第1の発明は、移動する可動体を検出する可動体検知センサと、前記可動体検知センサとは別に設けられ、移動しない固定体の温度を検出する固定体温検知センサと、前記可動体検知センサと前記固定体温検知センサとの出力に基づき風向、風量、圧縮機回転数の少なくともいずれか一つを制御する制御部とを備え、前記可動体検知センサは焦電素子型の赤外線センサで構成して固定式とするとともに、前記固定体温検知センサは熱電素子型の赤外線センサで構成して可動式としてある。
これにより、サーモパイルに代表される熱電素子型赤外線センサのような高価な赤外線センサからなる固定体温検知センサは可動させて、床面等の温度を検知する一方、焦電型赤外センサのような安価な赤外線センサからなる可動体検知センサは固定しておいて、空調すべき部屋等の被検出部分全体を常時監視させ、人の移動があれば瞬時にその移動位置を検出することができる。よって、前記可動体検知センサが人の移動(以下、人移動と称す)を検出すれば、前記可動式の固定体温度検知センサによる床面温度の検出に時間がかかっても、当該固定体温度検知センサが検出していた人移動後の位置における人移動前の状態の床面温度を用いて即座に風向、風量、圧縮機回転数のいずれかを変更する制御ができ、人移動から遅れることなく人が存在する位置(以下、人位置と称す)での快適性を向上させることができる。
第2の発明は、第1の発明において、前記制御部は空調すべき空間を複数の人検知領域に区分し、前記人検知領域における可動体検知センサからの出力で人の在否を検出するとともに、空調すべき空間を、前記人検知領域を複数含む床温検知領域に区分し、前記床温検知領域における固定体温度検知センサからの出力で床面温度を検出し、前記可動体検知センサの出力と前記固定体温度検知センサの出力により風向、風量、圧縮機回転数の少なくともいずれか一つを制御するものである。
これにより、固定式の可動体検知センサを用いていても領域毎に人の在否を検出し、人が移動した位置に向けて的確かつ即座に、人位置の床面温度に応じて、風向、風量、圧縮機回転数のいずれかを変更する制御ができ、前記第1の発明と同様、人移動から遅れることなく人位置の快適性を向上させることができる。
第3の発明は、第2の発明において、前記制御部は、前記可動体検知センサが人を検出した人検知領域が複数であると当該複数の人検知領域に風向を向けるように風向変更板を可動させるとともに、前記人を検出した人検知領域を含む床温度検知領域における床面温度を比較し、前記床面温度に基づいて空調負荷が大きいと判定された側の人検知領域に長く風向を向けるように制御するものである。
これにより、空調すべき部分に人が分かれて位置もしくは移動した場合、空調負荷が大きい方の場所側に長く吹出し風を供給するので、空調負荷の大きい側の人位置をより迅速に快適空間とすることができる。
第4の発明は、第2または第3の発明において、固定体温度検知センサの前方を覆う赤外線透過型のカバーと、空調すべき空間の温度を検出する吸込温度検知センサとをさらに備えるとともに、前記固定体温度検知センサは固定体が放射する赤外線を検知するサーミ
スタと固定体温度検知センサの周囲温度を計測する温度補正用サーミスタとを内部に備え、制御部は前記吸込温度検知センサと前記温度補正用サーミスタとの両出力に基づき、床面温度を補正するものである。
これにより、固定体温度検知センサが床面温度とともに、固定体温度検知センサの前方を覆うカバーの温度をも検出していても、このカバーの温度の影響を補正することができる。また、固定体温度検知センサの設置部分の周囲温度の影響を補正することができる。このため、固定体温度検知センサは床面温度を誤検知することなく正確に検出可能となる。これにより、床面温度の誤検知による空調遅れを防止できる。例えば、空調運転開始時の空調立ち上がり時等であって、空調すべき空間の温度(室内温度)が急激に変動するようなときであっても、正確に床面温度を検出することができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
この実施の形態の空気調和機は、冷媒配管及び制御用配線等により互いに接続された室内機と室外機とで構成され、室外機には圧縮機が設けられている。
図1及び図2はこの空気調和機の室内機を示している。図1及び図2に示すように、室内機の外観を構成する本体1は、空気を吸い込む吸い込み口2と、熱交換された空気を吹き出す吹き出し口3とを備えている。吸い込み口2は、本体1の天面部分の吸い込み開口2aに本体前面の開口部分2bを合わせた形となっている。また、本体1は、本体1の前面を覆う前面パネル4を備えている。
本体1の内部には、室内空気に含まれる塵埃を補足するためのフィルタ5と、取り入れた室内空気を熱交換する熱交換器6と、吸い込み口2からフィルタ5を通して取り入れた室内空気を熱交換器6で熱交換して吹き出し口3から室内に吹き出すための気流を発生させる貫流式のファン7とが設けられている。
