JP6168685B2 - 洋菓子用米粉組成物および洋菓子の製造方法 - Google Patents

洋菓子用米粉組成物および洋菓子の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、洋菓子用米粉組成物および洋菓子の製造方法に関する。詳細には、本発明は、よく膨らんでいて外観に優れ、モチモチ感があり、しっとりしていて、滑らかで良好な食感を有し、更に老化しにくくて日持ちの良い洋菓子類を製造することができ、しかも取り扱い性および作業性に優れる生地を製造することのできる洋菓子用米粉組成物および当該洋菓子用米粉組成物を用いて洋菓子類を製造する方法に関する。
米粉は、古くから、饅頭、団子、餅菓子、せんべいなどの和菓子の製造に広く用いられている。また、近年は、モチモチ感を有する洋菓子類を得るために米粉を用いて洋菓子を製造することが色々試みられている。
米粉を用いて、例えばホットケーキ、パンケーキ、マフィン、マドレーヌ、バターケーキ、ドーナツ、クッキー、スコーンなどの洋菓子を製造した場合には、小麦粉を用いて製造した洋菓子類に比べてモチモチ感が多少付与されるが、生地にベタツキが生じて作業性および取り扱い性が悪くなったり、生地が十分に膨張せず厚みが不足したり外観が不良になったり、ボソついた不良な食感になり易い。
米粉を菓子類の製造に用いる従来技術としては、(1)もち米以外の原料米を湿式製粉し、脱水、乾燥して得られる平均粒度が12ミクロン以下で澱粉損傷度が5%以下の極微細米粉を用いた団子類や餅菓子などの食品(特許文献1)、(2)米粉100重量部当たり、小麦粉を1〜5重量部および有機酸を含有する菓子用ミックス粉(特許文献2)、(3)米粉100重量部と白糠粉1〜300重量部を含むパン・菓子用米粉組成物(特許文献3)、(4)もち米粉、グルテン、マルトースおよび砂糖を含むパン・菓子用もち米粉組成物(特許文献4)、(5)小麦粉70〜90重量部にアルファ化米粉とアルファ化澱粉を10〜30重量部の量で配合したパンまたは菓子用穀粉組成物(特許文献5)などを挙げることができる。
しかし、上記(1)の従来技術で用いられている平均粒度が12ミクロン以下で澱粉損傷度が4%以下の米粉を洋菓子の製造に用いた場合には、生地にベタつきが生じて取り扱い性や作業性が悪くなったり、得られる洋菓子は、膨張が不足していて厚みに欠け、しかも外観が不良であったり、ボソついて不良な食感になり易い。
また、上記(2)の従来技術は、大福餅、草餅、柏餅、ぎゅうひ、ういろう、団子などの蒸し菓子(蒸した和菓子)の製造に用いることを目的として開発された菓子用ミックス粉であるため、ホットケーキ、パンケーキ、マフィン、マドレーヌ、バターケーキ、ドーナツ、クッキー、スコーンなどの洋菓子の製造に用いた場合には、やはり生地にベタツキが生じて取り扱い性や作業性が悪くなり易く、また得られる菓子は厚みに欠けたり、ボソついたりして、外観および食感に優れる洋菓子が得られにくく、しかも老化防止のために有機酸を含有していることから洋菓子の味の低下を招くことがあり、さらに小麦粉を併用しているため、小麦アレルギーの人でも食し得る菓子を製造することができない。
上記(3)の従来技術は、日本酒の原料となる酒米を搗精するときに得られる糠から玄米の外皮部分の糠(赤糠)を除いた「白糠」という特殊な成分を米粉と共に用いる必要がある。
また、上記(4)の従来技術は、米粉としてもち米粉(白玉粉)を用いているために、コストが高くなることに加え、加水を必要とし易く、適切な生地流動性を持つことが難しい。しかも、もち米粉とともにグルテンを併用しているために、米粉の特徴が出にくい。また、小麦アレルギーは小麦粉中に含まれているグルテンに起因するとされているが、上記(4)の従来技術は、グルテンを必須にしているために、小麦アレルギーの人は食することができない。
上記(5)の従来技術は、α化した米粉とα化した澱粉を用いているために、コストがかかり、またα化米粉およびα化澱粉と共に小麦粉を併用するため小麦アレルギーの人は食することができない。
特公平8−35号公報 特開2001−29001号公報 特開2004−24187号公報 特開2008−228743号公報 特開2010−263869号公報
本発明の目的は、流動性のある生地を用いて製造するホットケーキ、パンケーキ、マフィン、バターケーキ、マドレーヌなどの洋菓子類では適度な粘度を有する生地を調製することができ、また固形状の生地を用いて製造するクッキー、ドーナツ、スコーンなどの洋菓子類ではベタツキのない生地を形成し、洋菓子類を製造する際の取り扱い性および作業性に優れ、膨張が十分に行なわれて厚みや体積の大きな良好な外観およびボリュームを有し、モチモチ感があり、滑らかで、しっとりした良好な食感を有し、しかも経時劣化が小さくて耐老化性に優れるホットケーキ、パンケーキ、マフィン、マドレーヌ、バターケーキ、クッキー、ドーナツ、スコーンなどの洋菓子類を製造することのできる洋菓子用米粉組成物を提供することである。
本発明の目的は、特殊な副原料や食品添加剤を用いなくても、良好な外観および食感を有する前記した洋菓子類を簡単に製造することのできる洋菓子用米粉組成物を提供することである。
本発明の目的は、小麦粉を使用してもまたは使用しなくても、膨張が十分に行なわれて良好な外観およびボリュームを有し、モチモチ感があり、滑らかで、しっとりした良好な食感を有し、しかも耐老化性に優れる洋菓子類を良好な作業性で簡単に製造することのできる洋菓子用米粉組成物を提供することである。
