JP6144350B2 - レーザー彫刻用フレキソ印刷版原版の製造方法、フレキソ印刷版の製版方法、および、レーザー彫刻用樹脂組成物 - Google Patents
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Description
直彫りCTP方式では、フレキソ原版に直接レーザーを照射し、光熱変換によりレリーフ形成層に熱分解及び揮発を生じさせ、凹部を形成している。また、直彫りCTP方式は、原画フィルムを用いたレリーフ形成と異なり、自由にレリーフ形状を制御することができる。このため、抜き文字の如き画像を形成する場合、その領域を他の領域よりも深く彫刻する、または、微細網点画像では、印圧に対する抵抗を考慮し、ショルダーをつけた彫刻をすることなども可能である。
また、直彫りCTP方式に用いられるレーザーは、高出力の炭酸ガスレーザーが用いられることが一般的である。炭酸ガスレーザーの場合、全ての有機化合物が照射エネルギーを吸収して熱に変換できる。一方、安価で小型の半導体レーザーが開発されてきているが、これらは可視及び近赤外光であるため、レーザー光を吸収して熱に変換することが必要となる。
また、特許文献1には、熱硬化性樹脂組成物を導電性支持体の表面上に配置する方法として、ロールによりカレンダー加工して厚みを合わせる方法などが例示されており([0024])、熱硬化性樹脂組成物に含まれる樹脂(a)として、ポリジエン類などが記載されている([0038])。
すなわち、本発明者らは、以下の構成により上記課題が解決できることを見出した。
レリーフ形成層を熱により架橋し、架橋レリーフ形成層を有するレーザー彫刻用フレキソ印刷版原版を得る架橋工程と、をこの順で有し、
レーザー彫刻用樹脂組成物が、ジエン系ポリマー、熱重合開始剤、カーボンブラック、および、カーボンブラック以外の充填剤を含有する樹脂組成物である、レーザー彫刻用フレキソ印刷版原版の製造方法。
[2] 充填剤が、シリカ、炭酸カルシウム、マイカ、タルク、および、ステアリン酸金属塩からなる群から選択される少なくとも1種の充填剤である、[1]に記載のレーザー彫刻用フレキソ印刷版原版の製造方法。
[3] 充填剤が、シリカおよび炭酸カルシウムからなる群から選択される少なくとも1種の充填剤である、[1]または[2]に記載のレーザー彫刻用フレキソ印刷版原版の製造方法。
[4] 充填剤として、少なくともシリカを含有し、
シリカの窒素吸着比表面積が、50m2/g〜300m2/gである、[2]または[3]に記載のレーザー彫刻用フレキソ印刷版原版の製造方法。
[5] カーボンブラックの平均粒子径が、13nm〜50nmである、[1]〜[4]のいずれかに記載のレーザー彫刻用フレキソ印刷版原版の製造方法。
[6] ジエン系ポリマーが、ポリイソプレン、ポリブタジエンおよびエチレン−プロピレン−ジエン共重合体からなる群から選択される少なくとも1種のポリマーである、[1]〜[5]のいずれかに記載のレーザー彫刻用フレキソ印刷版原版の製造方法。
[7] ジエン系ポリマーが、ポリイソプレンおよびポリブタジエンからなる群から選択される少なくとも1種のポリマーである、[1]〜[6]のいずれかに記載のレーザー彫刻用フレキソ印刷版原版の製造方法。
[8] 熱重合開始剤の含有量が、ジエン系ポリマー100質量部に対して0.1〜3質量部である、[1]〜[7]のいずれかに記載のレーザー彫刻用フレキソ印刷版原版の製造方法。
[9] [1]〜[8]のいずれかに記載の製造方法で得られたレーザー彫刻用フレキソ印刷版原版に対してレーザー彫刻し、レリーフ層を形成する彫刻工程と、レリーフ層の表面をアルカリ水溶液でリンスし、フレキソ印刷版を得るリンス工程とを有する、フレキソ印刷版の製版方法。
[10] アルカリ水溶液のpHが、10.0以上である、[9]に記載のフレキソ印刷版の製版方法。
[11] レーザー彫刻用フレキソ印刷版原版のレリーフ形成層を形成するためのレーザー彫刻用樹脂組成物であって、
ジエン系ポリマー、熱重合開始剤、カーボンブラック、および、カーボンブラック以外の充填剤を含有するレーザー彫刻用樹脂組成物。
[12] 熱重合開始剤が、有機過酸化物である、[11]に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物。
[13] 充填剤が、シリカ、炭酸カルシウム、マイカ、タルク、および、ステアリン酸金属塩からなる群から選択される少なくとも1種の充填剤である、[11]または[12]に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物。
[14] 充填剤が、シリカおよび炭酸カルシウムからなる群から選択される少なくとも1種の充填剤である、[11]〜[13]のいずれかに記載のレーザー彫刻用樹脂組成物。
[15] 充填剤として、少なくともシリカを含有し、
シリカの窒素吸着比表面積が、50m2/g〜300m2/gである、[13]または[14]に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物。
[16] カーボンブラックの平均粒子径が、13nm〜50nmである、[11]〜[15]のいずれかに記載のレーザー彫刻用樹脂組成物。
[17] ジエン系ポリマーが、ポリイソプレン、ポリブタジエンおよびエチレン−プロピレン−ジエン共重合体からなる群から選択される少なくとも1種のポリマーである、[11]〜[16]のいずれかに記載のレーザー彫刻用樹脂組成物。
[18] ジエン系ポリマーが、ポリイソプレンおよびポリブタジエンからなる群から選択される少なくとも1種のポリマーである、[11]〜[17]のいずれかに記載のレーザー彫刻用樹脂組成物。
[19] 熱重合開始剤の含有量が、ジエン系ポリマー100質量部に対して0.1〜3質量部である、[11]〜[18]のいずれかに記載のレーザー彫刻用樹脂組成物。
[20] カーボンブラックの含有量が、ジエン系ポリマー100質量部に対して3〜30質量部である、[11]〜[19]のいずれかに記載のレーザー彫刻用樹脂組成物。
なお、本発明において、数値範囲を表す「下限〜上限」の記載は、「下限以上、上限以下」を表し、「上限〜下限」の記載は、「上限以下、下限以上」を表す。すなわち、上限及び下限を含む数値範囲を表す。
また、「質量部」および「質量%」は、それぞれ、「重量部」および「重量%」と同義である。
以下の説明における好ましい態様の組合せは、より好ましい態様である。
また、本発明のフレキソ印刷版の製版方法は、本発明のレーザー彫刻用フレキソ印刷版原版の製造方法によって得られたレーザー彫刻用フレキソ印刷版原版に対してレーザー彫刻し、レリーフ層を形成する彫刻工程と、レリーフ層の表面をアルカリ水溶液でリンスし、フレキソ印刷版を得るリンス工程とを有する、製版方法である。
更に、本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物(以下、「本発明の樹脂組成物」ともいう。)は、ジエン系ポリマー、熱重合開始剤、カーボンブラック、および、カーボンブラック以外の充填剤を含有する樹脂組成物である。
その詳細な機構は不明であるが、以下のように推察される。
すなわち、ジエン系ポリマー、熱重合開始剤およびカーボンブラックとともに、充填剤を配合した樹脂組成物を用いることにより、少量の熱重合開始剤で硬化させることができ、かつ、カーボンブラックの分散性が向上し、その結果、カレンダー加工中の早期硬化(架橋)を抑制でき、カレンダー加工における加工性が良好になったためと推察される。
以下、本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物について詳述した後に、本発明のフレキソ印刷版の製版方法について詳述する。
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物は、ジエン系ポリマー、熱重合開始剤、カーボンブラック、および、カーボンブラック以外の充填剤を含有する樹脂組成物である。
次に、本発明の樹脂組成物に含有する各成分および任意成分について説明する。
本発明の樹脂組成物に含有するジエン系ポリマーは特に限定されず、従来公知のジエン系ポリマーを制限なく使用することができる。