吹き出し口3には、当該吹き出し口3を開閉するとともに、空気の吹き出し方向を上下方向に変更することができる上下羽根8が設けられている。上下羽根8は、上羽根8aと、この上羽根8aの下方に設けられた下羽根8bとを備えている。上羽根8a、下羽根8bはそれぞれ、左右両端のいずれかの回転軸において、ステッピングモータ等からなる駆動モータの回転軸に連結されている(図示せず)。そして、この駆動モータの動作により、上羽根8a、下羽根8bは、それぞれ上下方向に回動する。
また、ファン7の下流側から吹き出し口3の上流側に至る通風路9には、空気の吹き出し方向を左右に変更することができる複数枚の左右羽根10が設けられている。複数枚の左右羽根10は、羽根の動きを連動させる連結桟により連結されていて、この発明でいうところの風向偏向板を構成している。連結桟はステッピングモータ等からなる駆動モータの回転軸に連結されている(図示せず)。そして、この駆動モータの動作により、複数枚の左右羽根10は、それぞれ左右方向に回動する。
また、前記本体1の天面と前面パネル4とフィルタ5との間には電装ユニット11が配置してある。この電装ユニット11は本体1を構成する台枠の一部を利用して装着してあり、前記ファン7、上下羽根8、左右羽根10、圧縮機等を制御して当該空気調和機の運転を制御する制御装置となっている。
ここで、上記のような構成を持つこの空気調和機には、図1に示すように本体1の下部前面部分に人体を検知する可動体検知センサ12(以下、人体検知センサと称す)と床面
や壁面等の固定体の温度を検知する固定体温度検知センサ14(ここでは床面温度を検知する場合を例として説明するため以下、床温度検知センサと称す)が併設して設けてある。これらは前面パネル4の下面に設けられており、人体検知センサ12、床温度検知センサ14の前面は赤外線を透過する樹脂製のカバー15で覆われる構成となっている。なお、図1においてはカバー15を下方に若干ずらして、カバー15内部に設けられた人体検知センサ12と固定体温度検知センサ14とが見えるように図示している。
人体検知センサ12は、図3に示すように、複数(例えば、三つ)のセンサユニット16、17、18で構成され、センサホルダ19に保持され可動することなく固定した状態で組み込まれている。そして、前記各センサユニット16、17、18のセンサ素子は、人体から放射される赤外線を検知する焦電素子型の赤外線センサにより構成しており、各センサユニット16、17、18のセンサ素子が検知する赤外線量の変化により空調すべき部屋全体の人存否と移動を常時検出し、後述する人存否兼移動判定部はその赤外線量の変化に応じて出力するパルス信号に基づき人の在否や移動等を判定する。
一方、固定体温度検知センサ14は、図4に示すようにセンサ素子20aを設けた素子ホルダ20とこれを回転駆動させるモータ21とをセンサ本体14aにユニット化して組み込んである。素子ホルダ20は、鉛直方向を中心軸として回転可能な略円盤状の基部20bと、基部20bの水平面(中心軸に垂直な面)に対して傾斜して設けられた略矩平板状の傾斜保持部20cとを備えている。そして、センサ素子20aは傾斜保持部20cの平面に対して垂直に設けられている。
上記モータ21によって素子ホルダ20を所定周期で空調すべき部屋の一方端から他方端まで可動させて部屋の床面や壁面等の固定体、この例では床面の温度を検出測定している。固定体温度検知センサ14のセンサ素子20aは、サーモバイルと称される熱電素子型の赤外線センサである。センサ素子20aに内部には、固定体が放射する赤外線を検知するサーミスタ(図示せず)と温度補正用サーミスタ(図示せず)を備えていて、こられの出力から固定体の絶対温度を検出できるようになっている。
そして、センサ素子20aが傾斜保持部20cを介して中心軸に対して傾斜して設けられているために、センサ素子20aは空気調和機より前方下方の空調すべき領域を検知可能となっている。
図5は上記人体検知センサ12と床温度検知センサ14からの出力に基づいて空調制御を行う空気調和機の制御ブロック図である。
この図5の制御ブロック図に示す空気調和機の制御装置は、空気調和機全体の制御を行う制御部22を備え、前記人体検知センサ12および床温度検知センサ14に加え、後述する室温を検出する吸込温度センサ等多くのセンサからの出力に基づきあらかじめ定めたシーケンスに従って空気調和機を制御する。
以下、その構成を説明すると、図5において、本制御装置は、制御部22を中心として、入力装置23、室温検出部24、人存否兼移動判定部25、固定体温度判定部26(この例では床の温度を判定するので、以下、床温度判定部と称す)、記憶部27、及び冷暖房出力部28から構成される。
