この発明に係る現像ローラは、例えば、図1に示されるように、軸体の外周面に形成された弾性層3と、この弾性層3の外周面にウレタン樹脂により形成されたウレタンコート層4とを備えてなる。
この導電性ローラ1は、そこから放出される揮発性有機化合物(VOC)の放出量が、100,000μg/m3以下であり、特に50,000μg/m3以下である。
このVOCの放出量は、例えば以下のようにして測定することができる。
この導電性ローラ1は、軸体2の直径が7.5mm、軸芯長さが280mm、弾性層3の直径が16mm、軸芯長さが230mm、ウレタンコート層4の層厚が20μmである。
まず、上記寸法を有する1本の導電性ローラを簡易式ガス捕集バッグ(例えば、ジーエルサイエンス(株)製、スマートバッグPA、内容積10L)(以下において「補集バッグ」と称する。)に収納する。次いで、導電性ローラを収容した捕集バッグを50℃に加熱した加熱装置内に入れて2時間保持して、前記補集バッグ内に導電性ローラから放出されたガスを充満させる。2時間の経過後にその加熱装置から前記捕集バッグを取り出してその捕集バッグを吸着管(例えば、ジーエルサイエンス(株)製、テナックスTA,粒度60/80メッシュ、充填量150mg)の一端開口部に取り付け、その吸着管の他端開口部を定量ポンプに装着する。定量ポンプを駆動して100mL/分の吸引速度にて吸着管内に捕集バッグ内の捕集ガスを導入し、吸着管内の吸着材に捕集バッグ内のガスを吸着させる。
次いで、捕集ガスを吸着した吸着剤を有する吸着管を加熱脱着装置に装填して加熱することで、吸着剤に吸着された捕集ガスを脱離する。脱離した捕集ガスを冷却されたコールドトラップに導入して一時的に保持し、その後コールドトラップを急速に加熱することで、コールドトラップ内に保持された捕集ガスを再脱離する。再脱離した捕集ガスをガスクロマトグラフ装置内のカラムに導入して、揮発性有機化合物(VOC)の定量分析を行う。
揮発性有機化合物(VOC)として、例えば、ヘキサメチルシクロトリシロキサン(D3)、オクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)、デカメチルシクロペンタシロキサン(D5)、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン(D6)、テトラデカメチルシクロヘプタシロキサン(D7)等の低分子環状シロキサン及び酢酸ブチルを定量分析する場合には、例えば、以下の装置及び条件でVOCガスの定量分析をすることができる。
下記ガスクロマトグラフでは、カラム内を捕集ガスが通過する過程で、捕集ガス中の構成成分がそれぞれの分子の大きさにより異なる速度でカラム中を進行し、個々の構成成分に分離されてカラムから順次質量分析装置に導入される。質量分析装置に導入された捕集ガスの個々の構成成分はイオン化され、特定の質量数と電荷の比毎のイオン数がマススペクトルパターンとして表示され、既知の物質のマススペクトルパターンと比較することで、捕集ガスの構成成分の定性分析を行うことができる。また、既知の物質及び既知の濃度である標準物質を用いて予め検量線を作成しておくことで、定量分析を行うことができる。
加熱脱着装置:パーキンエルマー(株)製、ターボマトリクスATD
加熱脱着条件:設定温度270℃ 加熱時間15分
コールドトラップ条件:−10℃
分析装置:株式会社島津製作所製、ガスクロマトグラフGC−MS QP−2010plus
カラム:アジレント・テクノロジー株式会社製 微極性カラムDB−5ms
長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm
測定温度:40℃に5分間の加熱、その後10℃/分の加熱速度で300℃にし、
その300℃で4分間加熱する。
検出器電圧:0.5〜1kV
スプリット比:50〜5000
この発明に係る導電性ローラが放出するVOCの放出量が100,000μg/m3以下であると、この導電性ローラは環境に与える負荷を低減することができる。
導電性ローラが放出するVOCの放出量の測定は、遅くとも、この導電性ローラを製造した後に出荷する時点であればよい。また、この導電性ローラの製造工程において導電性ローラが完成した時点であってもよい。導電性ローラが完成した時点で測定したVOCの放出量が100,000μg/m3以下であると、出荷段階までの時間の経過とともにVOCの放出量が更に低減するので、改めて出荷時点でVOCの放出量を測定する必要がない。
この発明に係る導電性ローラを、その一例を挙げて、説明する。この発明に係る導電性ローラの一例である導電性ローラは、図1に示されるように、軸体2と、軸体2の外周面に形成された弾性層3と、弾性層3の外周面に形成されたウレタンコート層4とを備えている。
軸体2は、従来公知の導電性ローラにおける軸体と基本的に同様である。この軸体2は、鉄、アルミニウム、ステンレス鋼、真鍮等で構成された所謂「芯金」と称される軸体であり、良好な導電特性を有している。軸体2は熱可塑性樹脂若しくは熱硬化性樹脂等の絶縁性芯体にメッキを施して導電化した軸体であってもよい。
