JP6111126B2 - 塩浴軟窒化処理方法 - Google Patents

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Description

本発明は、金属部材の塩浴軟窒化処理方法に関する。さらに詳しくは、金属部材の表面に窒化層と酸化物層を同時に形成して、金属部材に耐食性及び耐摩耗性を付与する塩浴軟窒化処理方法に関する。
鉄系素材に耐摩耗性や耐疲労強度を付与する窒化処理として、アンモニア又は炭化水素系ガス雰囲気下による窒化処理及び軟窒化処理、塩浴による軟窒化処理、並びにプラズマによる窒化及び軟窒化処理等を挙げることができる。鉄系素材に窒化処理を施すと、最表面にγ’−Fe4N及びε−Fe2〜3Nからなる窒化鉄の層(窒化層)が形成される。そして、この窒化層の下層側(内側)に窒素が拡散した窒素拡散層が形成される。なお、鉄系素材の耐食性及び耐焼付き性を向上させるために、後処理として酸化処理が施される場合もある。
関連する従来技術として、シアン化物イオン濃度を2重量%以下に維持した所定の塩浴軟窒化浴に、アルカリ金属水酸化物を0.005〜0.05重量%添加した後、鉄系の基材を浸漬することで、窒化層と、鉄リチウム複合酸化物層(以下、単に「酸化物層」とも記す)とを基材の表面に同時に形成する方法、及びこの方法によって得られる鉄系部材が知られている(特許文献1及び2)。また、所定の塩浴軟窒化浴を用いて金属部材の最表面に酸化物層を形成した後、アルカリ硝酸塩を含有する置換洗浄塩浴で処理することで、金属部材の耐食性を向上させるとともに、金属部材に付着したシアン化物を分解する方法が知られている(特許文献3)。これらの方法は、塩浴軟窒化浴中のシアン化物イオン濃度が比較的低く保たれているといった利点がある。
特開2002−226963号公報 特開2003−027211号公報 特開2004−091906号公報
しかしながら、特許文献1及び2等に記載された塩浴窒化方法であっても、チャージ当たりに処理する金属部材の量(処理量)が多くなると酸化物層を安定的に形成することが困難になることがある。すなわち、酸化物層を安定的に形成するためには、チャージ当たりの金属部材の処理量を適切に制御する必要がある。このようなチャージ当たりの処理量の制限を受けることなく操業することは、経済上強く望まれるところである。
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、チャージ当たりの処理量が実質的に制限されることなく、金属部材の表面に窒化層と酸化物層を安定的に形成することが可能な塩浴軟窒化処理法を提供することにある。
本発明者らは上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、所定組成の塩浴軟窒化浴に硝酸塩と亜硝酸塩の少なくともいずれかを添加することによって、上記課題を達成することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明によれば、以下に示す塩浴軟窒化処理方法が提供される。
[1]Li+、Na+、及びK+をカチオン成分として含有するとともに、CNO-及びCO3 2-をアニオン成分として含有する塩浴軟窒化浴に金属部材を浸漬して窒化処理する工程を有する塩浴軟窒化処理方法であって、硝酸塩と亜硝酸塩の少なくともいずれかを前記塩浴軟窒化浴に添加して、前記塩浴軟窒化浴のシアン化物イオン(CN - )濃度を0.2質量%以下とした後、前記金属部材を前記塩浴軟窒化浴に浸漬して窒化処理する塩浴軟窒化処理方法
[2]前記硝酸塩が、硝酸リチウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、及び硝酸アンモニウムからなる群より選択される少なくとも一種であり、前記亜硝酸塩が、亜硝酸リチウム、亜硝酸ナトリウム、及び亜硝酸カリウムからなる群より選択される少なくとも一種である前記[1]に記載の塩浴軟窒化処理方法。
