以下、本発明の実施の形態に係る旋回式建設機械として、ハイブリッド式油圧ショベルと電動式油圧ショベルのうち、エンジンとアシスト発電モータを併用したハイブリッド式油圧ショベルを例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
なお、電動式油圧ショベルとして構成する場合には、エンジンを廃止して、電動モータだけで油圧ポンプを駆動する構成とすればよいものである。
図1ないし図11は本発明の第1の実施の形態を示している。図1において、1は旋回式建設機械としてのハイブリッド式油圧ショベルで、該油圧ショベル1は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、該下部走行体2上に設けられた旋回軸受装置3と、前記下部走行体2上に該旋回軸受装置3を介して旋回可能に搭載された上部旋回体4と、該上部旋回体4の前側に俯仰動可能に設けられ、土砂の掘削作業等を行う作業装置5とにより構成されている。
作業装置5は、後述する旋回フレーム12の各縦板14,15に俯仰動可能に取付けられたブーム5Aと、該ブーム5Aの先端部に俯仰動可能に取付けられたアーム5Bと、該アーム5Bの先端部に回動可能に取付けられたバケット5Cと、これらを駆動する油圧シリンダからなるブームシリンダ5D、アームシリンダ5E、バケットシリンダ5Fとにより構成されている。
ここで、図1、図2に示すように、下部走行体2は、左,右両側に位置して前,後方向に延びたサイドフレーム6L,6Rを有するトラックフレーム6と、該トラックフレーム6の左,右のサイドフレーム6L,6Rの長さ方向の一端部に設けられた駆動輪7L,7Rと、前記各サイドフレーム6L,6Rの他端部に設けられた遊動輪8L,8Rと、前記駆動輪7L,7Rと遊動輪8L,8Rに巻回された履帯9L,9Rとにより構成されている。
左側の駆動輪7Lは左側の走行用電動モータ10Lによって回転駆動され、右側の駆動輪7Rは右側の走行用電動モータ10Rによって回転駆動される。これらの走行用電動モータ10L,10Rは、履帯9L,9Rを独立して駆動制御するもので、後述の蓄電装置25、走行体側電動モータ40からの給電により回転駆動されるものである。
一方、トラックフレーム6は、例えば製缶構造によって内部空間をもったボックス体として形成されており、この内部空間を利用して後述の走行体側電動モータ40が配置されている。トラックフレーム6の中央部の上側には、支持筒体11が設けられ、該支持筒体11の上端部には、径方向の外側に突出した鍔状の取付フランジ11A(図2、図5参照)が設けられている。この取付フランジ11A上には、後述する旋回軸受装置3の内輪26が多数本のボルト29によって取付けられている。
さらに、取付フランジ11Aの内周側には、図5に示すように、支持筒体11を閉塞するように円板状のモータ取付板11Bが取付けられ、該モータ取付板11Bの中心位置には走行体側電動モータ40を取付けるためのモータ取付孔11Cが設けられている。なお、モータ取付板11Bは、潤滑用のグリース(図示せず)を後述の内歯歯車26B、太陽歯車32,33、遊星歯車34の周囲に保持するグリースバスの底板を兼ねている。
上部旋回体4は、後述の旋回フレーム12が旋回軸受装置3を介して下部走行体2上に旋回自在に搭載されている。この旋回フレーム12上には、キャブ19、カウンタウエイト20、蓄電装置21、エンジン22、アシスト発電モータ24、旋回体側電動モータ38、スリップリング41等が設けられている。
12は上部旋回体4の支持構造体を形成する旋回フレームである。図3に示すように、旋回フレーム12は、前,後方向に延びる厚肉な鋼板等からなる底板13と、該底板13上に立設され、左,右方向に所定の間隔をもって前,後方向に延びた左縦板14,右縦板15と、該各縦板14,15の外側に間隔をもって配置され、前,後方向に延びた左サイドフレーム16,右サイドフレーム17と、前記底板13、各縦板14,15から左,右方向に張出し、その先端部に前記左,右のサイドフレーム16,17を支持する複数本の張出しビーム18とにより構成されている。各縦板14,15の前側には、作業装置5のブーム5Aのフート部が俯仰動可能に取付けられている。
ここで、旋回フレーム12の底板13は、旋回中心Oを軸線として後述する遊星歯車34と一緒に旋回動作する遊星歯車機構37のキャリアとして機能するものである。図4に示すように、底板13には、後述する旋回軸受装置3の外輪27に形成した各ボルト挿通孔27Dに対応するように、多数個のめねじ孔13Aが旋回中心Oを中心とする円環状に並んで上,下方向に貫通して形成されている。この底板13の旋回中心Oの軸線位置には、後述の旋回体側電動モータ38を取付けるためのモータ取付孔13Bが設けられ、該モータ取付孔13Bの周囲には、多数個のめねじ孔13Cが上,下方向に貫通して形成されている。
一方、底板13には、各めねじ孔13Aとモータ取付孔13Bとの間に位置して周方向に等間隔で複数個、例えば3個のピン孔13Dが上,下方向に貫通して形成されている。このピン孔13Dは、図5に示すように、後述の遊星歯車34を底板13(旋回フレーム12)に対し回転自在に取付けるための支持ピン35が挿嵌されるものである。
さらに、底板13の前側寄り位置には、後述のブラシ装置45を取付けるためのブラシ取付孔13Eが設けられ、該ブラシ取付孔13Eの周囲には、例えば2個のめねじ孔13Fが上,下方向に形成されている。なお、ブラシ取付孔13Eは、底板13の前側寄り位置に設けているが、後述する環状電極43の上側で周囲の邪魔にならない位置であれば、前側位置以外に配設することもできる。
19は旋回フレーム12の左前側に設けられたキャブ(図1参照)で、該キャブ19内には、オペレータが着座する運転席が設けられ、該運転席の周囲には、走行用の操作レバー、作業用の操作レバー等(いずれも図示せず)が配設されている。20は旋回フレーム12の後部に取付けられたカウンタウエイトである。
