JP6158769B2 - 高強度高延性鋼板 - Google Patents

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Description

本発明は、自動用薄鋼板などとして有用な高強度高延性鋼板に関し、詳しくは、Mnを5質量%程度含有する中Mn鋼からなる鋼板の強度・延性バランス向上技術に関するものである。
例えば自動車の骨格部品などに使用される鋼板には、衝突安全性や車体軽量化による燃費軽減などを目的としてさらなる高強度が求められるとともに、形状の複雑な骨格部品に加工するために優れた成形加工性も要求される。このため、具体的な機械的特性(以下、単に「特性」ともいう。)として、引張強度(TS)が1180MPa以上で、伸び(EL)が32%以上を確保しうる鋼板の開発が要望されている。
上記要望に答えるべく、鋼板材料として種々の材料が提案されているが、近年、強度・延性バランスに優れる、Mn含有量が4〜10質量%程度の中Mn鋼が注目されてきている。
たとえば、特許文献1には、重量%で、Mn:4.0〜7.0%、Al:0.5〜2.0%を含む成分組成の鋼スラブを熱間圧延し、550〜650℃で巻取りした後、冷間圧延し、2相域温度で焼鈍することで得られた、マルテンサイト:40〜50%、残留オーステナイト:20〜40%、残部フェライトからなる鋼組織を有する高強度冷延鋼板が開示されている。この高強度冷延鋼板は、Alを所定量含有させることで、遅れ破壊を防止できるとするものであるが、引張強度1200MPaで伸び30%程度までの特性しか得られておらず、上記要望レベルを満足させるには至っていない。
また、特許文献2には、Mn:3.5〜10.0質量%を含む成分組成の鋼スラブを熱間圧延し、2相域温度の低温域で巻取りした後、冷間圧延し、2相域温度で焼鈍することで得られた、面積率で、30%以上のフェライトと10%以上の残留オーステナイトを含有する鋼組織を有する高強度鋼板が開示されている。この高強度鋼板は、フェライトと残留オーステナイトを所要量ずつ併存させることで、延性が確保され、所定の強度−延性バランスが得られるとするものであるが、上記要望レベルの強度−延性バランスを満足させるには至っていない。
また、特許文献3には、Mn:3.5〜10質量%を含む成分組成での鋼スラブを熱間圧延し、500〜600℃で巻取りした後、冷間圧延し、300〜600℃までの1次加熱を平均昇温速度1〜50℃/sと急速加熱し、600℃から焼鈍温度までの2次加熱を平均昇温速度0.1〜10℃/sとして、焼鈍温度:650〜750℃まで加熱することで、体積率で、30〜70%のフェライト相と10%以上の残留オーステナイト相を含み、該残留オーステナイト相の平均間隔が1.5μm以下である組織を有する高強度薄鋼板が開示されている。この高強度薄鋼板は、衝突エネルギー吸収能に優れるとするものの、フェライトが相当量含まれるために強度−延性バランスが不十分であると想定される。
特開2011−523442号公報 特開2013−076162号公報 特開2012−251239号公報
そこで本発明の目的は、引張強度が1180MPa以上で、伸びが32%以上を確保しうる、強度−延性バランスに優れた高強度高延性鋼板を提供することにある。
本発明の第1発明に係る高強度高延性鋼板は、
成分組成が、質量%で、
C:0.10〜0.30%、
Si:1.0〜3.0%、
Mn:4.0〜7.0%
であり、残部が鉄および不可避的不純物からなり、
鋼組織が、
残留オーステナイトが面積率で40%以上、
フェライトが面積率で5%以下
であり、残部がベイナイト、マルテンサイト、焼戻しベイナイト、および焼戻しマルテンサイトからなるとともに、
EBSDによるIQ値が5000以下の領域が面積率で25%以上、
同IQ値が6000以上の領域が面積率で30%以上であり、