入力装置23は、在室者が希望する室温、即ち設定室温の入力を受け付ける室温設定部29や冷暖房モードを選択するための冷暖房モード選択部30を有し、さらに図示していないが、室温制御を起動させる指示部を有している。この入力装置23は、例えばリモートコントロール方式(以下、リモコンと称す)で入力できる操作装置であり、これにより
在室者が手元で設定した室温や冷暖房モードに関する情報が無線によって制御部22に伝送される。
室温検出部24は、本体1の吸い込み口2に設けたサーミスタ等からなる吸込温度検出センサ31を有し、常時、略室温となる吸込空気の温度を検出してその情報を制御部22に送っている。
人存否兼移動判定部25は、前記した人体検知センサ12からの出力情報を基に人の存否と移動を判定するもので、空調すべき部屋全体を複数の領域(以下、人検知領域と称す)に分けて人の存否と移動を判定し、制御部22に出力する。
床温度判定部26は前記床温度検知センサ14からの出力情報を基に固定体、この例では床面の温度を判定するもので、前記人体検知センサ12が人存否と移動の判定に用いる領域を複数含む領域(以下、床温検知領域と称す)ごとにその床面温度を判定し、制御部22に出力する。
記憶部27は、リードオンリーメモリ(ROM)及びランダムアクセスメモリ(RAM)を含み、制御部22の制御手順を規定したプログラムや制御部22によって演算された一時的な温度データを記憶している。例えば、この記憶部27は、前記した床温度検知センサ14が所定周期で検出する床温検知領域ごとの温度も床温度判定部26で処理した後、制御部22を介して随時上書き記憶する。
制御部22は、マイクロプロセッサを主体に構成されており、制御目標温度算出部32、温度到達検出部33、及び出力制御部34を有している。これらは、記憶部27に記憶されたプログラムに従って動作する。なお、図示しないが、制御部22は内部にタイマーを有し、時間の計測や判断もできる。
制御目標温度算出部32は、入力装置23によって設定された設定室温に基づいて、制御上、到達すべき室温(吸込温度)の目標値である基準設定温度を算出する。
出力制御部34は、算出された基準設定温度と、吸込温度検出センサ31が検出した室温(吸込温度)とを比較し、両温度の差がゼロになるように冷暖房出力部28の出力を制御する。温度到達検出部33は、室温(吸込温度)が基準設定温度に到達したかどうかを判断する。
冷暖房出力部28は、圧縮機、膨張弁及びインバータ等への出力部とファン7、上下羽根8、左右羽根10等の吹出し要素を駆動するモータを備え、出力制御部34からの信号に基づいて室内への吹き出し空気の風向や風量、吹出し風の温度や設定温度等を調整している。
次に上記のように構成された空気調和機の動作について図6のフローチャートを用いて説明する。
この空気調和機は既に述べたように入力装置23はリモコンで構成してあり、このリモコンをユーザが操作して、冷房運転や暖房運転の指示、所望する室内の温度(設定温度)の設定を行い、運転を開始する。
これにより、まず、人体検知センサ12が空調すべき部屋の全域を検知し、その中で赤外線量が変動している部分を検出して、これに基づき人存否兼移動判定部25が人位置を判断する(ステップS1)。
この人存否及び移動の検出は、空調すべき部屋空間を複数の領域に区分けし、人体検知センサ12からの赤外線量変動検出出力が前記複数の領域のどの領域から出ているのかを判定して人の存否と移動を判定する。
図7は人存否兼移動判定部25が人体を検知する部屋、すなわち人体検知センサ12が検知対象とする領域(つまり、検知可能な領域)を模式的に示している。本実施の形態では人体検知センサ12を構成する3個のセンサユニット16、17、18を適切に配置することで、図7に示すように領域A〜Gの複数の領域(人検知領域)における人体検知が可能となっている。そのような判断を行う具体例については後に述べる。
次に上記のようにして人位置と移動を判定すると同時に、床温度検知センサ14が部屋の一方端から他方端に向かって可動を開始して床面温度をスキャンする(ステップS2)。
図8は床温度判定部26が床面温度を検知する部屋、すなわち床温度検知センサ14が検知対象とする領域(つまり、検知可能な領域)を模式的に示している。本実施の形態では床温度検知センサ14を構成する1個の床温度検知センサ14を可動式に配置することで、図8に示すようにブロックL、CN、Rの複数の領域(床温検知領域)における床面温度の検知が可能となっている。
以下に、床温検知領域について説明する。床温度検知領域のすべて(ブロックLとブロックCNとブロックRの和)は、人検知領域のすべて(領域A〜Gの和)と一致させてある。そして、各々の床温度検知領域には、複数の人体検知領域を含ように、また、人体検知領域の境界と床温度検知領域の境界とが略一致するように設定されている。