21は旋回フレーム12上に位置して設けられた旋回体側の蓄電装置(図10参照)で、該蓄電装置21は、キャパシタと呼ばれ、商用電源に接続されて電荷を蓄電するものである。この蓄電装置21は、旋回体側電動モータ38と接続され、この旋回体側電動モータ38に給電するものである。
22はキャブ19とカウンタウエイト20との間に位置して旋回フレーム12上に設けられたエンジンで、該エンジン22には、油圧ポンプ23とアシスト発電モータ24とが接続されている。ここで、油圧ポンプ23は、作業装置5の各シリンダ5D,5E,5Fを駆動するための動力源となる圧油を吐出するもので、後述のコントロールバルブ54を介して各シリンダ5D,5E,5Fと接続されている。一方、アシスト発電モータ24は、エンジン22によって回転駆動させることにより発電し、またはエンジン22をアシスト駆動するものである。
25は下部走行体2のトラックフレーム6に設けられた走行体側の蓄電装置で、該蓄電装置25は、前述した旋回体側の蓄電装置21と同様に、キャパシタと呼ばれ、商用電源に接続されて電荷を蓄電するものである。この蓄電装置25は、走行用電動モータ10L,10Rと接続され、この走行用電動モータ10L,10Rに給電するものである。
次に、下部走行体2上に上部旋回体4を旋回可能に支持するために設けられた第1の実施の形態による旋回軸受装置3の構成について説明する。
図4に示すように、旋回軸受装置3は、下部走行体2の支持筒体11上に旋回中心Oを軸線として設けられ、下部走行体2に対して上部旋回体4を水平方向で旋回可能に支持するものである。図5、図6に示すように、この旋回軸受装置3は、下部走行体2の支持筒体11上に取付けられた円環状の内輪26と、該内輪26の径方向の外側に同心円上に設けられた円環状の外輪27と、前記内輪26の外周側に設けた軌道26Aと外輪27の内周側に設けた軌道27Aとの間に転動可能に配置され前記内輪26と外輪27とを相対回転可能に支持する転動体としての多数個の鋼球28とにより構成されている。
内輪26は、下部走行体2を構成する支持筒体11の取付フランジ11Aに挿通されたボルト29を後述の各めねじ穴26Eに螺着することにより、支持筒体11上に一体的に取付けられている。ここで、内輪26は、例えば四角形状の断面をもって円環状に形成され、その外周面には、半円状の軌道26Aが形成されている。一方、内輪26の内周側には、遊星歯車34が噛合する歯数Z1の内歯歯車26Bが形成されている。内輪26の上面部26Cには、後述の電極台42、環状電極43が取付けられている。さらに、内輪26の下面部26Dには、周方向に所定の間隔をもって多数個のめねじ穴26Eが形成されている。
図8に示すように、内輪26には、上面部26Cから下面部26Dに貫通する貫通孔26Fが、例えば後述する環状電極43の本数に応じて4本設けられている(1本のみ図示)。貫通孔26Fは、各環状電極43と第4〜第7のPCU63〜66とを電気的に接続するためのリード線44A〜45Dを挿通させるものである。
外輪27は、例えば四角形状の断面をもって内輪26よりも一回り大径な円環状に形成され、その内周面には、内輪26の軌道26Aと対向した半円状の軌道27Aが形成されている。ここで、外輪27は、当該外輪27を旋回フレーム12の底板13に取付けたときに、内輪26の上部が底板13と干渉しないように、その上面部27Bを内輪26の上面部26Cよりも高い位置に配置している。これにより、外輪27の上面部27Bを旋回フレーム12の底板13に取付けた状態では、外輪27の上面部27Bと内輪26の上面部26Cとの段差によって、内輪26の上面部26Cと底板13との間に空間を形成することができる。内輪26の上面部26Cには、この空間を利用して環状電極43を設けることができる。
図5、図6に示すように、外輪27には、上面部27Bから下面部27Cに貫通する多数本のボルト挿通孔27Dが所定の間隔をもって設けられている。外輪27は、各ボルト挿通孔27Dに挿通したボルト30を底板13のめねじ孔13Aに螺着することにより、該底板13に一体的に取付けられている。
なお、旋回軸受装置3には、外輪27の内周面と内輪26の外周面に上側環状シール部材31Aと下側環状シール部材31B(図8参照)が設けられ、該各環状シール部材31A,31Bによって各鋼球28の周囲にグリースが保持されている。
次に、第1の実施の形態の特徴部分の一部となる遊星歯車機構37を構成する太陽歯車32,33と遊星歯車34について、図5、図9を参照しつつ説明する。
32は支持筒体11のモータ取付板11Bと旋回フレーム12の底板13との間で旋回軸受装置3の旋回中心Oの軸線位置に設けられた旋回体側太陽歯車を示している。この旋回体側太陽歯車32は、内輪26の内歯歯車26Bに対応した軸方向(上,下方向)位置、具体的には、上部旋回体4側寄り(上側寄り)に配置されている。旋回体側太陽歯車32は、後述する遊星歯車34の歯幅寸法(上,下方向長さ寸法)の約半分の歯幅寸法をもった歯数Z2の外歯歯車として形成され、その中央位置には雌スプライン孔32Aが形成されている。旋回体側太陽歯車32は、雌スプライン孔32Aに後述する旋回体側電動モータ38の出力軸38Cが挿嵌され、該旋回体側電動モータ38によって回転駆動されるものである。
33は旋回体側太陽歯車32の下側に位置して該旋回体側太陽歯車32と同軸に配置された走行体側太陽歯車を示している。この走行体側太陽歯車33は、旋回体側太陽歯車32と同様に、遊星歯車34の歯幅寸法(上,下方向長さ寸法)の約半分の歯幅寸法をもった歯数Z2の外歯歯車として形成され、その中央位置には雌スプライン孔33Aが形成されている。走行体側太陽歯車33は、雌スプライン孔33Aに後述する走行体側電動モータ40の出力軸40Cが挿嵌され、該走行体側電動モータ40によって回転駆動されるものである。
なお、第1の実施の形態では、旋回体側太陽歯車32と走行体側太陽歯車33とを上,下方向で重ねて設け、旋回体側太陽歯車32に旋回体側電動モータ38の出力軸38Cを接続し、旋回体側太陽歯車32に走行体側電動モータ40の出力軸40Cを接続する構成としたが、1個の太陽歯車に旋回体側電動モータ38の出力軸38Cと走行体側電動モータ40の出力軸40Cとの両方を対向した状態で接続する構成としてもよい。