弾性層3は、従来公知の導電性ローラにおける弾性層と基本的に同様である。この弾性層3は、軸体2の外周面に後述する導電性組成物を硬化して成り、20〜70のJIS A硬度を有しているのが好ましい。弾性層3が20〜70のJIS A硬度(JIS K6301)を有していると導電性ローラ1と被当接体との接触面積を大きくすることができ、また弾性層3の反発弾性及び圧縮永久ひずみにも優れる。
弾性層3は、体積抵抗率が101〜107Ω・cmの範囲にあり、及び/又は、電気抵抗率が101〜109Ωの範囲にあるのが好ましい。弾性層3の体積抵抗率及び/又は電気抵抗率が前記範囲内にあると、導電性ローラ1を画像形成装置に装着したときに、現像剤を所望のように担持、供給して所望の品質を有する画像を形成することに貢献できる。前記体積抵抗率はJIS K6911に規定された方法(印加電圧を100V)に準じて測定することができる。前記電気抵抗率は、例えば、電気抵抗計(商品名:ULTRA HIGH RESISTANCE METER R8340A、株式会社アドバンテスト製)を用い、導電性ローラ1を水平に置き、5mmの厚さ、30mmの幅、及び、導電性ローラ1の弾性層3全体を載せることのできる長さを有する金メッキ製板を電極とし、500gの荷重を導電性ローラ1における軸体2の両端それぞれに支持させた状態にして、軸体2と電極との間にDC100Vを印加し、1秒後の電気抵抗計の値を読みとり、この値を電気抵抗値とする方法に準拠して、測定することができる。
弾性層3は、被当接体との当接状態において被当接体と弾性層3との均一なニップ幅を確保することができる点で、その厚さは1mm以上であるのが好ましく、4mm以上であるのが特に好ましい。一方、弾性層3の厚さの上限は弾性層3の外径精度を損なわない限り特に制限されないが、一般に弾性層3の厚さを厚くしすぎると弾性層3の作製コストが上昇するから、実用的な作製コストを考慮すると弾性層3の厚さは30mm以下であるのが好ましく、20mm以下であるのがより好ましい。なお、弾性層3の厚さは、所望のニップ幅を達成するために、弾性層3の硬度、例えば、JIS A硬度等に応じて、適宜選択される。
弾性層3を形成する導電性組成物は、ゴムと、導電性付与剤と、所望により各種添加剤とを含有する。前記ゴムは、例えば、シリコーン若しくはシリコーン変性ゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム(エチレンプロピレンジエンゴムを含む。)、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、天然ゴム、アクリルゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、エピクロルヒドリンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム等のゴムが挙げられるが、シリコーン若しくはシリコーン変性ゴム又はウレタンゴムであるのが好ましく、シリコーン若しくはシリコーン変性ゴムが、耐熱性及び帯電特性等に優れる点で、特に好ましい。これらのゴムは、液状型であってもミラブル型であってもよい。前記導電性付与剤は、導電性を有していれば特に限定されず、例えば、導電性カーボン、ゴム用カーボン類、金属、導電性ポリマー等の導電性粉末が挙げられる。各種添加剤としては、例えば、鎖延長剤及び架橋剤等の助剤、触媒、分散剤、発泡剤、老化防止剤、酸化防止剤、充填材、顔料、着色剤、加工助剤、軟化剤、可塑剤、乳化剤、耐熱性向上剤、難燃性向上剤、受酸剤、熱伝導性向上剤、離型剤、溶剤等が挙げられる。
前記導電性組成物として、例えば、付加硬化型ミラブル導電性シリコーンゴム組成物、付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物等を好適に挙げることができる。この付加硬化型ミラブル導電性シリコーンゴム組成物は、(A)平均組成式:RnSiO(4−n)/2(Rは、同一又は異なっていてもよい、置換又は非置換の一価炭化水素基、好ましくは炭素原子数1〜12、より好ましくは炭素原子数1〜8の一価炭化水素基であり、nは1.95〜2.05の正数である。)で示されるオルガノポリシロキサン、(B)充填材、及び、(C)上記(B)成分に属するもの以外の導電性材料を含有する。これらの各成分(A)〜(C)は、例えば、特開2008−058622号公報に記載の「付加硬化型ミラブル導電性シリコーンゴム組成物」における各成分と基本的に同様である。前記付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物は、(D)一分子中にケイ素原子と結合するアルケニル基を少なくとも2個含有するオルガノポリシロキサンと、(E)一分子中にケイ素原子と結合する水素原子を少なくとも2個含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、(F)平均粒径が1〜30μmで嵩密度が0.1〜0.5g/cm3である無機質充填材と、(G)導電性付与剤と、(H)付加反応触媒とを含有する付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物が挙げられる。これらの各成分(D)〜(H)は、例えば、特開2008−058622号公報に記載の「付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物」における各成分と基本的に同様である。
