JP6085499B2 - 電着塗装方法 - Google Patents

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Description

本発明は、優れた耐食性を有する電着塗膜を形成することができる電着塗装方法に関する。
電着塗装は、複雑な形状を有する被塗物であっても細部にまで塗装を施すことができ、自動的かつ連続的に塗装することができるので、特に自動車車体などの大型で複雑な形状を有する被塗物の下塗り塗装方法として広く実用化されている。このような電着塗装として、カチオン電着塗装が広く用いられている。カチオン電着塗装は、カチオン電着塗料組成物中に被塗物を陰極として浸漬させ、電圧を印加することにより行われる塗装方法である。
カチオン電着塗装の前において、被塗物に、リン酸亜鉛化成処理などの化成処理を施すことが多い。この化成処理を施すことによって、耐食性および付着性を向上させることができる。しかしながら、リン酸亜鉛化成処理において用いられる化成処理組成物は、金属イオン濃度が高く、非常に反応性が強いため、排水処理にコストがかかるなど、経済性、作業性の観点から好ましくない。更に、リン酸亜鉛系の化成処理組成物による化成処理においては、金属の表面処理に伴って水に不溶な塩類が生成し、化成処理槽内部に沈殿として析出する。このような沈殿物は一般にスラッジと呼ばれ、スラッジの除去・廃棄に伴うコストの発生が問題視されている。また、リン酸イオンは河川や海洋の富栄養化をもたらすなど、環境に対する負荷を与えるおそれがある。加えて、リン酸亜鉛系の化成処理組成物による表面処理においては、事前に表面調整を行うことが必要であり、表面処理の工程が複雑かつ長くなるという生産効率上の問題点もあった。
このようなリン酸亜鉛系の化成処理組成物の代わりに、ジルコニウム系の化成処理組成物を用いる方法が検討されつつある。しかしながらジルコニウム系の化成処理組成物によって形成される化成被膜は、リン酸亜鉛系の化成処理組成物によって形成される化成被膜と比べて膜厚が薄いため、電着時に表面電流が不均一になり、塗装外観やつきまわり性が低下する。また、ジルコニウム系の化成処理組成物はリン酸亜鉛系の化成処理組成物よりスラッジ発生量は抑制できるが、被塗物をエッチングして皮膜を形成させる析出原理のため、スラッジ発生は避けられない。
特開2011−84729号公報(特許文献1)および特許文献1に関連する特開2011−84723号公報(特許文献2)には、カチオン電着塗料組成物中にジルコニウム、チタン、コバルト、バナジウム、タングステン、モリブデン、銅、インジウム、亜鉛、アルミニウム、ビスマス、イットリウム、ランタノイド金属、アルカリ金属およびアルカリ土類金属から選ばれる少なくとも1種の金属の化合物を配合して、窒素酸化物イオンの存在下に、被塗物金属を所定時間浸漬した後に、電着塗装することが記載されている。この方法では、被塗物の化成処理をせずに、直接電着浴に浸漬して、被塗物表面に不動態化皮膜を形成した後に、電着塗装を行う方法が記載されている。しかし、実際に実施例で使用されている金属種は、全て1種の金属のみであり、2種以上を使用した例は無く、しかも亜鉛と別の金属の組合せは記載されていない。
また、電着浴で浸漬し、不動態化皮膜を形成させることは、基材をエッチングさせる化成皮膜の反応のため、スラッジ発生は避けられない。また、溶出した鉄イオンによる電導度上昇に伴う塗装性低下も課題である。
特表2008−538383号公報(特許文献3)には、電着塗料中に希土類金属化合物を配合して、被塗物を50V未満の電圧で処理した後に、50〜450Vの電圧で電着塗装する、複層塗膜形成方法が記載されている。この方法も、被塗物に化成処理をせずに、直接電着浴中に浸漬して弱い電圧と強い電圧の2段階で電着することにより、化成処理を省略しているが、電圧を印加しない方法は記載されていない。これは耐食性が前処理を行なう場合に比べて劣ることに加え、自動車車体のような構造物を均一に電位制御させることは実質的に非常に困難なため、実用的ではない。
特開2011−84729号公報 特開2011−84723号公報 特表2008−538383号公報
本発明は、被塗物の化成処理を省略して、直接電着塗装する方法において、より簡略化した処理で耐食性、密着性の高い電着塗膜を形成すると同時に、電位差の発生する構造物塗装においても化成処理前を行なった場合と同等の品質を保ち、スラッジを発生させない電着塗装方法を提供する。
本発明は、電着塗料組成物中に、実質的に化成処理されていない被塗物を、電圧を印加せずに0〜30秒間浸漬した後、電圧を印加して電着皮膜を形成する工程、および該電着皮膜を加熱硬化して電着塗膜を形成する工程を含む電着塗装方法であって、
該電着塗料組成物が、
溶解金属化合物である溶解亜鉛化合物(A1)および溶解ジルコニウム化合物(A2)、ならびにアミン化樹脂(B)、硬化剤(C)および亜硝酸金属塩(D)を含み、 該アミン化樹脂(B)が、数平均分子量が1,000〜5,000であり、アミン価が20〜100mgKOH/gであり、かつ、水酸基価が50〜400mgKOH/gであり、かつ、
該硬化剤(C)がブロックイソシアネート硬化剤であり、
該アミン化樹脂(B)と、該ブロックイソシアネート硬化剤とが、電着塗膜中において該加熱硬化時に反応した場合における理論残存水酸基価が50〜350mgKOH/gであることを特徴とする電着塗装方法を提供するものである。
本発明では、更に、以下の態様を提供する:
前記電着塗料組成物が、さらに、スルホン酸、有機ホスホン酸、有機カルボン酸、アミノ酸、アミノカルボン酸、糖酸およびカルボキシル基含有ビニル樹脂からなる群から選択される少なくとも1種であるキレート酸(E)を含むこと。
前記電着塗料組成物が、さらにアミノシラン化合物(F)を含むこと。
前記電着塗料組成物が、更に、可塑剤を含むこと。
本発明の電着塗装方法によれば、被塗物にリン酸亜鉛化成処理やジルコニウム化成処理をしていなくても、被塗物を浸漬して電着塗装を行うだけで良好な耐食性を有する電着塗膜を得ることができる。本発明の電着塗装方法を用いることによって、被塗物にジルコニウム化成処理やリン酸亜鉛化成処理工程を省略することができ、それら化成処理に伴う維持管理に必要とされるコストおよび労力を削減することができる。さらに、化成処理を行わないので化成処理では必ず発生するスラッジの問題が生じない。もちろん、本発明の電着塗装方法は、ジルコニウム化成処理やリン酸亜鉛化成処理を行った被塗物にも有効な被膜を形成することができる。
本発明の電着塗装方法では、溶解亜鉛化合物および溶解ジルコニウム化合物を含み、かつ亜硝酸金属塩を含む特定の電着塗料組成物を用いると、耐食性および密着性を有する電着塗膜を得ることができる。当該電着塗料組成物中に被塗物を浸漬すると、被塗物上に亜鉛とジルコニウムの複合物からなる無機層が直ちに析出するため、電圧を印加せずに0〜30秒間浸漬した後、電圧を印加して電着皮膜を形成する工程を行なうと、被塗物上に当該無機層が形成され、その上層として電着塗料組成物に含有される樹脂を主体とする樹脂皮膜である電着皮膜が形成される。
亜鉛は、周知のように、入手容易な金属種である上、ジルコニウムと併用し、かつ亜硝酸金属塩と組合せることで、被塗物上形成される無機層は均一かつ緻密なものとなるので、その結果として耐食性および密着性が向上するものと考えられる。
用語の定義
本明細書において「実質的に化成処理されていない被塗物」とは、被塗物に対して電着塗装浴に浸漬する前に行われる化成処理、例えばリン酸亜鉛化成処理やジルコニウム化成処理を行わないことを意味するが、その他の処理、例えば脱脂処理などは行われることを意味する。
電着塗料組成物
本発明の電着塗装方法で用いる電着塗料組成物は、溶解金属化合物である溶解亜鉛化合物(A1)および溶解ジルコニウム化合物(A2)、ならびにアミン化樹脂(B)、硬化剤(C)および亜硝酸金属塩(D)を含む。以下、各成分について詳述する。
溶解金属化合物である溶解亜鉛化合物(A1)および溶解ジルコニウム化合物(A2)
本発明の電着塗装方法で用いる電着塗料組成物は、溶解金属化合物である溶解亜鉛化合物(A1)および溶解ジルコニウム化合物(A2)を必須成分として含む。本明細書中において、溶解金属化合物とは、硝酸でpH4に調整した20℃の水に対して、金属換算で0.1質量%以上が溶解するものである。この溶解金属化合物は、上記の特性を有することにより、電着塗料組成物中において全部が溶解し、または一部が溶解し残りが分散した状態で存在する。ここで、溶解とは溶媒に溶けて均一となっている状態および微分散している状態をいう。具体的には、12000rpmで30分間遠心分離した際に沈殿しない状態をいう。この溶解金属化合物について、一部が溶解せずに電着塗料組成物中に分散した状態で存在する場合は、体積平均粒子径D50が3μm以下であるのが好ましい。ここで、上記体積平均粒子径D50は、例えば、動的光散乱式粒度分析計(日機装社製、「ナノトラックUPA150」)等の粒度測定装置を用いて測定することができる。本発明で用いる電着塗料組成物が、このような溶解金属化合物である溶解亜鉛化合物(A1)および溶解ジルコニウム化合物(A2)を含むことによって、優れた耐食性を有する電着塗膜が得られることとなる。具体的には、本発明の電着塗装方法で用いる特定の電着塗料組成物において、溶解金属化合物である溶解亜鉛化合物(A1)及び溶解ジルコニウム化合物(A2)は、電着塗装工程の初期に基材表面に樹脂皮膜に優先して亜鉛およびジルコニウムの複合物からなる無機層を形成させることで加熱硬化後の電着塗膜に密着性を付与する。また、亜鉛およびジルコニウムは、樹脂皮膜にも取り込まれ、焼付け時に無機架橋剤として、塗膜の架橋密度およびガラス転移温度(Tg)を向上させることで遮断性を上げる。このため優れた耐食性を有する硬化電着塗膜が得られることとなる。
