JP6089959B2 - タイヤ挙動推定装置 - Google Patents

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Description

本発明は、車両のタイヤの挙動を推定するタイヤ挙動推定装置に関する。
タイヤ挙動推定装置では、一般に、タイヤモデルとして、Magic Formula Tire Model等の実験式モデル、又はFiala Model等の物理モデルが使用される。実験式モデルは、推定精度に優れているが、モデルフィッティングに大量の実験データを要する。対照的に、物理モデルは、実験データを必ずしも要しないが、推定精度に劣っている。
また、実験式モデルでは、車両運動の基礎検討や車両開発の初期検討において注目されるタイヤ代表特性とモデルパラメータとの関係が複雑であり、パラメータスタディを簡便に行えない。対照的に、物理モデルは、車両運動の基礎検討や車両開発の初期検討において実験データが必ずしも入手可能ではないが、注目するタイヤ代表特性が車両運動に及ぼす影響や、目標とする車両運動特性を満たすタイヤ代表特性を適切な精度で把握することを要する。
このため、物理モデルに相当する簡便性とともに実験式モデルに相当する推定精度を実現可能なタイヤモデルの開発が望まれていた。
一方、例えば特開2008−122253号公報に記載されるように、両方のモデルを融合させたタイヤモデルも知られている。この融合モデルは、タイヤの温度依存性を考慮したシミュレーションを、労力を軽減するとともに時間を短縮して実現しようとするものである。
特開2008−122253号公報 特開2005−335588号公報
しかし、上記融合モデルに関する公報には、物理モデルに相当する簡便性とともに実験式モデルに相当する推定精度を有するタイヤ挙動推定装置を実現するための具体的な手段が十分に開示されているとはいえない。
そこで、本発明は、タイヤ挙動を簡便かつ高精度に推定できるタイヤ挙動推定装置を提供しようとするものである。
本発明に係るタイヤ挙動推定装置は、車両のタイヤの挙動を推定するタイヤ挙動推定装置であって、タイヤの横摩擦係数のキャンバ角変化率を用いて垂直シフトを求めるとともにキャンバスチフネスを用いて水平シフトを求め、水平シフト及び垂直シフトを用いて純横スリップ時のタイヤの横力を推定する推定部を備え、前記垂直シフトをS 、前記キャンバ角変化率をdγ μy 、前記タイヤの接地荷重をF 、前記タイヤのキャンバ角をγ、前記タイヤの摩擦係数のスケーリングファクタをμ scale としたときに、前記垂直シフトS は、式S =dγ μy ・F ・γ・μ scale により求められ、前記水平シフトをS 、前記キャンバスチフネスをCS、コーナリングチフネスをBCD としたときに、前記水平シフトS は、式S =(CS・γ―S )/BCD により求められ、前記推定部は、前記横力をF 、ピークファクタをD 、シェープファクタをC 、スチフネスファクタをB 、スリップ角αと水平シフトS の和をx、カーバチュアファクタをE としたときに、前記横力を式F =D ・sin[C ・arctan{B ・x−E (B ・x−arctan(B ・x))}]+S を用いて推定して構成される。
ここで、従来のタイヤ挙動推定装置では、多くの実験データにタイヤモデルをフィッティングして決定される多数のパラメータを用いて垂直シフト及び水平シフトを求めていた。これに対し、本発明に係るタイヤ挙動推定装置によれば、タイヤの横摩擦係数のキャンバ角変化率の関数として垂直シフトを求めるとともにキャンバスチフネスの関数として水平シフトを求めることで、タイヤのキャンバ角が純横スリップ時の横力に及ぼす影響を簡便かつ高精度に推定できる。結果として、タイヤ挙動を簡便かつ高精度に推定できる。
本発明によれば、タイヤ挙動を簡便かつ高精度に推定できるタイヤ挙動推定装置を提供することができる。
本発明の実施形態に係るタイヤ挙動推定装置を示すブロック図である。 本発明の実施形態に係るタイヤ挙動推定装置の動作を示すフローチャートである。 純前後スリップ特性(前後力)の推定結果を示す図である。 横摩擦係数の補正結果を示す図である。 正規化コーナリングスチフネスの補正結果を示す図である。 正規化キャンバスチフネスの補正結果を示す図である。 正規化セルフアライニングスチフネスの補正結果を示す図である。 正規化キャンバトルクスチフネスの補正結果を示す図である。 純横スリップ特性(横力)の推定結果を示す図である。 純横スリップ特性(セルフアライニングトルク)の推定結果を示す図である。 複合スリップ特性(横力)の推定結果を示す図である。 複合スリップ特性(セルフアライニングトルク)の推定結果を示す図である。
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態に係るタイヤ挙動推定装置について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
まず、図1を参照して本発明の実施形態に係るタイヤ挙動推定装置10について説明する。タイヤ挙動推定装置10は、車両運動や車両開発に影響を及ぼすタイヤの挙動を推定する装置である。タイヤ挙動推定装置10は、CPU、ROM、RAM、入出力回路等を含むコンピュータとして構成される。