]前記金属部材の1チャージ当たりの処理量をYm2、アルカリ金属水酸化物の添加量をAmol、及び前記アルカリ金属水酸化物の添加係数をCとした場合に(但し、A=Y×Cである)、0.5≦C≦5となるように、前記アルカリ金属水酸化物を前記金属部材の浸漬前又は処理中に前記塩浴軟窒化浴に添加する前記[1]又は[2]に記載の塩浴軟窒化処理方法。
本発明の塩浴軟窒化方法によれば、チャージ当たりの処理量が実質的に制限されることなく、金属部材の表面に窒化層と酸化物層を安定的に形成することが可能である。
処理回数に対してシアン化物イオン濃度をプロットしたグラフ(実施例1)である。 処理回数に対してシアン化物イオン濃度をプロットしたグラフ(比較例1)である。 処理回数に対して鋼箔の質量変化量をプロットしたグラフ(実施例1〜3)である。
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。
本発明の塩浴軟窒化処理方法は、Li+、Na+、及びK+をカチオン成分として含有するとともに、CNO-及びCO3 2-をアニオン成分として含有する塩浴軟窒化浴(以下、単に「塩浴」とも記す)に金属部材を浸漬して窒化処理する工程を有する。そして、硝酸塩と亜硝酸塩の少なくともいずれかを塩浴に添加して金属部材を窒化処理する。
Li+、Na+、及びK+をカチオン成分として含有するとともに、CNO-及びCO3 2-をアニオン成分として含有する三元系の塩浴を使用して金属部材を窒化処理すると、金属部材の表面に窒化層が形成されるとともに、この窒化層の上側(最表層)には、耐食性等に優れた黒色の酸化物層が形成される。このようにして最表面に形成される酸化物層は、Li2Fe34、Li2Fe35、Li5Fe58、LiFe58等の鉄リチウム複合酸化物からなる層である。なお、上記三元系の塩浴を使用して金属部材を窒化処理する方法については、前述の特許文献1〜3等に記載されている。
酸化物層が安定的に形成されるか否かは、塩浴の塩基度及びシアン化物イオン濃度に左右される。例えば、塩浴の塩基度が高いと鉄の表面には酸化鉄被膜が形成される。一方、塩浴の塩基度が低いと酸化鉄皮膜は形成されず、鉄は塩浴中に溶解してしまう。また、シアン化物イオンは鉄と安定な錯イオンを形成し、塩浴中に鉄を溶解しやすくする。このため、塩浴のシアン化物イオン濃度が高いほど、酸化鉄被膜を形成する状態の塩基度はより高い側へとシフトする。すなわち、酸化物層を安定的に形成するためには、塩浴の塩基度が高く、シアン化物イオン濃度が低いことが必要である。
また、塩浴の塩基度は、チャージ当たりの金属部材の処理量の影響を受ける。窒化反応は、塩浴成分であるシアン酸塩の分解によって起こることが知られている(下記式(1))。また、塩浴成分である炭酸塩は、解離してM2Oを生成する。なお、以後の式中の「M」は、いずれもアルカリ金属を示す。
(1)5MCNO→M2CO3+3MCN+2N+CO2
(2)M2CO3→M2O+CO2
前記式(1)は、金属部材(処理品)の表面が塩浴に接触することによって起こる反応である。このため、金属部材の処理量が多ければ、CO2の分圧は高くなる。CO2の分圧が高くなると、M2Oの生成量は減少する。すなわち、金属部材の処理量が多いほど塩浴の塩基度は低下する。
アルカリ金属水酸化物を塩浴に添加すると、アルカリ金属水酸化物は塩基を生成するため(下記式(3))、塩浴の塩基度が高まる。アルカリ金属水酸化物から生成したM2Oは、前記(1)式で生成したCO2ガスを吸収する。これにより、金属部材と塩浴の界面におけるCO2ガス膜が減少するため、前記式(1)で表される反応が促進されて、シアン化物が大量に生成することになる。