ウレタンコート層4は、導電性ローラ1の最外層として、好ましくは0.1〜50μmの層厚に、より好ましくは10〜25μmの層厚に、形成されている。このウレタンコート層は弾性層3の外周面にウレタン樹脂を硬化して成る。
好適なウレタンコート層4は、ウレタン樹脂の他に、所望により、各種ウレタン樹脂組成物に通常用いられる各種添加剤等を含有していてもよい。このような添加剤として、例えばカーボンブラック等の導電性付与剤、後述するウレタン樹脂組成物における他の成分例えば助剤等が任意成分として含有されることがある。また、ウレタンコート層4は特開2005−315979号公報に記載されている「バインダー樹脂及び該バインダー樹脂中に分散している導電性の樹脂粒子」を実質的に含有していない。ここで、「実質的に含有していない」とは、前記導電性の樹脂粒子がウレタンコート層4にまったく含有されていない場合のみならず、効果を発揮しない程度に微量、例えばウレタン樹脂100質量部に対して5質量部以下で含有されている場合をも含む。ウレタンコート層4がカーボンブラックを含有する場合には、カーボンブラックのDBP吸着量が100mL/100g未満であるのが好ましい。このDBP吸着量はJIS K6217−4に準じて測定できる。
ウレタンコート層4に含有されるウレタン樹脂、すなわち、ウレタンコート層4を形成するベース樹脂となるウレタン樹脂は、公知のウレタン樹脂であればよく、通常、ポリオールとポリイソシアネートとから得られる。このポリオールはポリエステルポリオール及びポリエーテルポリオールであるのが好ましく、このポリイソシアネートは、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート等が挙げられる。
ウレタンコート層4を形成するウレタン樹脂組成物は、ウレタン樹脂を形成する前駆体であるウレタン調整成分と、所望により各種添加剤とを含有している。したがって、ウレタンコート層4は、ウレタン調整成分と、所望により各種添加剤とを含有するウレタン樹脂組成物を弾性層3の外周面に塗布硬化して形成されている。
前記ウレタン調整成分は、ポリウレタンを形成することができる成分であればよく、例えば、ポリオールとイソシアネートとの混合物が挙げられる。
前記ポリオールは、分子内に好ましくは末端に水酸基を少なくとも2つ有する、ポリウレタンの調製に通常使用される各種のポリオールであればよい。このようなポリオールとして、ポリエーテルポリオール及びポリエステルポリオールから選択された少なくとも1種のポリオールであるのが好ましい。前記ポリオールはジオールであるのが好ましく、したがって、ポリエステルジオール又はポリエーテルジオールであるのがさらに好ましく、ポリエステルジオールが特に好ましい。
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール−エチレングリコール等のポリアルキレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、テトラヒドロフランとアルキレンオキサイドとの共重合ポリオール、及び、これらの各種変性体又はこれらの混合物等が挙げられる。ポリエステルポリオールとしては、例えば、アジピン酸等のジカルボン酸とエチレングリコール、ヘキサンジオール等のポリオールとの縮合により得られる縮合系ポエステルポリオール、ラクトン系ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、及び、これらの混合物等が挙げられる。ポリエーテルポリオール及びポリエステルポリオールは、1種単独でも2種以上を組み合わせて使用してもよく、また、ポリエーテルポリオールとポリエステルポリオールとを組み合わせて使用してもよい。ポリオールは、熱的安定性に優れる点で、ポリエステルポリオールが好ましい。前記ポリオールは、後述するポリイソシアネート等との相溶性に優れる点で、1000〜8000の数平均分子量を有するのが好ましく、1000〜5000の数平均分子量を有するのがさらに好ましく、800〜15000の数平均分子量を有するのが好ましく、1000〜5000の数平均分子量を有するのがさらに好ましい。数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による標準ポリスチレンに換算したときの分子量である。
前記ポリイソシアネートは、分子内に好ましくは末端にイソシアネート基を少なくとも2つ有する、ポリウレタンの調製に通常使用される各種ポリイソシアネートであればよく、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート及びこれらの誘導体等が挙げられる。ポリイソシアネートは、貯蔵安定性に優れ、反応速度を制御しやすい点で、脂肪族ポリイソシアネートであるのが好ましく、ジイソシアネートであるのが好ましく、また画像形成装置の長期間にわたる待機又は停止後においても、また低湿度環境下においても高品質の画像を形成することができる点で、脂肪族ポリイソシアネートであるのが好ましく、したがって、脂肪族ジイソシアネートであるのが特に好ましい。