本発明では、溶解亜鉛化合物(A1)は、亜鉛(Zn)化合物であって、溶解金属化合物に該当するものであり、溶解ジルコニウム化合物(A2)は、ジルコニウム(Zr)化合物であって、溶解金属化合物に該当するものである。
本発明の電着塗装方法で用いる電着塗料組成物は、溶解金属化合物として溶解亜鉛化合物(A1)及び溶解ジルコニウム化合物(A2)を用いると、後述の亜硝酸金属塩と組み合わせることで亜鉛及びジルコニウムの析出性が向上し、均一かつ緻密な亜鉛とジルコニウムの複合膜を形成することができ、電着塗膜の密着性も向上する。
溶解亜鉛化合物(A1)の例として、例えば、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、酢酸亜鉛、乳酸亜鉛、硝酸亜鉛、メタンスルホン酸亜鉛、ギ酸亜鉛、リン酸亜鉛等の亜鉛化合物が挙げられ、メタンスルホン酸亜鉛、酸化亜鉛が好ましく、特にメタンスルホン酸亜鉛が好ましい。メタンスルホン酸亜鉛はキレート酸を含むため、電着塗装性に優れ、酸化亜鉛は塗料電導度を上げにくいため、電着塗装性に優れる。上記例示した溶解亜鉛化合物(A1)のうち酸化亜鉛、水酸化亜鉛およびリン酸亜鉛は、溶解金属化合物として一部は溶解し、一部は微粒子として存在するものであり、カチオン分散剤で分散された、体積平均粒子径D50が3μm以下となるもの好ましい。ここでカチオン分散剤として、例えば、4級アンモニウム基、3級スルホニウム基および1級アミン基から選択される少なくとも1種または2種以上を有する変性エポキシ樹脂などの、カチオン基を有する分散樹脂、そしてアミノシラン化合物(F)などが挙げられる。なお、カチオン分散剤で分散された酸化亜鉛、水酸化亜鉛およびリン酸亜鉛などの体積平均粒子径D50は、顔料分散ペーストの貯蔵安定性が良好となることから、0.05μm以上であることが好ましい。
溶解ジルコニウム化合物(A2)の例として、例えば、フッ化ジルコン酸;フッ化ジルコン酸カリウム、フッ化ジルコン酸アンモニウムなどのフッ化ジルコン酸の塩;フッ化ジルコニウム;酸化ジルコニウム;硝酸ジルコニウム;炭酸ジルコニウム;硝酸ジルコニル、硫酸ジルコニル、炭酸ジルコニル、酢酸ジルコニルなどが挙げられ、フッ化ジルコン酸、硝酸ジルコニルが好ましい。
本発明の電着塗装方法で用いられる電着塗料組成物に含まれる溶解亜鉛化合物(A1)の含有量は、金属元素換算で0.01〜0.3質量%であるのが好ましく、0.002〜0.2質量%であるのがより好ましい。ここで、「金属元素換算」とは、金属化合物の含有量に金属元素換算係数(金属化合物量を金属元素量に換算するための係数であり、具体的には、金属化合物中の金属元素の原子量を、金属化合物の分子量で除算した値を意味する。)を積算することにより、目的の金属元素量を求めることである。例えば、溶解亜鉛化合物(A1)が酢酸亜鉛(CZn、分子量183.48)である場合、0.01質量%の亜鉛の金属元素換算含有量は、0.01質量%×(65.38÷183.48)の計算により0.00356質量%と算出される。溶解亜鉛化合物(A1)含有量が、亜鉛の金属元素換算で0.01質量%以上であることにより、被塗物に良好な耐食性を付与することができる。また溶解亜鉛化合物(A1)の含有量が亜鉛の金属元素換算で0.3質量%以下であることにより、アミン化樹脂との凝集が抑制され、貯蔵安定性、耐食性、塗装性が確保される。
溶解ジルコニウム化合物(A2)は、ジルコニウムの金属元素換算で0.003〜0.3質量%であることが好ましく、0.01〜0.1質量%であることがより好ましい。0.003質量%より少ないと、析出量が十分確保できず、得られる電着塗膜の耐食性が低下の欠点を有し、0.3質量%より多いと、貯蔵安定性や塗膜外観が低下するおそれがある。
本発明の電着塗装方法で用いる電着塗料組成物における溶解亜鉛化合物(A1)と、溶解ジルコニウム化合物(A2)との含有比率は、Zn/Zrの質量%比0.01〜1000であることが好ましく、0.1〜100であることがより好ましい。Zn/Zrの質量%比が0.01より小さいときは、無機層への亜鉛の析出量が十分でなく耐食性が低下し、1000より大きいときは、Zrとの併用効果が少ないため耐食性が低下する。
電着塗料組成物においては、硬化触媒として一般的にジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫オキシドなどの有機錫硬化触媒が用いられることが多い。一方でこれらの有機錫化合物は、近年、その毒性が問題視されつつあり、使用規制について検討されていることから、有機錫硬化触媒を含有しないことが好ましい。本発明の電着塗装方法で用いる電着塗料組成物は、有機錫硬化触媒を含有することも可能であるが、有機錫硬化触媒を含有しなくても、上記溶解亜鉛化合物(A1)および溶解ジルコニウム化合物(A2)が含まれることによって、優れた加熱硬化性を有するという特徴がある。
アミン化樹脂(B)
本発明の電着塗装方法で用いる電着塗料組成物はアミン化樹脂(B)を含む。このアミン化樹脂(B)は、本発明の電着塗装方法で得られる電着塗膜を構成する塗膜形成樹脂である。アミン化樹脂(B)として、樹脂骨格中のオキシラン環を有機アミン化合物で変性して得られるカチオン変性エポキシ樹脂が好ましい。一般にカチオン変性エポキシ樹脂は、出発原料樹脂分子内のオキシラン環を1級アミン、2級アミンあるいは3級アミンおよび/またはその酸塩などのアミン類との反応によって開環して製造される。出発原料樹脂の典型例は、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールノボラック、クレゾールノボラックなどの多環式フェノール化合物とエピクロルヒドリンとの反応生成物であるポリフェノールポリグリシジルエーテル型エポキシ樹脂である。また他の出発原料樹脂の例として、特開平5−306327号公報に記載のオキサゾリドン環含有エポキシ樹脂を挙げることができる。これらのエポキシ樹脂は、ジイソシアネート化合物、またはジイソシアネート化合物のイソシアネート基をメタノール、エタノールなどの低級アルコールでブロックして得られたビスウレタン化合物と、エピクロルヒドリンとの反応によって調製することができる。
上記出発原料樹脂は、アミン類によるオキシラン環の開環反応の前に、2官能性のポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ビスフェノール類、2塩基性カルボン酸などにより鎖延長して用いることができる。
また同じく、アミン類によるオキシラン環の開環反応の前に、分子量またはアミン当量の調節、熱フロー性の改良などを目的として、一部のオキシラン環に対して2−エチルヘキサノール、ノニルフェノール、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールモノn−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテルなどのモノヒドロキシ化合物を付加して用いることもできる。
オキシラン環を開環し、アミノ基を導入する際に使用し得るアミン類の例としては、ブチルアミン、オクチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、メチルブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、トリエチルアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミンなどの1級アミン、2級アミンまたは3級アミンおよび/もしくはその酸塩を挙げることができる。また、アミノエチルエタノールアミンメチルイソブチルケチミンなどのケチミンブロック1級アミノ基含有2級アミン、ジエチレントリアミンジケチミンも使用することができる。これらのアミン類は、全てのオキシラン環を開環させるために、オキシラン環に対して少なくとも当量で反応させる必要がある。
アミン化樹脂(B)の数平均分子量は、1,000〜5,000である。数平均分子量が1,000以上であることにより、得られる硬化電着塗膜の耐溶剤性および耐食性などの物性が良好となる。一方で、数平均分子量が5,000以下であることにより、アミン化樹脂の粘度調整が容易となって円滑な合成が可能となり、また、得られたアミン化樹脂(B)の乳化分散の取扱いが容易になる。アミン化樹脂(B)の数平均分子量は1,600〜3,200の範囲であるのが好ましい。
