[第1実施形態]
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しつつ説明する。本発明は、危険物標検出装置として広く適用することができる。尚、本実施形態では、危険物標として、突発的な雨の領域、竜巻等を例示することができる。以下では、図中同一または相当部分には、同一符号を付してその説明は繰り返さない。
図1は、本発明の第1実施形態に係る危険物標検出装置3を含む、レーダ装置1のブロック図である。本実施形態のレーダ装置1は、例えば、漁船等の船舶に備えられる舶用レーダである。尚、以下では、レーダ装置1が備えられている船舶を「自船」という。レーダ装置1は、主に他船等の物標の探知に用いられる。また、レーダ装置1は、危険物標を探知可能に構成されている。
図1に示すように、レーダ装置1は、アンテナユニット2と、危険物標検出装置3と、表示器4と、を備えている。
アンテナユニット2は、アンテナ5と、受信部6と、A/D変換部7と、を含んでいる。
アンテナ5は、指向性の強いパルス状電波を送信可能なレーダアンテナである。また、アンテナ5は、物標からの反射波であるエコー信号を受信するように構成されている。即ち、物標のエコー信号は、アンテナ5からの送信信号に対する、物標での反射波を含んでいる。レーダ装置1は、パルス状電波を送信してからエコー信号を受信するまでの時間を測定する。これにより、レーダ装置1は、物標までの距離rを検出することができる。アンテナ5は、水平面上で360°回転可能に構成されている。アンテナ5は、パルス状電波の送信方向を変えながら(アンテナ角度を変えながら)、電波の送受信を繰り返し行うように構成されている。以上の構成で、レーダ装置1は、自船周囲の平面上の物標を、360°にわたり探知することができる。探知エリア、即ち、レーダ装置1が物標を探知可能なエリアは、例えば、自船を中心とする、半径数km程度の円形の領域である。
なお、以下の説明では、パルス状電波を送信してから次のパルス状電波を送信するまでの動作を「スイープ」という。また、パルス状電波の送受信を行いながらアンテナを360°回転させる動作を「スキャン」と呼ぶ。以下では、あるスキャンのことを、「nスキャン」といい、nスキャンから1個前のスキャンのことを、「n−1スキャン」という。同様に、nスキャンからm個前のスキャンのことを、「n−mスキャン」という。尚、n、mは、何れも自然数である。本実施形態では、1スキャンに要する時間が、単位時間である。本実施形態では、(n−1)スキャン時点は、本発明の「第1時点」の一例である。また、nスキャン時点は、本発明の「第2時点」の一例である。
受信部6は、アンテナ5で受信したエコー信号を検波して増幅する。受信部6は、増幅したエコー信号を、A/D変換部7へ出力する。A/D変換部7は、アナログ形式のエコー信号をサンプリングし、複数ビットからなるデジタルデータ(エコーデータ)に変換する。上記エコーデータは、アンテナ5が受信したエコー信号の強度(信号レベル)を特定するデータを含んでいる。A/D変換部7は、エコーデータを、危険物標検出装置3へ出力する。
危険物標検出装置3は、危険物標を検出するように構成されている。危険物標検出装置3は、CPU、RAM及びROM(図示せず)等を含むハードウェアを用いて構成されている。また、危険物標検出装置3は、ROMに格納された危険物標検出プログラムを含む、ソフトウェアを用いて構成されている。
上記危険物標検出プログラムは、危険物標検出方法を、危険物標検出装置3に実行させるためのプログラムである。上記ハードウェアとソフトウェアとは、協働して動作するように構成されている。これにより、危険物標検出装置3を、エコー検出部8、識別エリア設定部9、及び危険物標検出部10等として機能させることができる。危険物標検出装置3は、1スキャン毎に、以下に説明する処理を行うように構成されている。
危険物標検出装置3は、エコー検出部8と、識別エリア設定部9と、危険物標検出部10と、を有している。
エコー検出部8は、A/D変換部7に接続されている。エコー検出部8は、フィルタ処理等を施すことにより、エコーデータに含まれる干渉成分と、不要な波形データと、を除去する。エコー検出部8は、物標エコー像の検出と、物標エコー像に関するエコーデータの特徴情報の検出とを、1スキャンを区切りとして行うように構成されている。即ち、エコー検出部8は、物標エコー像検出部と、特徴情報抽出部と、を含んでいる。
具体的には、エコー検出部8は、A/D変換部7からエコーデータを読み出すときの読出しアドレスに基づいて、当該エコーデータに対応する位置までの距離rを求める。また、アンテナ5からエコー検出部8へは、当該アンテナ5が現在どの方向を向いているか(アンテナ角度θ)を示すデータが出力されている。以上の構成で、エコー検出部8は、エコーデータを読み出す際には、当該エコーデータに対応する位置を、距離rとアンテナ角度θとの極座標で取得することができる。
エコー検出部8は、エコーデータに対応する位置に物標が存在するか否かを検出するように構成されている。エコー検出部8は、例えば、エコーデータに対応する位置の信号レベル、即ち、信号強度を判別する。エコー検出部8は、信号レベルが所定のしきいレベル値以上である位置には、物標が存在していると判別する。
次いで、エコー検出部8は、物標が存在している範囲を検出する。エコー検出部8は、例えば、物標が存在している一まとまりの領域を、物標エコー像が存在している領域として検出する。このようにして、エコー検出部8は、エコーデータを基に、物標エコー像を検出する。この物標エコー像の外郭形状は、物標の外郭形状と略合致する。但し、実際には、エコーデータに含まれるノイズ等に起因して、この物標エコー像の外郭形状と、物標の外郭形状とは、わずかに異なる。次に、エコー検出部8は、物標からのエコー信号に基づくエコーデータを用いて、物標エコー像に関連する特徴情報を抽出する。
本実施形態において、上記特徴情報は、上記エコーデータによって特定される、中心点情報及び面積情報を含んでいる。中心点情報は、物標エコー像の中心点(図心点)の座標情報である。面積情報は、物標エコー像の面積情報である。