また、本発明の目的は、小麦アレルギーの人でも安心して食することのできる、外観および食感に優れる洋菓子類を製造することのできる洋菓子用米粉組成物を提供することである。
さらに、本発明は、前記した洋菓子用米粉組成物を用いて洋菓子類を製造する方法を提供することである。
本発明者らは、上記の目的を達成すべく種々研究を重ねてきた。その結果、澱粉損傷度が10%以上である米粉を用いて、特に澱粉損傷度が10%以上で且つ米粉の粒度の累積分布による中位径(D50)[以下、単に「中位径(D50)」ということがある]が40μm以上である米粉を用いて洋菓子用米粉組成物を調製し、当該洋菓子用米粉組成物を用いてホットケーキ、パンケーキ、マフィン、マドレーヌ、バターケーキ、クッキー、ドーナツ、スコーンなどの洋菓子類を製造すると、流動性のある生地を用いるホットケーキ、パンケーキ、マフィン、バターケーキ、マドレーヌなどの菓子類では生地が適度な粘度を有し、鉄板、フライパン、ホットプレート、ケーキ型などに生地を流し込む際の作業性や取り扱い性に優れ、特にホットケーキを作る際には鉄板やフライパン上で生地を所望の形状および厚さに流し込むことができること、また固形状の生地を用いるクッキーやドーナツ、スコーンなどの菓子類ではベタツキのない生地を形成できることを見出した。
また、本発明者らは、澱粉損傷度が10%以上である上記した米粉、特に澱粉損傷度が10%以上で且つ中位径(D50)が40μm以上である米粉を用いて調製した洋菓子用米粉組成物を使用して前記したような洋菓子類を製造すると、膨張が十分に行なわれて厚さおよび体積が大きくて良好な外観を有し、モチモチ感があって、滑らかで、しっとりした良好な食感を有し、しかも経時的な品質低下が小さくて耐老化性に優れる、高品質の洋菓子類を良好な作業性で簡単に製造できることを見出した。
更に、本発明者らは、澱粉損傷度が10%以上である米粉、特に澱粉損傷度が10%以上である米粉で且つ中位径(D50)が40μm以上である上記した米粉を用いると、白糠、マルトースなどの特殊な成分や、有機酸、マルトースなどの食品添加剤を用いなくても、上記した良好な生地を形成し、しかも外観、食感および耐老化性に優れる上記した高品質の洋菓子類を与える洋菓子用米粉組成物を調製できることを見出した。
また、本発明者らは、澱粉損傷度が10%以上である米粉、特に澱粉損傷度が10%以上である米粉で且つ中位径(D50)が40μm以上である上記した米粉を用いると、当該米粉と共に小麦粉を用いてもまたは用いなくても、取り扱い性および作業性に優れる生地を形成し、しかも膨張が十分に行なわれて良好な外観およびボリュームを有し、モチモチ感があり、滑らかで、しっとりした良好な食感を有し、耐老化性に優れる高品質の洋菓子類を与える洋菓子用米粉組成物を調製できること、そのため、澱粉損傷度が10%以上である米粉、特に澱粉損傷度が10%以上で且つ中位径(D50)が40μm以上である米粉を用いて小麦粉およびグルテンを含有しない洋菓子用米粉組成物を調製し、その洋菓子用米粉組成物を用いて洋菓子類を製造すると、小麦アレルギー(グルテンアレルギー)の人でも安心して食すことのできる高品質の洋菓子類が得られることを見出し、それらの知見に基づいて本発明を完成した。
すなわち、本発明は、
(1) 澱粉損傷度が10%以上である米粉を含有することを特徴とする洋菓子用米粉組成物;および、
(2) 澱粉損傷度が10%以上および米粉の粒度の累積分布による中位径(D50)が40μm以上である米粉を含有することを特徴とする洋菓子用米粉組成物;
である。
そして、本発明は、
(3) 米粉の粒度の累積分布による中位径(D50)が40〜300μmである前記(1)または(2)の洋菓子用米粉組成物;
(4) 洋菓子用米粉組成物に含まれる穀粉の全質量に基づいて、米粉の含有割合が60〜100質量%である前記(1)〜(3)のいずれかの洋菓子用米粉組成物;
(5) ホットケーキ、パンケーキ、マフィン、マドレーヌ、バターケーキ、クッキー、ドーナツおよびスコーンから選ばれる洋菓子を製造するための洋菓子用米粉組成物である前記(1)〜(4)のいずれかの洋菓子用米粉組成物;および、
(6) 液体資材を含まない洋菓子用ミックス粉である前記(1)〜(5)のいずれかの洋菓子用米粉組成物;
である。
そして、本発明は、
(7) 前記(1)〜(6)のいずれかの洋菓子用米粉組成物を用いて常法によって洋菓子を製造する方法である。
澱粉損傷度が10%以上である米粉を含有する本発明の洋菓子用米粉組成物を用いて洋菓子類を製造すると、モチモチ感があって、滑らかで、しっとりした良好な食感を有し、経時的な品質低下が小さくて耐老化性に優れる、高品質の洋菓子類を良好な作業性で簡単に製造することができる。
澱粉損傷度が10%以上および中位径(D50)が40μm以上である米粉を含有する本発明の洋菓子用米粉組成物を用いて洋菓子類を製造すると、米粉流動性のある生地を用いるホットケーキ、パンケーキ、マフィン、バターケーキ、マドレーヌなどの菓子類では適度な粘度を有する生地が形成されるため、鉄板、ホットプレート、ケーキ型などに生地を流し込む際の作業性や取り扱い性に優れ、特にホットケーキをつくる際には鉄板、フライパン、ホットプレート上に生地を所望の形状および厚さに流し込むことができ、また固形状の生地を用いるクッキー、ドーナツ、スコーンなどの菓子類ではベタツキのない生地を形成することができ、しかもモチモチ感があって、滑らかで、しっとりした良好な食感を有し、経時的な品質低下が小さくて耐老化性に優れる、高品質の洋菓子類を良好な作業性で簡単に製造することができる。
