上述した特許文献1に記載された放射性物質用の金属密閉容器や、特許文献2に記載された放射性物質の受容装置のように、バスケットのセルは、放射性物質の形状に合わせた断面形状を有することが一般的である。特許文献1に示すように、断面矩形状のセルは、一様な厚さの板材により形成できるため、比較的製造が容易であり、比較的重量を軽く形成することができる。一方、特許文献2に示すように、円筒形のセルの場合、外形を角柱形状とすることで、エレメントを複数並行に固定し易いが、厚さが一様でないため、製造が難しく、厚さが厚い部分で重量が嵩む問題がある。
そこで、例えば、特許文献1に示される断面矩形状のセルに、特許文献2に示される円筒形輪郭の放射性物質を受容したとすると、放射性物質が、特許文献1に示すように燃料被覆管内に燃料を封入してなる細長い多数本の燃料棒からなり、この多数本の燃料棒を束ねた形状としたものである場合、事故事象の落下において燃料棒が上下方向で押し潰される外力により束ねられた形態が変化(例えば、燃料棒の間隔が変位)してしまうことがあり、放射性物質が臨界状態になることを防ぐ未臨界性が低下するリスクが高くなる。
本発明は上述した課題を解決するものであり、軽量で製造を容易とし、かつ放射性物質の破損を防ぐことのできる放射性物質収納用バスケットおよび放射性物質収納容器を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するための本発明の放射性物質収納用バスケットは、バスケット本体と、前記バスケット本体に互いに平行かつ所定間隔で区画形成される複数の放射性物質収納部と、前記放射性物質収納部の区画内に挿入され、前記放射性物質収納部の区画内形に対して異なる外形の放射性物質を収納するように前記放射性物質収納部の区画内形を前記放射性物質の外形に合わせるガイド部と、を備えることを特徴とする。
この放射性物質収納用バスケットによれば、ガイド部により、放射性物質収納部の区画内形を放射性物質の外形に合わせることで、事故事象の落下において、多数本の燃料棒を束ねた形状とした放射性物質が上下方向で押し潰される外力により束ねられた形態が変化してしまう事態を抑制するため、放射性物質が臨界状態になることを防ぐ未臨界性能を高めることができる。しかも、ガイド部は、放射性物質収納部の区画内に挿入され、放射性物質収納部の区画内形を放射性物質の外形に合わせるため、放射性物質収納部を一様の厚さで形成できるため、軽量化を図ることができ、かつ加工性がよく製造を容易とすることができる。また、ガイド部が放射性物質収納部の区画内に挿入され、放射性物質収納部の区画内形を放射性物質の外形に合わせるため、放射性物質収納部の区画内の空間部が少なく熱伝達性が損なわれないため、除熱性能を維持することができる。
また、本発明の放射性物質収納用バスケットでは、前記放射性物質収納部は、区画内形が矩形状に形成されることを特徴とする。
この放射性物質収納用バスケットによれば、放射性物質収納部の区画内形を矩形状に形成することで、加工性がよりよくなり、製造を容易とする効果を顕著に得ることができる。また、一般的な放射性物質は、外形が矩形状であり、この放射性物質の外形に合わせた矩形状の区画内形の放射性物質収納部も一般的に用いられている。従って、この矩形状の区画内形の一般的な放射性物質収納部を利用して、ガイド部を設けることで、放射性物質収納部の区画内形とは異なる外形の放射性物質を収納し、かつ事故事象の落下において、放射性物質が上下方向で押し潰される外力により束ねられた形態が変化してしまう事態を抑制して、放射性物質が臨界状態になることを防ぐ未臨界性能を高めることができる。
また、本発明の放射性物質収納用バスケットでは、前記放射性物質収納部の内面に沿って設けられる中性子吸収体を有することを特徴とする。
この放射性物質収納用バスケットによれば、放射性物質収納部の区画内で中性子吸収体の内側に挿入される放射性物質から放出される中性子を適正に吸収することができ、未臨界性能を向上することができる。
また、本発明の放射性物質収納用バスケットでは、前記ガイド部が前記中性子吸収体として形成されることを特徴とする。
この放射性物質収納用バスケットによれば、ガイド部が中性子吸収体として形成されていることで、放射性物質収納部の区画内に挿入される放射性物質から放出される中性子を適正に吸収することができ、未臨界性能を向上することができる。
