JP6112704B2 - 貴金属担持光触媒粒子の製造方法 - Google Patents

貴金属担持光触媒粒子の製造方法 Download PDF

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本発明は、貴金属担持光触媒粒子の製造方法に関する。より詳細には、光触媒活性を示す酸化物粒子の表面に貴金属ナノ粒子が担持されている、貴金属担持光触媒粒子の製造方法に関する。
光吸収により励起され、酸化反応および還元反応を引き起こす光触媒活性を示す光触媒物質については、古くから研究が重ねられている。現在実用化されている二酸化チタンはその代表的な物質であり、比較的高い光触媒活性を示す。しかしながら、一般的な二酸化チタンは可視光により光触媒活性を示さず、またその他の光触媒物質についてもエネルギー変換効率が低いことから、従来より、光触媒物質に関してはエネルギー変換効率の改善が課題とされている。
光触媒反応においては、光触媒物質中で励起される正孔と電子とを速やかに空間的に隔離し、再結合の機会を減らすことで、変換効率を向上させ得ることが知られている。その他、活性表面積を増やすこと、光励起のためのバンドギャップエネルギーを低減させること、光触媒物質自体の耐久性を高めること等が、エネルギー変換効率の向上に寄与すると考えられる。
そのため、例えば、正孔と電子との空間的な分離を促すために、光触媒物質の表面に助触媒として白金(Pt)やニッケル(Ni)等の金属を、適切な条件で担持させることが行われている(例えば、特許文献1等参照)。
特開2009−131761号公報
Su et al.,ACS.Nano.6(2012)6284
ところで、最近、TiOナノ結晶の表面に貴金属からなるナノ粒子を担持させることで、この貴金属ナノ粒子がTiOによる励起電子を補足する役割を果たすだけでなく、光触媒によるフェノール分解の反応メカニズム自体に強く関与し得ることが示唆され、その結果として光触媒活性が高められていることが報告された(例えば、非特許文献1参照)。かかる報告においては、担体であるTiOがナノメートルオーダーであること、また担持される貴金属ナノ粒子については、粒度分布が狭い単分散に近いものであることが要件となり得る。したがって、かかる光触媒性能の向上効果を広く利用するために、貴金属からなるナノ粒子が所望の形態で担持された光触媒活性のナノ結晶を、簡便に製造する方法が提供されることが望まれている。
一般に、担体にナノ粒子を担持させる方法としては、例えば、非特許文献1に示されたようなゾル固定化法や、還元剤による化学的還元法、光堆積法(Photo-deposition)等の手法が挙げられる。しかしながら、担体が、粒径がナノメートルオーダーのナノ結晶である場合には、その分散性を保ったまま、その表面にさらに微小なナノ粒子を担持させることは容易ではない。また、担体であるナノ結晶と、担持されるナノ粒子とを同時に形成してナノ粒子を担持したナノ結晶を製造する手法については、さらに条件の制御が複雑となり得る。特に、貴金属は化学的に安定で、特に酸化(光酸化)に対して不活性であることから、光触媒物質の表面にナノ粒子を所望の形態で担持させる手法は制限されてしまうのが実情である。
本発明は上記課題に鑑みて創出されたものであり、例えば、ナノメートルオーダーの粒径を持つ光触媒粒子に、貴金属からなるナノ粒子を、単分散に近い粒度分布で分散性よく担持させることのできる、新しい貴金属担持光触媒粒子の製造方法を提供することを目的とする。
本発明によると、貴金属担持光触媒粒子の製造方法が提供される。かかる製造方法においては、光触媒活性を示す酸化物粒子を含有する水溶液を用意すること、上記用意した水溶液中に少なくとも一方が貴金属からなる一対の電極を配置すること、上記貴金属からなる電極がカソードとなるように上記電極間に電圧を印加して上記水溶液中でプラズマを発生させること、および、上記酸化物粒子の表面に、上記プラズマによって上記電極から放出された上記貴金属からなるナノ粒子を担持させること、を含むことを特徴としている。
この製造方法では、予め担体としての光触媒活性を示す酸化物粒子を水溶液中に用意して(典型的には、分散させて)おき、貴金属ナノ粒子の形成と、この貴金属ナノ粒子の当該酸化物粒子への担持とを、液中で発生させたプラズマの作用を利用して略同時に行うようにしている。以下、液中で発生させたプラズマを単に「液中プラズマ」という場合がある。この液中プラズマは、典型的には、液体中に浸漬した電極対にマイクロ波や高周波を印加することで液体中に発生される気相内に形成することができ、通常の気相中(典型的には、減圧ないしは大気圧中)で発生される気相プラズマとは異なる物理的および化学的性質を示す。
かかる液中プラズマによると、主として、プラズマ陽イオンが貴金属からなる電極に衝突することで、この電極を構成する貴金属原子を弾き出す(すなわち、スパッタする。)。電極から放出された貴金属原子は、速やかに酸化物粒子の表面に付着し、貴金属ナノ粒子を形成する。これにより、平均粒径が100nm以下の貴金属ナノ粒子が担持された酸化物粒子を得ることができる。かかる液中プラズマによる貴金属担持光触媒粒子の製造は、例えば常温(典型的には、25℃)、常圧(典型的には、1気圧)の環境において比較的短時間(典型的には1時間以内、例えば数分)で行うことができる。したがって、簡便な貴金属担持光触媒粒子の製造方法が提供されることとなる。
ここに開示される貴金属担持光触媒粒子の製造方法の好ましい一態様においては、上記酸化物粒子が、酸化チタン(IV)、酸化亜鉛、酸化スズ(IV)、酸化バナジウム(V)およびチタン酸ストロンチウムからなる群から選択されるいずれか1種または2種以上であることを特徴としている。