本発明の洋菓子用米粉組成物は、白糠、マルトースなどの特殊な成分や、有機酸などの食品添加剤を含有する必要がないため、コスト、イメージなどの点で優れている。
本発明の洋菓子用米粉組成物は、小麦粉やグルテンを含有していてもまたは含有していなくてもいずれでもよく、小麦粉およびグルテンを含有しない場合であっても、取り扱い性および作業性に優れる生地を形成し、膨張が十分に行なわれて良好な外観を有し、モチモチ感があり、滑らかで、しっとりした良好な食感を有し、しかも耐老化性に優れる高品質の洋菓子類を製造できる。そのため、小麦粉およびグルテンを含有しない本発明の洋菓子用米粉組成物を用いることによって、小麦粉アレルギー(グルテンアレルギー)の人でも安心して食すことのできる高品質の洋菓子類を製造することができる。
図1は、米粉の粒度の累積分布による中位径(D50)の求め方について説明した図である。
以下に、本発明について詳細に説明する。
本発明の洋菓子用米粉組成物は、澱粉損傷度が10%以上である米粉を含有する。
ここで、本発明の洋菓子用米粉組成物が含有する「澱粉損傷度が10%以上である米粉」には、「製粉により得られる澱粉損傷度が10%以上である米粉」および「製粉により得られる米粉を造粒して得られる澱粉損傷度が10%以上である造粒米粉」の両方が包含される。
かかる点から、本発明でいう「米粉」は、特に断らない限り、「製粉して得られる米粉」および「製粉して得られる米粉を造粒して得られる造粒米粉」の両方を意味する。
澱粉損傷度が10%以上である米粉、すなわち、「製粉により得られる澱粉損傷度が10%以上である米粉」および「製粉により得られる米粉を造粒して得られる澱粉損傷度が10%以上である造粒米粉」としては、その中位径(D50)が40μm以上である米粉が好ましく用いられる。
本発明で用いる米粉は、「澱粉損傷度が10%以上である」という要件を少なくとも満たしていることが必要である。
米粉の澱粉損傷度が10%以上であることにより、当該米粉を含有する本発明の洋菓子用米粉組成物を用いて洋菓子類を製造したときに、モチモチ感があり、滑らかで、しっとりした良好な食感を有する洋菓子類を得ることができる。
モチモチ感、しっとり感および滑らかさにより優れる洋菓子を得るためには、米粉の澱粉損傷度は、11%以上であることが好ましく、13%以上であることがより好ましいく、15%以上であることが更に好ましい。
米粉の澱粉損傷度が低すぎると、洋菓子類の製造に用いたときに加水が少なくなり、しかも得られる洋菓子類は、パサついて、しっとり感のない、不良な食感となる。
一方、米粉の澱粉損傷度は大きすぎて困ることはないが、現在の製粉技術では、洋菓子類の製造に適する澱粉損傷度が大きくて且つ中位径(D50)の大きな米粉の製造が容易ではないので、米粉の製造上の観点から、米粉の澱粉損傷度の上限値は25%(25%以下)であることが好ましく、20%(20%以下)であることがより好ましい。
本明細書における米粉の澱粉損傷度は、Megazyme社製「STARCH DAMAGE ASSAY KIT」を用いて、それに添付されたプロトコールに従って測定した澱粉損傷度をいう。
具体的な測定方法については、以下の実施例に記載したとおりである。
本発明で用いる米粉は、「澱粉損傷度が10%以上である」という要件と共に、「中位径(D50)が40μm以上である」という要件を更に満たしていることが好ましい。
本発明における「米粉の粒度の累積分布による中位径(D50)」は、“メジアン径”とも称される。
澱粉損傷度が10%以上で且つ中位径(D50)が40μm以上である米粉を含有する本発明の洋菓子用米粉組成物は、当該本発明の洋菓子用米粉組成物に卵、牛乳、水などを加えて生地を調製したときに、流動性のある生地を用いて菓子を製造するホットケーキ、パンケーキ、マフィン、バターケーキ、マドレーヌなどの洋菓子類では、生地の粘度が適切なものとなり、鉄板、フライパン、ホットプレート、ケーキ型などに生地を流し込む際の作業性や取り扱い性に優れ、特にホットケーキをつくる際には鉄板、フライパン、ホットプレート上に生地を所望の良好な形状および厚さに流し込むことができ、また固形状の生地を用いて菓子を製造するクッキー、ドーナツ、スコーンなどの洋菓子類ではベタツキのなくて取り扱い性および作業性に優れる生地を形成することができ、それによって膨張が十分に行なわれて厚さおよび体積の大きな、外観に優れる洋菓子類を製造することができ、しかもそれにより得られる洋菓子類は、モチモチ感があり、滑らかで、しっとりした良好な食感を有し、しかも耐老化性にも優れていて高い品質を有する。
米粉の中位径(D50)の上限値は特に制限されないが、米粉の製造容易性、生地の保形性、得られるよう菓子類の口溶けの点から、本発明で用いる米粉の中位径(D50)は40〜300μmであることが好ましく、60〜250μmであることがより好ましい。
