以下に、添付図面を参照して、本発明に係る集合施設用光通信システムの好適な実施例を詳細に説明する。なお、本実施例では、本発明に係る集合施設用光通信システムを集合住宅に適用した場合を示すこととする。また、通信事業者とは独立した住宅管理業者若しくは住宅管理業者が契約した業者(以下、「住宅管理業者」と言う)が、集合施設用光通信システムを構成することとする。
まず、本実施例1に係る集合施設用光通信システム100の全体システムについて説明する。図1は、本実施例1に係る集合施設用光通信システム100の全体システムを説明するための説明図である。図1に示すように、この集合施設用光通信システム100は、集合住宅の共用場所である情報通信集中管理室10並びに該集合住宅の各住戸の通信インフラとして構築されたシステムである。具体的には、住宅管理業者が、情報通信集中管理室10に設けられた自営成端装置12から各住戸内の住戸サーバ30までIDF(Intermediate Distribution Frame)13を介して4芯光ケーブルChを敷設する。そして、通信事業者が、該通信事業者の通信局舎から集合住宅の自営成端装置12まで光幹線ケーブルCaを敷設することで、各住戸に対して光通信サービスを提供する。
このように、本実施例1に係る集合施設用光通信システム100では、特定の通信事業者が光通信ケーブルを敷設するのではなく、かかる各通信事業者と独立した住宅管理業者によって多芯光ケーブルCb及び4芯光ケーブルChが敷設されているため、各通信事業者が通信局舎から集合住宅の自営成端装置12まで光幹線ケーブルCaを敷設すれば、入居者に対して様々な通信事業者のサービスを提供することが可能となる。
次に、上記住宅管理業者によって集合住宅内に配設される光通信機器について説明する。かかる集合住宅の情報通信集中管理室10には、すでに説明したように自営成端装置12が配設されている。また、この自営成端装置12の近傍には、通信事業者により持ち込まれた通信事業者成端装置11が設置され、この通信事業者成端装置11と自営成端装置12の間が光コードにより接続される。また、自営成端装置12には、上記住宅管理業者によって設置された共用部R5及び共用サーバ20が接続される。
かかる共用部R5は、集合住宅の玄関等の共用場所に設置される火災報知器、防犯カメラ、コールボタン及び集合玄関のオートロック等である。共用サーバ20は、集合住宅の全体制御を行うためのサーバ装置である。なお、この共用サーバ20の詳細な説明については後述する。
また、集合住宅の各住戸には、住戸内に設置された電話機、テレビ及びパソコン等の電子機器を利用可能とするために、4芯光ケーブルChを収容して光信号と電気信号の相互変換を行う住戸サーバ30が設置される。
さらに、集合住宅の各階には、多芯光ケーブルCb(例えば16芯)を各4芯光ケーブルChに分けるIDF13が設置される。このIDF13は、自装置及び自営成端装置12の間に敷設された多芯光ケーブルCb(例えば16芯)を収容するとともに、自装置と各住戸の住戸サーバ30の間に敷設された4芯光ケーブルChを収容し、上記多芯光ケーブルCbのうちの各4芯と上記4芯光ケーブルChの間をそれぞれ固定的に接続する中間配線盤である。
次に、集合住宅内に敷設される光通信ケーブルについて説明する。住宅管理業者は、自装置及び自営成端装置12の間に多芯光ケーブルCb(例えば16芯)を敷設するとともに、自装置と各住戸の住戸サーバ30の間に4芯光ケーブルChを敷設する。なお、ここでは各階にIDF13を設置する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、複数階ごとに1つのIDF13を設けることもできる。
これにより、通信事業者の通信局舎と自営成端装置12の間に敷設される光幹線ケーブルに含まれる各光ケーブルと、自営成端装置12とIDF13の間に敷設される多芯光ケーブルCbに含まれる各光ケーブルと、IDF13と住戸サーバ30の間に敷設される4芯光ケーブルChに含まれる各光ケーブルとを、1本の専用線の如く扱うことが可能となる。特に、4芯光ケーブルChを各住戸の住戸サーバ30に収容できるため、インターネットと放送に2芯を用いたとしても、4芯のうちの残りの2芯を他の用途に利用することができ、結果的に将来の様々な通信要求に対応可能となる。
ところで、集合住宅200が新築の場合にはESP(Electric Pipe Shaft:電気配線室)を通じて多芯光ケーブルCbを敷設できる。ところが既設の集合住宅200で集合施設用光通信システム100を構築する場合には、既存の配管やESPの利用が困難になる可能性もある。このため配管の新設が必要となるが、特に縦系配管の新設が問題となる。このため、縦系配管をエレベータシャフトに置き換え、各階エレベータから各住戸への横引き配管を新設することで対応が可能となる。
これによってエレベータ機械室への配線も可能となり、緊急地震速報による近接階へのエレベータの事前緊急停止及びこれによるエレベータ閉じ込め防止も可能となる。また、携帯電話のエレベータ内不通を解消する携帯ミニ基地局やWifi(Wireless Fidelity)端末のエレベータ設置も容易に可能となる。
次に、図1に示した情報通信集中管理室10内に設けられる各装置の外観の一例について説明する。図2は、図1に示した情報通信集中管理室10内に設けられる各装置の外観の一例を示す図である。同図2に示すように、情報通信集中管理室10内には、通信事業者成端装置11(11a〜11c)及び放送事業者用装置11d、自営成端装置12、共用サーバ20及び個別サービス部23等が設置される。これらの装置は19インチラックに搭載される。