前記ガイド部は、前記放射性物質収納部の上下方向に連続して配置されており、前記バスケット本体の上下方向の端部と前記ガイド部の端部との相互を連結する連結部を有することを特徴とする。
この放射性物質収納用バスケットによれば、連結部によりガイド部がバスケット本体に連結されることで、ガイド部をバスケット本体の放射性物質収納部内に位置決めすることができる。しかも、バスケット本体が複数の板材や筒材で組み立てられている場合、隣接する各放射性物質収納部に配置されたそれぞれのガイド部を連結部で連結するようにすれば、バスケット本体を構成する複数の板材同士や筒材同士がズレることなくバスケット本体が一体に構成されるため、放射性物質を収納する強度を確保することができる。
また、本発明の放射性物質収納用バスケットでは、前記バスケット本体は、複数の板材が積み重ねられ、かつ積み重ね方向と交差する方向で組み合わせられて前記放射性物質収納部を区画形成し、前記ガイド部は、前記板材の積み重ねられる方向に連続して前記放射性物質収納部に配置されており、前記板材の積み重ねられた両端と前記ガイド部の両端との相互を連結する連結部を有することを特徴とする。
この放射性物質収納用バスケットによれば、複数の板材が積み重ねられ、かつ積み重ね方向と交差する方向で組み合わせられて放射性物質収納部を区画形成することで、バスケット本体を容易に組み立てることができる。しかも、ガイド部を、板材の積み重ねられる方向に連続して放射性物質収納部に配置し、板材の積み重ねられた両端とガイド部の両端との相互を連結する連結部を有することで、積み重ねられた各板材を上下で挟むようにガイド部を介して連結でき、各板材同士がズレることなくバスケット本体が一体に構成されるため、放射性物質を収納する強度を確保することができる。
また、本発明の放射性物質収納用バスケットでは、前記バスケット本体が炭素鋼またはステンレス鋼からなることを特徴とする。
この放射性物質収納用バスケットによれば、放射性物質を収納する強度を十分に確保することができる。
また、本発明の放射性物質収納用バスケットでは、前記ガイド部がアルミニウム合金からなることを特徴とする。
この放射性物質収納用バスケットによれば、ガイド部を押し出し成形により容易に製造することができ、かつ軽量化を図ることができ、しかも熱伝達性能が高まるため除熱性能を向上することができる。
また、本発明の放射性物質収納用バスケットでは、前記ガイド部が耐液性の表面処理を施されていることを特徴とする。
この放射性物質収納用バスケットによれば、放射性物質を収容するプールには、中性子を吸収するためや、隣接する放射性物質同士の臨界を防ぐために水が注入されおり、放射性物質を放射性物質収納用バスケットに収納する際にプールの水中に漬けられることになるが、この際にプールの水に対するガイド部の耐久性を向上することができる。
また、本発明の放射性物質収納用バスケットでは、前記ガイド部が放熱性の表面処理を施されていることを特徴とする。
この放射性物質収納用バスケットによれば、ガイド部の熱伝達性能が高まるため除熱性能を向上することができる。
また、本発明の放射性物質収納用バスケットでは、前記放射性物質の外形に合わせた筒状部材を有することを特徴とする。
この放射性物質収納用バスケットによれば、筒状部材で放射性物質を囲むことから、多数本の燃料棒を束ねた形状とした放射性物質が上下方向で押し潰される外力により束ねられた形態が変化してしまう事態をより抑制し、未臨界性能をより高めることができる。
また、本発明の放射性物質収納用バスケットでは、前記筒状部材は、中性子吸収体であることを特徴とする。
この放射性物質収納用バスケットによれば、中性子吸収体である筒状部材の内側に挿入される放射性物質から放出される中性子を適正に吸収することができ、未臨界性能を向上することができる。
また、本発明の放射性物質収納用バスケットでは、前記筒状部材は、炭素鋼またはステンレス鋼からなることを特徴とする。
この放射性物質収納用バスケットによれば、放射性物質を収納する強度を十分に確保することができ、多数本の燃料棒を束ねた形状とした放射性物質が上下方向で押し潰される外力により束ねられた形態が変化してしまう事態をより抑制し、未臨界性能をより高める効果を顕著に得ることができる。
また、本発明の放射性物質収納用バスケットでは、前記筒状部材は、多重に構成され、少なくとも1つが中性子吸収体であり、少なくとも他の1つが炭素鋼またはステンレス鋼からなることを特徴とする。