米粉の中位径(D50)が小さすぎると、洋菓子用米粉組成物に卵、牛乳、水などを加えて生地を調製したときに、流動性のある生地を用いるホットケーキ、パンケーキ、マフィン、バターケーキ、マドレーヌなどの洋菓子類では、生地の粘度が低くなってさらさら流れてしまい、鉄板、フライパン、ホットプレート、ケーキ型などに生地を流し込む際の作業性や取り扱い性が不良になったり、鉄板、フライパン、ホットプレートに生地を所定の形状および厚さで流し込むことができなくなって、得られる洋菓子の形状が不良になったり、厚さや体積が小さくなり、また固形状の生地を用いるクッキー、ドーナツ、スコーンなどの洋菓子類では、生地にベタツキが生じて取り扱い性および作業性に劣るようになる。一方、米粉の中位径(D50)があまりに大きすぎると、米粉全体での粒子径が大きくなり過ぎて、得られる洋菓子類のしっとり感、口溶けが低下し、ざらついた食感になることがある。
本発明における「中位径(D50)」(メジアン径)は、米粉を分級処理して、縦軸を米粉の累積質量%とし、横軸を米粉の粒子径(μm)とする、図1に示すような粒度の累積分布のグラフを作成したときに、縦軸の累積値が50質量%であるときの横軸の粒子径(μm)を意味する。
本発明における米粉の中位径(D50)は、レーザー回折粒度分布測定装置である日機装株式会社製「マイクロトラック MT3300II」などを使用して米粉の粒度の累積分布を測定して求めることができ、その詳細な測定方法については、以下の実施例に記載するとおりである。
本発明では、澱粉損傷度が10%以上である米粉、または澱粉損傷度が10%以上で且つ中位径(D50)が40μm以上である米粉として、粳米(ウルチ米)を原料として得られた米粉のみを用いてもよいし、モチ米を原料として得られた米粉のみを用いてもよいし、または粳米とモチ米の両方を原料として得られた米粉を用いてもよい。そのうちでも、本発明で用いる米粉は、粳米(ウルチ米)を原料として得られた米粉であることが、得られる洋菓子の品質、コストなどの点から好ましい。
本発明では、澱粉損傷度が10%以上である米粉または澱粉損傷度が10%以上で且つ中位径(D50)が40μm以上である米粉であれば、いずれの方法で製造した米粉であっても使用できる。
何ら限定されるものではないが、本発明で用いる澱粉損傷度が10%以上である米粉、および澱粉損傷度が10%以上で且つ中位径(D50)が40μm以上である米粉は、原料米(米粒)の洗米→乾燥→粉砕→・・分級という製粉工程を経て製造することができる。
また、前記して製粉工程を経て製造された澱粉損傷度が10%以上である米粉(製粉による米粉)を、米粉のα化や変質などを生じないようにし且つ澱粉損傷度が10%未満にならないようにして造粒することによって製造することができる。
澱粉損傷度が10%以上である米粉を製造する前記した製粉工程では、原料米(米粒)を洗米、調湿して粉砕機に供給する時点で、米粒の水分含量が10〜35質量%、特に13〜33質量%程度になるように調整することが好ましい。
一方、無洗米を使用する場合は、水洗処理を行わずにそのまま直接加水・調湿処理を行うことができるが、精白米を使用する場合は、水洗処理を行って米粒に付着している糠などを除去した後に吸水・調湿処理を行うことが好ましい。
また、上記した製粉方法において、洗米後の米粒の粉砕および分級は、一般に5〜90℃の温度下で行うことが、米粉の変質防止、品質の安定化などの点から好ましい。
米粉を製造する際の粉砕ロータの回転速度、分級ロータの回転速度などは、粉砕機の形式、構造、全体および各部の大きさ、粉砕機への米粒の供給量などに応じて調節するとよい。
何ら限定されるものではないが、例えば、分級機能付き気流式粉砕機の1つであるホソカワミクロン社製「ACM−15H」を使用して本発明で用いる米粉を製造する場合は、当該粉砕機の粉砕ロータの回転速度を4000〜7000rpmとし、分級ロータの回転速度を1000〜3000rpmとし、吸水した米粒の1時間当たりの供給量を20〜40kgとして粉砕、分級を行うと、澱粉損傷度が10%以上である米粉、特に澱粉損傷度が10%以上で且つ中位径(D50)が40μm以上である米粉を円滑に製造することができる。
前記した製粉工程による場合は、澱粉損傷度が10%以上で且つ中位径(D50)が100μmを超す米粉は得られにくいが、製粉により得られる澱粉損傷度が10%以上の米粉を造粒することで、澱粉損傷度が10%以上で且つ中位径(D50)が100%を超す米粉を製造することができる。
その際の造粒方法としては、製粉により得られた澱粉損傷度が10%以上である米粉のα化や変質を防止しながら澱粉損傷度を10%以上に維持しながら造粒し得る方法であれば、従来から粉体の造粒に用いられている造粒方法のいずれもが採用でき、例えば、転動造粒方法、流動層造粒方法、攪拌造粒方法などを採用して造粒することができる。
その際に、噴霧などによって適量の水を添加して造粒を行うと、粒の揃った造粒米粉を円滑に製造することができる。
何ら限定されるものではないが、例えば、製粉工程で得られた澱粉損傷度が10%以上である米粉を、転動造粒装置、流動層造粒装置または攪拌造粒装置に入れ、米粉の質量に対して5〜20質量%程度の水を噴霧しながら装置内で米粉を常に転動、流動または攪拌ささせながら約20〜25℃の温度下で造粒し、造粒して得られる造粒米粉を、45〜50℃の範囲内の一定温度で、最終的な水分含量が12〜14質量%程度になるまで乾燥することによって、澱粉のα化のない、澱粉損傷度が10%以上の造粒米粉を製造することができる。
造粒を行うことにより、中位径(D50)が40μm未満である、澱粉損傷度が10%以上の米粉を用いて、本発明で好ましく用いられる、「澱粉損傷度が10%以上で且つ中位径(D50)が40μm以上である米粉(造粒米粉)」を容易に製造することができる。