さらに、前記残留オーステナイト中のMn濃度が鋼板全体のMn含有量の1.5倍以上である
ことを特徴とする。
本発明によれば、中Mn鋼からなる鋼板において、EBSDによるIQ値の低い領域と高い領域の各割合を制御することで、鋼組織中にベイナイト(焼戻しベイナイトを含む)とマルテンサイト(焼戻しマルテンサイトを含む)を混合して導入しつつ、残留オーステナイト中へのMnの濃化度を高めることで、引張強度が1180MPa以上で、伸びが32%以上を確保しうる、強度−延性バランスに優れた高強度高延性鋼板を提供できるようになった。
本発明者らは、上記課題を解決するために、中Mn鋼からなる鋼板において、その機械的特性として、引張強度が1180MPa以上で、伸びが32%以上を確保しうる方策について種々検討を重ねてきた。その結果、以下の思考研究により、上記所望の特性を確保しうることに想到した。
すなわち、鋼はMn含有量を増加させることで、焼鈍時に2相域加熱を行うことにより組織中に残留オーステナイトを多量に確保できることは周知の技術的事項である。
一方、母相(マトリックス)の組織制御としては、上記背景技術で挙げた従来技術のように、フェライト相の導入が主体となっているが、フェライト相を導入すると、延性は向上するものの鋼板の強度が低下し、強度−延性バランスを向上させることが難しい。また、焼鈍前の組織をマルテンサイト単相として、これを2相域加熱した場合も、中Mn鋼では、焼鈍温度を低くせざるを得ないため、母相のマルテンサイトの焼戻しによる延性改善効果が期待できず、鋼板の延性が十分に確保できない。
そのため、強度を十分に確保しつつ、延性を向上させるためには、母相の延性を高めつつ、残留オーステナイトの延性を十分に高めることが有効であると考えられる。そして、強度を確保しつつ延性を高める手段としては、母相にラス状の硬質組織を導入しつつ、強度の高いマルテンサイトと、マルテンサイトより強度はやや低いが延性の高いベイナイトを混合して導入することが有効である。
ただし、ベイナイトとマルテンサイトは、焼戻し後のものも含めて、それらの組織はいずれもラス状であるため、顕微鏡観察での判別が難しい。
そこで、ベイナイトおよび焼戻しベイナイトは、マルテンサイトおよび焼戻しマルテンサイトに比べ、転位の含有量が少ないので、それらの判別手段として、EBSD−IQ法を用いることとした。そして、低IQ値の領域をマルテンサイトまたは焼戻しマルテンサイトとみなす一方、高IQ値の領域をベイナイトまたは焼戻しベイナイトとみなし、それら低IQ値の領域と高IQ値の領域の各割合がそれぞれ一定値以上必要とした。
また、残留オーステナイトの延性向上効果を発揮させるためには、残留オーステナイトの安定性向上が有効であることから、残留オーステナイト中へのMnの濃化度を高めることで残留オーステナイトを安定化させ、その延性向上効果を高めることとした。
本発明者らは、上記知見に基づいてさらに検討を進めた結果、本発明を完成するに至った。
以下、まず、本発明に係る高強度高延性鋼板(以下、「本発明鋼板」ともいう。)を構成する成分組成について説明する。以下、化学成分の単位はすべて質量%である。また、各成分の「含有量」を単に「量」と記載することもある。
〔本発明鋼板の成分組成〕
C:0.10〜0.30%
Cは、残留オーステナイトの量に寄与することで、強度と延性を確保するために必須の元素である。またCは、熱間圧延後の巻取り温度での保持中におけるベイナイト変態に寄与し、低IQ領域の面積率と高IQ領域の面積率を上昇させることで、延性に寄与する。このような作用を有効に発揮させるためには、Cを0.10%以上、好ましくは0.12%以上、さらに好ましくは0.14%以上含有させる必要がある。ただし、C量が過剰になると、ベイナイト変態の速度が大幅に低下し、焼鈍前にベイナイト量を十分に確保できなくなり、延性を劣化させるので、C量は0.30%以下、好ましくは0.28%以下、さらに好ましくは0.26%以下とする。