探知エリアF1内の物標130、及びエコー検出部8で検出された複数の物標エコー像120の一例を、図2に示している。図2は、nスキャン時点において、探知エリアF1内の物標130、及びエコー検出部8で検出された物標エコー像120を示す、模式的な平面図である。図2では、一例として、nスキャン時点における5つの物標エコー像120(121,122,123,124,125)を示している。図3は、(n−1)スキャン時点において、探知エリアF1内の物標130、及びエコー検出部8で検出された物標エコー像120を示す、模式的な平面図である。図3では、一例として、(n−1)スキャン時点における2つの物標エコー像120(121,122)を示している。図2及び図3は、自船位置M1を、探知エリアF1の中心として示している。
図2及び図3に示すように、本実施形態では、物標エコー像120(121,122,123,124,125)の形状は、それぞれ、物標130(131,132,133,134,135)の形状と合致している。
本実施形態では、物標エコー像121によって特定される物標は、船舶131である。物標エコー像122によって特定される物標は、船舶132である。物標エコー像123によって特定される物標は、危険物標としての、雨領域133である。雨領域133は、突発的な雨が降っている領域としての、豪雨領域である。尚、この場合の豪雨とは、船舶の航行に支障をもたらす程度に激しい雨をいう。平面視における、雨領域133の外郭形状は、規則性の無い形状である。nスキャン時点では、雨領域133は、十数m四方程度の狭い領域に発生している。本実施形態では、雨領域133は、nスキャン時点以降、連続的に大きくなる前提で説明する。物標エコー像124によって特定される物標は、危険物標としての雨領域134である。雨領域134は、豪雨領域である。平面視における、雨領域134の外郭形状は、規則性の無い形状である。物標エコー像125によって特定される物標は、危険物標としての竜巻135である。竜巻135は、鉛直方向に細長い円柱形状であり、物標エコー像125は、略円形状である。船舶131、船舶132、雨領域133、雨領域134、及び竜巻135を総称していう場合は、物標130という。
突発的な雨は、例えば、短い時間の間に、積乱雲が急速に発達することで、発生する。また、竜巻は、例えば、短い時間の間に、積乱雲が急速に発達すること等によって、発生する。したがって、本実施形態では、雨領域133,134、及び竜巻135は、何れも、(n−1)スキャン時点には存在しておらず、nスキャン時点で突然現れたとの前提で、説明する。
エコー検出部8は、各スキャン時点において、物標エコー像120の代表点Pを検出している。より具体的には、エコー検出部8は、nスキャン時点において、代表点Pとして、物標エコー像121の代表点P1(n)と、物標エコー像122の代表点P2(n)と、を検出している。エコー検出部8は、上記と同様に、物標エコー像123,124,125のそれぞれの代表点P3(n),P4(n),P5(n)を検出している。また、エコー検出部8は、(n−1)スキャン時点において、代表点Pとして、物標エコー像121の代表点P1(n−1)と、物標エコー像122の代表点P2(n−1)と、を検出している。また、エコー検出部8は、各スキャン時点において、各物標エコー像120の面積arを算出する。
図1、図2及び図3に示すように、エコー検出部8は、各物標エコー像120の画像データを、表示器4へ出力する。表示器4は、例えば、カラー表示可能な液晶ディスプレイである。表示器4は、各物標エコー像120の画像データを用いて、表示画面に、探知エリアF1内の各物標エコー像120を表示する。表示器4は、表示画面の中心を、自船位置M1として表示する。また、エコー検出部8は、生成したデータを、識別エリア設定部9へ出力する。
識別エリア設定部9は、識別エリアF2を設定するように構成されている。識別エリアF2は、危険物標が存在しているか否かを検出する処理の対象となるエリアである。識別エリア設定部9は、識別エリアF2を、探知エリアF1内に設定する。識別エリアF2が設定される範囲は、探知エリアF1の範囲よりも小さい。識別エリアF2は、自船位置M1を中心とする、円形の領域である。識別エリア設定部9は、識別エリアF2内に少なくとも一部が存在する物標エコー像120を、検出する。本実施形態では、物標エコー像122〜125は、識別エリアF2内に存在しており、物標エコー像121は、識別エリアF2の外側に存在している。よって、識別エリア設定部9は、物標エコー像122〜125を、識別エリアF2内に存在する物標エコー像として、検出する。識別エリア設定部9は、識別エリアF2内の物標エコー像120(122〜125)を特定するデータを、危険物標検出部10へ出力する。
危険物標検出部10は、各スキャン時間毎に、エコー検出部8の検出結果に基づいて、物標130が危険物標であるか否かを検出するように構成されている。即ち、危険物標検出部10は、識別エリアF2内に、危険物標が存在するか否かを検出するように構成されている。また、危険物標検出部10は、追尾処理部11の一部として構成されている。危険物標検出部10は、追尾エリアF3内の各物標130(物標エコー像120)について、追尾処理を行うように構成されている。追尾エリアF3は、例えば、自船位置M1を中心とする、円形の領域に設定される。追尾エリアF3は、識別エリアF2の全体を含んでいる。また、追尾エリアF3は、探知エリアF1内に設定されている。即ち、探知エリアF1の面積>追尾エリアF3の面積>識別エリアF2の面積、である。本実施形態では、nスキャン時点では、各物標130(131〜135)は、追尾エリアF3内に存在している。一方、(n−1)スキャン時点では、物標133〜135は、追尾エリアF3内に存在せず、且つ、探知エリアF1内に存在していない。
前述したように、危険物標検出部10は、追尾エリアF3内の各物標130について、追尾処理、即ち、追尾フィルタ処理を行うことが可能に構成されている。尚、追尾フィルタとして、α−βフィルタ、カルマン・フィルタ等を例示することができる。
ここで、追尾処理について説明すると、危険物標検出部10は、追尾エリアF3内の物標エコー像120の、過去の追尾処理結果を参照する。追尾処理結果は、例えば、物標エコー像120の、推定位置、及び推定速度ベクトルを含んでいる。推定位置は、追尾処理が行われる物標エコー像120が到達すると推定される位置である。推定速度ベクトルは、追尾エリアF3内の物標エコー像120について、進行方向及び速度を推定したベクトルである。過去の追尾処理結果は、例えば、危険物標検出部10に蓄積されている。