より具体的には、ブロックLは、領域Aの一部(本体1からみて右側の略1/3の部分)と、領域B、領域Eとを含み、また、ブロックLの境界は、領域Bと領域Eの端部の境界と一致している。ブロックCNは、領域Aの一部(本体1からみて中央の略1/3の部分)と、領域C、領域Fとを含み、また、ブロックCNの境界は、領域Cと領域Fの端部の境界と一致している。ブロックRは、領域Aの一部(本体1からみて左側の略1/3の部分)と、領域D、領域Gとを含み、また、ブロックRの境界は、領域Dと領域Gの端部の境界と一致している。
このように、床温度検知領域は、室内機に対して前後方向に並ぶ複数の人体検知領域をまとめるように設定しているので、床温度検知センサ14は、室内機に対して前後方向の領域を検知できるように、センサ素子20aを複数個ならべて配置する必要がない。これによって、床温度検知センサ14の低コスト化が可能である。
ステップS2での床面温度スキャンによる床面温度検知は、前記人体検知センサ12によって人体を検出した領域に応じたブロックごとにその床面温度を測定するようになっており、その床面温度の具体的な検知方法については後述する。
上記床面温度を検出する床温度検知センサ14は、床面からの赤外線とともにこれが設置されている部分の周囲温度に起因する赤外線の変動や、床温度検知センサ14を覆っているカバー15自体からの赤外線も検出するので、これらの影響を排除するため、温度補正を行う(ステップS3)。これによって、精度の高い床面温度の検出が可能となる。この温度補正を可能とする具体的な温度補正方法については後述する。
次に、上記温度補正に基づきブロックL、CN、Rごとの床面温度を特定し(ステップ
S4)、これを記憶部27に上書き記憶する(ステップS5)とともに、前記人を検知した領域を含むブロックの床面温度を判定する(ステップS6)。
その後、設定温度から、空調すべき部屋の温度制御を行う上での目標値である基準設定温度を決定する(ステップS7)。基準設定温度は通常、室内設定温度と同等の温度であるが、リモコン等の入力装置23により設定された各種の運転設定に応じて、補正を行った設定温度である。
より具体的には、リモコン等の入力装置23により通常の空調運転より省エネルギーの空調運転を行う節電運転等の特殊な運転が設定されると、基準設定温度を、例えば、冷房運転の節電運転時には、通常の空調運転時の基準設定温度より高めに補正し、暖房運転時には、通常の空調運転時の基準設定温度より低めに補正する。あるいは、リモコン等の入力装置23により通常の空調運転より強力な空調運転を行うパワフル運転等の特殊な運転が設定されると、基準設定温度を、例えば、冷房運転のパワフル運転時には、通常の空調運転時の基準設定温度より低めに補正し、暖房運転時には、通常の空調運転時の基準設定温度より高めに補正する。これにより、ユーザが設定した室内設定温度を基本にしながらユーザの意図に沿った節電運転、あるいは、パワフル運転等の特殊な運転が実行されることになる。
次に、室内設定温度から床制御目標温度を決定する(ステップS8)。床制御目標温度は通常、室内設定温度と同等の温度であるが、ステップS6で測定した床面温度に応じて補正を行った温度である。より具体的には、例えば冷房時に測定した床面温度が室内設定温度より高ければ、室内設定温度より低めに補正し、暖房時に測定した床面温度が室内設定温度より低ければ、室内設定温度より高めに補正する。これにより、冷房運転時には、高い床面温度をより速く低下させることができ、暖房運転時には、低い床面温度をより速く上昇させることができる。
この床面制御目標温度の決定後、空調領域での室温である吸込温度が基準室内設定温度となるように圧縮機やファン7などの冷凍サイクル構成部品が制御されて、室内の空調運転を行う(ステップS9)。
前記人を検知した位置の領域を含むブロックの床面温度と床制御目標温度との差を比較判定し(ステップS10)、その差の絶対値が所定値(例えば、1K)より大きければ、基準設定温度を補正する(ステップS11)。例えば、冷房運転時には、基準設定温度を低めに補正し、暖房運転時には、基準設定温度を高めに補正する。なお、上記基準設定温度は、床面温度と床制御目標温度との差の程度に応じて複数段階に補正可能とすれば、後に詳述する様に一段と迅速な快適空間の実現が可能となる。
次に、設定した基準設定温度と吸込温度検出センサ31で検出される吸込温度に代表される空調後の室温との差に基づいて、空調出力、すなわち、風量、圧縮機回転数の少なくともいずれか一つを設定する(ステップS12)。より具体的には、基準設定温度と吸込温度との差に応じて、圧縮機回転数を設定し、その圧縮機回転数に応じて、風量、すなわち、ファン7の回転数を設定する。