光触媒活性を示す酸化物としては様々な物質が知られているが、本発明においては、光触媒性能や、化学的安定性、比較的安価に調達し得る点等から、上記に挙げられる酸化物を担体として用いるのを好ましい態様としている。これにより、例えば、様々な波長領域で使用可能で、電池材料、半導体材料、その他の機能性粉末等としての利用が期待できる貴金属担持光触媒粒子を好適に製造することができる。
ここに開示される貴金属担持光触媒粒子の製造方法の好ましい一態様においては、上記貴金属が、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)およびイリジウム(Ir)からなる群から選択されるいずれか1種または2種以上であることを特徴としている。
酸化物粒子の表面に担持される貴金属ナノ粒子としては、上記のような種々の用途の酸化還元触媒であり得ることが好ましい。これにより、例えば、光電気化学反応に対する優れた活性を発現し得る半導体光触媒を製造することができる。
ここに開示される貴金属担持光触媒粒子の製造方法の好ましい一態様において、上記ナノ粒子は、平均粒径が20nm以下であることを特徴としている。
かかる製造方法においては、貴金属ナノ粒子を、平均粒径が20nm以下、典型的には10nm以下、例えば、6nm程度のものとして製造することができる。また、その粒度分布においても、典型的には、平均粒径±8nm以下、例えば、平均粒径±6nm以下、好ましくは平均粒径±4nm等と、比較的単分散に近い形態のものとして製造することができる。これにより、貴金属ナノ粒子の担持形態をさらに詳細に制御することができ、各種の光触媒性能が安定して得られる貴金属担持光触媒粒子を製造することができる。
ここに開示される貴金属担持光触媒粒子の製造方法の好ましい一態様において、上記酸化物粒子は、平均粒径が500nm以下であることを特徴としている。
かかる製造方法においては、光触媒機能を有する酸化物粒子として、平均粒径が500nm以下、典型的には200nm以下、例えば、100nm程度のものを好適に用いることができる。かかるナノメートルオーダーの粒径を有する光触媒物質に貴金属ナノ粒子を担持させることで、その光触媒性能がより一層高い貴金属担持光触媒粒子を製造することができる。
ここに開示される貴金属担持光触媒粒子の製造方法の好ましい一態様においては、上記水溶液を、5℃以上30℃以下の温度に保持した状態で上記プラズマを1分間以上発生させることを特徴としている。
かかる製造方法において、例えば、5℃以上30℃以下の温度に保持した状態で、1分間以上連続的に液中プラズマを発生させることで、プラズマ発生に伴う水溶液の温度上昇、延いては水溶液の蒸発および沸騰を抑えることができ、安定した状態の液中プラズマを連続して発生させることができる。水溶液の温度は、温度管理が好適に行えることから、例えば、10℃以上25℃以下程度の範囲であるのが好ましい。これにより、貴金属ナノ粒子の粒径等の形態をさらに詳細に制御することが可能となる。
ここに開示される貴金属担持光触媒粒子の製造方法の好ましい一態様において、上記電極として線状電極を用い、上記プラズマは、上記水溶液中で線状電極間に、一次電圧が100V〜240Vで、パルス幅が0.1μs〜5μsで、周波数が10Hz〜10Hzの直流パルス電圧を印加することで発生させることを特徴としている。
かかる構成によると、ジュール熱により水溶液中に発生する気泡を水面に向かって浮上させることなく、水溶液中に安定した状態で維持することができ、かかる気泡中に安定した状態でプラズマを発生させることも可能となる。これにより、より効率よく安定した状態で貴金属担持光触媒粒子の製造を行うことができる。
ここに開示される貴金属担持光触媒粒子の製造方法の好ましい一態様において、上記プラズマは、グロー放電プラズマであることを特徴としている。
液中のグロー放電プラズマは、液中に配置した電極間に高周波数の電圧を印加することで発生させることができる。かかる構成によると、電極間に発生するジュール熱により液相中に発生される気相の内部に、グロー放電プラズマを定常的に発生させることができる。すなわち、液相/気相/プラズマ相の界面が安定に形成され、プラズマ相で発生された活性種が気相を介して気液界面に高濃度で供給されるため、貴金属電極のスパッタ効率を高めることができ、貴金属担持光触媒粒子の製造を高効率で行うことが可能となる。また、非平衡な低温プラズマを発生させ得るため、より少ないエネルギーで安定的な製造を行うことができる。
貴金属担持光触媒粒子の製造に用いる液中プラズマ発生装置の構成の一例を示す模式図である。 貴金属担持光触媒粒子の製造に利用する液中プラズマによる反応場の構成を説明する概念模式図である。 (a)は一実施形態において製造した貴金属担持光触媒粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)像を例示した図であり、(b)は(a)中の四角い枠で囲んだ領域の部分拡大図である。 一実施形態においてプラズマ発生時間を(a)2分間、(b)4分間および(c)8分間として製造した貴金属担持光触媒粒子に担持された貴金属ナノ粒子の粒度分布を例示した図である。 一実施形態で得られた(c)Au@STO粒子−8minと、出発材料であるSTO粒子とについて得られたクベルカ−ムンク(KM)反射スペクトルを例示した図である。 図5の拡散反射スペクトルから求めたTaucプロットを例示した図である。 紫外−可視(UV−Vis)拡散反射スペクトルから求めたメチレンブルーの光分解による分解量を例示した図である。
