JP6120734B2 - 筆記板用水性顔料インク組成物 - Google Patents
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Description
こちらの場合には、バインダー樹脂を含む水溶性エマルジョンを組成し、インクとしているため、固着性については申し分ないものの、消去、剥離については「カッターナイフなどで切り取って」剥離させるもので、到底、容易に描線を消去できるものであるとは言えないものであった。
しかしながら、このインク組成物は、感熱紙、ノンカーボン紙等の紙面用であり、そのまま非吸収面となるホワイトボードなど筆記板にボードマーカーとして用いても、また、従来の筆記板用インク組成などに還元デンプン糖化物を添加しても、本発明の効果の発揮について記載も示唆もないものであった。また、この文献5には、ホワイトボードマーカー用インクの組成も開示されているものの、保湿剤が含まれないものであった。
(1)少なくとも、隠ぺい性顔料と、スチレンアクリル酸樹脂及び/又はスチレンマレイン酸樹脂と、還元デンプン糖化物と、フッ素を含む界面活性剤と、水とを含有することを特徴とする水性顔料インク組成物。
(2)インク組成物全量に対して、前記隠ぺい性顔料の含有量が0.1〜35質量%、前記スチレンアクリル酸樹脂及び/又はスチレンマレイン酸樹脂の含有量が1〜10質量%、前記還元デンプン糖化物の含有量が0.1〜5質量%、前記フッ素を含む界面活性剤の含有量が0.005〜0.3質量%であることを特徴とする上記(1)記載の水性顔料インク組成物。
(3)前記隠ぺい性顔料が二酸化チタンであることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の水性顔料インク組成物。
(4)前記隠ぺい性顔料に加えて蛍光顔料を含むことを特徴とする上記(3)に記載の水性顔料インク組成物。
(5)前記隠ぺい性顔料に加えて有彩色の顔料を含むことを特徴とする上記(3)に記載の水性顔料インク組成物。
(6)前記隠ぺい性顔料に加えて着色エマルジョンを含むことを特徴とする上記(3)に記載の水性顔料インク組成物。
(7)前記隠ぺい性顔料がカーボンブラックであることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の水性顔料インク組成物。
(8)前記隠ぺい性顔料に加えて染料を含むことを特徴とする上記(1)〜(7)の何れか一つに記載の水性顔料インク組成物。
(9)更に水溶性有機溶剤を含むことを特徴とする上記(1)〜(8)の何れか一つに記載の水性顔料インク組成物。
(10)インク組成物のpHが6.5〜10.5であることを特徴とする上記(1)〜(9)の何れか一つに記載の水性顔料インク組成物。
本発明の水性顔料インク組成物は、少なくとも、隠ぺい性顔料と、スチレンアクリル酸樹脂及び/又はスチレンマレイン酸樹脂と、還元デンプン糖化物と、フッ素を含む界面活性剤と、水とを含有することを特徴とするものである。
好ましくは、隠ぺい性が高く鮮明な筆跡を発揮せしめうる点から、用いる隠ぺい性粒子としては、酸化チタン単独の使用、酸化チタンと中空樹脂粒子や異方性樹脂粒子等との併用が挙げられる。なお、酸化チタンの含有量は、インク組成物全量に対して、0.1〜35質量%(以下、単に「%」という)とすることが好ましく、更に好ましくは、1〜30質量%とすることが望ましい。
また、用いる隠ぺい性粒子は、平均粒子径が0.05〜20μmの使用が好ましく、特に好ましくは、平均粒子径が0.1〜10μmとすることが望ましい。
より具体的には、顔料が有彩色の有機顔料、着色エマルジョン顔料であって、アゾ系顔料、縮合アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系、チオインジゴ系、イソインドリノン系顔料等である。
これらの顔料は、単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