この空調出力の設定は、吸込温度と比較する前記基準設定温度が、ステップS11において、人を検知した位置の領域を含むブロックの床面温度を加味したものとなっているため、空調出力も人が存在する位置での床面温度を反映したものとなる。つまり、この空調出力を行うことで、冷房運転時には、吹出温度が低下することになり、人が存在する位置での床面温度を迅速に低下させることができる。また、暖房運転時には、吹出温度が上昇することになり、人が存在する位置での床面温度を迅速に上昇させることができる。この
ため、効率よく、かつ、迅速に人移動領域を快適空間とすることができる。
また、この空調出力の設定は、吸込温度と比較する前記基準設定温度が、ステップS7においてユーザが設定した特殊な運転条件を加味した形のものとなっているから、空調出力もユーザが設定した特殊な運転の意図を反映したものとなる。したがって、ユーザの特殊な運転の意図に沿った形で効率よく、かつ、迅速に人移動領域を快適空間とすることができる。
さらに、上記の如くして設定された空調出力でもって人のいる位置へと吹出し風を向ける制御を行う(ステップS11)。なお、この吹出し風の具体的な風向制御法の一例については後述する。
空調が実行されて所定時間、例えばこの例では15分が経過すると(ステップS14)、再びステップS2に戻って床温度検知センサ14による床面温度のスキャンを行い、ステップS3からステップS14を繰り返す。
この間、人体検知センサ12は空調すべき部屋全体を検知し、その中で赤外線量が変動している部分を検出し続けており、当該赤外線量が変動した領域から検出されると、人存否兼移動判定部25が瞬時にこれを認知し、人移動もしくは新たに人が加わったことを判断する(ステップS1)。
そして、上記新たに人を検知した領域を含むブロックの床面温度をステップS6で判定する。これは、前回のステップS4で検出し、ステップS5で上書き記憶していた前回の該当ブロックの床面温度、すなわち今回新たに人を検出した領域を含むブロックについて前回検出した床面温度を床面温度として判定する(ステップS6)。
この新たに人を検出した位置、すなわち人が移動した位置の床面温度を判定すると、ステップS7〜ステップS11を経てステップS12により空調出力を設定し、ステップS13により、吹出し風をその人移動位置に向けるように風向偏向板である左右羽根10を駆動して空調を実行する。
これにより、人体検知センサ12が人移動を検出すると、左右羽根10を駆動して新たに人を検出した領域へと吹出し風を変更し、当該領域を吹出し風で冷房もしくは暖房することができる。すなわち、人が移動すると、人移動に追従して瞬時に人移動位置へと吹出し風を向けることができる。したがって、移動直後から吹出し風による空調が得られ、快適な空調が即得られる。
さらに、この人移動位置へと向けられる吹出し風の温度は、人移動位置での床面温度に応じて設定する空調出力によって変更される。これにより、人が移動した際、その移動位置に向ける吹出し風の温度は暖房時には高め、冷房時には低めの吹出し風となり、安定空調時よりも高め或いは低めの吹出し風を供給して人位置をより迅速に快適空間とすることができる。しかも、この高め或いは低めの吹出し風を供給することによってユーザが床面から受ける冷輻射或いは熱輻射を和らげ、移動した直後も移動前の暖房感或いは冷房感に近い感触を得られるようになり、より快適な空調が可能となる。
また、前記空調を行っていて時間が経過し人位置領域の床面温度と床制御目標温度との差が小さくなると、これにつれて基準設定温度は前記とは逆の形で補正され、室温との差が次第に少なくなって空調出力もそれに伴い小さくなり、ユーザに空調出力の変動を感じさせることなく快適空間へと移行させることができる。
ここで、上記新たに人を検出した領域を含むブロックの床面温度を前回検出時の該当ブロックの床面温度としているが、床はそれが持つ熱容量が大きいので、床温度検知センサ14による床面温度のスキャン検知間隔が15分程度であればその間に床面温度が大きく変動するようなことがないので、特に支障をきたすことはない。
なお、既述したように前記人移動を検出した領域を含むブロックの床面温度と床制御目標温度との差に応じてステップS11で補正する基準設定温度は、床面温度と床制御目標温度との差の程度に応じて複数段階に補正可能としてあるから、快適性空間へのスピードアップが可能となる。例えば、人移動を検出した領域の床面温度と床制御目標温度との差が1Kであれば、その補正は、例えば暖房時は+0.5℃、冷房時は−0.5℃とし、8Kであれば、その補正は、例えば暖房時は+3℃、冷房時−3℃と補正する。
これによって、人移動領域の床面温度に応じて基準設定温度が変更され、その結果として当該基準設定温度と吸込温度との差によって設定されるステップS12での空調出力は大きなものとなって、人移動直後の領域を迅速に基準設定温度に近づけることができ、快適性空間へのスピードアップが可能となる。