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、キシリレンジイシシアネート(XDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トルエンジイソシアネート(トリレンジイソシアネートとも称する。TDI)、3,3’−ビトリレン−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネートウレチジンジオン(2,4−TDIの二量体)、キシレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、パラフェニレンジイソシアネート(PDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、メタフェニレンジイソシアネート等が挙げられる。脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)、オルトトルイジンジイソシアネート、リジンジイソシアネートメチルエステル、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ノルボルナンジイソシアネートメチル、トランスシクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、トリフェニルメタン−4,4’,4’’−トリイソシアネート等が挙げられる。前記誘導体としては、前記ポリイソシアネートの多核体、ポリオール等で変性したウレタン変性物(ウレタンプレポリマーを含む)、ウレチジオン形成による二量体、イソシアヌレート変性物、カルボジイミド変性物、ウレトンイミン変性物、アロハネート変性物、ウレア変性物、ビュレット変性物等が挙げられる。ポリイソシアネートは1種単独で又は2種以上を用いることができる。ポリイソシアネートは、500〜2000の分子量を有するのが好ましく、700〜1500の分子量を有するのがさらに好ましい。
前記ポリオール及びポリイソシアネートが含有される場合には前記ポリオールと前記ポリイソシアネートとの混合割合は、特に限定されないが、ポリオールに含まれる水酸基(OH)のモル数と、ポリイソシアネートに含まれるイソシアネート基(NCO)のモル数との比率[NCO/OH]が0.7〜1.15であるのが好ましい。この比率[NCO/OH]は、ポリウレタンの加水分解を防止することができる点で、0.85〜1.10であるのがより好ましい。ただし、実際には、作業環境、作業上の誤差を考慮して前記適正モル比の3〜4倍相当量を配合してもよい。
ウレタン樹脂組成物には、ウレタン調整成分に加えて、ポリオールとポリイソシアネートとの反応に通常使用される助剤、例えば、鎖延長剤、架橋剤等を併用してもよい。鎖延長剤、架橋剤としては、例えば、グリコール類、ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン及びアミン類等が挙げられる。
ウレタン樹脂組成物は、ウレタン調整成分と所望により、溶媒、助剤等を適宜の方法で混合して得られる。溶媒としては、例えば、メタノール及びエタノール等のアルコール、キシレン及びトルエン等の芳香族系溶媒、酢酸エチル及び酢酸ブチル等のエステル系溶媒等の揮発性溶媒、又は、水等を挙げることができる。
この発明に係る導電性ローラの製造方法を、導電性ローラ1を例に挙げて、以下に説明する。
導電性ローラ1は、軸体2の外周面に弾性層3を形成し、さらに、弾性層3の外周面にウレタンコート層4を形成して、製造される。導電性ローラ1を製造するには、まず、軸体2が準備される。例えば、軸体2は公知の方法により所望の形状に調製される。この軸体2は弾性層3が形成される前にプライマーが塗布されてもよい。軸体2に塗布されるプライマーとしては、特に制限はないが、弾性層3とウレタンコート層4とを接着又は密着させるプライマー層とを形成する材料と同様の樹脂及び架橋剤が挙げられる。プライマーは、所望により溶剤等に溶解され、定法、例えば、ディップ法、スプレー法等に従って、軸体の外周面に塗布される。
弾性層3は前記導電性組成物を軸体2の外周面に加熱硬化して形成される。例えば、弾性層3は、公知の成形方法によって、加熱硬化と成形とを同時に又は連続して行い、軸体2の外周面に形成される。導電性組成物の硬化方法は導電性組成物の硬化に必要な熱を加えられる方法であればよく、また弾性層3の成形方法も押出成形による連続加硫、プレス、インジェクションによる型成形等、特に制限されるものではない。例えば、導電性組成物が付加硬化型ミラブル導電性シリコーンゴム組成物である場合には、例えば、押出成形等を選択することができ、導電性組成物が付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物である場合には、例えば、金型を用いる成形法を選択することができる。導電性組成物を硬化させる際の加熱温度は、付加硬化型ミラブル導電性シリコーンゴム組成物の場合は、100〜500℃、特に120〜300℃、時間は数秒以上1時間以下、特に10秒以上〜35分以下であるのが好ましく、付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物の場合は、100〜300℃、特に110〜200℃、時間は5分〜5時間、特に1〜3時間であるのが好ましい。また、必要に応じ、付加硬化型ミラブル導電性シリコーンゴム組成物の場合は100〜200℃で1〜20時間程度の硬化条件で、また、付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物の場合は120〜250℃で2〜70時間程度の硬化条件で、二次加硫してもよい。また、導電性組成物は既知の方法で発泡硬化させることにより、気泡を有するスポンジ状弾性層を容易に形成することもできる。