より具体的には、(n−1)スキャン時点における追尾処理結果が存在する物標エコー像120については、危険物標検出部10は、nスキャン時点において、当該処理結果を用いて、再度、追尾処理を行う。そして、危険物標検出部10は、当該追尾処理の結果を、蓄積する。また、危険物標検出部10は、当該追尾処理の結果を特定するデータを、表示器4へ出力する。これにより、nスキャン時点において、表示器4は、追尾処理が行われた物標エコー像120についての推定速度ベクトルを、表示する。このように、危険物標検出装置3は、追尾処理装置であるともいえる。一方、(n−1)スキャン時点における追尾フィルタ処理結果が存在しない物標エコー像120を、危険物標検出部10は、nスキャン時点において突発的に生じた突発物標の物標エコー像として、検出する。
以下では、危険物標検出部10における、危険物標検出部10の処理の一例を説明する。図4は、危険物標検出部10における、処理の流れの一例を説明するためのフローチャートである。危険物標検出装置3は、以下に示すフローチャートの各ステップを、図示しないメモリから読み出して実行する。このプログラムは、外部からインストールできる。このインストールされるプログラムは、例えば記録媒体に格納された状態で流通する。また、本実施形態では、フローチャートについて説明する場合には、フローチャート以外の図面についても、適宜参照する。
図4に示すフローチャートは、nスキャン時点において行われる処理を示している。危険物標検出部10は、まず、nスキャン時点における識別エリアF2内の物標エコー像120を特定するデータを、識別エリア設定部9から読み出す(ステップS101)。次に、危険物標検出部10は、(n−1)スキャン時点で算出された追尾処理結果を特定するデータを、当該危険物標検出部10から読み出す(ステップS102)。
次に、危険物標検出部10は、識別エリアF2内の物標エコー像120のなかから検出対象となる物標エコー像120を、選択する(ステップS103)。本実施形態では、識別エリアF2内の物標エコー像120として、物標エコー像122〜125が特定されている(ステップS101)。したがって、本実施形態では、危険物標検出部10は、まず、物標エコー像122を選択する(ステップS103)。
次に、危険物標検出部10は、物標エコー像122について、追尾対象であるか否かを判定する(ステップS104)。具体的には、(n−1)スキャン時点における、追尾フィルタ処理結果が存在する物標エコー像120については、危険物標検出部10は、追尾対象であると判定する。一方、(n−1)スキャン時点における、追尾フィルタ処理結果が存在しない物標エコー像120については、危険物標検出部10は、追尾対象ではないと判定する。
本実施形態では、物標エコー像122については、(n−1)スキャン時点で算出された追尾処理結果が、危険物標検出部10に蓄積されている。この場合、危険物標検出部10は、物標エコー像122は、追尾対象であると判定する(ステップS104でYES)。
次に、危険物標検出部10は、検出処理を完了するか否かを判定する(ステップS105)。具体的には、識別エリアF2内の物標エコー像122〜125の少なくとも1つについて、追尾対象であるか否かの判定が済んでいない場合、危険物標検出部10は、検出処理を継続する。この場合、物標エコー像123〜125は、追尾対象であるか否かの判定が未だである。したがって、危険物標検出部10は、検出処理を継続する(ステップS105でNO)。この場合、危険物標検出部10は、ステップS103の処理を再び行う。
即ち、危険物標検出部10は、識別エリアF2内の物標エコー像122〜125のうちの、例えば、物標エコー像123を選択する(ステップS103)。次に、危険物標検出部10は、物標エコー像123について、追尾対象であるか否かを判定する(ステップS104)。
本実施形態では、物標エコー像123は、(n−1)スキャン時点以前において、探知エリアF1に存在していなかった。したがって、物標エコー像123について、(n−1)スキャン時点における追尾処理結果は、危険物標検出部10に蓄積されていない。この場合、危険物標検出部10は、物標エコー像123は、追尾対象でないと判定する(ステップS104でNO)。
この場合、危険物標検出部10は、物標エコー像123について、突発物標フラグFLを立てる(ステップS106)。具体的には、危険物標検出部10は、物標エコー像123について、突発物標フラグFLの値を、初期値である「0」から「1」に変更する。突発物標フラグFLの値が「1」である場合、当該突発物標フラグFLに対応する物標130は、突然現れた、突発物標である。本実施形態において、「突然現れた」とは、物標エコー像120について、(n−1)スキャン時点では、探知エリアF1内に全く現れておらず、且つ、nスキャン時点においては、識別エリアF2内に存在することをいう。
次に、危険物標検出部10は、物標エコー像123の面積arが、所定のしきい値ar1以上であるか否かを判定する(ステップS107)。しきい値ar1は、例えば、タンカー等の大型船舶における物標エコー像の面積より大きい値に、設定される。本実施形態では、物標エコー像123は、nスキャン時点において、一辺が十数m程度の小さな形状である。したがって、危険物標検出部10は、物標エコー像123の面積arは、しきい値ar1未満であると判定する(ステップS107でNO)。
次に、危険物標検出部10は、検出処理を完了するか否かを判定する(ステップS105)。この場合、物標エコー像124,125について、追尾対象であるか否かの判定(ステップS104)が済んでいない。したがって、危険物標検出部10は、検出処理を継続する(ステップS105でNO)。この場合、危険物標検出部10は、ステップS103の処理を再び行う。
即ち、危険物標検出部10は、識別エリアF2内の物標エコー像124〜125のうちの、例えば、物標エコー像124を選択する(ステップS103)。次に、危険物標検出部10は、物標エコー像124について、危険物標検出部10による追尾対象であるか否かを判定する(ステップS104)。