(3)2MOH→M2O+H2
塩浴のシアン化物イオン濃度は、チャージ当たりの金属部材の処理量の影響を受ける。前記式(1)によりシアン化物が生成する。前記式(1)は、金属部材の表面と塩浴との接触によって生ずる反応を表す反応式である。すなわち、金属部材の処理量が多ければ、シアン化物は大量に生成されることになる。
金属部材の表面に窒化層と酸化物層を安定的に形成するためには、前述の通り、塩浴の塩基度が高く、シアン化物イオン濃度が低いことが必要である。チャージ当たりの金属部材の処理量が多いと、塩基度を高く保持するために、アルカリ金属水酸化物を多く添加する必要がある。金属部材の処理量が多いと、窒化反応に伴って生成するシアン化物イオンの濃度が上昇する。さらに、アルカリ金属水酸化物を添加することによっても、シアン化物イオン濃度は上昇する。そして、シアン化物イオン濃度が上昇すると、酸化物層の形成は阻害される。このため、酸化物層を安定して形成するためには、これまで金属部材の処理量を制限せざるを得なかった。但し、従来法においても、例えばエアーレイションによってシアン化物を酸化し、シアン化物イオン濃度を低減する方策は講じられていた。しかしながら、エアーレイションによるシアン化物イオンの酸化はさほど効率的ではなく、長時間を要する方法であった。このため、エアーレイションだけで塩浴のシアン化物イオン濃度を低減しようとすると、チャージ間隔があいてしまい、経済的ではないという問題があった。
本発明者らは、硝酸塩と亜硝酸塩の少なくともいずれかを上記三元系の塩浴に添加することにより、窒化反応により生成するシアン化物イオンを短時間で酸化し、シアン化物イオン濃度を高効率で十分に低減できることを見出した。また、シアン化物イオン濃度を簡便に下げることができるため、シアン化物イオン濃度の上昇を抑制するために添加が制限されていたアルカリ金属酸化物についても、チャージ当たりの処理量に応じた必要十分な量を添加することができる。
硝酸塩の具体例としては、硝酸リチウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、及び硝酸アンモニウム等を挙げることができる。なお、これらの硝酸塩は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。亜硝酸塩の具体例としては、亜硝酸リチウム、亜硝酸ナトリウム、及び亜硝酸カリウム等を挙げることができる。なお、これらの亜硝酸塩は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。なお、塩浴のカチオン比率のバランスが崩れることを防止すべく、硝酸塩や亜硝酸塩を、塩浴のカチオン比率と実質的に同一となるように予めカチオン比率を調整した添加剤(混合物)の状態で塩浴に添加することが好ましい。また、硝酸塩や亜硝酸塩とともに、炭酸塩及びシアン酸塩を配合して調製した添加剤を使用してもよい。硝酸塩と亜硝酸塩の少なくともいずれかを塩浴に添加する時期は、1チャージ毎であっても、数チャージ毎であってもよい。
硝酸塩や亜硝酸塩を塩浴に添加すると激しく発泡する。この発泡は、シアン化物とシアン酸塩との反応、又は硝酸塩や亜硝酸塩の熱分解によって発生したガスによるものである。なお、硝酸塩からは、亜硝酸塩及び酸素が発生する。亜硝酸塩からは、硝酸塩、アルカリ金属酸化物、及び窒素が発生する。そして、硝酸アンモニウムからは、窒素、水、及び酸素が発生する。また、発生した酸素は一部のシアン化物イオンやシアン酸塩と反応する。上記の反応は下記式(4)〜(10)でそれぞれ表される。なお、下記反応式中の「M」は、いずれもアルカリ金属を示す。
(4)MNO3+MCN→M2CO3+N2
(5)MNO2+MCNO→M2CO3+N2
(6)MNO3→MNO2+1/2O2