このようにして形成された弾性層3は、所望により、その表面が研磨、研削されて、外径及び表面状態等が調整される。また、このようにして形成された弾性層3はウレタンコート層4が形成される前に前記プライマー層が形成されてもよい。
ウレタンコート層4は、このようにして形成された弾性層3、又は、所望により形成されたプライマー層の外周面に、前記ウレタン樹脂組成物を塗工し、次いで、塗工されたウレタン樹脂組成物を加熱硬化又は湿気硬化させて、形成される。ウレタン樹脂組成物の塗工は、例えば、ウレタン樹脂組成物の塗工液を塗工する塗布法、塗工液に弾性層3等を浸漬するディッピング法、塗工液を弾性層3等に吹き付けるスプレーコーティング法等の公知の塗工方法によって、行われる。ウレタン樹脂組成物は、そのまま塗工してもよいし、ウレタン樹脂組成物に、例えば、メタノール及びエタノール等のアルコール、キシレン及びトルエン等の芳香族系溶媒、酢酸エチル及び酢酸ブチル等のエステル系溶媒等の揮発性溶媒、又は、水を加えた塗工液を塗工してもよい。このようにして塗工されたウレタン樹脂組成物を硬化する方法は、ウレタン樹脂組成物の硬化等に必要な熱又は水分を加えられる方法であればよく、例えば、ウレタン樹脂組成物が塗工された弾性層3等を加熱器で加熱する方法、ウレタン樹脂組成物が塗工された弾性層3等を高湿度下に静置する方法等が挙げられる。ウレタン樹脂組成物を加熱硬化させる際の加熱温度は、例えば、100〜200℃、特に120〜160℃、加熱時間は10〜120分間、特に30〜60分間であるのが好ましい。なお、前記塗工に代えて、ウレタン樹脂組成物を弾性層3又はプライマー層の外周面に、押出成形、プレス成形、インジェクション成形等の公知の成形方法によって、積層すると共に、又は、積層した後に、積層されたウレタン樹脂組成物を硬化させる方法等が採用されることができる。
この発明に係る導電性ローラの製造方法においては、前記したようにして導電性ローラを製造した後に、導電性ローラを120〜170℃にて15分〜2時間に亙って加熱する一次乾燥をし、その後に加熱を停止して4〜72時間に亙って常温下に放置し、その後に120〜170℃で15分〜2時間の加熱をする二次乾燥をする。
前記一次乾燥における加熱の方法としては特に制限がなく、例えば加熱乾燥器、ドライヤー、通電により赤熱したニクロム線等を挙げることができる。
一次乾燥を行う期間中に、導電性ローラの弾性層及びウレタンコート層中に存在する酢酸ブチル、低分子シロキサン等の揮発性有機化合物が弾性層及びウレタンコート層中を移動し、ウレタンコート層の表面からウレタンコート層外へと拡散して行く。その結果、弾性層及びウレタンコート層それぞれの軸体に近い部分、すなわち弾性層及びウレタンコート層中の深部からウレタンコート層の表面に向かって、揮発性有機化合物の濃度が低下するという濃度勾配が発生する。
一次乾燥を15分〜2時間を行った後に加熱を停止し、そのまま4〜72時間に亙って常温下で放置すると、その加熱停止期間中に、弾性層及びウレタンコート層それぞれの深部に存在していた揮発性有機化合物がウレタンコート層の表面へと拡散し、弾性層及びウレタンコート層それぞれにおいて揮発性有機化合物の濃度勾配がなくなるか、あるいは濃度勾配が小さくなる。つまり、弾性層及びウレタンコート層それぞれの深部における揮発性有機化合物の濃度とウレタンコート層の表面に近い部分における揮発性有機化合物の濃度とにほとんど差がなくなり、また差があったとしてもわずかになる。加熱停止を4〜72時間継続した後における弾性層及びウレタンコート層それぞれにおける揮発性有機化合物の濃度は、一次乾燥をする直前における弾性層及びウレタンコート層それぞれにおける揮発性有機化合物の濃度よりもはるかに低下している。しかもその低下した揮発性有機化合物の濃度は、弾性層及びウレタンコート層の深部とウレタンコート層の表面部とでほぼ一定となっている。故に、加熱停止期間が72時間を超えても弾性層及びウレタンコート層それぞれにおける揮発性有機化合物の濃度はそれほど低下しない。
加熱停止期間の終了後に導電性ローラの二次乾燥を行うと、弾性層及びウレタンコート層中に存在する酢酸ブチル、低分子シロキサン等の揮発性有機化合物が熱により再び拡散移動してウレタンコート層の深部に存在する揮発性有機化合物がウレタンコート層の表面部へと移動し、ウレタンコート層の表面部に存在する揮発性有機化合物は表面からウレタンコート層外へと放出される。
その結果として二次乾燥後には、ウレタンコート層の表面に近い領域における揮発性有機化合物の濃度がほぼゼロとなり、ウレタンコート層の深部における揮発性有機化合物の濃度も相当に低下する。