造粒を行なうことによって、中位径(D50)が300μmを大きく超える米粉(造粒米粉)も製造できるが、米粉の中位径(D50)があまりに大きすぎると、米粉全体での粒子径が大きくなり過ぎて、得られる洋菓子類のしっとり感、口溶けが低下し、ざらついた食感になるので、米粉(造粒米粉)の中位径(D50)が400μm以下になるようにして造粒を行なうことが好ましい。
本発明の洋菓子用米粉組成物は、穀粉として、澱粉損傷度が10%以上である米粉または澱粉損傷度が10%以上で且つ中位径(D50)が40μm以上である米粉のみを含有していてもよいし、前記した米粉と共に、それ以外の米粉、小麦粉、ライ麦粉、コーンフラワー、大麦粉等の穀粉類;タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、小麦澱粉等およびこれらのα化、エーテル化、エステル化、アセチル化、架橋処理等の澱粉類などの1種または2種以上を含有していてもよい。
そのうちでも、本発明の洋菓子用米粉組成物は、洋菓子用米粉組成物に含まれる穀粉の全質量に基づいて、澱粉損傷度が10%以上である米粉および/または澱粉損傷度が10%以上で且つ中位径(D50)が40μm以上である米粉を60〜100質量%の割合で含有していることが好ましく、70〜100質量%の割合で含有していることがより好ましく、80〜100質量%の割合で含有していることが更に好ましい。
当該米粉の含有割合が、洋菓子用米粉組成物に含まれる穀粉の全質量に基づいて60質量%よりも少ないと、得られる洋菓子類におけるモチモチ感が低下し、しかも老化し易い。
本発明の洋菓子用米粉組成物が、(a)穀粉として、澱粉損傷度が10%以上の米粉および/または澱粉損傷度が10%以上で且つ中位径(D50)が40μm以上の米粉のみを含有し、小麦粉、グルテンおよびその他の穀粉を含有しない洋菓子用米粉組成物であるか、または(b)穀粉として、澱粉損傷度が10%以上の米粉および/または澱粉損傷度が10%以上で且つ中位径(D50)が40μm以上の米粉と、グルテンを含有しない穀粉のみを含有する洋菓子用米粉組成物である場合には、これらの洋菓子用米粉組成物(a)または(b)を用いて製造される洋菓子類は、グルテンを含有しないため、小麦アレルギーの人でも安心して食することができる。
本発明の洋菓子用米粉組成物は、澱粉損傷度が10%以上の米粉および/または澱粉損傷度が10%以上で且つ中位径(D50)が40μm以上の米粉と共に、液体資材を含有していてもよいが、液体資材を含まない洋菓子用ミックス粉の形態にしておくと、長期保存安定性および取り扱い性に優れたものとすることができる。
洋菓子用ミックス粉は、製造を目的とする洋菓子の種類などに応じて、澱粉損傷度が10%以上の米粉および/または澱粉損傷度が10%以上で且つ中位径(D50)が40μm以上である米粉と共に、他の穀粉(小麦粉、澱粉、コーンフラワー、α化澱粉など)、砂糖、粉ミルク、卵粉、粉末コーヒー、ココア粉末、ドライナッツ片、ドライフルーツ片、食塩、膨張剤、グルコース、増粘剤、香料などの1種または2種以上を含有することができる。
特に、洋菓子用ミックス粉を、例えば、澱粉損傷度が10%以上の米粉および/または澱粉損傷度が10%以上で且つ中位径(D50)が40μm以上の米粉と、砂糖、食塩および膨張剤からなるシンプルな組成にしておくと、使用者が、当該洋菓子用ミックス粉を用いて洋菓子類を製造する際に、当該洋菓子用ミックス粉に、製造しようとする洋菓子の種類に応じて、例えば、卵液、牛乳、水、粉末コーヒー、ココア粉末、ドライナッツ片、ドライフルーツ片、その他の資材の1種または2種以上を加えることによって、消費者の望む種々の洋菓子を簡単に製造することができる。
本発明の洋菓子用米粉組成物における成分組成(各成分の含有割合)は、洋菓子用米粉組成物がどのような洋菓子の製造に用いるものであるかなどに応じて異なり得るが、液体成分を含まない洋菓子用ミックス粉である場合には、全穀粉の合計配合量が70〜100質量部、砂糖の配合量が0〜30質量部、膨張剤の配合量が0〜4質量部、食塩の配合量が0〜0.5質量部、その他の非液体資材の配合量が0〜5質量部であって、且つ洋菓子用ミックス粉に含まれる全穀粉の合計質量100質量部に対して、澱粉損傷度が10%以上の米粉および/または澱粉損傷度が10%以上で且つ中位径(D50)が40μm以上である米粉の割合が60〜100質量部、更には70〜100質量部、特に80〜100質量部にしておくと、種々の洋菓子類の製造に好適に用いることができる。その際の膨張剤としては、炭酸水素ナトリウムやその他の従来から洋菓子類の製造に用いられている膨張剤を用いることができる。
本発明の洋菓子用米粉組成物を用いて製造される洋菓子類の種類としては、例えば、ホットケーキ、パンケーキ、マフィン、マドレーヌ、バターケーキ、クッキー、ドーナツ、スコーンなどを挙げることができ、特に本発明の洋菓子用米粉組成物は、ホットケーキを製造するのに適している。
本発明の洋菓子用米粉組成物を用いて洋菓子を製造する際の製法は特に制限されず、洋菓子の種類などに応じて、従来から採用されている方法および条件を採用して製造することができる。