図1は、本発明の実施形態に係るタイヤ挙動推定装置10を示すブロック図である。図1に示すように、タイヤ挙動推定装置10は、設定部11、入力部12、推定部13、出力部14、及び格納部15を有している。設定部11、入力部12、推定部13、出力部14、及び格納部15の機能は、後述するタイヤ挙動推定方法を実施するためのプログラムをCPUがROM等から読み出して実行することにより実現される。
設定部11は、所与のタイヤデータに基づいてタイヤモデルのモデル係数を設定する。モデル係数としては、タイヤデータ自体、又はタイヤデータからの導出値が用いられる。なお、モデル係数の詳細については後述する。
入力部12は、タイヤモデルの入力パラメータを入力する。入力パラメータとしては、タイヤの接地荷重F[N]、スリップ比κ[−]、スリップ角α[rad]、キャンバ角γ[rad]、摩擦係数μのスケーリングファクタμscale[−]が入力される([]内は単位を示す。[−]は無単位であることを示す。以下同じ。)。入力パラメータは、記憶装置、入力装置等から入力される。
推定部13は、モデル係数、入力パラメータ等に基づいてタイヤのスリップ特性を推定する。スリップ特性には、純前後スリップ特性、純横スリップ特性、及び複合スリップ特性が含まれる。純前後スリップとは、タイヤの進行方向(転動方向)に生じるスリップであり、純横スリップとは、タイヤの横方向に生じるスリップであり、複合スリップとは、タイヤの進行方向及び横方向に同時に生じるスリップである。
出力部14は、タイヤモデルの出力パラメータを出力する。出力パラメータとしては、純前後スリップ時の前後力F[N]、純横スリップ時の横力F[N]及びセルフアライニングトルクM[Nm]、並びに複合スリップ時の前後力FxC[N]、横力FyC[N]、及びセルフアライニングトルクMzC[Nm]が出力される。出力パラメータは、記憶装置、表示装置、印刷装置等に出力される。
格納部15は、モデル係数の設定値、パラメータの入出力値等を格納する。
つぎに、図2から図12を参照して本発明の実施形態に係るタイヤ挙動推定装置10によるタイヤ挙動推定方法について説明する。
図2は、本発明の実施形態に係るタイヤ挙動推定装置10の動作を示すフローチャートである。図2に示すように、タイヤ挙動推定装置10は、まず、各種スリップ特性の推定処理に先立ちモデル係数の設定処理を行う(S11)。設定部11は、所与のタイヤデータに基づいて以下のモデル係数を設定する。
μx0:前後摩擦係数μ(基準荷重時)[−]
dμ:前後摩擦係数μの荷重変化率[1/N]
z0μx:前後摩擦係数μの基準荷重[N]
dγμy:横摩擦係数μのキャンバ角変化率[1/rad]
μy0:横摩擦係数μの近似式の定数項[−]
μy1:横摩擦係数μの近似式の1次係数[1/N]
zLI:臨界荷重[N]
w:タイヤの接地幅[m]
Fx:正規化ブレーキングスチフネス[−]
cCSS:正規化コーナリングスチフネスの近似式の定数項[1/rad]
cCSS:正規化コーナリングスチフネスの近似式の1次係数[1/(radN)]
cCSS:正規化コーナリングスチフネスの近似式の2次係数[1/(radN)]
cCSS:正規化コーナリングスチフネスの近似式の3次係数[1/(radN)]
cCS:正規化キャンバスチフネスの近似式の定数項[1/rad]
cCS:正規化キャンバスチフネスの近似式の1次係数[1/(radN)]
cCS:正規化キャンバスチフネスの近似式の2次係数[1/(radN)]
cSAS:正規化セルフアライニングスチフネスの近似式の1次係数[1/(radN)]
cSAS:正規化セルフアライニングスチフネスの近似式の2次係数[1/(radN)]
cCTQ:正規化キャンバトルクスチフネスの近似式の定数項[m/rad]
cCTQ:正規化キャンバトルクスチフネスの近似式の1次係数[m/(radN)]
モデル係数μx0、dμ、Fz0μx、dγμy、FzLI、w、CFxは、通常、タイヤデータ自体として設定される。モデル係数cμy0、cμy1、cCSS、cCSS、cCSS、cCSS、cCS、cCS、cCSS、cSAS、cSAS、cCTQ、cCTQは、通常、タイヤデータからの導出値として設定される。
前後摩擦係数μとは、タイヤの前後方向におけるタイヤと接地面との間の摩擦係数であり、横摩擦係数μとは、タイヤの横方向におけるタイヤと接地面との間の摩擦係数である。横摩擦係数μのキャンバ角変化率dγμyとは、キャンバ角γの変化に対する横摩擦係数μの変化率である。臨界荷重FzLIとは、タイヤの使用荷重の上限基準を表しており、通常はロードインデックスの値に設定される。タイヤの接地幅とは、タイヤの横方向において接地面に接するタイヤの幅であり、通常、タイヤ幅の70%程度の値に設定される。
ブレーキングスチフネスBCDとは、スリップ比κの変化に対する前後力Fの初期変化勾配である。コーナリングスチフネスBCDとは、スリップ角αに対する横力Fの初期変化勾配である。キャンバスチフネスCSとは、キャンバ角γに対する横力Fの初期変化勾配である。セルフアライニングスチフネスSASとは、スリップ角αの変化に対するセルフアライニングトルクMの初期変化勾配であり、キャンバトルクスチフネスCTQとは、キャンバ角γの変化に対するセルフアライニングトルクMの初期変化勾配である。
ブレーキングスチフネスBCD、コーナリングスチフネスBCD、キャンバスチフネスCS、セルフアライニングスチフネスSAS、及びキャンバトルクスチフネスCTQのそれぞれは、接地荷重Fで除して正規化される。