通信事業者成端装置11は、各通信事業者自らが情報通信集中管理室10内に設置する装置で、集合住宅内に引き込んだ光幹線ケーブルCaを収容して成端する装置である。通信事業者成端装置11は、通信事業者A、B及びCごとに、通信事業者A成端装置11a、通信事業者B成端装置11b及び通信事業者C成端装置11cが用意される。通信事業者の責任分界点はこの通信事業者成端装置11までとなる。
通信事業者と同様に、放送事業者は、放送事業者用装置11dを情報通信集中管理室10内に設置する。この放送事業者用装置11dは、成端は行なわないものの、通信事業者A成端装置11a、通信事業者B成端装置11b及び通信事業者C成端装置11cと同様に、光幹線ケーブルを収容する。
通信事業者成端装置11(通信事業者A成端装置11a、通信事業者B成端装置11b及び通信事業者C成端装置11c)にはパッチ盤があり、自営成端装置12と光コードで接続されることで、住戸に対して通信サービスを提供することが可能となる。従来、通信事業者成端装置11は、通信事業者がラック等に搭載して準備していたが、集合施設用光通信システム100においては、通信事業者成端装置11は、住宅管理業者が準備した情報通信集中管理室10内に、通信事業者成端装置11用のラックスペースが確保される。
各通信事業者は、通信事業者成端装置11だけでなく種々のサービス提供のため通信端末等の通信事業者用ユニットを設置する。図2では、3つの通信事業者がそれぞれ、通信事業者A用ユニット23a、通信事業者B用ユニット23b及び通信事業者C用ユニット23cを設置し、また、放送事業者も、サービス提供用の放送事業者用ユニット23dを設置している状況を示している。
自営成端装置12は、住宅管理業者によって設置される成端装置である。自営成端装置12は、通信事業者成端装置11と同等の装置であり、全住戸数分以上の4芯光ケーブルChに相当する光ケーブルが成端される。前述したように通信事業者成端装置11のパッチ盤とは、自営成端装置12へ通信事業者又は住宅管理業者等が光コードにより接続されることで、住戸への通信サービスが提供される。
共用サーバ20は、集合住宅200の棟全体の設備を制御するサーバである。共用サーバ20は、各住戸に対して、防災・防犯情報等の生活関連情報及び集合住宅200として必要な共通情報を提供するだけでなく、集合住宅の共用設備を監視・制御し、各住戸の宅内設備の状況を把握する。また、共用サーバ20は、集合住宅200として必要なサーバユニットあるいは機能ユニット等を増設することで新たな機能を追加することも、拡張することも可能である。
次に、共用サーバ20の構成について説明する。図3は、情報通信集中管理室10内の共用サーバ20の構成を説明するための機能ブロック図である。共用サーバ20は、通信部21、共用サービス部22、個別サービス部23、操作端末24及び制御部25を有する。
通信部21は、共用サーバ20が住戸サーバ30及び公衆回線と通信接続するための通信インターフェースである。通信部21は、電気信号と光信号を相互変換するメディアコンバータ及び通信インターフェースを有する。通信部21は自営成端装置12と接続され、共用サーバ20の各部に電気信号を提供し、制御部等からの電気信号を光信号に変換して自営成端装置12に送出する。
共用サービス部22は、集合住宅200等で共通的なサービスを提供するための処理部である。具体的には、共用サービス部22は、防犯映像蓄積、オートロックの開閉、ディジタルインターホン、火災報知器の自動通報、防犯カメラの情報及び生活情報の配信等を行う。また、共用サービス部22は、機能ユニットの追加により新たなサービスが可能となるような拡張性を有する。例えば未導入のサービスで、ビデオ配信サービスを導入する場合にはビデオ配信用機能ユニットを追加し、遠隔検針サービス若しくは検針代行機能を導入する場合には遠隔検針若しくは検針代行機能ユニットを追加することで機能が実現される。
個別サービス部23は、住宅管理会社、警備会社及び宅配業者等業者が個別に準備し、サービスを提供する機能ユニットである。個別サービス部23は、共用サーバ20に接続される形で各住戸にサービスを提供する。また、拡張スペースに機能を増設し、新たなサービスを提供することも可能である。図2では、各通信事業者用のスペースに個別サービス用のサーバ及び通信機器等のユニットとして、各通信事業者用ユニット(通信事業者A用ユニット23a、通信事業者B用ユニット23b及び通信事業者C用ユニット23c)が追加されている状況を示している。放送事業者用ユニット23dは、光ケーブルテレビ会社等のサービスユニットである。個別サービス部23は、情報通信集中管理室10内にスペースが確保されて収容される。
操作端末24は、CPU、メモリ、ハードディスク等の記憶装置、印字装置及びディスプレイ一式を備えた端末である。操作端末24は、集合施設用光通信システム100の機器の動作及び障害状況等を表示する。また、入居者からの集合施設用光通信システム100に対する要求及び各住戸の宅内設備の動作状況も、住戸サーバ30から情報を受けて出力表示する。さらに、操作者が各種の設定情報を入力し、サーバ全体の状態を制御する。操作端末24は、図示しない集合住宅の管理センタ及び防災センタに設置される。
制御部25は、共用サーバ20全体を制御する制御部である。制御部25は、集合住宅200全体の集合施設用光通信システム100の機器の監視、サービス機能の監視・制御、システム管理を行う。制御部25は、共用サービス処理部25a、個別サービス処理部25b、システム管理部25c及びセキュリティ管理部25dを有する。