本実施形態では、物標エコー像124は、(n−1)スキャン時点において、識別エリアF2内に存在していなかった。したがって、物標エコー像124について、(n−1)スキャン時点における追尾処理結果は、危険物標検出部10に蓄積されていない。この場合、危険物標検出部10は、物標エコー像124は、追尾対象でないと判定する(ステップS104でNO)。
この場合、危険物標検出部10は、物標エコー像124について、突発物標フラグFLを立てる(ステップS106)。次いで、危険物標検出部10は、物標エコー像124の面積arが、所定のしきい値ar1以上であるか否かを判定する(ステップS107)。本実施形態では、物標エコー像124は、雨領域134を示す大型の像であり、物標エコー像124の面積arは、しきい値ar1よりも大きい。したがって、危険物標検出部10は、物標エコー像124の面積arについて、しきい値ar1を超えていると判定する(ステップS107でYES)。この場合、危険物標検出部10は、物標エコー像124によって特定される雨領域134を、危険物標として検出する(ステップS108)。次に、危険物標検出部10は、危険物標の種類を検出する(ステップS109)。
具体的には、危険物標検出部10は、物標エコー像124の形状に基づいて、危険物標の種類を検出する。本実施形態では、物標エコー像124の形状は、規則性が無い。危険物標検出部10は、例えば、規則性が無い外郭形状を有する物標エコー像120について、雨領域として検出するように構成されている。これにより、危険物標検出部10は、物標エコー像124によって特定される危険物標(雨領域134)を、雨領域として検出する。次いで、危険物標検出部10は、危険物標が雨領域であることを特定するデータを、表示器4へ出力する(ステップS110)。これにより、表示器4は、物標エコー像124によって特定される雨領域134を、危険物標且つ雨領域であるとして、表示する。
次に、危険物標検出部10は、検出処理を完了するか否かを判定する(ステップS106)。この場合、物標エコー像125について、追尾対象であるか否かの判定(ステップS104)が済んでいない。したがって、危険物標検出部10は、検出処理を継続する(ステップS105でNO)。この場合、危険物標検出部10は、ステップS103の処理を再び行う。
即ち、危険物標検出部10は、識別エリアF2内の物標エコー像125を選択する(ステップS103)。次に、危険物標検出部10は、物標エコー像125について、危険物標検出部10による追尾対象であるか否かを判定する(ステップS105)。
本実施形態では、物標エコー像125は、(n−1)スキャン時点において、識別エリアF2内に存在していなかった。したがって、物標エコー像125について、(n−1)スキャン時点における追尾処理結果は、危険物標検出部10に蓄積されていない。この場合、危険物標検出部10は、物標エコー像125は、追尾対象でないと判定する(ステップS104でNO)。
この場合、危険物標検出部10は、物標エコー像125について、突発物標フラグFLを立てる(ステップS106)。次いで、危険物標検出部10は、物標エコー像124の面積arが、所定のしきい値ar1以上であるか否かを判定する(ステップS107)。本実施形態では、物標エコー像125は、竜巻135を示す大型の像であり、物標エコー像125の面積arは、しきい値ar1よりも大きい。したがって、危険物標検出部10は、物標エコー像125の面積arについて、しきい値ar1を超えていると判定する(ステップS107でYES)。この場合、危険物標検出部10は、物標エコー像125によって特定される竜巻135を、危険物標として検出する(ステップS108)。次に、危険物標検出部10は、当該危険物標の種類を判定する(ステップS109)。
具体的には、危険物標検出部10は、物標エコー像125の形状に基づいて、危険物標の種類を判定する。本実施形態では、物標エコー像125の形状は、円形である。危険物標検出部10は、例えば、円形である外郭形状を有する物標エコー像120について、竜巻であると判定するように構成されている。したがって、危険物標検出部10は、物標エコー像125によって特定される危険物標を、竜巻135として検出する(ステップS109)。次いで、危険物標検出部10は、危険物標が竜巻135であることを特定するデータを、表示器4へ出力する(ステップS110)。これにより、表示器4は、物標エコー像125によって特定される竜巻135を、危険物標且つ竜巻であるとして、表示する。
次に、危険物標検出部10は、検出処理を完了するか否かを判定する(ステップS105)。この場合、識別エリアF2内の物標エコー像122〜125全てについて、追尾対象であるか否かの判定が済んでいる。したがって、危険物標検出部10は、検出処理を完了する(ステップS105でYES)。
上記の構成により、危険物標検出部10は、雨領域134、及び竜巻135について、危険物標であることを、表示器4に表示させることができる。しかしながら、上記の構成では、危険物標検出部10は、雨領域133を、危険物標として表示器4に表示することはしない。そこで、本実施形態では、nスキャン時点においては小さな雨領域133についても、危険物標であることを表示器4に表示するように構成されている。以下、具体的に説明する。
図5は、危険物標検出部10における、更なる処理の流れの一例を説明するためのフローチャートである。図5に示すように、危険物標検出部10は、nスキャン時点において、突発物標フラグFLが立てられた物標エコー像123〜125のデータを選択する。更に、危険物標検出部10は、物標エコー像123〜125のうち、危険物標として検出されなかった物標エコー像123について、当該物標エコー像123を特定するデータを、エコー検出部8から読み出す(ステップS201)。