Si:1.0〜3.0%
Siは、固溶強化により強度上昇に寄与するとともに、残留オーステナイトの分解を抑制することで残留オーステナイト量を確保できるようにして延性の向上に寄与する必須の元素である。これらの作用を有効に発揮させるためには、Siを1.0%以上、好ましくは1.2%以上、さらに好ましくは1.4%以上含有させる必要がある。ただし、Si量が過剰になると、母相の延性が劣化して鋼板の延性が却って劣化するので、Si量は3.0%以下、好ましくは2.8%以下、さらに好ましくは2.6%以下とする。
Mn:4.0〜7.0%
Mnは、残留オーステナイトを多量に確保するために、非常に有効であるとともに、残留オーステナイトに濃化して残留オーステナイトの安定度を高めることができ、その結果延性向上に寄与する必須の元素である。またMnは、熱間圧延後の巻取り温度での保持中におけるベイナイト変態に寄与し、低IQ領域の面積率と高IQ領域の面積率を上昇させることで、延性に寄与する。これらの作用を有効に発揮させるためには、Mnを4.0%以上、好ましくは4.3%以上、さらに好ましくは4.6%以上含有させる必要がある。ただし、Mn量が過剰になると、ベイナイト変態が大幅に遅延し、焼鈍前の段階でベイナイトを十分に形成させることができなくなり、特性を確保できなくなるので、Mn量は7.0%以下、好ましくは6.7%以下、さらに好ましくは6.4%以下とする。
本発明の鋼は上記元素を必須の成分として含有し、残部は鉄および不可避的不純物(P、S、Al、N、O等)であるが、その他、本発明の作用を損なわない範囲で、許容成分(Cr、Mo、B、Cu、Ni、Nb、Ti、V、Ca、Mg等)を含有させることができる。
つぎに、本発明鋼板を特徴づける組織について説明する。
〔本発明鋼板の組織〕
上述したとおり、本発明鋼板は、原則フェライトを含まず、所定量の残留オーステナイトと、残部実質的にベイナイトおよびマルテンサイト(これらの焼戻しされたものを含む)からなる組織に制御する点で、上記従来技術と異なっている。
<残留オーステナイト:面積率で40%以上>
残留オーステナイトは、変形中に加工誘起変態することで、材料を加工硬化させ、高強度化・高延性化に寄与する有用な組織である。このような作用を有効に発揮させるため、残留オーステナイトは面積率で40%以上、好ましくは41%以上、さらに好ましくは42%以上必要である。上記観点からは残留オーステナイトは多ければ多いほど好ましいが、この成分系の鋼では面積率で50%程度が上限である。
<フェライト:面積率で5%以下>
鋼板の強度を確保するためには、母相を高強度組織にする必要があるので、フェライトのような軟質組織はできるだけ含まないことが好ましいが、面積率で5%までの混入は許容される。
<残部:ベイナイト、マルテンサイト、焼戻しベイナイト、および焼戻しマルテンサイト>
上述のとおり、鋼板の強度を確保するためには、母相を高強度組織にする必要があることから、残部組織は、硬質組織である、ベイナイトおよびマルテンサイトならびにこれらの焼戻し組織の混合組織とする。
<EBSDによるIQ値が5000以下の領域:面積率で25%以上、同IQ値が6000以上の領域:面積率で30%以上>