横摩擦係数μ、正規化コーナリングスチフネス、正規化キャンバスチフネス、正規化セルフアライニングスチフネス、正規化キャンバトルクスチフネスは、実測値(又は仮想値、以下同じ)に基づいて推定される。これらの推定値は、例えば、実測値に対するフィッティングにより接地荷重Fに関する近似式として表される。
横摩擦係数μは、例えば、接地荷重Fに関する1次近似式として表される。正規化コーナリングスチフネスは、例えば、接地荷重Fに関する3次近似式として表され、正規化キャンバスチフネスは、例えば、接地荷重Fに関する2次近似式として表される。正規化セルフアライニングスチフネスは、例えば、接地荷重Fに関する2次近似式として表され、正規化キャンバトルクスチフネスは、例えば、接地荷重Fに関する1次近似式として表される。
正規化セルフアライニングスチフネスの近似式では、正規化セルフアライニングスチフネスが接地荷重Fの減少につれて0となるので、定数項が0となる。近似式の次数は、上記例に限定されるものではなく、要求される近似精度に応じて決定される。n次の近似式のフィッティングには、n+1組以上の実測値(例えば、正規化コーナリングスチフネスの3次近似式のフィッティングには、4組以上の接地荷重Fと正規化コーナリングスチフネスの実測値)が必要とされる。
タイヤ挙動推定装置10は、設定処理に続いてパラメータの入力処理を行う(S12)。入力部12は、入力パラメータとしてタイヤの接地荷重F[N]、スリップ比κ[−]、スリップ角α[rad]、キャンバ角γ[rad]、摩擦係数μのスケーリングファクタμscale[−]を入力する。
接地荷重Fとは、タイヤを接地面に押し付ける荷重である。スリップ比κとは、タイヤの回転角速度ωと自由転動時のタイヤの回転角速度ωとの違いを表しており、通常、(ω−ω)/ωとして定義される。スリップ角αとは、タイヤ接地中心の進行方向と車輪中心面の方向(タイヤの向いている方向)とのなす角度である。キャンバ角γとは、タイヤの回転面と接地面に垂直な面とのなす角度である。摩擦係数μのスケーリングファクタμscaleとは、接地面の状態に応じて摩擦係数μ(μ、μ)を調節するための変数である。
タイヤ挙動推定装置10は、パラメータ入力処理に続いて純前後スリップ特性の推定処理を行う(S13)。純前後スリップとは、スリップ角αをゼロとしてタイヤに制動・駆動力を付加した場合にタイヤの前後方向に生じるスリップである。推定部13は、モデル係数及び入力パラメータに基づいて、純前後スリップ時のタイヤモデル式(1)からタイヤの前後力F[N]を推定する。前後力Fとは、純前後スリップ時にタイヤと接地面との間でタイヤの前後方向に生じる力である。
=D・sin[C・arctan{B・κ−E(B・κ−arctan(B・κ))}] …(1)
ここで、
=p …(2)
={μx0+dμ(F-Fz0μx)}F・μscale …(3)
=BCD/(C・D) …(4)
=p …(5)
BCD=CFx・F …(6)
係数C、D、B、Eは、純前後スリップ時のタイヤモデルを規定するパラメータであり、シェープファクタC、ピークファクタD、スチフネスファクタB、カーバチュアファクタEと称される。式(4)に示すように、純前後スリップ時のスチフネスファクタに相当する係数Bは、ブレーキングスチフネスを純前後スリップ時のシェープファクタC及びピークファクタDで除して求められる。係数Bは、後述する複合スリップ特性の推定処理にも用いられる。係数BCDは、ブレーキングスチフネスである。定数pは、1.3〜1.7の範囲(例えば1.5)とし、定数pは、-2〜1の範囲(例えば-0.5)とする。
図3は、純前後スリップ特性(前後力F)の推定結果を示す図である。図3には、3パターンの接地荷重Fを対象として、スリップ比κを増加させた後に再び減少させた場合における純前後スリップ特性の変化傾向について、実測値と推測値を対比した結果が示されている。図3によれば、タイヤの純前後スリップ特性が適切な精度で推定されていることが分かる。
図2の説明に戻って、タイヤ挙動推定装置10は、純前後スリップ特性の推定処理に続いて純横スリップ特性の推定処理を行う(S14)。純横スリップとは、制動・駆動力をゼロとしてスリップ角を付加した場合にタイヤの横方向に生じるスリップである。推定部13は、モデル係数及び入力パラメータに基づいて、純横スリップ時のタイヤモデル式(7)からタイヤの横力F[N]を推定する。横力Fとは、純横スリップ時にタイヤと接地面との間でタイヤの横方向に生じる力である。
また、推定部13は、モデル係数、入力パラメータ、及び横力Fの算出結果に基づいて、純横スリップ時のタイヤモデル式(17)からタイヤのセルフアライニングトルクM[Nm]を推定する。セルフアライニングトルクMとは、純横スリップ時にタイヤの垂直軸周りに生じるモーメントである。
=D・sin[C・arctan{B・x−E(B・x−arctan(B・x))}]+S …(7)
ここで、
=p …(8)
=(cμy0+Cμy1・F)F・μscale …(9)
=BCD/(C・D) …(10)
=p{1+p・γ・sign(x)} …(11)
=dγμy・F・γ・μscale …(12)
=(CS・γ―S)/BCD …(13)
x=α+S …(14)
BCD=(cCSS+cCSS・F+cCSS・F +cCSS・F )F …(15)
CS=(cCS+cCS・F+cCS・F )F …(16)