共用サービス処理部25aは、住棟内各住戸に対する情報の送信を行う処理部である。具体的には、防災・防犯情報の提供、集合住宅200の施設情報の配信及び電子回覧板等による生活関連情報の配信等、各住戸に対する共通的情報の送信を行う。また、共用サービス処理部25aは、共用サービス部22の各機能ユニットの動作を監視及び制御する。共用サービス処理部25aは、共用サービス部22の各機器の故障及び動作状況等の情報を収集し、機器に異常があった場合若しくは入居者に関係のある情報を受信した場合には集合施設管理業者若しくは入居者に対して通知処理を行う。
例えば、共用サービス部22の防犯・防災ユニット22aから防犯・防災情報が通知された場合には、各住戸若しくは管理者にその旨を通報する。また、HEMSユニット22bに対して電力会社から各住戸に電力使用量の通知要求が出された場合には、まとめて電力会社のデータセンタに使用量を送信するとともに、データセンタから各住戸の使用明細書が通知された場合には、該当住戸に通知する。
個別サービス処理部25bは、個別サービス部23の各機能ユニットの動作を監視及び制御する処理部である。個別サービス処理部25bは、各機能ユニットの故障及び動作状況等の情報を収集し、異常があった場合は、操作端末24に対して通知処理を行う。操作者は操作端末24からサービス提供業者に通知する。
また、本実施例1のように、通信事業者の通信事業者用ユニットとして提供されている場合には、入居者からの通信事業者の変更、新規契約等を共用サーバ20が受け付け、通信事業者用ユニットを通じて通信事業者との調整を行うこともできる。通信事業者A用ユニット23a、通信事業者B用ユニット23b及び通信事業者C用ユニット23cが、通信事業者のセンタにデータを送り、通信事業者は、個別サービス部23の通信事業者用ユニットを通じて住宅管理業者と回線設定の予定の調整を行うのである。また、操作端末24はその結果を入居者の住戸サーバ30に通知する。
システム管理部25cは、集合施設用光通信システム100内の機器状態を管理する処理部である。集合施設用光通信システム100内の機器の状態を監視し、異常があった場合にはその旨を操作端末24あるいは住戸サーバ30に通知する。また、住戸からの新規通信事業者との新規契約あるいは契約の変更等に応じて集合施設用光通信システム100と通信事業者との接続状態を最新状態に更新する。
また、システム管理部25cは、共用サーバ20を介する通信において住棟内でクローズする通信と公衆網等へのオープンな外部通信とが相互干渉しないようにネットワークとしての状態を制御する。また、システム管理部25cは、防災情報の配信設定で特定の住戸サーバ30を指定して配信処理を支援させる設定等、緊急かつ優先情報を迅速に住棟内に配信できるように通信設定処理を行う。
セキュリティ管理部25dは、共用サーバ20に出入りする通信を監視し、不正なアクセスや通信がないかを監視する管理部である。セキュリティ管理部25dは、不正なアクセス、データ改ざん及び抜き取り等を防止し、特に個人情報等の防護を行う。具体的には、ファイアーウォール、IDS/IPS(Intrusion Detection System/Intrusion Protection System)等を備えたハード及びソフトによるセキュリティ防護を行う。
次に、各住戸の入居者が通信事業者を選択して集合施設用光通信システム100へ接続する方法について説明する。図4は、住戸の入居者が通信事業者を選択して契約するための方法を説明するための説明図である。図4に示すように、契約が完了している通信事業者の通信事業者成端装置11(11a〜11c)及び放送事業者用装置11dと、集合施設用光通信システム100の情報通信集中管理室10内にある自営成端装置12との接続が行われている。
集合施設用光通信システム100において、入居者が所望の通信事業者と新規契約を行った場合には、自営成端装置12の入居者用ポートと当該通信事業者成端装置11のポートとを光コードで接続するだけで終了する。この作業は情報通信集中管理室10の中だけで完了できる。例えば、図4に示すように、住戸R1が通信事業者A及び放送事業者と契約する場合には、住戸R1に配線される4芯光ケーブルChのうち2つのポートと、通信事業者A成端装置11aと放送事業者の放送事業者用装置11dのポートとを接続するだけでよい。
同様に、住戸R2が通信事業者B及び放送事業者の2社と契約する場合には、通信事業者B成端装置11b及び放送事業者用装置11dのポートと、住戸R2の2つのポートを接続する。このようにして、各入居者は所望の通信事業者若しくは放送事業者を選択して契約することが可能となる。
したがって、各住戸が通信事業者及び放送事業者と新規契約あるいは契約変更を行う場合には、通信事業者若しくは住宅管理業者の作業は情報通信集中管理室10内における接続替えが主となり、住戸への立ち入りは必要最小限に低減されるため入居者にとってもメリットがある。通信事業者等からのレンタル機器である回線終端装置の処置はあるが、技術的には住宅管理業者と通信事業者の分界点はMDF室の通信事業者の通信事業者成端装置11までとすることができる。
なお、自営成端装置12から通信事業者成端装置11までの接続は、責任分界点の考え方からすれば住宅管理業者が契約した業者が接続することになるが、必要に応じて通信事業者成端装置11を保有する通信業者に委任することもできる。
次に、住戸サーバ30の構成について説明する。図5は、住戸サーバ30の外観を模式的に示した図である。図5に示すように、住戸サーバ30は、幅600mm、奥行300mm、高さ2000〜2200mmの室内用19インチラック40に収容される。住戸サーバ30は、住戸内通信、放送、情報処理及び宅内設備全体を制御するサーバである。
