本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
(実施形態1)
まず、図1、図2を参照して、本発明の実施形態1に係る温度センサ100の構成について説明する。図1は、本発明の実施形態1に係る温度センサの平面図である。図2は、図1におけるA−A線に沿う模式切断部端面図である。
温度センサ100は、図1に示されるように、赤外線吸収膜20と、感温素子10と、リードパターン30と、を備える。
赤外線吸収膜20は、熱源(図示しない)から輻射される赤外線を吸収して温度上昇する。赤外線吸収膜20の材質は、熱源から輻射赤外線を吸収して温度上昇する材質であればよく、例えば遠赤外線と称される4μm〜10μmの波長帯域の光に吸収スペクトラムを有する材質が好ましい。このような材質として、フッ素樹脂やシリコーン樹脂、あるいはポリエステル、ポリイミド、ポリエチレン、ポリカーボネート、PPS(ポリフェニレンスルフィド)等の高分子材料からなる樹脂が好ましい。赤外線吸収膜20の厚さは、通常15μm〜50μm程度である。
感温素子10は、赤外線吸収膜20の熱を検知することにより、熱源の温度に対応した電気信号を出力する。感温素子10は、温度に応じて電気的特性が変化するセンサ素子であればよく、特に限定されるものではないが、例えば、抵抗温度特性を有するサーミスタ、サーモパイル、金属側温体等などが好適である。感温素子10が例えば抵抗温度特性を有するサーミスタである場合には、感温素子10の温度変化は、抵抗値変化として現れる。感温素子10に予め所定の電流を流しておくことにより、感温素子10の抵抗値変化は、電圧変化として検出される。感温素子10の出力電圧は、熱源の温度に対応する電気信号として信号処理される。なお、本実施形態では、感温素子10は、一対の電極11,12を備えており、赤外線吸収膜20の熱源からの赤外線が入射する面とは反対側の面上に配置されている。
リードパターン30は、赤外線吸収膜20に分布する熱量を感温素子10に伝熱する。また、リードパターン30は、感温素子10からの電気信号を外部に出力する。すなわち、感温素子10の温度変化に対応する電気特性の変化は、熱源の温度に対応する電気信号としてリードパターン30から外部に取り出されることとなる。リードパターン30の材質としては、赤外線吸収膜20より熱伝導性に優れている材質かつ電気抵抗の小さい材質であることが好ましい。このような材質としては、金、銀、白金、銅、アルミニウム、カーボンナノチューブなどを多く含むと好ましい。
リードパターン30は、一対のリードパターン31、32を有する。リードパターン31の一方の端部は感温素子10の電極11に接続され、他方の端部は外部に至るように延びている。リードパターン32の一方の端部は感温素子10の電極12に接続され、他方の端部は外部に至るように延びている。本実施形態では、これら一対のリードパターン31、32は、感温素子10を中心に互いに逆方向に直線状に延びている。
リードパターン31,32は、図2に示されるように、厚みの異なる部分を有する。リードパターン31,32の厚みの厚い部分がリードパターン31,32の厚みの薄い部分より感温素子10に近接する位置に配置されている。本実施形態では、リードパターン31,32全体における中間部から感温素子10に至る部分が厚みの厚い部分となっており、中間部から外部に至る部分が厚みの薄い部分となっている。なお、リードパターン31,32の厚みの異なる部分は、同一の材質から構成されていてもよく、異なる材質から構成されていてもよい。リードパターン31,32の厚みの異なる部分が同一の材質から構成されている場合は、同一の工程で形成できるという利点を有する。例えば、印刷技術やメッキ技術を使用することで、導電性と熱伝導性を有するリードパターン31,32を形成することができる。ここで、熱源から照射された赤外線が、周囲環境または筒状のガイド(図示しない)によって光路が決まり、赤外線吸収膜20上に集熱範囲50が画定される場合は、リードパターン31,32の厚みの異なる部分を集熱範囲50内に配置させると好ましい。これにより、赤外線吸収膜20に吸収された熱が熱抵抗の小さい方向、すなわちリードパターン31,32の厚みの厚い部分へと伝わることとなる。
ここで、図3、図4を参照して、リードパターン31,32の空気との接触面積について詳細に説明する。図3は、図1におけるB−B線に沿う模式切断部端面図である。図4は、リードパターンの断面形状が略長方形の場合の図1におけるB−B線に沿う模式切断部端面図に対応する図である。
リードパターン31,32は、図3に示されるように、その延在方向と直交する方向に沿う断面形状(以下、単に「断面形状」と記す。)が略半円となっている。ところで、リードパターン31,32からの放熱は、材質、断面積、および延在方向への長さが同じ場合、リードパターン31,32の赤外線吸収膜20に接触していない空気に触れる周長に比例する。例えば、図3に示すようにリードパターン31,32の断面形状が略半円の場合と、図4に示すようにリードパターン31,32の断面形状が略長方形の場合を比較する。なお、断面形状が略半円の場合の断面積と断面形状が略長方形の場合の断面積は同じSとし、断面形状が略長方形の場合の縦と横の比を1:5とする。断面形状が略半円の場合は、その周長は1.57×S0.5となり、断面形状が略長方形の場合は、その周長は3.13×S0.5となる。つまり、断面形状が略長方形に比べて、断面形状が略半円の方がその周長は小さくなる。したがって、リードパターン31,32の断面形状を略半円に近い形状とすることで、空気への接触面積が小さくなっていく。このように空気への接触面積が小さくなることで、放熱が少なくなり効率良く熱を感温素子10に伝熱できるため、感度を高めることができる。なお、ここでいう「略半円」とは、半円だけでなく、半楕円、かまぼこ型などの半円に近い形状を含むことを意味している。