何ら限定されるものではないが、本発明の洋菓子用米粉組成物が、ホットケーキ用ミックス粉であって、澱粉損傷度が10%以上の米粉および/または澱粉損傷度が10%以上で且つ中位径(D50)が40μm以上である米粉100質量部に対して、砂糖を20〜30質量部、食塩を0.2〜0.3質量部、膨張剤を3〜4質量部の割合で含有するホットケーキ用ミックス粉である場合は、卵液20〜30質量部と牛乳70〜80質量部を予めよく混合しておき、この混合液にホットケーキ用ミックス粉100質量部を加えて均一に混ぜ合わせ、それにより得られた混合液を、約170〜180℃に加熱し、必要に応じて油を敷いたフライパン、鉄板、ホットプレートなどの上に、円形などの所望の形状に流し入れ、約2〜3分間加熱して焼き、次いで裏返して約3〜4分間加熱して焼くことによって、よく膨らんでいて厚さがあり、しかもモチモチとしていて、滑らかで、しっとりした良好な食感を有するホットケーキを円滑に製造することができる。
また、本発明の洋菓子用米粉組成物が、マドレーヌやバターケーキ用のミックス粉であって、澱粉損傷度が10%以上の米粉および/または澱粉損傷度が10%以上で且つ中位径(D50)が40μm以上である米粉100質量部に対して、砂糖を90〜110質量部および膨張剤を1〜2質量部の割合で含有するミックス粉である場合は、ミックス粉100質量部に、卵液40〜60質量部、溶かしバター40〜60質量部を混合して生地を調製し、この生地を型に流し入れ、予め加熱しておいてオーブンで、180〜190℃で約10〜15分間焼成することによって、よく膨らんでいて、モチモチとしていて、滑らかで、しっとりした良好な食感を有するマドレーヌやバターケーキを円滑に製造することができる。
マドレーヌやバターケーキなどの製造に当たっては、乾果実片、ナッツ片、蜂蜜、アルコール類などの好みの資材を生地の調製時に添加したり、生地の上にトッピングすることができる。
以下に実施例によって本発明について具体的に説明するが、本発明は以下の例によって何ら限定されるものではない。
以下の実施例において、米粉の澱粉損傷度および中位径(D50)は、以下の方法で求めた。
(1)米粉の澱粉損傷度:
Megazyme社製「STARCH DAMAGE ASSAY KIT」を使用して、当該キットに添付されたプロトコールに従って、株式会社日立製作所製「U―2000A 吸光光度計」にて510nmにおける吸光度を測定することによって、米粉の澱粉損傷度(%)を求めた。
(2)米粉の中位径(D50):
レーザー回折粒度分布測定装置である日機装株式会社製「マイクロトラック MT3300」を使用して、ターボトラックドライフィーダ(TDF)による乾式粒度測定の操作を行って、分散空気圧力0.2MPaの条件下で米粉の粒度の累積分布を測定して、その中位径(D50)(メジアン径)(μm)を求めた。
《製造例1》[米粉(1A)〜米粉(5A)並びに米粉(1B)〜米粉(7B)の製造]
(1)実験番号1A[米粉(1A)の製造]
(i) 原料米(新潟県産コシヒカリ)15kgを株式会社井関邦栄製造所製の電子自動洗米機「POLISH BOY RW−150」を用いて、温度15℃の水で3分間洗米した後、水から取り出してテンパリングを行なった(このときの米の水分含量=13.4質量%)。
(ii) 上記(i)で得られた加水・調湿した米(米粒)を、ホソカワミクロン社製「ACMパルベライザ」(分級機能付き気流式粉砕機)に、40kg/hrの供給量で供給して、粉砕ロータの回転数6000ppmおよび分級ロータの回転数1000ppm、気流温度30℃の条件下に粉砕し分級して粉砕機から取り出して、米粉[以下「米粉(1A)」という]を製造した。
(iii) 上記(ii)で得られた米粉(1A)の澱粉損傷度および中位径(D50)を上記した方法で求めたところ、下記の表1に示すとおりであった。
(2)実験番号2Aおよび6B[米粉(2A)および(6B)の製造]
(i) 実験番号1Aにおいて、分級機能付き気流式粉砕機に供給する米(米粒)の水分含量、当該粉砕機への米(米粒)の供給量、粉砕機における粉砕ロータの回転数および/または分級ロータの回転数を下記の表1に示すように変えた以外は、実験番号1Aの(i)〜(ii)と同じ操作を行なって、米粉(2A)および米粉(6B)を製造した。
ただし、米粉(2A)および(6B)の製造に当たっては粉砕前に以下の過程を経た。
すなわち、温度10〜25℃の水で3分間洗米した後、温度20〜30℃の水に10〜20分間浸漬し、次いで水から取り出して、ザルに入れた状態で気温20〜30℃、湿度45〜80%の大気中に静置してテンパリングを行なった。
(ii) 上記(i)で得られた米粉(2A)および米粉(6B)の澱粉損傷度および中位径(D50)を上記した方法で求めたところ、下記の表1に示すとおりであった。
(3)実験番号3A〜5A、2B〜5Bおよび7B[米粉(3A)〜(5A)、(2B)〜(5B)および(7B)の製造]
(i) 実験番号1Aの(i)と同様にして加水・調湿を行って、下記の表1に示す水分含量の米(米粒)とした。
(ii) 上記(i)で得られた加水・調湿した米(米粒)を、分級ロータを持たない日清エンジニアリング社製のブレードミル「BM15」に、5〜30kg/hrの供給量で供給して、下記の表1に示す粉砕ロータの回転数で、気流温度10〜50℃の条件下に粉砕し分級して粉砕機から取り出して、米粉(3A)、米粉(4A)、米粉(5A)、米粉(2B)、米粉(3B)、米粉(4B)、米粉(5B)および米粉(7B)をそれぞれ製造した。
ただし、米粉(3A)〜(5A)、(2B)〜(5B)および(7B)の製造に当たっては粉砕前に以下の過程を経た。
すなわち、温度10〜25℃の水で3分間洗米した後、温度20〜30℃の水に10〜20分間浸漬し、次いで水から取り出して、ザルに入れた状態で気温20〜30℃、湿度45〜80%の大気中に静置してテンパリングを行なった。