EBSDによるIQ値は、強度の高い組織と、延性の高い組織の含有割合を示すパラメータとして導入したものである。ここで、EBSD(Electron Back Scatter Diffraction)とは、試験片表面に電子線を入射させたときに発生する反射電子から得られる菊池パターンを解析する手法である。また、IQ値は、EBSDにより得られた菊池パターンの強度に関する値で、測定部位における結晶の完全性をパラメータ化した数値である。結晶の完全性が高ければIQ値は高く、完全性が低ければIQ値は低くなる。そして、IQ値が5000以下の領域は、変態時に多くの転位等の格子欠陥が導入された、結晶の完全性が低いマルテンサイト相(焼戻しマルテンサイト相を含む)に相当する領域とみなすとともに、IQ値が6000以上の領域は、マルテンサイト相よりは欠陥の少ない、結晶の完全性が高いベイナイト相(焼戻しベイナイト相を含む)に相当する領域とみなした。そして、強度の高い組織であるマルテンサイト相に相当する、IQ値が5000以下の領域と、延性の高い組織であるベイナイト相に相当する、IQ値が6000以上の領域の各割合を制御することで、高強度でかつ高延性を実現することが可能となる。このような作用を有効に発揮させるため、IQ値が5000以下の領域は、面積率で25%以上、好ましくは28%以上、さらに好ましくは30%以上とし、IQ値が6000以上の領域は、面積率で30%以上、好ましくは32%以上、さらに好ましくは35%以上とする。
<前記残留オーステナイト中のMn濃度:鋼板全体のMn含有量の1.5倍以上>
残留オーステナイト中にMnを濃化することで、残留オーステナイトが安定化し、より高いひずみ領域で加工誘起変態できるようになり、高ひずみ領域での加工硬化度合が高まるため、延性が向上する。このような作用を有効に発揮させるためには、前記残留オーステナイト中のMn濃度:鋼板全体のMn含有量の1.5倍以上、好ましくは1.6倍以上、さらに好ましくは1.7倍以上とする。
〔各相の面積率および残留γ中のMn濃度の各測定方法〕
ここで、各相の面積率および残留オーステナイト中のMn濃度の各測定方法について説明する。
まず、鋼板をナイタール腐食し、光学顕微鏡(倍率400倍)で観察して残留オーステナイト以外の各相を同定し、画像解析により各相の面積率を測定した。
次いで、残留オーステナイトの面積率は、鋼板の1/4の厚さまで研削した後、化学研磨してからX線回折法により測定した(ISIJ Int.Vol.33,(1933),No.7,p.776)。
残留オーステナイト中のMn濃度については、薄膜の試料をFIB(FEI製 Nova200)を用いて作製し、これを球面収差補正機能付き透過型電子顕微鏡(日本電子社製 JEM−ARM200F)で像を観察しながら付属のEDS分析装置(日本電子製 JED−2300T)を用いてMn濃度を測定した。
〔EBSDによるIQ値の測定方法〕
EBSDによるIQ値の測定は、「日本電子社製 電界放出型走査電子顕微鏡 JSM−6500F」を用いて、50μm×50μmの領域を0.125μmの測定ステップで像を観察し、解析ソフトウェア、「EDAX−TSL社製 OIM」を用いて解析を行った。そして、IQ値の分布より、IQ値が5000以下の領域と6000以上の領域の各面積率を算出した。
次に、上記本発明鋼板を得るための好ましい製造条件を以下に説明する。
〔本発明鋼板の好ましい製造方法〕
まず、上記成分組成を有する鋼を溶製し、造塊または連続鋳造によりスラブ(鋼材)としてから熱間圧延を行い、巻取り温度を400℃未満として、30〜120min保持し、その後、常温まで冷却して熱延材とする。次いでこの熱延材を、酸洗等によりスケールを除去した後、冷間圧延を行うことなく、または、冷間圧延を行うとしても20%以下程度の低圧下率に留めた後、焼鈍温度:(Ae1+Ae3)/2±20℃で、保持時間:3000s以上の条件で焼鈍を施すことにより高強度高延性鋼板を得ることができる。
<巻取り温度:400℃未満、保持時間:30〜120min>
組織の一部または全部をベイナイトとするためである。この成分系の鋼では、巻取り温度を400℃以上にするとベイナイトが形成されにくくなるので、長時間保持してもベイナイト量が確保できず、さらに巻取り温度を500℃以上とするとフェライトが形成され始める。巻取り温度の下限は、特に限定されないが、巻取り温度を低くしすぎると巻き取りにくくなるので、300℃程度である。