以下、本発明の貴金属担持光触媒粒子の製造方法について説明する。なお、本明細書において特に言及している事項(例えば、水溶液中で発生させるプラズマの特徴等)以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄(例えば、担体として用いる酸化物粒子やプラズマを発生させる装置を製造するに必要な技術等)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書および図面に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
ここに開示される貴金属担持光触媒粒子の製造方法は、以下の(1)〜(4)の工程を必須の要件として含むことを特徴としている。
(1)光触媒活性を示す酸化物粒子を含有する水溶液を用意すること。
(2)上記(1)で用意した水溶液中に少なくとも一方が貴金属からなる一対の電極を配置すること、
(3)貴金属からなる電極が少なくともカソードとなるように電極間に電圧を印加して水溶液中でプラズマを発生させること。
(4)酸化物粒子の表面に、プラズマによって電極から放出された貴金属からなるナノ粒子を担持させること。
本発明において貴金属ナノ粒子の担体ともいえる光触媒活性を示す酸化物粒子(以下、単に「酸化物粒子」という場合もある。)としては、所定の波長の光を受けて価電子帯の電子が伝導帯に励起され、その結果として酸化反応および/または還元反応等の反応を引き起こす光触媒活性を示す酸化物からなる粒子であれば、その組成、結晶構造、対応波長(励起波長)、活性を示す励起機構(メカニズム)等は特に制限されない。かかる粒子を構成する酸化物としては、例えば、一例として、酸化亜鉛(ZnO)、酸化チタン(IV)(TiO、以下、二酸化チタンともいう。)、酸化スズ(IV)(SnO)、酸化バナジウム(V)(V)、酸化ニッケル(NiO)および酸化銅(CuO)等の金属酸化物、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、タングステン酸カルシウム(CaWO)、インジウムタンタレート(InTaO)、ニオブ酸銀(AgNbO)等の複合酸化物が例示されるが、これらの酸化物の結晶構造が異なるものや、酸化数の異なる組成のもの、その他、任意の元素(各種の金属元素あるいは非金属元素であり得る。)がドープされたもの、および、これらの混合物、複合体等であってもよい。一例として、光触媒活性の高いアナターゼ型の酸化チタンを用いることや、チタン酸ストロンチウム等に代表される可視光応答型の光触媒物質を用いるのが好適な例として示される。
この酸化物粒子は、その形状についても特に制限はない。この出願の発明の方法においては、典型的には、平均粒径が1000nm以下(典型的には、平均粒径が10nm〜1000nm程度)のナノメートルオーダーの粒子(粒子群)を用いた場合に、かかるごく微細な酸化物粒子に対して貴金属ナノ粒子をその形態を制御して担持し得るとの効果がより明瞭となるために好ましい。具体的には、活性表面積を拡大できる点で、平均粒径が500nm以下のもの(典型的には、平均粒径が10nm〜500nm程度)が好ましく、例えば、100nm以下(典型的には、平均粒径が10nm〜100nm程度)のものを好ましく用いることができる。しかしながら、本願発明においては、担体としての酸化物粒子の平均粒径を必ずしも1000nm以下に限定することが要件ではない。1000nmを超える酸化物粒子を用いることも可能である。
本発明では、かかる酸化物粒子を水溶液中に含ませた水溶液を用意する。酸化物粒子は、水溶液中で凝集することなく分散されていることが好ましい。かかる分散状態は、例えば、水溶液中に分散剤を添加したり、酸化物粒子を含む水溶液を撹拌したり、還流すること等で、簡便に実現することができる。また、かかる水溶液としては、次工程でプラズマを発生させるのに好適なように、導電性を付与する電解質を含んでいても良い。したがって、溶媒自体は、イオン交換水、純水等を用いていても良い。また、有機系の溶媒が混合されていても良く、この場合、得られる貴金属担持光触媒粒子に、かかる有機溶媒に由来する反応物が含まれる可能性がある。水溶液中に含まれる酸化物粒子の量は、当該酸化物粒子の粒径等にもよるために一概には言えないが、例えば、100nm〜1000nm程度の酸化物粒子を用いる場合には、当該酸化物粒子を水溶液中に0.1g/L〜20g/L程度の割合で含むよう水溶液を調製することで、貴金属担持光触媒粒子を効率的に製造することができる。なお、かかる酸化物粒子の粒径や含有量等は、例えば、上記の例を目安として適宜調整することができる。
そして本発明では、上記の工程(2)に示したように、次工程(3)でプラズマを発生させる際に用いる電極を、この酸化物粒子を含む水溶液中に用意する。本発明では、かかる電極として、少なくとも一方が貴金属からなる一対の電極を用いるようにしている。電極の形状については特に制限はないものの、後述するプラズマを安定的に発生させるには、線状電極(ワイヤ状、棒状等であり得る。)を採用するのが好ましい。
電極を構成する貴金属は、貴金属ナノ粒子の原料でもあり、上記の酸化物粒子に担持させたい貴金属から任意に選択することができる。このような貴金属としては、具体的には、例えば、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)およびイリジウム(Ir)等が例示される。中でも、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、イリジウム(Ir)等の貴金属であるのが好ましい。線状電極における上記貴金属の純度等について特に制限はないものの、一例として、具体的には、3N(純度99.9%)以上程度を目安とするのが好ましい例として示される。