(iii) 上記(ii)で得られた各米粉の澱粉損傷度および中位径(D50)を上記した方法で求めたところ、下記の表1に示すとおりであった。
(4)実験番号1B[米粉(1B)の製造]
(i) 実験番号1Aの(i)と同様にして加水・調湿を行って、下記の表1に示す水分含量の米(米粒)とした。
(ii) 上記(i)で得られた加水・調湿した米(米粒)を、分級ロータを持たない西村機械製作所製のスーパーパウダーミル「SPM−R290」に、20kg/hrの供給量で供給して、下記の表1に示す粉砕ロータの回転数で、気流温度10〜40℃の条件下に粉砕し分級して粉砕機から取り出して、米粉(1B)を製造した。
ただし、米粉(1B)の製造に当たっては粉砕前に以下の過程を経た。
すなわち、温度10〜25℃の水で3分間洗米した後、温度20〜30℃の水に10〜20分間浸漬し、次いで水から取り出して、ザルに入れた状態で気温20〜30℃、湿度45〜80%の大気中に静置してテンパリングを行なった。
(iii) 上記(ii)で得られた米粉(1B)の澱粉損傷度および中位径(D50)を上記した方法で求めたところ、下記の表1に示すとおりであった。
《製造例2》[米粉(6A)および米粉(7A)の製造]
(1)実験番号6A[米粉(6A)の製造]
(i) 実験番号4Aで得られた米粉(4A)[澱粉損傷度=14.7%、中位径(D50)=17.0μm]300gを、ホバートフードミキサー N−50(HOBART社製)に投入し、攪拌混合し、造粒装置内に取り付けたビーター型のブレードを139回/秒の速度で回転させて米粉(4A)を造粒装置内で連続的に攪拌しつつ、水60gを米粉(4A)に噴霧し、攪拌を20分間行って造粒物とし、造粒物を造粒装置から取り出した。
(ii) 上記(i)で得られた造粒物を50℃の恒温槽に入れて30分間乾燥して、造粒米粉[米粉(6A)](水分含量=13.6質量%)を得た。
(iii) 上記(ii)で得られた米粉(6A)の澱粉損傷度および中位径(D50)を上記した方法で求めたところ、下記の表2に示すとおりであった。
(2)実験番号7A[米粉(7A)の製造]
(i) 実験番号5Aで得られた米粉(5A)[澱粉損傷度=18.8%、中位径(D50)=17.0μm]300gを、ホバートフードミキサー N−50(HOBART社製)に投入し、攪拌混合し、造粒装置内に取り付けたビーター型のブレードを139回/秒の速度で回転させて米粉(5A)を造粒装置内で連続的に攪拌しつつ、水60gを米粉(5A)に噴霧し、攪拌を20分間行って造粒物とし、造粒物を造粒装置から取り出した。
(ii) 上記(i)で得られた造粒物を50℃の恒温槽に入れて30分間乾燥して、造粒米粉[米粉(7A)](水分含量=12.5質量%)を得た。
(iii) 上記(ii)で得られた米粉(6A)の澱粉損傷度および中位径(D50)を上記した方法で求めたところ、下記の表2に示すとおりであった。
Figure 0006168685
Figure 0006168685
《実施例1〜7》[ホットケーキ用ミックス粉およびホットケーキの製造]
(1) 製造例1の実験番号1A〜7Aで得られた米粉(1A)〜米粉(7A)のそれぞれに、砂糖、食塩および膨張剤(炭酸水素ナトリウム)を下記の表3に示す量で配合して、ホットケーキ用ミックス粉を製造した。
Figure 0006168685
(2) 卵50gと牛乳150gを混合して調製した卵乳液200gを、上記の(1)で製造したホットケーキ用ミックス粉200gに加えてよく混ぜて生地をつくった。
(3) 上記(2)で得られた生地を、170℃に予め加熱しておいたグリドル(鉄板)の上に、約12〜13cmの直径の円形に流し入れて2分間焼成した後、ひっくり返して4分間焼成してホットケーキを製造した。
(4) 上記(2)で調製した生地の性状(取り扱い性)、上記(3)で得られたホットケーキの厚さを下記の方法で測定すると共に、得られたホットケーキの外観、食感(モチモチ感、しっとり感、滑らかさを下記の表4に示す評価基準にしたがって10名のパネラーがホットケーキの製造直後に評価し、その平均値を採ったところ、下記の表5に示すとおりであった。
また、ホットケーキを室温(25℃)で4時間放置した後の食感(モチモチ感、しっとり感、滑らかさ)を同様にして評価してその平均値を採ったところ、下記の表5に示すとおりであった。
[ホットケーキの厚さの測定]
ホットケーキの中心部分の厚さを測定した。なお、厚さの測定に当たっては、ホットケーキをその中心を通るようにして2つの半円状に切り分けて、中心部分の厚さ(mm)を定規で測定した。
《比較例1〜7》[ホットケーキ用ミックス粉およびホットケーキの製造]
(1) 製造例1の実験番号1B〜7BAで得られた米粉(1B)〜米粉(7BA)のそれぞれに、砂糖、食塩および膨張剤(炭酸水素ナトリウム)を上記の表3に示す量で配合して、ホットケーキ用ミックス粉を製造した。
(2) 卵50gと牛乳150gを混合して調製した卵乳液200gを、上記(1)で製造したホットケーキ用ミックス粉200gに加えてよく混ぜて生地を調製し、この生地を用いて実施例1と同様にしてホットケーキを製造した。
(3) 上記(2)で調製した生地の性状(取り扱い性)、上記(2)で得られたホットケーキの厚さを下記の方法で測定すると共に、得られたホットケーキの外観、食感(モチモチ感、しっとり感、滑らかさ)を下記の表4に示す評価基準にしたがって10名ノパネラーが評価し、その平均値を採ったところ、下記の表5に示すとおりであった。