係数C、D、B、E、S、Sは、純横スリップ時のタイヤモデルを規定するパラメータであり、シェープファクタC、ピークファクタD、スチフネスファクタB、カーバチュアファクタE、垂直シフトS、水平シフトSと称される。式(10)に示すように、純横スリップ時のスチフネスファクタに相当する係数Bは、コーナリングスチフネスBCDを純横スリップ時のシェープファクタC及びピークファクタDで除して求められる。係数Bは、後述するセルフアライニングトルクMの推定及び複合スリップ特性の推定処理にも用いられる。
式(9)の括弧内の項は、横摩擦係数μの近似式に相当し、式(15)の括弧内の項は、正規化コーナリングスチフネスの近似式に相当し、式(16)の括弧内の項は、正規化キャンバスチフネスの近似式に相当する。定数pは、1〜1.5の範囲(例えば1.3)とし、定数pは、-2〜1の範囲(例えば-1.3)とし、定数pは、-20〜-5の範囲(例えば-11)とする。
ここで、純横スリップ時の横力Fは、式(12)、(13)に示すように、タイヤのキャンバ角γが純横スリップ時の横力Fに及ぼす影響を考慮するために、横摩擦係数μのキャンバ角変化率dγμyを用いて垂直シフトSを求めるとともにキャンバスチフネスCSを用いて水平シフトSを求め、垂直シフトS及び水平シフトSを用いて推定される。
また、水平シフトSは、キャンバスチフネスCSにキャンバ角γの入力値を乗じた値から垂直シフトSを減算し、その減算結果をコーナリングスチフネスBCDで除した値として求められる。
また、キャンバスチフネスCS、コーナリングスチフネスBCD、及び横摩擦係数μは、タイヤデータに基づいて近似して設定される。
={t・Fy0+t(F−Fy0)}cos(α) …(17)
ここで、
y0=D・sin[C・arctan(B・α−E(B・α−arctan(B・α)))] …(18)
=T(SAS/BCD,p,B,α) …(19)
=T(CTQ/CS,0,B,α) …(20)
nSAS=cSAS・F+cSAS・F …(21)
SAS=nSAS・F …(22)
CTQ=(cCTQ+cCTQ・F)F …(23)
T(D,C,B,α)=D・cos[(1+C)・arctan{B・α−E(B・α−arctan(B・α))}] …(24)
=p・B p8μscale p9(t推定時には0.25倍する。) …(25)
=p10(t推定時には4倍する。) …(26)
係数Fy0は、純横スリップ時の横力Fのうちスリップ角αによる寄与成分である。係数tは、タイヤの前後方向の中心と横力Fの着力中心とのズレであり、ニューマチックトレールと称される。係数tは、キャンバ角γにより生じるセルフアライニングトルクMを横力Fで除した値であり、キャンバトレールと称される。係数SASは、セルフアライニングスチフネスであり、係数CTQは、キャンバトルクスチフネスである。
係数nSASは、正規化セルフアライニングスチフネスの近似式に相当し、式(23)の括弧内の項は、正規化キャンバトルクスチフネスの近似式に相当する。定数pは、0.05〜0.15の範囲(例えば0.1)とし、定数pは、2〜3の範囲(例えば2.6)とし、定数pは、0.5〜0.8の範囲(例えば0.65)とする。定数pは、-0.5〜-0.1の範囲(例えば-0.35)とし、定数p10は、-5〜-1の範囲(例えば-2.5)とする。
なお、モデル係数設定処理に用いる接地荷重Fに対してスリップ特性推定処理に用いる接地荷重Fが大きくなると、接地荷重Fに関する近似式の値が異常値となり易い。このため、スリップ特性推定処理に用いる接地荷重Fが大きい場合には、例えば以下のような補正が行われる。
横摩擦係数μは、接地荷重Fの増加に応じて接地荷重Fが臨界荷重FzLI程度まで増加するまでは接地荷重Fに比例して減少するが、それ以上では減少勾配が低下する。そこで、接地荷重Fが臨界荷重FzLI以上である場合には、式(9)に含まれる横摩擦係数μの近似項に代えて式(27)が適用される。定数p11は、0.5〜0.9の範囲(例えば0.7)とする。
ここで、純横スリップ時のセルフアライニングトルクMは、式(17)に示すように、純横スリップ時の横力Fのうちスリップ角αによる寄与成分にニューマチックトレールtを乗じた値に、純横スリップ時の横力Fのうちキャンバ角γによる寄与成分にキャンバトレールtを乗じた値を加えた値を用いて推定される。
また、ニューマチックトレールtは、タイヤデータを用いてセルフアライニングスチフネスSAS及びコーナリングスチフネスBCDを近似して設定し、式(19)に示すように、セルフアライニングスチフネスSASをコーナリングスチフネスBCDで除した値、及び純横スリップ時の横力Fの推定に用いたスチフネスファクタBを用いて求められる。
また、キャンバトレールtは、タイヤデータを用いてキャンバスチフネスCS及びキャンバトルクスチフネスCTQを近似して設定し、式(20)に示すように、キャンバトルクスチフネスCTQをキャンバスチフネスCSで除した値、及び純横スリップ時の横力Fの推定に用いたスチフネスファクタBを用いて求められる。
また、タイヤの横摩擦係数μ、キャンバスチフネスCS、コーナリングスチフネスBCD、セルフアライニングスチフネスSAS、及びキャンバトルクスチフネスCTQのうち少なくとも1つの近似値は、タイヤの接地荷重Fと臨界荷重FzLIとの比較結果に応じて補正される。
μ=a・exp{cμy1(F−FzLI)/a}+μy∞ …(27)
ここで、
a=μyLI−μy∞ …(28)
μy∞=p11・μyLI …(29)
μyLI=cμy0+cμy1・FzLI …(30)