この放射性物質収納用バスケットによれば、中性子吸収体である筒状部材の内側に挿入される放射性物質から放出される中性子を適正に吸収することができ、未臨界性能を向上することができる。しかも、この放射性物質収納用バスケットによれば、炭素鋼またはステンレス鋼からなる筒状部材により、放射性物質を収納する強度を十分に確保することができ、多数本の燃料棒を束ねた形状とした放射性物質が上下方向で押し潰される外力により束ねられた形態が変化してしまう事態をより抑制し、未臨界性能をより高める効果を顕著に得ることができる。
上記の目的を達成するための本発明の放射性物質収納容器は、一方に開口部が形成されて他方に閉塞部が形成されて筒形状をなす胴部と、前記開口部を閉塞するように前記胴部に対して着脱可能な蓋部と、前記胴部内に収容される上述したいずれか一つの放射性物質収納用バスケットと、を有することを特徴とする。
この放射性物質収納容器によれば、放射性物質収納用バスケットのガイド部により、放射性物質収納部の区画内形を放射性物質の外形に合わせることで、事故事象の落下において、多数本の燃料棒を束ねた形状とした放射性物質が上下方向で押し潰される外力により束ねられた形態が変化してしまう事態を抑制するため、放射性物質が臨界状態になることを防ぐ未臨界性能を高めることができる。しかも、ガイド部は、放射性物質収納部の区画内に挿入され、放射性物質収納部の区画内形を放射性物質の外形に合わせるため、放射性物質収納部を一様の厚さで形成できるため、軽量化を図ることができ、かつ加工性がよく製造を容易とすることができる。放射性物質収納用バスケットが軽量であれば、放射性物質収納容器自体への組み付け作業が容易であり、かつ放射性物質収納容器自体が軽量化されて可搬性が向上する。放射性物質収納用バスケットの製造が容易であれば、放射性物質収納用バスケットおよび放射性物質収納容器自体の製造コストが低減できる。また、ガイド部が放射性物質収納部の区画内に挿入され、放射性物質収納部の区画内形を放射性物質の外形に合わせるため、放射性物質収納部の区画内の空間部が少なく熱伝達性が損なわれないため、除熱性能を維持することができる。
本発明によれば、軽量で製造を容易とし、かつ放射性物質の破損を防ぐことができる。
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
図1は、本実施形態に係る放射性物質収納容器としてのキャスクの側断面図であり、図2は、本実施形態に係る放射性物質収納容器としてのキャスクの平断面図である。
放射性物質収納容器としてのキャスク11は、胴部12と蓋部13と放射性物質収納用バスケット14とから構成されている。胴部12は、胴本体21の一方、つまり、上部に開口部22が形成され、他方、つまり、下部に底部(閉塞部)23が形成された円筒形状をなしており、内部に放射性物質(例えば、使用済燃料集合体)を収納可能となっている。すなわち、胴本体21は、内部にキャビティ24が設けられ、このキャビティ24は、その内面が放射性物質収納用バスケット14の外周形状に合わせた形状となっている。放射性物質収納用バスケット14は、複数の放射性物質(図示略)を個々に収納するセルを複数有している。放射性物質収納用バスケット14の構成の詳細については後述する。そして、胴本体21は、下部に底部23が溶接により結合されており、この胴本体21および底部23は、γ線遮蔽機能を有する炭素鋼製の鍛造品となっている。胴本体21および底部23は、炭素鋼の代わりにステンレス鋼を用いることもできる。また、胴本体21および底部23は、球状黒鉛鋳鉄や炭素鋼鋳鋼などの鋳造品を用いることもできる。
胴部12は、胴本体21の外周側に所定の隙間を空けて外筒25が配設されており、胴本体21の外周面と外筒25の内周面との間に、熱伝達を行う銅製の伝熱フィン25aが周方向に等間隔で複数溶接されている。そして、胴部12は、胴本体21と外筒25との空間部に、水素を多く含有する高分子材料であって中性子遮蔽機能を有するボロンまたはボロン化合物を含有したレジン(中性子遮蔽体)26が流動状態で図示しないパイプ等を介して注入され、固化されている。
また、胴部12は、底部23の下側に複数の連結板27により所定の隙間を空けて底板28が連結されていてもよく、この連結板27と底板28との空間部にレジン(中性子遮蔽体)29が設けられている。更に、胴部12は、外周部における所定の位置にトラニオン30が固定されている。