《対照例1》
(1) 市販の小麦粉(日清製粉株式会社製「フラワー」)に、砂糖、食塩および膨張剤(炭酸水素ナトリウム)を上記の表3に示す量で配合して、ホットケーキ用ミックス粉を製造した。
(2) 卵50gと牛乳150gを混合して調製した卵乳液200gを、上記(1)で製造したホットケーキ用ミックス粉200gに加えてよく混ぜて生地を調製し、この生地を用いて実施例1と同様にしてホットケーキを製造した。
(3) 上記(2)で調製した生地の性状(取り扱い性)、上記(2)で得られたホットケーキの厚さを下記の方法で測定すると共に、得られたホットケーキの外観、食感(モチモチ感、しっとり感、滑らかさ)を下記の表4に示す評価基準にしたがって10名ノパネラーが評価し、その平均値を採ったところ、下記の表5に示すとおりであった。
Figure 0006168685
Figure 0006168685
上記の表5にみるように、実施例1〜7では、澱粉損傷度が10%以上である米粉を用いてホットケーキ用ミックス粉を製造し、当該ホットケーキ用ミックス粉を用いてホットケーキを製造したことにより、実施例1〜7で得られたホットケーキは、モチモチ感、しっとり感および滑らかさの評点がすべて2.3点以上であって、大半が2.5点以上であり、食感に優れている。
しかも、実施例1〜7で得られたホットケーキは耐老化性においても優れていて、4時間後でも食感の低下が小さい。
そして、実施例1〜7のうち、実施例1、3、6および7では、ホットケーキ用ミックス粉の製造に用いた米粉が、澱粉損傷度が10%以上であるという特性と共に、中位径(D50)が40μm以上であるという特性をも満たしていることによって、実施例1,3、6および7では、食感に優れるだけでなく、ホットケーキ用ミックス粉に卵乳液を添加して得られた生地がホットケーキの製造に適していて、予定通りの直径の円形状に流し込むことができ、しかも得られたホットケーキは厚さが大きく、円形をなしていて外観にも優れている。
それに対して、比較例1〜7では、澱粉損傷度が10%よりも小さい米粉を用いてホットケーキ用ミックス粉を製造し、当該ホットケーキ用ミックス粉を用いてホットケーキを製造したことにより、比較例1〜7で得られたホットケーキは、モチモチ感、しっとり感および滑らかさの評点のほとんどが1点台であって、食感に劣っている。また、比較例1〜7で得られたホットケーキは耐老化性に劣っていて、4時間後に食感が低下した。
そして、比較例1〜7のうち、比較例1および4では、ホットケーキ用ミックス粉の製造に用いた米粉が、澱粉損傷度が10%未満で、しかも中位径(D50)が40μm未満であるために、比較例1および4では、食感に劣るだけでなく、ホットケーキ用ミックス粉に卵乳液を添加して得られた生地がホットケーキの製造に適しておらず、予定通りの直径の円形状に流し込むことができず、しかも得られたホットケーキは厚さが小さく、形が崩れており、外観にも劣っている。
《実施例8》[マドレーヌの製造]
(1) 全卵液200g、上白糖200gおよび蜂蜜69gを予め混合しておき、これに、製造例1の実験番号3Aで得られた米粉(3A)(予め篩ったもの)200g、ベーキングパウダー(炭酸水素ナトリウム)3gおよびバター200gを加えて生地をつくり、この生地を冷蔵庫で10℃で2時間休ませた。
(2) 生地を冷蔵庫から取り出して、マドレーヌ型に25gずつ絞り、190℃で14分間焼成した。
(3) 上記(2)で得られたマドレーヌは、よく膨らんでいて外観に優れ、モチモチしていて、しっとり感があり、滑らかで食感に優れていた。
《比較例8》[マドレーヌの製造]
(1) 米粉(3A)200gの代わりに、製造例1の実験番号6Bで得られた米粉(6B)(予め篩ったもの)200gを用いた以外は実施例8と同じ配合および方法によってマドレーヌを製造した。
(2) 上記(1)で得られたマドレーヌは、モチモチしておらず、しかも実施例8で得られたマドレーヌに比べて、しっとり感および滑らかさに劣っていた。
本発明の洋菓子用米粉組成物を用いることによって、よく膨らんでいて外観に優れ、モチモチ感があり、しっとりしていて、滑らかで良好な食感を有し、しかも老化しにくくて日持ちの良い洋菓子類を製造することができ、更に取り扱い性および作業性に優れる生地を製造することができ、その上小麦粉およびグルテンを含まない本発明の洋菓子用米粉組成物は、小麦アレルギーの人でも安心して用いることができるので、ホットケーキ、パンケーキ、マフィン、マドレーヌ、バターケーキ、ドーナツ、クッキー、スコーンなどの洋菓子の製造に有効に用いることができる。

Claims (3)

  1. ホットケーキ用またはマドレーヌ用の米粉組成物であって、澱粉損傷度が10〜25%で且つ粒度の累積分布による中位径(D50)が40〜300μmである米粉を当該米粉組成物に含まれる穀粉の全質量に基づいて100質量%の割合で含有し、且つグルテンを含有しない、ことを特徴とする、ホットケーキ用またはマドレーヌ用の米粉組成物。
  2. 液体資材を含まないホットケーキ用またはマドレーヌ用のミックス粉である請求項米粉組成物
  3. 請求項1または2米粉組成物を用いて常法によってホットケーキまたはマドレーヌを製造する方法。
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