成端・信号変換部31は、配線されてきた4芯光ケーブルChを成端し、光信号を電気に変換する処理部である。また、居室内にある通信端末からの電気信号を4芯光ケーブルChに送出する。通信分配部32は、光信号から変換された電気信号を住戸サーバ30及び居室内の通信端末に分配する処理部である。制御部35は、住戸サーバ30全体を制御する制御部である。電源部36は、分電盤、バッテリ及び無停電源装置を有し、住戸サーバ30だけでなく、居室内の通信端末等に電源を供給する。電源部36は、住戸サーバ30及び宅内機器の保護の観点から避雷対策が行われていることが好ましい。
住戸サーバ30は、住戸ごとに必要な機能をユニット単位で増設する構成になっている。入居者が、各機能ユニットを導入する場合には、住戸サーバ30が収容されている室内用19インチラック40に増設する。図5では、防災・防犯ユニット34a、HEMS(Home Energy Management System)ユニット34b、通信ユニット33a及び放送ユニット33bを増設した一例を示したものであり、住戸ごとの必要に応じ種々の機能ユニットを増設できる。また、各機能ユニットのサイズは、国際規格に準拠したものである。
図6は、住戸サーバ30の構成を示す機能ブロック図である。図6に示すように、住戸サーバ30は、成端・信号変換部31、通信分配部32、一般サービス部33、業務サービス部34及び制御部35を有する。
成端・信号変換部31は、住居に配線される用途別の4芯光ケーブルChを成端し、4芯光ケーブルChの光信号を電気信号に変換し、宅内の各通信機器からの電気信号を光信号に変換するための変換部であり、メディアコンバータ及び光終端装置(ONU:Optical Network Unit)を有する。4芯光ケーブルChは、成端・信号変換部31の光コネクタに接続される。光信号は、成端・信号変換部31内のメディアコンバータ及び光終端装置により電気信号に変換され、通信分配部32に出力される。
通信分配部32は、成端・信号変換部31で光信号から変換された電気信号を、住戸サーバ30を含み、住戸内の各居室まで分配する分配部である。分配された電気信号は、住戸サーバ30からはLAN(Local Area Network)用のUTP(Unshielded Twist Pair)ケーブル、テレビ用の同軸ケーブル等各種メタルケーブルによって各居室にある接続コンセント及び住戸サーバ30内のユニットに提供される。
一般サービス部33は、通信ユニット33a及び放送ユニット33bを有し、電話、インターネット及びテレビ放送のサービスを提供する。通信ユニット33aは、パソコンに対してインターネット通信サービスを提供する。具体的には、ONU、ホームゲートウェイ、ルータ等のユニットが相当する。放送ユニット33bは、テレビにケーブルテレビの信号を提供する。具体的には、V-ONU(Video-Optical Network Unit)等のユニットである。
業務サービス部34は、集合住宅200内各住戸共通の防犯・防災ユニット34a及びエネルギー使用状況把握用のHEMSユニット34bといった、スマートホーム関連の情報を収集、表示、制御するための機能ユニット部である。防犯・防災ユニット34aは、防犯映像及び防犯情報を防犯端末等に配信する。防犯・防災ユニット34aは、防災情報を検知若しくは防災情報を受信した場合には、入居者に報知処理を行い、異常を検知した場合には、制御部35を介して共用サーバ20に情報を配信する。これらの機能ユニットは4芯光ファイバChの防災・防犯用のネットワークあるいはエネルギー状況把握用のネットワークを通じて情報を受信及び配信する。
業務サービス部34のHEMSユニット34bは、電気の使用状況を把握し入居者に通知する。また、電気だけでなく、ガス、水道の計測ユニットを追加すれば、電気、ガス、水道の使用量が確認でき、検針代行も可能となる。これらの使用量を共用サーバ20に送信すれば、共用サーバ20が全住戸の使用量を業者のセンタに送信することも可能となる。
一般サービス部33及び業務サービス処理部34は、すでに述べたように、個々の住戸のニーズや状況に応じて、必要な機能ユニットを住戸サーバ30の室内用19インチラック40のユニット単位で増設する。例えば、ある住戸が専用の防災システムを導入する場合には防災機能ユニットを室内用19インチラック40に追加し、ビデオサーバを導入する場合にはビデオサーバユニットを室内用19インチラック40に追加する。
なお、住戸サーバ30の室内用19インチラック40に設置される機能ユニットは、接続される宅内通信機器等と通信を行い該機器の制御を行う。また、住戸サーバ30の室内用19インチラック40に設置される機能ユニットは、共用サーバ20に対して、住戸サーバ30の各機能ユニットから規定のメッセージ電文をやり取りすることで、宅内機器の故障や動作状況等の情報を共用サーバ20に報知する。
制御部35は、住戸サーバ30全体の制御と、通信処理、情報処理及び宅内設備の全般の監視とを行う制御部である。制御部35は、一般サービス処理部35a、業務サービス処理部35b、情報配信部35c及びセキュリティ管理部35dを有する。
一般サービス処理部35aは、住戸サーバ30に接続される通信及び放送ユニットの故障や動作状態を監視し、共用サーバ20に動作状態の情報を送信する処理部である。具体的には、一般サービス処理部35aは、一般サービス部33の通信ユニット33a及び放送ユニット33bの動作状態情報の収集及び送信と、インターホン、火災報知器、オートロック、ホームオートメーション等の宅内設備に関する制御とを行なう。