なお、本明細書において、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の数平均分子量である。
アミン化樹脂(B)のアミン価は、20〜100mgKOH/gの範囲内である。アミン化樹脂(B)のアミン価が20mgKOH/g以上であることにより、電着塗料組成物中におけるアミン化樹脂(B)の乳化分散安定性が良好となる。一方で、アミン価が100mgKOH/g以下であることにより、硬化電着塗膜中のアミノ基の量が適正となり、塗膜の耐水性を低下させるおそれがない。アミン化樹脂(B)のアミン価は、20〜80mgKOH/gの範囲内であるのが好ましい。
アミン化樹脂(B)の水酸基価は、50〜400mgKOH/gの範囲内である。水酸基価が50mgKOH/g以上であることにより、硬化電着塗膜において硬化が良好となる。一方で、水酸基価が400mgKOH/g以下であることにより、硬化電着塗膜中に残存する水酸基の量が適正となり、塗膜の耐水性を低下させるおそれがない。アミン化樹脂(B)の水酸基価は、100〜300mgKOH/gの範囲内であるのが好ましい。
本発明で用いる電着塗料組成物において、数平均分子量が1,000〜5,000であり、アミン価が20〜100mgKOH/gであり、かつ、水酸基価が50〜400mgKOH/gであるアミン化樹脂(B)を用いることによって、被塗物に優れた耐食性を付与することができるという利点がある。
なおアミン化樹脂(B)としては、必要に応じて、アミン価および/または水酸基価の異なるアミン化樹脂を併用してもよい。2種以上の異なるアミン価、水酸基価のアミン化樹脂を併用する場合は、使用するアミン化樹脂の質量比に基づいて算出する平均アミン価および平均水酸基価が、上記の数値範囲である必要がある。また、併用するアミン化樹脂(B)としては、アミン価が20〜50mgKOH/gであり、かつ、水酸基価が50〜300mgKOH/gであるアミン化樹脂と、アミン価が50〜200mgKOH/gであり、かつ、水酸基価が200〜500mgKOH/gであるアミン化樹脂との併用が好ましい。このような組合わせを用いると、エマルションのコア部がより疎水となりシェル部が親水となるため優れた耐食性を付与することができるという利点がある。
なおアミン化樹脂(B)は、必要に応じて、アミノ基含有アクリル樹脂、アミノ基含有ポリエステル樹脂などを含んでもよい。
硬化剤(C)
本発明で用いる電着塗料組成物は、硬化剤(C)として、貯蔵安定性と塗装性能からブロックイソシアネート硬化剤を用いる。この硬化剤(C)も電着塗膜を構成する塗膜形成樹脂である。硬化剤として、メラミン樹脂やフェノール樹脂等の有機硬化剤、シランカップリング剤、金属硬化剤からなる群から選ばれる少なくとも一種の硬化剤を硬化剤(C)と併用してもよい。ブロックイソシアネート硬化剤は、ポリイソシアネートを、封止剤でブロック化することによって調製することができる。
ポリイソシアネートの例としては、ヘキサメチレンジイソシアネート(3量体を含む)、テトラメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイシシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)などの脂環式ポリイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネートが挙げられる。
封止剤の例としては、n−ブタノール、n−ヘキシルアルコール、2−エチルヘキサノール、ラウリルアルコール、フェノールカルビノール、メチルフェニルカルビノールなどの一価のアルキル(または芳香族)アルコール類;エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテルなどのセロソルブ類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールフェノールなどのポリエーテル型両末端ジオール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオールなどのジオール類と、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸などのジカルボン酸類から得られるポリエステル型両末端ポリオール類;パラ−t−ブチルフェノール、クレゾールなどのフェノール類;ジメチルケトオキシム、メチルエチルケトオキシム、メチルイソブチルケトオキシム、メチルアミルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシムなどのオキシム類;およびε−カプロラクタム、γ−ブチロラクタムに代表されるラクタム類が好ましく用いられる。
ブロックイソシアネート硬化剤のブロック化率は100%であるのが好ましい。これにより、電着塗料組成物の貯蔵安定性が良好になるという利点がある。
本発明で用いる電着塗料組成物において、上記アミン化樹脂(B)と、ブロックイソシアネート硬化剤である硬化剤(C)とが、電着塗膜中において加熱硬化時に反応した場合における理論残存水酸基価が50〜350mgKOH/gであることを条件とする。ここで「理論残存水酸基価」とは、電着塗装によって得られた電着塗膜を加熱硬化させた場合において、アミン化樹脂(B)と、ブロックイソシアネート硬化剤である硬化剤(C)が反応した後に電着塗膜中に残存するアミン化樹脂(B)に由来する水酸基価を意味する。
上記の理論残存水酸基価が50〜350mgKOH/gを満たすことによって、硬化電着塗膜において優れた耐食性が発現することとなる。これは、アミン化樹脂(B)とブロックイソシアネート硬化剤である硬化剤(C)とが加熱硬化により反応した後の硬化電着塗膜中において、アミン化樹脂(B)に由来する残存する水酸基と、溶解亜鉛化合物(A1)および溶解ジルコニウム化合物(A2)に由来する亜鉛およびジルコニウムとが水素結合を形成し、これにより被塗物と電着塗膜との密着性が向上することに由来するためと推測される。
ブロックイソシアネート硬化剤である硬化剤(C)は、アミン化樹脂(B)の1級アミンと優先的に反応し、さらに水酸基と反応して硬化する。そして、アミン化樹脂(B)とブロックイソシアネート硬化剤とが加熱硬化により反応した後の硬化電着塗膜中において、アミン化樹脂(B)に由来する残存する水酸基が、溶解亜鉛化合物(A1)および溶解ジルコニウム化合物(A2)に由来する亜鉛およびジルコニウムと相互作用することで、被塗物と電着塗膜との密着性が向上すると考えられる。
アミン化樹脂(B)と、ブロックイソシアネート硬化剤とが、電着塗膜中において加熱硬化時に反応した場合における理論残存水酸基価は、アミン化樹脂(B)の水酸基価(mgKOH/g)と1級アミン価(mgKOH/g)の合計に、アミン化樹脂(B)の質量と硬化剤(C)の質量との合計に対するアミン化樹脂(B)の質量の比率((B)/(B)+(C))を乗じた数値から、硬化剤(C)のイソシアネート基価(mgKOH/g)にアミン化樹脂(B)の質量と硬化剤(C)の質量との合計に対する硬化剤(C)の質量の比率((C)/(B)+(C))を乗じた数値を減ずることで求められる。たとえばアミン化樹脂の1級アミン価が17mgKOH/g、水酸基価が240mgKOH/g、硬化剤のイソシアネート基価が252mgKOH/g、硬化剤(C)の質量に対するアミン化樹脂(B)の質量が4倍であれば、残存水酸基価は(17+240)×0.8−(252×0.2)で155mgKOH/gと計算される。
亜硝酸金属塩(D)
本発明の電着塗装方法で用いる電着塗料組成物は、成分(D)として、亜硝酸金属塩(D)を含む。亜硝酸金属塩(D)は、上記溶解金属化合物である溶解亜鉛化合物(A1)または溶解ジルコニウム化合物(A2)とは異なるものであり、また後述のその他の添加剤とも異なるものである。亜硝酸金属塩(D)は、好ましくは亜硝酸の2価の金属塩、特に亜硝酸金属塩としては塗膜密着性や塗膜外観の観点から、カルシウム塩もしくは亜鉛塩が好ましい。本発明においては、亜硝酸金属塩(D)を用いることによって、溶解亜鉛化合物(A1)および溶解ジルコニウム化合物(A2)に由来する亜鉛及びジルコニウムの複合物からなる無機層の基材への析出が促進されるため、被塗物と得られる電着塗膜との密着性が向上し、耐食性が向上するという利点がある。
亜硝酸金属塩(D)は、酸化力が非常に強いため、より少量で無機層の析出促進効果がある。このため、カソード密着性が特に優れるため耐食性が向上する。
本発明では、亜硝酸金属塩(D)を加えることで、亜鉛およびジルコニウムの複合物からなる無機層の析出が大きく促進され被塗物表面の無機層の析出量が増えるため、防錆性が向上する。
上記亜硝酸金属塩(D)の含有量は、電着塗料組成物の全質量に対して0.001〜0.2質量%であるのが好ましい。より好ましくは0.01〜0.06質量%である。亜硝酸金属塩(D)の含有量が0.001質量%以上であることにより、被塗物表面への無機層析出が促進されるため、密着性が向上し、耐食性が優れるので、より良好な耐食性が得られる利点がある。一方、1質量%以下であることにより、塗装外観との両立が可能である。
