以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る引き戸2の取付構造を適用した収納装置1を示すものである。この収納装置1は、頂板11A、底板11B、左右の側板11C及び背板(図示せず)を備えた板金製の筐体11に、3枚の引き戸2〜2を設けたものである。引き戸2〜2は、前後方向にずらして配置されており、左右に引き違い可能とされており、移動させることで、筐体11内部の収納空間を開放可能としている。
ここで、本実施形態において、前・後・左・右といった方向を示す語を用いて説明を行う場合には、収納装置1を正面より見た際を基準として行うこととする。また、左右方向を幅方向と称することもある。
引き戸2〜2は、筐体11の前面で左右方向に滑らかに動作が可能となるよう、図2及び図3に示すような取付構造を用いて筐体11の内部で支持されている。
すなわち、引き戸2の上部を支持するために、図2に示すように、筐体11の頂板11Aの内部に下向き凹状のレール取付部12を設け、その内部に上レール部材14をねじによって取り付けている。上レール部材14は樹脂製のもので、下面に3本の平行な上レール14aを形成されている。頂板11Aは前面を下方に折り曲げて、下縁が上レール部材14と略面一となるレール隠し11A1が形成されており、上レール部材14は正面より見て隠れるようにしている。
引き戸2〜2は、筐体11に設置した際に上端が上レール部材14より下方にあり、上レール部材14との間で隙間が形成される。そして、上端に設けられている後述する上滑動手段としてのスライドユニット3より上方に延びる滑動部としての突出片65が、上記上レール14aの内部に挿入されることで係り合うようになっている。
また、引き戸2の下部を支持するために、図3に示すように、筐体11の底板11Bの内部に上向き凹状のレール取付部13を設け、その内部に下レール部材15を取り付けている。下レール部材15も樹脂製のもので、上面に3本の平行な下レール15aを形成されている。底板11Bは前面を上方に折り曲げて、上縁が下レール部材15と略面一となるレール隠し11B1が形成されており、下レール部材15は正面より見て隠れるようにしている。
引き戸2〜2は、筐体11に設置した際に下端が下レール部材15より上方にあり、上レール部材15との間で隙間が形成される。そして、下端に設けられている後述する下滑動手段としてのローラユニット4〜4を構成する下滑動部材としてのローラ4aが、その一部において下レール部材15の上面15bに当接するとともに、他の一部において下レール15aの内部に挿入されることで係り合うようになっている。
さらに、図1に戻って、正面より見て左側の引き戸2には左上方に把手21が設けられるとともに、右側の引き戸には右上方に把手21が設けられており、これらを操作することで、3枚の引き戸2〜2が連動して移動して開閉動作が可能となっている。そのため、向かって右側の引き戸2の裏面には回動支持部25が設けられるとともに、中央の引き戸2の裏面には縦方向に延在するレール部材23Aが設けられ、左側の引き戸2の裏面にも縦方向に延在するレール部材23Bが設けられている。さらに、一端を上記回動支持部25によって回動自在に支持されるとともに、他端においてローラ26を介して上記レール部材23Bにより回動及び移動自在に支持され、長手方向略中心においてもローラ26を介して上記レール部材23Aにより回動及び移動自在に支持されたリンクバー24が設けられている。このようなリンクバー24、ローラ26、レール部材23A,23Bは、引き戸2〜2を連動させる連動機構を構成している。すなわち、リンクバー24によって、全ての引き戸2〜2が連結されることで、左右いずれの引き戸2を移動させても、全ての引き戸2〜2が互いに重合する開成状態とその重合がほぼ解消される閉止状態との間で連動しつつ、協働して開閉動作するようになっている。
加えて、左側の把手21の下方には錠前22が設けられるとともに、この錠前22と連動して動作する施解錠機構27を引き戸2の裏面側に備えている。施解錠機構27は、錠前の操作と連動してリンクバー24の動作を規制することで施錠状態とするとともに、この規制を解くことで解錠状態とすることが可能となっている。
図4に示すように、引き戸2に対して、上滑動手段としてのスライドユニット3が取り付けられるようになっている。スライドユニット3は、スライダ受け5と、上滑動部材としてのスライダ本体6とから構成されている。