また、熱源からの赤外線が赤外線吸収膜20に輻射され始めた時点では、感温素子10と赤外線吸収膜20との間の温度差は大きく、両者の温度勾配によってリードパターン31,32から感温素子10へ熱が流入する。すると、感温素子10の温度上昇に伴い、温度勾配は小さくなるので、感温素子10への熱流入は少なくなる。一方、感温素子10に集熱された熱量の一部は、リードパターン31,32や外界雰囲気を伝わって放熱され、感温素子10の温度低下が生じるため、温度勾配によって感温素子10への熱流入が持続する。そして、感温素子10へ流れ込む熱量と感温素子10から流れ出す熱量とが釣り合ったところで、熱平衡状態になり、感温素子10の温度は一定になる。なお、リードパターン31,32を流れる熱の一部はパターンの表面を通じて外部に流出するため、リードパターン31,32の断面形状を略半円として表面積を減らし、外部への熱流出を抑制するのが好ましい。
以上のように、本実施形態に係る温度センサ100は、リードパターン31,32が厚みの異なる部分を有し、リードパターン31,32の厚みの厚い部分がリードパターン31,32の厚みの薄い部分より感温素子10に近接する位置に配置されている。ここで、リードパターン31,32の厚みの厚い部分は熱抵抗の小さい部分となり、リードパターン31,32の厚みの薄い部分は熱抵抗の大きい部分となる。そのため、赤外線吸収膜20に吸収された熱は、熱抵抗の小さい方向、すなわちリードパターン31,32の厚みの厚い部分へと伝わる。したがって、赤外線吸収膜20に吸収された熱は、リードパターン31,32を介して感温素子10に速やかに伝熱するとともに外部への熱の流出が抑制されることから、温度センサ100の感度を向上させることができる。
また、本実施形態に係る温度センサ100では、リードパターン31,32の延在方向に直交する方向に沿う断面形状が略半円となっている。これにより、リードパターン31,32の空気との接触面積が小さくなり、リードパターン31,32からの放熱を少なくできる。したがって、熱の損失が少なくなり、温度センサ100の感度を一層高めることができる。
(実施形態2)
続いて、図5、図6を参照して、本発明の実施形態2に係る温度センサ200の構成について説明する。図5は、本発明の実施形態2に係る温度センサの平面図である。図6は、図5におけるC−C線に沿う模式切断部端面図である。実施形態2に係る温度センサ200は、リードパターン231,232が厚みの異なる部分を複数備えている点で、実施形態1に係る温度センサ100と相違している。以下、実施形態1と異なる点を中心に説明する。
温度センサ200は、図5に示されるように、赤外線吸収膜20と、感温素子10と、リードパターン230と、を備える。
リードパターン230は、赤外線吸収膜20に分布する熱量を感温素子10に伝熱する。また、リードパターン230は、感温素子10からの電気信号を外部に出力する。すなわち、感温素子10の温度変化に対応する電気特性の変化は、熱源の温度に対応する電気信号としてリードパターン230から外部に取り出されることとなる。リードパターン230の材質としては、赤外線吸収膜20より熱伝導性に優れている材質かつ電気抵抗の小さい材質であることが好ましい。このような材質としては、金、銀、白金、銅、アルミニウム、カーボンナノチューブなどを多く含むと好ましい。
リードパターン230は、一対のリードパターン231,232を有する。リードパターン231の一方の端部は感温素子10の電極11に接続され、他方の端部は外部に至るように延びている。リードパターン232の一方の端部は感温素子10の電極12に接続され、他方の端部は外部に至るように延びている。本実施形態では、これら一対のリードパターン231,232は、感温素子10を中心に互いに逆方向に直線状に延びている。但し、本実施形態ではリードパターン231,232が厚みの異なる部分を複数備えており、この点が実施形態1と相違する。
リードパターン231,232は、図6に示されるように、厚みの異なる部分を複数有する。本実施形態では、リードパターン231,232の厚みの異なる複数の部分が外部から感温素子10に向かって厚みが厚くなるように配置されている。これにより、リードパターン231,232の厚みが厚くなると熱抵抗が小さくなることから、リードパターン231,232の各所で捕捉された熱が感温素子10に流れやすくなる。逆に、本実施形態では、リードパターン231,232の厚みの異なる複数の部分が感温素子10から外部に向かって厚みが薄くなるように配置されている。これにより、リードパターン231,232の厚みが薄くなると熱抵抗が大きくなることから、外部への熱流出を抑制することができる。なお、リードパターン231,232の厚みの異なる複数の部分は、同一の材質から構成されていてもよく、異なる材質から構成されていてもよい。リードパターン231,232の厚みの異なる複数の部分が同一の材質から構成されている場合は、同一の工程で形成できるという利点を有する。例えば、印刷技術やメッキ技術を使用することで、導電性と熱伝導性を有するリードパターン231,232を形成することができる。また、本実施形態では、リードパターン231,232の厚みの異なる複数の部分が外部から感温素子10に向かって段階的に厚みが厚くなるように配置されているが、連続的に厚みが厚くなるように配置されていてもよい。
以上のように、本実施形態に係る温度センサ200は、リードパターン231,232は、厚みの異なる部分を複数備え、リードパターン231,232の厚みの異なる複数の部分が外部から感温素子10に向かって厚みが厚くなるように配置されている。通常、赤外線吸収膜20に吸収された熱は、リードパターン231,232の各所で捕捉し、感温素子10に近づくにつれ熱流量が加算されていく。そのため、リードパターン231,232の厚みの異なる複数の部分を外部から感温素子10に向かって厚みが厚くなるように配置すると、リードパターン231,232の各所で捕捉された熱が感温素子10に効率良く伝熱する伝熱経路が形成されることとなる。また、赤外線吸収膜20は、周辺部分では外部に熱が流出し易いことから温度分布が小さくなり、中央部分では熱が流出し難いことから温度分布が大きくなる。本実施形態においては、温度分布の大きい部分である赤外線吸収膜20の中央部分ではリードパターン231,232の熱抵抗が小さくなっていることから感熱素子10へ熱を効率よく伝えることができる。一方、温度分布の小さい部分である赤外線吸収膜20の周辺部分ではリードパターン231,232の熱抵抗が大きくなっていることから外部への熱の流出を減らすことができる。その結果、温度センサ200の感度を一層高めることができる。