この発明では、導電性ローラ中に存在する揮発性有機化合物のうち酢酸ブチルの放出量が特に多い場合には、揮発性有機化合物の放出量の指標として酢酸ブチルを採用する。つまり、導電性ローラから放出される酢酸ブチルの放出量が100,000μg/m3以下であると導電性ローラから放出される低分子シロキサン、トルエン等の揮発性有機化合物の放出量が少ないとする。
次に、この発明に係る導電性ローラ1を備えた現像装置(以下、この発明に係る現像装置と称することがある。)の一例、及び、この一例の現像装置を備えた画像形成装置(以下、この発明に係る画像形成装置と称することがある。)の一例を、図2を参照して、説明する。
この画像形成装置10は、図2に示されるように、この発明に係る現像装置20B、20C、20M及び20Yを備えている。現像装置20B、20C、20M及び20Y並びに画像形成装置10において、導電性ローラ1は、現像剤担持体23B、23C、23M及び23Y、すなわち、現像ローラとして装着されている。この画像形成装置10は、図2に示されるように、各色の現像ユニットB、C、M及びYに装備された複数の像担持体11B、11C、11M及び11Yを転写搬送ベルト6上に直列に配置したタンデム型カラー画像形成装置であり、したがって、現像ユニットB、C、M及びYが2本の支持ローラ42に巻回された転写搬送ベルト6上に直列に配置されている。現像ユニットBは、像担持体11B例えば感光体(感光ドラムとも称される。)と、帯電手段12B例えば帯電ローラと、露光手段13Bと、現像装置20Bと、転写搬送ベルト6を介して像担持体11Bに当接する転写手段14B例えば転写ローラと、クリーニング手段15Bとを備えている。現像ユニットC、M及びYは現像装置Bと基本的に同様に構成されている。
現像装置20Bは、一成分非磁性の現像剤22Bを収容する筐体21Bと、現像剤22Bを像担持体11Bに供給する現像剤担持体23B例えば現像ローラと、現像剤22Bの厚みを調整する現像剤量調節手段24B例えばブレードとを備えて成る。この現像装置20Bは、現像剤担持体23Bとしての導電性ローラ1が像担持体11Bに当接又は圧接するように、画像形成装置10に装着されている。このときの導電性ローラ1と像担持体11Bとのニップ幅は、通常、導電性ローラ1の周方向長さが0.1〜2mmとなるように調整される。現像装置20C、20M及び20Yは現像装置20Bと基本的に同様に構成されている。
画像形成装置10に使用される現像剤22B、22C、22M及び22Yは、いずれも、摩擦により帯電可能な現像剤であって、例えば、乾式現像剤でも湿式現像剤でもよく、また、非磁性現像剤でも磁性現像剤でもよい。各現像ユニットの筐体21B、21C、21M及び21Y内には、一成分非磁性の、黒色現像剤22B、シアン現像剤22C、マゼンタ現像剤22M及び黄色現像剤22Yが収納されている。
定着手段30は、記録体16の搬送方向下流であって現像ユニットYの下流側に配置されている。この定着手段30は、記録体16を通過させる開口部35を有する筐体内に、定着ローラ31と、定着ローラ31の近傍に配置された無端ベルト支持ローラ33と、定着ローラ31及び無端ベルト支持ローラ33に巻き掛けられた無端ベルト36と、定着ローラ31と対向配置された加圧ローラ32とを備え、無端ベルト36を介して定着ローラ31と加圧ローラ32とが互いに当接又は圧接するように回転自在に支持されて成る圧力熱定着装置である。画像形成装置10の底部には記録体16を収容するカセット41が設置されている。
画像形成装置10は以下のようにして記録体16にカラー画像を形成する。まず、現像ユニットBにおいて、帯電手段12Bで帯電した像担持体11Bの表面に露光手段13Bにより静電潜像が形成され、現像剤担持体23Bにより供給された現像剤22Bで黒色の静電潜像が現像される。そして、記録体16が転写手段14Bと像担持体11Bとの間を通過する際に黒色の静電潜像が記録体16Bの表面に転写される。次いで、現像ユニットBと同様にして、現像ユニットC、M及びYによって、静電潜像が黒像に顕像化された記録体16に、それぞれシアン像、マゼンタ像及び黄色像が重畳され、カラー像が顕像化される。次いで、カラー像が顕像化された記録体16は、定着手段30によりカラー像が永久画像として記録体16に定着される。このようにして、記録体16にカラー画像を形成することができる。
現像装置20B、20C、20M及び20Yはいずれも現像剤担持体23B、23C、23M及び23Yとして導電性ローラ1を備えているから、画像形成装置10が高品質な画像を形成することに貢献できると共に、VOCの排出量を低減することができる。
このタンデム型画像形成装置10は、現像剤担持体23として導電性ローラ1が装着され、また、現像剤担持体23として導電性ローラ1が装着されていると、高品質の画像を形成できると共に、VOCの排出量を低減することができる。またタンデム型画像形成装置10を長期間にわたって待機又は停止しても導電性ローラ1のウレタンコート層4の均一性を損なうこともなく、このタンデム型画像形成装置10は待機又は停止がたとえ長期間にわたって継続したとしても白筋が実質的にない高品質の画像を形成できる。
画像形成装置10は、例えば、複写機、ファクシミリ、プリンター等の画像形成装置とされる。なお、画像形成装置10においてはこの発明に係る導電性ローラを現像剤担持体23の一例である現像ローラとして用いた例を参照して説明したが、現像剤供給ローラとしてこの発明に係る導電性ローラを用いても同様に高品質の画像を形成できると共に、より一層VOCの排出量を低減することができる。