胴部12における胴本体21の開口部22を閉塞する蓋部13は、一次蓋部31と二次蓋部32によって構成されている。一次蓋部31は、γ線を遮蔽するステンレス鋼または炭素鋼からなる円盤形状である。また、二次蓋部32も、ステンレス鋼製または炭素鋼製の円盤形状であるが、その内部にレジン(中性子遮蔽体)33が封入されている。この一次蓋部31および二次蓋部32は、ステンレス鋼製または炭素鋼製のボルト(図示略)により胴本体21の上端部に着脱自在に取付けられている。この場合、一次蓋部31および二次蓋部32と胴本体21との間に、それぞれ図示しない金属ガスケットが介装され、内部の密封性を確保している。なお、レジン33は、一次蓋部31の内部に設けられていてもよく、一次蓋部31にのみ設けられていてもよい。また、蓋部13の周囲には、レジンを封入した補助遮蔽体34が設けられる場合もある。
放射性物質収納用バスケット14について詳細に説明する。図3は、本実施形態に係る放射性物質収納用バスケットの平面図であり、図4〜図6は、本実施形態に係る放射性物質収納用バスケットの変形例の平面図である。
放射性物質収納用バスケット14は、図3〜図6に示すように、バスケット本体41と、放射性物質収納部42と、ガイド部43とを有する。
バスケット本体41は、複数の板材を格子状に組み合わせることにより構成されている。または、バスケット本体41は、複数の筒材を平行に束ね合わせることにより構成されていてもよい。これにより、図1および図2に示すように、格子状の各区画や、各筒体の区画が、互いに平行かつ所定間隔で配置されるセルとしての放射性物質収納部42が上下方向に連続して形成される。なお、板材を格子状に組み合わせたバスケット本体41や、筒材を平行に束ね合わせたバスケット本体41は、放射性物質収納部42を平面視で碁盤の目のように配列して区画形成することができる。また、筒材を平行に束ね合わせたバスケット本体41では、放射性物質収納部42を平面視で千鳥状に配列して区画形成することもできる。
ガイド部43は、図3〜図6に示すように、放射性物質収納部42の区画内形に対して異なる外形の放射性物質100を収納するように放射性物質収納部42の区画内形を放射性物質100の外形に合わせるものである。
ここで、放射性物質100は、上述したように使用済燃料集合体がある。使用済燃料集合体は、多数本の燃料棒が支持格子により外形が円形状(図3および図5参照)や6角形状(図4および図6参照)に束ねて構成されたものである。
本実施形態において、放射性物質収納部42の区画内形は、矩形状に形成されている。従って、本実施形態では、放射性物質収納部42の矩形状の区画内形を、図3および図5に示すように放射性物質100の円形状の外形や、図4および図6に示すように放射性物質100の6角形状の外形に合わせる。なお、放射性物質収納部42の区画内形は、矩形状に限定されるものではない。例えば、放射性物質収納部42の区画内形が円形状の場合、矩形状の放射性物質100の外形に合わせたり、6角形状の放射性物質100の外形に合わせたりしてもよい。
ガイド部43は、図3において、放射性物質収納部42の矩形状の区画内形を、放射性物質100の円形状の外形に合わせるように、放射性物質収納部42の矩形状の4カ所の内角部分に配置され、当該内角部分に沿う角部43aと、放射性物質100の円形状の外形に沿う内側面43bとを有してなる。このガイド部43は、放射性物質収納部42の上下方向に沿って設けられる。ガイド部43は、放射性物質収納部42の上下方向の寸法とほぼ同じ寸法の上下方向の長さを有している。また、ガイド部43は、軽量化を図るために内部に中空部43cが設けられている。
また、ガイド部43は、図4において、放射性物質収納部42の矩形状の区画内形を、放射性物質100の6角形状の外形に合わせるように、放射性物質収納部42の矩形状の4カ所の内角部分に配置され、当該内角部分に沿う角部43aと、放射性物質100の6角形状の外形に沿う内側面43bとを有してなる。このガイド部43は、放射性物質収納部42の上下方向に沿って設けられる。ガイド部43は、放射性物質収納部42の上下方向の寸法とほぼ同じ寸法の上下方向の長さを有している。また、ガイド部43は、軽量化を図るために内部に中空部43cが設けられている。
また、ガイド部43は、図5において、放射性物質収納部42の矩形状の区画内形を、放射性物質100の円形状の外形に合わせるように、放射性物質100の円形状の外形に沿う円筒状に形成されている。このガイド部43は、放射性物質収納部42の上下方向に沿って設けられる。ガイド部43は、放射性物質収納部42の上下方向の寸法とほぼ同じ寸法の上下方向の長さを有している。