業務サービス処理部35bは、業務サービス部34の各機能ユニットの動作及び故障状態を監視し、共用サーバ20に送信する処理部である。業務サービス処理部35bは、業務サービス部34の防犯・防災ユニット34aが防犯・防災情報を検知した場合には、この防犯・防災情報を受け付け、共用サーバ20に報知する。また、HEMSユニット34bから住戸内のガス、水道及び電気使用量の集計値を受け、定期的に住戸の使用量を共用サーバ20に送信する。
情報配信部35cは、住戸内外への情報配信を行う処理部である。情報配信部35cは、インターネット通信における情報の配信だけでなく、住棟内及び住戸内でのLAN通信による電子回覧板、集合住宅200内データ放送及び生活関連情報等の配信及び受信を行う。
セキュリティ管理部35dは、住戸内全体のセキュリティ状態を監視し、不正侵入やマルウェアによる通信を遮断し、住戸内の機器の正常性を確保するための処理部である。共用サーバ20のセキュリティ管理と連動させることで、住戸のセキュリティ防護を高めることができる。具体的には、ファイアーウォール、IDS/IPS等ハードウェアとソフトウェアを組み合わせることにより、住戸に必要なセキュリティ機能を付加する。
次に、集合施設用光通信システム100のネットワーク構成について説明する。図7は、4芯光ファイバを利用した集合施設用光通信システム100のネットワーク構成の一例を示した図である。図7に示すように、4芯光ケーブルChを利用した集合施設用光通信システム100のネットワーク構成は、1芯ごとに、インターネット用のネットワーク61、放送用のネットワーク62、防犯・防災用のネットワーク63及びHEMS用のネットワーク64が構成される。図7では、情報通信集中管理室10内ではネットワーク61〜64の構成を破線で示している。
ネットワーク61及び62は、住戸サーバ30に接続されたパソコン51及びテレビ52によるインターネット用のネットワーク及びテレビ視聴用のネットワークである。パソコン51及びテレビ52は、住戸サーバ30で電気信号が光信号に変換され、それぞれインターネットとテレビ放送用の2芯の光ケーブル及び自営成端装置12を介して直接外部の公衆通信網に光信号のまま送信される。また、受信は送信の逆順となる。このように、ネットワーク61及び62は住戸専用の通信及び放送用のネットワークとして利用される。
一方、ネットワーク63及び64では、防犯・防災端末53及びHEMS端末54は、住戸サーバ30からそれぞれ1芯の光ケーブルで共用サーバ20に接続される。この2つのネットワーク63及び64は、集合住宅内の情報管理用のネットワークである。
ネットワーク61及び62は、4芯光ケーブルChのうち2芯を利用したオープンネットワークである。すなわち各住戸で自由に選択された通信事業者及び放送事業者を利用して外部と通信を行うネットワークであり、共用サーバ20はこの通信には関与することはない。また、各住戸は室内用19インチラック40に機能ユニットを追加して、機器メーカ独自の通信をおこなうことも可能である。
なお、インターネット及び放送は、V-ONU及び分配器といったレンタル機器を除けば、ほとんどが情報通信集中管理室10内の接続作業でネットワークが構成される。このため、V−ONU等の終端装置等のレンタル機器が自由化されれば、住戸サーバ30にこのような終端装置を組み込めるようにするためレンタル機器は不要となり、通信事業者が住戸に立ち入る必要性はほとんど無くなる。
ネットワーク63及び64は、4芯光ケーブルChのうち2芯を利用した比較的クローズしたネットワークである。防犯・防災端末53及びHEMS端末54は住戸サーバ30に接続され、住戸サーバ30から防犯・防災用とエネルギー状況把握用のそれぞれ1芯の光ファイバケーブルにより自営成端装置12を介して共用サーバ20に接続される。この2芯を利用したネットワーク63及び64は、集合住宅200内の情報管理用であり、共用サーバ20による一元的な情報の配信及び受信用として運用する。
具体的には、共用サーバ20が、防犯・防災情報の住戸の防犯・防災端末53への配信及び受信を行い、HEMS情報(電力使用量等)の業者等のデータセンタへの配信を行うのである。基本的にこの2つのネットワーク63及び64は、共用サーバ20が集合住宅200を代表して部外との通信を行う形態となる。
共用サーバ20が、業者のデータセンタへ配信する情報は、HEMSによる電力使用量に限定されない。例えば、各住戸に電気だけでなく、水道及びガスの計測ユニットを設けて、それぞれの使用量を住戸サーバ30が集計して共用サーバ20に伝送し、共用サーバ20が光ケーブル1芯を利用して、公衆網を通じてこの計測情報を各データセンタに配信することが可能である。また、データセンタからの使用料明細の住戸への配信も可能となる。
また、各住戸の電気、ガス及び水道の使用量を住戸別に住戸サーバ30が集計して共用サーバ20に送信する検針代行が技術的には可能であり、電気のスマートグリッド対応、ガスの効率的使用、節水対策等の効果的な対応も可能になる。また、インターネットを契約しない住戸も新たに通信回線を契約することなく、共用サーバ20が一元的に外部のデータセンタとやり取りするので効率的な通信が可能となる。
防犯・防災用のネットワーク63及びHEMS用のネットワーク64は、共用サーバ20と住戸とが集合住宅200内でクローズしたLANの形態となる。部外とは共用サーバ20が一元的にデータセンタ及び防災センタ等と通信する。なお、この2芯のネットワークのうちいずれか一つを、集合住宅特有の他の設備系信号、例えばインターホン、設備監視等の信号を送受信するために用いてもよい。
このように、図7に示した集合施設用光通信システム100は、2つのネットワーク形態を有する。すなわち、各住戸が独自にインターネット等へつながるオープンネットワークと、共用サーバ20と住戸サーバ30とのLAN形態による集合住宅200内部の情報管理的なクローズドネットワークの2つである。