(7)5MNO2→3MNO3+M2O+N2
(8)2NH4NO3→2N2+4H2O+O2
(9)CN-+1/2O2→CNO-
(10)2MCNO+O2→M2CO3+N2+CO
硝酸塩や亜硝酸塩を塩浴に添加すると、主として窒素ガスが多量に発生して浴面が上昇する。このため、塩浴の中身が溢れ出さないように、硝酸塩や亜硝酸塩の一回当たりの添加量を塩浴の総量等を考慮しつつ適切に制御する必要がある。また、前記式(5)及び(10)に示すように、硝酸塩や亜硝酸塩はシアン酸イオンとも反応する。硝酸塩や亜硝酸塩とシアン酸イオンとの反応は、シアン化物イオンとの反応に比べ遅い。このため、シアン化物イオンと優先的に反応して残った過剰の硝酸塩等はシアン酸イオンと反応して分解するので、硝酸塩等の添加量は塩浴中のシアン化物イオン濃度に応じて決定することが好ましい。なお、前記式(6)及び(7)に示すように、アルカリ金属の硝酸塩及び亜硝酸塩からは、いずれもアルカリ酸化物が生成する。すなわち、アルカリ金属の硝酸塩及び亜硝酸塩は塩浴の塩基度を高める効果を有するため、アンモニウム塩よりも有効である。
本発明の塩浴軟窒化処理方法においては、硝酸塩と亜硝酸塩の少なくともいずれかを塩浴に添加して、塩浴のシアン化物イオン濃度を0.2質量%以下とした後、金属部材を塩浴に浸漬することが好ましい。塩浴のシアン化物イオン濃度が0.2質量%を超えると、アルカリ金属水酸化物を多く添加する必要があり、酸化物層が安定的に形成されなくなる場合がある。なお、塩浴のシアン化物イオン濃度は、0.02〜0.1質量%とすることがさらに好ましい。塩浴のシアン化物イオン濃度が0.02質量%以下であっても、酸化物層の形成には有効であるが、シアン化物イオン濃度を0.02質量%未満に下げようとすると、シアン化物イオンと、硝酸塩や亜硝酸塩との反応効率が低下してしまい、経済上不利になる場合がある。
本発明においては、金属部材の1チャージ当たりの処理量をYm2、アルカリ金属水酸化物の添加量をAmol、及びアルカリ金属水酸化物の添加係数をCとした場合に(但し、A=Y×Cである)、0.5≦C≦5となるように、アルカリ金属水酸化物を金属部材の浸漬前又は処理中に塩浴に添加することが好ましい。これにより、さらに安定して酸化物層を形成することができる。アルカリ金属水酸化物の添加係数Cが5を超えると、シアン酸塩が過剰に分解されてしまい、経済上好ましくない場合がある。なお、塩浴にアルカリ金属水酸化物を添加すると、前記式(3)式に従ってH2Oが生成する。生成したH2Oは、下記式(11)で表されるようにシアン酸塩を加水分解する。
(11)2MCNO+3H2O→M2CO3+2NH3+CO2
アルカリ金属水酸化物の添加係数Cは、形成しようとする酸化物層の厚さに応じて上記の数値範囲内で適宜設定すればよい。アルカリ金属水酸化物は、金属部材を浸漬する直前に添加すればよいが、処理中に2回以上に分割して添加してもよい。2回以上に分割して添加することにより、添加量を低減できる場合もある。
塩浴に添加するアルカリ金属水酸化物の具体例としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、及び水酸化リチウムを挙げることができる。これらのアルカリ金属水酸化物は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。また、アルカリ金属水酸化物とともに、炭酸塩及びシアン酸塩を配合して調製した添加剤を使用してもよい。
本発明者らは、塩浴のシアン化物イオン濃度を簡易に低下させることが可能な手法を見出した。これにより、シアン化物イオン濃度の上昇を気にすることなく、塩浴の塩基度を高めるために必要な量のアルカリ金属水酸化物を添加できる。すなわち、本発明の塩浴軟窒化処理方法によれば、チャージ当たりの処理量が実質的に制限されることなく、金属部材の表面に窒化層と酸化物層を安定的に形成することができる。