また、ガイド部43は、図6において、放射性物質収納部42の矩形状の区画内形を、放射性物質100の6角形状の外形に合わせるように、放射性物質100の6角形状の外形に沿う6角筒状に形成されている。ガイド部43は、放射性物質収納部42の上下方向の寸法とほぼ同じ寸法の上下方向の長さを有している。
このように構成された放射性物質収納用バスケット14は、図1および図2に示すように、キャスク11を構成する胴部12内に配置される。すなわち、胴部12は、内部に内周面が円形状をなすキャビティ24が形成され、放射性物質収納用バスケット14は、このキャビティ24に嵌合するように配置される。このとき、放射性物質収納用バスケット14は、キャビティ24に対して位置決め部材(図示略)により位置決めされ、回り止めが施される。そして、放射性物質収納用バスケット14は、セルとして複数の放射性物質収納部42が形成され、内部にガイド部43が挿入されていることから、放射性物質収納部42の区画内形に対して異なる外形の放射性物質100を収納することができる。その後、胴部12は、開口部22に蓋部13が固定されることで、複数の放射性物質100がキャスク11内に密封されることとなる。
このように、本実施形態の放射性物質収納用バスケット14は、バスケット本体41と、バスケット本体41に互いに平行かつ所定間隔で区画形成される複数の放射性物質収納部42と、放射性物質収納部42の区画内に挿入され、放射性物質収納部42の区画内形に対して異なる外形の放射性物質100を収納するように放射性物質収納部42の区画内形を放射性物質100の外形に合わせるガイド部43と、を備える。
この放射性物質収納用バスケット14によれば、ガイド部43により、放射性物質収納部42の区画内形を放射性物質100の外形に合わせることで、事故事象の落下において、多数本の燃料棒を束ねた形状とした放射性物質100が上下方向で押し潰される外力により束ねられた形態が変化(例えば、燃料棒の間隔が変位)してしまう事態を抑制するため、放射性物質100が臨界状態になることを防ぐ未臨界性能を高めることができる。しかも、ガイド部43は、放射性物質収納部42の区画内に挿入され、放射性物質収納部42の区画内形を放射性物質100の外形に合わせるため、放射性物質収納部42を一様の厚さで形成できるため、軽量化を図ることができ、かつ加工性がよく製造を容易とすることができる。放射性物質収納用バスケット14が軽量であれば、放射性物質収納容器としてのキャスク11への組み付け作業が容易であり、かつキャスク11が軽量化されて可搬性が向上する。放射性物質収納用バスケット14の製造が容易であれば、放射性物質収納用バスケット14およびキャスク11の製造コストが低減できる。また、ガイド部43が放射性物質収納部42の区画内に挿入され、放射性物質収納部42の区画内形を放射性物質100の外形に合わせるため、放射性物質収納部42の区画内の空間部が少なく熱伝達性が損なわれないため、除熱性能を維持することができる。
なお、ガイド部43は、放射性物質収納部42の上下方向の寸法とほぼ同じ寸法の上下方向の長さを有していると説明したが、この限りではない。例えば、多数本の燃料棒を束ねた形状とした放射性物質100が上下方向で押し潰される外力により束ねられた形態が変化してしまう事態を抑制するうえで、放射性物質100が拡がり得る箇所に部分的にガイド部43を設けてもよい。このようにすることで、より軽量化を図ることができる。
また、本実施形態の放射性物質収納用バスケット14では、放射性物質収納部42は、区画内形が矩形状に形成されることが好ましい。
この放射性物質収納用バスケット14によれば、放射性物質収納部42の区画内形を矩形状に形成することで、加工性がよりよくなり、製造を容易とする効果を顕著に得ることができる。また、一般的な放射性物質100は、外形が矩形状であり、この放射性物質100の外形に合わせた矩形状の区画内形の放射性物質収納部42も一般的に用いられている。従って、この矩形状の区画内形の一般的な放射性物質収納部42を利用して、ガイド部43を設けることで、放射性物質収納部42の区画内形とは異なる外形の放射性物質100を収納し、かつ事故事象の落下において、放射性物質100が上下方向で押し潰される外力により束ねられた形態が変化してしまう事態を抑制して、未臨界性能を高めることができる。
図7は、本実施形態に係る放射性物質収納用バスケットの他の例の平面図である。
