「第1実施形態」
図1において、可搬型X線撮影システム(以下、単にX線撮影システムという)10は、可搬型X線発生装置(以下、単にX線発生装置という)11と、可搬型X線撮影装置(以下、単にX線撮影装置という)12とで構成されている。X線発生装置11は、車輪が設けられた走行可能な台車14aに搭載された移動式X線発生装置であり、台車14aを含めて回診車14とも呼ばれる。X線撮影装置12は、電子カセッテ16、可搬型のコンソール17及び機能ユニット18を有しており、回診車14に積載することが可能である。回診車14は、使用しないときには、医療施設内の駐機場15に止められている。回診撮影の際には、回診車14に可搬型のX線撮影装置12が積載されて、駐機場15から運び出される。放射線技師(以下、単に技師という)Tは回診車14を押しながら、病棟19内の各病室R11、R12、R21、R22を巡回して、被写体となる、ベッド20上の各患者Pの回診撮影を行う。
各病室R11、R12、R21、R22、その他医療施設内の要所には、アクセスポイント(AP:Access Point)22が設置されている。AP22は、医師や看護師Nが携帯する無線端末23を院内の通信ネットワークであるLAN(Local Area Network)21に接続させるための無線中継器である。AP22は、無線端末23と通信するための無線通信部と、通信ケーブルを介してLAN21に接続するための有線通信部とを備えている。無線通信部は、例えば、IEEE802.11nなどの無線LAN規格に準拠したものである。また、駐機場15には、LAN21に有線接続するためのLANコンセント15aが設けられている。無線端末23は、タブレット型コンピュータなどの携帯型の無線端末である。
AP22は、起動中において、無線端末23に対してAP22の存在を通知するためにビーコン信号と呼ばれる電波を約100msec間隔で発信する。無線端末23は、ビーコン信号によりAP22の存在を探知して、AP22に対して無線接続を要求する。AP22には、無線通信に使用する電波である無線通信チャンネルの周波数が割り当てられており、ビーコン信号は割り当てられた周波数で発信される。無線端末23は、AP22が使用する周波数に合わせて無線通信チャンネルの周波数を選択する。そして、無線端末23がAP22に対して無線接続を要求すると、パスワード等による認証処理が行われる。認証処理において、無線端末23がAP22から許可応答を受けると、無線端末23とAP22との間で論理的な通信リンクが確立されて、AP22との無線接続が完了する。
無線接続が完了すると、AP22から無線端末23に対してIP(Internet Protocol)アドレスが割り当てられる。IPアドレスが割り当てられると、無線端末23は、AP22経由でLAN21に接続して、HISサーバ25Aなどにアクセスすることが可能となる。また、AP22は、複数の無線端末23と無線接続することが可能である。複数の無線端末23が接続されている場合には、AP22が使用する1つの無線通信チャンネルを複数の無線端末23が時分割で共有する。
また、各病室R11、R12、R21、R22には、患者Pの傷病に応じて、診断や治療を行う医療機器が設置される。医療機器の中には、無線通信の電波との干渉の原因となる電磁ノイズを発生する電磁医療機器24がある。電磁医療機器24は、例えば、温熱治療器、電気メス、さらに測定した患者Pのバイタルサインなどの生体情報を無線で発信する無線トランスミッターを備えた測定機器である。また、図示しないが、例えば、各病室R11、R12、R21、22に隣接して治療室などがある場合には、治療室に設置された電磁医療機器24が発生する電磁ノイズが、各病室R11、R12、R21、R22に進入する場合もある。
また、医療機器の中には、無線端末23などが無線通信をする際に発生する電波が悪影響を及ぼす特定の医療機器(以下、特定医療機器という)30もある。病室21のように、特定医療機器30が設置されている病室では、無線通信を控えることが好ましい。
LAN21には、病院情報システム(HIS:Hospital Information System)サーバ25A、放射線科情報システム(RIS:Radiology Information System)サーバ25B、画像サーバ25Cが接続されている。
HISサーバ25Aは、電子カルテを管理するためのサーバであり、主として内科や外科などの診療科の医師や看護師などの医療スタッフが使用する診療科端末によってアクセスされる。診療科端末には、デスクトップ型やノート型のコンピュータの他、無線端末23も含まれる。これらの診療科端末によって電子カルテの閲覧や診療情報の入力が行われる。
RISサーバ25Bは、放射線科が管理するサーバであり、診療科から放射線科に向けて送信される撮影依頼情報である撮影オーダを管理する撮影オーダ管理装置である。撮影オーダには、診療科名、医師名を含む依頼元情報と、患者の氏名、年齢及び性別を含む患者基本情報と、頭部、胸部、腹部、手、指等の撮影部位と、正面、側面、斜位、PA(X線を被写体の背面から照射)、AP(X線を被写体の正面から照射)等の撮影方向と、オーダ元の診療科の医師からの撮影目的や注意点などのメッセージなどが含まれる。技師Tは、撮影オーダの内容をコンソール17で確認して、撮影オーダに適した撮影条件を決定し、決定した撮影条件を電子カセッテ16やX線発生装置11に設定する。
撮影条件には、X線源26(図2参照)が照射するX線のエネルギースペクトルを決める管電圧(単位;kV)、単位時間当たりの照射量を決める管電流(単位;mA)、及びX線の照射時間(単位;s)で規定される照射条件が含まれる。管電流と照射時間の積でX線の累積の照射量が決まるため、照射条件としては、管電流と照射時間のそれぞれの値を個別に入力する代わりに、両者の積である管電流時間積(mAs値)の値が入力される場合もある。
画像サーバ25Cは、撮影オーダに従ってX線撮影装置12で撮影されたX線画像などの画像データを管理するサーバである。画像サーバ25Cは、撮影オーダの依頼元の診療科端末からもアクセスが可能であり、診療科の医師は、診療科端末を通じて画像サーバ25Cにアクセスして撮影されたX線画像を閲覧することができる。
X線撮影装置12において、コンソール17は、LAN21経由で、RISサーバ25Bや画像サーバ25Cにアクセスすることが可能である。コンソール17は、RISサーバ25Bにアクセスして撮影オーダを取得し、撮影したX線画像を画像サーバ25Cに送信する。コンソール17は、駐機場15においては、LANコンセント15aと有線接続されて、RISサーバ25Bや画像サーバ25Cにアクセスすることが可能である。また、病棟19においては、各AP22に無線接続して、RISサーバ25Bや画像サーバ25Cにアクセスすることが可能である。なお、駐機場15にAP22が設置されている場合には、コンソール17は、LANコンセント15aを使用する代わりに、AP22に無線接続して、RISサーバ25Bや画像サーバ25Cにアクセスすることもできる。
図2において、X線発生装置11は、X線源26と、X線源26を制御する線源制御装置27と、照射スイッチ28とを有する。X線源26は、X線を放射するX線管(図示せず)とX線管が放射するX線の照射野を限定する照射野限定器(コリメータ)(図示せず)とを有している。X線管は、熱電子を放出するフィラメントからなる陰極と、陰極から放出された熱電子が衝突してX線を放射する陽極(ターゲット)とを有している。照射野限定器は、例えば、中央に四角形の照射開口が形成され、四角形の各辺にX線を遮蔽する4枚の鉛板を配置したものであり、各鉛板を移動させることで照射開口の大きさを変化させて、照射野を限定する。
回診車14には、垂直方向に支柱31が立設されており、支柱31には水平方向に延びるアーム32が設けられている。X線源26は、アーム32の一端に取り付けられる。支柱31は長手軸周りに回動自在であり、支柱31の回転によりアーム32及びX線源26が回転する。アーム32は、支柱31に対して昇降自在である。X線源26は、アーム32に対して回転自在に取り付けられている。アーム32は伸縮可能であり、X線源26はアーム32の伸縮により、水平方向にも変位可能である。支柱31の回転、アーム32の昇降及び伸縮、X線源26の回転により、X線源26の照射位置や向きが調節される。支柱31には、ロック機構33が設けられている。
ロック機構33は、回診車14の走行中において、支柱31、アーム32及びX線源26が不用意に変位しないように、アーム32及びX線源26の変位を規制する機構である。ロック機構33は、例えば、X線源26などの変位を規制するロック位置とロックを解除して変位を許容するロック解除位置との間で移動するロックピンを有している。ロック部材34の操作によりロックピンが移動して、ロック機構33のロックと解除が行われる。ロック機構33は、ロックが解除された場合にロック解除信号を発生する。ロック解除信号は、内部ケーブルを介して線源制御装置27に送信される。
線源制御装置27は、X線源26に対して高電圧を供給する高電圧発生器と、管電圧、管電流、及び照射時間を制御する制御部とからなる。高電圧発生器は、トランスによって入力電圧を昇圧して高圧の管電圧を発生し、高電圧ケーブルを通じてX線源26に駆動電力を供給する。管電圧、管電流、照射時間といった照射条件は、線源制御装置27の操作パネル(図示せず)を通じて技師Tによって手動で設定される。また、コンソール17から照射条件を線源制御装置27に送信して設定することも可能である。
照射スイッチ28は、技師Tによって操作され、線源制御装置27に信号ケーブルで接続されている。照射スイッチ28は二段階押しのスイッチになっており、一段階押しでX線源26のウォームアップを開始させるためのウォームアップ開始信号を発生し、二段階押しでX線源26に照射を開始させるための照射開始信号を発生する。これらの信号は信号ケーブルを通じて線源制御装置27に入力される。
線源制御装置27は、照射スイッチ28からの信号に基づいて、X線源26の動作を制御する。照射スイッチ28から照射開始信号を受けた場合、線源制御装置27は、X線源26への電力供給を開始するとともに、タイマを作動させてX線の照射時間の計測を開始する。そして、照射条件で設定された照射時間が経過すると、線源制御装置27は、X線の照射を停止させる。X線の照射時間は、照射条件に応じて変化する。線源制御装置27には、安全規制上の最大照射時間が設定されており、照射条件に基づいて設定される照射時間は、最大照射時間の範囲内で設定される。
線源制御装置27内には、有線通信部29が設けられている。有線通信部29は、X線撮影装置12と通信するためのもので、例えば、コンソール17と通信ケーブルで接続される。有線通信部29は、ロック機構33から受信したロック解除信号を、通信ケーブルを介してコンソール17に送信する。
図3において、X線撮影装置12は、電子カセッテ16、コンソール17及び機能ユニット18がそれぞれ無線通信部を有しており、電子カセッテ16とコンソール17は、機能ユニット18を介して相互に無線通信が可能である。X線撮影装置12の無線通信部は、例えば、IEEE802.11nなどの無線LAN規格に準拠したものである。
機能ユニット18には、制御部35と、WAP(Wireless Access Point:無線アクセスポイント)36が設けられている。制御部35は、機能ユニット18の各部を統括的に制御する。WAP36は、電子カセッテ16とコンソール17の間の無線通信を中継する無線中継装置である。
WAP36は、AP22と同様に、電子カセッテ16及びコンソール17に対して、WAP36の存在を通知するためにビーコン信号を発信する。電子カセッテ16及びコンソール17の各無線通信部37、38は、無線端末23がAP22に接続するのと同様の手順で、WAP36に無線接続する。これにより、電子カセッテ16とコンソール17の間で無線通信が行われる。また、WAP36には、初期設定で使用する無線通信チャンネルの周波数が割り当てられているが、コンソール17からの指令により無線通信チャンネルの周波数を変更することが可能である。電子カセッテ16及びコンソール17は、WAP36が使用する無線通信チャンネルの周波数に応じて、周波数を選択する。
このように、電子カセッテ16とコンソール17は、直接通信するアドホックモードではなく、WAP36を介したインフラストラクチャモードで通信を行う。電子カセッテ16とコンソール17の間では、コンソール17から電子カセッテ16に対しては、技師Tによってコンソール17に入力される撮影準備指示などの操作信号を含む制御信号や撮影条件が送信され、電子カセッテ16からコンソール17に対しては、コンソール17からの制御信号に対する応答、さらに、電子カセッテ16が検出したX線画像が送信される。電子カセッテ16は、撮影準備指示を受信すると、撮影準備状態(Ready)に移行する。
なお、本例においては、電子カセッテ16が送信するX線画像は、機能ユニット18を介してコンソール17が受信するため、機能ユニット18及びコンソール17が画像受信装置を構成する。また、インフラストラクチャモードではなく、電子カセッテ16とコンソール17間の無線通信をアドホックモードで行ってもよい。この場合には、機能ユニット18は不要であるので、コンソール17が単体で画像受信装置を構成する。