また、ベイナイト変態を適正に進行させるためには保持時間を適正に制御する必要がある。保持時間が短すぎるとベイナイト変態が不十分となり、低IQ領域の面積率が低下するので、保持時間は30min以上、好ましくは40min以上、さらに好ましくは50min以上とする。一方、保持時間が長すぎるとベイナイト変態が進行しすぎて、高IQ領域の面積率が低下するので、保持時間は120min以下、好ましくは100min以下、さらに好ましくは80min以下とする。
<冷間圧延を行うことなく、または、冷間圧延を行うとしても20%以下程度の低圧下率に留める>
熱延時の巻取りの際に形成された、マルテンサイトやベイナイト等のラス状組織をできる限りそのまま確保するためである。
<焼鈍温度:(Ae1+Ae3)/2±20℃で、保持時間:50min以上>
2相域温度で所定時間加熱保持することで、Mnを拡散させてフェライト/オーステナイト間に分配させることによりオーステナイト中へのMnの濃化度を確保するとともに、熱延時の巻取りの際に導入されたベイナイト中に、焼鈍時の加熱の際に炭化物が形成されるが、その炭化物を十分に溶解するためである。保持時間が不足すると、ベイナイト中に炭化物が残存して破壊の起点になりやすく、強度・延性が劣化する原因となるので、保持時間は50min以上、好ましくは70min以上、さらに好ましくは90min以上とする。保持時間の上限は特に限定されないが、保持時間が長すぎると生産性が低下するので、保持時間は300min以下、さらには280min以下とするのが望ましい。
なお、Ae1(℃)およびAe3(℃)は、熱力学計算ソフト(Thermo−Calc Software、AB社製Termo−Calc)にて熱力学データベースとしてTCFE7を用い、C、Mn、Si、Alの含有量(質量%)から各温度におけるFCC、BCC、セメンタイト各相の相分率を求め、BCC−セメンタイトの2相状態からFCC−BCC−セメンタイトの3相状態に遷移する温度をAe1(℃)、FCC−BCCの2相状態からFCCの単相に遷移する温度をAe3(℃)と定義して求めた。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することももちろん可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
下記表1に示す成分の鋼材を熱間圧延した後、下記表2に示す温度および保持時間の条件で巻取りして板厚3.0mmの熱延板を作製した。そして、この熱延板を酸洗した後、同表2に示す温度および保持時間の条件で焼鈍を施して熱延鋼板を作製した。
上記各熱延鋼板について、上記[発明を実施するための形態]の項で説明した測定方法により、各相の面積率およびそのMn濃度、ならびに、EBSDによるIQ値が5000以下の領域および6000以上の領域の各面積率を測定した。
なお、本実施例において使用した実験サンプルは全て、フェライト相、残留オーステナイト相以外の残部はベイナイト相、マルテンサイト相、焼戻しベイナイト相、および焼戻しマルテンサイトからなるものであったので、下記表3にては、各相の面積率は、残留オーステナイト相およびフェライト相の面積率のみを記載している。
また、上記各熱延鋼板について、強度−延性バランスを評価するために、引張試験により、引張強度TSおよび伸び(全伸び)ELを測定した。なお、引張試験は、圧延方向と平行になるように、サンプルを採取し、JIS 14B号試験片(t=2mm、w=7mm、GL=20mm)を用いて、JIS Z 2241に従って実施した。
測定結果を下記表3に示す。同表において、熱延鋼板の特性が、引張強度TS:1180MPa以上でかつ伸びEL:32%以上のものを合格(○)とし、それ以外のものを不合格(×)とした。