次に上記一連の動作説明で用いた「人位置検知」、「床面温度スキャン」、「床面温度検知センサの温度補正」、「人位置への風向制御」の一例について、以下説明する。
まず、ステップS1で行う「人位置検知」動作の一例について図9を用いて説明する。
図9のフローにおいて、まずステップS21において、所定の周期T1(例えば、5秒)で各領域における人の在否を判定する。
この人の判定方法を以下に説明する。例えば、センサユニット16は領域A、領域B、領域C、領域Dを検知可能に構成されている。センサユニット17は領域B、領域C、領域E、領域Fを検知可能に構成されている。センサユニット18は領域C、領域D、領域F、領域Gを検知可能に構成されている。
このような構成とすることによって、例えば、センサユニット16とセンサユニット17で人体を検知する一方で、センサユニット18で人体を検知しない場合には、領域Bに人体が存在すると空気調和機は判断することができる。
上述したように、周期T1毎に各領域A〜Gにおける人の在否が判定するが、周期T1の反応結果(判定)として1(反応有り)あるいは0(反応無し)を出力し、これを複数回繰り返した後、ステップS22において、存在反応が所定数得られたかどうかを判定し、所定数に達していないと判定されると、ステップS21に戻る一方、所定数Mに達したと判定されると、ステップS23において、人体検知時に判別した領域特性に基づき当該領域にお人が存在すると推定する。
なお、この例では上記人体検知センサ12を用いて検知できる領域を7つとしたが、これは一例であって、本発明はこれに限定されない。
また、本実施の形態に係る空気調和機では、上記人体検知センサ12から出力される信号(人体の動き)に基づいて、人体の活動量の大小を判断するようにも設定することができる。この人体の活動量は、「大」・「中」・「小」の3段階に分けて判断される。すなわち、人体検知センサ12によって所定の検出時間(例えば、2分間)に人が検出される回数に応じて、人の活動量を3段階で判断する。より具体的には、人検出の回数が所定の回数Xよりも少ない場合は、活動量が「小」と判断される。人検出の回数が所定の回数Y
よりも多い場合は、活動量が「大」と判断される(所定の回数X<所定の回数Yとする)。活動量が「大」および「中」と判断される場合は、人の動きが大きい(活動量が所定量よりも大きい)ときである。特に、活動量が「大」と判断されるのは、人の動きが激しいときである。これに対し、活動量が「小」と判断される場合は、人の動きが少ないとき(活動量が所定量よりも小さい)である。この活動量の情報をも床面温度情報に加えて前記した人位置における空調制御を行うようにしてもよく、このように構成することによって更にその快適性を高いものとすることができる。まお、4段階以上に分けて判断してもよいことはいうまでもない。
次に、ステップS2で行う「床面温度スキャン」動作の一例について図10を用いて説明する。
まず、モータ21によって、床温度検知センサ14の方向が、検知開始位置STの方向に向けられる。ここで、床温度検知センサ14は、幅方向に所定の検知幅(例えば20deg)を有しているため、検知開始位置STを、ブロックLの本体1に近い側の境界より内側、具体的には、上記検知幅の1/2内側(例えば10deg内側)に設定することで、不必要に大きな角度で床温度検知センサ14を回転させることがない。
そして、モータ21によって、床温度検知センサ14を、検知開始位置STから検知終了位置ENへと滑らかに回動させ、その過程で、床温度検知センサ14が向いている方向の床面温度を検出し、その検出値を記憶部27に順次、記憶していく。なお、検知終了位置ENも、ブロックRの本体1に近い側の境界より内側、具体的には、上記検知幅の1/2内側(例えば10deg内側)に設定することで、不必要に大きな角度で床温度検知センサ14を回転させることがない。
次に、ブロックL、CN、Rのブロックごとに、記憶部27に記憶した床面温度のうち最大値と最小値を演算する。ここで、各ブロックの演算範囲を各ブロックの境界より内側、具体的には、上記検知幅の1/2内側(例えば10deg内側)に設定することで、隣接するブロックの床面温度を演算してしまうことを防止できる。
そして、冷房運転時の場合には、上記最大値をそのブロックの床面温度とし、暖房運転時の場合には、上記最小値をそのブロックの床面温度とする。これによって、各ブロックに含まれる最も快適性の低い部分を基準に、空調出力を決定することができるので、快適性を向上することができる。
次に、ステップS3で行う「床面温度検知センサの温度補正」の一例について説明する。
制御部22は、床温度検知センサ14の2つの出力、つまり、固定体が放射する赤外線を検知するサーミスタと床温度検知センサ14の周囲温度を計測する温度補正用サーミスタとの両出力と、吸込温度検出センサ31の出力から、床面温度を補正している。より具体的には、下記式1に基づいて、補正を行う。