また、一対の電極は、両方が貴金属で構成されていても良い。また、一方のみが貴金属から構成されて他の一方が卑金属から構成されていても良い。後者の場合、卑金属の酸化還元電位は一般的に貴金属のものよりも低いことから、電気伝導性や耐久性等を考慮して任意の金属から構成することができる。電極を構成する卑金属としては、例えば、一例として、鉄(Fe)、タングステン(W)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)およびコバルト(Co)等が例示される。
これらの電極は、次工程(3)において水溶液中で安定してプラズマが発生できるよう、水溶液中に、所定の間隔を以て対向するように配置する。
次いで、上記工程(3)に示したように、貴金属からなる電極が少なくともカソードとなるように電極間に電圧を印加して水溶液中でプラズマを発生させる。一対の電極の両方が貴金属からなる場合は、いずれか一方がカソードとなればよい。
ここで、本発明の貴金属担持光触媒粒子の製造方法では、貴金属ナノ粒子の形成と酸化物粒子への担持に、上記で用意した水溶液中で発生させる液中プラズマを利用するようにしている。すなわち、プラズマを構成する正負のイオン、電子およびラジカル等の活性種の作用によって、貴金属電極からの貴金属(典型的には、貴金属自由原子)の放出、貴金属ナノ粒子の形成、および、かかる金属ナノ粒子の酸化物粒子表面への付着が実現される。ここで、活性種としては、典型的には、水溶液中の水分子が分解されて生成する、水素イオン、水酸化物イオン、酸素イオン、水素ラジカル、酸素ラジカルおよびヒドロキシラジカル等が考慮される。
ここで、上記の反応の場となる液中プラズマは、液体中に配置された電極間にマイクロ波や高周波を印加して発生された気体(気相)の中に、当該気体を構成する分子を部分的ないしは完全に電離させることで、形成することができる。つまり、液中プラズマにおいては、プラズマ相を取り囲む気相はさらに液相に取り囲まれており、プラズマを構成する上記のイオン、電子およびラジカル等の活性種は制限された気相中において自由に運動し得る状態である。そのため、解放された気相中に発生される気相プラズマ(典型的には、大気圧プラズマ、低圧プラズマ等)とは異なる物理的および化学的性質を示す。
例えば、気相プラズマは、気体の温度を上げて行った際にこの気体を構成する中性分子が電離してプラズマ化することで発生する。このとき、固体・液体・気体間の相転移とは異なり気体からプラズマへの転移は徐々に起こるため、構成分子のごく一部が電離した電離度が非常に低い状態でも充分にプラズマであり得る。これに対し液中プラズマは、典型的には、まず液中での放電により当該液体がジュール加熱により気化されて気相を形成し、さらにこの気相においてプラズマが発生することで形成される。すなわち、液中プラズマは、プラズマという高エネルギー状態が液中(すなわち凝縮相)に閉じ込められており、閉鎖系の物理が実現するとともに、解放されない高密度なプラズマ反応場が形成されているといえる。
つまり、液中プラズマでは、気相プラズマよりも高密度かつ高エネルギー状態にある反応活性種(イオンやラジカル)が生成されるといえる。そのため、かかる反応場では、主として、いわゆるスパッタリングと同様の作用が生じる。すなわち、プラズマの活性種(典型的には、正イオン)が貴金属からなる電極に衝突し、これによって貴金属粒子(スパッタ粒子)をはじき出す。放出された貴金属粒子(典型的には、貴金属自由原子)は、かかる反応場に高密度で供給され、貴金属ナノ粒子の核が形成される。その一方で、液中プラズマは低温プラズマであり、プラズマ相以外の液相温度は比較的低温(例えば5℃以上30℃以下、好ましくは10℃以上25℃以下、特に好ましくは15℃以上20℃以下))に保たれているので、上記形成された粒子核の粒成長は比較的抑制され、例えば急激な粒成長は制限される。すなわち、液中プラズマにおいては、形成された貴金属ナノ粒子は比較的粒径が揃った状態で水溶液中に存在する酸化物粒子の表面に付着する。これにより、上記工程(4)のとおり、酸化物粒子の表面に、プラズマによって貴金属電極から放出された貴金属からなるナノ粒子を担持させることができる。
なお、酸化物粒子の表面に付着した貴金属ナノ粒子は、更なるスパッタ粒子の再結合により、幾分か粒成長し得る。また、貴金属ナノ粒子は半球状のものが面を以て酸化物粒子に付着し接合している。したがって、貴金属ナノ粒子は、付着性および耐久性の高い状態で酸化物粒子の表面に担持され得る。担持される貴金属ナノ粒子の数は、スパッタされた貴金属原子の量、プラズマ発生条件や水溶液の状態などにより決定されると考えられる。また、形成された貴金属ナノ粒子は、凝集することなく、高分散状態で酸化物粒子の表面に付着する。酸化物粒子の表面に付着した貴金属ナノ粒子の粒径は、スパッタ粒子の再結合量を調整することで制御することができる。したがって、例えば、スパッタ条件を調整することや、水溶液中の酸化物粒子の分散状態を、撹拌、還流等の手段により調整すること等で、酸化物粒子表面への貴金属ナノ粒子の担持状態、および、貴金属ナノ粒子の粒成長(すなわち、粒径)を制御することが可能となる。以上のことから、ここで開示される方法においては、粒径の揃った貴金属ナノ粒子が酸化物粒子に担持されてなる貴金属担持光触媒粒子を、貴金属ナノ粒子の粒径や担持状態を制御しなから、簡便かつ高効率に形成することが可能となる。