スライドユニット3を取り付ける引き戸2は、板金を折り曲げて構成したものであり、その上端は、前板81より上板82及び後板83を90°ずつ折り曲げて、下側を開口した略コ字状に形成している。上板82には、スライドユニット3の突出片65に対応する矩形状の開口82aが形成されている。また、後板83に開口82aを中心として、一対の矩形状の開口83a,83aを形成し、それらの間において下縁83cに矩形状の切欠き83bを形成している。
スライドユニット3を構成するスライダ受け5は、図4及び図7に示す形状に樹脂一体成形によって形成している。なお、図7(a)はスライダ受け5を後面側から見た際を基準として表した正面図であり、図7(b),(c)はそれぞれ図7(a)において記載A−A断面とB−B断面における矢視図を示している。
スライダ受け5は、上面53と、起立壁としての後面51及び左右の側面52,52との4面からなる直方体形状としており、内部を後述するスライダ本体6を保持するための空間としている。上面53には、引き戸2の上板82における開口82aと対応する開口53aを、前方を開放された矩形状として形成している。
また、後面51には、引き戸2の後板83における一対の開口83a,83aと対応する位置に、弾性片54,54をそれぞれ形成し、各弾性片54,54には後方に向けて突出する爪部54a,54aをそれぞれ設けている。弾性片54は、周囲をU字状に開口されることで、上部を基端として下方に向けて延在する片持ち状となっている。そのため、上部を起点にして先端を前後方向に弾性変位可能であり、これに伴って爪部54aを内部方向に引き込むことが可能となっている。
さらに、弾性片54,54間の位置において、後面51には後方に向かって突出する直方体状の突出部51aが形成されており、引き戸2の後板83における切欠き83bと対応するようになっている。
そして、突出部51aの下方においては、スライダ受け側第1係合部としての横長矩形状の第1開口55が形成されている。また、その第1開口55の下方には、スライダ受け側第2係合部としての第2開口56がT字型の形状で設けられている。第1開口55の下側縁部、すなわち第1開口55と第2開口56との境界を構成する部位は、板バネとして形成されたバネ部55aとなっており、上下方向に弾性を有するようにされている。すなわち、こうすることで、スライダ受け側第1係合部としての第1開口55を弾性変形可能に構成している。
バネ部55aは、左右の端部をそれぞれ後面11によって支持され、樹脂による弾性を利用した両持ちバネとなっており、上下方向に薄く形成されるとともに、後面51よりも後方に飛び出すように形成することで、前後方向の寸法を後面51の厚みよりも大きくなるようにしている。こうすることで、専ら上下方向にのみ弾性を付与して、左右及び前後方向、さらには捻れ方向に対しては剛性を有するようにしている。
また、第2開口56はT字状に形成されているため、上部の段差壁56a,56aを備えており、大きくバネ部55aが下方に変位した際には、この段差壁56aが当接することで、過大な変位を抑制するようにしている。
さらには、後面51の下方の左右両端部には、上下方向に延在するとともに前後方向に開放された溝部51bが形成されている。
スライダ本体6は、図4及び図8に示す形状に樹脂一体成形によって形成している。なお、図8(a)はスライダ本体6を後面側から見た際を基準として表した正面図であり、図8(b),(c)はそれぞれ図8(a)において記載したC−C断面とD−D断面における矢視図を示している。
スライダ本体6は、起立壁としての後面61及び左右の側面62,62に加えて、上面63と、底面64との5面からなる直方体形状としており、内部にも適宜補強のためのリブが形成されている。また、上面63には上方に向かって延在する滑動部としての板状の突出片65を形成している。
さらには、後面61の幅方向中央には上下方向に延在する弾性片66が設けられている。弾性片66の周囲は、内部にまで連通する略U字状の開口とされており、上部の基端によって後面61と接続された片持ち状になっている。そして弾性片66の基端側には、第1開口55又は第2開口56と係合するための突出部としての爪部66aが、後方に向けて突出するように設けられている。また、弾性片66下方の先端には後方に突出した平板状の操作部66bが設けられている。操作部66bを前方に押し込むことで、爪部66aを後面61よりも内側に引き込むことが可能となっている。こうした操作を容易にするため、後面61の下部の一部領域は段差部61bとして、前方に変位して形成されており、操作部66bを押し込む可能な変位量が増大させるようにしている。