可塑剤
本発明の電着塗装方法で用いる電着塗料組成物は、可塑剤を含有することが好ましい。溶解亜鉛化合物(A1)および溶解ジルコニウム化合物(A2)は、被塗物に無機層を形成するとともに、樹脂皮膜にも取り込まれる。樹脂皮膜において塗膜形成樹脂と金属は水素結合をすることにより内部応力が高くなりやすく、塗膜物性が硬くなりやすい。このため、本願の電着塗装方法では、電着塗料組成物に可塑剤を含有させることにより内部応力を低減させ電着塗膜の可塑性を挙げることができる。可塑剤はアルキレンオキサイド付加物が好ましい。さらにエチレンオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物が好ましい。付加方法に特に限定はなく、例えばビスフェノールAやアルコールへのエチレンオキサイド付加物やジレチレントリアミンプロピレンオキサイド付加物やジエチレントリアミンプロピレンオキサイド付加物とエポキシ樹脂との反応物でもよい。
可塑剤の含有量として、塗膜形成樹脂の全樹脂固形分に対し0.1〜25質量%が好ましく、より好ましくは1〜10質量%である。
キレート酸(E)
本発明で用いる電着塗料組成物は、キレート酸(E)を含むのが好ましい。キレート酸(E)として、スルホン酸、有機ホスホン酸、有機カルボン酸、アミノ酸、アミノカルボン酸、糖酸およびカルボキシル基含有ビニル樹脂からなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。本発明の電着塗装方法で用いる電着塗料組成物にキレート酸(E)が含まれることによって、溶解亜鉛化合物(A1)および溶解ジルコニウム化合物(A2)に由来する亜鉛イオンおよびジルコニウムイオンがキレートされ、電導度が低減し、電着塗装により得られる塗膜の外観が向上することにより、優れた耐食性を有する硬化電着塗膜を形成することができるという利点がある。
キレート酸(E)としてのスルホン酸として、例えば、炭素数1〜20のアルカンスルホン酸、フェノールスルホン酸、アミノスルホン酸が挙げられる。これらのスルホン酸を形成する炭素数1〜20のアルキル基は、水酸基などの置換基を有していてもよい。好ましいスルホン酸として、例えば、メタンスルホン酸、スルファミン酸、フェノールスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、アミノスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)などが挙げられる。
キレート酸(E)としての有機ホスホン酸として、例えば、炭素数1〜20のアルキルホスホン酸、炭素数1〜20のアルキルビスホスホン酸、炭素数6〜20の芳香族ホスホン酸、炭素数6〜20の芳香族ビスホスホン酸などが挙げられる。これらのホスホン酸を形成する炭素数1〜20のアルキル基および炭素数6〜20の芳香族基は、水酸基などの置換基を有していてもよい。好ましい有機ホスホン酸として、例えば、1−ヒドロキシエチリデンビスホスホン酸などが挙げられる。
キレート酸(E)としての有機カルボン酸として、例えば、炭素数3〜20の脂肪酸、炭素数6〜20の芳香族カルボン酸、炭素数2〜20のオキソカルボン酸、炭素数3〜20のジカルボン酸、およびその他の有機カルボン酸などが挙げられる。なおここでいう「有機カルボン酸」には、後述するアミノカルボン酸は含まれないものとする。
炭素数3〜20の脂肪酸として、例えば、プロピオン酸、酪酸(ブチル酸)、ジメチルプロピオン酸(DMPA)、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、オレイン酸などが挙げられる。
炭素数6〜20の芳香族カルボン酸として、例えば、サリチル酸、没食子酸、安息香酸、フタル酸、ケイ皮酸などが挙げられる。
炭素数2〜20のオキソカルボン酸、炭素数3〜20のジカルボン酸およびその他の有機カルボン酸として、例えば、ピルビン酸、シュウ酸、乳酸、酒石酸、マレイン酸、フマル酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、クエン酸、アコニット酸、グルタル酸、アジピン酸などが挙げられる。これらの中でも、ジメチルプロピオン酸、乳酸などが好ましい。
キレート酸(E)としてのアミノ酸として、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、システイン、メチオニン、アスパラギン、グルタミン、プロリン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファンなどが挙げられる。これらの中でも、アスパラギン酸およびグリシンが好ましい。
キレート酸(E)としてのアミノカルボン酸は、分子中にアミノ基とカルボキシル基を有する酸であって上記のアミノ酸以外の化合物である。アミノカルボン酸として、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DPTA)、トリエチレンテトラアミン六酢酸などが挙げられる。
キレート酸(E)としての糖酸は、単糖を酸化して得られる、カルボキシル基を有する糖誘導体である。糖酸として、例えば、アルドン酸(グルコン酸、ガラクトン酸、マンノン酸など)、ウロン酸(グルクロン酸、ガラクツロン酸、マンヌロン酸など)、アルダル酸(グルカル酸、ガラクタル酸、マンナル酸など)、イズロン酸、グリセリン酸、シアル酸、トレオン酸、パンガミン酸、アスコルビン酸、ムラミン酸、ラクトビオン酸などが挙げられる。
キレート酸(E)としてのカルボキシル基含有ビニル樹脂として、例えば、カルボキシル基含有ポリビニルアルコール樹脂などが挙げられる。カルボキシル基含有ポリビニルアルコール樹脂は、例えば、ポリビニルアルコールの調製手順において、酢酸ビニルモノマーと併せてアクリル酸などのモノマーを共重合し、次いで、得られたポリ酢酸ビニルを加水分解する方法などによって製造することができる。
これらのキレート酸(E)のうち、アルカンスルホン酸、有機ホスホン酸、有機カルボン酸および/またはアミノ酸を用いるのがより好ましく、メタンスルホン酸、ジメチルプロピオン酸、または乳酸を用いるのがキレート機能と塗膜への吸着による悪影響が少ない観点から特に好ましい。
本発明においては、上記キレート酸(E)は、上記溶解亜鉛化合物(A1)および溶解ジルコニウム化合物(A2)の合計量に対して0.1〜10当量となる量で電着塗料組成物中に含有されるのが好ましい。
キレート酸(E)としてアルカンスルホン酸および/または有機ホスホン酸が含まれる場合は、アルカンスルホン酸および/または有機ホスホン酸が有するスルホン基またはホスホン基の当量数の合量と、溶解亜鉛化合物(A1)および溶解ジルコニウム化合物(A2)に含まれる亜鉛元素とジルコニウム元素の合計量のモル数との比率が0.1:1〜10:1となる量で、電着塗料組成物中に含有されるのが好ましい。
キレート酸(E)として有機カルボン酸、アミノ酸、アミノカルボン酸、糖酸および/またはカルボキシル基含有ビニル樹脂が含まれる場合は、これらの成分が有するカルボキシル基の当量数の合量と、溶解亜鉛化合物(A1)および溶解ジルコニウム化合物(A2)に含まれ亜鉛元素とジルコニウム元素の合計のモル数との比率が0.1:1〜10:1となる量で、電着塗料組成物中に含有されるのが好ましい。
上記キレート酸(E)を、溶解亜鉛化合物(A1)および溶解ジルコニウム化合物(A2)の合計量に対して0.1〜10当量となる量で用いることによって、溶解亜鉛化合物(A1)および溶解ジルコニウム化合物(A2)に由来する金属イオンとキレート酸(E)の量のバランスがとれることとなり、これにより溶解亜鉛化合物(A1)および溶解ジルコニウム化合物(A2)の性能を確保することができるとともにキレート酸(E)により耐食性が損なわれることもなく、より優れた耐食性を有する電着塗膜を形成することができるという利点がある。
アミノシラン化合物(F)
本発明の電着塗装方法で用いる電着塗料組成物は、アミノシラン化合物(F)を含むのが好ましい。アミノシラン化合物(F)として、1分子中に少なくとも1つのアミノ基を有するアミノシラン、およびアミノシランの加水分解縮合物が挙げられる。
1分子中に少なくとも1つのアミノ基を有するアミノシランの具体例として、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、およびN−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩などを挙げることができる。市販されているアミノ基含有シランカップリング剤である「KBM−602」、「KBM−603」、「KBE−603」、「KBM−903」、「KBE−903」、「KBE−9103」、「KBM−573」、「KBP−90」(いずれも商品名、信越化学工業社製)、および「XS1003」(商品名、チッソ社製)などを使用することができる。