なお、以上のような液中プラズマは、電極間にかかる電位差の違い等によって、雷のような火花放電、コロナ放電、グロー放電、アーク放電等に分類される。火花放電が継続的に流れるとグロー放電あるいはアーク放電となる。ここで、液中で発生されるグロー放電プラズマ(以下、ソリューションプラズマとも言う。)は、その他の液中プラズマに対して、さらに異なる特徴を有している。例えば、アーク放電プラズマは粒子密度が高く、イオンや中性粒子の温度が電子温度とほぼ等しい局所熱平衡状態にある熱プラズマである。これに対し、グロー放電プラズマは、電子温度は高いがイオンや中性粒子の温度が低い非平衡状態にある低温プラズマである。また、コロナ放電では連続的なプラズマの発生が難しいのに対し、グロー放電プラズマではプラズマの持つエネルギーが高く、連続的なプラズマの発生が可能とされる。すなわち、グロー放電プラズマによると、貴金属ナノ粒子の形成および粒径を制御しながらの粒成長と、かかる金属ナノ粒子の担持がより効率的に行われることとなる。このことから、本発明では、液中プラズマとしてグロー放電プラズマを発生させることを好ましい態様としている。
かかるグロー放電プラズマは、サブマイクロ秒のパルス幅の電圧を、高い繰り返し周波数で印加することにより、比較的安定して発生可能である。そのため、プラズマ相を囲む液体の膨張・圧縮運動とプラズマ相とは連動しつつ安定な状態が長時間(例えば、2時間以上)維持され得る。そのため、例えば、ソリューションプラズマにおいては、電極間に発生される気相はその一部が浮力により電極間から浮上して液表面に到達することがあり得るものの、その大部分は電極間に一定の大きさの気相として定常的に維持される。したがって、ソリューションプラズマにおいてはプラズマの発生状態を定常的にコントロールすることができる。本発明の貴金属担持光触媒粒子の製造方法では、このような制御されたプラズマを利用することを好ましい形態としており、より効率的に貴金属担持光触媒粒子を製造することができる。発生したプラズマがグロー放電プラズマであるかどうかは、例えば、プラズマ発光分光分析等により求められるタウンゼント第2係数が0.0005〜0.005の範囲にあることで確認することができる。
なお、ここで、プラズマを安定的に発生させるためには、上記のとおり、水溶液を5℃以上30℃以下の温度に保持するのが好ましい。例えば、貴金属ナノ粒子の形成において、水溶液の温度が30℃を超過するとナノ粒子が粗大化する可能性があるために好ましくない。また、水溶液の温度が30℃を超えるようなプラズマの発生は、電極の過度な消耗や、プラズマの不安定状態を招き易い傾向にある。例えば、水溶液の温度を25℃以下(好ましくは25℃以下)に保つことで、プラズマ反応場が安定した状態となり得、貴金属ナノ粒子の形態の制御を好適に行うことがきる。水溶液の温度の下限については、経済的および設備的な観点から、5℃以上、例えば、10℃以上とするのが好ましい。ここで、水溶液を上記の温度範囲に保つ手段としては特に制限はなく、例えば、各種の冷却機構を利用することができる。かかる冷却機構としては、スターラー、フィン等の撹拌手段、恒温水槽等の恒温器、冷却ガス、冷却水等を環流させる循環(還流)冷却手段等が例示される。これらの冷却機構は、2種以上を組み合わせて用いるようにしても良い。なお、水溶液の温度保持と、液中プラズマによる連続的な処理とを両立させるために、当該水溶液は循環(還流)させておくのも好ましい態様の一つである。
また、安定した液中プラズマをより少ないエネルギーで安定的に発生させるためには、水溶液の電気伝導度を300μS/cm〜3000μS/cmの範囲に調整しておくのが好ましい。電気伝導度の調整が必要な場合は、例えば、塩化カリウム(KCl)や水酸化カリウム(KOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)等の電解質を水溶液に溶解させる等して行うとよい。本発明では、プラズマ相中でのヒドロキシラジカルの発生を抑えるために、塩化カリウムを用いるのが好適な例として示される。電気伝導度が300μS/cm未満であると、液中プラズマの発生に多くの電力を要し、好適にプラズマを発生し難くなるために好ましくない。また、電気伝導度が3000μS/cmを超過する場合は、プラズマ発生のために電極間に投入した電力がイオン電流として消費されるおそれがあり、定常的にプラズマを発生させるのが困難となるために好ましくない。電気伝導度は、300μS/cm〜2000μS/cm程度とするのが好ましく、更には、300μS/cm〜1000μS/cm程度とするのがより好ましい。
以上の液中プラズマによる処理は、詳細なプラズマ発生条件や、水溶液の量、酸化物粒子の分散状態および液中プラズマとの接触頻度等にもよるため一概には言えないものの、例えば、一例として、1分間〜10分間程度の短時間で実施することができる。もちろん、かかる処理時間を短縮し、かつ、より効率良く貴金属担持光触媒粒子を製造するために、例えば、プラズマ発生装置の構成を工夫できることは言うまでもない。
このようにして得られる金属担持光触媒粒子は、担持される貴金属ナノ粒子の平均粒径が100nm以下のナノ粒子の形態であり得る。代表的には、平均粒径が20nm以下、典型的には10nm以下、例えば、6nm程度のものとして製造することができる。
また、貴金属ナノ粒子の粒度分布も比較的単分散に近い形態となり、典型的には、平均粒径を中心として±8nm以下の範囲、例えば、平均粒径±6nm以下の範囲、より限定的には平均粒径±4nmの範囲に、全体の80体積%以上の粒子が含まれたものとなり得る。
なお、本明細書において、平均粒径は、電子顕微鏡等の観察手段により観察される複数(例えば2以上)の観察視野あるいは観察像内で選定された粒子の100個以上の粒子について測定された円相当径の算術平均値として定義される。
以上のような貴金属ナノ粒子の形態は、前述のように、例えば、プラズマ発生条件、発生時間および酸化物粒子の分散濃度等の条件を制御することにより調整することができる。構造、組成、サイズ、形態等が均一に揃ったナノ粒子は、その元素が本質的に保有する性質が顕著に反映されて、それだけで特異な機能を発現する新規な機能性材料ともなる可能性を秘めている。したがって、本発明により、これまでに知られていない新たな機能(光触媒機能およびその他の機能)を有することが期待される貴金属担持光触媒粒子の製造が期待できる。