34は上部旋回体4に設けられた複数個、例えば3個の遊星歯車である。この3個の遊星歯車34は、各太陽歯車32,33と内輪26の内歯歯車26Bとの間に周方向に等間隔で配置され、該各太陽歯車32,33と内歯歯車26Bとの両方に噛合している。これにより、各遊星歯車34は、自転しつつ各太陽歯車32,33の周囲を公転する。各遊星歯車34は、上,下方向に重ねて配置した状態の各太陽歯車32,33の歯幅寸法、内輪26の内歯歯車26Bの歯幅寸法と同等の歯幅寸法をもった歯数Z3の外歯歯車として形成されている。各遊星歯車34の中央位置には、軸受孔34Aが形成され、底板13のピン孔13Dに挿嵌された支持ピン35に軸受36を介して回転可能に支持されている。
ここで、内輪26の内歯歯車26Bと各太陽歯車32,33とに各遊星歯車34を噛合することにより、遊星歯車機構37を構成している。この遊星歯車機構37は、各太陽歯車32,33が回転駆動されると、各遊星歯車34を自転させつつ各太陽歯車32,33の周囲で公転させることにより、大きな減速比をもってキャリアを兼ねる旋回フレーム12の底板13、即ち、上部旋回体4を旋回動作させることができる。この場合の遊星歯車機構37は、減速比i、内歯歯車26Bの歯数Z1、各太陽歯車32,33の歯数Z2とすると、下記の数1のように大きな減速比を得ることができる。
これにより、後述の旋回体側電動モータ38と走行体側電動モータ40の駆動トルクが低い場合でも、遊星歯車機構37による減速によって高い駆動トルクを得ることができる。従って、各電動モータ38,40は、別途減速機構を設けずに、または少ない減速段数(小さな減速比)の減速機構を設けるだけでよいから、これらの電動モータ38,40を小型化することができる。
次に、第1の実施の形態の特徴部分である旋回体側電動モータ38と走行体側電動モータ40の構成について説明する。
38は上部旋回体4に設けられた旋回体側電動モータを示している。この旋回体側電動モータ38は、旋回体側太陽歯車32を回転駆動するもので、旋回中心Oの軸線が回転中心となるように旋回体側太陽歯車32の上側に配置されている。旋回体側電動モータ38は、ケーシング38A内に固定子、回転子等(いずれも図示せず)を収容し、このケーシング38Aの下部位置には、径方向外向きに突出してフランジ部38Bが設けられている。一方、回転子の回転軸線位置には、ケーシング38Aに回転可能に取付けられた出力軸38Cが設けられ、この出力軸38Cには、下側に突出した先端側に雄スプライン38C1が形成されている。
旋回体側電動モータ38は、旋回フレーム12を構成する底板13のモータ取付孔13Bに出力軸38Cの先端側を挿通させつつ、雄スプライン38C1を旋回体側太陽歯車32の雌スプライン孔32Aに噛合状態で挿入し、フランジ部38Bを底板13の上面に当接させる。この状態で、フランジ部38Bに挿通させたボルト39を底板13のめねじ孔13Cに螺着することにより、旋回体側電動モータ38を底板13上に取付けることができる。
旋回体側電動モータ38は、同等の大きさの油圧モータに比較すると、高回転型で、駆動トルクが低いという特性を有している。しかし、旋回体側電動モータ38は、その出力軸38Cを遊星歯車機構37の旋回体側太陽歯車32に接続することにより、この遊星歯車機構37による大きな減速比を利用して高い駆動トルクを得ることができる。従って、旋回体側電動モータ38は、駆動トルクを高めるために、例えばケーシング38A内に減速機構を設けたり、既存の減速機構の減速段数を追加したりする必要がないから、底板13上に突出して配置されるケーシング38Aを小型化することができる。
40は下部走行体2に設けられた走行体側電動モータを示している。この走行体側電動モータ40は、走行体側太陽歯車33を回転駆動するもので、該走行体側太陽歯車33の下側に配置されている。具体的には、走行体側電動モータ40は、下部走行体2のトラックフレーム6に設けられた支持筒体11のモータ取付板11Bに取付けられている。走行体側電動モータ40は、旋回体側電動モータ38と同軸となるように旋回中心Oの軸線を回転中心として配置され、該旋回体側電動モータ38とほぼ同様に、ケーシング40A、フランジ部40B、出力軸40Cを有している。
走行体側電動モータ40は、支持筒体11のモータ取付孔11Cに出力軸40Cの先端側を挿通させつつ、雄スプライン40C1を走行体側太陽歯車33の雌スプライン孔33Aに噛合状態で挿入し、フランジ部40Bをモータ取付板11Bの下面に当接させる。この状態で、フランジ部40Bに挿通させたボルト39をモータ取付板11Bのめねじ孔(図示せず)に螺着することにより、走行体側電動モータ40を支持筒体11内(トラックフレーム6内)に取付けることができる。
このように構成された走行体側電動モータ40は、旋回体側電動モータ38と同様に、その出力軸40Cを遊星歯車機構37の走行体側太陽歯車33に接続することにより、高い駆動トルクを得ることができる。従って、走行体側電動モータ40のケーシング38Aも小型化することができる。
ここで、下部走行体2上で上部旋回体4を旋回駆動するための旋回モータとして、旋回体側電動モータ38と走行体側電動モータ40との2つのモータを設けているから、2つの電動モータ38,40の駆動トルクを合せることができ、高い駆動トルクを得ることができる。この場合、走行体側電動モータ40は、下部走行体2のトラックフレーム6内のスペースを利用して配置しているから、上部旋回体4には、旋回体側電動モータ38を設置するためのスペースを確保すればよく、上部旋回体4を小型化することができる。
次に、下部走行体2と上部旋回体4とを電気的に接続するスリップリング41の構成について述べる。
即ち、41は旋回軸受装置3と上部旋回体4との間に設けられたスリップリングを示している。このスリップリング41は、下部走行体2上で上部旋回体4が旋回するのを許しつつ、下部走行体2と上部旋回体4との間を電気的に接続するものである。スリップリング41は、後述の電極台42、環状電極43、ブラシ装置45によって構成されている。