共用サーバ20及び住戸サーバ30上においても、上記2つのネットワークが混在することになるので、ネットワーク相互を分離することが望ましい。このため、ネットワークセグメントで分離するか、プロトコルを分けて情報の相互干渉を防止する。特に個人情報保護を含め、セキュリティの面からも共用サーバ20のセキュリティ管理部23を利用して、内部及び外部からの情報漏えいを阻止する。
本実施例1では、4芯光ケーブルChを通信、放送、防犯・防災及びHEMSに利用する場合について説明を行なっているが、4芯光ケーブルChの利用目的はこれに限定されるものではない。なお、防犯・防災用とHEMS用の通信を1芯にして、残り1芯を予備とすることもできる。
次に、集合施設用光通信システム100において、各住戸の入居者が通信事業者を選択して通信が可能となるまでのネットワーク構成の処理手順を説明する。図8は、入居者が選択した通信事業者に用いて通信が可能となるまでの処理手順を示したフローチャートである。
入居者が、新規に通信事業者を選択する場合や通信事業者を変更する場合には、パソコン51から住戸サーバ30を介して共用サーバ20に回線設定要求を出す。共用サーバ20は、回線設定要求を受け付けて(ステップS101)、制御部25のシステム管理部25cにより、回線設定要求に示された通信事業者を選択し(ステップS102)、選択した通信事業者の通信ユニットを通じて通信事業者に回線設定要求を出力する(ステップS103)。
通信事業者は、共用サーバ20が出力した回線設定要求を受信すると、回線接続予定を含む受付通知を共用サーバ20に送信する。共用サーバ20は、通信事業者から受付通知を受信し(ステップS104)、受付通知に含まれた回線接続予定を入居者に通知する(ステップS105)。通信事業者及び住宅管理業者は、この回線接続予定に基づいて、接続試験を行ない、接続試験が終了した場合に回線設定完了操作を行なう。共用サーバ20は、回線設定完了操作を受け付けたか否かを判定し(ステップS106)、回線設定完了操作を受け付けていなければ(ステップS106;No)、ステップS106に移行して回線設定完了操作を待機する。
回線設定完了操作を受け付けた場合には(ステップS106;Yes)、共用サーバ20は、システムの接続状態を更新して(ステップS107)、処理を終了する。
次に、ガス、電気、水道のメータリング情報及び宅内設備等の動作監視などを共用サーバ20が一元的に送受信する通信処理手順について説明する。図9は、電文通信を受信した場合における共用サーバ20の通信処理手順を説明するフローチャートである。なお、防災については実施例2で言及するので、ここでは共通的な部分のみを説明する。
共用サーバ20が電文を受信した場合には(ステップS201)、受信した電文が防犯・防災若しくはHEMSといった共用サービスに関するものであるか否かを判定する(ステップS202)。受信した電文が共用サービスに関するものである場合には(ステップS202;Yes)、共用サーバ20は、受信した電文がHEMS情報に関するものであるか否かを判定する(ステップS203)。受信した電文がHEMS情報に関するものであれば(ステップS203;Yes)、住戸における電気、ガス、水道の集計値を受信した電文から読み出し(ステップS204)、住戸情報として記憶する(ステップS205)。
ステップS205の後、共用サーバ20は、電文から読み出した集計値をデータセンタに通知する必要があるか否かを判定する(ステップS206)。集計値の通知が必要と判定したならば(ステップS206;Yes)、共用サーバ20は、電文から読み出した集計値をデータセンタに通知する(ステップS207)。ステップS207の終了後、若しくは通知の必要がないと判定した場合ならば(ステップS206;No)、共用サーバ20は、住戸に通知すべき使用料金明細がデータセンタに存在するか否かを判定する(ステップS208)。住戸に通知すべき使用料金明細がデータセンタに存在しなければ(ステップS208;No)、共用サーバ20は、処理を終了する。住戸に通知すべき使用料金明細がデータセンタに存在するならば(ステップS208;Yes)、共用サーバ20は、住戸サーバ30に使用料金明細を送信して(ステップS209)、処理を終了する。
ステップS201で受信した電文が、共用サービスに関するものであるが(ステップS202;Yes)、HEMS情報でない場合(ステップS203;No)、受信した電文は、防犯・防災情報を示す電文である。そこで、共用サーバ20は、受信した電文から防犯・防災情報を読み出す(ステップS210)。共用サーバ20は、読み出した防犯・防災情報を住棟内の全住戸に配信する必要があるか否かを判定する(ステップS211)。
読み出した防犯・防災情報を住棟内の全住戸に配信する必要があると判定した場合(ステップS211;Yes)、共用サーバ20は、読み出した防犯・防災情報を住棟内の全住戸に配信する(ステップS212)。
ステップS212の後、若しくは読み出した防犯・防災情報を住棟内の全住戸に配信する必要がないと判定した場合(ステップS211;No)、共用サーバ20は、防災機関等への通報が必要であるか否を判定する(ステップS213)。
防災機関等への通報が必要であると判定した場合には(ステップS213;Yes)、共用サーバ20は、防災機関等へ通報を行なって(ステップS214)、処理を終了する。防災機関等への通報が必要ないと判定した場合には(ステップS213;No)、入居者が閲覧可能な電子回覧板に防犯・防災情報をアップロードして(ステップS215)、処理を終了する。