このようにして得られた貴金属担持光触媒粒子は、水溶液(流体)に分散されたままの状態で使用に供しても良いし、例えば適切な手段により水溶液から貴金属担持光触媒粒子を回収して用いるようにしても良い。かかる貴金属担持光触媒粒子の回収は、当該貴金属担持光触媒粒子の形態等に応じて適宜公知の手法を利用して行えばよい。例えば、乾燥、ろ過、遠心分離等の手段により水溶液を除去することが例示される。
以下、本発明の好適な実施形態としての、ソリューションプラズマを反応場とした貴金属担持光触媒粒子の製造を例にして、本発明の貴金属担持光触媒粒子の製造方法についてより詳細に説明する。
図1は、水溶液2中でソリューションプラズマ4を発生させるためのソリューションプラズマ発生装置10の概略を示す図である。この実施形態において、貴金属ナノ粒子を担持する酸化物粒子を含む水溶液2は、ガラス製のビーカーなどの容器5に入れられている。また、プラズマを発生させるための一対の電極6は所定の間隔を以て水溶液2中に配設され、絶縁部材9を介して容器5に保持されている。電極6は外部電源8に接続されており、この外部電源8から所定の条件のパルス電圧が印加される。これによって、一対の電極6間に、定常的にソリューションプラズマ4を発生させることができる。
一対の電極6は、少なくとも一方が貴金属から構成されている。例えば、図1および2に例示した実施形態では、図の左側に貴金属からなる電極6Aが、右側に金属からなる電極6Bが配置されている。もちろん、両方の電極6A、6Bが共に貴金属からなる電極であっても良い。この一対の電極6は、例えば、平板状電極や棒状電極およびその組み合わせ等の様々な形態であってよく、この実施形態においては、電界を局所的に集中させることが可能な針状電極6を用いている。かかる電極6は、電界集中を妨げる余分な電流を抑えるために、先端部(例えば、数mm程度)のみを露出させ、他の部分は絶縁部材9等で絶縁されている。絶縁部材9は、例えばゴム製あるいは樹脂(例えば、フッ素樹脂)製であることが例示される。この実施形態では、絶縁部材9は電極6を容器5に固定するとともに、電極6と容器5との水密を保つための栓をも兼ねた構成である。かかる装置10において、ソリューションプラズマを発生させるためのパルス電圧の印加条件は、水溶液2中に含まれる電極を構成する貴金属の種類等の条件にもよるものの、例えば、一次電圧が100V〜240Vで、パルス幅が0.1μs〜5μsで、周波数が10Hz〜10Hzの範囲とすることが例示される。より詳細な電圧の印加条件は、例えば、ソリューションプラズマ発生装置10の構成や、水溶液系の状態に応じて適宜調整することができる。
上記のソリューションプラズマ発生装置10により発生されるプラズマ反応場は、例えば、図2に示したような構成となる。すなわち、酸化物粒子22を含む水溶液(液相)2中に気相3が形成され、この気相3中にソリューションプラズマ(プラズマ相)4が形成されている。このプラズマ反応場は、定常的に維持されている。かかるプラズマ反応場では、プラズマ相4から液相2に向かって高いエネルギーを有した電子、イオン、ラジカル等の活性種が供給され、かかる活性種が貴金属からなる電極6Aに衝突するなどして衝撃を与えることで、電極6Aから貴金属自由原子が放出される。貴金属自由原子は、高いエネルギーを有するプラズマ相4において、粒子核を形成し、制御された状態で核成長を行う。一方、液相2から気相3およびプラズマ相4に向けては、液相2を構成する水あるいは水溶液中の酸化物粒子が供給される。そしてこれらは、主として液相2と気相3の界面近傍において接触(衝突)する。これにより、高いエネルギー状態の貴金属粒子が酸化物粒子に付着して、強固に担持される。
なお、図2では理解を容易にするために、液相2と気相3、気相3とプラズマ相4の間の各界面が略球状に明確に形成されたような様子を示しているが、かかる界面は必ずしも明確に形成されることに限定されない。例えば、気相3とプラズマ相4の間の界面に臨界的なものがなく、かかる界面は空間的な広がりを持っていても良い。
以上の構成によると、例えば、ソリューションプラズマの作用によって、貴金属ナノ粒子の形成および酸化物粒子への担持が実現され、溶液中に上記の通りの貴金属担持光触媒粒子が形成される。なお、かかるソリューションプラズマは、例えば、常温(典型的には、25℃)、常圧(典型的には、1atm)において安定して発生させることができ、比較的短時間(例えば、数分間)での製造が可能である。したがって、かかる貴金属担持光触媒粒子の製造方法は、例えば、減圧(真空を含む)または加圧環境、50℃を超える高温環境等の特殊な環境を必要とせず、短時間で、低コストかつ簡便に実施することができる。
以上、好適な実施形態に基づき貴金属担持光触媒粒子の製造方法について説明したが、かかる製造方法はこの例に限定されず、適宜に態様を変化して行うことができる。例えば、ソリューションプラズマの発生に際しては、必ずしも高純度の貴金属製の針状電極を用いる必要はなく、例えば、貴金属を主体として構成される電極(例えば、貴金属元素の含有率が50質量%以上の電極)を用いるようにしても良い。また、プラズマは、一対の針状電極間に発生することに限らず、例えば、低インダクタンスの誘導コイルによりコイルの内部空間に発生するようにしても良い。そして、ソリューションプラズマは、一つの装置10において一箇所で発生させることに限定されず、水溶液中の複数の箇所で発生させても良い。例えば、一つの容器5に複数対の電極6が備えられた装置10を用いるなどして、プラズマ反応場を拡大させるようにしてもよい。