図8に示すように、42は旋回軸受装置3を構成する内輪26の上面部26Cに設けられた電極台である。この電極台42は、図6に示すように、内輪26の上面部26Cとほぼ同じ直径寸法を有する円環状の平坦な板体として形成され、上面側に後述の環状電極43が取付けられる。電極台42は、環状電極43が取付けられるために、その上面側または全体が絶縁材料を用いて構成されている。
43A〜43Dは内輪26の上面部26Cとなる電極台42上に設けられた複数本、例えば4本の環状電極(以下、全体として環状電極43という)を示している。この環状電極43は、旋回軸受装置3による旋回中心Oを中心とした同心円上に4重の円弧として形成され、図7に示すように、例えば内側が環状電極43Aとなり、外側が環状電極43Dとなっている。図8に示すように、環状電極43A〜43Dに接続されたそれぞれのリード線44A〜44Dが内輪26の貫通孔26F内をトラックフレーム6側に延びている。
各環状電極43のうち、環状電極43A,43Bは、各種の情報や制御指令を通信する通信用の電極で、後述のPCU63,64,65,66の制御部63B,64B,65B,66Bに接続されている。一方、環状電極43C,43Dは、制御部63B,64B,65B,66Bを駆動させるための電源用の電極で、これら制御部63B,64B,65B,66Bに接続されている。
45はスリップリング41のブラシ装置を示している。このブラシ装置45は、環状電極43の上側に位置して旋回フレーム12の底板13に設けられている。図8に示すように、ブラシ装置45は、後述のブラシガイド46、蓋部材47、接点部材49等により構成されている。
46はブラシ装置45の取付ベースとなるブラシガイドで、該ブラシガイド46は、底板13のブラシ取付孔13Eに挿嵌される円柱状に形成され、その軸線と平行になるように上,下方向に貫通して4本のブラシ挿通孔46Aが形成されている。これら4本のブラシ挿通孔46Aは、ブラシガイド46を底板13のブラシ取付孔13Eに取付けた状態で、それぞれ対応する環状電極43A〜43Dの真上に配置されている。ブラシガイド46の上部には、径方向に突出してフランジ部46Bが形成され、該フランジ部46Bには、径方向の対称位置に2個のボルト挿通孔46Cが形成されている。
47はブラシガイド46の上側に設けられた蓋部材で、該蓋部材47は、下側が開口した有蓋筒状に形成されている。蓋部材47は、ブラシガイド46の上側に取付けられることにより、後述する接点部材49A〜49Dの固定板50A〜50D等を覆うことができる。蓋部材47の下部には、ブラシガイド46のフランジ部46B、ボルト挿通孔46Cに対応するように、フランジ部47Aと2個のボルト挿通孔47Bとが形成されている。
これにより、ブラシガイド46と蓋部材47は、ブラシガイド46を底板13のブラシ取付孔13Eに挿嵌し、フランジ部46B,47Aのボルト挿通孔46C,47Bに挿通したボルト48をめねじ孔13Fに螺着することにより、底板13の所定位置に取付けることができる。
49A〜49Dは4本の環状電極43A〜43Dに対応するようにブラシガイド46に設けられた4組の接点部材(以下、全体として接点部材49という)を示している。該各接点部材49のうち、旋回中心側に位置する内側の接点部材49A,49Bは、環状電極43A,43Bと電気的に接続されるもので、通信線60A,60B,68A,68Bの一部を構成している。外側の接点部材49C,49Dは、環状電極43C,43Dと電気的に接続されるもので、制御電源線62A,62B,69A,69Bの一部を構成している。
ここで、各接点部材49A〜49Dは、同様の構成となっていることから、代表として接点部材49Aの構成について説明し、他の接点部材49B〜49Dを構成する固定板50B〜50D、接点ブラシ51B〜51D、ばね部材52B〜52D、リード線53B〜53Dについては接点部材49Aと同様に対応する符号を付し、その説明を省略するものとする。
図8に示すように、接点部材49Aは、ブラシ挿通孔46Aの上側を閉塞するようにブラシガイド46の上面に対して絶縁状態でボルト止めされた固定板50Aと、該固定板50Aの下方に位置してブラシ挿通孔46A内に上,下方向に移動可能に挿通され、例えばカーボン等の導電性材料を用いて棒状に形成された接点ブラシ51Aと、前記ブラシ挿通孔46A内に位置して前記固定板50Aと接点ブラシ51Aとの間に設けられ、該接点ブラシ51Aを下向きに付勢するばね部材52Aと、前記接点ブラシ51Aに電気的に接続されたリード線53Aとにより構成されている。
接点部材49Aは、ブラシ装置45を底板13に取付けたときに、ばね部材52Aの付勢力で接点ブラシ51Aの先端を環状電極43Aに押付けることにより、下部走行体2上で上部旋回体4が旋回動作した場合でも、常に接点ブラシ51Aと環状電極43Aとを接触状態とすることができる。これにより、下部走行体2側のリード線44Aと上部旋回体4側のリード線53Aとを常に通電状態とすることができる。
次に、ハイブリッド式油圧ショベル1の油圧系統・電気系統等の構成について、図10等を参照しつつ説明する。
まず、油圧系統について説明すると、駆動源としてエンジン22、アシスト発電モータ24を備え、該エンジン22とアシスト発電モータ24の駆動力は油圧ポンプ23に伝達されている。油圧系統を制御するコントロールバルブ54は、キャブ19内に設けられた作業用の操作レバーからの操作指令(油圧パイロット信号)に応じて、油圧ポンプ23から供給された圧油を作業装置5の各シリンダ5D,5E,5Fに供給、排出することにより、作業装置5を制御する。
次に、電気系統について説明すると、走行用の操作レバーに応じて、下部走行体2の左,右の走行用電動モータ10L,10Rの回転数、回転方向を制御する。一方、作業用の操作レバーが上部旋回体4を旋回動作するように操作されたときには、旋回用の各電動モータ38,40の回転数、回転方向を制御する。