また、後面61の左右両隅部には、上記溝部51b,51bに対応する位置に、上下方向に延在するとともに後方に突出した凸状ガイド部61a,61aが形成されている。
上記のように構成したスライダ受け5及びスライダ本体6は、引き戸2に対して、以下のように取り付ける。
まず、図4のように各部材が分離した状態より、図5に示すように、引き戸2に対して、スライダ受け5を取り付ける。引き戸2の前板81と後板83の間にスライダ受け5を挿入して、引き戸2の上板82の下面とスライダ受けの上面53とが近接又は当接する位置にする。この際、弾性片54の爪部54aは、上方がテーパ状に形成されていることから、後板83の内面に倣って内側に押し込まれ、挿入に当たって障害となることはない。適切な位置まで挿入がなされると、爪部54aは開口83aより飛び出して引っ掛かるようにして係合し、上下方向の位置決めがなされる。また、同時に、引き戸2の切欠き83bに突出部51aが嵌め込まれることで、左右方向への位置決めもなされる。さらには、引き戸2の前板81と後板83の間隔は、スライダ受け5の前後方向の厚みと略等しくしていることから、スライダ受け5は前後方向にしっかりと位置決めがなされる。
このように引き戸2に対してスライダ受け5を取り付けた状態では、後板83の下縁83cより下方に、スライダ受け5の下側略半分が露出しており、スライダ受け側第1係合部としての第1開口55及びスライダ受け側第2係合部としての第2開口55も露出した状態となっている。
この状態より、図6(a)に示すようにスライダ受け5の内部に、スライダ本体6を挿入して取り付ける。この図6(a)の状態では、スライダ受け5の内部にスライダ本体6のうち直方体状を形成する部位の約半分が挿入されるのみで、突出片65もスライダ本体6の内部に没して引き戸2の上板82よりも上方に突出しない、いわゆる待機位置となっている。スライダ本体6は、スライダ受け5の後面51の内側と、引き戸2の前板81とによって前後方向に位置規制され、スライダ受け5の左右の側面52,52の内側によって左右方向に位置規制されるように、寸法を調整している。
スライダ受け5の内部へのスライダ本体6の挿入に当たっては、弾性片66の爪部66aの上方がテーパ状に形成されていることから、後面51の内側に倣って内部に押し込まれ、挿入に当たって障害となることはない。所定の位置まで挿入がなされると、爪部54aは第2開口56より飛び出して引っ掛かるようにして係合し、上下方向の位置決めがなされる。この状態より、操作部66bを押し込み、爪部54aを内部に引き込むと、係合が解除され、スライダ本体6をスライダ受け5より取り外すことも可能である。
上記のようにスライダ本体6にスライダ受け5を待機位置として取り付けた状態では、スライドユニット3と引き戸2とは、特別な操作を行わない限り分離が困難な程度に一体化がなされる。そのため、この状態で引き戸2を運搬しても、スライドユニット3が外れて落下するなどの心配が不要となり、非常に取り扱いが容易になる。
さらに、このスライドユニット3は、スライダ本体6をスライダ受け5に対して下方より押し込むことで、図6(b)に示すように、突出片65が引き戸2の上板82より上方に突出した突出位置とすることが可能となっている。
スライダ本体6を押し上げる際には、弾性片66の爪部66aがバネ部55aに当接しつつ、これに倣って内部に押し込まれるため、軽い力で待機位置から突出位置への変化が可能となっている。突出位置においては、爪部66aは第2開口56に代わって、第1開口55より飛び出して引っ掛かるようにして係合する。この際には、スライダ受け5の内部にスライダ本体6のうち直方体状を形成する部位のほとんどが、挿入された状態となる。但し、スライダ受け5の後面51の下方より操作部66bが露出するようにしており、操作部66bを押し込んで、爪部66aと第1開口55との係合を解除することが可能となっている。
また、上記の突出位置とした状態では、スライダ受け5に形成した溝部51b,51bに、スライダ本体6に形成した凸状ガイド部61a,61aが嵌め込まれ、上下方向への移動を可能としつつ左右方向への位置を規制可能として、上下以外の方向によりしっかりと保持することが可能となっている。