以上の通り、本発明の貴金属担持光触媒粒子の製造方法は、光触媒活性を示す酸化物粒子の更なる高機能化の可能性を含むものであり得る。
次に、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
以下の手順で貴金属担持光触媒粒子を製造した。貴金属ナノ粒子を担持する担体としては、チタン酸ストロンチウム粉末(SrTiOナノパウダー,シグマアルドリッチジャパン合同会社製)を用いた。このチタン酸ストロンチウム(STO)粉末を0.2g/50mlの割合でKCl水溶液に分散させて、STO分散液を用意した。KCl水溶液は、純水に塩化カリウム(KCl)を加えて3mMの濃度に調整したものを用いた。
チタン酸ストロンチウム粉末に担体させる貴金属ナノ粒子としては、金(Au)を採用した。したがって、後述の貴金属担持光触媒粒子を製造するのに用いるソリューションプラズマ発生装置には、針状電極として、直径が1mmの金ワイヤ((株)ニラコ製、金線、99.95%)を用いた。
図1は、溶液中でプラズマを発生させるためのソリューションプラズマ発生装置の概略を示す図である。本実施形態では、このソリューションプラズマ発生装置10を用い、上記で用意したSTO分散液(溶液)2中でソリューションプラズマを発生させるようにした。ここで、STO分散液2は、ガラス製のビーカーからなる容器5に入れ、溶液の温度を所定の温度範囲(本実施形態では20℃)に保つ恒温槽11内に配置した。そして、このSTO分散液2中に2本の金電極6を配置した。金電極6の外周は絶縁材で被覆し、先端部の1mm程度が絶縁材から露出するようにした。また、2本の金電極6は、その端部が0.5mmの間隔を保つように対向して配置した。STO分散液2は、撹拌装置7にて系の均質が保てる程度(例えば、200rpm程度)で撹拌した。
ソリューションプラズマ4は、この電極6対に対して、バイポーラパルス電源(栗田製作所製、MPS−06K−01C)8を用い、マイクロ秒パルス電圧を印加することで発生させた。本実施形態におけるソリューションプラズマ発生のための電圧印加条件は、一次電圧120V、パルス幅2μs、パルス周波数15kHzで一定とした。これにより発生されるソリューションプラズマ4は、プラズマ発光分光分析等により求められるタウンゼント第2係数が0.0005〜0.005の範囲にあることが確認される。また、放電時間は(a)2分間、(b)4分間および(c)8分間の3通りとし、STO分散液2中のSTOに対し、異なる3通りの処理時間でソリューションプラズマ処理を施した。
[TEM観察]
ソリューションプラズマ処理を施したSTO分散液からSTO粉末を回収し、ナノ解析電子顕微鏡(日本電子(株)製、JEM−2500SE)による観察を行った。図3(a)および(b)に、8分間のソリューションプラズマ処理により得られたSTO粉末の高分解能透過型電子顕微鏡(HR−TEM)像を示した。図3(b)は、(a)のなかで四角く枠で囲んだ部分を高倍率で示したものである。図3(a)に代表して例示されるように、3通りの処理時間により得られたSTO粒子のいずれについても、その表面に、微細な金(Au)粒子が凝集することなく、ほぼ均一に分散した状態で担持されていることが確認できた。
また、かかる電子顕微鏡観察により、担持されているAu粒子の粒径(円相当径)を測定し、粒度分布を作製して図4の(a)〜(c)に示した。図4中、(a)はソリューションプラズマの発生時間を2分間とした場合の、(b)は4分間とした場合の、(c)は8分間とした場合の、Au粒子の粒径分布である。(a)〜(c)から、いずれも単分散に近い粒径の揃ったAuナノ粒子が形成されていることがわかる。
さらに、STO粉末の表面に形成された金ナノ粒子には(111)双晶が確認され、さらに大部分の粒子は、図3(b)に示されるように、{111}面に囲まれた多重双晶構造を備えていることが確認できた。かかるAuナノ粒子は、担体であるSTO粒子の表面に点で吸着されているのではなく、広い面積を以て結合されていることも確認できた。
[拡散反射スペクトル]
Auナノ粒子を担持したSTO粉末(以下、「Au@STO」と示す場合がある。)について表面状態を調べるため、紫外可視近赤外(UV―Vis―NIR)分光光度計((株)島津製作所製、UV−3600)により可視領域の拡散反射スペクトルの測定を行った。また、比較のため、出発材料として用いたSTO粉末(以下、「STO」と示す場合がある。)についても同様に測定を行った。図5に、8分間のソリューションプラズマ処理により得られたSTO粉末(以下、「Au@STO−8min」のように示す場合がある。)と、STO粒子とについて得られた拡散反射スペクトルを示した。なお、図5の縦軸は、定量化のために、クベルカ−ムンク(KM;Kubelka−Munk)によって導かれた、いわゆるKM関数:F(R)により変換することで得られるKM反射スペクトルを示している。
図5に示されるように、金ナノ粒子を担持したSTO粉末の拡散反射スペクトルには、出発材料として用いたSTO粉末から得られたスペクトルとは異なり、表面プラズモン共鳴に由来するブロードな吸収帯が波長560nmをピークとして確認できた。
また、8分間のソリューションプラズマ処理により得られたSTO粉末(Au@STO−8min)と、STOのバンドギャップを、Taucプロットを利用して拡散反射スペクトルから求めた。図6に、そのTaucプロットを示した。
図6に例示されるように、ごくわずかではあるものの、STOがAuナノ粒子を担持してAu@STOとなることで、バンドギャップが狭まる方向にシフトしたことが確認できた。
[メチレンブルー分解試験]