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。
(参考例1)
炭酸カリウム730g、炭酸ナトリウム580g、炭酸リチウム460g、及びシアン酸カリウム730g(合計2500g)をチタン製容器に入れ、580℃に加熱して内容物を溶融させて塩浴軟窒化浴とした。この塩浴軟窒化浴に少量のシアン化カリウムを添加して溶解させて試験浴とした。シアン化物イオン濃度が異なる複数の試験浴に硝酸カリウム0.1molをそれぞれ添加し、硝酸カリウム添加前後のシアン化物イオン濃度とシアン酸イオン濃度を測定した。また、シアン化物イオン濃度とシアン酸イオン濃度の減少量を算出した。結果を表1に示す。
Figure 0006111126
表1に示すように、例1〜3では、硝酸カリウムを添加したことで、シアン化物イオン濃度が0.094〜0.112%減少した。また、シアン酸イオン濃度は0.22〜0.25%減少した。以上より、硝酸塩の添加が、塩浴のシアン化物イオン濃度を低減させる方法として有効であることが分かる。一方、例4ではシアン化物イオン濃度が0.177%減少し、例5ではシアン化物イオン濃度が0.052%減少した。これは、シアン化物イオン濃度の減少量が、硝酸塩を添加する前のシアン化物イオン濃度に依存していることを示している。以上より、シアン化物イオン濃度を減少させるために必要な硝酸塩の添加量は、硝酸塩添加前のシアン化物イオン濃度によって決まることが分かる。
(実施例1)
炭酸カリウム730g、炭酸ナトリウム580g、炭酸リチウム460g、及びシアン酸カリウム730g(合計2500g)をチタン製容器に入れ、580℃に加熱して内容物を溶融させて塩浴軟窒化浴とした。この塩浴軟窒化浴を使用し、以下に示す鋼材について塩浴軟窒化処理を行った。なお、鋼材の処理面積の合計(Y)は約0.05m2であり、0.05L/minで塩浴にエアーを吹き込みながら処理を行った。より具体的には、以下に示す工程(i)〜(iii)の工程を20回繰り返した。なお、Y=0.05(m2)、A=0.13(mol)、C=2.6であった。処理回数に対してシアン化物イオン濃度をプロットしたグラフ(実施例1)を図1に示す。
工程(i):処理材を塩浴軟窒化浴に60分間浸漬した後、取り出して水冷する。
工程(ii):メロン8g(メロンは炭酸塩と反応してシアン酸塩を生成する。処理することでシアン酸塩の一部は炭酸塩に変化するが、メロンによりシアン酸塩と炭酸塩の濃度調整を行う)、硝酸ナトリウム0.1mol、及び水酸化カリウム0.13molを塩浴軟窒化浴に添加する。
工程(iii):塩浴の一部を分析試料として採取する。
[鋼材(処理材)]
・炭素鋼材S15C(20mmφ×3mmt):1個
・冷間圧延鋼板SPCC(75mm×150mm×0.8mmt):2枚
・H鋼SCM435H(22mmφ×3mmt):1個
・鋼箔(34mm×100mm×50μmt、炭素濃度0.1%以下):1枚
図1に示すように、処理直前の塩浴のシアン化物イオン濃度は0.032〜0.043%の範囲内に維持された。なお、シアン酸イオン濃度は14〜16%の範囲内であった。すべての鋼材の外観は黒色を呈しており、酸化物層が安定して形成されていた。具体的には、S15Cには2.8〜4.5μm、SCM435Hには2.9〜5.0μm、及びSPCCには1.6〜3.5μmの厚さでそれぞれ酸化物層が形成されていた。
(実施例2)
工程(ii)に代えて、以下に示す工程(iv)を実施したこと以外は、前述の実施例1と同様にして塩浴軟窒化処理を行った。
工程(iv):メロン5g、及び硝酸カリウム0.1molを塩浴軟窒化浴に添加する。