(実施形態3)
続いて、図7、図8を参照して、本発明の実施形態3に係る温度センサ300の構成について説明する。図7は、本発明の実施形態3に係る温度センサの平面図である。図8は、図7におけるD−D線に沿う模式切断部端面図である。実施形態3に係る温度センサ300は、集熱パターン40を備えている点で、実施形態2に係る温度センサ200と相違している。以下、実施形態2と異なる点を中心に説明する。
温度センサ300は、実施形態2と同様に、赤外線吸収膜20と、感温素子10と、リードパターン230と、を備える。但し、本実施形態では集熱パターン40を備えており、この点が実施形態2と相違する。以下、実施形態2と異なる点を中心に説明する。
集熱パターン40は、図7に示されるように、感温素子10を起点として赤外線吸収膜20の面内に放射状に形成されている。この集熱パターン40は、赤外線吸収膜20に分布する熱量を感温素子10に集熱させるための集熱部材である。本実施形態では、感温素子10の電極11を起点として赤外線吸収膜20の面内に放射状に形成されている集熱パターン41と、感温素子10の電極12を起点として赤外線吸収膜20の面内に放射状に形成されている集熱パターン42を有している。より具体的には、集熱パターン41は、感温素子10の電極11を起点として、リードパターン231より図示上方に位置する領域に枝分かれを繰り返しながら延びる複数の幹と、リードパターン231より図示下方に位置する領域に枝分かれを繰り返しながら延びる複数の幹からなる。同様に、集熱パターン42は、感温素子10の電極12を起点として、リードパターン232より図示上方に位置する領域に枝分かれを繰り返しながら延びる複数の幹と、リードパターン232より図示下方に位置する領域に枝分かれを繰り返しながら延びる複数の幹からなる。なお、本実施形態においては、集熱パターン41,42は、感温素子10の電極11,12を起点として赤外線吸収膜20の面内に放射状に形成されているが、感温素子10の電極11,12の近傍を起点として赤外線吸収膜20の面内に放射状に形成されていてもよい。但し、この場合、集熱パターン41,42の起点と電極11,12との間を接続する集熱パターンが必要となる。
集熱パターン41,42は、感温素子10近傍の部分だけではなく感温素子10から離れた部分からも広範囲にわたって熱を補足し、感温素子10に効率よく集熱できるように形成されている。なお、集熱パターン41は、リードパターン231と接触しないように配置され、集熱パターン42は、リードパターン232と接触しないように配置され、集熱パターン41と集熱パターン42も接触しないように配置されている。リードパターン231,232、集熱パターン41、および集熱パターン42が接触してしまうと、ショート状態になり感温素子10からの電気的信号を取り出せなくなる。
集熱パターン41,42は、電気信号の伝送に係わる部材ではなく、熱伝導のみに係わる部材であるため、外部の部品に接続することなく、赤外線吸収膜20の面内で終端している。このため、集熱パターン41,42から外部への熱の流出が抑制される。集熱パターン41,42の終端から感温素子10へ向かって一方向に熱が流れる。集熱パターン41,42は、赤外線吸収膜20の各所に蓄熱している熱量を万遍なく捕捉するために、感温素子10の電極11,12を起点として赤外線吸収膜20の外周端部に向かって枝分かれを繰り返しながら放射状に形成されていることから、赤外線吸収膜20に分布する熱量は、集熱パターン41,42の枝と枝との間に島状に点在し、赤外線吸収膜20と感温素子10との間の温度勾配により、感温素子10へ向けて熱の流れを生じさせることができる。また、集熱パターン41,42を放射状に形成することで、熱を捕捉できる範囲を赤外線吸収膜20全体に拡大することが可能になり、集熱効率を高めることができる。
集熱パターン41,42は、図8に示されるように、厚みの異なる複数の部分を有する。本実施形態では、集熱パターン41,42の厚みの異なる複数の部分が外周端部から感温素子10に向かって厚みが厚くなるように配置されている。すなわち、集熱パターン41,42の厚みの厚い部分が集熱パターン41,42の厚みの薄い部分より感温素子10に近接する位置に配置されていることとなる。これにより、集熱パターン41,42の厚みが厚くなると熱抵抗が小さくなることから、集熱パターン41,42の各所で捕捉された熱が感温素子10に流れやすくなる。逆に、本実施形態では、集熱パターン41,42の厚みの異なる複数の部分が感温素子10から外周端部に向かって厚みが薄くなるように配置されている。これにより、集熱パターン41,42の厚みが薄くなると熱抵抗が大きくなることから、外部への熱流出を抑制することができる。また、本実施形態では、集熱パターン41,42の厚みの異なる複数の部分が外周端部から感温素子10に向かって段階的に厚みが厚くなるように配置されているが、連続的に厚みが厚くなるように配置されていてもよい。
集熱パターン41,42は、図8に示されるように、その延在方向と直交する方向に沿う断面形状(以下、単に「断面形状」と記す。)が略半円となっている。ところで、集熱パターン41,42からの放熱は、材質、断面積、および延在方向への長さが同じ場合、集熱パターン41,42の赤外線吸収膜20に接触していない空気に触れる周長に比例する。上述したように、断面形状が略長方形に比べて、断面形状が略半円の方がその周長は小さくなる。したがって、集熱パターン41,42の断面形状を略半円に近い形状とすることで、空気への接触面積が小さくなっていく。このように空気への接触面積が小さくなることで、放熱が少なくなり効率良く熱を感温素子10に伝熱できるため、感度を高めることができる。なお、ここでいう「略半円」とは、半円だけでなく、半楕円、かまぼこ型などの半円に近い形状を含むことを意味している。
集熱パターン41,42の材質としては、熱伝導性に優れていると好ましい。このような材質としては、例えば金、銀、白金、銅、アルミニウム、カーボンナノチューブなどを多く含むと好ましい。集熱パターン41,42の厚みの異なる部分は、同一の材質から構成されていてもよく、異なる材質から構成されていてもよい。また、集熱パターン41,42とリードパターン231,232とが同一の材質から構成されていてもよく、異なる材質から構成されていてもよい。集熱パターン41,42とリードパターン231,232とが同一の材質から構成されている場合、集熱パターン41,42とリードパターン231,232を同一の工程で形成できるという利点を有する。