さらに、WAP36は、コンソール17と、回診車14に搭載された線源制御装置27との間の無線通信を中継する。これにより、コンソール17から線源制御装置27に対して照射条件を無線送信することが可能である。コンソール17から照射条件を送信すれば、回診車14において操作パネルからマニュアルで線源制御装置27に照射条件を設定しなくても済む。また、WAP36により、X線撮影装置12は、線源制御装置27から照射スイッチ28が操作されたことを表す信号を受信することも可能である。さらに、コンソール17は、WAP36を介して、線源制御装置27からロック解除信号を受信する。
電子カセッテ16は、センサーパネル41(図4参照)と、センサーパネル41を収容する可搬型の筐体とで構成され、X線源26から照射され被写体となる患者Pを透過したX線を受けて患者PのX線画像を検出する、可搬型のX線画像検出装置である。筐体は、扁平な平板状をしており、平面サイズは、例えばフイルムカセッテやIPカセッテとほぼ同じ大きさである。
図4に示すように、センサーパネル41は、撮像領域43が形成されたTFTアクティブマトリクス基板、ゲートドライバ44、読み出し回路46、制御回路47、A/D変換器48、メモリ49、無線通信部37、有線通信部50を備えている。有線通信部50は、通信ケーブルを介してコンソール17との間で有線通信を行うための通信インタフェースである。無線通信部37と有線通信部50は選択的に使用することが可能である。また、筐体内には、センサーパネル41の各部を駆動するためのバッテリ(図示せず)が収容されている。
撮像領域43には、X線の入射線量に応じた信号電荷を蓄積する複数の画素42が、所定のピッチでn行(X方向)×m列(Y方向)のマトリクスに配列されている。なお、n、mは2以上の整数であり、例えばn、m≒2000である。なお、画素42の配列は正方配列でなくともよく、ハニカム配列でもよい。センサーパネル41は、X線を可視光に変換するシンチレータ(蛍光体、図示せず)を有し、シンチレータによって変換された可視光を画素42で光電変換する間接変換型である。シンチレータは、CsI:Tl(タリウム賦活ヨウ化セシウム)やGOS(Gd2O2S:Tb、テルビウム賦活ガドリウムオキシサルファイド)等からなり、画素42が配列された撮像領域43の全面と対向するように配置されている。なお、センサーパネル41としては、間接変換型の代わりに、X線を直接電荷に変換する直接変換型でもよい。
画素42は、可視光の入射によって電荷(電子−正孔対)を発生する光電変換素子であるフォトダイオード51と、スイッチング素子である薄膜トランジスタ(TFT)52とを備える。フォトダイオード51は、a−Si(アモルファスシリコン)などの半導体層(例えばPIN型)とその上下に上部電極及び下部電極を配した構造を有している。フォトダイオード51は、下部電極にTFT52が接続され、上部電極には、バイアス電圧が印加される。バイアス電圧の印加により半導体層内に電界が生じるため、光電変換により半導体層内で発生した電荷(電子−正孔対)は、一方がプラス、他方がマイナスの極性を持つ上部電極と下部電極に移動して、キャパシタとしても機能するフォトダイオード51に電荷が蓄積される。
TFT52は、ゲート電極が走査線53に接続され、ソース電極が信号線54に接続され、ドレイン電極がフォトダイオード51に接続される。走査線53と信号線54は格子状に配線されており、走査線53は、撮像領域43内の画素42の行数分(n行分)、信号線54は画素42の列数分(m列分)それぞれ配線されている。走査線53はゲートドライバ44に接続され、信号線54は読み出し回路46に接続される。
ゲートドライバ44は、制御回路47の制御の下にTFT52を駆動することにより、X線の入射線量に応じた信号電荷を画素42に蓄積する蓄積動作と、画素42が蓄積した信号電荷を読み出す読み出し動作と、画素42に蓄積される不要な電荷を除去するリセット動作とをセンサーパネル41に行わせる。ゲートドライバ44は、X線の照射が行われている間、全画素42のTFT52をオフ状態にすることにより、画素42に信号電荷の蓄積動作を開始させる。そして、X線の照射終了後、ゲートパルスG1〜Gnを走査線53に対して順次入力して一行ずつTFT52をオン状態にすることにより、信号電荷の読み出し動作を行わせる。画素42から読み出された信号電荷は、信号線54に読み出されて、読み出し回路46に入力される。
また、フォトダイオード51は、X線の入射の有無に関わらず発生する暗電荷を発生する。暗電荷は画像データに対してはノイズ成分となるので、これを除去するためにX線の照射前にリセット動作が行われる。リセット動作は、画素42に発生する暗電荷を、信号線54を通じて掃き出す動作である。
読み出し回路46は、画素42から信号電荷D1〜Dmを読み出す。制御回路47は、各部を統括的に制御する。A/D変換器48は、読み出した信号電荷をデジタルデータに変換する。メモリ49には、A/D変換器48で変換されたデータが書き込まれる。
読み出し回路46は、画素42から読み出した信号電荷を電圧信号に変換する積分アンプと、撮像領域内の画素42の列を順次切り替えて1列ずつ電圧信号を順次出力するためのマルチプレクサとからなる。読み出し動作においては、読み出し回路46に入力された電圧信号は、A/D変換器48でデジタルデータに変換されて、メモリ49にデジタルな画像データとして書き込まれる。また、メモリ49から読み出された画像データは、無線通信部37又は有線通信部50を通じてコンソール17に送信される。
一方、リセット動作においては、読み出し動作と同様に、画素42のTFT52が行単位で順次オン状態にされて、画素42から暗電荷が読み出し回路46に入力される。しかし、リセット動作においては、暗電荷は積分アンプのリセットにより破棄されて、A/D変換器48には出力されない。リセット動作は、例えば、電子カセッテ16の電源が投入されると開始し、所定時間間隔で繰り返される。そして、電子カセッテ16が撮影準備状態に入るとリセット動作はいったん停止し、その後、画素42が蓄積動作を開始する直前に1画面分のリセット動作が1回行われる。
また、撮像領域43内には、画素42の一部を利用した形態の検知センサ56が設けられている。検知センサ56は、X線の照射が開始されたことを検知するためのセンサである。検知センサ56は、画素42と同様にフォトダイオード51を有しているが、TFT52は設けられておらず、検知センサ56のフォトダイオード51と信号線54は短絡接続されている。そのため、画素42においてTFT52がオフされているかオンされているかに関わらず、検知センサ56の出力(フォトダイオード51が発生する電荷量)は信号線54に流出する。
検知センサ56の出力は、画素42と同様に、読み出し回路46、A/D変換器48によってメモリ49に読み出される。検知センサ56の出力の読み出しは、μsecのオーダの短い間隔で繰り返し行われる。1回の読み出しによって得られる検知センサ56の出力は、X線の単位時間当たりの入射線量に相当する。X線の照射が開始されると、X線の単位時間当たりの入射線量は徐々に増加するので、それに応じて検知センサ56の出力が増加する。
制御回路47は、メモリ49に検知センサ56の出力が記録される毎に、出力の読み出しを行い、検知センサ56の出力を所定の開始閾値と比較して、出力が閾値以上に達するとX線の照射が開始されたと判定して、X線の照射開始を検知する。これにより、X線発生装置11からの同期信号を受信することなく、センサーパネル41自体で、X線の照射開始検知を行うことができる。また、検知センサ56の出力は、センサーパネル41が蓄積動作中でも読み出すことが可能であるので、制御回路47は、検知センサ56の出力に基づいてX線の照射終了を検知することもできる。
センサーパネル41は、電子カセッテ16の電源が投入された後、画素42のリセット動作を開始する。その後、コンソール17からの撮影準備指示を受信すると、センサーパネル41は、リセット動作を停止して撮影準備状態(Ready)に入り、照射開始検知動作、すなわち、検知センサ56の出力の読み出しを開始する。そして、センサーパネル41は、X線の照射開始を検知した場合には、1画面分のリセット動作を行った後、画素42のTFT52をオフ状態にして、蓄積動作を開始させる。また、センサーパネル41は、照射開始を検知すると、開始検知信号を、無線通信部37を通じてコンソール17に送信する。センサーパネル41は、蓄積動作へ移行後も検知センサ56の出力の読み出しを継続する。制御回路47は、読み出した出力が所定の終了閾値以下になるとX線の照射が終了したと判定して、X線の照射終了を検知する。センサーパネル41は、照射終了を検知すると、蓄積動作を終了し、X線画像の読み出し動作を行う。なお、本例では、照射開始検知と照射終了検知において、それぞれ開始閾値と終了閾値を使用して判定を行っているが、開始閾値と終了閾値は同じ値でもよいし、異なっていてもよい。
図5に示すように、コンソール17は、ディスプレイ17A(表示部)と本体部が一体化されたノート型コンピュータをベースに、オペレーティングシステムなどの制御プログラムや、コンピュータをコンソール17として機能させるためのコンソールアプリケーションプログラム(コンソールアプリケーションと略す)17Fをインストールして構成される。コンソール17は、ディスプレイ17Aの他、入力デバイス17B、CPU17C、メモリ17D、ストレージデバイス17E、無線通信部38、有線通信部60、タイマ17Gが設けられており、これらはデータバス17Iを介して接続されている。
入力デバイス17Bは、キーボード、マウス、ディスプレイ17Aと一体となったタッチパネルなどである。ストレージデバイス17Eは、各種データを格納するデバイスであり、例えば、ハードディスクドライブで構成される。ストレージデバイス17Eは、制御プログラム、コンソールアプリケーション17F、その他の各種データが格納される。
メモリ17Dは、CPU17Cが処理を実行するためのワークメモリである。CPU17Cは、ストレージデバイス17Eに格納された制御プログラムをメモリ17Dへロードして、プログラムに従った処理を実行することにより、コンピュータの各部を統括的に制御する。無線通信部38は、AP22やWAP36に無線接続して無線通信を行うための通信インタフェースである。有線通信部60は、通信ケーブルを介して電子カセッテ16や回診車14の線源制御装置27と有線通信を行うための通信インタフェースである。無線通信部38と有線通信部60は選択的に使用することが可能である。タイマ17Gは、後述するように、電子カセッテ16とコンソール17の間の通信速度の測定に使用される。
図6に示すように、コンソールアプリケーション17Fを起動すると、コンソール17のディスプレイ17Aには、GUI(Graphical User Interface)による操作画面61が表示される。操作画面61には、操作画面61の一部を指示するためのポインタ62が表示され、ポインタ62は、コンソール17に付属するマウスや入力パッドなどの入力デバイスによって操作される。
操作画面61には、患者基本情報表示領域63、画像表示領域64、撮影オーダ表示領域66、操作部表示領域67が設けられている。撮影オーダ表示領域66は、RISサーバ25Bから受信した撮影オーダ68を表示する領域である。ポインタ62により1件の撮影オーダ68が選択されると、選択された撮影オーダ68が反転表示して未選択の撮影オーダ68と識別可能に表示される。そして、患者基本情報表示領域63には、選択された撮影オーダ68に対応する患者基本情報(患者名、患者ID、性別、年齢)が表示される。
画像表示領域64は、撮影後に電子カセッテ16から送信されたX線画像を表示する領域である。図6において、画像表示領域64は、X線画像が表示された状態で示しているが、撮影前の状態では、画像表示領域64には何も表示されない。画像表示領域64にX線画像が表示されることにより、撮影直後にX線画像を確認することができる。技師Tは、画像表示領域64のX線画像を見て撮影が適切に行われたか否かを確認する。また、撮影オーダ表示領域66において撮影済みの撮影オーダ68が選択された場合には、選択された撮影オーダ68に対応するX線画像が画像表示領域64に表示される。
操作部表示領域67には、設定ボタン71、Readyインジケータ72、通信環境表示領域73が設けられている。設定ボタン71は、撮影条件や電子カセッテ16の各種の設定を行うためのボタンである。設定ボタン71がポインタ62で選択されると、設定画面が表示される。
Readyインジケータ72は、電子カセッテ16が撮影準備状態に移行したことを表示する。コンソール17から、図示しない操作ボタンの操作により電子カセッテ16に対して撮影準備指示を送信すると、電子カセッテ16の制御回路47は、撮影準備状態への移行処理を行う。移行が完了した場合には、応答として移行完了信号をコンソール17に送信する。Readyインジケータ72は、コンソール17が移行完了信号を受信すると点灯する。技師Tは、Readyインジケータ72の点灯により電子カセッテ16が撮影準備状態にあることを確認することができる。