ソリューションプラズマによる処理時間が異なる(a)Au@STO−2min、(b)Au@STO−4min、(c)Au@STO−8minおよび出発材料のSTOの光触媒性能を、メチレンブルーの光分解特性を利用して評価した。すなわち、まず、塩基性染料であるメチレンブルー(C1618ClNS、和光純薬工業(株)製)を純水に加えることで、10mg/L(10ppm)のメチレンブルー水溶液を調製した。このメチレンブルー水溶液50mLを遮光状態でマグネチックスターラーにより1時間攪拌した後、上記いずれかのSTO粉末を1g/Lの割合で加え、強撹拌しながら水面から10cmの距離に設置したキセノンランプ(浜松ホトニクス(株)製、L2428(150W))を照射した。そして、キセノンランプの照射開始から20分間隔で所定量のメチレンブルー水溶液を採取し、紫外・可視吸光(UV−Vis)分光光度計にて吸光度測定を行うことで、メチレンブルー濃度の経時変化を調べた。
具体的には示していないが、STO、(a)Au@STO-2min、(b)Au@STO−4min、(c)Au@STO−8minの何れの粉末についても、キセノンランプの照射と共に、655nm付近のメチレンブルーの最大吸光度ピークが低下し、メチレンブルーが光分解されて退色してゆくのが確認できた。
かかるUV−Vis吸光度測定の結果を図7に示した。図7の縦軸は、各STO粉末によるメチレンブルーの光分解による分解量を、サンプリング時のメチレンブルー濃度(C)に対する初期濃度(C)の比として表し、対数表示した。図7に示したように、STO粉末にAuナノ粒子を担持させることで、光触媒活性が高められることがわかった。また、ソリューションプラズマ処理の時間が長くなるほどその触媒活性能の向上効果が高くなることも確認できた。
そこで、各STO粉末の光触媒活性能を、下式(1)に基づく疑似一次反応速度定数(k)を算出することで、定量的に評価した。すなわち、図7のグラフにおける傾きを疑似一次反応速度定数として求めた。
ln(C/C)=kt …(1)
ここで式(1)中、Cはメチレンブルーの初期濃度(10ppm)であり、Cはキセノンランプの照射時間(サンプリング時間)tにおけるメチレンブルー濃度である。得られた速度定数(k)を、下記表1に示した。
表1から解かるように、ソリューションプラズマを分間照射することで形成された(c)Au@STO−8min粒子は、出発材料であるSTO粒子に比較して、約2倍の高い反応速度定数を有することが示された。このAuナノ粒子の担持によるSTO粒子の光触媒能の向上は、STO粒子で光励起された励起電子がAuナノ粒子に移動することで、電荷の再結合を効果的に抑制(電荷分離)しているためであると考えられる。
以上のことから、触媒活性を示す酸化物粒子に対し、貴金属電極を用いたソリューションプラズマ処理を施すことで、かかる貴金属ナノ粒子を助触媒として好適に担持させられることが確認できた。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。ここで開示される発明には上述の具体例を様々に変形、変更したものが含まれ得る。
2 水溶液(液相)
3 気相
4 ソリューションプラズマ(プラズマ相)
5 容器
6,6A,6B 電極
7 撹拌装置
8 外部電源
9 絶縁部材
10 ソリューションプラズマ発生装置
11 恒温槽

Claims (7)

  1. 光触媒活性を示す酸化物粒子を含有する水溶液を用意すること、
    前記用意した水溶液中に少なくとも一方が貴金属からなる一対の電極を配置すること、
    前記貴金属からなる電極が少なくともカソードとなるように前記電極間にパルス幅が0.1μs〜5μsの電圧を印加して前記水溶液中でグロー放電プラズマを発生させることで、前記酸化物粒子の表面に、前記グロー放電プラズマによって前記電極から放出された前記貴金属からなるナノ粒子を担持させること、
    を含む、貴金属担持光触媒粒子の製造方法。
  2. 前記酸化物粒子が、酸化チタン(IV)、酸化亜鉛、酸化スズ(IV)、酸化バナジウム(V)およびチタン酸ストロンチウムからなる群から選択されるいずれか1種または2種以上である、請求項1に記載の貴金属担持光触媒粒子の製造方法。
  3. 前記貴金属が、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)およびイリジウム(Ir)からなる群から選択されるいずれか1種または2種以上である、請求項1または2に記載の貴金属担持光触媒粒子の製造方法。
  4. 前記ナノ粒子は、平均粒径が20nm以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の貴金属担持光触媒粒子の製造方法。
  5. 前記酸化物粒子は、平均粒径が500nm以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の貴金属担持光触媒粒子の製造方法。
  6. 前記水溶液を、5℃以上30℃以下の温度に保持した状態で前記グロー放電プラズマを1分間以上発生させる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の貴金属担持光触媒粒子の製造方法。
  7. 前記電極として線状電極を用い、
    前記グロー放電プラズマは、前記水溶液中で線状電極間に、一次電圧が100V〜240Vで、周波数が10Hz〜10Hzの直流パルス電圧を印加することで発生させる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の貴金属担持光触媒粒子の製造方法。
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