JP6165259B2 - 人工土壌粒子、及び人工土壌培地 - Google Patents
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Description
繊維を集合してなる基部と、
前記基部を被覆する吸湿性多孔質被覆層と、
を備えたことにある。
灌水から24時間以内にpF値が1.7に到達する水分特性を有することが好ましい。
48時間以上に亘ってpF値が1.7〜2.7の範囲に存在する水分特性を有することが好ましい。
pF値1.5における気相率が30%以上に設定されていることが好ましい。
前記吸湿性多孔質被覆層の厚みaと前記基部の直径bとの比率a/bが、1/1200〜1/200に設定されていることが好ましい。
前記吸湿性多孔質被覆層の厚みaは、5〜10μmであることが好ましい。
前記基部の直径bは、2〜6mmであることが好ましい。
前記吸湿性多孔質被覆層は、珪藻土、パーライト、バーミキュライト、ゼオライト、ベントナイト、モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライト、スチブンサイト、マガディアイト、カネマイト、ノントロナイト、ソーコナイト、タルク、マイカ(雲母)、アイラアイト、マカタイト、及びケニヤアイトからなる群から選択される少なくとも一種の多孔質物質を含むことが好ましい。
上記の何れか一つの人工土壌粒子を使用したことにある。
図1は、本発明に係る人工土壌粒子50を模式的に示した説明図である。人工土壌粒子50は、繊維1を集合してなる基部10と、基部10を被覆する吸湿性多孔質被覆層2とを備えている。図1に示すように、基部10は、繊維1が複雑に集合した状態で造粒されたものであり、粒状に形成されている。吸湿性多孔質被覆層2には吸湿性を有する多孔質物質が含まれており、例えば、多孔質物質を樹脂材料に混合してペースト化し、多孔質物質含有ペーストを基部10の外表部にコーティングすることにより吸湿性多孔質被覆層2が形成される。本実施形態では、人工土壌粒子50は、図1に示すように、球状に近い立体形状に構成されているが、例えば、扁平したラグビーボール形状、突起を有する金平糖形状、多面体形状、一定以上の厚みを有する板状、不定形状等に構成することも可能である。
本発明の人工土壌粒子50の製造方法について説明する。初めに、人工土壌粒子50のベースとなる基部10を形成する。例えば、綿、セルロースファイバー、又はビニロン等の繊維1をカーディング装置等で引揃え、3〜10mm程度の長さに切断する。切断した繊維1を転動造粒、流動層造粒、攪拌造粒、圧縮造粒、押出造粒等の方法によって粒状に造粒すると、基部10が得られる。造粒の際、繊維1に樹脂や糊等のバインダーを混合すると、基部10を効率よく形成することができる。
図2は、本発明に係る人工土壌粒子50を使用した人工土壌培地100に植物30を植栽した状態を模式的に示した説明図である。図2に示すように、人工土壌培地100は、人工土壌粒子50間に一定の隙間31が形成されている。この隙間31は、空気及び水が通過することができるため、隙間31に植物に必要な水分を保持しつつ、余分な水分を排出することができる。本発明の人工土壌粒子50は、吸湿性多孔質被覆層2を有しているため、当該隙間31の水分環境を適切に調節することができる。人工土壌培地100が湿潤状態となった場合は、人工土壌粒子50の吸湿性多孔質被覆層2が隙間31から余分な水分を吸収し、人工土壌培地100の通気性を速やかに確保して、植物30の根腐れを防止することができる。人工土壌培地100が乾燥状態となった場合は、人工土壌粒子50は基部10に保持している水を吸湿性多孔質被覆層2から隙間31に放出し、植物30に供給する。このように、人工土壌培地100は、人工土壌粒子50が有する吸湿性多孔質被覆層2により、人工土壌粒子50間の隙間31の水分環境を適切に調節することができ、その結果、人工土壌培地100の優れた保水性及び通気性を実現している。
評価に先立ち、実施例に供した人工土壌粒子の作製方法について説明する。見かけの容積で1000ccのビニロン短繊維(長さ0.5mm 株式会社クラレ製)を撹拌混合造粒装置(有限会社G−Labo製)で撹拌、転動させながらポリエチレンエマルジョン(セポルジョン(登録商標)G315、住友精化株式会社製、濃度40重量%)を約10倍に希釈したものを加えて造粒し、内部にポリエチレンエマルジョンを含浸させた粒子状の基部を形成した。次いで、基部の体積の2%となる同じポリエチレンエマルジョンと、基部の体積の26%となる珪藻土とを混合してペースト化し、ペーストを基部に添加してペーストが均一に付着するように転がしながら含浸させた。ペーストが含浸した基部を、オーブンを用いて60℃で乾燥した後、100℃でエマルジョン中のポリエチレンを溶融させて繊維に融着させることにより、基部を形成するビニロン短繊維同士を固定化し、さらに、基部が珪藻土を含む吸湿性多孔質被覆層で被覆された人工土壌粒子を得た。人工土壌粒子を篩がけし、粒径が2.0〜5.6mmの範囲となるように調整した。なお、比較例1〜3の人工土壌粒子は、粒子状の基部を吸湿性多孔質被覆層で被覆せず、そのまま人工土壌粒子として使用した。比較例4の人工土壌粒子は、粒子状の基部を吸湿性多孔質被覆層で被覆した構造ではなく、多孔質物質を樹脂バインダーで固めて造粒したものである。比較例5は、市販の天然培養土をそのまま使用したものである。
実施例1及び2の人工土壌培地、及び比較例1〜4の人工土壌培地を以下のように調製した。比較例5は、一般の培養土を用いた。