具体的には、カーボンブラック、球状黒鉛粒子、黒酸化鉄、黒色の球状樹脂粒子顔料等である。用いることができるカーボンブラックとしては、例えば、チャンネルブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック等が挙げられる。
これらの黒色の顔料の含有量としては、インク組成物全量に対して、0.1〜35%、さらに好ましくは、0.1〜20%、より好ましくは、1〜15%とすることが望ましい。
また、カーボンブラックの粒子としては、平均粒子径が0.05〜1μmの使用が好ましく、特に好ましくは、平均粒子径が0.05〜0.5μmとすることが望ましい。
用いることができるスチレンアクリル酸樹脂としては、ジョンクリル52J、ジョンクリル57J、ジョンクリル60J、ジョンクリル61J、ジョンクリル62J(以上、BASFジャパン社製)、RS−1191、VS−1047、YS−1274(以上、星光PMC社製)、また、スチレンマレイン酸樹脂としては、アラスター700、アラスター703S(以上、荒川化学工業社製)、SMA−1440、SMA−2625、SMA−17352(以上、川原油化社製)などが挙げられる。
好ましくは、製造時の取扱い上の理由、インク組成物の経時安定性、及び、トレハロースの溶解安定性等の点から、スチレンアクリル酸樹脂の使用が望ましい。
この含有量の含有量が0.5%未満であると、インク組成物が経時的に不安定となり、好ましくなく、一方、20%を超える場合は、インク組成物の粘度が爆発的に増大し、かつ、トレハロースが析出不能となり、好ましくない。
用いる還元デンプン糖化物は、糖アルコールの一種であって、澱粉のカルボニル基を還元して得られる鎖状多価アルコールであり、例えば、澱粉をαアミラーゼや酸で液化した後、βアミラーゼなどの酵素で部分的に加水分解することにより製造された糖化液をそれ自体は公知の方法により水素加圧下で接触還元することにより製造される。
用いることができる還元デンプン糖化物としては、上記製造法により得られるもの他、還元デンプン糖化物の名称で食品用または一般用に市販されているものが挙げられる。例えば、市販の三菱商事フードテック株式会社製のPO−10(商品名)、PO−20(商品名)、PO−30(商品名)、PO−40(商品名)、あめんこ(住化グリーン社製)、エコピタ液剤(協友アグリ社製)等を挙げることができる。
これらの還元デンプン糖化物の含有量は、インク組成物全量に対して、固形分濃度で、0.1〜5%、好ましくは、0.5〜4%とすることが望ましい。
この含有量が0.1%未満であると、耐水固着剤としての効果が低く、好ましくなく、一方、5%を超える場合は、水性顔料インクとしての粘度が高くなりすぎたり、低温時等にペン先から結晶の析出が起こり見苦しくなったり、インクの保存安定性に問題が出てくることとなり、好ましくない。
用いることができるフッ素を含む界面活性剤としては、パーフルオロアルケニルエチレンオキサイド付加物、パーフルオロアルキル基付加物、パーフルオロブタンスルホン酸基付加物など高分子量の重合物を含むものが挙げられる。
好ましくは、1)分子中に二重結合と分岐したパーフルオロアルケニル構造、例えば、ヘキサフルオロプロペンオリゴマー〔(CF3)2CF〕2C=C(F)CF3〕などを持つもの〔(株)ネオス社製のフタージェント100、同100C、同110、同140A、同150、同150CH、同A−K、同501、同250、同251、同222F、同300、同310、同400SW〕、2)パーフルオロブタンスルホン酸基を持つもの(住友スリーエム社製のFC−4430、FC−4432)などが挙げられる。
この含有量の含有量が0.001%未満であると、インクの非吸収面への濡れ性が低下することとなり、好ましくなく、一方、0.3%を超える場合は、インクの非吸収面への濡れ性を高め過ぎてしまい、却って耐水固着性を弱めることとなり、好ましくない。