以上のように、本実施形態に係る温度センサ300は、感温素子10を起点として赤外線吸収膜20の面内に放射状または網目状の少なくともいずれかで形成され、赤外線吸収膜20に分布する熱量を感温素子10に集熱するための集熱パターン41,42をさらに備え、集熱パターン41,42は、厚みの異なる部分を有し、集熱パターン41,42の厚みの厚い部分が集熱パターン41,42の厚みの薄い部分より感温素子10に近接する位置に配置されている。この場合、集熱パターン41,42を備えていることから、赤外線吸収膜20の各所に蓄熱している熱量を万遍なく捕捉することができるとともに、集熱パターン41,42に伝わった熱が感温素子10に速やかに伝熱するため、温度センサ300の感度を一層高めることができる。また、集熱パターン41,42が厚みの異なる部分を有し、集熱パターン41,42の厚みの厚い部分が集熱パターン41,42の厚みの薄い部分より感温素子10に近接する位置に配置されていることから、赤外線吸収膜20の各所に蓄熱している熱量が感温素子300に効率良く伝熱する伝熱経路が形成されることとなる。その結果、温度センサ300の応答性を向上できるとともに、感度を一層高めることができる。
(実施形態3の変形例)
続いて、図9を参照して、本発明の実施形態3に係る温度センサ300の変形例である温度センサ400の構成について説明する。図9は、本発明の実施形態3に係る温度センサの変形例の平面図である。
温度センサ400は、赤外線吸収膜20と、感温素子10と、リードパターン230と、集熱パターン240と、を備える。赤外線吸収膜20、感温素子10、リードパターン230の構成は、実施形態3に係る温度センサ300と同様である。また、集熱パターン240は、赤外線吸収膜20の面内に分布している形状以外は実施形態3に係る温度センサ300と同様である。以下、実施形態3と異なる点を中心に説明する。
集熱パターン240は、図9に示されるように、感温素子10を起点として赤外線吸収膜20の面内に網目状に形成されている。この集熱パターン240は、赤外線吸収膜20に分布する熱量を感温素子10に集熱させるための集熱部材である。本変形例では、感温素子10の電極11を起点として赤外線吸収膜20の面内に網目状に形成されている集熱パターン241と、感温素子10の電極12を起点として赤外線吸収膜20の面内に網目状に形成されている集熱パターン242を有している。具体的には、集熱パターン241は、感温素子10の電極11を起点として、赤外線吸収膜20の外周端部に向かって枝分かれを繰り返しながら延びる複数の幹を有し、それぞれの幹から枝分かれした枝の端部同士が連結して網目の形状を呈している。同様に、集熱パターン242は、感温素子10の電極12を起点として、赤外線吸収膜20の外周端部に向かって枝分かれを繰り返しながら延びる複数の幹を有し、それぞれの幹から枝分かれした枝の端部同士が連結して網目の形状を呈している。なお、本変形例においては、集熱パターン241,242は、感温素子10の電極11,12を起点として赤外線吸収膜20の面内に放射状に形成されているが、感温素子10の電極11,12の近傍を起点として赤外線吸収膜20の面内に放射状に形成されていてもよい。但し、この場合、集熱パターン241,242の起点と電極11,12との間を接続する集熱パターンが必要となる。
本変形例においても、温度センサ400が集熱パターン241,242を備えていることから、赤外線吸収膜20の各所に蓄熱している熱量を万遍なく捕捉することができるとともに、集熱パターン241,242に伝わった熱が感温素子10に速やかに伝熱するため、温度センサ400の感度を一層高めることができる。また、集熱パターン241,242が厚みの異なる部分を有し、集熱パターン241,242の厚みの厚い部分が集熱パターン241,242の厚みの薄い部分より感温素子10に近接する位置に配置されていることから、赤外線吸収膜20の各所に蓄熱している熱量が感温素子10に効率良く伝熱する伝熱経路が形成されることとなる。その結果、温度センサ400の応答性を向上できるとともに、感度を一層高めることができる。
(実施形態4)
続いて、図10、図11を参照して、本発明の実施形態4に係る温度センサ500の構成について説明する。図10は、本発明の実施形態4に係る温度センサの平面図である。図11は、図10におけるE−E線に沿う模式切断部端面図である。実施形態4に係る温度センサ500は、集熱膜60を備えている点で、実施形態3に係る温度センサ300と相違している。以下、実施形態3と異なる点を中心に説明する。
温度センサ500は、実施形態3と同様に、赤外線吸収膜20と、感温素子10と、リードパターン230と、集熱パターン40と、を備える。但し、本実施形態では集熱膜60を備えており、この点が実施形態3と相違する。以下、実施形態3と異なる点を中心に説明する。
集熱膜60は、図10に示されるように、赤外線吸収膜20上であって集熱パターン40の周囲に平面的に広がっている。本実施形態では、集熱パターン41の周囲に広がる集熱膜61と、集熱パターン42の周囲に広がる集熱膜62を有している。より具体的には、集熱膜61は、感温素子10の電極11を起点として延びる幹と、その幹から枝分かれを繰り返しながら延びる枝からなる集熱パターン41の周囲全体を囲むように形成されている。同様に、集熱膜62は、感温素子10の電極12を起点として延びる幹と、その幹から枝分かれを繰り返しながら延びる枝からなる集熱パターン42の周囲全体を囲むように形成されている。なお、集熱膜61は、リードパターン231、集熱パターン42と接触しないように配置され、集熱膜62は、リードパターン232、集熱パターン41と接触しないように配置され、集熱膜61と集熱膜62も接触しないように配置されている。リードパターン231,232、集熱パターン41,42、および集熱膜61,62が接触してしまうと、ショート状態になり感温素子10からの電気的信号を取り出せなくなる。また、集熱膜61,62と赤外線吸収膜20との接触面の粗さは、1〜2.5μm程度が好ましい。すなわち、赤外線の波長帯域の1/4程度となる。これにより、赤外線吸収膜20を透過する赤外線を、赤外線吸収膜20と集熱膜61,62の接触面において吸収することができ、より熱を吸収することができるため、温度センサ500の応答性を向上できるとともに、感度をより一層向上することができる。