次に、危険物標検出部10は、検出対象となる物標エコー像120を選択する(ステップS202)。本実施形態では、検出対象となる物標エコー像120は、物標エコー像123である。よって、危険物標検出部10は、物標エコー像123を選択する。次に、危険物標検出部10は、時間の経過に伴って、物標エコー像123の面積arが増加しているか否か、を判定する(ステップS203)。具体的には、危険物標検出部10は、nスキャン時点から、(n+m1)スキャン時点までの各スキャン時点における、物標エコー像123の面積arのデータを、エコー検出部8から読み出す。尚、m1は、定数であり、例えば、3程度である。そして、危険物標検出部10は、nスキャン時点から、(n+m1)スキャン時点までの間において、物標エコー像123の面積arが、連続して増大しているか否かを判定する。尚、危険物標検出部10は、この判定を、(n+m1)スキャン時点で行う。
この場合において、仮に、物標エコー像123の面積arが連続的に増大していなければ(ステップS203でNO)、雨領域133の面積は、小さい。したがって、この場合(ステップS203でNO)、危険物標検出部10は、物標エコー像123によって特定される雨領域133を、危険物標ではないと識別する。
一方、前述したように、本実施形態では、物標エコー像123の面積arは、nスキャン時点以降、連続的に増大する。したがって、物標エコー像123の面積arは、連続的に増大している(ステップS203でYES)。この場合、危険物標検出部10は、物標エコー像123によって特定される物標(雨領域133)を、危険物標として検出する(ステップS204)。尚、ステップS204〜S206の処理は、物標エコー像124についてのステップS108〜S110の処理と同様であるので、説明を省略する。
次に、危険物標検出部10は、検出処理を完了するか否かを判定する(ステップS207)。本実施形態では、検出対象としての物標エコー像123について、危険物標であるか否かの判定が済んでいる。したがって、危険物標検出部10は、検出処理を完了する(ステップS207でYES)。尚、複数の物標130について、危険物標であるか否かを検出する場合、危険物標検出部10は、検出対象である物標エコー像120によって特定される物標130の全てについて、危険物標であるか否かの検出処理を行う(ステップS202〜S207)。
以上説明したように、危険物標検出装置3によると、(n−1)スキャン時点において存在しておらず、且つ、nスキャン時点において現れた物標としての、突発物標(雨領域133,134、竜巻135)を、危険物標検出部10は、危険物標として検出可能である。これにより、危険物標検出部10は、突発的に発生した突発物標(雨領域133,134、竜巻135)について、危険物標であると検出することができる。前述したように、危険物標は、突発的な雨領域133,134、竜巻135等、突発的に発生する物標であり、危険な物標である。このように、危険物標検出部10は、突発物標(雨領域133,134、竜巻135)であれば、物標の種類を問わずに、危険物標として検出できる。したがって、複数種類の危険な物標を検出することができる。
また、危険物標検出装置3によると、突発物標(雨領域134、竜巻135)についての物標エコー像120(124,125)の面積arが、所定のしきい値ar1以上である場合、危険物標検出部10は、突発物標130(雨領域134、竜巻135)を、危険物標として検出する。したがって、突発物標を特定する物標エコー像120の面積arが、所定のしきい値ar1未満の場合、危険物標検出部10は、当該突発物標を、危険物標ではないとして扱う。これにより、危険物標検出部10は、クラッタ等に起因して検出された微小な突発物標を、危険物標であると誤って検出することを抑制できる。
また、危険物標検出装置3によると、突発物標133についての物標エコー像123の面積arが、時間の経過に従って増大している場合、危険物標検出部10は、当該突発物標(雨領域133)を、危険物標として検出する。本実施形態では、突発的な雨が降っている雨領域133の範囲は、当該雨の降り始め時点からの時間経過に伴って、大きくなる。したがって、時間の経過に従って面積が増大する物標エコー像120は、突発的な雨等の危険物標における物標エコー像として、扱われることができる。これにより、危険物標検出部10は、突発的に発生した危険物標を、より確実に検出できる。
以上の次第で、危険物標検出部10は、危険物標を、突発的に生じた雨領域133又は雨領域134として検出できる。
また、危険物標検出装置3によると、危険物標検出部10は、危険物標を、竜巻135として検出可能できる。
また、危険物標検出装置3によると、追尾エリアF3内に、識別エリアF2が設定されている。これにより、危険物標検出部10は、突発物標ではない船舶132の追尾処理結果を、当該船舶132が識別エリアF2に到達する前に、取得できる。その結果、危険物標検出部10は、識別エリアF2内に進入した船舶132を、突発物標として誤って検出することを、抑制できる。
[第2実施形態]
図6は、本発明の第2実施形態に係る危険物標検出装置3Aを含む、レーダ装置1Aのブロック図である。尚、以下では、第1実施形態と異なる点について、主に説明する。図6に示すように、レーダ装置1Aの構成は、レーダ装置1(図1参照)の構成と、概ね同様である。レーダ装置1では、危険物標検出部10が備えられているのに対して、レーダ装置1Aでは、危険物標検出部10Aが備えられている。危険物標検出部10Aは、追尾処理を行うことなく、識別エリアF2内における危険物標の存在の有無を検出するように構成されている。
以下では、危険物標検出部10Aにおける、処理の一例を説明する。図7は、危険物標検出部10Aにおける、処理の流れの一例を説明するためのフローチャートである。図7に示すフローは、例えば、nスキャン時点での処理を示している。
危険物標検出部10Aは、まず、最新のスキャン時点で識別エリアF2内に存在する物標エコー像120について、代表点Pを特定するデータを、識別エリア設定部9から読み出す(ステップS301)。この場合、最新のスキャン時点とは、nスキャン時点である。次に、危険物標検出部10Aは、過去のスキャン時点において、識別エリアF2内に存在していた物標エコー像120の代表点Pを特定するデータを、識別エリア設定部9から読み出す(ステップS302)。この場合、過去のスキャン時点とは、(n−1)スキャン時点である。