上記表3に示すように、発明鋼(評価が○のもの)である鋼No.1は、本発明の成分規定の要件を満足する鋼種を用い、推奨の製造条件で製造した結果、本発明の組織規定の要件を充足する発明鋼であり、特性が合格基準を満たしており、強度−延性バランスに優れた高強度強延性鋼板が得られることを確認できた。
これに対して、比較鋼(評価が×のもの)である鋼No.2〜12は、本発明の成分規定および組織規定の要件の少なくともいずれかを充足せず、特性が合格基準を満たしていない。
すなわち、鋼No.2〜7は、本発明の成分規定の要件を満足する鋼種を用いているものの、推奨の製造条件を一部外れる条件で製造しているため、組織規定の要件を充足せず、特性が劣っている。
例えば、鋼No.2は、巻取り時に温度保持を行っていない場合であるが、残留オーステナイトが少なくなるとともに、低IQ領域の面積率が低くなり、TSが劣っている。
また、鋼No.3は、同じく巻取り時に温度保持を行っていない場合であるが、その後の焼鈍時の保持時間を十分に長くして残留オーステナイト量を確保しても低IQ領域の面積率が低くなり、ELが劣っている。
また、鋼No.4は、巻取り温度が高すぎるため、ベイナイト変態が進行せず、低IQ領域の面積率が低くなり、ELが劣っている。
また、鋼No.5は、焼鈍時の保持時間が短すぎるため、残留オーステナイトの量およびMn濃化度合いがともに不足し、TS、ELともに劣っている。
また、鋼No.6は、焼鈍温度が低すぎるため、焼鈍時に逆変態で形成される残留オーステナイト量が確保できなくなり、TS、ELともに劣っている。
また、鋼No.7は、逆に焼鈍温度が高すぎるため、焼鈍時に逆変態で形成される残留オーステナイト量が多くなりすぎ、その後の冷却時にマルテンサイト化して残留オーステナイト量を確保できなくなり、ELが劣っている。
一方、鋼No.8〜12は、推奨の製造条件で製造しているものの、本発明の成分規定の要件を一部外れる鋼種を用いているため、組織規定の要件を充足せず、特性が劣っている。
例えば、鋼No.8(鋼種b)は、Si量が少なすぎるため、残留オーステナイトが分解してその量が不足し、ELが劣っている。
また、鋼No.9(鋼種c)は、逆にSi量が多すぎるため、高IQ領域の面積率が不足して組織が脆化し、ELが劣っている。
また、鋼No.10(鋼種d)は、Mn量が少なすぎるため、高IQ領域の面積率が低下するとともに、残留オーステナイト量も不足し、TS、ELともに劣っている。
また、鋼No.11(鋼種e)は、C量が少なすぎるため、フェライトが多く形成されるとともに、IQ値が低下して高IQ領域の面積率が減少し、さらに残留オーステナイト量も不足し、TS、ELともに劣っている。
また、鋼No.12(鋼種f)は、逆にC量が多すぎるため、熱間圧延時におけるベイナイト変態が抑制され、IQ値が全体的に高くなって低IQ領域の面積率が減少し、ELが劣っている。

Claims (1)

  1. 成分組成が、質量%で、
    C:0.10〜0.30%、
    Si:1.0〜3.0%、
    Mn:4.0〜7.0%
    であり、残部が鉄および不可避的不純物からなり、
    鋼組織が、
    残留オーステナイトが面積率で40%以上、
    フェライトが面積率で5%以下
    であり、残部がベイナイト、マルテンサイト、焼戻しベイナイト、および焼戻しマルテンサイトからなるとともに、
    EBSDによるIQ値が5000以下の領域が面積率で25%以上、
    同IQ値が6000以上の領域が面積率で30%以上であり、
    さらに、前記残留オーステナイト中のMn濃度が鋼板全体のMn含有量の1.5倍以上である
    ことを特徴とする高強度高延性鋼板。
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