上記ジエン系ポリマーとしては、具体的には、例えば、ポリイソプレン、ポリブタジエン、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体(SBR)、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−イソプレン−ブタジエン共重合体等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらのうち、形成されるレリーフ形成層を用いたフレキソ印刷版原版の膜厚のばらつきが小さくなる理由から、ポリイソプレン、ポリブタジエンおよびエチレン−プロピレン−ジエン共重合体よりなる群から選択される少なくとも1種のジエン系ポリマーであるのが好ましい。
なお、本明細書において、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基またはメタクリロイル基のことをいう。
主鎖中に占める脂肪族炭化水素に由来するモノマー単位の割合が80mol%以上であると、彫刻カスのリンス性が良好であるので好ましい。
脂肪族炭化水素に由来するモノマー単位の含有量は、ジエン系ポリマーの主鎖を構成する全モノマー単位の90mol%以上であることがより好ましく、95mol%であることが更に好ましく、99mol%以上であることが特に好ましい。
なお、本発明において、「主鎖」とは樹脂を構成する高分子化合物の分子中で相対的に最も長い結合鎖を表し、「側鎖」とは主鎖から枝分かれしている炭素鎖を表し、側鎖にはヘテロ原子を含んでもよい。
すなわち、例えば、ポリイソプレンは、イソプレン及びイソプレンの水素添加物に由来するモノマー単位の割合が、合計して80mol%以上であることが好ましく、90mol%以上であることがより好ましく、95mol%以上であることが更に好ましく、99mol%以上であることが特に好ましい。
同様に、ポリブタジエンは、ブタジエン及びブタジエンの水素添加物に由来するモノマー単位の割合が、合計して80mol%以上であることが好ましく、90mol%以上であることがより好ましく、95mol%以上であることが更に好ましく、99mol%以上であることが特に好ましい。
また、ジエン系ポリマーとして、イソプレン/ブタジエン共重合体を使用する場合には、イソプレン、ブタジエン及びそれらの水素添加物に由来するモノマー単位を合計して80mol%以上含有することが好ましく、90mol%以上含有することがより好ましく、95mol%以上含有することが更に好ましく、99mol%以上含有することが特に好ましい。
また、ポリイソプレンとしては、天然ゴムを使用してもよく、また、市販されているポリイソプレンを使用することもでき、例えば、NIPOL IRシリーズ(日本ゼオン株式会社製)が例示される。
なお、1,4−ポリブタジエンの含有量は、50質量%以上であることが好ましく、65質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることが更に好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。
なお、cis体とtrans体の含有量は特に制限はなく、所望のムーニー粘度の範囲で適宜選択すればよいが、ゴム弾性を発現させる観点から、cis体が好ましく、cis−1,4−ポリブタジエンの含有量が50質量%以上であることが好ましく、65質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることが更に好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。
ポリブタジエンとしては、市販されている製品を使用してもよく、例えば、NIPOL BRシリーズ(日本ゼオン株式会社製)、UBEPOL BRシリーズ(宇部興産株式会社製)等が例示される。
また、EPDMは、エチレン含量が40〜70質量%であるポリマーであるのが好ましく、ジエン含量が1〜20質量%であるポリマーであるのが好ましい。
また、EPDMのジエン成分としては、例えば、ジシクロペンタジエン(DCPD)、5−エチリデン−2−ノルボルネン、1,4ヘキサジエン等が挙げられる。
ここで、ポリブタジエンとポリイソプレンとを併用する場合の質量比(ポリブタジエン/ポリイソプレン)は、30/70〜90/10であるのが好ましく、40/60〜80/20であるのがより好ましい。
ここで、重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー法(GPC)にて測定され、標準ポリスチレンで換算して求められる。具体的には、例えば、GPCは、HLC−8220GPC(東ソー株式会社製)を用い、カラムとして、TSKgeL Super HZM−H、TSKgeL SuperHZ4000、TSKgeL SuperHZ2000(東ソー株式会社製、4.6mmID×15cm)を3本用い、溶離液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用いる。また、条件としては、試料濃度を0.35質量%、流速を0.35mL/min、サンプル注入量を10μL、測定温度を40℃とし、IR検出器を用いて行う。また、検量線は、東ソー株式会社製「標準試料TSK standard,polystyrene」:「F−40」、「F−20」、「F−4」、「F−1」、「A−5000」、「A−2500」、「A−1000」、「n−プロピルベンゼン」の8サンプルから作製する。
同様に、ジエン系ポリマーのムーニー粘度は、溶剤溶解性や混合時の取り扱いの簡便さから、90以下であることが好ましく、70以下であることがより好ましく、60以下であることが更に好ましい。
ここで、ムーニー粘度は、JIS K6300−1に準拠して測定した値である。具体的には、温度制御が可能なダイ間に円筒状の空間を形成して試料室とすると共に、その試料室の中心部にローターを配置し、試料室内に被測定試料を充填してその温度を所定の温度に保った状態で、ローターを規定回転数で回転させ、溶融した試料の粘性抵抗によって生じるローターの反トルクをロードセルで検出することによって測定される。なお、本発明で用いるムーニー粘度の値は、L型ローターを用いて、100℃で1分間の予熱期間をおいてローターを回転させ、4分後のムーニー粘度(ML1+4)を示している。
本発明の樹脂組成物に含有する熱重合開始剤は特に限定されず、従来公知の熱重合開始剤(例えば、ラジカル重合開始剤等)を制限なく使用することができる。
これらのうち、半減期温度が高く、その結果、樹脂組成物の混練時のスコーチ(早期硬化)を抑制することができり理由や、彫刻感度と、フレキソ印刷版原版のレリーフ形成層に適用した際にはレリーフエッジ形状を良好とするといった理由などから、架橋剤として機能する(c)有機過酸化物および(d)イオウ系化合物が特に好ましい。
一方、好適例である(c)有機過酸化物および(d)イオウ系化合物としては、以下に示す化合物が好ましい。
上記有機過酸化物としては、具体的には、例えば、ジクミルペルオキシド(10時間半減期温度:116℃)、α,α’−ジ(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン(10時間半減期温度:119℃)、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン(10時間半減期温度:118℃)等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
原体としては、例えば、パークミルD(日油株式会社製)、PerkadoxBC−FF(化薬アクゾ株式会社製)、ルペロックスDC(アルケマ吉富株式会社製)、パーブチルP(日油株式会社製)、パーカドックス14(化薬アクゾ株式会社製)、ルペロックスF(アルケマ吉富株式会社製)、ルペロックスF90P(アルケマ吉富株式会社製)、パーヘキサ25B(日油株式会社製)、カヤヘキサAD(化薬アクゾ株式会社製)、ルペロックス101(アルケマ吉富株式会社製)等を用いることができるが、これらに限定されるものではない。
また、希釈品としては、例えば、パークミルD−40(日油株式会社製:不活性充填剤希釈品)、パークミルD−40MB(日油株式会社製:シリカ/ポリマー他希釈品)、カヤクミルD−40C(化薬アクゾ株式会社製:炭酸カルシウム希釈品)、カヤクミルD−40MB−S(化薬アクゾ株式会社製:ゴムマスターバッチ)、カヤクミルD−40MB(化薬アクゾ株式会社製:ゴムマスターバッチ)、パーブチルP−40(日油株式会社製:不活性充填剤希釈品)、パーブチルP−40MB(日油株式会社製:シリカ/ポリマー他希釈品)、パーカドックス14/40(化薬アクゾ株式会社製:炭酸カルシウム希釈品)、パーカドックス14−40C(化薬アクゾ株式会社製:炭酸カルシウム希釈品)、ルペロックスF40(アルケマ吉富株式会社製)、パーヘキサ25B−40(日油株式会社製:シリカ他希釈品)、カヤヘキサAD−40C(化薬アクゾ株式会社製:ケイ酸カルシウム希釈品)、トリゴノックス101−40MB(化薬アクゾ株式会社製:ゴムマスターバッチ)、ルペロックス101XL(アルケマ吉富株式会社製)等を用いることができるが、これらに限定されるものではない。