用いることができる糖類の例としては、単糖類、二糖類、オリゴ糖類(三糖類及び四糖類を含む)及び多糖類が挙げられ、好ましくは、グルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、マルトース、セロビオース、ラクトース、スクロース、マルトトリオースなどが挙げられる。ここで、多糖類とは広義の糖を意味し、α−シクロデキストリン、セルロースなど自然界に広く存在する物質を含む意味に用いることとする。
また、これらの糖類の誘導体としては、前記した糖類の還元糖(例えば、糖アルコール〔一般式HOCH2(CHOH)nCH2OH(n=2〜5の整数)〕、還元デンプン糖化物を除く)、酸化糖(例えば、アルドン酸、ウロン酸など)、アミノ酸、チオ酸などが挙げられる。特に、糖アルコール(還元デンプン糖化物を除く)が好ましく、具体例としては、D−ソルビトール、ソルビタン、マルチトール、エリスリトール、ラクチトール、キシリトールなどが挙げられる。
これらの水溶性有機溶剤は1種又は2種以上を併用することもでき、インク組成物全量に対して、1〜20%、好ましくは、2〜10%の範囲で用いられる。この水溶性有機溶剤の含有量が1%未満の場合、ゴーストの抑制に対して何らの効果も示さず、一方、20%を超えると耐水固着性が著しく悪化する結果となったり、ゴーストを助長する結果となったりする場合がある。
また、本発明の水性顔料インク組成物は、ホワイトボードマーカー、ブラックボードマーカーなどの非吸収面となる筆記板用等の筆記具用として好適に使用することができる。
用いる還元デンプン糖化物は、多数の水酸基を有する糖アルコール類で、これらの水酸基が水分子との強い水素結合を生むと言われている。そのため、水分子との水素結合によりある程度の水性インクからの水の蒸発抑制効果が得られる。描線が書かれた面は非吸収面であるので、紙面上のように紙内部に水分が浸透することは無く、水分が失われてゆく過程は空気中への蒸発のみとなる。その結果、ホワイトボードまたはブラックボード等の非吸収面に書かれた描線からの水性インクからの水の蒸発、乾燥が抑制され、ゆっくりと描線の固化が進行してゆく。描線内のスチレンアクリル酸樹脂またはスチレンマレイン酸樹脂も、ゆっくりと固定化されてゆくため、非吸収面−インク界面での描線の接着が、ゆっくり、かつ、密に行われてゆくものと推察される。
このため、乾燥した描線の上から雨粒を打っても簡単には樹脂が溶解せず、流れ出さないものと推察される。しかし、力をかけて布で水拭きをすると、この程度の適切な密着力では、固着を維持することができずに、消去されるものと推察される。
下記表1及び表2に示す配合処方で、ホモミキサーあるいはディスパーで混合分散して、各水性顔料インク組成物を調製した。
上記で得られた表1の実施例1〜11及び比較例1〜4の各水性顔料インク組成物について、下記試験方法により、(1)インク組成物のpH、(2)耐水固着性A(初期)、(3)耐水固着性B(50℃、3ヶ月経過後)、(4)水拭き消去性(初期描線)について評価した。
また、表2の実施例12〜17の各水性顔料インク組成物については、上記(1)〜(4)の試験方法と共に、下記試験方法により、(5)水拭き消去性(ゴースト、屋外3ヶ月経過後描線)について評価した。
これらの結果を下記表1及び表2に示す。
(1)インク組成物のpH
各水性顔料インク組成物(25℃)を堀場製作所社製の「HORIBA PH/10N METER F−24」により測定した。
三菱鉛筆社製PC−5Mのペン体に、各水性顔料インク組成物を詰め、気温25℃、湿度65%の環境下において、5重で幅15mmの螺旋を8回ブラックボード又はホワイトボード上に描き、市販のシャワーのノズルから毎分12リットルの流量で水道水を噴射し、その後の描線の様子を観察し、下記評価基準で評価した(n=10)。
評価基準:
◎:描線に全く変化が見られない。
○:描線の色相がやや薄くなったり、描線が一部欠けたりした。
△:描線の色相がかなり薄くなったり、半分乃至大部分の描線が消去したりした
。