図4は、横摩擦係数μの補正結果を示す図である。図4には、各種タイヤのタイヤデータに基づいて求められた横摩擦係数μの近似式の値と、補正式(27)の値とが対比して示されている。図4に示すように、近似値は、接地荷重Fが臨界荷重FzLI程度までは適切であるが、それ以上では過小となっている。一方、補正式を適用することで、接地荷重Fが大きい場合でも、適切な値が得られている。
また、正規化コーナリングスチフネスは、接地荷重Fが臨界荷重FzLI程度を超える場合には、式(15)の括弧内の近似式により過大に設定され易い。そこで、接地荷重Fが臨界荷重FzLI以上である場合には、近似式に代えて補正式(31)が適用される。また、接地荷重Fが臨界荷重FzLIの70%程度までは近似式を適用し、70〜100%程度の区間では、近似式と補正式とを滑らかに接続するように補正式を定義してもよい。
BCD
=D’sin[2arctan{F/B’−E’(F/B’−arctan(F/B’))}] …(31)
CS300’=p12・CS300+p13 …(32)
ここで、式(31)の係数B’、D’、E’は、例えば、臨界荷重FzLIの70%、100%、300%に相当する荷重に対応する正規化コーナリングスチフネスの値に対するフィッティングにより決定される。臨界荷重FzLIの300%に相当する荷重に対応するコーナリングスチフネスCS300’は、例えば式(32)を用いて、外挿値CS300から求められる。ただし、CS300を求めるときの外挿には1次式を用いる。定数p12は、0.2〜0.35の範囲(例えば0.27)とし、定数p13は、0.3〜0.6の範囲(例えば0.45)とする。
図5は、正規化コーナリングスチフネスの補正結果を示す図である。図5には、左右タイヤの実験データとともに、正規化コーナリングスチフネスの近似式の値と補正式の値とが対比して示されている。なお、タイヤデータとしては、タイヤの非対称性の影響を考慮して、左右タイヤの実験データの平均値が用いられている。図5に示すように、近似値は、接地荷重Fが臨界荷重FzLI程度までは適切であるが、それ以上では過大となっている。一方、補正式を適用することで、接地荷重Fが大きい場合でも、適切な値が得られている。
正規化キャンバスチフネスは、接地荷重Fが臨界荷重FzLI程度以上では一定に収束する傾向がある。これに対し、正規化キャンバスチフネスは、接地荷重Fが臨界荷重FzLI程度以上である場合には、過大に設定され易くなる。そこで、臨界荷重FzLIより大きい接地荷重Fでは、式(16)の括弧内の近似式の値に代えて、臨界荷重FzLIに対応する値が適用される。
図6は、正規化キャンバスチフネスの補正結果を示す図である。図6には、左右タイヤの実験データとともに、正規化キャンバスチフネスの近似式と補正式とが対比して示されている。図6に示すように、近似式の値は、接地荷重Fが臨界荷重FzLI程度までは適切であるが、それ以上では過大となっている。一方、補正式を適用することで、接地荷重Fが大きい場合でも、適切な値が得られている。
正規化セルフアライニングスチフネスは、接地荷重Fの増加に応じて増加し、極大値を超えた後に一定となる傾向がある。これに対し、正規化セルフアライニングスチフネスは、極大値に対応する接地荷重Fより大きい接地荷重Fでは、近似式(21)により過小に設定され易くなる。そこで、極大値に対応する接地荷重Fより大きい接地荷重Fでは、近似式の値に代えて極大値が適用される。
図7は、正規化セルフアライニングスチフネスの補正結果を示す図である。図7には、左右タイヤの実験データとともに、正規化セルフアライニングスチフネスの近似式の値と補正式の値とが対比して示されている。図7に示すように、近似式の値は、極大値に対応する接地荷重Fまでは適切であるが、それ以上では過大となっている。一方、補正式を適用することで、接地荷重Fが大きい場合でも、適切な値が得られている。
キャンバトルクスチフネスは、接地荷重Fの増加に応じて増加し、極大値を超えた後に一定となる傾向がある。これに対し、キャンバトルクスチフネスは、極大値に対応する接地荷重Fより大きい接地荷重Fでは、過小に設定され易くなる。そこで、極大値に対応する接地荷重Fより大きい接地荷重Fでは、極大値が適用される。
図8は、正規化キャンバトルクスチフネスの補正結果を示す図である。図8には、左右タイヤの実験データとともに、正規化キャンバトルクスチフネスの式(23)の括弧内の近似式の値と補正式とが対比して示されている。図8に示すように、近似式の値は、極大値に対応する接地荷重Fまでは適切であるが、それ以上では過小となっている。なお、図8には、キャンバトルクスチフネスCSの正規化値が示されており、臨界荷重FzLIに対応する接地荷重F以上では、正規化値がキャンバトルクスチフネスCSの極大値に相当する値を示している。一方、補正式を適用することで、接地荷重Fが大きい場合でも、適切な値が得られている。
図9は、純横スリップ特性(横力F)の推定結果を示す図である。図10は、純横スリップ特性(セルフアライニングトルクM)の推定結果を示す図である。図9及び図10には、3パターンの接地荷重Fを対象として、スリップ角αを増加させた後に再び減少させた場合における純横スリップ特性の変化傾向について、実測値と推測値を対比した結果が示されている。図9及び図10によれば、タイヤの純横スリップ特性が適切な精度で推定されていることが分かる。