処理直前の塩浴のシアン化物イオン濃度は0.03〜0.04%の範囲内に維持された。なお、シアン酸イオン濃度は14〜16%の範囲内であった。20回繰り返し塩浴軟窒化処理を行ったにもかかわらず、すべての鋼材の外観は黒色を呈しており、酸化物層が安定して形成されていた。なお、形成された酸化物層の厚さは、処理毎に若干変動していた。具体的には、S15Cには1.5〜2.5μm、SCM435Hには0.7〜1.8μm、及びSPCCには1.5〜2.5μmの厚さでそれぞれ酸化物層が形成されていた。実施例1の結果と比較すると、形成された酸化物層の厚さが減少する傾向にあることが分かった。
(実施例3)
工程(ii)に代えて、以下に示す工程(v)を実施したこと以外は、前述の実施例1と同様にして塩浴軟窒化処理を行った。
工程(v):メロン5g、及び硝酸アンモニウム0.1molを塩浴軟窒化浴に添加する。
処理直前の塩浴のシアン化物イオン濃度は0.03〜0.04%の範囲内に維持された。なお、シアン酸イオン濃度は14〜16%の範囲内であった。20回繰り返し塩浴軟窒化処理を行ったにもかかわらず、すべての鋼材の外観は黒色を呈しており、酸化物層が安定して形成されていた。なお、形成された酸化物層の厚さは、処理毎に若干変動していた。具体的には、S15Cには0.9〜1.7μm、SCM435Hには0.5〜1.1μm、及びSPCCには0.5〜1.1μmの厚さでそれぞれ酸化物層が形成されていた。
実施例1〜3のいずれの場合であっても、すべての鋼材に酸化物層が安定して形成されたが、形成された酸化物層厚さには差異があった。具体的には、実施例1で形成された酸化物層の厚さが最も厚く、実施例2、実施例3の順に厚さが減少していた。処理回数に対して鋼箔の質量変化量をプロットしたグラフ(実施例1〜3)を図3に示す。図3に示すように、鋼箔の質量変化量は実施例1が最も多く、実施例2、実施例3の順に変化量は減少した。
このような結果が得られたのは、使用した塩浴の塩基度が実施例1〜3で相違するためであると考えられる。実施例1で使用した塩浴は、硝酸ナトリウムとアルカリ水酸化物を添加したため塩基度が最も高い。実施例2で使用した塩浴には硝酸カリウムを添加しているため、実施例1で使用した塩浴に次いで塩基度が高い。そして、実施例3で使用した塩浴には硝酸アンモニウムを添加しているため、塩基度は最も低い。以上の結果から、使用した塩浴の塩基度が高いほど酸化物層の溶解が抑制され、酸化物層が厚くなって増加質量も多くなったことが分かる。
(比較例1)
工程(ii)に代えて、以下に示す工程(vi)を実施したこと以外は、前述の実施例1と同様にして塩浴軟窒化処理を行った。
工程(vi):メロン8g、及び水酸化ナトリウム0.13molを塩浴軟窒化浴に添加する。
塩浴のシアン酸イオン濃度は14〜16%の範囲内であった。処理回数に対してシアン化物イオン濃度をプロットしたグラフ(比較例1)を図2に示す。図2に示すように、処理回数の増加に伴ってシアン化物イオン濃度が上昇したことが明らかである。なお、SPCCは4チャージ目で外観が灰色を呈し、酸化物層が形成されなくなった。また、S15CとSCM435Hは、5チャージ目で外観が灰色を呈し、酸化物層が形成されなくなった。
(実施例4〜14)
炭酸カリウム730g、炭酸ナトリウム580g、炭酸リチウム460g、及びシアン酸カリウム730g(合計2500g)をチタン製容器に入れ、580℃に加熱して内容物を溶融させて塩浴軟窒化浴とした。この塩浴軟窒化浴を使用し、SPCCについて塩浴軟窒化処理を行った。なお、0.05L/minで塩浴にエアーを吹き込みながら処理を行った。より具体的には、以下に示す工程(i)〜(iii)の工程を5回繰り返した。
工程(i):処理材を塩浴軟窒化浴に60分間浸漬した後、取り出して水冷し、外観を観察する。