ここで、上部旋回体4の電気系統では、旋回体側電動モータ38は、蓄電デバイスとしての電気二重層キャパシタからなる蓄電装置21と、アシスト発電モータ24と、これらから供給された直流電力を三相交流電力として制御する複数のパワーコントロールユニット55〜57(以下、PCU55〜57という)、メインコントロールユニット58(以下、MCU58という)等の電気部品を備えた駆動システムとにより駆動される。
第1のPCU55は、蓄電装置21に接続して設けられ、複数のスイッチング素子によって構成されたチョッパ55Aと、該チョッパ55Aのスイッチング素子のON/OFFを制御するための制御部55Bとを有している。チョッパ55Aは、旋回体側電動モータ38を駆動するための昇圧チョッパとして機能し、蓄電装置21から供給される直流電力を昇圧し、旋回体側電動モータ38に供給する。
第2のPCU56は、アシスト発電モータ24に接続して設けられ、例えば複数の絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)等のスイッチング素子によって構成されたインバータ56Aと、該インバータ56Aのスイッチング素子のON/OFFを制御するための制御部56Bとを有している。アシスト発電モータ24の発電時には、インバータ56Aは、アシスト発電モータ24による発電電力を直流電力に変換して蓄電装置21に供給する。一方、アシスト発電モータ24のモータ駆動時には、インバータ56Aは、蓄電装置21からの直流電力を交流の駆動電力に変換してアシスト発電モータ24に供給する。
第3のPCU57は、旋回体側電動モータ38に接続して設けられ、複数のスイッチング素子によって構成されたインバータ57Aと、該インバータ57Aのスイッチング素子のON/OFFを制御するための制御部57Bとを有している。旋回体側電動モータ38の回生時には、インバータ57Aは、旋回体側電動モータ38による回生電力を直流電力に変換して蓄電装置21に供給する。一方、旋回体側電動モータ38の旋回駆動時には、インバータ57Aは、蓄電装置21からの直流電力を交流の駆動電力に変換して旋回体側電動モータ38に供給する。
チョッパ55Aおよびインバータ56A,57Aは、一対の直流母線59A,59Bを通じて相互に接続されている。直流母線59A,59Bには、平滑コンデンサ(図示せず)が接続されると共に、例えば数百V程度の所定の直流電力が印加される。
制御部55B〜57BおよびMCU58は、一対の通信線60A,60Bを通じて相互に接続され、CAN(Control Area Network)を構成する。このため、制御部55B〜57BとMCU58との間では、CANを介して、高速なシリアル信号等を用いて各種の情報や制御指令が伝達される。さらに、制御部55B〜57Bと制御用電源61との間には、これらを駆動するための駆動電力を供給するための一対の制御電源線62A,62Bが接続されている。これにより、制御部55B〜57Bには、低圧な制御用電源61が電気的に接続され、例えば数十V程度の低圧な駆動電力が供給される。
ここで、上部旋回体4側に設けられた通信線60A,60Bと制御電源線62A,62Bは、スリップリング41を介して下部走行体2側に設けられた通信線68A,68Bと制御電源線69A,69Bに常に電気的に接続されている。
MCU58は、操作指令信号、圧力信号及び回転速度信号等の信号を用いて、コントロールバルブ、PCU55〜57および後述のPCU63〜66に対する制御指令を生成し、走行モード、旋回モードの制御、電動システムの異常監視、エネルギマネジメント等の制御を行う。
一方、下部走行体2の電気系統では、左,右の走行用電動モータ10L,10Rは、蓄電装置25、走行体側電動モータ40から供給された直流電力を三相交流電力として制御する複数のパワーコントロールユニット63〜66(以下、PCU63〜66という)および前述したMCU58を備えた駆動システムとにより駆動される。
第4のPCU63は、前述した第1のPCU55とほぼ同様に、蓄電装置25に接続して設けられ、チョッパ63Aと制御部63Bとを有している。チョッパ63Aは、左,右の走行用電動モータ10L,10Rを駆動するための昇圧チョッパとして機能し、蓄電装置25または走行体側電動モータ40から供給される直流電力を昇圧し、走行用電動モータ10L,10Rに供給する。
第5,第6のPCU64,65は、左,右の走行用電動モータ10L,10Rにそれぞれ接続して設けられ、インバータ64A,65Aと制御部64B,65Bとを有している。走行用電動モータ10L,10Rの走行駆動時には、インバータ64A,65Aは、蓄電装置25または走行体側電動モータ40からの直流電力を交流の駆動電力に変換して走行用電動モータ10L,10Rに供給する。
第7のPCU66は、走行体側電動モータ40に接続して設けられ、インバータ66Aと制御部66Bとを有している。走行体側電動モータ40の回生時には、インバータ66Aは、走行体側電動モータ40による回生電力を直流電力に変換して蓄電装置25に供給する。
チョッパ63Aおよびインバータ64A,65A,66Aは、一対の直流母線67A,67Bを通じて相互に接続されている。制御部63B〜66Bは、通信線68A,68B、スリップリング41、通信線60A,60Bを通じてMCU58と相互に接続されている。このため、制御部63B〜66Bは、上部旋回体4側の制御部55B〜57Bと同様に、MCU58との間で、CANを介して、高速なシリアル信号等を用いて各種の情報や制御指令が伝達される。さらに、制御部63B〜66Bには、これらを駆動する駆動電力を供給するための一対の制御電源線69A,69Bが接続され、該制御電源線69A,69Bは、スリップリング41、制御電源線62A,62Bを介して制御用電源61に接続されている。
第1の実施の形態によるハイブリッド式油圧ショベル1は上述の如き構成を有するもので、次に、この油圧ショベル1の動作について説明する。