通信環境表示領域73は、X線撮影装置12の周囲の無線の通信環境に関する情報を表示する領域である。上述のとおり、X線撮影装置12が使用される病室には、AP22や無線端末23など、X線撮影装置12以外の他の無線通信装置や、電磁医療機器24が存在する場合がある。無線の通信環境は、AP22や無線端末23が発生する電波や、電磁医療機器24が発生する電磁ノイズを含む電磁波の影響を受けて変化する。通信環境によっては、電磁波の影響が大きく、通信遅延や通信エラーなどの通信障害が頻発して、無線通信ができない場合もある。
コンソール17は、後述するように、X線撮影装置12の通信環境を計測する機能を有している。通信環境表示領域73は、コンソール17が計測した通信環境情報を表示する。通信環境表示領域73には、通信環境情報として、例えば、無線による画像送信を実行することの可否(「無線可又は無線不可」)が表示される。
さらに、通信環境表示領域73には、通信環境情報に関する詳細情報を表示するための詳細ボタン74が設けられている。詳細ボタン74には、詳細情報が有る場合には「有り」、無い場合には「無し」というように、詳細情報の有無が表示される。詳細ボタン74の操作により、情報提示画面(図23〜28参照)を開いて、詳細情報を表示することができる。なお、情報提示画面は、詳細ボタン74の操作により表示される他、後述するように、通信環境計測を実行した際に適宜なタイミングで表示される。
図7に示すように、コンソール17のCPU17Cは、コンソールアプリケーション17Fが起動されると、メモリ17Dなどと協働することにより、ディスプレイ17A、ストレージデバイス17Eなどコンソール17の各部を制御する制御部として機能する他、通信環境計測部81、無線設定変更部82として機能する。
通信環境計測部81は、無線通信部38を使用して、X線撮影装置12の通信環境を計測する。無線通信部38は、アンテナ38A、変復調回路38B、伝送制御部38Cなどで構成されている。アンテナ38Aは、無線通信を行うための電波である搬送波(キャリア)を送受信する。変復調回路38Bは、送信するデータを搬送波に載せる変調と、アンテナ38Aで受信した搬送波からデータを取り出す復調を行う。
伝送制御部38Cは、無線LAN規格に準拠した伝送制御を行う。具体的には、TCP(Transmission Control Protocol)/IP(Internet Protocol)に準拠した通信プロトコルや、IEEE802.11nに準拠した通信プロトコルに従って伝送制御を行う。OSI(Open Systems Interconnection)参照モデルに示されるように、通信プロトコルは、階層化されており、階層が異なる複数の通信プロトコルを組み合わせて使用される。TCP/IPは、有線LANにおいても使用される通信プロトコルであり、無線LAN規格においても、上位層の通信プロトコルとして使用される。IEEE802.11nは、TCP/IPの下位層に位置する通信プロトコルであり、無線特有の通信手順を規定している。IEEE802.11nでは、2.4GHz帯又は5GHz帯の周波数帯域の電波を無線通信チャンネルとして使用することが可能である。
なお、AP22の他、電子カセッテ16の無線通信部37及びWAP36も、無線通信部38とほぼ同様の構成である。
通信環境計測部81には、パッシブ計測部86、アクティブ計測部87、判定部88が設けられている。通信環境計測部81は、パッシブ計測部86によるパッシブ計測と、アクティブ計測部87によるアクティブ計測の2種類の方法で通信環境を計測する。ここで、パッシブ計測は、無線通信部38から電波を発することなく、周囲の電磁波を受信することにより通信環境を計測する方法であり、アクティブ計測は、無線通信部38から電波を発して通信環境を計測する方法である。判定部88は、パッシブ計測部86によるパッシブ計測結果、及びアクティブ計測部87によるアクティブ計測結果に基づいて、後述する一次判定及び総合判定などの判定処理を行う。判定部88は、判定処理を行うことによって、通信障害の原因を推定することが可能である。
図8に示すように、パッシブ計測部86は、無線通信部38を通じて、X線撮影装置12の周囲に存在するAP22、無線端末23が発する電波RWや、電磁医療機器24が発する電磁ノイズNSを含む電磁波を受信して、周囲の通信環境を計測する。パッシブ計測によって計測される通信環境は、周囲の電波RWや電磁ノイズNSを含む電磁波の発生状況や強度である。本例では、受信した電磁波に基づいて、図9〜図14に示すように、電磁波の強度の周波数分布である強度スペクトル及び強度スペクトルの経時変化を測定する。強度スペクトルには、AP22や無線端末23が使用している無線通信チャンネルの情報や、電磁医療機器24が発生する電磁ノイズNSの情報が含まれる。
図9に示すように、IEEE802.11n規格において、2.4GHz帯の周波数帯域を使用する場合には、2.4GHz帯の周波数帯域が、複数の無線通信チャンネルに分割して利用される。具体的には、2.4GHz帯の周波数帯域は、約2.4GHz〜2.5GHzの範囲であり、この周波数帯域が、20MHzの帯域幅を1チャンネル分とした複数の無線通信チャンネル(1ch〜13ch)に分割されている。各無線通信チャンネルは、5MHz間隔で配置されているため、連続する4つのチャンネルの周波数は重なっている。周波数が重なっているチャンネルを同時に使用すると、電波干渉が生じるため、2.4GHz帯では、電波干渉が無く同時に使用できるチャンネルの数は、3チャンネルとなる。AP22を含むLAN21の構築に際しては、電波干渉を避けるために、1ch〜13chの中から、電波干渉が無く同時に使用できる3チャンネルを選択して、選択した3チャンネルのいずれかをAP22に割り当る場合が多い。
選択される3チャンネルは、例えば、実線で示すように、6チャンネル置きに、1ch(中心周波数が2.412GHz)、7ch(2.442GHz)、13ch(2.472GHz)である。なお、隣接する病室に設置されるAP22同士など設置間隔が狭い複数のAP22にチャンネルを割り当てる場合には、それぞれの電波の到達範囲が重なってしまうため、周波数の競合を避けるために、周波数が異なるチャンネルが割り当てられる。AP22が発信するビーコン信号も、各チャンネルの周波数に合わせて発信される。例えば、1chであれば、2.412GHz±20MHzの帯域幅内の周波数で発信され、7chであれば、2.442GHz±20MHzの帯域幅内の周波数で発信される。
また、各チャンネルの周波数帯の使用状態を調べることにより、各チャンネルの混雑度合いを把握することができる。例えば、ある瞬間における各チャンネルの通信量は、各チャンネルの周波数帯の使用率から把握することができる。通信量が少ない場合には、1チャンネル分の帯域幅の使用率は小さく、通信量が多くなるほど、帯域幅の使用率は多くなる。例えば、図10に示すように、7chが割り当てられたAP22において、AP22に接続する無線端末23が無く、AP22が無線端末23と通信を行っていない場合には、AP22からは、ビーコン信号BSのみが定期的に発信される。この状態では、1チャンネル分の20MHzの帯域幅(点線で示す)のうち、1MHz程度しか使用されない。これに対して、図11に示すように、AP22が1台以上の無線端末23と接続し、無線端末23と通信を行っている場合には、帯域幅の使用率が多くなり、最大で20MHzの帯域幅がすべて使用される。
図12において、1chは帯域幅の使用率が最大(100%)で、7chは帯域幅の使用率が50%、13chは帯域幅をビーコン信号BSの発信のみに使用している状態を示す。これはある瞬間における各チャンネルの帯域幅の使用率を示し、当然ながら、使用率は経時的に変化する。各チャンネルの帯域幅の使用率の経時プロファイルを調べることにより、各チャンネルの通信量の経時的な推移や、ある測定期間における平均的な通信量を把握することができる。平均的な通信量が高いチャンネルほど、混雑度合いが高く、反対に平均的な通信量が低いチャンネルほど、混雑度合いが低いと言える。
また、2.4GHz帯の周波数帯域は、ISM(Industry-Science-Medical:産業科学医療用)バンドとも呼ばれ、電磁医療機器24などにも解放されている周波数帯域であるため、電磁医療機器24が発生する電磁ノイズとの干渉が生じる。電磁医療機器24が発生する電磁ノイズは、機器の種類によって様々なものがある。
例えば、図13に示す電磁ノイズNS1は、無線通信チャンネルの1ch、7ch、13chの全域に領域が広がっており、特に、1ch、7chと重なる領域で強度が高い。また、電磁ノイズNS1は、強度が高い領域が経時的に変動する変動幅FBを有している。このような電磁ノイズNS1が発生している状況では、1ch、7ch、13chの3つの無線通信チャンネルをすべて使用することはできない。
図14に示す電磁ノイズNS2は、7chと重なる領域で強度が強い。また、電磁ノイズNS2は、強度が高い領域は一定であり、経時的な変動はない。こうした電磁ノイズNS2が発生している状況においては、電波干渉が懸念される7chを避けて、1chや13chを選択すれば、無線通信チャンネルを使用することが可能である。
図15に示すように、パッシブ計測部86は、起動中、第1トリガー信号を待機しており(ステップ(S)101)、第1トリガー信号を受信すると(S101でY)、パッシブ計測を開始する。第1トリガー信号は、例えば、回診車14が発生するロック解除信号(図3参照)である。CPU17Cは、無線通信部38を通じて回診車14からロック解除信号を受信すると、パッシブ計測部86を作動させて、パッシブ計測を開始させる。
回診車14は、走行中においてはロック機構33がロックされており、回診先の病室に入室して回診車14が停止した後に、ロック機構33のロックが解除される。X線撮影装置12は回診車14に積載された状態で病室に入室する。そして、撮影前に、患者Pの撮影部位に対して、X線源26や電子カセッテ16のポジショニング(位置合わせ)が行われる。ポジショニングを行うためには、ロック機構33のロックを解除しなければならない。こうした撮影の際のワークフローを考慮すると、ロック解除信号をコンソール17が受信したタイミングでパッシブ計測を開始すれば、X線撮影装置12が使用される撮影場所において、1回の撮影が開始される前の段階でパッシブ計測を開始することができる。
パッシブ計測部86は、電波RWや電磁ノイズNSを受信した場合には(S102でY)、図9〜図14に示した、電波RWや電磁ノイズNSの強度スペクトルを測定する(S103)。パッシブ計測は、強度スペクトルの経時変化を測定するために、所定時間継続される。そして、測定した強度スペクトルや、強度スペクトルの経時変化を表す経時プロファイルをパッシブ計測結果としてストレージデバイス17Eに記録する(S104)。パッシブ計測結果は、ストレージデバイス17E内に計測結果91(図7参照)として格納される。
図16に示すように、判定部88は、ストレージデバイス17Eから読み出したパッシブ計測結果を読み出して、一次判定を行う。一次判定においては、まず、判定部88は、強度スペクトルに基づいて使用可能な無線通信チャンネルの有無を判定する(S111)。ある時点における強度スペクトルを調べれば、その時点で使用されていない無線通信チャンネルの有無や、各無線通信チャンネルのその時点における通信量(帯域幅の使用率)が分かる。また、強度スペクトルの経時プロファイルを調べれば、各無線通信チャンネルがどの程度使用されているか、すなわち、各無線通信チャンネルの混雑度合いが分かる。上述のとおり、混雑度合いは、パッシブ計測の測定期間における、各無線通信チャンネルの平均的な通信量により把握することができる。以下、単に通信量という場合は、パッシブ計測の測定期間における、無線通信チャンネルの平均的な通信量を意味する。
1つの無線通信チャンネルを占有できる最大時間は規格で規定されており、複数台の無線端末23が1台のAP22に接続して、同じ周波数の無線通信チャンネルを使用する場合には、無線通信チャンネルは各無線端末23によって時分割で共有される。そのため、無線通信チャンネルの通信量が多くても、その無線通信チャンネルを使用することは可能である。しかし、X線撮影装置12以外の他の無線端末23の通信量が多いと、X線撮影装置12が無線通信チャンネルを占有できる時間は少なくなるため、通信速度は低下する。ここで、通信速度は、単位時間当たりに伝送可能なデータ量であり、スループットとも呼ばれる。送信するデータサイズが小さければ通信速度の低下により通信遅延が生じても影響は少ないが、X線画像のようにデータサイズが大きい場合には、通信速度の低下が画像送信時間に与える影響は大きい。
そのため、判定部88は、1つの無線通信チャンネルの通信量が所定値TR0以上ある場合には、画像送信に許容される時間以上の時間が掛かると予想されるため、その無線通信チャンネルは使用できないと判定する。また、例えば、図9に示した3つの無線通信チャンネルのうち、AP22が1chを使用している場合には、1chを避けて、3chや7chを選択することが可能である。しかし、病室に複数台のAP22が設置されている場合や、隣接する病室のAP22の電波が到達するような場合がある。この場合においては、選択可能なすべての無線通信チャンネルの通信量が所定値TR0以上と判定される場合もある。