図2の説明に戻って、タイヤ挙動推定装置10は、純横スリップ特性の推定処理に続いて複合スリップ特性の推定処理を行う(S15)。複合スリップとは、タイヤの前後方向と横方向で同時に生じるスリップであり、純前後スリップと純横スリップとを組み合せたスリップに相当する。推定部13は、モデル係数、入力パラメータ、及び前後力F及び横力Fの算出結果に基づいて、複合スリップ時のタイヤモデル式(33)、(34)からタイヤの前後力FxC[N]及び横力FyC[N]を推定する。前後力FxC及び横力FyCとは、それぞれ複合スリップ時にタイヤと接地面との間でタイヤの前後方向及び横方向に生じる力である。
また、推定部13は、モデル係数、入力パラメータ、前後力FxC及び横力FyCの算出結果に基づいて、複合スリップ時のタイヤモデル式(53)からタイヤのセルフアライニングトルクMzC[Nm]を推定する。セルフアライニングトルクMzCとは、複合スリップ時にタイヤの垂直軸周りに生じるモーメントである。
xC=F・G …(33)
yC=F・G+Svyx …(34)
ここで、
=cos[arctan{q・cos(arctan(q・κ))α}] …(35)
=cos[Cyx・arctan{Byx(κ+Shyx)}]/cos{Cyx・arctan(Byx・Shyx)} …(36)
yx=q・cos{arctan(q・α)} …(37)
yx=p14 …(38)
hyx=Shyx0・BxRef/B …(39)
vyx=w(cμy0+Cμy1・F)×F{1−F’/(b・FzLI)}・sin{arctan(-10γ)}×cos[arctan{B・α−Egy(B・α−arctan(B・α))}]×sin[arctan{B・κ−Egx(B・κ−arctan(B・κ))}]G・μscale …(40)
gx=p15 …(41)
gy=p16 …(42)
=p17・B/ByRef …(43)
=p18・B/BxRef …(44)
=p19・B/BxRef・q …(45)
=p20・B/ByRef・q …(46)
xRef=p21/(p22・C) …(47)
yRef=p23/(p24・C) …(48)
=p25+p26・tanh{(F/FzLI−p27)/p28} …(49)
hyx0=p29{1−min(F,FzLI)/FzLI} …(50)
’=min(F,b・FzLI) …(51)
b=p30 …(52)
係数G、Gは、純前後スリップ特性及び純横スリップ特性に対する複合スリップの影響を表すための重み係数である。係数Byx、Cyx、Egx、Egy、Shyx、Svyxは、複合スリップ時のタイヤモデルを規定するパラメータであり、シェープファクタCyx、スチフネスファクタByx、カーバチュアファクタEgx、Egy、垂直シフトSvyx、水平シフトShyxに相当する。
定数p14は、0.9〜1.1の範囲(例えば1.03)とし、定数p15は、-20〜0の範囲(例えば−5)とし、定数p16は、-20〜0の範囲(例えば-10)とする。定数p17は、20〜40の範囲(例えば30.9)とし、定数p18は、15〜25の範囲(例えば27.8)とし、定数p19は、10〜20の範囲(例えば14.1)とする。定数p20は、7〜15の範囲(例えば11.9)とし、定数p21は、20〜30の範囲(例えば24.5)とし、定数p22は、1.0〜1.2の範囲(例えば1.09)とする。定数p23は、15〜30の範囲(例えば20.2)とし、定数p24は、1.0〜1.2の範囲(例えば1.06)とし、定数p25は、0.5〜1.0の範囲(例えば0.7)とする。定数p26は、-0.15〜-0.05の範囲(例えば-0.1)とし、定数p27は、-1.0〜-0.5の範囲(例えば−0.7)とし、定数p28は、0.05〜0.15の範囲(例えば0.1)とする。定数p29は、-0.01〜0の範囲(例えば-0.005)とし、定数p30は、1〜2の範囲(例えば1.5)とする。
zC={t・Fy0+t(F−Fy0)}G・cos(α)+Gfy・FyC・FxC+Gγ・FxC …(53)
ここで、
=T(SAS/BCD,p31,B,x) …(54)
=T(CTQ/CS,0,B,x) …(55)
fy=p32・w(1−Fz1’/FzLI) …(56)
γ=p33・w・sin[arctan{p34・w(1−Fz2’/(b・FzLI))γ}] …(57)
x=arctan{sqrt(x +x )} …(58)
=tan(α) …(59)
=B/B・κ …(60)
z1’=min(F,FzLI) …(61)
z2’=min(F,b・FzLI) …(62)
b=p35 …(63)
係数t、tは、それぞれ複合スリップ時のニューマチックトレール及びキャンバトレールに相当する。係数Gfy、Gγは、それぞれ横力による前後力着力点の左右移動係数、キャンバ角γによる前後力着力点の左右移動係数に相当する。定数p31は、0.05〜0.15の範囲(例えば0.1)とし、定数p32は、-5×10−5〜-1×10−5の範囲(例えば-3×10−5)とし、定数p33は、-0.6〜-0.3の範囲(例えば-0.45)とする。定数p34は、20〜60の範囲(例えば40)とし、定数p35は、1〜2の範囲(例えば1.5)とする。
ここで、複合スリップ時のタイヤの前後力FxC、横力FyC、及びセルフアライニングトルクMzCは、式(39)、(40)、(43)〜(47)、(54)、(55)、(60)に示すように、純前後スリップ時の前後力Fの推定に用いたスチフネスファクタB、及び純横スリップ時の横力Fの推定に用いたスチフネスファクタBを用いて推定される。