ステップS201で受信した電文が共用サービスに関するものではない場合には(ステップS202;No)、共用サーバ20は、電文内で統一フォーマットにより格納された住戸の宅内機器ステイタス情報を読み出す(ステップS216)。ステップS216の後、共用サーバ20は、機器状態の記録を更新して(ステップS217)、操作端末24に対して報知処理を行なって(ステップS218)、処理を終了する。
本実施例1では、通信、放送、防犯・防災及びHEMS関連の4つの機能ユニットを用いる場合について説明を行なったが、集合施設用光通信システム100はこれに限定されるものではない。また、集合施設用光通信システム100のネットワーク形態も本実施例1に開示した形態に限定されるものではない。今後のサービス態様に応じて、機能ユニットを増設することで、本格的なスマートグリッド、遠隔教育、遠隔診断及び検針代行等ユニットの計画配置による拡張も可能である。
また、スマートグリッド等に関しては、共用サーバ20が一元的に住戸に関する情報を管理することになるため、個人情報保護の観点からセキュリティを厳重に管理することが望ましい。このため、住棟全体のセキュリティを共用サーバ20で確保し、それと連動して住戸ごと必要なセキュリティを追加する形態も可能である。
また、本実施例1では、4芯光ケーブルChが各住戸に敷設されるとしたが、4芯に限定されるものではなく、8芯光ケーブル等、任意のケーブルを用いることができる。高層の集合住宅等で8芯光ケーブルを利用する場合には、通信、放送、防犯・防災及びHEMSで4芯を使用し、残りの4芯を携帯電話の電波不通解消対策用として基地局アンテナ配線用に利用してもよい。これは、特に高層階で携帯電話の電波が届きにくいことがあるためで、建物内で電波の不通解消対策を行うのである。1つの携帯電話業者の上りと下りに各1芯を接続するならば、4芯で2つの携帯電話業者の基地局アンテナ配線を行なうことができる。
防災情報などの場合には、契約した通信事業者が異なる住戸同士であっても短時間に同一の正確な情報を共有することが必要である。本実施例2では、いち早く到来する防災情報を取得し、各住戸がどの通信事業者と契約していても、全住戸等しくこの防災情報を報知する場合について説明する。
図10は、本実施例2に係る共用サーバ110の構成を示す機能ブロック図である。図10に示すように、共用サーバ110の共用サービス部22には防犯・防災ユニット26が、また制御部25には防災情報処理部27が設けられている。その他の構成及び動作については、図3に示した実施例1の共用サーバ20と同様であるので、同一の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
共用サーバ110は、地域防災システム及び複数の通信事業者等と接続されており、共用サーバ110は、常時防災情報を収集し、一元的に全住戸に緊急かつ正確な防災情報を配信する。防犯・防災ユニット26は、警備会社等の災害監視、地域防災システム及び通信事業者の回線と接続され、これらのシステム等から常時防災情報を収集し、集合住宅200内に通報するユニットである。防犯・防災ユニット26は、受信した防災情報の火災、地災、天災等の種別、情報の提供元及び内容を防災情報処理部27に送信する。
防災情報処理部27は、防犯・防災ユニット26から受信した防災情報を常に最新の状態にしておき、受信した防災情報が既存の防災情報よりも新しい場合には、該防災情報を各住戸サーバ30の防犯・防災ユニット34aに同報で配信するとともに、記憶している防災情報を更新する。4芯を用いた4つのネットワーク61〜64のうち、最短時間で情報を配信可能なネットワークは、防犯・防災用ネットワーク63である。そこで、防災情報処理部27は、防犯・防災用ネットワーク63を用いて防災情報を全住戸に配信する。
また、住戸がどの通信事業者と契約していようとも防災情報が各住戸等しく配信されるようにするため、防災情報処理部27は、あらかじめシステム管理部25cにおいて設定されている緊急同報通信用等の防災情報配信の設定を行う。防災情報は、この防災情報配信設定により防災情報処理部27から通信部12を介して住戸サーバ30に配信される。これにより、防災情報は最優先で処理され各住戸サーバ30に配信される。
また、特に緊急を要する場合には、集合住宅200内の記録音声による館内放送又は警報装置などと連動させてもよい。この場合には、防災情報処理部27は、緊急防災情報を受信した際に館内警報装置を通じて警報指示を出し、集合住宅200内に一斉に警報を発して、入居者に第一報を伝え、迅速な対応活動をとることを第一義とした情報配信を行うことになる。本実施例2では、これを一斉警報ネットと称する。その後、共用サーバ20は、詳細な防災情報を各住戸に配信する。このため、入居者が住戸ではなく廊下などの共用部分に所在する場合でも迅速な防災情報の配信ができる。防災情報の種別に応じて、記録音声及び警報音は数種類用意されていることが好ましい。
なお、住戸に防災情報を緊急に配信するか否かは、条件付きでも無条件であっても良い。例えば、豪雨又は落雷など天気予報は注意報以上としてもよい。ただし、本実施例2では、地震のように警報を受けて避難するまでの時間的な余裕がない場合を考慮し、予報が出た場合及び発生した場合は無条件で通報することにしている。
防災情報は地震及びそれに連動する津波、雷雨、洪水等の天災・地災に限らない。近隣火災、ガス漏れ警報及び自家火災通報等、防災情報処理部27が、ある住戸又は入居者からの通報を受けて、特定住戸及び集合住宅防災センタにいち早く通報し、対応させる必要がある場合もある。この場合には、防災情報処理部27は、該住戸若しくは入居者の住戸サーバ30からの通報を受けて、全住戸に通報することになる。