集熱膜61,62の厚みは、図11に示されるように、集熱パターン41,42の厚みより薄くなっている。具体的には、集熱パターン41,42の厚みは10μm〜70μm程度であるのに対し、集熱膜61,62の厚みは5μm以下である。このように、集熱パターン41,42の厚みより集熱膜61,62の厚みを薄くすることで、集熱膜61,62の熱容量が小さくなり、応答性への影響は少ない。
集熱膜61、62の材質としては、熱伝導性に優れていると好ましい。このような材質としては、例えば金、銀、白金、銅、アルミニウム、カーボンナノチューブなどを多く含むと好ましい。集熱膜61、62は、リードパターン231、232や集熱パターン41、42と同一の材質から構成されていてもよく、異なる材質から構成されていてもよい。集熱膜61、62とリードパターン231、232と集熱パターン41、42が同一の材質から構成されている場合、同一の工程で形成できるという利点を有する。ここで、赤外線吸収膜20は、樹脂であるため熱抵抗が大きく、赤外線吸収膜20だけでは分布する熱量の移動がおきにくい。一方、集熱膜61,62は、集熱パターン41,42と同様に赤外線吸収膜20よりも熱抵抗の小さい材質から構成されているため、集熱膜61,62を加えることにより赤外線吸収膜20に分布する熱量が集熱パターン41,42へ移動しやすくなる。つまり、集熱パターン41,42に伝わる熱量を増やすことができ、効率良く熱を感温素子10に伝熱できる。その結果、温度センサ500の感度をより一層高めることができる。
以上のように、本実施形態に係る温度センサ500は、赤外線吸収膜20上であって集熱パターン41,42の周囲に広がる集熱膜61,62をさらに備え、集熱膜61,62の厚みは、集熱パターン41,42の厚みより薄くなっている。これにより、集熱パターン41,42で捕捉しきれなかった赤外線吸収膜20に蓄熱している熱量を確実に捕捉できるとともに、集熱膜61,62の厚みが集熱パターン41,42の厚みより薄く熱抵抗が大きいことから、集熱膜61,62から集熱パターン41,42への熱の流れを促進させることができる。その結果、温度センサ500の応答性を向上できるとともに、感度をより一層高めることができる。
(実施形態4の変形例)
続いて、図12を参照して、本発明の実施形態4に係る温度センサ500の変形例である温度センサ600の構成について説明する。図12は、本発明の実施形態4に係る温度センサの変形例の平面図である。
温度センサ600は、赤外線吸収膜20と、感温素子10と、リードパターン230と、集熱パターン40と、集熱膜160と、を備える。赤外線吸収膜20、感温素子10、リードパターン230、集熱パターン40の構成は、実施形態4に係る温度センサ500と同様である。また、集熱膜160は、赤外線吸収膜20の面内に分布している形状以外は、実施形態4に係る温度センサ500と同様である。以下、実施形態4と異なる点を中心に説明する。
集熱膜160は、図12に示されるように、赤外線吸収膜20上であって集熱パターン40の周囲に広がっている。本実施形態では、集熱パターン41の周囲に広がる集熱膜161と、集熱パターン42の周囲に広がる集熱膜162を有している。より具体的には、集熱膜161は、感温素子10の電極11を起点として枝分かれを繰り返しながら延びる集熱パターン41の複数の幹の根元部分の周囲に形成され、それぞれの幹の根元部分に形成された集熱膜161同士が一体的に形成されている。すなわち、複数の幹の外周端部付近には集熱膜161が形成されていないこととなる。同様に、集熱膜162は、感温素子10の電極12を起点として枝分かれを繰り返しながら延びる集熱パターン42の複数の幹の根元部分の周囲に形成され、それぞれの幹の根元部分に形成された集熱膜162同士が一体的に形成されている。すなわち、複数の幹の外周端部付近には集熱膜162が形成されていないこととなる。
本変形例においても、温度センサ600が赤外線吸収膜20上であって集熱パターン41,42の周囲に広がる集熱膜161,162を備えていることから、集熱パターン41,42で捕捉しきれなかった赤外線吸収膜20に蓄熱している熱量を確実に捕捉できるとともに、集熱膜161,162の厚みが集熱パターン41,42の厚みより薄く熱抵抗が大きいことから、集熱膜161,162から集熱パターン41,42への熱の流れを促進させることができる。その結果、温度センサ600の応答性を向上できるとともに、感度をより一層高めることができる。
(実施形態5)
続いて、図13、14を参照して、本発明の実施形態5に係る温度センサ700の構成について説明する。図13は、本発明の実施形態5に係る温度センサの平面図である。図14は、図13におけるF−F線に沿う模式切断部端面図である。実施形態5に係る温度センサ700は、集熱膜260を備えている点で、実施形態3の変形例に係る温度センサ400と相違している。以下、実施形態3の変形例と異なる点を中心に説明する。
温度センサ700は、実施形態3の変形例と同様に、赤外線吸収膜20と、感温素子10と、リードパターン230と、集熱パターン240と、を備える。但し、本実施形態では集熱膜260を備えており、この点が実施形態3の変形例と相違する。以下、実施形態3の変形例と異なる点を中心に説明する。