さらに、上述したように、第1開口55の下側縁部はバネ部55aとして形成しているため、図9(a)及び(b)に示すように爪部66aと第1開口55の係合状態を保ったまま、スライダ受け5に対してスライダ本体6の弾性変位が可能となっている。図9(a)に示す無負荷状態において、スライダ受け5の上板53からの突出片65の突出量をL0としたとき、図9(b)に示すように突出片65は、上方からの荷重によって、バネ部55aの中央が下方に湾曲するように弾性変形して突出量をL1にまで小さくすることができる。これ以上の変形は、上述したように、バネ部55aが第2開口56の上端56aと当接することで防止するようになっている。突出量の変化L0−L1は、約2mm程度となるように設定しており、この範囲で引き戸2の面内方向の傾きによる摩擦抵抗の増大を軽減するとともに、振動等による上下方向への移動に伴う衝撃の吸収を行うことが可能となっている。
上記のような構成を生かして、引き戸2に取り付けたスライドユニット3を待機位置とした状態で、筐体11まで運搬して、上レール14aとの位置合わせを行った後に、スライダ本体6を押し上げるのみのワンアクションで、出片65を上レール14a内に突出させて係り合わせ、取り付けを行うことが可能となっている。また、取り付け時に、けんどん方式のように、引き戸2を持ち上げて位置調整する必要が無いため、少ない労力で簡単に取り付け作業を行うことができる。このように引き戸2の取り付けを行うことで、引き戸2により筐体11の内部の収納空間を開閉することが可能となる。また、弾性片66の操作部66bを押し込むことで、簡単に係合を解除して突出片65を待機位置にまで没して、筐体より引き戸2を取り外すことも可能となっている。
また、引き戸2を筐体11に取り付けた状態において、開閉動作に際して引き戸2が面内において傾いて、スライダ本体6における突出片65の上端が上レール14a内の上面14bに当接しても、上述したようにバネ部55aの作用によって突出片65が下方に沈み込むことで、当接箇所に生じる接触圧力を軽減して摩擦の増大を抑制することができる。そのため、過度に摩擦抵抗を増大させることがなく、引き戸2の開閉を円滑に行うことが可能となっている。また、突出片65の変形や破損の防止にもなるとともに、周囲の引き戸2における取り付け箇所の変形も抑制して、スライダユニット3全体の外れ防止にも役立つことになる。
また、引き戸2が傾いた際にも、突出片65の沈み込み量がL0−L1に限られていることで、突出片65と上レール14aとが係り合う状態を維持することができ、引き戸2の外れ防止にも寄与している。
また、引き戸2を筐体11に取り付けた状態で運搬した場合や、設置後に地震が発生した場合には、振動によって引き戸2に対して上下方向の変位が生じ、突出片65の上端が上レール14a内の上面14bに当接することも考えられる。こうした場合には、バネ部55aによる弾性によって衝撃を吸収して、突出片65を含む各部の損傷や変形を抑制することも可能となる。
上記のような、引き戸2の面内での傾きや、振動による上下方向への変位は、引き戸2の重量がある場合には、より顕著に表れる傾向にある。さらには、引き戸2の把手21を重心位置よりも上方または下方に大きく離間させて配置した場合や、リンクバー24によって複数の引き戸2を連結した場合には、回転モーメントが生じやすく、より傾きが生じやすくなる傾向にある。しかしながら、本実施形態の取り付け構造は、こうした傾きや上下の変位に対して強い構造となっているため、動作安定性を備えるとともに、耐久性も備えるものとなっている。
本実施形態に係る引き戸2の取付構造においては、図10に示すように、引き戸2の下方に対しては、下滑動手段としてのローラユニット4を取り付けられるようになっている。ローラユニット4は、ローラ4aとこれを回動自在に支持するホルダ7とから構成されており、このホルダ7もホルダ本体7aと、蓋部材としてのホルダ蓋7b(図13参照)の、2つの構成部材より構成されている。
スライドユニット4を取り付ける引き戸2の下端は、図10及び図12に示すように、板金の折り曲げにより構成しており、前板81より底板84及び後板85を90°ずつ折り曲げて、上側を開口した略コ字状に形成している。なお、図12(a)は引き戸2の下端近傍を後方より見た場合を基準として表した正面図を示し、図12(b)は下方より見た底面図を示す。さらに、図12(c)は図12(a)において記載したE−E断面の矢視図を示している。