次に、危険物標検出部10Aは、識別エリアF2内の物標エコー像120のうち、検出対象となる物標エコー像120を、選択する(ステップS303)。本実施形態では、識別エリアF2内の物標エコー像120として、物標エコー像122〜125が特定されている。したがって、本実施形態では、危険物標検出部10Aは、まず、物標エコー像122を選択する(ステップS303)。
次に、危険物標検出部10Aは、物標エコー像122の代表点P2について、(n−1)スキャン時点で、探知エリアF1内に存在していたか否かを判定する(ステップS304)。
本実施形態では、物標エコー像122の代表点P2は、(n−1)スキャン時点において、探知エリアF1内に存在している。よって、危険物標検出部10Aは、物標エコー像122の代表点P2が、過去から存在していたと判定する(ステップS304でYES)。
次に、危険物標検出部10Aは、検出処理を完了するか否かを判定する(ステップS305)。この判定処理は、物標エコー像122についてのステップS105(図4参照)の処理と、同様である。この場合、物標エコー像123〜125については、代表点Pの判定(ステップS304)が済んでいない。したがって、危険物標検出部10Aは、検出処理を継続する(ステップS305でNO)。この場合、危険物標検出部10Aは、ステップS303の処理を再び行う。
即ち、危険物標検出部10Aは、識別エリアF2内の物標エコー像122〜125のうちの、例えば、物標エコー像123を選択する(ステップS303)。次に、危険物標検出部10Aは、物標エコー像123の代表点P3について、(n−1)スキャン時点で探知エリアF1内に存在していたか否かを判定する(ステップS304)。
本実施形態では、物標エコー像123の代表点P3は、(n−1)スキャン時点において、探知エリアF1内に存在していなかった。したがって、物標エコー像123の代表点P3については、(n−1)スキャン時点におけるデータが、危険物標検出部10Aに蓄積されていない。この場合、危険物標検出部10Aは、物標エコー像123の代表点P3は、過去には存在していなかったと判定する(ステップS304でNO)。
尚、この場合、物標エコー像123に関する以降の処理(ステップS306,S307)は、第1実施形態における、物標エコー像123に関する処理(ステップS106,S107)と同様であるので、説明を省略する。
次に、危険物標検出部10Aは、検出処理を完了するか否かを判定する(ステップS305)。この場合、物標エコー像124〜125について、代表点Pの判定が済んでいない。したがって、危険物標検出部10Aは、検出処理を継続する(ステップS305でNO)。この場合、危険物標検出部10Aは、ステップS303の処理を再び行う。
即ち、危険物標検出部10Aは、識別エリアF2内の物標エコー像124〜125のうちの、例えば、物標エコー像124を選択する(ステップS303)。次に、危険物標検出部10Aは、物標エコー像124の代表点P4について、(n−1)スキャン時点で探知エリアF1内に存在していたか否かを判定する(ステップS304)。
本実施形態では、物標エコー像124の代表点P4は、(n−1)スキャン時点において、探知エリアF1内に存在していなかった。したがって、物標エコー像124の代表点P4については、(n−1)スキャン時点におけるデータが、危険物標検出部10Aに蓄積されていない。この場合、危険物標検出部10Aは、物標エコー像124の代表点P4が、過去には存在していなかったと判定する(ステップS304でNO)。
尚、この場合、物標エコー像124に関する以降の処理(ステップS306〜S310)は、第1実施形態における、物標エコー像124に関する処理(ステップS106〜S110)と同様であるので、説明を省略する。
次に、危険物標検出部10Aは、検出処理を完了するか否かを判定する(ステップS306)。この場合、物標エコー像125については、代表点Pの判定(ステップS304)が済んでいない。したがって、危険物標検出部10Aは、検出処理を継続する(ステップS305でNO)。この場合、危険物標検出部10Aは、ステップS303の処理を再び行う。
即ち、危険物標検出部10Aは、識別エリアF2内の物標エコー像125を選択する(ステップS303)。次に、危険物標検出部10Aは、物標エコー像125の代表点P5について、(n−1)スキャン時点で、探知エリアF1内に存在していたか否かを判定する(ステップS304)。
本実施形態では、物標エコー像125の代表点P5は、(n−1)スキャン時点において、探知エリアF1内に存在していなかった。したがって、物標エコー像125の代表点P5については、(n−1)スキャン時点におけるデータが、危険物標検出部10Aに蓄積されていない。この場合、危険物標検出部10Aは、物標エコー像125の代表点P5は、過去には存在していなかったと判定する(ステップS304でNO)。
尚、この場合、物標エコー像125に関する以降の処理(ステップS306〜S310)は、第1実施形態における物標エコー像125に関する処理(ステップS106〜S110)と同様であるので、説明を省略する。
次に、危険物標検出部10Aは、検出処理を完了するか否かを判定する(ステップS106)。この場合、識別エリアF2内の物標エコー像122〜125全てについて、代表点Pの判定が済んでいる。したがって、危険物標検出部10Aは、検出処理を完了する(ステップS305でYES)。
上記の構成により、危険物標検出部10Aは、雨領域134、及び竜巻135について、それぞれ、危険物標であることを、表示器4に表示させることができる。しかしながら、上記の構成では、危険物標検出部10Aは、雨領域133について、危険物標として表示器4に表示させることはしない。そこで、本実施形態では、nスキャン時点においては小さな雨領域133についても、危険物標として表示器4に表示するように構成されている。この場合において危険物標検出部10Aが行う処理は、危険物標検出部10が行う処理(図5のステップS201〜S207)と同様である。したがって、説明を省略する。
以上の次第で、危険物標検出装置3Aが発揮することのできる作用及び効果は、危険物標検出装置3が発揮することのできる作用及び効果と同様である。