選択可能なすべての無線通信チャンネルの通信量が所定値TR0以上の場合には、判定部88は、使用可能な無線通信チャンネルが無いと判定する(S111でN)。この場合には、画像送信に時間が掛かるため、無線使用不可と判定する(S112)。また、使用可能な無線通信チャンネルが無いと判定された場合には、アクティブ計測を行っても、通信量が多く満足な計測結果は得られないので、判定部88は、その時点で一次判定を終了する。一次判定結果は、ストレージデバイス17Eに判定結果92(図7参照)として記録される(S118)。
判定部88は、使用可能な無線通信チャンネルが有ると判定した場合には(S111でY)、次に、X線撮影装置12の周囲に、特定医療機器30(図1参照)が存在するか否かを判定する(S113)。特定医療機器30は、患者Pの診断や治療に使用されるので、誤作動が生じると診断や治療に影響を及ぼす。そのため、X線撮影装置12が発する電波によって特定医療機器30が誤作動するおそれがある場合には、X線撮影装置12による無線の使用を控える必要がある。
ストレージデバイス17Eには、判定部88が判定の際に参照する参照データ93が格納されている。参照データ93には、特定医療機器30が発生する電磁波の波形データが含まれている。S113において、判定部88は、パッシブ計測により測定された強度スペクトルと、波形データとを比較照合することにより、特定医療機器30が周囲に存在するか否かを判定する。特定医療機器30が有ると判定した場合には(S113でY)、無線使用不可と判定する(S112)。この場合には、電波を発するアクティブ計測も特定医療機器30に対して影響を与えるおそれがあるため、アクティブ計測の実行も不可と判定する。特定医療機器30が有ると判定した場合には、その時点で、判定部88は、一次判定結果を記録して(S118)、一次判定を終了する。
判定部88は、特定医療機器30が存在しないと判定した場合には(S113でN)、使用可能な無線通信チャンネルと重なる周波数帯域において、電磁ノイズNSのレベルが閾値Th0以上か否かを判定する(S114)。閾値Th0としては、画像送信に与える影響が大きく許容することができない、電磁ノイズNSの限界値が設定される。電磁ノイズNSが、例えば、図13に示した電磁ノイズNS1のような場合には、すべての無線通信チャンネルの周波数帯域において強度が高く、閾値Th0以上となる。また、図14に示した電磁ノイズNS2の場合には、7chの周波数帯域においては強度が閾値Th0以上となるが、1ch、3chでは、強度は閾値Th0未満となる。
判定部88は、使用可能な無線通信チャンネルと干渉する電磁ノイズNSが閾値Th0以上と判定した場合には(S114でY)、無線使用不可と判定する(S112)。この場合も、アクティブ計測を行える環境ではないため、判定部88は、アクティブ計測の実行も不可と判定し、一次判定結果を記録して(S118)、一次判定を終了する。
判定部88は、電磁ノイズNSが閾値Th0未満と判定した場合には(S114でN)、アクティブ計測の実行を可と判定する(S115)。そして、判定部88は、強度スペクトルに基づいて、使用可能な無線通信チャンネルの電波強度を調べて、電波強度に基づいて通信速度の推測値を算出する(S116)。最後に、判定部88は、画像送信の際の無線設定変更の要否を判定し(S117)、一次判定結果を記録して(S118)、一次判定を終了する。
図7において、無線設定変更部82は、無線通信部38の無線設定を変更する。加えて、機能ユニット18や電子カセッテ16に対しても変更指令を送信して、機能ユニット18や電子カセッテ16の無線設定を変更させる。無線設定は、無線通信条件に関する設定であり、無線通信条件としては、無線通信チャンネルの周波数、データ送信の際のパケットサイズ、タイムアウト値などがある。例えば、初期設定でWAP36に設定されている無線通信チャンネルの周波数と、一次判定において使用可能と判定された無線通信チャンネルの周波数が異なっていた場合には、無線通信チャンネルの周波数が変更される。
また、X線画像などのデータ送信を行う際には、X線画像のデータはパケットと呼ばれる単位に分割されて送信される。パケットサイズは、1つのパケットのサイズであり、パケットサイズが大きいほど、パケットに収容可能なデータのサイズが大きくなる。パケットは、送信元において誤り検出符号がセットされて、送信先に送られる。送信先では、パケットを受信した際に、誤り検出符号に基づいてデータにビットエラーが無いかを確認する。誤り検出符号は、例えば、CRC(Cyclic Redundancy Check)符号や、FCS(Frame Check Sequence)である。パケットサイズが大きいと、電波干渉の影響によるビットエラーが生じやすい。ビットエラーが生じると、そのパケットについては再送処理が必要になるため、ビットエラーは通信遅延の原因となる。そのため、無線設定変更部82は、例えば、電磁ノイズNSが閾値Th0未満であっても、電磁ノイズNSが比較的大きな場合には、X線画像の送信時のパケットサイズを小さくする。これにより、ビットエラーを減らすことができる。
タイムアウト値は、パケットの送信元が、パケットの再送が必要か否かを判断するための許容時間である。パケットの送信元は、パケットを送信後、送信先からの受信確認応答を受信するまでの時間をカウントする。タイムアウト値を超えても受信確認応答が無い場合には、パケットの送信元は、パケットの再送処理を行う。通信量が多い場合には、通信遅延が起きやすくなるため、受信確認応答が送信されるまでの時間が延びる。そのため、無線設定変更部82は、例えば、使用可能な無線通信チャンネルの通信量が比較的多い場合には、通信遅延が生じることを見越して、タイムアウト値を長く設定する。これにより、パケットの再送処理により、画像送信時間が長くなるのを防止することができる。
図17に示すように、一次判定において、アクティブ計測が可と判定された場合には、アクティブ計測が実行される。アクティブ計測によって計測される通信環境は、通信速度や、ビットエラーによって生じる通信エラーの発生状況である。上述のとおり、通信速度は、単位時間当たりに伝送可能なデータ量である。通信エラーの発生状況は、例えば通信エラーの発生回数や発生率であり、単位時間に通信エラーが何回発生するか、あるいは、データ量に対してどの程度の割合でエラーが発生するかという、通信エラーの発生頻度を表す情報である。通信エラーの発生回数や発生率が多いほど、通信速度は低下するので、通信エラーの発生状況は、通信速度を決定する要因となる。
まず、本例においては、通信速度のみを測定する例で説明する。アクティブ計測部87は、無線通信部38と電子カセッテ16との間でテストデータの通信を行わせて通信速度を実測する。アクティブ計測は、X線画像が送信されるのと同じ状態(無線通信条件に関する無線設定や、電子カセッテ16とコンソール17の位置関係など)で行われる。テストデータの通信経路は、機能ユニット18内のWAP36経由であり、テストデータの送信方向は、電子カセッテ16からコンソール17である。コンソール17はテストデータに対する応答を電子カセッテ16に送信する。アクティブ計測部87は、無線通信部38を通じて、電子カセッテ16に対してテストデータの送信開始を指令する。そして、タイマ17Gを作動させて、テストデータの受信が完了するまでの時間を測定する。テストデータのサイズは予め決められているので、送信開始の指令から受信が完了するまでの時間が分かれば、通信速度の実測値を求めることができる。
通信速度は、電波干渉の影響を受ける他、電子カセッテ16の無線通信部37が発する電波の指向性と関係して、電子カセッテ16と、WAP36を内蔵する機能ユニット18及びコンソール17との相対的な位置関係の影響も受ける。さらに、X線撮影装置12の周囲に存在する電波を遮蔽する遮蔽物の影響も受ける。例えば、病室にある患者Pの荷物が遮蔽性を有する場合、荷物が、電子カセッテ16、機能ユニット18及びコンソール17の間に存在すると、その影響を受けて通信速度が変動する場合がある。また、X線撮影装置12の周囲に存在する、病室の壁や、病室に設置されているテレビ台やロッカーなどの備品が遮蔽性を有する場合には、壁の影響を受けて通信速度が変動する場合がある。
例えば、図18に示す病室R11の形状のように平面形状が略L字形に屈曲しているような場合には、コンクリート製の壁Wや備品Bが電波の遮蔽物となり、その影響を受けて、電子カセッテ16とコンソール17間の通信速度が著しく低下する場合がある。図18において、病室R11は入り口付近が狭く、ベッド20が配置される奥が広がっている。このような場合には、備品Bがあるため、コンソール17及び機能ユニット18を積載した回診車14を、電子カセッテ16がポジショニングされているベッド20の傍まで進入させることができず、回診車14を入り口付近に止めざるを得ない場合もある。
図18において点線で示すように、電子カセッテ16が発する電波の伝搬経路は、直進して機能ユニット18及びコンソール17に到達する直接伝搬経路の他、壁Wや備品Bなどの遮蔽物での反射を繰り返して到達する反射伝搬経路など複数の経路がある。このように距離が異なる複数の経路を経て到達する電波間では、位相シフトが生じる。位相シフトが生じると電波同士で干渉を引き起こし、受信強度が大きく変動する現象が発生する。こうした現象は、マルチパスフェージング(MPP:Multi-Pass Phasing)と呼ばれる。
図18に示すように屈曲している場合には、方形の病室と比較して、壁面の数が多く、見通しが効かない場所が多くなるため、伝搬経路が増加する。また、×印で示したように、電子カセッテ16から機能ユニット18内のWAP36に直進する直接伝搬経路が遮断されてしまう場合もある。これにより、マルチパスフェージングの影響も大きくなると考えられる。マルチパスフェージングが起こると、通信エラーが生じるため、通信速度は低下する。
図19に示すように、アクティブ計測部87は、第2トリガー信号を待機しており(ステップ(S)201)、第2トリガー信号を受信すると(S201でY)、アクティブ計測を開始する。第2トリガー信号は、例えば、コンソール17において撮影条件が設定された際にCPU17Cが発する信号である。通信速度は、電子カセッテ16、WAP36、コンソール17の相対的な位置関係や、遮蔽物の影響を受けるため、アクティブ計測は、実際に画像送信が行われる状態で行われることが好ましい。
撮影条件の設定は、一般的に、患者Pの撮影部位に対して電子カセッテ16をポジショニングした後に行われる場合が多い。そのため、撮影条件設定のタイミングでアクティブ計測を開始すれば、実際の画像送信が行われる状態の通信速度を測定することができる。
アクティブ計測部87は、第2トリガー信号が入力されると、電子カセッテ16にテストデータの送信を開始させて(S202)、通信速度を実測する(S203)。そして、実測した通信速度をアクティブ計測結果として記録する(S204)。アクティブ計測結果は、パッシブ計測結果と同様に、ストレージデバイス17E内に計測結果91として格納される。
図20に示すように、判定部88は、アクティブ計測が終了すると、パッシブ計測結果、一次判定結果及びアクティブ計測結果に基づいて、それらを総合的に考慮した総合判定を行う。総合判定において、判定部88は、まず、パッシブ計測で算出した通信速度の推測値と、アクティブ計測で測定した通信速度の実測値の速度差を求めて、速度差が許容範囲内か否かを判定する(S211)。推測値は、周囲の電波や電磁ノイズの影響を反映した値であるので、電磁ノイズの影響が無ければ良好な値を示す。実測値は、電磁ノイズに加えて、X線撮影装置12の内部の相対的な位置関係及び遮蔽物の影響を反映している。電磁ノイズの影響が無い場合でも、相対的な位置関係が不適切であったり、遮蔽物の影響がある場合には、実測値は、推測値に対して大きく落ち込む。一方、相対的な位置関係が適切で、かつ、遮蔽物の影響が無ければ、実測値は推測値とほぼ同等の値を示すと考えられる。
そのため、判定部88は、推測値と実測値の速度差が許容範囲内にある場合(S211でY)には、周囲の通信環境に通信障害の原因は無いと判定する(S212)。一方、判定部88は、推測値に対して実測値が低く、その速度差が許容範囲に無い場合(S211でN)には、電磁ノイズNSのレベルを調べる。
電磁ノイズNSは、一次判定において、閾値Th0未満と判定されているが、総合判定においては、電磁ノイズNSが閾値Th0よりも小さい閾値Th1未満であるか否かが判定される(S213)。これは、速度差の原因が電磁ノイズNSの影響によるものか否かを判定するためである。判定部88は、電磁ノイズNSが閾値Th1以上であると判定した場合(S213でN)には、速度差が生じる通信障害の原因が電磁ノイズNSなどのノイズ源であると判定する(S214)。