アミノシラン化合物(F)として、アミノシランの加水分解縮合物を用いることもできる。アミノシランの加水分解縮合物を用いることによって、被塗物に対する電着塗膜の密着性を向上させることができるという利点がある。アミノシランの加水分解縮合物の分子量は特に限定されないが、高分子量のものが、耐食性向上の観点から好ましい。ここでいう高分子量とは、Siが縮合により3次元の縮合をしているものが該当する。アミノシランを加水分解縮合反応させる際には、アミノシランがより加水分解しやすく、縮合しやすい条件下で反応させることが好ましい。アミノシランがより加水分解しやすく、縮合しやすい条件下とは、例えば、溶媒をアルコールとした反応条件、上述したような単縮合よりも共縮合となるようなアミノシランの配合による反応条件などである。また、アミノシラン濃度が比較的高い条件下で反応させることによって、より高分子量化された縮合率の高い条件下で加水分解縮合物が得られる。具体的にはアミノシラン濃度が5質量%以上50質量%以下の範囲で縮合させることが好ましい。また、上記アミノシランは、必要に応じて、エポキシシラン「KBM−403」(商品名、信越化学工業社製)などアミノ基を有さないアルコキシシランと共縮合させてもよい。
電着塗料組成物にアミノシラン化合物(F)が含まれることによって、アミノシラン化合物(F)が有するアミノ基の作用により、被塗物と電着塗料膜との密着性が向上し耐食性が優れるという利点がある。
本発明で用いる電着塗料組成物において、アミノシラン化合物(F)を用いる場合は、電着塗料組成物の全質量に対するアミノシラン化合物(F)の質量が0.001〜0.5質量%の範囲内であるのが好ましい。アミノシラン化合物(F)の含有量が0.001質量%以上であることにより、アミノシラン化合物(F)を用いることによる効果が得られる。また、アミノシラン化合物(F)の含有量が0.5質量%以下であることにより、含有量に応じた耐食性向上の効果が得られ、経済的に有利となる。アミノシラン化合物(F)を溶解亜鉛化合物(A1)である酸化亜鉛、水酸化亜鉛、またはリン酸亜鉛のカチオン分散剤や、pH調整剤としても使用する場合は、それらを含めた全量が上記範囲内となることが好ましい。
その他の成分
顔料
本発明の電着塗装方法で用いる電着塗料組成物は、電着塗料組成物において通常用いられる顔料を含んでもよい。顔料の例としては、通常使用される無機顔料、例えば、チタンホワイト、カーボンブラックおよびベンガラのような着色顔料;カオリン、タルク、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、マイカおよびクレーのような体質顔料;リン酸鉄、リン酸アルミニウム、リン酸カルシウム、トリポリリン酸アルミニウム、およびリンモリブデン酸アルミニウム、リンモリブデン酸アルミニウム亜鉛のような防錆顔料など、が挙げられる。電着塗料組成物中にこれらの顔料が含まれる場合の顔料の量は、電着塗料組成物の樹脂固形分に対して1〜30質量%であるのが好ましい。
顔料を電着塗料組成物の成分として用いる場合、一般に顔料を予め高濃度で水性溶媒に分散させてペースト状(顔料分散ペースト)にすることが好ましい。顔料は粉体状であるため、電着塗料組成物で用いる低濃度均一状態に一工程で分散させるのは困難だからである。一般にこのようなペーストを顔料分散ペーストという。
顔料分散ペーストは、顔料を顔料分散樹脂と共に水性溶媒中に分散させて調製する。顔料分散樹脂として、4級アンモニウム基、3級スルホニウム基および1級アミン基から選択される少なくとも1種またはそれ以上を有する変性エポキシ樹脂などの、カチオン基を有する顔料分散樹脂を用いることができる。水性溶媒としてはイオン交換水や少量のアルコール類を含む水などを用いる。一般に、顔料分散樹脂は、顔料100質量部に対して樹脂固形分比20〜100質量部の量で用いる。顔料分散樹脂と顔料とを混合した後、その混合物中の顔料の粒径が所定の均一な粒径となるまで、ボールミルやサンドグラインドミルなどの通常の分散装置を用いて分散させて、顔料分散ペーストを得ることができる。
他の添加剤
本発明の電着塗装方法で用いる電着塗料組成物は、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノエチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテルなどの有機溶媒、乾き防止剤、消泡剤等の界面活性剤、アクリル樹脂微粒子等の粘度調整剤、はじき防止剤、バナジウム塩、銅、鉄、マンガン、マグネシウム、カルシウム塩等の無機防錆剤、等の慣用の塗料用添加剤を必要に応じて添加しても良い。またこれら以外に、目的に応じて公知の補助錯化剤、緩衝剤、平滑剤、応力緩和剤、光沢剤、半光沢剤、酸化防止剤、および紫外線吸収剤等を配合してもよい。
他の塗膜形成樹脂成分
本発明の電着塗装方法で用いる電着塗料組成物は、上記アミン化樹脂(B)以外にも、上述したようなアミン化樹脂(B)に該当しないアミン化樹脂、および/または他の塗膜形成樹脂成分を含んでもよい。他の塗膜形成樹脂成分として、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ブタジエン系樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂などが挙げられる。電着塗料組成物に含まれうる他の塗膜形成樹脂成分として、フェノール樹脂、キシレン樹脂が好ましい。フェノール樹脂、キシレン樹脂として、例えば、2以上10以下の芳香族環を有するキシレン樹脂が挙げられる。
本明細書中において「樹脂固形分量」とは、電着塗料組成物中に含まれる塗膜形成樹脂の固形分全ての固形分質量を意味する。具体的には、電着塗料組成物中に含まれる、アミン化樹脂(B)、硬化剤(C)および必要に応じた他の塗膜形成樹脂成分の固形分質量の総量を意味する。
電着塗料組成物の樹脂固形分量は、電着塗料組成物に対し、1〜30質量%であるのが好ましい。電着塗料組成物の樹脂固形分量が1質量%未満である場合は、電着塗膜析出量が少なくなり、十分な耐食性を確保することが困難となるおそれがある。また電着塗料組成物の樹脂固形分量が30質量%を超える場合は、つきまわり性や塗装外観が悪くなるおそれがある。
電着塗料組成物の調製
本発明で用いる電着塗料組成物は、アミン化樹脂(B)および硬化剤(C)を含むエマルション、および必要に応じた顔料分散ペーストなどと、必須成分である溶解亜鉛化合物(A1)および溶解ジルコニウム化合物(A2)、および亜硝酸金属塩(D)、必要に応じたキレート酸(E)、必要に応じたアミノシラン化合物(F)、可塑剤などを加えて混合することによって調製することができる。なお、溶解亜鉛化合物(A1)および溶解ジルコニウム化合物(A2)は顔料とともに分散ペーストとしてから添加してもよい。
電着塗料組成物の調製において、アミン化樹脂(B)および硬化剤(C)を、中和酸を用いて中和することによって分散性を向上させエマルションを形成させる。アミン化樹脂(B)の中和に用いる中和酸として、ギ酸、酢酸、乳酸などの有機酸が用いられる。本発明においては、ギ酸を用いてアミン化樹脂(B)を中和し分散させるのがより好ましい。アミン化樹脂(B)を中和し分散させる中和酸としてギ酸を用いる場合は、解離度が高いため付きまわり性が優れるという利点がある。
使用される中和酸の量は、アミン化樹脂(B)、硬化剤(C)および必要に応じた塗膜形成樹脂を含む樹脂固形分の合計量100gに対して、10〜25mg当量の範囲であるのが好ましい。上記下限は15mg当量であるのがより好ましく、上記上限は20mg当量であるのがより好ましい。中和酸の量が10mg当量以上であることにより水への親和性が十分となり水への分散が良好となる。一方、中和酸の量が25mg当量以下であることにより、析出に要する電気量が適正となり、塗料固形分の析出性、つきまわり性が良好となる。
硬化剤(C)の量は、硬化時にアミン化樹脂(B)中の1級、2級アミノ基、水酸基、などの活性水素含有官能基と反応して良好な硬化塗膜を与えるのに十分な量が必要とされる。好ましい硬化剤(C)の量は、アミン化樹脂(B)と硬化剤(C)との固形分質量比(アミン化樹脂(B)/硬化剤(C))で表して90/10〜50/50、より好ましくは80/20〜65/35の範囲である。アミン化樹脂(B)と硬化剤(C)との固形分質量比の調整により、造膜時の塗膜(析出膜)の流動性および硬化速度が改良され、塗装外観が向上する。
本発明の電着塗装方法で用いる電着塗料組成物は、pHが2〜6であるのが好ましい。また、電着塗料組成物の樹脂固形分100gに対する酸のミリグラム当量(MEQ(A))は40〜120であるのが好ましい。なお、電着塗料組成物の樹脂固形分100gに対する酸のミリグラム当量(MEQ(A))は、中和酸量および遊離酸の量によって調整することができる。
ここでMEQ(A)とは、mg equivalent(acid)の略であり、塗料の固形分100g当たりのすべての酸のmg当量の合計である。このMEQ(A)は、電着塗料組成物を約10g精秤し約50mlの溶剤(THF:テトラヒドロフラン)に溶解した後、1/10NのNaOH溶液を用いて電位差滴定を行うことによって、電着塗料組成物中の含有酸量を定量して測定することができる。電着塗料組成物のpHは、温度補償機能を有する市販のpHメーターを用いて測定できる。