つまり、補正後の床面温度は、補正前の床面温度(床温度検知センサ14の出力)から
、カバー15の推定温度と床温度検知センサ14の周囲温度(温度補正用サーミスタの出力)との差と、床温度検知センサ14やカバー15に応じた固有の値として算出される増幅率αとの積を引いたものである。ここで、カバー15の推定温度は、吸込温度(吸込温度検出センサ31の出力)と床温度検知センサ14の周囲温度(温度補正用サーミスタの出力)の平均とすればよい。
この補正によって、床温度検知センサ14は、床面温度とともにカバー15の温度を検出していても、これを相殺補正できる。なお、カバー15内(カバー15で覆った床温度検知センサ14の設置部分)の温度を検知する検知センサを新たに設け、この出力値をカバー15の推定温度としてもよい。
これによって、床温度検知センサ14は床面温度を誤検知することなく正確に検出可能となる。その結果、床面温度の誤検知に起因する空調遅れ、例えば暖房時に床面温度を実際より高いと検出して弱い空調出力で空調を行うことにより生じる空調遅れを確実に防止でき、迅速に快適空間とすることができる。しかも空気調和機の床温度検知センサ14や人体検知センサ12をカバー15で覆って本体1の外観をすっきりとしたものとすることもできる。
なお、床温度検知センサ14をカバー15で覆わない場合であっても、床温度検知センサ14の周囲温度(温度補正用サーミスタの出力)が正確に検知できないことによって、床温度検知センサ14は床面温度を誤検知することがある。これは、床温度検知センサ14が、吸い込み口2に吸い込まれる吸込み風や、吹き出し口3から吹出される吹出し風に比べて、風速の遅い本体1の前方下部に配置されているために、吹出し風の温度に追従できず、真の床温度検知センサ14の周囲温度を検知できないことによる。
これを防止するために、下記式2に基づいて、補正を行ってもよい。
つまり、補正後の床面温度は、補正前の床面温度(床温度検知センサ14の出力)から、真の床温度検知センサ14の周囲温度と床温度検知センサ14の周囲温度(温度補正用サーミスタの出力)との差と、床温度検知センサ14に応じた固有の値として算出される増幅率βとの積を引いたものである。ここで、真の床温度検知センサ14の周囲温度は、吸込温度(吸込温度検出センサ31の出力)と床温度検知センサ14の周囲温度(温度補正用サーミスタの出力)の平均とすればよい。
これによれば、空調運転開始時の空調立ち上がり時等であって室内温度が急激に変動するときのように、温度補正用サーミスタが、真の周囲温度を検出できないときであっても、床温度検知センサ14で検出する床面温度は、正確に床面温度を検出することができる。したがって、空調立ち上がり時等の温度変動の大きいときに床面温度を誤検知して以降の制御に影響を与えるようなことを防止でき、誤検知による空調遅れがなく迅速に快適空間とすることができる。
最後に、ステップS13で行う「人位置への風向制御」動作の一例について図11を用いて説明する。
図11において、ステップ31で領域A〜Gにおける人の在否判定がまず行われ、ステップS32において、人がいると判定された領域を含むブロックが一つの場合、ステップS33においてモード1の制御を行う。ステップS32において、人がいると判定された領域を含むブロックが一つではないと判定されると、ステップS34において、人がいると判定された領域を含むブロックが二つかどうかを判定し、二つの場合、ステップS35でモード2の制御を行う。さらに、ステップ34で人がいると判定された領域を含むブロックが二つでないと判定されると、ステップ36において三つ以上かどうか(ブロックが三つ以上に区分されている場合には三つ以上かどうか)を判定し、三つの場合(ブロックが三つ以上に区分されている場合には三つ以上の場合)、ステップ37でモード3の制御を行う。
上記人がいると判定された領域を含むブロック、つまり、重点的に空調すべきブロックが判定されたのちに行う各モードの風向制御例は種々考えられるが、その代表的な例を図11に表の形で併記しておき、以下説明する。
まず、モード1は、左右羽根10を駆動してその人がいると判定された領域を含むブロックに吹出し風を向けるとともに、当該領域の床面温度に基づき補正された基準設定温度と吸込温度との差に応じた空調出力によって空調を行う。
例えば、領域Bに人がいると判定された場合には、領域Bを含むブロックLの方向に左右羽根10を固定する。また、ブロックLの床面温度に基づき補正された基準設定温度と吸込温度との差に応じた空調出力によって空調を行う。