本実施形態の放射性物質収納用バスケット14では、図7に示すように、放射性物質収納部42の内面に沿って設けられる中性子吸収体44を有することが好ましい。
中性子吸収体44は、放射性物質収納部42の上下方向の寸法とほぼ同じ寸法の上下方向の長さを有して板状に形成されて、放射性物質収納部42の内面に沿って区画内形の全周に設けられる。この中性子吸収体44は、例えば、アルミニウムまたはアルミニウム合金に中性子吸収性能をもつボロン、またはボロン化合物を添加したアルミニウム複合材またはアルミニウム合金により構成されている。なお、中性子吸収体44としては、ボロンの他にガドリニウムを用いることができる。
この放射性物質収納用バスケット14によれば、放射性物質収納部42の区画内で中性子吸収体44の内側に挿入される放射性物質100から放出される中性子を適正に吸収することができ、未臨界性能を向上することができる。
また、本実施形態の放射性物質収納用バスケット14では、ガイド部43が中性子吸収体として形成されていてもよい。
ガイド部43が中性子吸収体として形成される形態としては、図7に示すように中性子吸収体44が設けられたうえで、さらにガイド部43が中性子吸収体として形成されていてもよいし、図3〜図6に示すように図7の中性子吸収体44が設けられていない形態でガイド部43が中性子吸収体として形成されていてもよい。
この放射性物質収納用バスケット14によれば、ガイド部43が中性子吸収体として形成されていることで、放射性物質収納部42の区画内に挿入される放射性物質100から放出される中性子を適正に吸収することができ、未臨界性能を向上することができる。図7に示すように中性子吸収体44が設けられたうえで、さらにガイド部43が中性子吸収体として形成されれば、放射性物質100から放出される中性子をより適正に吸収することができ、未臨界性能をより向上することができる。図3〜図6に示すように図7の中性子吸収体44が設けられていない形態でガイド部43が中性子吸収体として形成されれば、放射性物質100から放出される中性子を吸収し、かつ軽量化を図ることができる。
図8は、本実施形態に係る放射性物質収納用バスケットの組み立て斜視図であり、図9は、本実施形態に係る放射性物質収納用バスケットの他の例の平面図であり、図10は、本実施形態に係る放射性物質収納用バスケットの他の例の斜視図である。
本実施形態の放射性物質収納用バスケット14は、図8に示すように、バスケット本体41が、複数の板材41aが積み重ねられ、かつ積み重ね方向と交差する方向で組み合わせられて放射性物質収納部42を区画形成するように構成されている。板材41aは、直交する他の板材41aと相互に噛み合うように切欠41bが設けられており、かつ切欠41bにより、同方向に延在して上下に積み重なる板材41a同士の上端と下端とが当接するように形成されている。これにより、格子状のバスケット本体41が組み上げられる。なお、板材41aは、長手方向に貫通する貫通孔41cが設けられており、当該貫通孔41cが放射性物質100からの高速中性子を減速させるためのフラックストラップとして機能する。
また、ガイド部43は、放射性物質収納部42の上下方向の寸法とほぼ同じ寸法の上下方向の長さを有している。
そして、図9および図10に示すように、板材41aの積み重ねられた上下両端と、ガイド部43の上下両端との相互を連結する連結部45が設けられている。連結部45は、本実施形態において、板材41aを間において配置される2つのガイド部43の各中空部43cに挿入される2つの固定片45aを有して、板材41aおよび2つのガイド部43の一部を跨ぐコ字形状に形成されている。そして、2つの固定片45aを、板材41aおよび2つのガイド部43の一部を貫通する固定手段(例えば、ボルトなど)45bで固定することで、積み重ねられた各板材41aを上下で挟むようにガイド部43を介して連結される。なお、図9および図10では、図3に示す形態のガイド部43を示しているが、図4〜図6に示す形態のガイド部43であっても同様に板材41aを間において配置される2つのガイド部43を連結するようにすれば、積み重ねられた各板材41aを上下で挟むようにガイド部43を介して連結することができる。
このように、本実施形態の放射性物質収納用バスケット14では、バスケット本体41は、複数の板材41aが積み重ねられ、かつ積み重ね方向と交差する方向で組み合わせられて放射性物質収納部42を区画形成し、ガイド部43は、板材41aの積み重ねられる方向に連続して放射性物質収納部42に配置されており、板材41aの積み重ねられた両端とガイド部43の両端との相互を連結する連結部45を有する。