集熱膜260は、図13に示されるように、赤外線吸収膜20上であって集熱パターン240の周囲に広がっている。本実施形態では、集熱パターン241の周囲に広がる集熱膜261と、集熱パターン242の周囲に広がる集熱膜262を有している。より具体的には、集熱膜261は、網目状の集熱パターン241の外枠となる外周部分を構成する枝もしくは幹に沿って形成される部分と、集熱パターン241の枝もしくは幹によって囲まれる領域内に形成される部分を有する。同様に、集熱膜262は、網目状の集熱パターン242の外枠となる外周部分を構成する枝もしくは幹に沿って形成される部分と、集熱パターン242の枝もしくは幹によって囲まれる領域内に形成される部分を有する。なお、集熱膜261は、リードパターン231、集熱パターン242と接触しないように配置され、集熱膜262は、リードパターン232、集熱パターン241と接触しないように配置され、集熱膜261と集熱膜262も接触しないように配置されている。リードパターン231,232、集熱パターン241,242、および集熱膜261,262が接触してしまうと、ショート状態になり感温素子10からの電気的信号を取り出せなくなる。また、集熱膜261,262と赤外線吸収膜20との接触面の粗さは、1〜2.5μm程度が好ましい。すなわち、赤外線の波長帯域の1/4程度となる。これにより、赤外線吸収膜20を透過する赤外線を、赤外線吸収膜20と集熱膜261,262の接触面において吸収することができ、より熱を吸収することができるため、感度をより一層向上することができる。
集熱膜261,262の厚みは、図14に示されるように、集熱パターン241,242の厚みより薄くなっている。具体的には、集熱パターン241,242の厚みは10μm〜70μm程度であるのに対し、集熱膜261,262の厚みは5μm以下である。このように、集熱パターン241,242の厚みより集熱膜261,262の厚みを薄くすることで、集熱膜261,262の熱容量が小さくなり、応答性への影響は少ない。
集熱膜261,262の材質としては、熱伝導性に優れていると好ましい。このような材質としては、例えば金、銀、白金、銅、アルミニウム、カーボンナノチューブなどを多く含むと好ましい。集熱膜261,262は、リードパターン231,232や集熱パターン241,242と同一の材質から構成されていてもよく、異なる材質から構成されていてもよい。集熱膜261,262とリードパターン231,232と集熱パターン241,242が同一の材質から構成されている場合、同一の工程で形成できるという利点を有する。ここで、赤外線吸収膜20は、樹脂であるため熱抵抗が大きく、赤外線吸収膜20だけでは分布する熱量の移動がおきにくい。一方、集熱膜261,262は、集熱パターン241,242と同様に赤外線吸収膜20よりも熱抵抗の小さい材質から構成されているため、集熱膜261,262を加えることにより赤外線吸収膜20に分布する熱量が集熱パターン241,242へ移動しやすくなる。つまり、集熱パターン241,242に伝わる熱量を増やすことができ、効率良く熱を感温素子10に伝熱できる。その結果、温度センサ700の感度をより一層高めることができる。
以上のように、本実施形態に係る温度センサ700は、赤外線吸収膜20上であって集熱パターン241,242の周囲に広がる集熱膜261,262をさらに備え、集熱膜261,262の厚みは、集熱パターン241,242の厚みより薄くなっている。これにより、集熱パターン241,242で捕捉しきれなかった赤外線吸収膜20に蓄熱している熱量を確実に捕捉できるとともに、集熱膜261,262の厚みが集熱パターン241,242の厚みより薄く熱抵抗が大きいことから、集熱膜261,262から集熱パターン241,242への熱の流れを促進させることができる。その結果、温度センサ700の応答性を向上できるとともに、感度をより一層高めることができる。
(実施形態5の変形例)
続いて、図15を参照して、本発明の実施形態5に係る温度センサ700の変形例である温度センサ800の構成について説明する。図15は、本発明の実施形態5に係る温度センサの変形例の平面図である。
温度センサ800は、赤外線吸収膜20と、感温素子10と、リードパターン230と、集熱パターン240と、集熱膜360と、を備える。赤外線吸収膜20、感温素子10、リードパターン230、集熱パターン240の構成は、実施形態5に係る温度センサ700と同様である。また、集熱膜360は、赤外線吸収膜20の面内に分布している形状以外は、実施形態5に係る温度センサ700と同様である。以下、実施形態5と異なる点を中心に説明する。
集熱膜360は、図15に示されるように、赤外線吸収膜20上であって集熱パターン240の周囲に広がっている。本実施形態では、集熱パターン241の周囲に広がる集熱膜361と、集熱パターン242の周囲に広がる集熱膜362を有している。より具体的には、集熱膜361は、網目状の集熱パターン241の外枠となる外周部分を構成する枝もしくは幹に沿って形成される部分と、集熱パターン241の枝もしくは幹によって囲まれる領域内に形成される部分を有する。但し、本変形例では、集熱パターン241の枝もしくは幹によって囲まれる領域内に形成される集熱膜361の一部もしくは全部に開口部70を有する。同様に、集熱膜362は、網目状の集熱パターン242の外枠となる外周部分を構成する枝もしくは幹に沿って形成される部分と、集熱パターン242の枝もしくは幹によって囲まれる領域内に形成される部分を有する。但し、本変形例では、集熱パターン242の枝もしくは幹によって囲まれる領域内に形成される集熱膜362の一部もしくは全部に開口部70を有する。
本変形例においても、温度センサ800が赤外線吸収膜20上であって集熱パターン241,242の周囲に広がる集熱膜361,362を備えていることから、集熱パターン241,242で捕捉しきれなかった赤外線吸収膜20に蓄熱している熱量を確実に捕捉できるとともに、集熱膜361,362の厚みが集熱パターン241,242の厚みより薄く熱抵抗が大きいことから、集熱膜361,362から集熱パターン241,242への熱の流れを促進させることができる。その結果、温度センサ800の応答性を向上できるとともに、感度をより一層高めることができる。
(実施形態6)
続いて、図16、17を参照して、本発明の実施形態6に係る温度センサ900の構成について説明する。図16は、本発明の実施形態6に係る温度センサの平面図である。図17は、図16におけるG−G線に沿う模式切断部端面図である。実施形態6に係る温度センサ900は、集熱膜460を備えている点において、実施形態2に係る温度センサ200と相違している。以下、実施形態2と異なる点を中心に説明する。
温度センサ900は、実施形態2と同様に、赤外線吸収膜20と、感温素子10と、リードパターン230と、を備える。但し、本実施形態では集熱膜460を備えており、この点が実施形態2と相違する。以下、実施形態2と異なる点を中心に説明する。