なお、領域Aに人が位置していると判定された場合には、人がいる位置が部屋の片方あるいは両側部あるいは真ん中、すなわちブロックL、CN、Rのいずれのブロックに人が位置しているのかが判別できない。このため、この場合には、左右羽根10は、領域A全体に気流が届くように左右に所定の周期(例えば、1分間に1往復)で、揺動(スイング)させる。この際、領域Aの両端において、左右羽根を所定時間停留させないことで、領域Aの全体に均一に風が届くようにできる。
また、モード2では、左右羽根10を人がいると判定された領域を含むブロックの間で、揺動させて該当する二つの領域に吹出し風を向けるとともに、当該ブロックの床面温度に基づき補正された基準設定温度と吸込温度との差に応じた空調出力によって空調を行う。この時、左右羽根10は二つのブロックの間を揺動するが、各ブロックのところでしばらく停留して当該ブロック内に吹出し風が多く吹出されるようにし該当ブロックを迅速に暖房あるいは冷房するようになっている。そしてこの場合、二つのブロックの床面温度が異なる場合には、床面温度と床制御目標温度との差が大きい方により長く停留させて吹出し風を吹出すように設定している。
例えば、領域Bと領域Fに人がいると判定された場合には、領域Bを含むブロックLと、領域Fを含むブロックCNとの間で左右羽根10を揺動させる。あるいは、領域Bと領域Gに人がいると判定された場合には、領域Bを含むブロックLと、領域Gを含むブロックRとの間で左右羽根10を揺動させる。この場合に、ブロックLの床面温度がブロックRの床面温度より低い場合には、ブロックRよりブロックLで停留する時間を長くして、ブロックLの床面温度をより上昇させる。
これによって、床面温度と床制御目標温度との差が大きいブロックの方も、他方のブロックと同等の速さで快適にすることができる。
最後に、モード3では、左右羽根10を人がいると判定された領域を含むブロックで揺
動させて該当する三つのブロックに吹出し風を向けるとともに、当該ブロックの床面温度に基づき補正された基準設定温度と吸込温度との差に応じた空調出力によって空調を行う。そして左右羽根10の揺動は三つのブロックの間を揺動するが、この場合三つのブロックのうち真ん中のブロック(ブロックCN)の床面温度が最も低く両側(ブロックLとブロックR)の床面温度がほぼ同じ温度である場合、左右両側部のブロック(ブロックLとブロックR)でしばらく停留して当該ブロック部分に吹出し風が多く吹出すものの、その停留時間を短くするとともに揺動速度を速めて真ん中のブロック(ブロックCN)に吹出し風が吹き出される回数が結果的に多くなるようにする。これにより、最も床面温度が低い真ん中ブロックであるブロックCNには結果的に多くの風が吹き出されるようになって、他のブロックと同等の速さで快適にすることができる。
なお、本実施の形態では、人がいると判定された領域が複数のブロックに渡る場合には、それらの複数のブロックの床面温度を平均して平均床面温度を算出し、この平均床面温度に応じて床制御目標温度を決定している。
なお、上記風向の制御において説明したモード1、モード2、モード3の左右羽根の揺動による吹出し風の風向制御例は一例にすぎず、これ以外に多くの制御例が考えられ、特にモード2とモード3にあっては、左右羽根の揺動・停留時間配分や揺動自体の速度・周期等種々考えられる。そして、この風向制御は具体的には説明しなかったが、上下羽根8も含めた形で行うとより効果的であり、この場合はこの上下羽根8も左右羽根10とともに風向変更板となる。更にはすでに触れたように人体検知センサ12によって人の活動量を検出することもできるので、この人の活動量も床面温度とともに取り込んだ形で制御を行えばより快適な空調制御が可能となる。
このように、この空気調和機は、人体検知センサ12が人移動を検出すれば、可動式の床温度検知センサ14による床面温度の検出に時間がかかっても、当該床温度検知センサ14が検出していた人移動後位置における人移動前の状態の床面温度を用いて即座に風向、吹出風温度、風量、設定温度、圧縮機回転数のいずれかを変更する制御ができ、人移動から遅れることなく人位置の快適性を向上させることができる。よって、空調安定期へと移行する過渡期の空調の快適性も大幅に向上させることができる。
以上、本発明に係る空気調和機について、上記実施の形態を用いて説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。つまり、本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
例えば、固定体温度検知センサ14はこの例では床面の温度を検知する場合で説明したが、これは壁面や家具、もしくは床面とともに壁面や家具の双方を検出する場合も含み得るものである。
また、人の存否及び移動検知、床面の温度検知、人位置への風向制制御等についても本実施の形態ではその一例を示したが、これもそれぞれの目的を達成するものであればどのような手法によるものであってもよくそのいずれをも含むものである。