判定部88は、電磁ノイズNSが閾値Th1未満と判定した場合(S213でY)には、速度差が生じる通信障害の原因は、電磁ノイズNSではなく、X線撮影装置12の位置関係あるいは遮蔽物(遮蔽物等)であると判定する(S215)。判定部88は、通信障害の原因の判定が終了した後、実測した通信速度に基づいて、X線画像の画像送信時間の予測値を算出する(S216)。X線画像のおおよそのデータサイズは分かるため、通信速度が分かれば、画像送信時間の予測値を算出することができる。
判定部88は、X線画像の無線送信の可否について最終判定を行う(S217)。遮蔽物やノイズ源の影響がある場合でも、通信速度が所定値以上であれば、画像の無線送信を可と判定し、所定値未満であれば、無線送信を不可と判定する。判定部88は、通信障害の判定や無線送信の可否を含めた判定結果を総合判定結果として記録する(S218)。総合判定結果は、一次判定結果と同様にストレージデバイス17E内に判定結果92として格納される。
上記構成による作用について、図21に示すフローチャート、図22に示す判定パターン例、図23〜28に示す判定パターンに応じた情報提示画面を参照しながら、説明する。
図21において、技師Tは、回診撮影を行う場合には、駐機場15(図1参照)において、電子カセッテ16、コンソール17、機能ユニット18を含むX線撮影装置12を回診車14に積載する。そして、コンソール17を起動して、コンソール17とLANコンセント15aを通信ケーブルで接続する。コンソール17から、LANコンセント15a及びLAN21経由でRISサーバ25Bにアクセスして撮影オーダを取得する。
技師Tは、走行中にX線源26が不用意に変位しないように、回診車14の走行を開始させる前にロック部材34(図2参照)の位置を見て、ロック機構33のロックが掛かっていることを確認する。ロックが掛かっていない場合にはロック部材34を操作してロックする(S1010)。この後、回診車14を走行させて駐機場15から病棟19に向かう。
技師Tは、回診先の病室R11に到着すると、回診車14とともに病室R11に入室する(S1020)。入室後、患者Pに対してX線源26をポジショニングできる位置に回診車14を停止させる(S1030)。この後、撮影準備が開始される。まず、回診車14のロック機構33のロックが解除される(S1040)。ロックが解除されると、ロック機構33はロック解除信号を発生し、ロック解除信号は回診車14内の線源制御装置27に入力される。ロック解除信号は、線源制御装置27の有線通信部29を介してコンソール17に送信される(図3参照)。
コンソール17において、CPU17C(図7参照)は、ロック解除信号を取得すると、これを第1トリガー信号として、パッシブ計測部86に入力する。パッシブ計測部86は、第1トリガー信号を受信すると、図15に示す手順でパッシブ計測を開始する(S1050)。パッシブ計測では、X線撮影装置12の周囲に存在する、AP22、無線端末23、電磁医療機器24が発生する電波RWや電磁ノイズNSを含む電磁波の強度スペクトルが測定される。判定部88は、パッシブ計測が終了すると、パッシブ計測結果に基づいて、図16に示す手順で一次判定を行う(S1060)。
図22に示すように、一次判定においては、判定部88は、パッシブ計測結果に基づいて、使用可能チャンネルの有無、無線の電波が悪影響を及ぼす特定医療機器30の有無、電磁ノイズNSのレベル、アクティブ計測の可否を判定する。パターン1のように、周囲のAP22や無線端末23の通信量が多く、選択可能なすべての無線通信チャンネルの通信量が所定値TR0以上で、すべて使用できない場合には、判定部88は、使用可能チャンネルが無いと判定して、一次判定を終了する。この場合には、通信量が多いため無線使用及びアクティブ計測は不可と判定される。
パターン2のように、使用可能チャンネルは有るが、特定医療機器30が周囲に存在する場合には、特定医療機器30への影響を考慮して、判定部88は、無線使用及びアクティブ計測を不可と判定し、一次判定を終了する。パターン3のように、使用可能チャンネルも有り、特定医療機器30も存在しない場合には、使用可能チャンネルに影響する電磁ノイズNSのレベルを調べる。電磁ノイズNSが閾値Th0以上の場合には、使用可能チャンネルへの影響が大きいため、判定部88は、無線使用及びアクティブ計測を不可と判定し、一次判定を終了する。判定部88は、一次判定を終了する際に一次判定結果をストレージデバイス17Eに記録する。
図21において、一次判定でアクティブ計測が不可と判定された場合(S1070でN)には、CPU17Cは、各パターンに応じて、図23〜図25に示す情報提示画面101〜103をディスプレイ17Aに出力する(S1080)。情報提示画面101〜103には、パッシブ計測及び一次判定により判明した周囲の通信環境の状況、通信障害の原因、画像送信時間への影響、及びそうした状況に応じた対処案を含む通信環境情報が表示される。
使用可能チャンネルが無いパターン1の場合には、図23に示す情報提示画面101が表示される。情報提示画面101には、通信環境の状況、通信障害の原因、画像送信時間への影響として、使用可能なチャンネルが無いこと、通信が混雑しているため画像送信に時間が掛かるなどのメッセージが表示される。また、それに対する対処案として、しばらく待機して時間を置いてから無線を使用するか、あるいは、無線を使わずに有線通信の使用を推奨するなどのメッセージが表示される。
特定医療機器30が有るパターン2の場合には、図24に示す情報提示画面102が表示される。情報提示画面102には、通信環境の状況として、無線の電波が悪影響を及ぼす医療機器が周囲に存在すること、その対処案として、無線の使用を控えて有線通信の使用を推奨するなどのメッセージが表示される。
電磁ノイズNSの影響が大きいパターン3の場合には、図25に示す情報提示画面103が表示される。情報提示画面103には、通信環境の状況、通信障害の原因、画像送信時間への影響として、無線通信に影響を及ぼすノイズ源があること、通信障害が頻発するおそれがあるため画像送信に時間が掛かるなどのメッセージが表示される。また、それに対する対処案として、しばらく待機して時間を置いてから無線を使用するか、あるいは、無線を使わずに有線通信の使用を推奨するなどのメッセージが表示される。
技師Tは、情報提示画面101〜103により、周囲の通信環境が無線に適していないことや、その理由を把握することができる。この場合には、図21に示すように、技師Tは、無線の使用をあきらめて、通信ケーブルを使用する有線通信への変更を行う(S1090)。そして、患者Pの撮影部位に対して、電子カセッテ16とX線源26のポジショニングを行い(S1110)、コンソール17で撮影条件を設定する(S1120)。
一方、S1070において、無線使用及びアクティブ計測が可と判定された場合には(S1070でY)、無線設定変更部82は、パッシブ計測結果に基づいて、必要に応じて、無線通信チャンネルの周波数、パケットサイズ、タイムアウト値などの無線設定を変更する(S1100)。この設定は、コンソール17からの変更指令により、機能ユニット18や電子カセッテ16に対しても行われる。このようにパッシブ計測結果に応じて無線設定を変更することにより、通信環境に応じた適切な無線設定をすることができる。
ポジショニング(S1110)の後、撮影条件の設定が行われると(S1120)、無線使用及びアクティブ計測が可と判定された場合には、CPU17Cは、アクティブ計測部87に対して第2トリガー信号を入力する。アクティブ計測部87は、第2トリガー信号を受信すると、図19に示す手順でアクティブ計測を実行する(S1130)。
アクティブ計測では、電子カセッテ16からコンソール17へテストデータが送信されて、通信速度が実測される。アクティブ計測部87は、通信速度の実測値をアクティブ計測結果として記録する。アクティブ計測は、ポジショニング後に行われるため、実際にX線画像が送信される状態で行われる。そのため、測定される通信速度の信頼性は高い。判定部88は、アクティブ計測終了後、パッシブ計測結果、一次判定結果及びアクティブ計測結果に基づいて、図20に示す手順で総合判定を行う(S1140)。
図22に示すように、総合判定においては、判定部88は、通信障害の原因、及び最終的な画像の無線送信の可否を判定する。パターン4のように、電磁ノイズNSが、閾値Th0未満ではあるが閾値Th1以上の場合(Th1≦NS<Th0)には、電磁ノイズNSが比較的大きいことが原因で、通信速度の推測値と実測値の速度差が許容範囲を超えていると判定する。この場合には、速度差が生じる原因はノイズ源であると判定する。
パターン5のように、推測値と実測値の速度差が無い場合には、通信障害の原因は無いと判定する。パターン6のように、電磁ノイズNSが小さいにも関わらず(NS<Th1<Th0)、推測値と実測値の速度差が有る場合には、X線撮影装置12の位置関係か遮蔽物(遮蔽物等)が原因であると判定される。パターン4〜6の場合には、最終的に、通信速度が所定値以上か否かによって、画像の無線送信可否を最終的に判定する。判定部88は、通信速度の実測値に基づく、画像送信時間の予測値(予測送信時間)を算出して、総合判定を終了する。
総合判定が終了した場合には、CPU17Cは、各パターン4〜6に応じて、図26〜図28に示す情報提示画面104〜106をディスプレイ17Aに出力する。情報提示画面104〜106には、総合判定により判明した周囲の通信環境の状況、通信障害の原因、画像送信時間への影響、及びそうした状況に応じた対処案を含む通信環境情報が表示される。
図21において、通信速度が所定値以上であれば(S1150でY)、その旨の情報提示が行われる(S1160)。電磁ノイズNSの影響を受けるパターン4において、通信速度が所定値以上の場合には、図26に示す情報提示画面104が表示される。情報提示画面104には、通信環境の状況、通信障害の原因、画像送信時間への影響として、無線通信に影響するノイズ源があるため通信速度が低下していること、画像送信に時間が掛かること、及び画像送信時間の予測値などのメッセージが表示される。
また、パターン4において、通信速度が所定値未満の場合には(S1150でN)、パターン3と同様に図25に示す情報提示画面103が表示されて(S1080)、有線通信が推奨される(S1090)。
通信障害の原因が無いパターン5の場合には、通信速度は所定値以上であるため(S1150でY)、図27に示す情報提示画面105が表示される(S1160)。情報提示画面105には、通信環境の状況として、無線通信環境は良好であること、及び画像送信時間の予測値などのメッセージが表示される。
X線撮影装置12の位置関係や遮蔽物が通信障害の原因となるパターン6において、通信速度が所定値未満の場合には(S1150でN)、図28に示す情報提示画面106が表示される(S1080)。情報提示画面106には、通信環境の状況、通信障害の原因、画像送信時間への影響として、電子カセッテ16に対する、コンソール17及び機能ユニット18の位置関係が不適切であるか、あるいは、遮蔽物の影響により通信障害が発生していること、そのために通信速度が低下しており、画像送信に時間が掛かること、さらに画像送信時間の予測値などのメッセージが表示される。また、それに対する対処案として、無線を使わずに有線通信の使用を推奨するメッセージが表示される。この場合には、技師Tは、無線通信をあきらめて、有線通信へ変更する(S1090)。
また、パターン6において、通信速度が所定値以上の場合には(S1150でY)、通信速度が低下しているため、画像送信に多少時間が掛かること、及び画像送信時間の予測値などを表示する情報提示画面(図示せず)が表示される。
技師Tは、情報提示画面で周囲の通信環境の状況や通信障害の原因を把握して、必要に応じて有線通信に変更を行う。その後、コンソール17から電子カセッテ16に指示を与えて撮影準備状態(Ready)に移行させる(S1170)。電子カセッテ16は、撮影準備状態(Ready)に移行すると、検知センサ56(図4参照)によって照射開始検知動作を開始する。
技師Tは、電子カセッテ16が撮影準備状態(Ready)に移行したことを、操作画面61のReadyインジケータ72で確認する。その後、患者Pの体勢が適切であることを確認しながら適切なタイミングで、照射スイッチ28を操作する(S1180)。照射スイッチ28が操作されると、X線源26はX線の照射を開始する。X線の照射が開始されると、電子カセッテ16は検知センサ56によってX線の照射開始を検知する。電子カセッテ16は、照射開始を検知すると、センサーパネル41が蓄積動作に移行して、画像検出を行う(S1190)。
X線源26は、照射時間が経過するとX線源26は照射を終了する。検知センサ56によってX線の照射終了が検知されると、電子カセッテ16は、蓄積動作を終了して、X線画像の読み出しを行う。読み出されたX線画像はメモリ49に記録される。
X線画像は、メモリ49から読み出されて、無線通信部37又は有線通信部50を通じて、コンソール17へ送信される(S1200)。コンソール17は、無線通信部38又は有線通信部60でX線画像を受信する。技師Tは、コンソール17で受信したX線画像を確認する(S1210)。これにより、1回の撮影が終了する。