集熱膜460は、図16に示されるように、感温素子10を起点として赤外線吸収膜20の面内に放射状に広がっている。この集熱膜460は、赤外線吸収膜20に分布する熱量を感温素子10に集熱させるための集熱部材である。本実施形態では、感温素子10の電極11を起点として赤外線吸収膜20の面内に放射状に形成されている集熱膜461と、感温素子10の電極12を起点として赤外線吸収膜20の面内に放射状に形成されている集熱膜462を有している。より具体的には、集熱膜461は、感温素子10の電極11を起点として、リードパターン231より図示上方に位置する領域に分布する膜と、リードパターン231より図示下方に位置する領域に分布する膜からなる。同様に、集熱膜462は、感温素子10の電極12を起点として、リードパターン232より図示上方に位置する領域に分布する膜と、リードパターン232より図示下方に位置する領域に分布する膜からなる。尚、集熱膜461のリードパターン231より図示上方に位置する領域に分布する膜およびリードパターン231より図示下方に位置する領域に分布する膜の大きさは、それぞれ感温素子10のサイズ以上であり、集熱膜462のリードパターン232より図示上方に位置する領域に分布する膜およびリードパターン232より図示下方に位置する領域に分布する膜の大きさは、それぞれ感温素子10のサイズ以上であり、集熱膜460全体の大きさとしては、熱源から照射される赤外線によって画定される有効照射エリアである集熱範囲51の80%以内であると好ましい。この場合、集熱膜460の性能を最大限発揮することができる。
集熱膜461,462の厚みは、図17に示されるように、リードパターン231,232の厚みより薄くなっている。具体的には、リードパターン231,232の厚みは10μm〜70μm程度であるのに対し、集熱膜461,462の厚みは5μm以下である。このように、リードパターン231,232の厚みより集熱膜461,462の厚みを薄くすることで、集熱膜461,462の熱容量が小さくなり、応答性への影響は少ない。
集熱膜461、462の材質としては、熱伝導性に優れていると好ましい。このような材質としては、例えば金、銀、白金、銅、アルミニウム、カーボンナノチューブなどを多く含むと好ましい。集熱膜461、462は、リードパターン231、232と同一の材質から構成されていてもよく、異なる材質から構成されていてもよい。集熱膜461、462とリードパターン231、232が同一の材質から構成されている場合、同一の工程で形成できるという利点を有する。ここで、赤外線吸収膜20は、樹脂であるため熱抵抗が大きく、赤外線吸収膜20だけでは分布する熱量の移動がおきにくい。一方、集熱膜461,462は、赤外線吸収膜20よりも熱抵抗の小さい材質から構成されているため、集熱膜461,462を加えることにより赤外線吸収膜20に分布する熱量がリードパターン231,232へ移動しやすくなる。つまり、リードパターン231,232に伝わる熱量を増やすことができ、効率良く熱を感温素子10に伝熱できる。その結果、温度センサ500の感度をより一層高めることができる。
以上のように、本実施形態に係る温度センサ900は、赤外線吸収膜20上にあって、リードパターン231,232の周囲に広がる集熱膜461,462を備え、集熱膜461,462の厚みは、リードパターン231,232の厚みより薄くなっている。そのため、リードパターン231,232で補足しきれなかった赤外線吸収膜20に蓄熱している熱量を確実に補足できるとともに、集熱膜461,462の厚みがリードパターン231,232の厚みより薄く熱抵抗が大きいことから、集熱膜461,462からリードパターン231,232への熱の流れを促進させることができる。また、集熱膜461,462を放射状に形成することで、熱を捕捉できる範囲を赤外線吸収膜20全体に拡大することが可能になり、集熱効率を高めることができる。その結果、温度センサ900の応答性を向上できるとともに、感度を一層高めることができる。
以下、本実施形態によって感度を向上させることができることを実施例1〜4と従来例を用いて具体的に示す。但し、本発明はこれらの例に限定されない。
実施例1では、上述した実施形態1の温度センサ100を用いた。実施例2では、上述した実施形態3の温度センサ300を用いた。実施例3では、上述した実施形態4の温度センサ500を用いた。実施例4では、上述した実施形態6の温度センサ900を用いた。従来例では、図22および図23に示される温度センサ1000を用いた。図22は、従来例に係る温度センサの平面図である。図23は、図22におけるH−H線に沿う模式切断部端面図である。
まず、従来例に係る温度センサ1000の構成について説明する。温度センサ1000は、図22に示されるように、赤外線吸収膜21と、感温素子110と、リードパターン330と、を備える。
赤外線吸収膜21は、熱源(図示しない)から輻射される赤外線を吸収して温度上昇する。
感温素子110は、赤外線吸収膜21の熱を検知することにより、熱源の温度に対応した電気信号を出力する。本従来例では、感温素子110は、一対の電極13,14を備えており、赤外線吸収膜21の熱源からの赤外線が入射する面とは反対側の面上に配置されている。
リードパターン330は、赤外線吸収膜21に分布する熱量を感温素子110に伝熱する。また、リードパターン330は、感温素子110からの電気信号を外部に出力する。すなわち、感温素子110の温度変化に対応する電気特性の変化は、熱源の温度に対応する電気信号としてリードパターン330から外部に取り出されることとなる。このリードパターン330は、一対のリードパターン331、332を有する。リードパターン331の一方の端部は感温素子110の電極13に接続され、他方の端部は外部に至るように延びている。リードパターン332の一方の端部は感温素子110の電極14に接続され、他方の端部は外部に至るように延びている。本従来例においては、リードパターン331,332は、一方の端部と他方の端部との間において、つづら折り状の屈折部が設けられている。具体的には、リードパターン331,332は、感温素子110の電極13,14から外部至るまでに図示上方および図示下方に複数回折り返して延びている。