(1)実施例1:2mmオーバー、4mmアンダーの篩を用いて人工土壌粒子を2〜4mmの粒径に調製し、人工土壌培地として使用した。
(2)実施例2:4mmオーバー、5.6mmアンダーの篩を用いて人工土壌粒子を4〜5.6mmの粒径に調製し、人工土壌培地として使用した。
(3)比較例1:2mmオーバー、4mmアンダーの篩を用いて人工土壌粒子を2〜4mmの粒径に調製し、人工土壌培地として使用した。
(4)比較例2:4mmオーバー、5.6mmアンダーの篩を用いて人工土壌粒子を4〜5.6mmの粒径に調製し、人工土壌培地として使用した。
(5)比較例3:篩による分級を行わずに人工土壌培地として使用した。
(6)比較例4:多孔質物質として珪藻土を使用し、バインダーとしてポリエチレンエマルジョンを使用した。珪藻土(ラヂオライト(登録商標)F、昭和化学工業株式会社製)100重量部と、住友精化株式会社製のポリエチレンエマルジョン「セポルジョン(登録商標)G」5重量部とを攪拌しながら混合し、造粒したものを篩にかけて分級し、2mmオーバー、4mmアンダーの人工土壌粒子を作製し、人工土壌培地として使用した。
(7)比較例5:市販の天然培養土(高澤ファーム社製)を使用した。
圧力水頭:テンシオメーターにより各試料の経時変化に伴う圧力水頭値を測定した。
図3は、人工土壌培地の圧力水頭の経時変化を示したグラフである。このグラフにおいて、圧力水頭50cmがpF値1.7に相当し、圧力水頭500cmがpF値2.7に相当する。図3に示すように、実施例1及び2の人工土壌培地は、珪藻土で被覆されていない比較例1〜3の人工土壌培地と比較すると、易効水を保持する能力は略同等であったが、pF値1.7に到達する時間は、比較例1〜3の人工土壌培地が70時間を要したのに対して、実施例1及び2は20時間以内に到達し、実施例1及び実施例2の人工土壌培地は通気性に優れていることが確認された。また、pF値1.7〜2.7の範囲の水(易効水)を保持する時間については、実施例1の人工土壌培地が80時間以上、実施例2の人工土壌培地が55時間以上であったのに対し、比較例4の人工土壌培地は35時間、比較例5の天然培養土は50時間であった。実施例1及び2の人工土壌培地は、比較例4の人工土壌培地よりも長期間に亘って水を保持できることが確認され、さらに保水性が優れている天然培養土を使用した比較例5よりも結果は良好であった。このように、本発明の人工土壌粒子は、外部の水分環境を珪藻土により調整しているため、一定以上の通気性を維持しながら、易効水を長時間保持できることが示された。
「人工土壌粒子の違いによる圧力水頭の経時変化の評価」で説明した人工土壌粒子と同じ人工土壌粒子を使用した。
(1)pF値:テンシオメーターにより各試料のpF値を測定し、pF値1.7からpF値2.7に変化する時間を計測した。
(2)pF値1.5における気相率:試料の重量水を流下させ、pFメーター(テンシオメーター)により試料のpF値が1.5を示したのを確認後、試料の形状をできるだけ維持しながら100mL試料用円筒に採取し、大起理化工業株式会社製のデジタル実容積測定装置「DIK−1150」にセットして測定した値を、pF値1.5における気相率とした。
図4は、人工土壌培地のpF値1.7〜2.7の範囲の水の保持時間と気相率との関係を示したグラフである。実施例1の人工土壌培地は、比較例1〜4の人工土壌培地及び比較例5の天然培養土と比較すると、易効水の保持能力及び通気性が優れていた。実施例2の人工土壌培地に関しては、比較例1〜3の人工土壌培地及び比較例5の天然培養土と比較すると、易効水の保持能力においては略同等であったが、pF値1.5における気相率が50%以上となり、高い値を示した。また、比較例4の人工土壌培地と比較すると、易効水の保持能力及び通気性が優れていた。このように、本発明の人工土壌粒子は、外部の水分環境を珪藻土により調整しているため、一定以上の保水性を維持しながら、50%以上という高い気相率を備えることが示された。
2 吸湿性多孔質被覆層
10 基部
50 人工土壌粒子
100 人工土壌培地
Claims (9)
- 繊維を集合してなる基部と、
前記基部を被覆する吸湿性多孔質被覆層と、
を備えた人工土壌粒子。 - 灌水から24時間以内にpF値が1.7に到達する水分特性を有する請求項1に記載の人工土壌粒子。
- 48時間以上に亘ってpF値が1.7〜2.7の範囲に存在する水分特性を有する請求項1又は2に記載の人工土壌粒子。
- pF値1.5における気相率が30%以上に設定されている請求項1〜3の何れか一項に記載の人工土壌粒子。
- 前記吸湿性多孔質被覆層の厚みaと前記基部の直径bとの比率a/bが、1/1200〜1/200に設定されている請求項1〜4の何れか一項に記載の人工土壌粒子。
- 前記吸湿性多孔質被覆層の厚みaは、5〜10μmである請求項5に記載の人工土壌粒子。
- 前記基部の直径bは、2〜6mmである請求項5又は6に記載の人工土壌粒子。
- 前記吸湿性多孔質被覆層は、珪藻土、パーライト、バーミキュライト、ゼオライト、ベントナイト、モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライト、スチブンサイト、マガディアイト、カネマイト、ノントロナイト、ソーコナイト、タルク、マイカ(雲母)、アイラアイト、マカタイト、及びケニヤアイトからなる群から選択される少なくとも一種の多孔質物質を含む請求項1〜7の何れか一項に記載の人工土壌粒子。
- 請求項1〜8の何れか一項に記載の人工土壌粒子を使用した人工土壌培地。
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