図11は、複合スリップ特性(横力FyC)の推定結果を示す図である。図12は、複合スリップ特性(セルフアライニングトルクMzC)の推定結果を示す図である。図11及び図12には、3パターンの接地荷重Fを対象として、前後力FxCを増加させた後に再び減少させた場合における複合スリップ特性(横力FyC及びセルフアライニングトルクMzC)の変化傾向について、実測値と推測値を対比した結果が示されている。図11及び図12によれば、タイヤの複合スリップ特性が適切な精度で推定されていることが分かる。
図2の説明に戻って、タイヤ挙動推定装置10は、複合スリップ特性の推定処理に続いてパラメータの出力処理を行う(S16)。出力部14は、推定部13により推定されて格納部15に記憶されていた出力パラメータ、つまり純前後スリップ特性、純横スリップ特性、及び複合スリップ特性の推定値を出力する。
以上説明したように、本発明の実施形態に係るタイヤ挙動推定装置10によれば、タイヤの横摩擦係数μのキャンバ角変化率dγμyを用いて垂直シフトSを求めるとともにキャンバスチフネスCSを用いて水平シフトSを求め、垂直シフトS及び水平シフトSを用いて純横スリップ時のタイヤの横力Fを推定する。ここで、従来のタイヤ挙動推定装置では、多くの実験データにタイヤモデルをフィッティングして決定される多数のパラメータを用いて垂直シフトS及び水平シフトSを求めていた。これに対し、タイヤ挙動推定装置10によれば、横摩擦係数μのキャンバ角変化率dγμyの関数として垂直シフトSを求めるとともにキャンバスチフネスCSの関数として水平シフトSを求めることにより、タイヤのキャンバ角γが純横スリップ時の横力Fに及ぼす影響を簡便かつ高精度に推定できる。結果として、タイヤ挙動を簡便かつ高精度に推定できる。
また、キャンバスチフネスCSにキャンバ角γの入力値を乗じた値から垂直シフトSを減算し、その減算結果をコーナリングスチフネスBCDで除した値を水平シフトSとして求めるので、キャンバ角γが純横スリップ時の横力Fに及ぼす影響を簡便かつ高精度に推定できる。
また、タイヤデータに基づいて、キャンバスチフネスCS、コーナリングスチフネスBCD、及び横摩擦係数μを近似して設定するので、純横スリップ時のタイヤモデルを規定するパラメータを簡便に求めることができる。
さらに、純横スリップ時のセルフアライニングトルクMの推定処理では、式(17)に示すように、純横スリップ時の横力Fのうちスリップ角αによる寄与成分にニューマチックトレールtを乗じた値に、純横スリップ時の横力Fのうちキャンバ角γによる寄与成分にキャンバトレールtを乗じた値を加算し、その加算結果を用いて、純横スリップ時のタイヤのセルフアライニングトルクMを推定する。これにより、純横スリップ時にスリップ角α及びキャンバ角γのそれぞれがセルフアライニングトルクMに及ぼす影響を簡便かつ高精度に推定できる。純横スリップ時の横力Fの推定処理の結果を利用することで、正規化アライニングスチフネスと正規化キャンバトルクスチフネスに関するモデル係数以外のモデルデータを必要とせずに、セルフアライニングトルクMを簡便かつ高精度に推定できる。
また、タイヤデータを用いてセルフアライニングスチフネスSAS及びコーナリングスチフネスBCDを近似して設定し、式(19)に示すように、セルフアライニングスチフネスSASをコーナリングスチフネスBCDで除した値、及び純横スリップ時の横力Fの推定に用いたスチフネスファクタBを用いて、ニューマチックトレールtを求める。これにより、スリップ角αがセルフアライニングトルクMに及ぼす影響を簡便かつ高精度に推定できる。
また、タイヤデータを用いてキャンバスチフネスCS及びキャンバトルクスチフネスCTQを近似して設定し、式(20)に示すように、キャンバトルクスチフネスCTQをキャンバスチフネスCSで除した値、及び純横スリップ時の横力Fの推定に用いたスチフネスファクタBを用いて、キャンバトレールtを求める。これにより、キャンバ角γがセルフアライニングトルクMに及ぼす影響を簡便かつ高精度に推定できる。
さらに、タイヤの横摩擦係数μ、キャンバスチフネスCS、コーナリングスチフネスBCD、セルフアライニングスチフネスSAS、及びキャンバトルクスチフネスCTQのうち少なくとも1つの近似値をタイヤの接地荷重Fと臨界荷重FzLIとの比較結果に応じて補正する。これにより、モデル係数設定処理に用いる接地荷重Fに対して推定処理に用いる接地荷重Fが大きい場合でも、接地荷重Fに関する近似式の値が異常値となることを抑制できる。
複合スリップ特性の推定処理では、式(39)、(40)、(43)〜(47)、(54)、(55)、(60)に示すように、純前後スリップ時の前後力Fの推定に用いたスチフネスファクタB、及び純横スリップ時の横力Fの推定に用いたスチフネスファクタBを用いて、複合スリップ時のタイヤの前後力FxC、横力FyC、及びセルフアライニングトルクMzCのうち少なくとも1つを推定する。これにより、純前後スリップ特性及び純横スリップ特性の推定に用いるパラメータを用いて、複合スリップ特性を簡便かつ高精度に推定できる。
なお、前述した実施形態は、本発明に係るタイヤ挙動推定装置10の最良な実施形態を説明したものであり、本発明に係るタイヤ挙動推定装置10は、本実施形態に記載したものに限定されるものではない。本発明に係るタイヤ挙動推定装置10は、各請求項に記載した発明の要旨を逸脱しない範囲で本実施形態に係るタイヤ挙動推定装置10を変形し、または他のものに適用したものであってもよい。