本発明で用いる電着塗料組成物は、実質的に錫化合物および鉛化合物の何れも含まないものであるのが好ましい。本明細書において「電着塗料組成物が実質的に錫化合物および鉛化合物の何れも含まない」とは、電着塗料組成物に含まれる鉛化合物の濃度が鉛金属元素として50ppmを超えず、かつ、有機錫化合物の濃度が錫金属元素として50ppmを超えないことを意味する。本発明の電着塗装方法で用いる電着塗料組成物においては、溶解亜鉛化合物(A1)および溶解ジルコニウム化合物(A2)が含まれる。そのため、硬化触媒としての鉛化合物、有機錫化合物を用いる必要がない。これにより、実質的に錫化合物および鉛化合物の何れも含まない電着塗料組成物を調製することができる。
電着塗装および電着塗膜形成
被塗物
本発明の電着塗装方法で用いる被塗物として、通電可能な種々の被塗物を用いることができる。使用できる被塗物として例えば、冷延鋼板、熱延鋼板、ステンレス、電気亜鉛めっき鋼板、溶融亜鉛めっき鋼板、亜鉛−アルミニウム合金系めっき鋼板、亜鉛−鉄合金系めっき鋼板、亜鉛−マグネシウム合金系めっき鋼板、亜鉛−アルミニウム−マグネシウム合金系めっき鋼板、アルミニウム系めっき鋼板、アルミニウム−シリコン合金系めっき鋼板、錫系めっき鋼板などから構成される被塗物が挙げられる。
本発明の電着塗装方法は、化成処理を施されていない被塗物を用いる塗装において好適に用いることができる。
なお、被塗物は、必要に応じて、被塗物に付着した防錆油、加工油などの異物を、アルカリ脱脂液および/または水洗水などを用いて除去してもよい。
電着塗装工程
電着塗装は、通常、被塗物を陰極として、陽極との間に、通常、50〜450Vの電圧を印加し、電着皮膜を被塗物上に析出させる塗装方法である。本発明では、電圧を印加せずに0〜30秒間浸漬した後、電圧を印加して電着皮膜を形成する工程を行なう。すなわち、被塗物を電着浴に全て埋没させた後、電圧を印加せずに被塗物を電着浴の中に所定時間浸漬してもよく、またそのような浸漬時間を特に設けないで(浸漬時間が0秒)、被塗物を電着浴に全て埋没させると同時に、直ちに印加を開始してもよい。被塗物を浸漬する場合の浸漬時間は、0秒を超え30秒以下であり、好ましくは20秒以下である。このように電圧を印加しないで被塗物を電着浴に浸漬している間に、被塗物表面は酸化され表面が均一化されるが、被塗物の溶出や無機層などの析出はあまり起こらない。浸漬時間が30秒以上になると、塗料pHによっては若干被塗物をエッチングしてしまい、スラッジ発生の要因となる可能性がある。
被塗物を電着浴に埋没させた後、電圧を印加して電着塗装をすると亜鉛とジルコニウムの複合物である無機層上に樹脂皮膜が電着され電着皮膜が形成される。本発明の電着塗装方法では、電圧を印加せずに浸漬する時間を設けない場合でも、電着浴に被塗物を電着塗装するために電着浴に全て埋没させると同時に、直ちに電圧の印加を開始する場合でも、電着による樹脂皮膜が形成される前に亜鉛とジルコニウムの複合物からなる緻密な無機層の析出が起こり、その後通常の電着塗装により樹脂成分が析出する。このため、本発明の電着塗装方法は、特別なプロセスを必要としない簡略化した、スラッジを発生させない、電着塗装方法である。
電着塗装工程において、被塗物を電着浴に全没後に、電圧5〜450Vを印加して通常の電着塗装が行われる。印加電圧が50V未満であると電着が不充分となるおそれがあり、450Vを超えると、塗膜が破壊され異常外観となるおそれがある。電着塗装時、塗料組成物の浴液温度は、通常10〜45℃に調節される。
本発明の電着塗装方法は、電着塗料組成物に被塗物を浸漬する過程、および、上記被塗物を陰極として陽極との間に電圧を印加し、被膜を析出させる過程、から構成される。また、電圧を印加する時間は、電着条件によって異なるが、一般には、2〜5分とすることができる。
電着塗膜の加熱硬化後の膜厚は、好ましくは5〜40μm、より好ましくは10〜25μmとする。膜厚が5μm未満であると、耐食性が不充分となるおそれがある。一方40μmを超えると、塗料の浪費につながる。
上述のようにして得られる電着塗膜を、電着過程の終了後、そのまま、または水洗した後、120〜260℃、好ましくは140〜220℃で、10〜30分間加熱することによって、加熱硬化した電着塗膜が形成される。
本発明の電着塗装方法では、化成処理を施されていない被塗物を用いて電着塗装する場合であっても、優れた耐食性が得られるという利点がある。
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。実施例中、「部」および「%」は、ことわりのない限り、質量基準による。
製造例1−A アミン化樹脂(樹脂A)の製造
メチルイソブチルケトン92部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名DER−331J、ダウケミカル社製)940部、ビスフェノールA350部、オクチル酸30部、ジメチルベンジルアミン2部を加え、反応容器内の温度を120℃に保持し、エポキシ当量が820g/eqになるまで反応させた後、反応容器内の温度が110℃になるまで冷却した。ついでジエタノールアミン160部を添加し、110℃で1時間反応させることにより、アミン化樹脂(カチオン変性エポキシ樹脂:樹脂A)を得た。
この樹脂の数平均分子量は2,600、アミン価は58mgKOH/g、水酸基価は310mgKOH/gであった。
製造例1−B アミン化樹脂(樹脂B)の製造
メチルイソブチルケトン92部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名DER−331J、ダウケミカル社製)940部、ビスフェノールA350部、オクチル酸95部、ジメチルベンジルアミン2部を加え、反応容器内の温度を120℃に保持し、エポキシ当量が1170g/eqになるまで反応させた後、反応容器内の温度が110℃になるまで冷却した。ついでジエチレントリアミンジケチミン(固形分73%のメチルイソブチルケトン溶液)82部とN−メチルエタノールアミン26部、ジエタノールアミン60部の混合物を添加し、110℃で1時間反応させることにより、アミン化樹脂(カチオン変性エポキシ樹脂:樹脂B)を得た。
この樹脂の数平均分子量は2,600、アミン価は58mgKOH/g(うち1級アミンに由来するアミン価は17mgKOH/g)、水酸基価は240mgKOH/gであった。
製造例1−C アミン化樹脂(樹脂C)の製造
メチルイソブチルケトン92部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名DER−331J、ダウケミカル社製)940部、ビスフェノールA350部、オクチル酸25部、ジメチルベンジルアミン2部を加え、反応容器内の温度を120℃に保持し、エポキシ当量が800g/eqになるまで反応させた後、反応容器内の温度が110℃になるまで冷却した。ついでジエタノールアミン160部とジエチレントリアミンプロピオンオキサイド37モル付加物190部の混合物を添加し、110℃で1時間反応させることにより、アミン化樹脂(カチオン変性エポキシ樹脂:樹脂C)を得た。
この樹脂の数平均分子量は3300、アミン価は58mgKOH/g(うち1級アミンに由来するアミン価は5mgKOH/g)、水酸基価は270mgKOH/gであった。
製造例1−E アミン化樹脂(樹脂E)の製造
メチルイソブチルケトン92部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名DER−331J、ダウケミカル社製)940部、ビスフェノールA390部、オクチル酸80部、ジメチルベンジルアミン2部を加え、反応容器内の温度を120℃に保持し、エポキシ当量が1400g/eqになるまで反応させた後、反応容器内の温度が110℃になるまで冷却した。ついでジエタノールアミン100部とジエチレントリアミンプロピオンオキサイド37モル付加物120部の混合物を添加し、110℃で1時間反応させることにより、アミン化樹脂(カチオン変性エポキシ樹脂:樹脂E)を得た。
この樹脂の数平均分子量は3300、アミン価は37mgKOH/g(うち1級アミンに由来するアミン価は3mgKOH/g)、水酸基価は240mgKOH/gであった。
製造例1−F アミン化樹脂(樹脂F)の製造
撹拌機、デカンター、窒素導入管、温度計および滴下ロートを備え付けた反応容器に、エポキシ当量188g/eqのビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名DER−331J、ダウケミカル社製)2,400部とメタノール141部、メチルイソブチルケトン168部を仕込み、40℃で撹拌し均一に溶解させた後、2,4−/2,6−トリレンジイソシアネート(80/20質量比混合物)320部を30分間かけて滴下したところ発熱し、70℃まで上昇した。これにN,N−ジメチルベンジルアミン5部を加え、反応容器内の温度を120℃まで昇温し、メタノールを留去しながらエポキシ当量が500g/eqになるまで120℃で3時間反応を続けた。