また、危険物標検出装置3Aによると、探知エリアF1内に、識別エリアF2が設定されている。これにより、突発物標ではない船舶132における代表点Pの情報を、当該船舶132が識別エリアF2に進入する前に、予め取得することができる。その結果、危険物標検出部10Aは、識別エリアF2内に進入した船舶132を、突発物標として誤って検出することを抑制できる。
[第3実施形態]
図8は、本発明の第3実施形態に係る危険物標検出装置3Bを含む、レーダ装置1Bのブロック図である。尚、以下では、第1実施形態と異なる点について、主に説明する。図8に示すように、レーダ装置1Bの構成は、レーダ装置1(図1参照)の構成と、略同様である。レーダ装置1では、危険物標検出部10が備えられているのに対して、レーダ装置1Bでは、危険物標検出部10Bが備えられている。危険物標検出部10Bは、追尾処理を行うことなく、識別エリアF2内における、危険物標の存在の有無を検出するように構成されている。
より具体的には、危険物標検出部10Bは、スキャン相関処理に基づいて、物標130が危険物標であるか否かを判定する。図9及び図10は、本実施形態におけるスキャン相関処理について説明するための模式図である。図9は、(n−1)スキャン時点における、船舶132の物標エコー像122を示している。図10は、nスキャン時点における、船舶132,雨領域134の物標エコー像122,124を示している。
図9に示すように、船舶132は、例えば、時速数ノットで直進している。この場合、物標エコー像122は、(n−1)スキャン時点から、図10に示すnスキャン時点に時間が経過する間に、所定の領域ter1ぶんだけ、位置が変化している。この場合、物標エコー像122は、1つ前のスキャン時点における当該物標エコー像122と、一部が重なるようにして、変位している。この場合、船舶132の移動に起因して、エコー信号の信号レベルが増加する領域の面積は、上記領域ter1の面積ぶんだけの、僅かな値である。尚、エコー信号の信号レベルが増加する領域を、エコー信号レベル増加領域ともいう。
一方、物標エコー像124は、雨領域134の物標エコー像である。本実施形態では、図9に示すように、(n−1)スキャン時点では、雨領域134が発生しておらず、図10に示すように、nスキャン時点において、雨領域134が発生している。この場合、雨領域134の物標エコー像124は、(n−1)スキャン時点から、nスキャン時点に時間が経過する間に、物標エコー像124が存在する領域ter2ぶんだけ、面積が増加している。したがって、雨領域134の発生に起因する、エコー信号レベル増加領域は、上記領域ter2ぶんの、大きな領域である。したがって、単位スキャン時間の経過に伴う、エコー信号レベル増加領域の面積が、所定のしきい値ar2以上である物標エコー像は、突然現れた危険物標として、扱われることが可能である。尚、しきい値ar2は、上記領域ter1の面積を超える程度に、適宜設定される。
以下では、危険物標検出部10Bにおける、処理の一例を説明する。図11は、危険物標検出部10Bにおける、処理の流れの一例を説明するためのフローチャートである。図11に示すフローは、例えば、nスキャン時点での処理を示している。
危険物標検出部10Bは、まず、最新のスキャン時点において、識別エリアF2内に存在する物標エコー像120を特定するデータを、識別エリア設定部9から読み出す(ステップS401)。この場合、最新のスキャン時点とは、nスキャン時点である。次に、危険物標検出部10Bは、過去のスキャン時点において、識別エリアF2内に存在した物標エコー像120を特定するデータを、識別エリア設定部9から読み出す(ステップS402)。この場合、過去のスキャン時点とは、(n−1)スキャン時点である。
次に、危険物標検出部10Bは、識別エリアF2内の物標エコー像120のうち、検出対象となる物標エコー像120を、選択する(ステップS403)。本実施形態では、識別エリアF2内の物標エコー像120として、物標エコー像122〜125が特定されている。したがって、本実施形態では、危険物標検出部10Bは、まず、物標エコー像122を選択する(ステップS403)。
次に、危険物標検出部10Bは、物標エコー像122に関して、nスキャン時点からnスキャン時点に至る間における、エコー信号レベル増加領域の面積を判定する(ステップS404)。
本実施形態では、物標エコー像122は、(n−1)スキャン時点において、識別エリアF2内に存在している。したがって、物標エコー像122についてのエコー信号レベル増加領域の面積は、僅かな値であり、しきい値ar2未満である(ステップS404でNO)。この場合、危険物標検出部10Bは、物標エコー像122を、過去から存在していたと判定する。即ち、危険物標検出部10Bは、物標エコー像122で特定される物標132を、危険物標ではない物標として検出する。
次に、危険物標検出部10Bは、検出処理を完了するか否かを判定する(ステップS405)。この判定処理は、ステップS105(図3参照)と同様である。この場合、物標エコー像123〜125については、エコー信号レベル増加領域の判定(ステップS404)が済んでいない。したがって、危険物標検出部10Bは、検出処理を継続する(ステップS405でNO)。この場合、危険物標検出部10Bは、ステップS403の処理を再び行う。
即ち、危険物標検出部10Bは、識別エリアF2内の物標エコー像122〜125のうちの、例えば、物標エコー像123を選択する(ステップS403)。次に、危険物標検出部10Bは、物標エコー像123に関して、(n−1)スキャン時点からnスキャン時点に至る間における、エコー信号レベル増加領域の面積を、判定する(ステップS404)。
本実施形態では、物標エコー像123は、(n−1)スキャン時点において、探知エリアF1内に存在していなかった。したがって、物標エコー像123に関する上記エコー信号レベル増加領域の面積は、物標エコー像123の面積と同じであり、しきい値ar2以上である(ステップS404でYES)。この場合、危険物標検出部10Bは、物標エコー像123について、(n−1)スキャン時点には存在していなかったと判定する。
尚、この場合、物標エコー像123に関する以降の処理(ステップS406,S407)は、第1実施形態における、物標エコー像123に関する処理(ステップS106,S107)と同様であるので、説明を省略する。