これら実施例1〜4と従来例において、各寸法、各材質を以下のように設定した。すなわち、実施例1〜4における赤外線吸収膜20としては大きさが13mm×6mm、厚さが30μmのポリイミドを用い、感温素子10としてはサーミスタを用い、リードパターン31,32(231,232)としてはリードパターン31,32(231,232)全体における中間部から感温素子10に至る部分、すなわち厚みの厚い部分の厚さが30μm、幅が0.2mm、中間部から外部に至る部分、すなわち厚みの薄い部分の厚さが10μm、幅が0.2mmの銅を用いた。また、実施例2,3における集熱パターン41,42としては厚みの厚い部分の厚さが30μm、幅が70μm、厚みの薄い部分の厚さが10μm、幅が70μmの銅を用いた。またさらには、実施例3,4における集熱膜61,62(461,462)としては厚みが1μmの銅を用いた。一方、従来例における赤外線吸収膜21としては大きさが13mm×6mm、厚さが30μmのポリイミドを用い、感温素子110としてはサーミスタを用い、リードパターン331,332としては厚さが30μmの銅を用いた。なお、実施例1〜4および従来例において、180℃に保たれている熱源を用い、周囲環境は常温とした。
実施例1〜4および従来例について、時間の経過に伴う温度上昇を測定した。測定した結果を図18〜図21に示す。
図18に示すグラフは、実施例1および従来例の時間の経過に伴う温度上昇を示すグラフである。図18中、横軸は時間〔sec〕を表示し、縦軸は感温素子の温度〔℃〕を表示している。図18に示されるように、実施例1における温度センサ100の感温素子10は、従来例における温度センサ1000の感温素子110に比して、約0.8℃高く温度上昇しており、実施例1は従来例に比して感度が向上していることが確認できた。
図19に示すグラフは、実施例1,2および従来例の時間の経過に伴う温度上昇を示すグラフである。図19中、横軸は時間〔sec〕を表示し、縦軸は感温素子の温度〔℃〕を表示している。図19に示されるように、実施例2における温度センサ300の感温素子10は、従来例における温度センサ1000の感温素子110に比して、約1.6℃高く温度上昇しており、実施例2は従来例に比して感度が向上していることが確認できた。また、実施例2における温度センサ300の感温素子10の温度上昇の立ち上がり傾斜は、従来例における温度センサ1000の感温素子110の温度上昇の立ち上がり傾斜よりも急峻となっており、実施例2は従来例に比して応答性が向上していることも確認できた。なお、実施例2における温度センサ300の感温素子10は、実施例1における温度センサ100の感温素子10に比して、約0.8℃高く温度上昇しており、実施例2は実施例1よりもさらに感度が向上していることも確認できた。
図20に示すグラフは、実施例1,3および従来例の時間の経過に伴う温度上昇を示すグラフである。図20中、横軸は時間〔sec〕を表示し、縦軸は感温素子の温度〔℃〕を表示している。図20に示されるように、実施例3における温度センサ500の感温素子10は、従来例における温度センサ1000の感温素子110に比して、約1.76℃高く温度上昇しており、実施例3は従来例に比して感度が向上していることが確認できた。また、実施例3における温度センサ500の感温素子10の温度上昇の立ち上がり傾斜は、従来例における温度センサ1000の感温素子110の温度上昇の立ち上がり傾斜よりも急峻となっており、実施例3は従来例に比して応答性が向上していることも確認できた。なお、実施例3における温度センサ500の感温素子10は、実施例1における温度センサ100の感温素子10に比して、約0.96℃高く温度上昇しており、実施例3は実施例1よりもさらに感度が向上していることも確認できた。
図21に示すグラフは、実施例1,4および従来例の時間の経過に伴う温度上昇を示すグラフである。図21中、横軸は時間〔sec〕を表示し、縦軸は感温素子の温度〔℃〕を表示している。図21に示されるように、実施例4における温度センサ900の感温素子10は、従来例における温度センサ1000の感温素子110に比して、約1.72℃高く温度上昇しており、実施例4は従来例に比して感度が向上していることが確認できた。また、実施例4における温度センサ900の感温素子10の温度上昇の立ち上がり傾斜は、従来例における温度センサ1000の感温素子110の温度上昇の立ち上がり傾斜よりも急峻となっており、実施例4は従来例に比して応答性が向上していることも確認できた。なお、実施例4における温度センサ900の感温素子10は、実施例1における温度センサ100の感温素子10に比して、約0.92℃高く温度上昇しており、実施例4は実施例1よりもさらに感度が向上していることも確認できた。
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。実施の形態は例示であり、実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、実施形態に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、実施形態に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
本実施形態では、放射状に形成された集熱パターン40と網目状に形成された集熱パターン240をそれぞれ独立して説明したがこれに限定されない。例えば、集熱パターンの感温素子の電極に接続されることとなる根元付近を網目状に形成し、集熱パターンの外周端部付近を放射状に形成してもよく、集熱パターンの感温素子の電極に接続されることとなる根元付近を放射状に形成し、集熱パターンの外周端部付近を網目状に形成してもよい。いずれの場合であっても、集熱パターンを備えていることから、赤外線吸収膜の各所に蓄熱している熱量を万遍なく捕捉することができるとともに、集熱パターンに伝わった熱が感温素子に速やかに伝熱するため、温度センサの感度を一層高めることができる。
また、集熱膜と集熱パターンの組み合わせは、赤外線の有効照射エリア内である集熱範囲での赤外線の受光の強度分布や集熱範囲の面積などによって組み合わせを変えていくことが好ましい。