撮影オーダにおいて複数枚の撮影が指示されている場合には、撮影オーダの内容に応じて、ポジショニングから上記手順を繰り返す。ポジショニング後、再び撮影条件が設定されるため、アクティブ計測が実行される。ポジショニングによってX線撮影装置12の位置関係や遮蔽物との位置関係も変化する。ポジショニング後にアクティブ計測を行うことにより、通信環境に関する適切な情報を提示することができる。
1人の患者Pの撮影が終了した場合には、技師Tは、電子カセッテ16を回診車14に積載し、回診車14のロック機構33をロックして、次の回診先の病室に向かう。次の回診先においては、ロック機構33のロックを解除されたタイミングでパッシブ計測から上記手順が繰り返される。
このように、回診撮影のワークフローにおいて、回診先の病室に入室後に行われるロック解除操作のタイミングに合わせて、通信環境の計測を行うため、回診先の病室に応じた通信環境を的確に計測することができる。
以上説明したとおり、本発明は、パッシブ計測とアクティブ計測という2種類の方法によって通信環境を計測している。パッシブ計測は、周囲に発生する電磁波を受信して、電磁波の強度スペクトルを測定し、アクティブ計測は、データ通信を行って通信速度を実測するというように両者は計測方法及び計測によって得られる情報が異なる。こうした2種類の方法で通信環境を計測することにより、通信速度のみを測定して通信障害の原因を推定する従来技術と比較して、通信障害の原因を的確に推定することができる。
特に、上述した遮蔽物に起因して発生するマルチパスフェージングのような通信障害は、パッシブ計測及びアクティブ計測の一方のみでは推定することができない。具体的には、マルチパスフェージングは、周囲に電磁ノイズが無い場合でも生じるため、パッシブ計測により電磁波の強度を測定するだけでは、マルチパスフェージングが発生しているか否かを推定することはできない。一方、アクティブ計測は、通信速度を測定できるが、通信速度の低下の原因が、マルチパスフェージングによるものか電磁ノイズによるものかを判定することはできない。電磁ノイズを測定できるパッシブ計測と通信速度を測定するアクティブ計測を組み合わせることにより、通信障害の原因が、マルチパスフェージングであることを高い確度で推定することができる。
また、パッシブ計測とアクティブ計測を組み合わせることにより、従来のように複数回の撮影によって取得される通信履歴に基づいて通信障害の原因を把握する技術と比較して、通信障害の原因を迅速に把握することができる。パッシブ計測とアクティブ計測の両方の計測さえ行えば、撮影を行わなくても、通信障害の原因を把握することが可能である。そのため、上記実施形態で説明したとおり、パッシブ計測とアクティブ計測を撮影開始前に実行すれば、撮影開始前の段階で通信障害の原因を把握することができる。これにより、無線が使用できない状況では有線に変更するなど撮影開始前に適切な対処を行うことができる。
また、通信障害を回避して適切な対処を行うことの副次的な効果として、電子カセッテ16のバッテリの消費を抑えるという効果も期待できる。通信障害が発生する状況で無線通信を行うと、無駄に電力が消費されるからである。また、所定値以上の通信速度を確保できる通信環境でのみ無線の使用を可とするため、画像送信時間も短くなる。画像送信時間が短くなれば、その分、バッテリの消費が抑えられる。
また、上記実施形態では、無線を使用不可とした場合の対処案として、有線通信を推奨する例で説明したが、有線通信以外の対処案を提示してもよい。例えば、USB(Universal Serial Bus)メモリなどの携帯型のメモリデバイスを使用することを対処案として提示してもよい。この場合には、電子カセッテ16にメモリデバイスを接続するためのコネクタを設ける。電子カセッテ16は、検出したX線画像を外部に送信せずに、メモリ49に格納した状態にしておく。そして、メモリデバイスが接続された場合には、メモリ49からメモリデバイスにX線画像のデータを出力する。コンソール17には、メモリデバイス経由でX線画像が入力される。
また、パッシブ計測とアクティブ計測の組み合わせによって、通信環境の状況、通信障害の原因、適切な対処案などの詳細な情報を得ることができる。これらの情報を提示することにより、技師Tは円滑に作業を進めることができる。
上述のとおり、技師Tは、多い日には50枚以上の撮影を1人でこなさなければならない。厳しい時間的な制約の中で、通信障害が発生すると、心理的な負担も大きい。撮影開始前の段階で通信障害の原因を迅速かつ的確に把握できれば、技師Tの心理的負担を軽減することができる。また、通信障害が発生している場合でも、画像送信に時間が掛かることが予測できるので、原因を把握できる分、心理的な負担も少ない。
また、上記実施形態では、パッシブ計測結果とアクティブ計測結果に基づいて、判定部88が判定を行う例で説明しているが、判定を行わずに、パッシブ計測結果とアクティブ計測結果をそのままディスプレイ17Aに出力して提示してもよい。通信技術に詳しい技師Tであれば、パッシブ計測結果とアクティブ計測結果を提示すれば、通信障害の原因についておおよその検討を付けることも可能である。
また、上記実施形態では、パッシブ計測において、複数の無線通信チャンネルの周波数帯域にわたる、電磁波の強度スペクトルや強度スペクトルの経時プロファイルを測定する例で説明したが、スペクトルの形態ではなく、例えば、1つの無線通信チャンネルの周波数帯域と重なる電磁ノイズの強度や強度の経時プロファイルを測定するというように、特定の周波数帯域のみを対象として、強度や経時プロファイルを測定してもよい。
また、上記実施形態の情報提示画面は一例であり、提示する情報の項目を増やしたり、減らしたりしてもよい。例えば、周囲にあるAP22の台数を表示してもよい。図10、12で示したとおり、AP22が発するビーコン信号は、割り当てられた無線通信チャンネルの周波数で発信される。ビーコン信号の数をカウントすれば、AP22の台数を把握することができる。また、同じ周波数の無線通信チャンネルが割り当てられた複数台のAP22が存在する場合には、同じ周波数のビーコン信号が複数個発信される。その場合には、ビーコン信号に含まれるネットワーク識別子を判別することにより、同じ周波数のビーコン信号が異なるAP22から発信されているものか、同じAP22から発信されているものかを確認することができる。ネットワーク識別子は、SSID(Service Set Identifier)やESSID(Extended Service Set Identifier)などであり、こうしたネットワーク識別子はAP22毎に設定されている。ネットワーク識別子の判別により、複数台のAP22で周波数の競合が生じている場合でも、AP22の台数を正確に判定することができる。
また、選択可能な複数の無線通信チャンネルの通信量をチャンネル毎に提示してもよい。この場合において、使用可能な無線通信チャンネルが複数有る場合には、技師Tがマニュアル操作によって、使用する無線通信チャンネルを選択できるようにしてもよい。また、選択可能な無線通信チャンネルに加えて、選択不可の無線通信チャンネルの通信量を提示してもよい。
また、上記実施形態のように、アクティブ計測の前にパッシブ計測を実行して、特定医療機器30が存在するか否かを判定すれば、無線の使用を控えることができるので、特定医療機器30に与える影響を軽減できるというメリットがある。なお、特定医療機器30への影響を考慮する必要が無いのであれば、アクティブ計測を先に実行してもよい。もちろん、パッシブ計測を先に実行した方が、上記メリットがあるため、好ましい。
また、上記実施形態で示した一次判定及び総合判定の手順は一例であり、他の手順で実行してもよい。特定医療機器30への影響を考慮する必要が無いのであれば、一次判定を行わずに、パッシブ計測結果とアクティブ計測結果を取得した後にすべての判定を行ってもよい。
図29に示す判定パターン例は、図22に示す判定パターン例の変形例である。図22に示す判定パターン例では、一次判定において、通信量に基づいて使用可能チャンネルの有無を判定していたが、図29に示すパターン例では、通信量に基づく使用可能チャンネルの有無の判定を、一次判定では行わずに、総合判定で行う。この場合でも、図22に示すパターン2及び3に対応する、図29に示すパターン2A、3Aの結果はほぼ同様となる。パターン2A、3Aにおいては、通信量以外の理由でアクティブ計測が不可と判定されるからである。
これに対して、図22に示すパターン1は、図29においては、アクティブ計測における通信量の実測値に応じて、パターン1Aとパターン1Bに分かれる。パターン1Aのように、選択可能なすべてのチャンネルの通信量X1が所定値TR0以上であり、使用可能チャンネルが無い場合には、図22に示すパターン1と同様に、通信障害の原因は通信混雑となり、画像の無線送信は不可と判定される。一方、パターン1Bのように、選択可能なすべてのチャンネルのうち、通信量X2が所定値TR未満の使用可能チャンネルが1つでも有る場合には、速度に応じて、画像の無線送信が可又は不可と判定する。図29に示したように、比較的通信量が多い場合には、速度はやや遅いと判定され、速度によって有線を推奨してもよい。
また、上記実施形態では、無線設定変更部82が行う無線設定について、周波数の変更やタイムアウト値の変更を行っているが、搬送波(キャリア)にデータを変調するデータ変調方式や、電子カセッテ16の無線通信部37や、機能ユニット18のWAP36が送信する電波の送信出力などを変更してもよい。
データ変調方式は、「1」または「0」のデジタルデータを変調するデジタル変調の場合は、搬送波に対して、デジタルデータの1ビットが示す「1」または「0」の値に対応する状態変化を与える。状態変化の種類は、搬送波の振幅、周波数、位相などがある。このうち、無線LAN規格(IEEE802.11a及び11gを例示)においては、図30の表に示すように、位相を変化させる位相変調方式(PSK:Phase-Shift Keying)と、振幅を変化させる振幅変調の1種である直交振幅変調方式(QAM:Quadrature Amplitude Modulation)が使用される。
位相変調方式には、「0、π」の2つの位相状態を利用する2値位相変調(BPSK:Binary Phase-Shift Keying)と、「0、π/2、π、3π/2」の4つの位相状態を利用する4値位相変調(QPSK:Quadrature Phase-Shift Keying)がある。BPSKが「0、1」という1ビットを伝送するのと同じ時間で、QPSKの場合は「01、11、10、00」の2ビットの伝送が可能となり、BPSKと比較して高速な伝送が可能である。
また、QAMは、直交する2つの正弦波(位相が90度異なる2つの正弦波)に対して、それぞれ4値や8値の複数の振幅を持たせて、これら2つの正弦波を合成した合成波の波形に対応する搬送波を作成する方式である。QAMには、16QAMや64QAMがあり、16QAMは、2つの正弦波にそれぞれ4値の振幅を持たせる方式であり、64QAMは、同様に8値の振幅を持たせる方式である。QAMは、PSKと比較して高速伝送が可能であり、16QAMの場合には、BPSKが1ビットを伝送するのと同じ時間で、4ビットの伝送が可能となり、64QAMの場合には、同じ時間で8ビットの伝送が可能である。
一方、QAMにしろ、PSKにしろ、単位時間当たりに伝送する情報量が増えるほど、周囲の電磁ノイズの発生状況、電波の受信強度など通信環境の影響を受けやすくなるという意味で、ロバスト性は低下する。例えば、図31に示すように、BPSKとQPSKを比較すると、BPSKよりも高速伝送が可能なQPSKの方が、ロバスト性が低いことが分かる。図31において、横軸は、搬送波の電力(電波の送信出力)Cと、ノイズNとの比(C/N[dB])であり、縦軸は、ビットエラーレート(BER:Bit Error Rate)である。BERにおいて、例えば、「10−6」は、106個のビット列に対して1ビットのエラーが発生する確率を意味する。図31において点線で示すように、同じC/Nの値で比較すると、より高速なQPSKの方が、BPSKよりもBERが高い。図31は、BPSKとQPSKの比較を示したが、QPSKとQAMの比較においても、16QAM、64QAMのように、QPSKよりも高速伝送が可能なデータ変調方式は、QPSKよりもBERが高く、ロバスト性は低下する。
つまり、図30の表に示すとおり、BPSK、QPSK、16QAM、64QAMの順に通信速度は速くなり、その反面、通信速度が速くなるほど、ロバスト性は低下する。また、図30において、BPSKや、QPSKの後に付される、「1/2」、「3/4」などの数字は、送信単位となるパケットやフレームの全ビット長に対して、送信対象のデータを表すデータビットが含まれる割合を示す。例えば、図32に示すように、全ビット長に対して、データビットが3/4含まれている場合が「3/4」である。全ビット長に対して、データビットが半分の場合は、「1/2」となる。データビット以外の部分には、データビットの誤り検出や誤り訂正を行うための冗長ビットが付加される。冗長ビットは、誤り検出符号としては、例えば、FCS(Frame Check Sequence)、誤り訂正符号としては、例えば、FEC(Forward Error Correction)ビットやハミング符号などが使用される。