さらに、メチルイソブチルケトン644部、ビスフェノールA341部、2−エチルヘキサン酸413部を加え、反応容器内の温度を120℃に保持し、エポキシ当量が1070g/eqになるまで反応させた後、反応容器内の温度が110℃になるまで冷却した。ついでジエチレントリアミンジケチミン(固形分73%のメチルイソブチルケトン溶液)241部とN−メチルエタノールアミン192部の混合物を添加し、110℃で1時間反応させることにより、アミン化樹脂(カチオン変性エポキシ樹脂:樹脂F)を得た。
この樹脂の数平均分子量は2,100、アミン価は74mgKOH/g(うち1級アミンに由来するアミン価は16mgKOH/g)、水酸基価は160mgKOH/gであった。また赤外吸収スペクトル等の測定から、樹脂中にオキサゾリドン環(吸収波数;1750cm−1)を有していることが確認された。
製造例2−1 ブロックイソシアネート硬化剤(1)の製造
ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)1680部およびMIBK732部を反応容器に仕込み、これを60℃まで加熱した。ここに、トリメチロールプロパン346部をMEKオキシム1067部に溶解させたものを60℃で2時間かけて滴下した。さらに75℃で4時間加熱した後、IRスペクトルの測定において、イソシアネート基に基づく吸収が消失したことを確認し、放冷後、MIBK27部を加えて固形分が78%のブロックイソシアネート硬化剤(1)を得た。イソシアネート基価は252mgKOH/gであった。
製造例2−2 ブロックイソシアネート硬化剤(2)の製造
4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート1340部およびMIBK277部を反応容器に仕込み、これを80℃まで加熱した後、ε−カプロラクタム226部をブチルセロソルブ944部に溶解させたものを80℃で2時間かけて滴下した。さらに100℃で4時間加熱した後、IRスペクトルの測定において、イソシアネート基に基づく吸収が消失したことを確認し、放冷後、MIBK349部を加えてブロックイソシアネート硬化剤(2)を得た(固形分80%)。イソシアネート基価は251mgKOH/gであった。
製造例3 顔料分散樹脂の製造
撹拌機、冷却管、窒素導入管、温度計を備えた反応容器にビスフェノールA型エポキシ樹脂385部、ビスフェノールA120部、オクチル酸95部、2−エチル−4−メチルイミダゾール1%溶液1部を仕込んで、窒素雰囲気下160〜170℃で1時間反応させ、ついで120℃まで冷却後、2−エチルヘキサノール化ハーフブロック化トリレンジイソシアネートのメチルイソブチルケトン溶液(固形分95%)198部を加えた。反応混合物を120〜130℃で1時間保持した後、エチレングリコールモノn−ブチルエーテル157を加えた。そして85〜95℃に冷却して均一化させた。つぎにジエチレントリアミンジケチミン(固形分73%のメチルイソブチルケトン溶液)277部を加え120℃で1時間撹拌しエチレングリコールモノn−ブチルエーテル13部を加え、アミン化樹脂を製造した。ついで18部のイオン交換水とギ酸8部を仕込み上記アミン化樹脂を混合し15分撹拌し、イオン交換水200部を混合して、顔料分散樹脂(平均分子量2,200)の樹脂溶液(樹脂固形分25%)を得た。
製造例4−A〜C、4−E、4−F 電着塗料樹脂エマルション(EmA)〜(EmC)、(EmE)、(EmF)の製造
製造例1−Aで得た樹脂(樹脂A)350g(固形分)と、製造例2−1で得たブロックイソシアネート硬化剤(1)75g(固形分)、硬化剤(2)75g(固形分)とを混合し、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテルを固形分に対して3%(15g)になるように添加した。次にメタンスルホン酸を中和率80%になるように加えて中和し、イオン交換水を加えてゆっくり希釈し、次いで固形分が36%になるように減圧下でメチルイソブチルケトンを除去して、電着塗料樹脂エマルション(EmA)を得た。
また、製造例1−Aで得た樹脂(樹脂A)の代わりに、それぞれ製造例1−B、C、E、Fで得た樹脂(樹脂B)、(樹脂C)、(樹脂E)、(樹脂F)を用いたこと以外は同様にして、それぞれ電着塗料樹脂エマルション(EmB)、(EmC)、(EmE)、(EmF)を得た。
製造例4−D 電着塗料樹脂エマルション(EmD)の製造
製造例1−Aで得た樹脂(樹脂A)400g(固形分)と、製造例2−1で得たブロックイソシアネート硬化剤(1)50g(固形分)、硬化剤(2)50g(固形分)とを混合し、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテルを固形分に対して3%(15g)になるように添加した。次にメタンスルホン酸を中和率80%になるように加えて中和し、イオン交換水を加えてゆっくり希釈し、次いで固形分が36%になるように減圧下でメチルイソブチルケトンを除去して、電着塗料樹脂エマルション(EmD)を得た。
製造例5−1 電着塗料用顔料分散ペースト1の製造
サンドミルを用いて、製造例3で得られた顔料分散樹脂を含む以下の表1に示す配合に基づき、得られた混合物を40℃において、体積平均粒子径D50が0.6μmとなるまで分散し、調製して、顔料分散ペースト1(固形分49%)を得た。体積平均粒子径D50の測定は、レーザードップラー式粒度分析計(日機装社製、「マイクロトラックUPA150」)を用いて、分散体を信号レベルが適性になるようイオン交換水で希釈して、体積平均粒子径D50を測定した。
Figure 0006085499
製造例5−2 電着塗料用顔料分散ペースト2の製造
表2に示す配合に基づき、得られた混合物を40℃において、体積平均粒子径D50が0.6μmとなるまで分散し、調製して、顔料分散ペースト2(固形分49%)を得た。
Figure 0006085499
実施例1
ステンレス容器に、イオン交換水119g、酸化亜鉛(試薬)32.6g、70%メタンスルホン酸(BASF製)110g添加し、60℃1時間攪拌して亜鉛濃度10%のメタンスルホン酸亜鉛を作成した。
次に、オルガノシランの加水分解縮合物は、「KBE903」(3−アミノプロピルトリエトキシシラン、商品名、信越化学工業社製)を15質量部と、「KBE603」(N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、商品名、信越化学工業社製)を15質量部とを滴下漏斗から、溶媒として70質量部のイオン交換水(溶媒温度:25℃)に60分かけて均一に滴下した後、窒素雰囲気下25℃で24時間反応を行って得られた、有効成分30%のオルガノシランの加水分解縮合物(以下、KBE903−KBE603共縮合物)を用いた。
ステンレス容器に、イオン交換水1022g、溶解亜鉛化合物(A1)としての、亜鉛濃度10%のメタンスルホン酸亜鉛(表3では「MSAZn」と表記する。)20gおよび40%フッ化ジルコン酸2.8g添加した。次に、オルガノシランの加水分解縮合物(表3では、「オルガノシロキサン縮合物」と表記する。)を1.3g添加し、30%亜硝酸カルシウム(日産化学工業製)1.3g添加し、次に製造例4−Aの電着塗料樹脂エマルション(EmA)833gと顔料(製造例5−1の顔料分散ペースト1)122gを添加しその後40℃で16時間エージングして、電着塗料組成物を形成した。下記表3には、上記電着塗料組成物の配合量を記載しているが、固形分100質量部に対する相対比を記載している。
冷延鋼板(JIS G3141、SPCC−SD)を、サーフクリーナーEC90(日本ペイント社製)中に50℃で2分間浸漬して、脱脂処理した。脱イオン水洗後、得られた電着塗料組成物に、硬化後の電着塗膜の膜厚が15μmとなるように2−エチルヘキシルグリコールを必要量添加し、その後に鋼板を全て埋没させた後、直ちに電圧の印加を開始し、30秒間昇圧し180Vに達してから150秒間保持するという条件で電圧を印加して、被塗物(冷延鋼板)上に未硬化の電着皮膜を析出させた。こうして得られた未硬化の電着皮膜を、160℃で15分間加熱硬化させて、電着塗膜を有する電着塗装板を得た。
得られた電着塗膜の評価を5つの項目、即ちサイクル腐食試験(CCT)、塩水浸漬試験(SDT)、塗膜物性、塗装外観および安定性について評価した。結果を表3に示す。
サイクル腐食試験(Cycle Corrosion Test(CCT))
冷延鋼板を用いた硬化後の電着塗装板の塗膜に、基材に達するようにナイフでクロスカット傷を入れ、JASO M609−91「自動車用材料腐食試験方法」を60サイクル行った。その後、クロスカット部からの錆やフクレ発生を観察し、実際の腐食環境に即した耐食性を評価した。評価基準は以下の通りである。
評価基準
◎:錆またはフクレの最大幅がカット部より5mm未満(両側)
○:錆またはフクレの最大幅がカット部より5mm以上7.5mm未満(両側)カット部以外にブリスターなし
○△:錆またはフクレの最大幅がカット部より5mm以上7.5mm未満(両側)カット部以外もブリスターあり
△:錆またはフクレの最大幅がカット部より7.5mm以上10mm未満(両側)