イオウ系化合物としては、例えば、イオウ(元素状硫黄)、塩化イオウ、二塩化イオウ、メルカプト化合物、スルフィド化合物、ジスルフィド化合物、ポリスルフィド化合物、チウラム化合物、チオカルバミン酸化合物、多官能メルカプト化合物等が挙げられ、中でも、イオウ、塩化イオウ、二塩化イオウ、ジスルフィド化合物、チウラム化合物、チオカルバミン酸化合物、多官能メルカプト化合物が好適に挙げられる。
これらのうち、イオウ、アルキルフェノールジスルフィド、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)が好ましく、アルキルフェニールジスルフィド、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)がより好ましい。
本発明の樹脂組成物に含有するカーボンブラックは特に限定されず、樹脂組成物中における分散性などが安定である限り、ASTMによる分類のほか、用途(例えば、カラー用、ゴム用、乾電池用など)の如何に拘らずいずれも使用可能である。
ここで、本発明においては、カーボンブラックは、レーザーの光を吸収し発熱することで、レーザー彫刻時の硬化物の熱分解を促進する光熱変換剤として機能していると考えられる。
なお、これらのカーボンブラックは、分散を容易にするため、必要に応じて分散剤を用い、予めニトロセルロースやバインダーなどに分散させたカラーチップやカラーペーストとして使用することができるが、コストの観点から粉体で使用することが好ましい。
ここで、カーボンブラックおよび後述する充填剤における平均粒子径は、数平均粒子径であり、透過型電子顕微鏡により測定される。
ここで、カーボンブラックおよび後述するシリカにおけるN2SAは、JIS K6217−2:2001によって求められる。
具体的には、カーボンブラック年鑑No.48に掲載された以下に示すカーボンブラックを使用することができるが、これらに限定されるものではない。なお、以下に示す各カーボンブラックの括弧内の数値は、左から順に、平均粒子径(nm)、窒素吸着比表面積(m2/g)を表わす。
新日化カーボン株式会社製のカーボンブラックとしては、例えば、♯300IH(19nm、120m2/g)、♯300(24nm、117m2/g)、♯200IS(26nm、95m2/g)、♯200(29nm、75m2/g)、♯200L(29nm、81m2/g)、♯200IN(31nm、71m2/g)、♯10(40nm、49m2/g)、♯10K(39nm、48m2/g)、♯10S(42nm、53m2/g)、♯100(44nm、41m2/g)等が挙げられる。
東海カーボン株式会社製のカーボンブラックとしては、例えば、シースト9H(18nm、142m2/g)、シースト9(19nm、142m2/g)、シースト7HM:N234(19nm、126m2/g)、シースト6(22nm、119m2/g)、シースト600(23nm、106m2/g)、シースト5H(22nm、99m2/g)、シーストKH:N339(24nm、93m2/g)、シースト3H(27nm、82m2/g)、シーストNH:N351(29nm、74m2/g)、シースト3(28nm、79m2/g)、シーストN(29nm、74m2/g)、シースト300(28nm、84m2/g)、シースト116HM(38nm、56m2/g)、シースト116(38nm、49m2/g)、シーストFM(50nm、42m2/g)、シーストSO(43nm、42m2/g)等が挙げられる。
三菱化学株式会社製のカーボンブラックとしては、例えば、ダイアブラックA(19nm、142m2/g)、ダイアブラックN234(22nm、123m2/g)、ダイアブラックI(23nm、114m2/g)、ダイアブラックLI(23nm、107m2/g)、ダイアブラックII(24nm、98m2/g)、ダイアブラックN339(26nm、96m2/g)、ダイアブラックSH(31nm、78m2/g)、ダイアブラックH(31nm、79m2/g)、ダイアブラックLH(31nm、84m2/g)、ダイアブラックHA(32nm、74m2/g)、ダイアブラックN550M(43nm、47m2/g)、ダイアブラックE(48nm、41m2/g)等が挙げられる。
本発明の樹脂組成物は、上述したカーボンブラック以外の充填剤を含有する。
本発明においては、上述した通り、充填剤を含有することにより、カレンダー加工中の早期硬化(架橋)を抑制でき、カレンダー加工における加工性が良好となる。具体的には、充填剤を添加することにより、未硬化膜のtanδ(=G’’/G’:G’は貯蔵弾性率、G’’は損失弾性率)を上げることができ、加工性が良好となる。
具体的には、以下に示す市販の充填剤を使用することができるが、これらに限定されるものではない。なお、以下に示す各充填剤の括弧内の数値は、窒素吸着比表面積(m2/g)または平均粒子径(nm)を表わす。
日本シリカ工業株式会社製の充填剤としては、例えば、含水微粉ケイ酸:ニップシールAQ(202m2/g)等が挙げられる。
株式会社トクヤマ社製の充填剤としては、例えば、含水微粉ケイ酸:トクシールGU(120m2/g)等が挙げられる。
Rhodia Silica korea社製の充填剤としては、例えば、含水微粉ケイ酸:Zeosil 165GR(144m2/g)等が挙げられる。
United Silica Industrial社製の充填剤としては、例えば、含水微粉ケイ酸:Ultrasil 7000GR(159m2/g)等が挙げられる。
デグサジャパン株式会社製の充填剤としては、例えば、沈降シリカ:Ultrasil VN3(175m2/g)等が挙げられる。
近江化学工業株式会社製の充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム:サクセス200S(平均粒子径:0.04μm)、炭酸カルシウム:サクセス200R(平均粒子径:0.08μm)等が挙げられる。
竹原化学工業株式会社製の充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム:タンカル200(平均粒子径:2.7μm)等が挙げられる。
Imerys社製の充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム:Polcarb 90(平均粒子径:0.85μm)等が挙げられる。
株式会社ヤマグチマイカ製の充填剤としては、例えば、マイカ:A−11(平均粒子径:3μm)等が挙げられる。
日本タルク株式会社製の充填剤としては、例えば、タルク:D−1000(平均粒子径:1μm)等が挙げられる。
日本ミストロン株式会社製の充填剤としては、例えば、タルク:ミストロンベーパー(平均粒子径:5.5μm)等が挙げられる。
川村化成工業株式会社製の充填剤としては、例えば、ステアリン酸亜鉛等が挙げられる。
なお、充填剤の上記含有量は、2種以上の充填剤を併用する場合は、各充填剤の含有量のことをいう。
ステアリン酸金属塩を用いる場合の含有量は、ロール剥離性が更に良好となり、また、カレンダーロールの汚染を抑制する観点から、ジエン系ポリマー100質量部に対して0.01質量部以上10質量部未満であることが好ましく、0.05質量部以上5質量部未満であることがより好ましく、0.1質量部以上2質量部未満が特に好ましい。
ここで、シリカと炭酸カルシウムとを併用する場合の質量比(シリカ/炭酸カルシウム)は、25/75〜80/20であるのが好ましく、30/70〜75/25であるのがより好ましく、35/65〜70/30であるのが更に好ましい。
本発明の樹脂組成物は、架橋構造の形成を促進する観点から、更に、重合性化合物を含有してもよい。
重合性化合物としては、例えば、エチレン性不飽和結合を有する化合物(以下、「エチレン性不飽和化合物」という。)であるのが好ましい。
上記エチレン性不飽和化合物としては、単官能エチレン性不飽和化合物であっても、多官能エチレン性不飽和化合物であってもよいが、多官能エチレン性不飽和化合物であることが好ましい。具体的には、多官能エチレン性不飽和化合物としては、末端エチレン性不飽和基を2〜20個有する化合物が好ましい。このような化合物群は当産業分野において広く知られるものであり、本発明においてはこれらを特に制限なく用いることができる。