次に、危険物標検出部10Bは、検出処理を完了するか否かを判定する(ステップS405)。この場合、物標エコー像124〜125について、エコー信号レベル増加領域についての判定(ステップS404)が済んでいない。したがって、危険物標検出部10Bは、検出処理を継続する(ステップS405でNO)。この場合、危険物標検出部10Bは、ステップS403の処理を再び行う。
即ち、危険物標検出部10Bは、識別エリアF2内の物標エコー像124〜125のうちの、例えば、物標エコー像124を選択する(ステップS403)。次に、危険物標検出部10Bは、物標エコー像124に関して、(n−1)スキャン時点からnスキャン時点に至る間における、エコー信号レベル増加領域の面積を、判定する(ステップS404)。
本実施形態では、物標エコー像124は、(n−1)スキャン時点において、探知エリアF1内に存在していなかった。したがって、物標エコー像124に関する上記エコー信号レベル増加領域の面積は、物標エコー像124の面積と同じであり、しきい値ar2以上である(ステップS404でYES)。この場合、危険物標検出部10Bは、物標エコー像124について、(n−1)スキャン時点には存在していなかったと判定する。
尚、この場合、物標エコー像124に関する以降の処理(ステップS406〜S410)は、第1実施形態における、物標エコー像124に関する処理(ステップS106〜S110)と同様であるので、説明を省略する。
次に、危険物標検出部10Bは、検出処理を完了するか否かを判定する(ステップS305)。この場合、物標エコー像125については、エコー信号レベル増加領域の判定(ステップS404)が済んでいない。したがって、危険物標検出部10Bは、検出処理を継続する(ステップS405でNO)。この場合、危険物標検出部10Bは、ステップS403の処理を再び行う。
即ち、危険物標検出部10Bは、識別エリアF2内の物標エコー像125を選択する(ステップS403)。次に、危険物標検出部10Bは、物標エコー像125に関して、(n−1)スキャン時点からnスキャン時点に至る間における、エコー信号レベル増加領域の面積を、判定する(ステップS404)。
本実施形態では、物標エコー像125は、(n−1)スキャン時点において、探知エリアF1内に存在していなかった。したがって、物標エコー像125に関する上記エコー信号レベル増加領域の面積は、物標エコー像125の面積と同じであり、しきい値ar2以上である(ステップS404でYES)。この場合、危険物標検出部10Bは、物標エコー像125について、(n−1)スキャン時点には存在していなかったと判定する。
尚、この場合、物標エコー像125に関する以降の処理(ステップS406〜S410)は、第1実施形態における、物標エコー像125に関する処理(ステップS106〜S110)と同様であるので、説明を省略する。
次に、危険物標検出部10Bは、検出処理を完了するか否かを判定する(ステップS405)。この場合、識別エリアF2内の物標エコー像122〜125全てについて、エコー信号レベル増加領域の判定が済んでいる。したがって、危険物標検出部10Bは、検出処理を完了する(ステップS405でYES)。
上記の構成により、危険物標検出部10Bは、雨領域134、及び竜巻135について、それぞれ、危険物標であることを、表示器4に表示させることができる。しかしながら、上記の構成では、危険物標検出部10Bは、雨領域133について、危険物標として表示器4に表示させることはしない。そこで、本実施形態では、nスキャン時点においては小さな雨領域133についても、危険物標として表示器4に表示するように構成されている。この場合において危険物標検出部10Bが行う処理は、危険物標検出部10が行う処理(図5のステップS201〜S207)と同様である。したがって、説明を省略する。
以上の次第で、危険物標検出装置3Bが発揮することのできる作用及び効果は、危険物標検出装置3Aが発揮することのできる作用及び効果と同様である。
以上、本発明の実施形態について説明したけれども、本発明は上述の実施の形態に限らず、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能である。例えば、次のように変更して実施してもよい。
(1)上述の各実施形態では、物標エコー像についての中心点を、代表点として用いる形態を例に説明した。しかしながら、この通りでなくてもよい。例えば、物標エコー像のうち、自船に対して最も近い点である最前縁点等を、代表点として用いてもよい。
(2)また、上述の各実施形態では、突発的な雨の領域、及び竜巻が、危険物標として判定される形態を例に説明した。しかしながら、この通りでなくてもよい。例えば、突発物標としての潜水艦を、危険物標として検出してもよい。具体的には、潜水艦については、当該潜水艦のうち海面から突出した部分のみが、エコー像として、レーダ装置によって検出される。この場合、潜水艦は、平面視において、海面から突出している部分が、通常、略楕円形状である。したがって、識別エリア内において、(n−1)スキャン時点では検出されず、nスキャン時点で検出された、楕円形状の物標エコー像を、潜水艦の物標エコー像であると検出できる。
(3)また、上述の実施形態では、アンテナユニットから放射される電波の周波数については、特に述べていなかった。しかしながら、当該周波数について、より最適化された構成を採用してもよい。具体的には、例えば、3GHz程度の周波数帯を利用したSバンドレーダと、9GHz程度の周波数帯を利用したXバンドレーダと、を用いて、アンテナユニットを構成してもよい。この場合、雨領域からのエコー信号について、Sバンドのレーダが受信するエコー信号の強さ(第1信号レベル)は、Xバンドのレーダが受信するエコー信号の強さ(第2信号レベル)と比べて、弱い。そこで、識別エリアのうち、第1信号レベルが、第2信号レベルよりも小さいエリアを、雨領域として判定することができる。これにより、より確実に、突発的な雨を検出できる。
(4)また、上述の実施形態では、危険物標検出装置は、船舶用レーダ装置に備えられる形態を例に説明した。しかしながら、この通りでなくてもよい。危険物標検出装置は、例えば、ソナー、魚群探知機等の、他の船舶用機器に備えられてもよい。また、危険物標検出装置は、船舶以外の他の装置に備えられていてもよい。