オペレータは、キャブ19に搭乗して運転席に着座する。この状態で作業用の操作レバー(図示せず)を操作することにより、旋回体側電動モータ38と走行体側電動モータ40を駆動することができ、旋回軸受装置3に沿って上部旋回体4を旋回動作させたり、作業装置5を俯仰動作させたりして土砂の掘削作業等を行うことができる。一方、運転席に着座したオペレータは、走行用の操作レバー(いずれも図示せず)を操作することにより、下部走行体2の走行用電動モータ10L,10Rによって駆動輪7L,7Rを駆動し、油圧ショベル1を前進または後退させることができる。
ここで、上述した油圧ショベル1の旋回動作と走行動作における旋回体側電動モータ38と走行体側電動モータ40の動作状態について、図11を参照しつつ説明する。
まず、下部走行体2上で上部旋回体4を旋回動作させる場合について述べる。上部旋回体4を停止状態から旋回を起動(開始)させるとき、または旋回動作の途中で旋回速度を加速させるときには、旋回体側電動モータ38に給電し、該旋回体側電動モータ38の出力軸38Cに取付けられた旋回体側太陽歯車32を回転駆動する。さらに、この旋回起動時および旋回加速時には、高い駆動トルクを必要とする。そこで、走行体側電動モータ40に給電し、該走行体側電動モータ40の出力軸40Cに取付けられた走行体側太陽歯車33を回転駆動する。これにより、旋回体側電動モータ38を走行体側電動モータ40によって補助することができるから、高い駆動トルクを得ることができ、上部旋回体4を円滑に旋回動作させることができる。
次に、上部旋回体4を定常の速度(等速)で旋回動作させるときには、前述した起動時と同様に、旋回体側電動モータ38に給電しつつ、補助の走行体側電動モータ40にも給電することにより、2つの電動モータ38,40によって上部旋回体4を旋回させるようになっている。
一方、上部旋回体4の旋回動作を停止させるとき、または旋回動作の途中で旋回速度を減速させるときには、旋回体側電動モータ38と走行体側電動モータ40への給電を減少または停止し、該各電動モータ38,40が惰性で回転するときの回転力(負荷)を利用して電力を回生し、蓄電装置21,25に蓄える。
次に、下部走行体2を走行動作させる場合について述べる。この走行動作時には、起動時、停止時のいずれのときにも、旋回体側電動モータ38と走行体側電動モータ40への給電を停止している。
かくして、第1の実施の形態によれば、上部旋回体4の旋回フレーム12には、旋回体側電動モータ38を設け、下部走行体2のトラックフレーム6には、走行体側電動モータ40を設ける構成としている。従って、1つの旋回体側電動モータ38だけでは低い駆動トルクしか発生できない場合でも、走行体側電動モータ40を追加することにより、2つの電動モータ38,40によって高い駆動トルクを得ることができる。この場合、追加した走行体側電動モータ40は下部走行体2に配置しているから、上部旋回体4には、1つの旋回体側電動モータ38を設置するためのスペースだけを確保すればよい。
この結果、旋回用の電動モータを配置するためのスペースを小さく抑えることができるから、上部旋回体4を小型化することができる。一方、下部走行体2は、そのトラックフレーム6を製缶構造によって内部空間をもったボックス体として形成しているから、このトラックフレーム6の内部空間を利用して走行体側電動モータ40を設けることにより、下部走行体2も小型化することができる。
しかも、旋回軸受装置3の旋回中心Oの軸線位置に各太陽歯車32,33を設け、該太陽歯車32,33と内輪26の内歯歯車26Bとの間に各遊星歯車34を設けることにより、旋回軸受装置3の内径側に大きな減速比を得ることができる遊星歯車機構37を形成することができる。従って、旋回体側電動モータ38と走行体側電動モータ40には、別途減速機構を設けずに、または少ない減速段数の減速機構を設けるだけでも遊星歯車機構37による減速比によって高い駆動トルクを得ることができる。この結果、旋回用のモータとして各電動モータ38,40を用いた場合でも、高い駆動トルクを確保しつつ、各電動モータ38,40を小型化できるから、上部旋回体4を小型化することができる。
一方、上部旋回体4に設けた旋回体側電動モータ38と下部走行体2に設けた走行体側電動モータ40とを、旋回軸受装置3の旋回中心Oの軸線を回転中心として配置している。これにより、旋回体側電動モータ38に旋回体側太陽歯車32を直接取付けることができ、走行体側電動モータ40に走行体側太陽歯車33を直接取付けることができるから、別途動力を伝達するために用いられる歯車等を省略することができ、構成を簡略化することができる。
さらに、下部走行体2に走行用電動モータ10L,10Rを設けた場合には、この走行用電動モータ10L,10Rを制御するPCU63,64,65,66を、下部走行体2上で上部旋回体4を旋回自在としつつ、上部旋回体4に設けられたMCU58、制御用電源61と電気的に接続する必要がある。
そこで、旋回軸受装置3と上部旋回体4との間にスリップリング41を設け、このスリップリング41は、旋回軸受装置3の内輪26の上面部26Cに設けられ、下部走行体2のPCU63,64,65,66に電気的に接続される4本の円環状の環状電極43A〜43Dと、上部旋回体4に設けられ、MCU58、制御用電源61と電気的に接続され前記環状電極43A〜43Dとそれぞれ通電状態で接触する複数個の接点部材49A〜49Dを有するブラシ装置45とにより構成している。これにより、スリップリング41は、走行用電動モータ10L,10RのPCU63,64,65,66とMCU58、制御用電源61とを電気的に接続することができる。
この結果、スリップリング41は、既存の旋回軸受装置3の内輪26を利用して形成することにより、専用のスリップリングを設計する場合に比較して安価に製造することができる。これにより、下部走行体2の走行用のモータを安価に電動化することができる。
次に、図12ないし図14は本発明の第2の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、旋回体側電動モータの出力軸と走行体側電動モータの出力軸とを一体回転する単一出力軸として形成し、この単一出力軸の外周側には単一出力軸に対して太陽歯車を回転自在に設け、前記単一出力軸と前記太陽歯車との間には前記単一出力軸と前記太陽歯車との間を連結し、または開放するクラッチ機構を設ける構成としたことにある。なお、第2の実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