多官能エチレン性不飽和化合物におけるエチレン不飽和基が由来する化合物の例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)や、そのエステル類、アミド類が挙げられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル類、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド類が用いられる。
また、ヒドロキシ基や、アミノ基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル、アミド類と多官能イソシアネート類、エポキシ類との付加反応物、多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。
また、イソシアナト基やエポキシ基等の親電子性置換基を有する、不飽和カルボン酸エステル、アミド類と単官能又は多官能のアルコール類、アミン類との付加反応物、ハロゲン基や、トシルオキシ基、等の脱離性置換基を有する、不飽和カルボン酸エステル、アミド類と単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類との置換反応物も好適である。
また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸の代わりに、ビニル化合物、アリル化合物、不飽和ホスホン酸、スチレン等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。
これらの中でも、アリル化合物としては、イソシアヌル酸トリアリル、及び、シアヌル酸トリアリルが特に好ましい。
上記エステルモノマーは混合物としても使用することができる。
(ただし、R及びR’は、それぞれ、H又はCH3を示す。)
上記エチレン性不飽和化合物の含有量は、樹脂組成物の全質量に対し、0.1〜30質量%であることが好ましく、1〜20質量%であることがより好ましい。
本発明の樹脂組成物は、上述した重合性化合物(特にエチレン性不飽和化合物)を含有する場合は、重合開始剤を併用するのが好ましい。
上記重合開始剤は、従来公知の重合開始剤を制限なく使用することができる。
また、上記重合開始剤は、ラジカル重合開始剤であっても、カチオン重合開始剤であってもよいが、ラジカル重合開始剤であることが好ましい。
また、上記重合開始剤は、熱重合開始剤であっても、光重合開始剤であってもよいが、熱重合開始剤であることが好ましい。
なお、上述した重合性化合物と併用する任意の重合開始剤として、熱重合開始剤を用いる場合には、上述した必須成分としての熱重合開始剤と同様のものを用いることができるため、任意の重合開始剤は添加しなくてもよい。
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物には、公知の各種添加剤を、本発明の効果を阻害しない範囲で適宜配合することができる。例えば、架橋助剤、シランカップリング剤、他の充填剤、ワックス、プロセス油、金属酸化物、オゾン分解防止剤、老化防止剤、重合禁止剤、着色剤等が挙げられ、これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明のレーザー彫刻用フレキソ印刷版原版の製造方法(以下、「本発明の印刷版原版の製造方法」とも略す。)は、上述した本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物を用いて、カレンダーロールによるシート成形を経てレリーフ形成層を形成する層形成工程と、レリーフ形成層を熱により架橋し、架橋レリーフ形成層を有するレーザー彫刻用フレキソ印刷版原版を得る架橋工程と、をこの順で有する製造方法である。
本発明のフレキソ印刷版の製版方法は、本発明の原版の製造方法によって得られたレーザー彫刻用フレキソ印刷版原版に対してレーザー彫刻し、レリーフ層を形成する彫刻工程と、レリーフ層の表面をアルカリ水溶液でリンスし、フレキソ印刷版を得るリンス工程とを有する、製版方法である。
また、上記架橋は、熱により行われる。また、上記架橋は樹脂組成物が硬化される反応であれば特に限定されず、ジエン系ポリマー同士の反応による架橋構造を含む概念であるが、ジエン系ポリマーが他の成分と反応して架橋構造を形成していてもよい。架橋レリーフ形成層を有する印刷版原版をレーザー彫刻し、リンスすることにより「フレキソ印刷版」が作製される。
同様に、レーザー彫刻用フレキソ印刷版原版は、必要により更に、支持体と(架橋)レリーフ形成層との間に接着層を、また、(架橋)レリーフ形成層上にスリップコート層、保護フィルムを有していてもよい。
以下、層形成工程、架橋工程、彫刻工程、および、リンス工程について、説明する。
本発明の印刷版原版の製造方法の製版方法は、本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物からなるレリーフ形成層を形成する層形成工程を含む。
レリーフ形成層の形成方法としては、例えば、混練により調製したレーザー彫刻用樹脂組成物(混練物)をシート状に成形する方法等が挙げられる。また、シート成形は、混練されたレーザー彫刻用樹脂組成物を支持体上に設けた状態で実施されてもよいし、支持体がない状態で実施されてもよい。
以下、混練によりレーザー彫刻用樹脂組成物を調製する混練工程について説明する。
ジエン系ポリマーと熱重合開始剤とカーボンブラックと充填剤を混練する方法は特に限定されないが、例えば、これらを同時に混練する方法(以下、「方法A」とも略す。)、ジエン系ポリマーとカーボンブラックと充填剤とを先に予備混練しておき、その後、熱重合開始剤を添加して混練する方法(以下、「方法B」とも略す。)等が挙げられる。
これらのうち、カーボンブラックの分散性が向上し、熱重合開始剤の熱分解性が抑制される観点から、方法Bであるのが好ましい。
一方、熱重合開始剤を添加した後の混練温度は、スコーチを抑制する観点から、25℃〜120℃が好ましく、30℃〜100℃がより好ましく、40℃〜80℃が特に好ましい。同様の観点から、混練時間は1分〜60分が好ましく、3分〜40分がより好ましく、5分〜20分が特に好ましい。
また、方法Aおよび方法Bなどの混練は、空気下で行ってもよく、ポリマーの酸化劣化を抑制するために窒素などの不活性ガス下で行ってもよい。
以下、混練により調製したレーザー彫刻用樹脂組成物(混練物)をシート状に成形するシート成形工程について説明する。
混練により調製したレーザー彫刻用樹脂組成物(混練物)は、シート成形工程でカレンダー加工により圧延成形されシート状にされる。
まず、図1(A)に示すように、一対のロール2a、2bからなるウォームアップロール1を所定の温度でレーザー彫刻用樹脂組成物を予備混錬する。その後、図1(B)に示すように、ロール2bに巻きついた樹脂組成物を途中でカットしてシート状に引出し、ロール状に巻きとる。
図2に示すカレンダーロール3は、4本のロールが逆L字に配置されたカレンダーロールである。具体的には、カレンダーロール3は、水平方向に隣接して配置され対をなす、第1ロール4aおよび第2ロール4b、第2ロール4bの鉛直下方に配置され、第2ロール4bと対をなす、第3ロール4c、ならびに、第3ロール4cの鉛直下方に配置され、第3ロール4cと対をなす、第4ロール4dとを有する。カレンダーロール3は、樹脂組成物を、第1ロール4aと第2ロール4bとの間、第2ロール4bと第3ロール4cとの間、第3ロール4cと第4ロール4dとの間を順次、通過させることにより、圧延加工してシート状に成形する。
前述のとおり、ジエン系ポリマー、熱重合開始剤、カーボンブラックおよび充填剤を含有するレーザー彫刻用樹脂組成物を用いてカレンダー加工を行うので、カレンダー加工中に硬化が進行してしまうことを抑制することができるので、本発明の印刷版原版の製造方法は、カレンダー加工を好適に行うことができる。これにより、膜厚精度を向上することができ、耐刷性を向上でき、また、製造効率を高くすることができ、材料コスト及び設備コストを抑制することができる。
膜厚精度としては、彫刻感度の均一性や印刷画質の均一性の点から、レンジで15%以下にすることが好ましい。
その後、カレンダーロールでシート化するが、カレンダーロールは前述したように通常、ロール間隔の広いロール対とロール間隔の狭いロール対から成るのが好ましい。初期のロール温度は、ウォームアップロール同様に40℃〜60℃が好ましい。温度がこの範囲であると、混練物がロールになじみやすくなり、次工程への搬送が容易となる。後期のロール温度は、70℃〜120℃が好ましい。温度がこの範囲であると、膜厚精度が良好となり、また、次工程への搬送が容易となり、さらに、熱重合開始材の分解を抑制し、スコーチの発生を抑制することができる。