▲:描線の色相や形状の一部が残っているが元の形状を想像することが困難であ
った。
×:描線は全て流れて消えてしまった。
三菱鉛筆社製PC−5Mのペン体に、各水性顔料インク組成物を詰め、それを50℃の環境に3ヶ月間保管したものを、常温(25℃)に戻し、上記(2)と同様の評価基準で試験し評価した(n=10)。
三菱鉛筆社製PC−5Mのペン体に、各水性顔料インク組成物を詰め、気温25℃、湿度65%の環境下において、5重で幅15mmの螺旋を8回ブラックボード又はホワイトボード上に描き、キムタオル(実験用ペーパータオル、日本製紙クレシア株式会社製)に約25gの水道水を含ませ、ボードを水平に保ったまま一回擦過した。擦過後の描線の様子を観察し、下記評価基準で評価した(n=10)。
評価基準:
◎:重りを置かずに水平に力を加えて消去できた。
○:7.84N(重り0.8kg)以下の力を上から加えて擦過し消去できた。
△:9.8N(重り1kg)以下の力を上から加えて擦過し消去できた。
▲:9.8N(重り1kg)を超える力を上から加えて擦過し消去できた。
×:19.6N(重り2kg)の力を上から加えても消去できなかった。
三菱鉛筆社製PC−5Mのペン体に、各水性顔料インク組成物を詰め、気温25℃、湿度65%の環境下において、5重で幅15mmの螺旋を8回ブラックボード又はホワイトボード上に描き屋外に3ヶ月放置後、キムタオル(実験用ペーパータオル、日本製紙クレシア株式会社製)に約25gの水道水を含ませ、ボードを水平に保ったまま描線の色相が消えるまで擦過した。消去後の描線の様子を観察し、下記評価基準で評価した(n=10)。
評価基準:
◎:描線跡は残らない。
○:透明な描線跡が残る。
△:薄く白濁した描線跡が残る。
▲:白濁した描線跡が残る。
×:ボード表面が皺となって白く見える。
−:そもそも描線を消去することができず評価できない。
*1:石原産業社製
*2:三菱化学社製
*3:富士色素社製
*4:大日精化工業社製
*5:桃色、NKW3207E、日本蛍光社製(不揮発分37.0%)
*6:ジョンクリル61J、BASF社製(不揮発分30.5%)
*7:アラスター703S、荒川化学工業社製(不揮発分30%)
*8:エコピタ液剤、協友アグリ社製(不揮発分60%)
*9:フタージェント251、ネオス社製
これに対して、比較例を見ると、比較例1、2及び4は、還元デンプン糖化物を添加していない場合、比較例3は本発明の範囲外となるフッ素系界面活性剤を含有していない場合であり、これらの場合には、本発明の効果を発揮できないことが判った。
Claims (9)
- 少なくとも、隠ぺい性顔料0.1〜35質量%と、スチレンアクリル酸樹脂及び/又はスチレンマレイン酸樹脂1〜10質量%と、還元デンプン糖化物0.1〜5質量%と、フッ素を含む界面活性剤0.005〜0.3質量%と、水とを含有することを特徴とする筆記板用水性顔料インク組成物。
- 前記隠ぺい性顔料が二酸化チタンであることを特徴とする請求項1に記載の筆記板用水性顔料インク組成物。
- 前記隠ぺい性顔料に加えて蛍光顔料を含むことを特徴とする請求項2に記載の筆記板用水性顔料インク組成物。
- 前記隠ぺい性顔料に加えて有彩色の有機顔料を含むことを特徴とする請求項2に記載の筆記板用水性顔料インク組成物。
- 前記隠ぺい性顔料に加えて着色エマルジョンを含むことを特徴とする請求項2に記載の筆記板用水性顔料インク組成物。
- 前記隠ぺい性顔料がカーボンブラックであることを特徴とする請求項1に記載の筆記板用水性顔料インク組成物。
- 前記隠ぺい性顔料に加えて染料を含むことを特徴とする請求項1〜6の何れか一つに記載の筆記板用水性顔料インク組成物。
- 更に水溶性有機溶剤を含むことを特徴とする請求項1〜7の何れか一つに記載の筆記板用水性顔料インク組成物。
- インク組成物のpHが6.5〜10.5であることを特徴とする請求項1〜8の何れか一つに記載の筆記板用水性顔料インク組成物。
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