底板84には、ローラユニット4を下方より挿入するための略矩形状の開口84aが形成されている。また、底板84における、開口84aの左右の前板81近傍の位置には、幅方向に延びる矩形状の第1の切欠き84b,84bをそれぞれ設けている。そのため、引き戸2を下方より見た場合には、開口84aと2つの第1の切欠き84b,84bとが繋がり逆T字状の形状となっている。また、開口84aと連続するように、後板83の下方にも略矩形状の第2の切欠き85aが形成されており、上下方向に段差が形成されている。
下滑動手段としてのローラユニット4は、図13に示すように、ホルダ本体7を構成するホルダ本体7aと、ホルダ蓋7bとによって、滑動部材としてのローラ4aを挟み込むようにして一体化したものである。
ローラ4aは下レール部材15の上面15b(図3参照)に当接するための小径部4a1と、下レール15a内に挿入される大径部4a2とを同軸上に備え、これらの軸心に軸孔4a3を備えている。
ホルダ本体7aは、図13〜図15に示す形状に樹脂一体成形によって形成している。なお、図14(a)はホルダ本体7aを後方より見た場合を基準として表した正面図を示し、図14(b)は逆方向より見た背面図を示す。さらに、図15(a)はホルダ本体7aの側面図を示し、図15(b)は図14(a)において記載したF−F断面の矢視図を示している。
ホルダ本体7aは、後面71と、左右の側面72,72と、上面73の4面からなる直方体形状としており、内部を上記ローラ4aを保持するための空間としている。
後面71の略中心より内側に向かっては、内部に丸穴7a2を形成された円筒状の軸部7a1が延在する。この軸部7a1は、ローラ4aの軸孔4a3よりも僅かに小径に形成されており、この外周にローラ4aの軸孔4a3を嵌め込むことで、ローラ4a3を回転自在に支持することが可能となっている。また、上面73と、各側面72,72との間で形成される角部は厚みを大きく形成されており、この角部の厚み内に前方に向けて開口する丸穴7a3,7a3をそれぞれ形成している。これらの丸穴7a3,7a3と、上記の丸穴7a2とは、ホルダ蓋7bを取り付けるために利用することができる。さらに、上面73と連続して矩形状に張り出した張り出し部73aが形成されている。
また、後面71の上縁より少し下がった部分であり、左右に離間した位置に一対の弾性片75,75を形成し、各弾性片75,75には後方に向けて突出する爪部75a,75aをそれぞれ設けている。弾性片75は、周囲をU字状に開口されることで、上部を基端として下方に向けて延在する片持ち状となっている。そのため、上部を起点にして先端を前後方向に弾性変位可能であり、これに伴って爪部75aを内部方向に引き込むことが可能となっている。
各側面72,72の下縁、すなわちホルダ7として構成した際の底部近傍には、外側方向に張り出した鍔部76,76が形成されており、ホルダ7を引き戸2に取り付けるための位置決めに用いることができる。また、鍔部76,76の前方には、これと連続して上方に向けて持ち上がったブロック状の第1突出部77,77が形成されている。第1突出部77,77は、側面72、72の前方側端面にまで回り込むとともに、前方に向けても張り出した形状となっており、厚みを大きくして強度を高く形成されている。第1突出部77は、引き戸2に形成された第1の切欠き84bに対応する形状となっており、緊密に嵌め込むことが可能となっている。
また、後面71の下縁中心には、幅方向に延びる直方体状の第2突出部78が形成されている。第2突出部78は、引き戸2に形成された第2の切欠き85aに対応する形状となっている。
ホルダ本体7aとともに、ホルダ7を構成するホルダ蓋7bは、図13及び図16に示す形状に樹脂一体成形によって形成している。なお、図16(a)はホルダ蓋7bを前方より見た場合を基準として表した正面図を示し、図16(b)は逆方向より見た背面図を示し、図16(c)は側面図を示している。
ホルダ蓋7bは、ホルダ7を構成する際に前面74として機能するものであり、その前面74における幅方向中心の下方には、円柱状の軸部7b1が後方に向けて突出するように形成されている。また、前面74の上部両隅近傍にも円柱状の軸部7b2,7b2が後方に向けて突出するようにそれぞれ形成されている。軸部7b2,7b2は、軸部7b1よりも小径で、かつ長さも小さいものとされている。