カレンダーロールで圧延成形された直後の高温度のシートは内部歪を有していることがあるため、収縮などによる寸法変化を抑制する観点から、圧延成形された高温度のシートは、例えば複数のアニールロール、冷却ロールを通されて冷却された後に、架橋工程へ搬送されるのが好ましい。その際、剥離シート(フィルム)を介してローラ状に巻き取られて一旦保管されてもよいし、そのまま架橋工程へ搬送されてもよい。
本発明の印刷版原版の製造方法は、上記レリーフ形成層を熱により架橋し、架橋レリーフ形成層を有するレーザー彫刻用フレキソ印刷版原版を得る架橋工程を含む。
レリーフ形成層が熱重合開始剤を含有するので、レリーフ形成層を加熱することで、レリーフ形成層を架橋することができる。
レリーフ形成層を架橋することで、第1にレーザー彫刻後形成されるレリーフがシャープになり、第2にレーザー彫刻の際に発生する彫刻カスの粘着性が抑制されるという利点がある。また、素材の一般的な性質として、低分子なものほど固形ではなく液状になり、すなわち粘着性が強くなる傾向がある。レリーフ形成層を彫刻する際に発生する彫刻カスは、低分子の材料を多く用いるほど粘着性が強くなる傾向がある。低分子である重合性化合物は架橋することで高分子になるため、発生する彫刻カスは粘着性が少なくなる傾向がある。
上記架橋工程を、熱により行うことで、特別高価な装置を必要としない利点がある。
熱架橋設備としては、熱風加熱炉、加熱プレス機(枚葉型加熱プレス機、連続型プレスコンベア)、加熱ロール等を挙げられるが特に限定するものではない。架橋工程前にカッターで目的の大きさに裁断した後に架橋する場合は、枚葉型加熱プレス機が使用される。
加熱温度、加熱時間の一般的目安として、熱重合開始剤の半減期1分を得る温度で加熱するならば、加熱時間は5〜10分である。前述した好ましい有機過酸化物の1分間半減期温度は以下である。ジクミルペルオキシド(175℃)、α,α’−ジ(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン(175℃)、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン(179℃)。但し、1分間半減期温度以下の温度であっても、時間を延長することにより架橋を十分進行させることができる。
レーザー彫刻用フレキソ印刷版原版の支持体に使用する素材は特に限定されないが、寸法安定性の高いものが好ましく使用され、例えば、スチール、ステンレス、アルミニウムなどの金属、ポリエステル(例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PAN(ポリアクリロニトリル));ポリ塩化ビニルなどのプラスチック樹脂;スチレン−ブタジエンゴムなどの合成ゴム;ガラスファイバーで補強されたプラスチック樹脂(エポキシ樹脂やフェノール樹脂など);等が挙げられる。
支持体としては、PETフィルムやスチール基板が好ましく用いられる。支持体の形態は、架橋レリーフ形成層がシート状であるかスリーブ状であるかによって決定される。
架橋レリーフ形成層を支持体上に形成する場合、両者の間には、層間の接着力を強化する目的で接着層を設けてもよい。
接着層に用いることができる材料(接着剤)としては、例えば、I.Skeist編、「Handbook of Adhesives」、第2版(1977)に記載のものを用いることができる。
接着層を設ける場合は、接着層を塗布した支持体を用いることで対応できる。
架橋レリーフ形成層表面への傷や凹み防止の目的で、架橋レリーフ形成層表面に保護フィルムをラミネート(積層)してもよい。保護フィルムの厚さは、25〜500μmが好ましく、50〜200μmがより好ましい。保護フィルムは、例えば、PETのようなポリエステル系フィルム、PE(ポリエチレン)やPP(ポリプロピレン)のようなポリオレフィン系フィルムを用いることができる。またフィルムの表面はマット化されていてもよい。保護フィルムは、剥離可能であることが好ましい。
保護フィルムのラミネートは、加熱したカレンダーロールなどで保護フィルムと架橋レリーフ形成層を圧着することや、表面に少量の溶剤を含浸させた架橋レリーフ形成層に保護フィルムを密着させることによって行うことができる。保護フィルムを用いる場合には、先ず保護フィルム上に架橋レリーフ形成層を積層し、次いで支持体をラミネートする方法を採ってもよい。
スリップコート層を設ける場合は、スリップコート層を塗布した保護フィルムを用いることで対応できる。
保護フィルムは、架橋工程の後にラミネートしてもよく、架橋工程の前にラミネートしてもよく、特に限定されない。また、保護フィルムは彫刻工程の前に除去される。
本発明のフレキソ印刷版の製版方法は、上記架橋レリーフ形成層を有するフレキソ印刷版原版をレーザー彫刻する彫刻工程を含む。
彫刻工程は、上記架橋工程で架橋された架橋レリーフ形成層をレーザー彫刻してレリーフ層を形成する工程である。具体的には、架橋された架橋レリーフ形成層に対して、所望の画像に対応したレーザー光を照射して彫刻を行うことによりレリーフ層を形成することが好ましい。また、所望の画像のデジタルデータを元にコンピューターでレーザーヘッドを制御し、架橋レリーフ形成層に対して走査照射する工程が好ましく挙げられる。
この彫刻工程には、赤外線レーザーが好ましく用いられる。赤外線レーザーが照射されると、架橋レリーフ形成層中の分子が分子振動し、熱が発生する。赤外線レーザーとして炭酸ガスレーザーやYAGレーザーのような高出力のレーザーを用いると、レーザー照射部分に大量の熱が発生し、架橋レリーフ形成層中の分子は分子切断又はイオン化されて選択的な除去、すなわち、彫刻がなされる。レーザー彫刻の利点は、彫刻深さを任意に設定できるため、構造を3次元的に制御することができる点である。例えば、微細な網点を印刷する部分は、浅く又はショルダーをつけて彫刻することで、印圧でレリーフが転倒しないようにすることができ、細かい抜き文字を印刷する溝の部分は深く彫刻することで、溝にインキが埋まりにくくなり、抜き文字つぶれを抑制することが可能となる。
中でも、光熱変換剤の吸収波長に対応した赤外線レーザーで彫刻する場合には、より高感度で架橋レリーフ形成層の選択的な除去が可能となり、シャープな画像を有するレリーフ層が得られる。
半導体レーザーとしては、波長が700〜1,300nmのものが好ましく、800〜1,200nmのものがより好ましく、860〜1,200nmのものが更に好ましく、900〜1,100nmのものが特に好ましい。
また、本発明のフレキソ印刷版原版を用いたフレキソ印刷版の製版方法に好適に用いることができるファイバー付き半導体レーザーを備えた製版装置は、特開2009−172658号公報及び特開2009−214334号公報に詳細に記載され、これを本発明に係るフレキソ印刷版の製版に使用することができる。
本発明のフレキソ印刷版の製版方法は、彫刻工程に次いで、レリーフ層の表面をアルカリ水溶液でリンスするリンス工程を有する。すなわち、本発明のフレキソ印刷版の製版方法は、リンス工程におけるリンス液として、アルカリ水溶液を使用する。本発明のフレキソ印刷版の製版方法は、リンス工程を有することにより、レリーフ層の表面の付着・残留する彫刻カスを洗い流し、除去する。
リンスの手段として、アルカリ水溶液に浸漬する方法、アルカリ水溶液に浸漬しながら、リンス液を回転させたり、彫刻板をブラシで摺る方法、アルカリ水溶液をスプレー噴射する方法、感光性樹脂凸版の現像機として公知のバッチ式又は搬送式のブラシ式洗い出し機で、彫刻表面を主にアルカリ水溶液の存在下でブラシ擦りする方法などが挙げられ、彫刻カスのヌメリがとれない場合は、石鹸や界面活性剤を添加したリンス液を用いてもよい。
リンス液を上記のpH範囲とするために、適宜、酸及び/又は塩基を用いてpHを調整すればよく、使用する酸及び塩基は特に限定されない。
本発明に用いることができるリンス液は、主成分として水を含有することが好ましい。
また、リンス液は、水以外の溶剤として、アルコール類、アセトン、テトラヒドロフラン等などの水混和性溶剤を含有していてもよい。
本発明に用いることができる界面活性剤としては、彫刻カスの除去性、及び、フレキソ印刷版への影響を少なくする観点から、カルボキシベタイン化合物、スルホベタイン化合物、ホスホベタイン化合物、アミンオキシド化合物、又は、ホスフィンオキシド化合物等のベタイン化合物(両性界面活性剤)が好ましく挙げられる。