冗長ビットの割合が多い場合(データビットの割合が低い場合)を、データの冗長度が高い、反対に、冗長ビットの割合が少ない場合(データビットの割合が高い場合)を、データの冗長度が低い、と表現される。一般に、データの冗長度が高いほど、誤り検出や誤り訂正の精度が上がるため、ロバスト性が高くなる。反面、データの冗長度が高くなる分、データビットの伝送効率は低下するため、通信速度は低下する。図30の例で言えば、同じデータ変調方式同士であっても、BPSK「1/2」よりも、BPSK「3/4」の方が、通信速度は速いがロバスト性は低い。このように、通信速度とロバスト性は、トレードオフの関係にある。
無線設定変更部82は、このような、データ変調方式やデータの冗長度を、パッシブ計測結果に基づいて、変更してもよい。例えば、電磁ノイズが比較的大きい場合には、ノイズに対するロバスト性が高いデータ変調方式に変更する。
また、無線設定変更部82は、アクティブ計測結果に基づいて、無線設定を変更してもよい。例えば、図33のフローチャートに示すように、無線設定変更部82は、複数回のアクティブ計測結果に基づいて、無線設定を変更する。まず、アクティブ計測が1回行われると(S301)、無線設定変更部82は、データ変調方式などの無線設定を変更する(S302)。変更後の無線設定で、再びアクティブ計測が行われる。このように、無線設定を変更しながら複数回のアクティブ計測が実行される。各回のアクティブ計測結果として通信速度が、計測結果91(図7参照)として記録される。計測回数が規定回数に達すると、アクティブ計測を終了する(S303)。無線設定変更部82は、各回のアクティブ計測結果に基づいて、通信速度が最も速い無線設定を判定し、判定した無線設定を、X線画像送信時の無線設定に決定する(S304)。
無線設定の変更方法としては、例えば、通信速度が遅い(ロバスト性が高い)データ変調方式から、段階的に通信速度が速い(ロバスト性が低い)データ変調方式に変化させる。この場合、無線設定が異なる、各回のアクティブ計測結果として、通信速度に加えて、BER(ビットエラー率)を記録してもよい。BERは、上述したように、送受信するパケットに含まれる誤り検出符号(FCSなど)に基づいて、測定することができる。そして、無線設定変更部82は、複数回のアクティブ計測結果に含まれるBERに基づいて、BERが所定値以下のデータ変調方式のうち、例えば、通信速度が最大のデータ変調方式をX線画像送信時の無線設定として決定する。
また、無線設定変更部82は、パッシブ計測結果とアクティブ計測結果の両方に基づいて、X線画像送信時の無線設定を決定してもよい。例えば、パッシブ計測結果において電磁ノイズNSが比較的大きいと判定されているとする。その後、アクティブ計測を行い、アクティブ計測結果に基づいて、設定可能と判定された、通信速度が最大となる無線設定が決定されたとする。この場合において、無線設定変更部82は、電磁ノイズNSが比較的大きいというパッシブ計測結果を考慮して、例えば、アクティブ計測において設定可能と判定された無線設定よりも、ロバスト性が一段階高い無線設定を選択し、選択した無線設定をX線画像送信時の無線設定として決定する。
つまり、パッシブ計測結果に基づいて、通信速度よりもロバスト性を優先して無線設定を決定する。電磁ノイズNSが大きい通信環境では、BERが大きくなるため、パケットの通信エラーの発生回数が多くなる。パケットの通信エラーの発生回数が多いと、パケットの再送回数が上限値に達して、途中まで送ったX線画像の送信が中断することもある。送信が中断すると、X線画像を最初から送り直すという全データの再送信が発生する。送信中断が発生するタイミングにもよるが、X線画像はデータサイズが大きいため、全データの再送信による通信時間のロスは大きい。この場合において、データ変調方式やデータの冗長度について、ロバスト性が高いものを選択しておけば、通信速度の低下により通信時間はかかるものの、全データの再送信という最悪の事態を回避することもできる。
また、電子カセッテ16の無線通信部37や機能ユニット18のWAP36が発する電波の送信出力については、一般に、送信出力が高いほど、通信速度もロバスト性も向上する。しかし、送信出力が高いと、無線端末23や電磁医療機器24など他の機器に対する影響は大きくなる。そのため、無線設定変更部82は、パッシブ計測において他の機器が存在しないと判定された場合には、送信出力を上げ、他の機器が存在する場合には、送信出力を下げるというように、パッシブ計測結果に基づいて送信出力を変更してもよい。あるいは、アクティブ計測においてBERが高いと判定された場合には、送信出力を上げるというように、アクティブ計測結果に基づいて送信出力を変更してもよい。
また、パッシブ計測よりもアクティブ計測を先に行う場合には、他の機器への影響を考慮して、最初は送信出力を低く設定してアクティブ計測を行うことが好ましい。その後、パッシブ計測結果において、他の機器が存在しないと判定された場合には、送信出力を高くするというように、送信出力を段階的に上げるのが好ましい。
上述したように、アクティブ計測によって、通信速度以外にも、BERやエラー発生回数などの通信エラーの発生状況を測定することができる。通信エラーの発生状況は、通信速度に影響を与える要因であるので、通信エラーの発生状況から、通信速度を推定することも可能である。また、通信エラーの発生状況は、無線設定の決定のための判断要素としても役立つ。そのため、アクティブ計測によって、通信速度に加えて、またはその代わりに通信エラーの発生状況を測定してもよい。また、パッシブ計測部86やアクティブ計測部87は、通信障害の原因を推定する目的に加えて、またはそれに代えて、X線画像を送受信する場合の無線設定を決定するという目的のために使用することも可能である。
また、無線設定に関して、特定医療機器30に与える影響を軽減することを目的として、X線撮影装置12が発生する電波の電力密度を変更してもよい。上記例では、図9に示したように、無線通信チャンネルとして、20MHzの幅のチャンネルを1チャンネルとして使用している。電力密度を下げる場合には、例えば、20MHzのチャンネルを2チャンネル分結合して、1チャンネルの幅を40MHzに広げる。こうした技術は、チャンネルボンディングと呼ばれる。電波を出力するエネルギーの総量が同じであれば、周波数帯域が広いほど、電力が分散される。これにより、電力密度が下がり、電波強度が低下する。特定医療機器30に悪影響を及ぼす周波数が決まっている場合には、電力密度を低下させることによりその周波数に影響する電波強度を小さくできるので、特定医療機器30に与える影響を軽減することができる。
「第2実施形態」
また、上記実施形態では、パッシブ計測を開始するタイミングとして、回診車14のロック解除信号が解除されたタイミングとしているが、図34に示すように、駐機場15において回診車14のロック機構33をロックしたタイミング(S1010)で、回診車14から第1トリガー信号を発信させて、パッシブ計測を開始してもよい(S1011)。この場合には、病室に入室してロック機構33が解除されたタイミング(S1040)で、パッシブ計測を終了する(S1041)。これによれば、駐機場15から病室に入室するまでの間(S1020)、パッシブ計測が行われることになるため、回診先の病室内だけでなく、その病室の周辺の通信環境の情報も収集することができる。病棟19内において、特定医療機器30の台数が多い場合には、1つの病室だけでなく、その周辺でもパッシブ計測を行うことで、特定医療機器30の検出漏れを防止することができる。
なお、パッシブ計測を開始するタイミングは、上記タイミング以外でもよい。例えば、病室の入り口に第1トリガー信号を発信する発信器を設けておき、回診車14が入室した際にコンソール17が第1トリガー信号を受信できるようにしてもよい。これによれば、入室時点でパッシブ計測を開始することができる。また、回診車14に停止検知センサを設けて、回診車14が停止したタイミングでパッシブ計測を開始してもよい。
また、アクティブ計測を開始するタイミングとしては、撮影条件が設定されるタイミングを例示したが、撮影条件が設定されるタイミングとした趣旨は、その時点ではポジショニングが完了していると想定されるからである。そのため、ポジショニングの完了を直接的に検知してアクティブ計測を開始してもよい。例えば、コンソール17の操作画面にポジショニング完了ボタンを設けて、ポジショニングが完了した時点で、技師Tに完了ボタンを操作させるようにする。コンソール17は、完了ボタンが操作されたタイミングで第2トリガー信号をアクティブ計測部87に入力して、アクティブ計測を開始する。
なお、ポジショニング完了ボタンは、電子カセッテ16や回診車14に設けてもよい。電子カセッテ16や回診車14に設けた場合には、完了通知がコンソール17に送信される。また、ポジショニング完了ボタンを設ける代わりに、ポジショニングの完了を検知する完了検知センサを設けてもよい。例えば、完了検知センサとして、電子カセッテ16に、加速度センサを設ける。ポジショニングを行っている間、電子カセッテ16の姿勢は変化するが、ポジショニングが完了すると、電子カセッテ16は静止する。加速度センサによって電子カセッテ16が静止したことを検知して、一定時間静止した状態が継続した場合にポジショニングが完了したと判定する。そして、電子カセッテ16からポジショニング完了通知をコンソール17に送信する。
また、完了検知センサとして、電子カセッテ16とX線源26に、それぞれ超音波信号の送受信器を設けてもよい。送受信器により、電子カセッテ16とX線源26が対向配置されたことを検知し、ポジショニングが完了したと判定する。完了通知がコンソール17に送信される。
また、パッシブ計測やアクティブ計測を、マニュアル操作で実行できるようにしてもよい。こうすれば、技師Tが、必要と判断した任意のタイミングで実行させることができる。操作ボタンは、例えば、コンソール17に設ける。
「第3実施形態」
第1実施形態において、パターン6(図22参照)として説明したように、X線撮影装置12の位置関係や遮蔽物が通信障害の原因となる場合がある。この場合には、例えば、図35に示すように、回診車14を動かして、回診車14に積載されているコンソール17や機能ユニット18と、ベッド20上の電子カセッテ16との相対的な位置関係を変更する位置調整を行うことで、通信速度が改善される場合がある。第3実施形態は、第1実施形態のX線撮影装置12に、このような位置調整をアシストする機能を設けたものである。その他の点は、第1実施形態と同様である。
図36に示すように、第3実施形態のコンソール17には、図7に示す第1実施形態のコンソール17の構成に加えて、位置調整アシスト部110と、位置検知センサ111が設けられている。
位置検知センサ111は、コンソール17の位置を移動して位置調整を行う際に、コンソール17の移動位置を検知する。位置検知センサ111は、例えば、GPS(Global Positioning System)情報を取得するGPSセンサや、加速度センサで構成される。位置検知センサ111は、例えば、移動開始直前の基準位置を原点とした、コンソール17の移動先の位置を表す位置情報を出力する。位置情報は、例えば、X方向及びY方向の座標情報で表される。これにより、移動先の位置に加えて、基準位置からの移動距離や移動軌跡などを把握することができる。
位置調整アシスト部110は、位置調整が行われる際に、アクティブ計測部87に通信速度を測定させる。通信速度の測定は、位置調整が行われている間、所定時間間隔で繰り返し実行される。位置調整アシスト部110は、図37に示すように、位置調整開始後の経過時間、通信速度、位置検知センサ111が出力する位置情報を関連付けて記録した速度履歴112を作成する。速度履歴112は、ストレージデバイス17Eに格納される。
図38に示す位置調整アシストのフローチャートにおいて、CPU17Cは、パターン6の場合に、図28に示す情報提示画面106の代わりに、例えば、図39に示す位置調整を推奨するメッセージが含まれる情報提示画面113をディスプレイ17Aに出力する(S2010)。情報提示画面113には、情報提示画面105に含まれる情報に加えて、コンソール17及び機能ユニット18の位置を移動して位置調整を行うことを推奨するメッセージが表示される。技師Tは、位置調整を行う場合には、YESボタン113Aを操作し、位置調整を行わない場合には、NOボタン113Bを操作する。
YESボタン113Aが操作されて、位置調整を行うことが選択されると(S2020でY)、位置調整アシスト部110が起動する。NOボタン113Bが操作されて、位置調整が行われない場合は(S2020でN)、位置調整アシスト部110は起動しない。位置調整アシスト部110が起動すると、アクティブ計測部87によるアクティブ計測を開始させる(S2030)。同時に、アクティブ計測部87が測定する通信速度の速度履歴112への記録を開始する(S2040)。