この放射性物質収納用バスケット14によれば、複数の板材41aが積み重ねられ、かつ積み重ね方向と交差する方向で組み合わせられて放射性物質収納部42を区画形成することで、バスケット本体41を容易に組み立てることができる。しかも、ガイド部43を、板材41aの積み重ねられる方向に連続して放射性物質収納部42に配置し、板材41aの積み重ねられた両端とガイド部43の両端との相互を連結する連結部45を有することで、積み重ねられた各板材41aを上下で挟むようにガイド部43を介して連結でき、各板材41a同士がズレることなくバスケット本体41が一体に構成されるため、放射性物質100を収納する強度を確保することができ、かつキャスク11へのバスケット本体41の組み付けを容易に行うことができる。
なお、連結部45は、図9に示す構成のバスケット本体41以外のバスケット本体41にも適用することができる。図9に示す構成のバスケット本体41以外のバスケット本体41は、上述したように、複数の板材を格子状に組み合わせることにより構成されたもの、または、複数の筒材を平行に束ね合わせることにより構成されたものがある。すなわち、ガイド部43は、バスケット本体41の構成に関わらず、放射性物質収納部42の上下方向に連続して配置されており、バスケット本体41の上下方向の端部(少なくとも一方の端部)とガイド部43の端部(少なくとも一方の端部)との相互を連結する連結部45を有していてもよい。
この放射性物質収納用バスケット14によれば、連結部45によりガイド部43がバスケット本体41に連結されることで、ガイド部43をバスケット本体41の放射性物質収納部42内に位置決めすることができる。また、複数の板材を格子状に組み合わせることにより構成されたバスケット本体41に対しては、隣接する筒材の各放射性物質収納部42に配置された2つのガイド部43をコ字形状の連結部45(図10参照)で連結するようにすれば、隣接する筒材を連結することになり、隣接する筒材同士がズレることなくバスケット本体41が一体に構成されるため、放射性物質100を収納する強度を確保することができ、かつキャスク11へのバスケット本体41の組み付けを容易に行うことができる。さらに、複数の筒材を平行に束ね合わせることにより構成されたバスケット本体41に対しては、隣接する筒材の各放射性物質収納部42に配置された2つのガイド部43をコ字形状の連結部45(図10参照)で連結するようにすれば、隣接する筒材を連結することになり、隣接する筒材同士がズレることなくバスケット本体41が一体に構成されるため、放射性物質100を収納する強度を確保することができ、かつキャスク11へのバスケット本体41の組み付けを容易に行うことができる。
また、上述した実施形態において、バスケット本体41が炭素鋼またはステンレス鋼からなることが好ましい。
従って、この放射性物質収納用バスケット14によれば、放射性物質100を収納する強度を十分に確保することができる。
また、上述した実施形態において、ガイド部43がアルミニウム合金からなることが好ましい。
従って、この放射性物質収納用バスケット14によれば、ガイド部43を押し出し成形により容易に製造することができ、かつ軽量化を図ることができ、しかも熱伝達性能が高まるため除熱性能を向上することができる。
また、上述した実施形態において、ガイド部43が耐液性の表面処理を施されていることが好ましい。耐液性の表面処理は、封孔処理やメッキ処理(例えば、ニッケルメッキ)がある。
従って、この放射性物質収納用バスケット14によれば、放射性物質100を収容するプールには、中性子を吸収するためや、隣接する放射性物質100同士の臨界を防ぐために水が注入されおり、放射性物質100を放射性物質収納用バスケット14に収納する際にプールの水中に漬けられることになるが、この際にプールの水に対するガイド部43の耐久性を向上することができる。
また、上述した実施形態において、ガイド部43が放熱性の表面処理を施されていることが好ましい。放熱性の表面処理は、封孔処理やメッキ処理(例えば、ニッケルメッキ)や着色処理(例えば黒色の着色)がある。
従って、この放射性物質収納用バスケット14によれば、ガイド部43の熱伝達性能が高まるため除熱性能を向上することができる。
図11および図12は、本実施形態に係る放射性物質収納用バスケットの他の例の平面図である。