また、前面74の幅方向中心の上部には、縦方向に延びるリブ7b3が形成されている。さらには、リブ7b3の上方には、上記張り出し部73aに対応する、幅方向に延びる矩形状の切欠き7b4が形成されている。また、前面74の下方の両隅には、第1突出部77,77に対応する、矩形状の切欠き7b5,7b5がそれぞれ形成されている。
このように各部品4a,7a,7bを形成しておき、次のようにしてローラユニット4として組立を行う。図13に示すように、ローラ4aを挟んで、両側よりホルダ本体7aとホルダ蓋7bの取り付けを行う。
具体的には、ホルダ本体7aの軸部7a1の外周に、ローラ4aの軸孔4a3を嵌め合わせるようにして、ホルダ本体7aの内部にローラ4aを収容する。そして、軸部7a1の中心の丸穴7a2の内部に軸部7b1を嵌め込むようにして、ホルダ蓋7bをホルダ本体7aに取り付ける。これと同時に、2つの軸部7b2,7b2を丸穴7a3,7a3の内部に嵌め込むことで位置合わせを行う。これらの丸穴7a2,7a3に対しては、軸部7b1,7b2はそれぞれ緊密に嵌め込まれるようにしているために、前後方向に圧力を掛けつつ嵌め込むことで、ホルダ本体7aとホルダ蓋7bとは容易に分解が生じない程度の一体化をなすことができる。なお、一体化を行うために、接着等の別の手段を用いることも可能である。
また、上記の嵌め込みとともに、切欠き7b5は第1突出部77に、切欠き7b4は張り出し部73aと対応して嵌め込まれ、より位置決め精度を増すとともに、簡単に分解が生じないよう強度維持に寄与するようになっている。
このようにローラユニット4を組み立てた後には、図10に示すようにホルダ本体7aとホルダ蓋7bによって構成されるホルダ7が、下方を開放された内部空間内にローラ4aを回動自在に保持した状態となる。この状態においては、ローラ4aの大径部4a2とともに小径部4a1の一部も、ホルダ7の下方より表れた状態となる。
このローラユニット4の引き戸2への取り付けは、図10の状態を経て、図11の状態となるように行われる。以下、具体的な取り付け手順を、図10を参照しつつ図11を用いて説明する。
取り付けは、引き戸2の開口84aに対して下方からローラユニット4を挿入することによって行う。挿入を行った後には、引き戸2を構成する前板81,底板84,後板85によって形成される上向きに開放された略コ字状の空間内でホルダ7を位置規制することで、ローラユニット4を固定することが可能となっている。
開口84aはローラユニット4のホルダ7と略同一の形状となっており、内部で適切にホルダ7の位置及び方向を規制することが可能となっている。組立においては、弾性片75の爪部75aは、上方がテーパ状に形成されていることから、開口84aより後板85の内面に倣って内側に押し込まれ、挿入に当たって障害となることはない。適切な位置まで挿入がなされると、爪部75aは後板85の上縁85bより飛び出して引っ掛かるようにして係合し、上下方向の位置決めがなされる。
また、第2の切欠き85aの内部には第2突出部78が収まり、幅方向への位置規制を行うとともに、第2突出部78の上面が第2の切欠き85aの上縁となる端面と当接する。このようにすることで、引き戸2に生じる下方向への主な荷重を後板85の面内方向で受けることが可能となっている。
上下方向への位置決めは、鍔部76と底板84とが当接又は近接することでも行うことができるようにしている。但し、底板84に対して鍔部76が当接するよりも先に、第2突出部78の上面が第2の切欠き85aの上縁となる端面と当接するようにしている。そのため、鍔部76は、下方向への大きな荷重が作用して引き戸2に変形が生じた場合に底板84と接触することで、下方向への荷重を受ける補助的な役割を担っている。
ローラユニット4に引き戸2を取り付けることで、鍔部76の前方に形成された第1突出部77も底板84に形成された第1の切欠き84b内に緊密に差し込まれることになる。この際、第1突出部77の後面77aは、第1の切欠き84bの後側端面である当接面84cに対して当接することになる。
そのため、ローラユニット4に対して引き戸2の下端が後方に移動する方向に荷重が作用する場合には、その荷重として第1突出部77と当接面84cとの間で押圧力が作用することになる。すなわち、引き戸2においては当接面84cを介して底板84の面内方向に荷重を負担することになる。よく知られているように、板材は、面外方向への荷重に対しては変形を生じやすいが、面内方向への荷重に対しては変形を生じ難い性質を有する。そのため、上記のように、荷重を受ける方向が面内方向となるようにすることで、ローラユニット4を取り付ける引き戸2の開口84aの周囲に変形を生じることがなく、ローラユニット4との相対位置関係を安定に保つことができるようになっている。