図35に示すように、技師Tが回診車14を移動すると、回診車14に積載されたコンソール17及び機能ユニット18も移動する(S2050)。コンソール17及び機能ユニット18が移動を開始すると、位置検知センサ111が出力する位置情報が変化する。速度履歴112には、アクティブ計測部87が出力する最新の通信速度と、位置検知センサ111が出力する最新の位置情報が順次追記されて、速度履歴112が更新される。
CPU17Cは、速度履歴112から最新の通信速度を読み出して、最新の通信速度をリアルタイムでディスプレイ17Aに表示する(S2060)。リアルタイムの速度表示は、例えば、図40に示す速度表示画面114によって行われる。速度表示画面114には、最適位置を探索中であること、現在位置の通信速度、規格上の上限速度である理論値などのメッセージが表示される。また、位置調整アシストを終了させるための終了ボタン114Aが表示される。
技師Tは、速度表示画面114によるリアルタイムの速度表示により、通信速度が上がる方に移動しているか、下がる方向に移動しているかを確認することができる。また、理論値と比較することにより、通信速度が理論値に近づいているか否かを確認することができる。
コンソール17及び機能ユニット18の移動を停止して、終了ボタン114Aが操作されると(S2070)、位置調整アシスト部110は、アクティブ計測部87によるアクティブ計測を終了させる(S2080)。同時に速度履歴112の記録も終了する(S2090)。位置調整アシスト部110は、作成した速度履歴112から、通信速度が最大となる位置情報を検索し、その位置を最適位置と判定する。位置調整アシスト部110は、判定した最適位置をディスプレイ17Aに出力する(S2100)。最適位置は、例えば、図41に示す最適位置表示画面116の形態で表示される。
最適位置表示画面116は、最適位置は、移動停止直前の3秒前の位置であること、さらに、移動停止直前の移動方向と反対方向に50cmの距離であるといったメッセージを表示することにより、最適位置を時間及び距離で通知する。さらに、最適位置表示画面116には、最適位置での通信速度、画像送信時間の予測値が表示される。こうした最適位置に関する情報を頼りに、技師Tは、回診車14を動かしてコンソール17及び機能ユニット18を最適位置に移動することができる。
また、最適位置表示画面116に代えて、又はそれに加えて、最適位置の表示形態としては、図42に示すロケータ117でもよい。ロケータ117は、X方向及びY方向の二次元の座標上に最適位置をプロットすることにより、最適位置を可視化した画面である。ロケータ117には、コンソール17の移動開始位置である基準位置O、現在位置PP、最適位置BPが表示される。この表示により、現在位置PPからどの方向に移動させれば最適位置BPに移動できるかを簡単に確認することができる。
本例においては、速度履歴112を、通信速度と、通信速度を測定した時点の経過時間及び測定した時点の位置情報とを関連付けて記録しているが、経過時間及び位置情報は、いずれか1つでもよい。図41の最適位置表示画面116で例示したように、最適位置は、移動停止時を基準とした時間(3秒前など)や距離(50cmなど)で表すことができる。速度履歴116において、時間及び距離の一方が記録されていれば最適位置の表示は可能となるからである。時間は、移動開始時からの経過時間としているが、もちろん、時刻でもよい。
上記各実施形態において、IEEE802.11nの無線LAN規格を例に説明したが、もちろん、IEEE802.11a、IEEE802.11b、次世代のIEEE802.11acなどの他の無線LAN規格でもよい。
また、X線撮影装置12を、電子カセッテ16、コンソール17及び機能ユニット18の3つの装置で構成した例で説明したが、WAP36を含む機能ユニット18を電子カセッテ16又はコンソール17に内蔵して、X線撮影装置12を電子カセッテ16とコンソール17の2つの装置で構成してもよい。また、上述したとおり、電子カセッテ16とコンソール17の間の無線通信は、WAP36を介したインフラストラクチャモードではなく、無線通信部37、38がWAP36を介することなく直接通信するアドホックモードでも可能である。この場合には、WAP36の機能をコンソール17などに設ける必要は無い。また、コンソール17の機能を回診車14に内蔵してもよい
また、上記各実施形態では、コンソール17や機能ユニット18を回診車14に積載した状態で使用している例で説明しているが、コンソール17を回診車14から降ろして使用することも可能である。通信環境計測部81はコンソール17に設けられているため、回診車14からコンソール17を降ろして使用しても、上記各実施形態で説明した機能についてはすべて使用可能である。もちろん、第3実施形態の位置調整アシスト部110や位置検知センサ111は、コンソール17に設けられているので、電子カセッテ16に対するコンソール17の相対的な位置関係の調整を支援する位置調整アシストについても、同様に使用可能である。
図43に示す例は、コンソール17を回診車14から降ろした状態で使用する例である。図43に示すコンソール17には、WAP36を含む機能ユニット18の機能が内蔵されているため、コンソール17の他に独立した機能ユニット18は無い。コンソール17は、例えば、病室R11内の机120の上に置かれた状態で使用される。この場合には、電子カセッテ16との相対的な位置関係を調整する場合には、回診車14ではなく、コンソール17自体を移動させる。位置調整アシストを行う場合には、コンソール17のディスプレイ17Aに表示される、速度表示画面114や最適位置表示画面116を確認しながら、コンソール17を最適位置に移動する。
このように、コンソール17を回診車14から降ろして使用する場合には、回診車14からコンソール17が分離したことを検知して、分離したことを表す分離検知信号をパッシブ計測やアクティブ計測を開始するための第1又は第2のトリガー信号として使用してもよい。この場合には、図43に示すように、回診車14にコンソール17を積載するポケット121を設けて、ポケット121に分離検知センサ122を設ける。分離検知センサ122は例えばフォトセンサであり、コンソール17がポケット121から取り出された時の光量変化を検知して分離検知信号を発生する。分離検知信号は、回診車14からコンソール17に送信される。コンソール17は、分離検知信号を受信すると、パッシブ計測やアクティブ計測を開始する。
また、コンソール17と回診車14との通信を無線通信で行ってもよい。図43に示すように、コンソール17を回診車14から分離して使用する場合には、ケーブルの取り回しの煩雑さが無いため、無線通信の方が便利である。コンソール17と線源制御装置27を含む回診車14との無線通信についても、WAP36を介したアドホックモードで行ってもよいし、WAP36を介さずに直接通信するアドホックモードでもよい。また、コンソール17と回診車14との無線通信を行う場合には、コンソール17と電子カセッテ16の間だけでなく、コンソール17と回診車14の間でアクティブ計測を行ってもよい。こうすれば、コンソール17と回診車14の間においても、パッシブ計測結果及びアクティブ計測結果に基づいて通信障害の原因の推定や無線設定を行うことができる。
また、図44に示すように、パッシブ計測結果、アクティブ計測結果を含む計測結果91、一次判定結果及び総合判定結果を含む判定結果92、速度履歴112については、保存して二次利用に供してもよい。計測結果、判定結果、速度履歴(計測結果等という)は、例えば、コンソール17からデータを保存するための保存サーバ126にアップロードされて保存される。保存サーバ126において、計測結果等は、例えば、撮影オーダと関連付けて格納される。計測結果等には、アクティブ計測を行った際の無線設定などの情報も含まれる。計測結果等は、撮影オーダに含まれる情報などを検索キーとして、検索が可能である。このように、計測結果等を保存サーバ126に保存しておけば、AP22などの通信設備や、コンソール17の無線通信部38や電子カセッテ16の無線通信部37のメインテナンスに利用するなど、計測結果等の二次利用が可能となる。
例えば、撮影オーダには、撮影日時、患者情報などが記録されているため、患者情報から撮影を行った病室を特定することもできる。そのため、病棟19内の回診撮影で得られて、保存サーバ126に蓄積される計測結果等は、病棟19内の各場所の通信環境を表す通信環境情報としての価値を持つ。こうした通信環境情報に基づいて、病棟19内の通信設備等の改善やメインテナンスを行うことができる。
なお、保存サーバ126を医療施設内ではなく、コンソール17を含むX線撮影装置12のメーカーの保守部門であるサービスセンターなど、医療施設外に設置してもよい。コンソール17から保存サーバ126への計測結果等の送信は、公衆電話網、インターネットなどのWAN(Wide Area Network)を利用して行われる。インターネットを利用する場合には、セキュリティを確保するためにVPN(Virtual Private Network)などを利用することが好ましい。このように、メーカーのサービスセンターに保存サーバ126を設置すれば、サービスセンターにおいて、各医療施設の通信環境等の状況を早期に把握することが可能になる。計測結果等がリアルタイムでアップロードされる場合には、サービスセンターにおいてリアルタイムで状況を把握できるので、通信障害が発生したときにメーカーの保守担当者がユーザーである技師Tに対して電話などでアドバイスを送ったり、あるいは、無線設定の変更程度であれば、WANを通じたリモートメインテナンスをリアルタイムで実施することも可能になる。
また、通信環境情報の情報提示画面を表示する表示部をコンソール17のディスプレイ17Aとした例で説明したが、表示部は、機能ユニット18、電子カセッテ16、回診車14のいずれに設けてもよい。図45は、電子カセッテ16に表示部131を、機能ユニット18に表示部132をそれぞれ設けた例を示す。
こうした表示部131、132の使い方としては、例えば、コンソール17のディスプレイ17Aに対しては提示可能な通信環境情報のすべてを表示する一方、電子カセッテ16や機能ユニット18の表示部131、132には、アクティブ計測結果の通信速度のみを表示するというように、表示部毎に表示する情報量を変化させてもよい。表示部131、表示部132としては、例えば、液晶表示部が使用される。通信速度は液晶表示部に数値で表示してもよいし、バーグラフなどにより通信速度のレベルを表示してもよい。あるいは、液晶表示部以外でも、通信速度に応じて点滅速度が変化して通信速度のレベルを表示するランプ(LED:Light Emitting Diodeなど)でもよい。点滅速度の変化に代えて、点灯色の変化を利用してもよい。また、表示部131、132としてスピーカーを設けて、音声で通信速度のレベルを報知してもよい。
また、コンソール17や電子カセッテ16の他に、技師Tが携帯する携帯型の無線端末23に、通信環境情報の全部又は一部を表示してもよい。この場合には、例えば、コンソール17の制御部17Cは、無線端末23に通信環境情報を無線で送信する。無線の方式としては、無線LAN規格の方式でもよいし、無線LAN規格の方式が使用できない場合には、赤外線通信やBluetooth(登録商標)などの近距離無線通信方式を使用してもよい。近距離無線通信方式を採用する場合には、コンソール17に、無線端末23との近距離無線通信を実現するための近距離用無線通信部136を設ける。送信する情報としては、通信環境情報の全部でもよいし、画像送信に無線が使用できないこと、通信速度、推定される通信障害の原因など、通信環境情報の一部でもよい。無線端末23は、コンソール17から受信した通信環境情報をディスプレイに表示する。
また、パッシブ計測部86、アクティブ計測部87及び判定部88を含む通信環境計測部81をコンソール17に設けた例で説明したが、通信環境計測部81を機能ユニット18や電子カセッテ16に設けてもよい。
また、移動式X線発生装置として、X線撮影装置12と通信可能な回診車14を例に説明したが、X線撮影装置と移動式X線発生装置は通信できなくてもよい。例えば、本発明のX線撮影システムを、X線撮影装置と、通信機能が無い既存の移動式X線発生装置(X線フイルムやIPカセッテ用の移動式X線発生装置)と組み合わせて使用してもよい。上記実施形態のように、照射開始検知機能を有する電子カセッテを用いれば、既存の移動式X線発生装置の組み合わせもしやすい。
また、可搬型のX線発生装置として、走行可能な台車を有する移動式X線発生装置(回診車14)を例に説明したが、台車の無い携帯式X線発生装置でもよい。携帯式X線発生装置は、X線源と線源制御装置を携帯可能な筐体に収容したものである。
本発明は、上記実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない限り種々の構成を採り得ることはもちろんである。例えば、上述の種々の実施形態や種々の変形例を適宜組み合わせることも可能である。また、本発明は、X線に限らず、γ線等の他の放射線を使用する場合にも適用することができる。