この発明に係る導電性ローラ、現像装置及び画像形成装置は、前記した例に限定されることはなく、本願発明の目的を達成することができる範囲において、種々の変更が可能である。例えば、この発明に係る導電性ローラは、弾性層とウレタンコート層との間に他の層を有してもよい。他の層としては、例えば、弾性層とウレタンコート層とを接着又は密着させるプライマー層等が挙げられる。プライマー層を形成する材料としては、例えば、アルキッド樹脂、フェノール変性・シリコーン変性等のアルキッド樹脂変性物、オイルフリーアルキッド樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂及びこれらの混合物等が挙げられる。また、これらの樹脂を硬化及び/又は架橋する架橋剤としては、例えば、イソシアネート化合物、メラミン化合物、エポキシ化合物、過酸化物、フェノール化合物、ハイドロジェンシロキサン化合物等が挙げられる。プライマー層は、例えば、0.1〜10μmの厚さに形成される。
画像形成装置10は電子写真方式の画像形成装置とされているが、この発明において、画像形成装置は、電子写真方式には限定されず、例えば、静電方式の画像形成装置であってもよい。また、この発明に係る導電性ローラが配設される画像形成装置は、各色の現像ユニットを備えた複数の像担持体を転写搬送ベルト上に直列に配置したタンデム型カラー画像形成装置に限られず、例えば、単一の現像ユニットを備えたモノクロ画像形成装置、像担持体上に担持された現像剤像を無端ベルトに順次一次転写を繰り返す4サイクル型カラー画像形成装置等であってもよい。また、画像形成装置に用いられる現像剤は、一成分非磁性現像剤とされているが、この発明においては、一成分磁性現像剤であってもよく、二成分非磁性現像剤であっても、また、二成分磁性現像剤であってもよい。定着手段30は、熱ローラ定着装置、加熱定着装置、圧力定着装置等が採用されてもよい。
(実施例1)
無電解ニッケルメッキ処理が施された軸体(SUM22製、直径7.5mm、長さ280mm)をエタノールで洗浄し、その表面にシリコーン系プライマー(商品名「プライマーNo.16」、信越化学工業株式会社製)を塗布した。プライマー処理した軸体2を、ギヤオーブンを用いて、150℃の温度にて10分焼成処理した後、常温にて30分以上冷却し、軸体2の表面にプライマー層を形成した。
メチルビニルシリコーン生ゴム(商品名「KE−78VBS」、信越化学工業株式会社製)100質量部と、ジメチルシリコーン生ゴム(商品名「KE−76VBS」、信越化学工業株式会社製)20質量部と、カーボンブラック(商品名「アサヒサーマル」、旭カーボン株式会社製)10質量部と、煙霧質シリカ系充填材(商品名「AEROSIL OX−50」、平均一次粒径40nm、嵩密度1.3g/cm3、日本アエロジル株式会社製)15質量部と、白金系触媒(商品名「C−19A」、信越化学工業株式会社製)0.5質量部と、オルガノハイドロジェンポリシロキサン(商品名「C−19B」、信越化学工業株式会社製)2.0質量部とを混合し、加圧ニーダーで混練して、付加硬化型ミラブル導電性シリコーンゴム組成物を調製した。
次いで、プライマー層を形成した前記軸体2と前記付加硬化型ミラブル導電性シリコーンゴム組成物とを、クロスヘッド型押出成形機にて一体分出し、ギヤオーブンを用いて、250℃、30分間加熱した。その後、さらに、ギヤオーブンを用いて、200℃で4時間にわたって、二次加熱し、常温にて24時間放置した。次いで、円筒研削盤にて、形成した弾性層3の直径が16mmとなるように、弾性層3の表面を研磨した。形成された弾性層3の軸線長さは230mmであった。
また、下記に示すポリオール及びポリカルボン酸を準備し、ポリオールのOH基とポリカルボン酸のCOOH基とのモル比(OH/COOH)が8/7となるように、これらを重合して、ポリエステルポリオールを調製した。
前記ポリエステルポリオールは次のようにして合成した。すなわち、冷却管、温度計、水分受、窒素導入管及び減圧装置がセットされたセパラブルフラスコに、1,6−ヘキサンジオール709質量部及び1,2,4−ブタントリオール212質量部、アジピン酸472質量部及びイソフタル酸498質量部、p−トルエンスルホン酸0.5質量部、トルエン50質量部を仕込み、窒素を流しながら180℃に2時間かけて加温し、攪拌した。加温中に、全体が溶融混合し均一となって、水とトルエンとの混合物が流出してきた。180℃まで昇温後に同温度で2時間脱水縮合させた。次いで、フラスコ内の圧力を20mmHgまで徐々に減圧し、この圧力で1時間かけてトルエンを留去しつつ、引き続き脱水縮合を行った。その後冷却してポリエステルポリオールを得た。
次いで下記組成を有するウレタンコート層4形成用のウレタン樹脂組成物を調製した。
・前記ポリエステルポリオール28質量部(後述するヘキサメチレンジイソシアネートとポリエステルポリオールとのモル比(NCO/OH=1.1/1)
・カーボンブラック(商品名「トーカブラック#5500」、東海カーボン株式会社製)5質量部