界面活性剤は、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
界面活性剤の使用量は特に限定する必要はないが、リンス液の全質量に対し、0.01〜20質量%であることが好ましく、0.05〜10質量%であることがより好ましい。
乾燥工程:彫刻されたレリーフ層を乾燥する工程。
後架橋工程:彫刻後のレリーフ層にエネルギーを付与し、レリーフ層を更に架橋する工程。
ここで、彫刻表面をリンスするリンス工程を行った場合、彫刻されたレリーフ形成層を乾燥してリンス液を揮発させる乾燥工程を追加することが好ましい。
更に、必要に応じてレリーフ層を更に架橋させる後架橋工程を追加してもよい。追加の架橋工程である後架橋工程を行うことにより、彫刻によって形成されたレリーフをより強固にすることができる。
フレキソ印刷版が有するレリーフ層の厚さは、耐磨耗性やインキ転移性のような種々の印刷適性を満たす観点からは、0.05mm以上10mm以下が好ましく、より好ましくは0.05mm以上7mm以下、特に好ましくは0.05mm以上3mm以下である。
なお、本明細書におけるショアA硬度は、25℃において、測定対象の表面に圧子(押針又はインデンタと呼ばれる。)を押し込み変形させ、その変形量(押込み深さ)を測定して、数値化するデュロメータ(スプリング式ゴム硬度計)により測定した値である。
なお、実施例におけるポリマーの数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、特に断りのない限りにおいて、GPC法で測定した値を表示している。
〔ジエン系ポリマー〕
(A−1)UBEPOL BR150:ポリブタジエン(ムーニー粘度(ML1+4、100℃):43、宇部興産株式会社製)
(A−2)UBEPOL BR150B:ポリブタジエン(ムーニー粘度(ML1+4、100℃):40、宇部興産株式会社製)
(A−3)UBEPOL BR130B:ポリブタジエン(ムーニー粘度(ML1+4、100℃):29、宇部興産株式会社製)
(A−4)UBEPOL BR150L:ポリブタジエン(ムーニー粘度(ML1+4、100℃):43、宇部興産株式会社製)
(A−5)UBEPOL BR360L:ポリブタジエン(ムーニー粘度(ML1+4、100℃):51、宇部興産株式会社製)
(A−6)Nipol IR2200:ポリイソプレン(ムーニー粘度(ML1+4、100℃):82、日本ゼオン株式会社製)
(A−7)Nipol IR2200L:ポリイソプレン(ムーニー粘度(ML1+4、100℃):70、日本ゼオン株式会社製)
(A−8)UBEPOL VCR412:ポリブタジエン(ムーニー粘度(ML1+4、100℃):45、宇部興産株式会社製)
(A−9)UBEPOL BR15HL:ポリブタジエン(ムーニー粘度(ML1+4、100℃):43、宇部興産株式会社製)
(A−10)JSR BR01:ポリブタジエン(ムーニー粘度(ML1+4、100℃):45、JSR株式会社製)
(A−11)Nipol 1502:SBR(ムーニー粘度(ML1+4、100℃):52、日本ゼオン株式会社製)
(A−12)MITUI EPT1045:EPDM(ムーニー粘度(ML1+4、100℃):38、エチレン含量:58質量%、ジエン含量:5質量%、ジエン種:ジシクロペンタジエン(DCPD)、三井化学株式会社製)
(A−13)エスレックBH−6(比較例):ポリビニルブチラール(Mw=9.2×104、積水化学工業株式会社製)
(B−1)パークミルD−40:有機過酸化物、ジクミルペルオキシド(40質量%)、日油株式会社製
(B−2)パークミルD−40MB:有機過酸化物、ジクミルペルオキシド(40質量%)、日油株式会社製
(B−3)カヤクミルD−40C:有機過酸化物、ジクミルペルオキシド(40質量%)、化薬アクゾ株式会社製
(B−4)カヤクミルD−40MB−S:有機過酸化物、ジクミルペルオキシド(40質量%)、化薬アクゾ株式会社製
(B−5)カヤクミルD−40MB:有機過酸化物、ジクミルペルオキシド(40質量%)、化薬アクゾ株式会社製
(B−6)パーブチルP−40:有機過酸化物、α,α’−ジ(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン(40質量%)、日油株式会社製
(B−7)パーブチルP−40MB:有機過酸化物、α,α’−ジ(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン(40質量%)、日油株式会社製
(B−8)パーカドックス14/40:有機過酸化物、α,α’−ジ(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン(40質量%)、化薬アクゾ株式会社製
(B−9)パーカドックス14−40C:有機過酸化物、α,α’−ジ(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン(40質量%)、化薬アクゾ株式会社製
(B−10)ルペロックスF40:有機過酸化物、α,α’−ジ(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン(40質量%)、アルケマ吉富株式会社製
(B−11)パーヘキサ25B−40:有機過酸化物、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン(40質量%)、日油株式会社製
(B−12)カヤヘキサAD−40C:有機過酸化物、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン(40質量%)、化薬アクゾ株式会社製
(B−13)トリゴノックス101−40MB:有機過酸化物、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン(40質量%)、化薬アクゾ株式会社製
(B−14)ルペロックス101XL:有機過酸化物、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン(45質量%)、アルケマ吉富株式会社製
(C−1)旭♯78:旭カーボン株式会社製(平均粒子径:22nm、窒素吸着比表面積:124m2/g)
(C−2)旭♯80:旭カーボン株式会社製(平均粒子径:22nm、窒素吸着比表面積:115m2/g)
(C−3)旭♯70:旭カーボン株式会社製(平均粒子径:28nm、窒素吸着比表面積:77m2/g)
(C−4)♯10K:新日化カーボン株式会社製(平均粒子径:39nm、窒素吸着比表面積:48m2/g)
(C−5)♯10S:新日化カーボン株式会社製(平均粒子径:42nm、窒素吸着比表面積:53m2/g)
(C−6)♯100:新日化カーボン株式会社製(平均粒子径:44nm、窒素吸着比表面積:41m2/g)
(C−7)シースト9:東海カーボン株式会社製(平均粒子径:19nm、窒素吸着比表面積:142m2/g)
(C−8)シースト9H:東海カーボン株式会社製(平均粒子径:18nm、窒素吸着比表面積:142m2/g)
(C−9)シースト3:東海カーボン株式会社製(平均粒子径:28nm、窒素吸着比表面積:79m2/g)
(C−10)ダイアブラックA:三菱化学株式会社製(平均粒子径:19nm、窒素吸着比表面積:142m2/g)
(C−11)♯45L:三菱化学株式会社製(平均粒子径:24nm、比表面積:125m2/g)
(C−12)♯25:三菱化学株式会社製(平均粒子径:47nm、比表面積:55m2/g)
(D−1)シリカ1:疎水性フュームドシリカ AEROSIL R−974(日本アエロジル株式会社製、窒素吸着比表面積:170±20m2/g)
(D−2)シリカ2:疎水性フュームドシリカ AEROSIL R−972(日本アエロジル株式会社製、窒素吸着比表面積:110±20m2/g)
(D−3)シリカ3:含水微粉ケイ酸 ニップシールAQ(日本シリカ工業株式会社製、窒素吸着比表面積:202m2/g)
(D−4)シリカ4:含水微粉ケイ酸 トクシールGU(株式会社トクヤマ社製、窒素吸着比表面積:120m2/g)
(D−5)シリカ5:沈降シリカ Ultrasil VN3(デグサジャパン株式会社製、窒素吸着比表面積:175m2/g)
(D−6)炭酸カルシウム:サクセス200S(近江化学工業株式会社製)
(D−7)マイカ:A−11(株式会社ヤマグチマイカ製)
(D−8)タルク:D−1000(日本タルク株式会社製)
(D−9)ステアリン酸亜鉛:川村化成工業株式会社製