上記のようにローラユニット4を取り付けた引き戸3は、図3に示すようにローラ4aの大径部4a2を下レール15a内に挿入するようにして係り合わせることで取り付けることができる。また、ローラ4aの小径部4a2は、下レール部材15の上面15bに当接することで、重量を支持するようになっている。取り付けに際し、上述したように、引き戸の上端のスライドユニット3を待機位置として位置決めした上で、突出位置とすることにより上レール14a(図2参照)との係り合いも行うことで、簡単に取付を行うことができる。
このように構成することで、引き戸2を前後方向にガイドしつつ、円滑に左右方向に移動させ、筐体11の内部の収納空間を開閉することが可能となっている。左右方向への移動等により、引き戸2に対して前後方向への荷重が生じた場合には、下端のローラユニット4を中心に大きな曲げモーメントが作用し、取り付けた開口84aの周囲にはより大きな荷重が生じることになる。図11を用いて具体的に説明すると、引き戸2の前板81に上部を前後方向に向けて荷重を作用させた場合、ローラユニット4はローラ4aの大径部4a2が下レール15a内で支持されていることから、ローラユニット4を中心として大きな曲げモーメントが生じ、前後にローラユニット4を挟む前板81と後板82との間には、両者を離間させるように屈曲させる向きの大きな荷重が作用することになる。
しかしながら、本実施形態においては、上記の強大な荷重を当接面84cを介して底板84の面内方向に受けることができるため、引き戸2においてはローラユニット4の取り付け部位の周辺に変形を生じることがない。
また、上記のような引き戸2に生じる前後方向への荷重は、リンクバー24を介して複数の引き戸2〜2を連動可能としていることによって生じやすくなる傾向あるが、上記の構造とすることで、耐久性を向上することが可能となる。すなわち、ローラユニット4の取り付け部位の周辺に変形をきたすことなく、ローラユニット4が不意に外れたり、ガタが生じることにより摩擦抵抗が増大する不具合を抑制することができ、使い勝手を一層向上させることができる。
以上のように、本実施形態の引き戸の取付構造は、引き戸2の上端側に上滑動手段としてのスライドユニット3を設け、そのスライドユニット3を上レール14aに係り合わせて引き戸2を取り付けるようにしたものであって、スライドユニット3が、引き戸2の上端に取り付けるスライダ受け5と、一部に設定した滑動部としての突出片65をスライダ受け5より突没可能にするようスライダ受け5の内部で保持されるスライダ本体6とを含むものであり、スライダ受け5に設けられたスライダ受け側第1係合部55、及び、スライダ本体6に設けられたスライダ本体側係合部66aのうち、スライダ受け側第1係合部55が上下方向に弾性変形可能に構成されており、スライダ受け側第1係合部55とスライダ本体側係合部66aとが係り合うことにより、突出片65が引き戸2の上端よりも上方に突出して上レール14aに係り合うようにするとともに、スライダ本体6がスライダ受け5に対して上下方向に弾性的に支持されるように構成したものである。
このように構成しているため、スライダ本体6が上下方向に弾性的に支持されていることから、引き戸2が傾いてスライダ本体6の突出片65の上部が上レール14a内の上面14bに当接した場合でも、スライダ本体6が下方に沈み込むことで当接に伴う負荷を軽減させて、摩擦抵抗を抑制することができる。また、係合を保ったままの状態で引き戸2全体を上下方向に弾性的に支持することになるため、不用意に引き戸2が外れることを防止しつつ、運搬や地震等による衝撃を吸収して、スライドユニット3の損傷を防止することができる。
また、スライダ受け側第1係合部55を、スライダ受け5を構成する起立壁としての後面51に設けられた第1開口55として形成するとともに、第1開口55の下縁にバネ部55aを設けており、スライダ本体側係合部66aを、第1開口55と対応する位置においてスライダ本体6を構成する起立壁61としての後面61に設けられた突出部66aとして形成し、突出部66aを第1開口55と係り合わせるように構成しているため、具体的な係合構造と、弾性を与えるための支持構造とを簡便に両立することが可能となっている。