図12において、71は旋回軸受装置3の旋回中心Oの軸線位置に設けられた第2の実施の形態による旋回体側太陽歯車を示している。この旋回体側太陽歯車71は、第1の実施の形態による旋回体側太陽歯車32とほぼ同様に、遊星歯車34の歯幅寸法の約半分の歯幅寸法をもった歯数Z2の外歯歯車として形成されている。しかし、第2の実施の形態による旋回体側太陽歯車71は、雌スプライン孔32Aが廃止され、円形状の軸孔71Aが形成されている点で、第1の実施の形態による旋回体側太陽歯車32と相違している。
72は旋回体側太陽歯車71の下側に位置して該旋回体側太陽歯車71と同軸に配置された第2の実施の形態による走行体側太陽歯車を示している。この走行体側太陽歯車72は、旋回体側太陽歯車71と同様に、遊星歯車34の歯幅寸法の約半分の歯幅寸法をもった歯数Z2の外歯歯車として形成され、その中央位置には円形状の軸孔72Aが形成されている。
73はモータ取付孔13Bに位置して底板13に設けられた第2の実施の形態による旋回体側電動モータを示している。この旋回体側電動モータ73は、第1の実施の形態による旋回体側電動モータ38とほぼ同様に、旋回中心Oの軸線が回転中心となるように旋回体側太陽歯車71の上側に配置され、ケーシング73A、フランジ部73B、出力軸73Cを有している。
出力軸73Cは、図13に示すように、ケーシング73Aから突出した部分が僅かに小径な取付軸部73C1となり、その先端側が旋回体側太陽歯車71の軸孔71Aに挿入されている。取付軸部73C1の先端側には、雄スプライン73C2が形成され、基端側には、軸方向に延びてキー溝73C3が形成され、軸方向の中間位置には、位置決め用の環状溝73C4が形成されている。
74は支持筒体11のモータ取付孔11Cに位置してモータ取付板11Bに設けられた第2の実施の形態による走行体側電動モータを示している。この走行体側電動モータ74は、第1の実施の形態による走行体側電動モータ40とほぼ同様に、旋回中心Oの軸線が回転中心となるように走行体側太陽歯車72の下側に配置されている。走行体側電動モータ74は、前述した旋回体側電動モータ73とほぼ同様に、ケーシング74A、フランジ部74B、出力軸74Cを有し、出力軸74Cには、取付軸部74C1、雄スプライン74C2、キー溝74C3、環状溝74C4が形成されている。
ここで、旋回体側電動モータ73の出力軸73Cの先端側には、軸受75を介して旋回体側太陽歯車71が回転自在に取付けられている。一方、走行体側電動モータ74の出力軸74Cの先端側には、軸受75を介して走行体側太陽歯車72が回転自在に取付けられている。なお、旋回体側太陽歯車71と走行体側太陽歯車72とは、遊星歯車34の歯幅寸法と同等の歯幅寸法をもった1個の太陽歯車として形成してもよい。
76は旋回体側電動モータ73の出力軸73C先端と走行体側電動モータ74の出力軸74C先端とに亘って設けられたスプライン筒で、該スプライン筒76の内周側には雌スプライン76Aが形成されている。スプライン筒76は、その雌スプライン76Aの一方に、旋回体側電動モータ73の出力軸73Cに形成された雄スプライン73C2を挿嵌し、他方に、走行体側電動モータ74の出力軸74Cに形成された雄スプライン74C2を挿嵌することにより、旋回体側電動モータ73の出力軸73Cと走行体側電動モータ74の出力軸74Cとを一体回転する単一出力軸77として形成することができる。
78は単一出力軸77と旋回体側太陽歯車71との間に配置され、単一出力軸77と旋回体側太陽歯車71との間を連結し、または開放する旋回体側クラッチ機構である。この旋回体側クラッチ機構78は、例えば給電することで磁力を発生する電磁クラッチとして形成されている。旋回体側クラッチ機構78は、例えば出力軸73Cの基端側に外嵌状態で配置された環状のコイルユニット78Aと、該コイルユニット78A内に収容された電磁コイル78Bと、旋回体側太陽歯車71と対面する下面側に位置して設けられた摩擦パッド78Cとにより構成されている。
コイルユニット78Aの内周面には、出力軸73Cのキー溝73C3に対応するキー溝78Dが形成され、該キー溝78Dとキー溝73C3との間にキー78Eを装着することにより、出力軸73C(単一出力軸77)と一緒にコイルユニット78Aを回転させることができる。コイルユニット78Aは、出力軸73Cの環状溝73C4に嵌合して設けられた位置決めリング78Fによって旋回体側太陽歯車71側への移動が規制されている。
旋回体側クラッチ機構78は、電磁コイル78Bに給電して磁力を発生されることにより、摩擦パッド78Cを介して旋回体側太陽歯車71を磁着することができる。これにより、出力軸73Cと一緒に旋回体側太陽歯車71を回転駆動することができる。
79は単一出力軸77と走行体側太陽歯車72との間に配置され、単一出力軸77と走行体側太陽歯車72との間を連結し、または開放する走行体側クラッチ機構である。この走行体側クラッチ機構79は、前述した旋回体側クラッチ機構78とほぼ同様に、例えば給電することで磁力を発生する電磁クラッチとして形成され、コイルユニット79A、電磁コイル79B、摩擦パッド79C、キー溝79D、キー79E、位置決めリング79Fを有している。走行体側クラッチ機構79は、電磁コイル79Bに給電して磁力を発生されることにより、摩擦パッド79Cを介して走行体側太陽歯車72を磁着し、出力軸74Cと一緒に走行体側太陽歯車72を回転駆動することができる。
ここで、第2の実施の形態による油圧ショベル1の旋回動作と走行動作における旋回体側電動モータ73、走行体側電動モータ74、旋回体側クラッチ機構78、走行体側クラッチ機構79の動作状態について、図14を参照しつつ説明する。