<重合性化合物>
(E−1)トリアリルイソシアヌレート:TAIC(日本化成株式会社製)
(E−2)ヘキサンジオールジアクリレート:A−HD−N(新中村化学工業株式会社製)
(E−3)トリメチロールプロパントリメタクリレート:TMPT(新中村化学工業株式会社)
<老化防止剤>
(F−1)2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール:川口化学工業株式会社製
(F−2)N−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン:川口化学工業株式会社製
<レーザー彫刻用樹脂組成物の調製>
MS式小型加圧ニーダー(株式会社モリヤマ製)を用いて、ジエン系ポリマーとしてのポリマー(A−4)と、カーボンブラックとしてのカーボンブラック(C−7)と、充填剤としての充填剤(D−2)とを、80℃にて、前ブレード35rpm、後ブレード35rpmで10分間混練した後、60℃まで冷却し、熱重合開始剤としての熱重合開始剤(B−1)を添加して、60℃にて前ブレード20rpm、後ブレード20rpmで更に10分間混練し、レーザー彫刻用樹脂物を調製した。
上記で得たレーザー彫刻用樹脂組成物を、図2に示すようなカレンダーロール〔日本ロール製造株式会社製逆L型4本、ロールサイズ:φ200×700L、使用ロール:鍛鋼製ドリルドロール(表面硬質クロムメッキ)、温度調整方式:熱油循環方式、駆動モーター:7.5kwインバーターモーター〕でシート状に成形した。ウォームアップロールを50℃として上記レーザー彫刻用樹脂組成物を10分間予備混練し、ロールに巻き付いたものを途中でカットしてシート状に引き出し、一旦ロール状に巻き取った。その後、混練物をカレンダーロールの第1ロールと第2ロールの間にセットし、圧延成形した。カレンダーロールの各ロールの温度は、第1ロール温度を50℃、第2ロール温度を60℃、第3ロール温度を70℃、第4ロール温度を80℃とした。ロール間隔は、第1ロールと第2ロール間隔を1.0mm、第2ロールと第3ロール間隔を0.9mm、第3ロールと第4ロール間隔を0.8mmとした。搬送速度は1m/分とした。
第4ロールを通過後、シートを幅20cm、長さ20cmにカットし、プレス機(テスター産業株式会社製SA−303)を用いて、4MPaの圧力で、160℃で20分間加熱して、平均膜厚0.8mmの架橋レリーフ層を得た。
上記で得た架橋レリーフ層に対して、光硬化性組成物(株式会社スリーボンド社製:3030)を平均膜厚が80μmになるように塗設した後、250μm厚のPET支持体をニップローラにて貼り合わせ、20秒後にPET支持体側からUV露光機(アイグラフィックス株式会社製UV露光機ECS―151U、メタルハライドランプ、1,500mJ/cm2、14sec露光)にて光硬化性層を硬化させて、フレキソ印刷版原版を作製した。
上記で得たフレキソ印刷版原版に対し、以下の2種のレーザーにより彫刻した。
炭酸ガスレーザー彫刻機として、レーザー照射による彫刻を、高品位CO2レーザーマーカML−9100シリーズ(株式会社KEYENCE製)を用いた。炭酸ガスレーザー彫刻機で、出力:12W、ヘッド速度:200mm/秒、ピッチ設定:2,400DPIの条件で、1cm四方のベタ部分をラスター彫刻した。
半導体レーザー彫刻機として、最大出力8.0Wのファイバー付き半導体レーザー(FC−LD)SDL−6390(JDSU社製、波長915nm)を装備したレーザー記録装置を用いた。半導体レーザー彫刻機でレーザー出力:7.5W、ヘッド速度:409mm/秒、ピッチ設定:2,400DPIの条件で、1cm四方のベタ部分をラスター彫刻した。
使用した彫刻機は、下記第1表に示した。なお、「半導体」は、半導体レーザー彫刻機を使用したことを意味し、「CO2」は、炭酸ガスレーザー彫刻機を使用したことを意味する。
<レーザー彫刻用樹脂組成物の調製>
下記第1表に示す配合内容で、実施例1と同じ条件で混練し、レーザー彫刻用樹脂組成物を得た。なお、実施例42〜45においては、他の添加剤(重合性化合物および老化防止剤)を配合して調製した。
上記で得たレーザー彫刻用樹脂組成物を実施例1と同様に成形・架橋し、平均膜厚0.8mmの架橋レリーフ層を得た。
上記で得た架橋レリーフ層に対して、実施例1と同様に接着層を付与することで、フレキソ印刷版原版を作製した。
上記で得たフレキソ印刷版原版を、実施例1と同様にレーザー彫刻することで、フレキソ印刷版を得た。
<レーザー彫刻用樹脂組成物の調製>
撹拌羽及び冷却管をつけた3つ口フラスコ中に、ポリマー(A−4)、溶剤としてn−ヘプタンを入れ、撹拌しながら70℃で180分間加熱しポリマーを溶解させた。
その後、カーボンブラック(C−7)、熱重合開始剤(B−1)を添加し、10分間撹拌した。この操作により、流動性のある樹脂層用塗布液(レーザー彫刻用樹脂組成物)を得た。
PET基板上に所定厚のスペーサー枠を設置し、上記により得られた樹脂層用塗布液を静かに流涎し、カレンダーロールによるシート成形を行うことなく、80℃のオーブンで1時間、更に140℃で1時間加熱して溶剤を除去すると共に、樹脂組成物を熱架橋し、平均膜厚0.8mmの架橋レリーフ層を得た。
上記で得た架橋レリーフ層に対して、実施例1と同様に接着層を付与することで、フレキソ印刷版原版を作製した。
上記で得たフレキソ印刷版原版を、実施例1と同様にレーザー彫刻することで、フレキソ印刷版を得た。
<レーザー彫刻用樹脂組成物の調製>
実施例1と同様にして、下記第1表に示す配合内容でレーザー彫刻用樹脂組成物を調製した。
混練した樹脂組成物を、カレンダーロールによるシート成形を行うことなく、プレス機(テスター産業株式会社製)を用いて、4MPaの圧力で、160℃で20分間加熱して、平均膜厚0.8mmの架橋レリーフ層を得た。
上記で得た架橋レリーフ層に対して、実施例1と同様に接着層を付与することで、フレキソ印刷版原版を作製した。
上記で得たフレキソ印刷版原版を、実施例1と同様にレーザー彫刻することで、フレキソ印刷版を得た。
〔レリーフ形成層の加工性評価:カレンダーロール剥離性評価〕
カレンダーロールからの剥離性を、第4ロール出口で目視評価した。評価は5段階法を用い、5が剥離性最高で、1が剥離性最低、数値が5に近いほどロールからの剥離性が良くなることを示す。3以上を合格とした。
第4ロールから剥離したシートの表面外観を評価した。評価の表記を以下に示す。
3以上を合格とした。
5:極めて平滑で外観が非常に良好。
4:平滑で外観が良好。
3:少し表面の肌荒れが見られる。
2:表面の肌荒れがひどく、外観が悪い。
1:表面凹凸が極めて激しく、ひどく外観が悪い。
作製したフレキソ印刷版原版の表面をレーザー変位計(キーエンス社製LK―H008)にて走査し、表面粗さ指標の最大高さR0を求めた。フレキソ印刷版原版の平均厚さをd0としたときの(R0/d0)×100(%)を膜厚ばらつきと定義した。この値が小さい方が膜厚ばらつきが小さい。
以下の項目でレリーフ印刷版の性能評価を行った。
レーザー彫刻した版を下記第2表に記載のリンス液に浸漬し、彫刻部を歯ブラシ(ライオン株式会社製、クリニカハブラシ フラット)で10回こすった。その後、光学顕微鏡でレリーフ層の表面におけるカスの有無を確認した。評価基準は以下の通りである。
A:カスがない
B:彫刻最深部に僅かにカスが見られる
C:カスの大部分は除去されるが、僅かに残存している
D:カスは一部除去されるが、残存している
E:カスが全く除去されない
なお、使用したリンス液1〜6は以下の通りであり、下記第2表に示すリンス液のうち、評価に用いたリンス液は下記第3表に示す通りである。
リンス液の調製は、500mlの純水に、撹拌しながらNaOH48%水溶液(和光純薬工業株式会社製)を滴下し、所定のpHにした。その後、更にソフタゾリンLAO(ラウリン酸アミドプロピルジメチルアミンオキシド水溶液、アミドアミンオキシド型両性界面活性剤、含有量:30%、川研ファインケミカル株式会社製)を16.7g添加し、30分撹拌しリンス液を作製した。
500mlの純水に、撹拌しながら炭酸水素ナトリウム3.3g、炭酸水素ナトリウム6.6gを添加し、更にソフタゾリンLAO(川研ファインケミカル株式会社製)を24.0g、ソフタゾリンLPB−R(ラウリン酸アミドプロピルベタイン水溶液、アミドプロピルベタイン型両性界面活性剤、含有量:30%、川研ファインケミカル株式会社製)を96.4g添加し、30分撹拌しリンス液5を作製した。