本実施形態の放射性物質収納用バスケット14は、図11に示すように、放射性物質100の外形に合わせた筒状部材46を有する。筒状部材46は、放射性物質収納部42の上下方向の寸法とほぼ同じ寸法の上下方向の長さを有し、ガイド部43と放射性物質100との間に配置される。なお、ここでは、放射性物質収納部42の矩形状の区画内形を、放射性物質100の円形状の外形に合わせるようにした図3に示す形態のガイド部43を備えて、円形状の筒状部材46を有している。その他、図には明示しないが、放射性物質収納部42の矩形状の区画内形を、放射性物質100の6角形状の外形に合わせるようにした図4に示す形態のガイド部43を備えた場合、6角形状の筒状部材を有する。
この放射性物質収納用バスケット14によれば、筒状部材46で放射性物質100を囲むことから、多数本の燃料棒を束ねた形状とした放射性物質100が上下方向で押し潰される外力により束ねられた形態が変化してしまう事態をより抑制し、未臨界性能をより高めることができる。
また、本実施形態において、筒状部材46は、中性子吸収体であることが好ましい。
従って、この放射性物質収納用バスケット14によれば、中性子吸収体である筒状部材46の内側に挿入される放射性物質100から放出される中性子を適正に吸収することができ、未臨界性能を向上することができる。
また、本実施形態において、筒状部材46は、炭素鋼またはステンレス鋼からなることが好ましい。
従って、この放射性物質収納用バスケット14によれば、放射性物質100を収納する強度を十分に確保することができ、多数本の燃料棒を束ねた形状とした放射性物質100が上下方向で押し潰される外力により束ねられた形態が変化してしまう事態をより抑制し、未臨界性能をより高める効果を顕著に得ることができる。
また、本実施形態において、図12に示すように、筒状部材46は、多重に構成され、少なくとも1つが中性子吸収体であり、少なくとも他の1つが炭素鋼またはステンレス鋼からなることが好ましい。図12では、筒状部材46は、筒状部材46A,46Bの二重に構成され、その一方が中性子吸収体であり、他方が炭素鋼またはステンレス鋼からなる。
従って、この放射性物質収納用バスケット14によれば、中性子吸収体である筒状部材46(例えば、筒状部材46B)の内側に挿入される放射性物質100から放出される中性子を適正に吸収することができ、未臨界性能を向上することができる。しかも、この放射性物質収納用バスケット14によれば、炭素鋼またはステンレス鋼からなる筒状部材46(例えば、筒状部材46A)により、放射性物質100を収納する強度を十分に確保することができ、多数本の燃料棒を束ねた形状とした放射性物質100が上下方向で押し潰される外力により束ねられた形態が変化してしまう事態をより抑制し、未臨界性能をより高める効果を顕著に得ることができる。
また、本実施形態の放射性物質収納容器(キャスク11)は、一方に開口部22が形成されて他方に閉塞部(底部23)が形成されて筒形状をなす胴部12と、開口部22を閉塞するように胴部12に対して着脱可能な蓋部13と、胴部12内に収容される上述した放射性物質収納用バスケット14と、を有する。
このキャスク11によれば、放射性物質収納用バスケット14のガイド部43により、放射性物質収納部42の区画内形を放射性物質100の外形に合わせることで、事故事象の落下において、多数本の燃料棒を束ねた形状とした放射性物質100が上下方向で押し潰される外力により束ねられた形態が変化してしまう事態を抑制するため、放射性物質100が臨界状態になることを防ぐ未臨界性能を高めることができる。しかも、ガイド部43は、放射性物質収納部42の区画内に挿入され、放射性物質収納部42の区画内形を放射性物質100の外形に合わせるため、放射性物質収納部42を一様の厚さで形成できるため、軽量化を図ることができ、かつ加工性がよく製造を容易とすることができる。放射性物質収納用バスケット14が軽量であれば、キャスク11自体への組み付け作業が容易であり、かつキャスク11自体が軽量化されて可搬性が向上する。放射性物質収納用バスケット14の製造が容易であれば、放射性物質収納用バスケット14およびキャスク11自体の製造コストが低減できる。また、ガイド部43が放射性物質収納部42の区画内に挿入され、放射性物質収納部42の区画内形を放射性物質100の外形に合わせるため、放射性物質収納部42の区画内の空間部が少なく熱伝達性が損なわれないため、除熱性能を維持することができる。