また、バネ部55aが、スライダ受け側第1係合部を構成する第1開口55の下側縁部を、上下方向を厚み方向とした板バネとして形成されるように構成しているため、より簡単な構造で、上記の機能を実現することがかのうとなっている。
また、スライダ本体6の起立壁としての後面61に、上側を基端部として片持ち状に下方に延在させた弾性片66が設けられており、弾性片の基端側に突出部66aが形成されるとともに、先端側に操作部66bが形成されるように構成しているため、突出部66aと第1開口55とを、係合状態としたり係合解除させたりする操作を簡単に行うことが可能となっている。
また、スライダ受け5が上下方向に延在する溝部51bを備えるとともに、この溝部51b内で規制される上下方向に延在する凸状ガイド部61aをスライダ本体6が備えるように構成しているため、スライダ受け5に対するスライダ本体6の動作を、上下以外の方向に対して規制することができ、スライダ本体6のガタツキを抑制して動作安定性を高めることが可能となっている。
また、スライダ受け5が、スライダ受け側第1係合部としての第1開口55の下方にスライダ受け側第2係合部としての第2開口56を備えており、第1開口55に代わり第2開口56と、スライダ本体側係合部としての突出部66aとが係り合うことで、突出片65が引き戸2の上端よりも没した待機位置とし得るように構成しているため、スライダ本体6の突出片65が引き戸2の上端より突出した状態と、没した状態との双方をとり得ることにより、引き戸2の筐体11への取り付けに係る利便性を向上することが可能となっている。
また、スライダ受け5及びスライダ本体6が、それぞれ樹脂一体成形により構成されているため、低コストで簡単に製造することができるとともに、樹脂の弾性を利用して、スライダ受け5とスライダ本体6との係合や弾性支持構造を好適に実現することが可能となっている。
そして、本実施形態の引き戸2は、以上のような上滑動手段たるスライドユニット3を備えることによって、動作安定性および振動等による外力に対しても強度を確保することができるほか、既存のレールにも有効に適用が可能となる。
また、本実施形態の収納装置1は、以上の取付構造を通じて引き戸2を取り付ける構造とすることによって、引き戸2の開閉動作の安定性及び耐久性を向上させることが可能となる。
さらに、引き戸2〜2を複数備えるとともに、これらの引き戸2〜2を、互いに重合する開成状態とその重合がほぼ解消される閉止状態との間で連動させる連動機構を備えているため、より上記の効果を生かして好適に用いることが可能となっている。
なお、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではない。
例えば、上述の実施形態では、スライダ受け側第1係合部としての第1開口55及びスライダ受け側第2係合部としての第2開口56を、いずれもスライダ受け5の起立壁としての後面51に設け、これらに対応してスライダ本体側係合部としての突出部66aをスライダ受け6の起立壁としての後面61に設けていたが、双方が対応する位置であり、且つ、上下方向に相対位置を拘束する関係になる起立壁に設けられていればよく、両者をそれぞれ起立壁としての側面52,62に設けて係合させても良い。
また、バネ部55aは、スライダ受け5の一部として樹脂一体成形によって形成していたが、同じ位置に金属製の板バネを嵌め込むなど、別部材として構成しても良い。また、バネ部55aも板バネの形態に限ることなく、圧縮コイルバネを用いた上で、突出部66aとの係合が可能な板材を載せて構成するなど種々様々な形態に変更することができる。
さらには、バネ部55aは、スライダ受け5とスライダ本体6との間を相対的に弾性支持可能であれば良く、上述の実施形態のようにスライダ受け5側に設ける代わりに、スライダ本体6側に設けても良い。あるいは、スライダ受け5側とスライダ本体6側の双方に設ける構成としてもよい。
また、上述の実施形態では、上滑動手段をスライドユニット3として構成し、上滑動部材をスライダ本体6としていたが、上滑動手段をローラユニットとし、上滑動部材をローラとして構成してもよい。また、下滑動手段をローラユニット4として構成し、下滑動部材をローラ4aとしていたが、下滑動手段をスライドユニットとし、下滑動部材をスライダとして構成しても良い。
その他の構成も、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。