500mlの純水に、撹拌しながら炭酸水素ナトリウム5.0gを添加し、更にソフタゾリンLAO(川研ファインケミカル株式会社製)を24.0g、ソフタゾリンLPB−R(川研ファインケミカル株式会社製)を96.4g添加し、30分撹拌しリンス液6を作製した。
リンス液1〜6のpHを以下に示す。
得られたフレキソ印刷版を印刷機(ITM−4型、株式会社伊予機械製作所製)にセットし、UVフレキソCF 墨(株式会社T&K TOKA製)をインキとして用い、印刷紙として、フルカラーフォームM 70(日本製紙株式会社製、厚さ100μm)を用いて印刷を継続し、印刷開始から1,000mにおける印刷物上のベタ部のインキの付着度合いを目視で比較した。
濃度ムラなく均一なものをAと評価し、僅かにムラがあるものをBと評価した。
得られたフレキソ印刷版を印刷機(ITM−4型、株式会社伊予機械製作所製)にセットし、UVフレキソCF 墨(株式会社T&K TOKA製)をインキとして用い、印刷紙として、フルカラーフォームM 70(日本製紙株式会社製、厚さ100μm)を用いて印刷を継続し、ハイライト1〜10%を印刷物で確認した。印刷されない網点が生じた、又は、網点が太って印刷物として許容しがたいところを刷了とし、刷了時までに印刷した回数を指標とした。数値が大きいほど耐刷性に優れると評価する。
得られたフレキソ印刷版原版を、50℃/80%環境下で3日間保管し、上記耐刷性評価を行った。
得られたフレキソ印刷版を、50℃/80%環境下で3日間保管し、上記耐刷性評価を行った。
また、充填剤を配合しない場合、カレンダーロールからの剥離性およびレリーフ形成層の外観に劣ることが分かった(比較例2)。
これに対し、ジエン系ポリマー、熱重合開始剤、カーボンブラックおよび充填剤を配合した実施例1〜45は、カレンダーロールからの剥離性およびレリーフ形成層の外観が良好であり、製造効率が高いことが分かった。また、製造したレリーフ形成層を用いたフレキソ印刷版原版の膜厚ばらつきが小さいことが分かった。
また、実施例1〜45は、製造したフレキソ印刷版のリンス性、インキ着肉性、耐刷性、耐久性(生版経時耐刷性、彫刻経時耐刷性)が良好であることが分かった。特に、リンス工程で用いるアルカリ水溶液のpHが10.0以上であるリンス液1〜4を用いると、リンス性がより良好となることが分かった。
また、実施例19と他の実施例とを対比すると、ジエン系ポリマーとして、ポリイソプレン、ポリブタジエンまたはEPDMを用いると、製造したレリーフ形成層を用いたフレキソ印刷版原版の膜厚のばらつきがより小さくなることが分かった。
更に、ジエン系ポリマーとしてポリブタジエンおよびポリイソプレンを併用した実施例31〜34および42〜45や、充填剤としてシリカと炭酸カルシウムとを併用した実施例35は、耐刷性が良好となることが分かり、特に、ジエン系ポリマーとしてポリブタジエンおよびポリイソプレンを併用し、かつ、充填剤としてシリカと炭酸カルシウムとを併用した実施例36〜41や、ジエン系ポリマーとしてポリブタジエンおよびポリイソプレンを併用し、更に、重合性化合物を配合した実施例42〜45は、耐刷性が極めて良好となることが分かった。
2a、2b ロール
3 カレンダーロール
4a 第1ロール
4b 第2ロール
4c 第3ロール
4d 第4ロール
10 樹脂組成物
11 予備混錬後の樹脂組成物
12 レリーフ形成層
Claims (20)
- レーザー彫刻用樹脂組成物を用い、カレンダーロールによるシート成形を経てレリーフ形成層を形成する層形成工程と、
前記レリーフ形成層を熱により架橋し、架橋レリーフ形成層を有するレーザー彫刻用フレキソ印刷版原版を得る架橋工程と、をこの順で有し、
前記レーザー彫刻用樹脂組成物が、ムーニー粘度が20〜90のジエン系ポリマー、熱重合開始剤、カーボンブラック、および、前記カーボンブラック以外の充填剤を含有する樹脂組成物である、レーザー彫刻用フレキソ印刷版原版の製造方法。 - 前記充填剤が、シリカ、炭酸カルシウム、マイカ、タルク、および、ステアリン酸金属塩からなる群から選択される少なくとも1種の充填剤である、請求項1に記載のレーザー彫刻用フレキソ印刷版原版の製造方法。
- 前記充填剤が、シリカおよび炭酸カルシウムからなる群から選択される少なくとも1種の充填剤である、請求項1または2に記載のレーザー彫刻用フレキソ印刷版原版の製造方法。
- 前記充填剤として、少なくともシリカを含有し、
前記シリカの窒素吸着比表面積が、50m2/g〜300m2/gである、請求項2または3に記載のレーザー彫刻用フレキソ印刷版原版の製造方法。 - 前記カーボンブラックの平均粒子径が、13nm〜50nmである、請求項1〜4のいずれか1項に記載のレーザー彫刻用フレキソ印刷版原版の製造方法。
- 前記ジエン系ポリマーが、ポリイソプレン、ポリブタジエンおよびエチレン−プロピレン−ジエン共重合体からなる群から選択される少なくとも1種のポリマーである、請求項1〜5のいずれか1項に記載のレーザー彫刻用フレキソ印刷版原版の製造方法。
- 前記ジエン系ポリマーが、ポリイソプレンおよびポリブタジエンからなる群から選択される少なくとも1種のポリマーである、請求項1〜6のいずれか1項に記載のレーザー彫刻用フレキソ印刷版原版の製造方法。
- 前記熱重合開始剤の含有量が、前記ジエン系ポリマー100質量部に対して0.1〜3質量部である、請求項1〜7のいずれか1項に記載のレーザー彫刻用フレキソ印刷版原版の製造方法。
- 請求項1〜8のいずれか1項に記載の製造方法で得られたレーザー彫刻用フレキソ印刷版原版に対してレーザー彫刻し、レリーフ層を形成する彫刻工程と、前記レリーフ層の表面をアルカリ水溶液でリンスし、フレキソ印刷版を得るリンス工程とを有する、フレキソ印刷版の製版方法。
- 前記アルカリ水溶液のpHが、10.0以上である、請求項9に記載のフレキソ印刷版の製版方法。
- レーザー彫刻用フレキソ印刷版原版のレリーフ形成層を形成するためのレーザー彫刻用樹脂組成物であって、
ムーニー粘度が20〜90のジエン系ポリマー、熱重合開始剤、カーボンブラック、および、前記カーボンブラック以外の充填剤を含有するレーザー彫刻用樹脂組成物。 - 前記熱重合開始剤が、有機過酸化物である、請求項11に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物。
- 前記充填剤が、シリカ、炭酸カルシウム、マイカ、タルク、および、ステアリン酸金属塩からなる群から選択される少なくとも1種の充填剤である、請求項11または12に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物。
- 前記充填剤が、シリカおよび炭酸カルシウムからなる群から選択される少なくとも1種の充填剤である、請求項11〜13のいずれか1項に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物。
- 前記充填剤として、少なくともシリカを含有し、
前記シリカの窒素吸着比表面積が、50m2/g〜300m2/gである、請求項13または14に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物。 - 前記カーボンブラックの平均粒子径が、13nm〜50nmである、請求項11〜15のいずれか1項に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物。
- 前記ジエン系ポリマーが、ポリイソプレン、ポリブタジエンおよびエチレン−プロピレン−ジエン共重合体からなる群から選択される少なくとも1種のポリマーである、請求項11〜16のいずれか1項に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物。
- 前記ジエン系ポリマーが、ポリイソプレンおよびポリブタジエンからなる群から選択される少なくとも1種のポリマーである、請求項11〜17のいずれか1項に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物。
- 前記熱重合開始剤の含有量が、前記ジエン系ポリマー100質量部に対して0.1〜3質量部である、請求項11〜18のいずれか1項に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物。
- 前記カーボンブラックの含有量が、前記ジエン系ポリマー100質量部に対して3〜30質量部である、請求項11〜19のいずれか1項に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物。
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