例えば、上記実施形態では、本発明の一実施形態として、本発明の原理をタイヤ挙動推定装置10に適用する場合について説明した。しかし、本発明の原理は、前述したタイヤ挙動推定方法、及びタイヤ挙動推定方法を実施するためのプログラム、プログラムを記録した記録媒体にも同様に適用することができる。
また、上記実施形態では、純前後スリップ特性、純横スリップ特性、及び複合スリップ特性を一連の推定処理にて推定する場合について説明した。しかし、例えば、純横スリップ特性のみ、又は複合スリップ特性のみを推定するようにタイヤ挙動推定装置10を構成してもよい。この場合、例えば、純横スリップ特性の推定に用いる係数B、又は複合スリップ特性の推定に用いる係数B、B、F、Fが入力パラメータとして入力されてもよい。
例えば、上記実施形態では、スリップ特性のタイヤモデル式の一例を挙げたが、本発明の範囲を逸脱しない程度の範囲において、上記モデル式に対して他の項を追加したり、一部の項を削除したりする等の修正を加えてもよい。また、定数p〜p35の範囲の一例を挙げたが、定数p〜p35の範囲は上記例に限定されるものではない。
10…タイヤ挙動推定装置、11…設定部、12…入力部、13…推定部、14…出力部、15…格納部。

Claims (11)

  1. 車両のタイヤの挙動を推定するタイヤ挙動推定装置であって、
    タイヤの横摩擦係数のキャンバ角変化率を用いて垂直シフトを求めるとともにキャンバスチフネスを用いて水平シフトを求め、前記垂直シフト及び前記水平シフトを用いて純横スリップ時の前記タイヤの横力を推定する推定部を備え、
    前記垂直シフトをS 、前記キャンバ角変化率をdγ μy 、前記タイヤの接地荷重をF 、前記タイヤのキャンバ角をγ、前記タイヤの摩擦係数のスケーリングファクタをμ scale としたときに、前記垂直シフトは、式S =dγ μy ・F ・γ・μ scale により求められ、
    前記水平シフトをS 、前記キャンバスチフネスをCS、コーナリングスチフネスをBCD としたときに、前記水平シフトは、式S =(CS・γ―S )/BCD により求められ、
    前記推定部は、前記横力をF 、ピークファクタをD 、シェープファクタをC 、スチフネスファクタをB 、スリップ角αと水平シフトS の和をx、カーバチュアファクタをE としたときに、前記横力を式F =D ・sin[C ・arctan{B ・x−E (B ・x−arctan(B ・x))}]+S を用いて推定する
    タイヤ挙動推定装置。
  2. 推定部は、前記キャンバスチフネスに前記キャンバ角の入力値を乗じた値から前記垂直シフトを減算し、その減算結果を前記コーナリングスチフネスで除した値を前記水平シフトとして求める、請求項1に記載のタイヤ挙動推定装置。
  3. タイヤデータに基づいて前記キャンバスチフネス及び前記コーナリングスチフネスを近似して設定する設定部をさらに備える、請求項2に記載のタイヤ挙動推定装置。
  4. 前記設定部が、タイヤデータに基づいて前記横摩擦係数を近似して設定する、請求項3に記載のタイヤ挙動推定装置。
  5. 前記推定部が、純横スリップ時の前記横力のうちスリップ角による寄与成分にニューマチックトレールを乗じた値に、純横スリップ時の前記横力のうち前記キャンバ角による寄与成分にキャンバトレールを乗じた値を加算し、その加算結果を用いて、純横スリップ時の前記タイヤのセルフアライニングトルクを推定する、請求項3又は4に記載のタイヤ挙動推定装置。
  6. 前記設定部が、タイヤデータを用いてコーナリングスチフネス及びセルフアライニングスチフネスを近似して設定し、
    前記推定部が、前記コーナリングスチフネスを前記セルフアライニングスチフネスで除した値、及び純横スリップ時の前記横力の推定に用いたスチフネスファクタを用いて、前記ニューマチックトレールを求める、請求項5に記載のタイヤ挙動推定装置。
  7. 前記設定部が、タイヤデータを用いて前記キャンバスチフネス及びキャンバトルクスチフネスを近似して設定し、
    前記推定部が、前記キャンバトルクスチフネスを前記キャンバスチフネスで除した値、及び純横スリップ時の前記横力の推定に用いたスチフネスファクタを用いて、前記キャンバトレールを求める、請求項5又は6に記載のタイヤ挙動推定装置。
  8. 前記推定部が、純前後スリップ時の前後力の推定に用いたスチフネスファクタ、及び純横スリップ時の前記横力の推定に用いたスチフネスファクタを用いて、複合スリップ時の前記タイヤの前後力、横力、及びセルフアライニングトルクのうち少なくとも1つを推定する、請求項1〜7のいずれか一項に記載のタイヤ挙動推定装置。
  9. 前記推定部は、前記横摩擦係数、前記キャンバスチフネス、コーナリングスチフネス、セルフアライニングスチフネス、及びキャンバトルクスチフネスのうち少なくとも1つの近似値を前記タイヤの接地荷重と臨界荷重との比較結果に応じて補正する、請求項1〜8のいずれか一項に記載のタイヤ挙動推定装置。
  10. 前記推定部が、ブレーキングスチフネスを純前後スリップ時のシェープファクタ及びピークファクタで除して純前後スリップ時の前記スチフネスファクタを求める、請求項6に記載のタイヤ挙動推定装置。
  11. 前記推定部が、コーナリングスチフネスを純横スリップ時のシェープファクタ及びピークファクタで除して純横スリップ時の前記スチフネスファクタを求める、請求項8に記載のタイヤ挙動推定装置。
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