また、同様に、ある住戸が住戸サーバ30の機能ユニットとして警備会社等の防災ユニットを利用している場合には該防災ユニットからの情報も防災情報に組み込むことも可能である。この場合、住戸サーバ30内の防災ユニットが警備会社等から防災情報を受信すると、防犯・防災用ネットワーク63を用いて共用サーバ110に通知し、共用サーバ110の防災情報処理部27は、住戸サーバ30から受信した防災情報が既存の情報よりも新しいと判定すれば、送信した住戸以外の全住戸サーバ30に対して防災情報を転送することなる。これによって、住戸サーバ30に登録された警備会社等からの防災情報が自動的に共用サーバ110の防災情報処理部27を介して住棟内住戸に配信されることになる。
図11は、共用サーバ110により防災情報を住棟内に配信する処理手順を示したフローチャートである。共用サーバ110が住戸サーバ30から防災情報を受信すると(ステップS301)、防災情報処理部27は、受信した防災情報が自装置に既に記憶している既存情報よりも新しいか否かを判定する(ステップS302)。受信した防災情報が自装置に既に記憶している既存情報よりも新しくなければ(ステップS302;No)、共用サーバ110は、処理を終了する。
住戸サーバ30から受信した防災情報が、既存の防災情報よりも新しい場合には(ステップS302;Yes)、防災情報処理部27は、受信した防災情報を住棟内に配信する必要があるか否かを判定する(ステップS303)。
受信した防災情報を住棟内に配信する必要があると判定したならば(ステップS303;Yes)、防災情報処理部27は、受信した防災情報を一斉警報ネットにより警報するか否かを判定する(ステップS304)。一斉警報ネットにより警報すると判定したならば(ステップS304;Yes)、防災情報処理部27は、一斉警報ネットにより警報を行なう(ステップS305)。
一斉警報ネットによる警報(ステップS305)の終了後、若しくは一斉警報ネットによる警報を行なわない場合には(ステップS304;No)、防災情報処理部27は、住戸サーバ30から受信した防災情報を防犯・防災用のネットワーク63により全住戸に配信する(ステップS306)。ステップS306の後、防災情報処理部27は、自装置の保持する防災情報を住戸サーバ30から受信した防災情報により更新して(ステップS307)、処理を終了する。ステップS303で一斉警報ネットを使用しない場合には(ステップS303;No)、全住戸に防災情報を配信して(ステップS306)、自装置の防災情報を更新して(ステップS307)、一連の処理を終了する。
上述したように、防災情報は第一報をいち早く全住戸に報知することが重要であり、これによって住戸は素早い対応を行うことができる。本実施例2では、共用サーバ110が集合住宅200内で契約している全通信事業者及び放送事業者並びに地域防災システム等の防災情報を一元的に集め、最新の防災情報を各住戸に配信することで迅速な対応を可能としている。
なお、本実施例2のように、緊急防災情報を伝えることに加えて、集合住宅200において防災用のネットワークとして防災情報ウェブを開設して、通信業者、放送業者及び各種防災システムの災害情報を閲覧できるようなシステムを構築することもできる。
本実施例2では、集合施設用光通信システム100による情報一元化送配信による効果は、防災関連情報の共有にとどまらない。一元的に情報を受けて一元的に流すという形態は、生活面でも種々の場面で考えられる。防犯及び伝染病等の衛生情報等緊急伝達が必要な場合にも本実施例2を適用できる。
なお、上記実施例1及び2に開示した集合施設用光通信システム100では、雷害対策が特に重要である。そこで、集合施設用光通信システム100は、避雷対策を含んだシステムであることが好ましい。誘導雷等により発生する過電流が電源ライン及び通信ライン等から集合住宅200に侵入すると、低電圧で動作しているIP関連機器は脆弱である。このため、通信及び電源ラインにはSPD(Surge Protection Device)等の避雷器を設ける。具体的には、集合施設用光通信システム100の自営成端装置12、共用サーバ20、IDF13及び住戸サーバ30の通信及び電源ラインにSPD等の避雷器を設置すればよい。
上記実施例1及び2では、集合住宅を例にとって説明したが、本発明は集合住宅に限定されない。上述したようにオフィスビル等にも当然適用できる。また、戸建て住宅を集合住宅の1世帯とし、地域コミュニティ全体を集合住宅と見なせば、地域コミュニティ全体の集合施設用光通信システム100を実現することも可能である。
実施例1及び2で、情報通信集中管理室10は、通信事業者の成端装置とともに、MDF(Main Distribution Frame:主配線盤)の設置してあった部屋あるいはサーバルーム内に併設されるものとして説明した。しかし、既存施設などにおいて新たに情報集中管理室10を新設若しくは拡張できない場合には、情報通信集中管理室10を19インチラック搭載の屋外収納ボックスとし、この収納ボックスに機器を収納し屋上配置とすることが可能である。この屋外収納ボックスは、集合施設用光通信システム100の構成に応じて、種々のコンフィギュレーションが可能な収納ボックスにすることも可能である。この収納ボックスにより、屋上防水に影響を与えずに情報通信集中管理室10への配線が可能になる。
上述したように、4芯光ケーブルChで各住戸まで統合配線化されることになるため、端末を更新する場合には、端末設備のみを交換するだけでよい。このため、集合住宅等の長寿命化が図られる。また、将来的にパソコン、テレビ及び電話端末等が光接続対応となり、全光配線化されても、従来のメタルケーブルを光ファイバに更新し、接続コンセントを光コンセントに変えるだけでよいため、既存の配線設備を損なうことなく新技術の導入も容易に可能となる。