・小径シリカ(平均粒径1.5μm、商品名「ACEMATT OK−607」、デグサ社製)4質量部(ポリウレタン調整成分100質量部に対して9.5質量部)
・ジブチル錫ジウラウレート(商品名「ジ−n-ブチルすずジウラウレート」、昭和化学株式会社製)0.03質量部
・ヘキサメチレンジイソシアネート(商品名「デュラネートTPA−100」、旭化成株式会社製)14質量部
このようにして調製したウレタン樹脂組成物100質量部に対して300質量部の酢酸ブチルを加えて塗工液を調製し、この塗工液を弾性層3の外周面にスプレーコーティング法によって塗布し、160℃で30分間加熱して、層厚20μmのウレタンコート層4を形成した。このようにして、3本の導電性ローラを製造した。
3本の導電性ローラを加熱炉の中に装入し、一次乾燥として160℃で30分加熱した。
前記加熱時間の経過後に、加熱を停止し、3本の導電性ローラを加熱炉から取り出して、常温下で24時間の非加熱状態に置いた。
3本の導電性ローラを常温下に24時間放置した後に、前記加熱炉に3本の導電性ローラを装入し、二次乾燥として160℃で30分の加熱処理をした。
このようにして、実施例1の導電性ローラを製造した。
製造された3本の導電性ローラそれぞれにつき、揮発性有機化合物の放出量を以下のようにして定量した(放出ガスの定量)。
すなわち、1本の導電性ローラを簡易式ガス捕集バッグ(ジーエルサイエンス(株)製、スマートバッグPA、内容積10L)(以下において「補集バッグ」と称する。)に収納した。導電性ローラを収容した捕集バッグを50℃に加熱した加熱装置内に入れて2時間保持した。2時間の経過後にその加熱装置から前記捕集バッグを取り出してその捕集バッグを吸着管(ジーエルサイエンス(株)製、テナックスTA,粒度60/80メッシュ、充填量150mg)の一端開口部に取り付け、その吸着管の他端開口部を定量ポンプに装着した。定量ポンプを駆動して100mL/分の吸引速度にて吸着管内に捕集バッグ内の捕集ガスを導入した。吸着管内の吸着材に捕集バッグ内のガスを吸着させた。
捕集ガスを吸着した吸着剤を有する吸着管を下記の加熱脱着装置に装填して捕集ガスを脱離し、脱離した捕集ガスを下記の分析装置内のカラムに導入して、揮発性有機化合物(VOC)として、ヘキサメチルシクロトリシロキサン(D3)、オクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)、デカメチルシクロペンタシロキサン(D5)、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン(D6)、テトラデカメチルシクロヘプタシロキサン(D7)、及び酢酸ブチルの定量分析を行った。
加熱脱着装置:パーキンエルマー(株)製、ターボマトリクスATD
加熱脱着条件:設定温度270℃ 加熱時間15分
コールドトラップ条件:−10℃
分析装置:株式会社島津製作所製、GC−MS QP−2010plus
カラム:アジレント・テクノロジー株式会社製 微極性カラムDB−5ms
長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm
測定温度:40℃に5分間の加熱、その後10℃/分の加熱速度で300℃にし、
その300℃で4分間加熱する。
検出器電圧:0.5〜1kV
スプリット比:50〜5000
3本の導電性ローラそれぞれについて揮発性有機化合物の放出量を定量して得られた値を算術平均した結果、酢酸ブチルの捕集量が57800μg/m3であり、D3の捕集量が400μg/m3であり、D4〜D7の捕集量が28600μg/m3であり、検出された捕集ガスの総量が86800μg/m3であった。
(比較例1)
前記実施例1における導電性ローラと同様の導電性ローラにつき、常温下に放置及び二次乾燥をしないこと以外は前記実施例1と同様にして導電性ローラを3本製造した。
一次乾燥終了後の導電性ローラにつき前記放出ガスの定量を行った。
3本の導電性ローラそれぞれの放出ガスの定量値を算術平均した結果、前記導電性ローラから放出された物質として酢酸ブチルの捕集量が292000μg/m3であり、D3の捕集量が420μg/m3であり、D4〜D7の捕集量が42800μg/m3であり、検出された捕集ガスの総量が335220μg/m3であった。
(比較例2)
前記実施例1における導電性ローラと同様の導電性ローラにつき、一次乾燥として、160℃で60分加熱、及び二次乾燥をしないこと以外は、前記実施例1と同様にして導電性ローラを3本製造した。
常温下に24時間放置後の導電性ローラにつき前記放出ガスの定量を行った。
3本の導電性ローラそれぞれの放出ガスの定量値を算術平均した結果、前記導電性ローラから放出された物質として酢酸ブチルの捕集量が82100μg/m3であり、D3の捕集量が550μg/m3であり、D4〜D7の捕集量が43700μg/m3であり、検出された捕集ガスの総量が126350μg/m3であった。
実施例1、比較例1及び比較例2に示されるように、常温下放置及び二次乾燥の少なくとも一方を行わなかった、比較例1及び比較例2の導電性ローラに比べて、実施例1の導電性ローラは酢酸ブチル、D3、D4〜D7の捕集量が少なく、検出された捕集ガスの総量は、100,000μg/m3以下であり、導電性ローラからのVOCの排出量が少なかった。