△×:錆またはフクレの最大幅がカット部より10mm以上12.5mm未満(両側)
×:錆またはフクレの最大幅がカット部より12.5mm以上(両側)
塩水浸漬試験(Salt−solution Dipping Test(SDT))
冷延鋼板を用いた硬化後の電着塗装板の塗膜に、基材に達するようにナイフで傷を入れ、この塗装板を、5%食塩水中に50℃で480時間浸漬した後、直線状の傷部からの錆やフクレ発生を観察し、評価した。評価基準は以下の通りである。
評価基準
◎:錆またはフクレが生じていない
○:錆またはフクレの最大幅がカット部より2.5mm未満(両側)
○△:錆またはフクレの最大幅がカット部より2.5mm以上5mm未満(両側)
△:錆またはフクレの最大幅がカット部より5mm以上10mm未満(両側)
△×:錆またはフクレの最大幅がカット部より10mm以上15mm未満(両側)
×:錆またはフクレの最大幅がカット部より15mm以上(両側)
硬化電着塗膜物性評価(塗膜物性)
上記実施例および比較例より得られた硬化電着塗膜を有する電着塗装板に、小型のカッターナイフを垂直に当て、被塗物に達するように等間隔の平行線の傷を2mm間隔で11本引き、それらの平行線に垂直に交わる等間隔の平行線11本を2mm間隔で引いて、4本の直線に囲まれた2mm四方の100個の正方形を刻んだ。次いで、試験片を50℃のイオン交換水に480時間浸漬した。浸漬後、試験片の水を拭き取り、次いで接着テープ(エルパックLP−24ニチバン株式会社製)(幅24mm)を上記試験塗膜のカット部分に気泡を含ませずに圧着した後、急激に引っ張った。剥離した碁盤目の有無に基づき、下記基準により評価した。
評価基準
○:剥離なし
×:剥離あり
硬化電着塗膜外観(塗装外観)
上記実施例および比較例より得られた硬化電着塗膜を有する電着塗装板について、塗膜外観における異常の有無を目視で判断した。評価基準は以下の通りとした。
評価基準
◎:極めて均一な塗膜外観を有している
○:均一な塗膜外観を有している
○△:ややムラがあると視認される部分があるものの、全体としてほぼ均一な塗膜外観を有している
△:ムラが視認される
×:塗膜外観が明らかに不均一である
電着塗料組成物の安定性(安定性)
電着塗料組成物を静置した状態または撹拌した状態において、塗料組成物の状態を目視にて判定し、安定性を評価した。評価基準は以下の通りとした。ここでいう安定とは、攪拌停止後、15分以内に顔料が沈降しないことをいう。
評価基準
○:電着塗料組成物を静置した状態で安定である
○△:電着塗料組成物を静置した状態では安定ではないものの、再度撹拌することによってすぐに安定化する
△:電着塗料組成物を連続的に撹拌し続けた状態では安定である
×:電着塗料組成物を連続的に撹拌し続けた状態でも安定化しない
スラッジの影響
冷延鋼板(JIS G3141、SPCC−SD 150mm×75mm)を1Lに対して20枚塗装し、スラッジ発生、スラッジ発生にまつわる塗装性低下を評価した。
:スラッジ発生せず、塗装性低下なし
△:スラッジ発生目視で確認できず、塗装性わずかに低下。
:スラッジ発生に伴う塗装性低下ある。
×:スラッジ発生
実施例2〜15、比較例1〜5および参考例1〜2
表3に記載の配合で電着塗料組成物を形成した。得られた電着塗料組成物または電着塗装板について、実施例1と同様の6つの項目の評価を行った。結果を表3に示す。
表3において、フッ化ジルコン酸は試薬を用いた。
実施例4および実施例13は、製造例5−2で作成した顔料分散ペースト2を使用した。
実施例15で用いているBPAEO付加物は、可塑剤であり、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物(BPAEO付加物)(ニューポールBPE−60三洋化成工業製)であった。
表3における溶解亜鉛化合物(A1)および溶解ジルコニウム化合物(A2)の値は、金属元素換算値である。例えば酸化亜鉛では、微分散させた顔料ペースト2を用いて電着塗料組成物とし、当該電着塗料組成物を遠心分離機(H−200N:国産遠心器株式会社製)で12000rpm×30分遠心分離し、上澄み液を蛍光X線(ZSX Primus:株式会社リガク製)にて濃度を測定することで、電着塗料組成物に対する溶解亜鉛化合物(A1)または溶解ジルコニウム化合物(A2)の金属換算濃度(質量%)を算出した。
Figure 0006085499
表3において、「浸漬時間」は、脱脂およびイオン水洗を行なった被塗物を電着塗料組成物に全て埋没した後、電圧の印加をせずに電着塗料組成物中で保持した時間を意味し、その後、電圧の印加を開始する。浸漬時間が「なし」とは、脱脂およびイオン水洗を行なった被塗物を電着塗料組成物に全て埋没した後、直ちに電圧の印加を開始したことを意味する。
実施例1以外の実施例および比較例における電圧の印加は、すべて実施例1と同様に、電圧の印加を開始してから30秒間昇圧し、180Vに達してから150秒間保持するという条件で行なった。
実施例の電着塗料組成物を塗装して得られた塗装物は、何れも、CCT試験結果およびSDT試験結果が優れており、優れた耐食性を有することが確認された。実施例4以外の実施例の塗装物はさらに塗膜平滑性(塗装外観)にも優れており、電着塗料組成物の安定性にも優れていた。これらの実施例はまた、本発明の電着塗装方法は、化成処理を行っていない被塗物(未処理)に優れた性能の電着塗膜を形成できることを示している。
溶解亜鉛化合物(A1)および溶解ジルコニウム化合物(A2)を含まない電着塗料組成物を用いた比較例1および2は、CCT試験結果やSDT試験結果が悪く、耐食性が劣っていた。
比較例3は、溶解金属化合物として溶解亜鉛化合物(A1)のみを用い、亜硝酸金属塩、即ち亜硝酸カルシウムを使用しない例であり、CCT試験結果やSDT試験結果が悪く、耐食性が劣っていた。
比較例4は、溶解金属化合物として溶解亜鉛化合物(A1)のみを用いた例であるが、アミン価樹脂(B)とブロックイソシアネート硬化剤である硬化剤(C)とが、電着塗膜中において加熱硬化時に反応した場合における理論残存水酸基価が50より少なく、CCT試験結果が悪く、耐食性が劣っていた。
比較例5は、実施例2同じ電着塗料組成物を用いたが、被塗物を電着浴に埋没後に電圧を印加せずに浸漬した時間が180秒と長く、塗料の貯蔵安定性が悪くなった。
参考例1および参考例2は、被塗物の前処理としてリン酸亜鉛化成処理をして、本発明の溶解亜鉛化合物(A1)および溶解ジルコニウム化合物(A2)を配合しない電着塗料で電着塗装した例である。参考例1では電着塗膜の加熱硬化温度が160℃で、参考例2では加熱硬化温度が140℃である。いずれもスラッジの発生が問題となる。さらに、参考例2ではSDT試験結果が悪くなっており、140℃の加熱硬化では硬化不十分で塗膜遮断性が悪くなることを示している。これは、リン酸亜鉛皮膜は170℃前後の加熱で結晶水が脱離し、密着性が強まるが、140℃では、化成皮膜の密着機能も低下するためであると考えられる。
本発明の電着塗装方法を用いることによって、化成処理をしない鋼板を用いた場合であっても、耐食性、密着性、塗膜平滑性(塗装外観)に優れた塗膜が得られるという利点がある。本発明の電着塗装方法を用いることによって、化成処理をしない鋼板を有効に利用することが可能となり、化成処理に伴うスラッジの発生の問題がない。また、化成処理を行なわなくても、特別な電位制御や、電圧を印加しない予備浸漬工程を必要としないため、工程削減効果が発揮できる。

Claims (4)

  1. 電着塗料組成物中に、実質的に化成処理されていない被塗物を、電圧を印加せずに0〜30秒間浸漬した後、電圧を印加して電着皮膜を形成する工程、および該電着皮膜を加熱硬化して電着塗膜を形成する工程を含む電着塗装方法であって、
    該電着塗料組成物が、
    溶解金属化合物である溶解亜鉛化合物(A1)および溶解ジルコニウム化合物(A2)、ならびにアミン化樹脂(B)、硬化剤(C)および亜硝酸金属塩(D)を含み、 該アミン化樹脂(B)が、数平均分子量が1,000〜5,000であり、アミン価が20〜100mgKOH/gであり、かつ、水酸基価が50〜400mgKOH/gであり、かつ、
    該硬化剤(C)がブロックイソシアネート硬化剤であり、
    該溶解亜鉛化合物(A1)が、メタンスルホン酸亜鉛であり、
    該アミン化樹脂(B)と、該ブロックイソシアネート硬化剤とが、電着塗膜中において該加熱硬化時に反応した場合における理論残存水酸基価が90〜350mgKOH/gであることを特徴とする電着塗装方法。
  2. 前記電着塗料組成物が、さらに、スルホン酸、有機ホスホン酸、有機カルボン酸、アミノ酸、アミノカルボン酸、糖酸およびカルボキシル基含有ビニル樹脂からなる群から選択される少なくとも1種であるキレート酸(E)を含む、請求項1に記載の電着塗装方法。
  3. 前記電着塗料組成物が、さらにアミノシラン化合物(F)を含む、請求項1または2に記載の電着塗装方法。
  4. 前記電着塗料組成物が、可塑剤を含む請求項1〜3いずれかに記載の電着塗装方法。
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