘発部7を覆っていなくてもよい。
また、図8に示す製造工程において、ステップS11におけるESDサプレッサ10の測定及びステップS14におけるコイル20の測定は、省略してもよい。