工程(ii):塩浴の一部を採取して分析した結果を参考にして、塩浴のシアン酸イオン濃度が初期値となるように、塩浴にメロンを添加する。次いで、所定の硝酸塩を添加して塩浴のシアン化物イオン濃度を調整した後、所定のアルカリ金属水酸化物を塩浴に添加する。
工程(iii):塩浴の一部を採取して分析する。
(比較例2〜5)
炭酸カリウム730g、炭酸ナトリウム580g、炭酸リチウム460g、及びシアン酸カリウム730g(合計2500g)をチタン製容器に入れ、580℃に加熱して内容物を溶融させて塩浴軟窒化浴とした。この塩浴軟窒化浴を使用し、ダミー処理(0.2m2)を行った後、SPCCについて塩浴軟窒化処理を行った。なお、0.05L/minで塩浴にエアーを吹き込みながら処理を行った。より具体的には、以下に示す工程(i)〜(iv)を行った。
工程(i):ダミー処理材を塩浴軟窒化浴に浸漬する。
工程(ii):塩浴の一部を採取して分析し、シアン化物イオン濃度が所定の数値に到達した後、ダミー処理材を取り出す。
工程(iii):所定のアルカリ金属水酸化物を塩浴に添加する。
工程(iv):処理材を塩浴軟窒化浴に60分間浸漬した後、取り出して水冷し、外観を観察する。
なお、塩浴量(kg);1チャージ当たりの処理量(Y(m2));アルカリ金属水酸化物の種類、添加量(A(mol))及び添加係数(C);硝酸塩の種類を表2に示す。
実施例4〜14では、処理品の外観は全てのチャージ後で黒色であり、窒化層の表面に鉄リチウム複合酸化物層が形成されていることを確認した。これに対して、比較例2〜5では、1チャージ後の処理品の外観は灰色であり、窒化層の表面に鉄リチウム複合酸化物層が形成されていなかった。
Figure 0006111126
(実施例15〜22)
表3に記載の塩浴組成となるように、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム、シアン酸カリウム、シアン酸ナトリウム、及びシアン酸リチウムを配合して得た塩浴軟窒化浴を使用したこと、並びに処理回数を5回としたこと以外は、前述の実施例1と同様にして塩浴軟窒化処理を行った。いずれの実施例においても、処理品の外観は全てのチャージ後で黒色であり、窒化層の表面に鉄リチウム複合酸化物層が形成されていることを確認した。
Figure 0006111126
本発明の塩浴軟窒化処理方法は、金属部材を繰り返し安定的に、かつ、環境への負荷を低減しつつ窒化処理する方法として有用である。

Claims (3)

  1. Li+、Na+、及びK+をカチオン成分として含有するとともに、CNO-及びCO3 2-をアニオン成分として含有する塩浴軟窒化浴に金属部材を浸漬して窒化処理する工程を有する塩浴軟窒化処理方法であって、
    硝酸塩と亜硝酸塩の少なくともいずれかを前記塩浴軟窒化浴に添加して、前記塩浴軟窒化浴のシアン化物イオン(CN - )濃度を0.2質量%以下とした後、前記金属部材を前記塩浴軟窒化浴に浸漬して窒化処理する塩浴軟窒化処理方法。
  2. 前記硝酸塩が、硝酸リチウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、及び硝酸アンモニウムからなる群より選択される少なくとも一種であり、
    前記亜硝酸塩が、亜硝酸リチウム、亜硝酸ナトリウム、及び亜硝酸カリウムからなる群より選択される少なくとも一種である請求項1に記載の塩浴軟窒化処理方法。
  3. 前記金属部材の1チャージ当たりの処理量をYm2、アルカリ金属水酸化物の添加量をAmol、及び前記アルカリ金属水酸化物の添加係数をCとした場合に(但し、A=Y×Cである)、0.5≦C≦5となるように、前記アルカリ金属水酸化物を前記金属部材の浸漬前又は処理中に前記塩浴軟窒化浴に添加する請求項1又は2に記載の塩浴軟窒化処理方法。
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