まず、下部走行体2上で上部旋回体4を旋回動作させる場合について述べる。上部旋回体4を停止状態から旋回を起動(開始)させるとき、または旋回動作の途中で旋回速度を加速させるときには、旋回体側電動モータ73、走行体側電動モータ74の両方に給電し、単一出力軸77を回転駆動する。このときには、旋回体側クラッチ機構78、走行体側クラッチ機構79に給電して単一出力軸77と旋回体側太陽歯車71、走行体側太陽歯車72を連結する。これにより、旋回体側電動モータ73を走行体側電動モータ74によって補助することができるから、高い駆動トルクを得ることができ、上部旋回体4を円滑に旋回動作させることができる。
次に、上部旋回体4を定常の速度(等速)で旋回動作させるときには、旋回体側電動モータ73への給電を継続しつつ、補助の走行体側電動モータ74への給電を停止させる。このときには、旋回体側クラッチ機構78に給電して単一出力軸77と旋回体側太陽歯車71とを連結状態とする。一方、走行体側クラッチ機構79への給電を停止して単一出力軸77と走行体側太陽歯車72とを開放状態とする。これにより、1つの旋回体側電動モータ73によって上部旋回体4を定常旋回させることができる。
一方、上部旋回体4の旋回動作を停止させるとき、または旋回動作の途中で旋回速度を減速させるときには、旋回体側電動モータ73と走行体側電動モータ74への給電を停止し、該各電動モータ73,74が惰性で回転するときの回転力(負荷)を利用して電力を回生し、蓄電装置21,25に蓄える。
次に、下部走行体2を走行動作させる場合について述べる。この走行動作時は、旋回動作を行っていないときとなる。この走行動作時には、旋回体側クラッチ機構78、走行体側クラッチ機構79への給電を停止して単一出力軸77と各太陽歯車71,72とを開放状態とする。この状態で、旋回体側電動モータ73に給電することにより、単一出力軸77を回転駆動する。これにより、走行体側電動モータ74を発電装置として回転駆動することができ、回生した電力を各走行用電動モータ10L,10Rの電源として供給することができる。或いは、回生した電力を蓄電装置25に蓄えることができる。
走行動作を停止させたときには、旋回体側電動モータ73、走行体側電動モータ74、旋回体側クラッチ機構78、走行体側クラッチ機構79への給電を停止している。
かくして、このように構成された第2の実施の形態においても、前述した第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、第2の実施の形態によれば、旋回体側電動モータ73の出力軸73Cと走行体側電動モータ74の出力軸74Cとをスプライン筒76で連結し、一体回転する単一出力軸77として形成している。この上で、旋回体側太陽歯車71と単一出力軸77との間を連結し、または開放する旋回体側クラッチ機構78を設けると共に、走行体側太陽歯車72と単一出力軸77との間を連結し、または開放する走行体側クラッチ機構79を設ける構成としている。
これにより、旋回体側電動モータ73と走行体側電動モータ74とにより単一出力軸77を回転駆動することができるから、各クラッチ機構78,79を連結状態としたときには、高い駆動トルクによって各太陽歯車71,72を回転駆動することができる。この結果、遊星歯車34、旋回軸受装置3を介して上部旋回体4を旋回動作させることができる。
一方、走行時のように、旋回動作を行っていない状態では、各クラッチ機構78,79を開放し、旋回体側電動モータ73を駆動することにより、各太陽歯車71,72を回転させることなく、単一出力軸77だけを回転駆動することができる。これにより、走行体側電動モータ74を発電装置として回転駆動することができ、この回生によって発生した電力を下部走行体2の走行用電動モータ10L,10Rに使用したり、蓄電装置25に蓄えたりすることができる。この結果、旋回動作を行っていないときには、旋回体側電動モータ73と走行体側電動モータ74とによって下部走行体2側に電力を蓄えることができる。
次に、図15ないし図17は本発明の第3の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、旋回体側電動モータの出力軸と走行体側電動モータの出力軸との間には、デファレンシャル機構を設け、該デファレンシャル機構を取囲む位置には太陽歯車を設ける構成とし、前記デファレンシャル機構は、前記2つの電動モータの出力軸を同一方向に回転させたときに前記太陽歯車を回転駆動し、一方の電動モータの出力軸だけを回転させたときに前記太陽歯車を回転することなく他方の電動モータの出力軸を回転駆動する構成としたことにある。なお、第3の実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
図15において、81は旋回軸受装置3の旋回中心Oの軸線位置に設けられた第3の実施の形態による太陽歯車を示している。この太陽歯車81は、遊星歯車34の歯幅寸法とほぼ同等の歯幅寸法をもった歯数Z2の外歯歯車として形成されている。旋回体側太陽歯車81の内周側は、軸方向に貫通する段付円柱状の空間からなるデファレンシャル収容部81Aとなり、該デファレンシャル収容部81Aの一方の開口側には、拡径段部81Bが形成されている。
82はモータ取付孔13Bに位置して底板13に設けられた第3の実施の形態による旋回体側電動モータを示している。この旋回体側電動モータ82は、第1の実施の形態による旋回体側電動モータ38とほぼ同様に、旋回中心Oの軸線が回転中心となるように太陽歯車81の上側に配置され、ケーシング82A、フランジ部82B、出力軸82Cを有している。出力軸82Cは、図16に示すように、ケーシング82Aから突出した先端側が雄スプライン82C1となっている。
83は支持筒体11のモータ取付孔11Cに位置してモータ取付板11Bに設けられた第3の実施の形態による走行体側電動モータを示している。この走行体側電動モータ83は、第1の実施の形態による走行体側電動モータ40とほぼ同様に、旋回中心Oの軸線が回転中心となるように太陽歯車81の下側に配置されている。走行体側電動モータ83は、前述した旋回体側電動モータ82とほぼ同様に、ケーシング83A、フランジ部83B、出力軸83Cを有し、出力軸83Cには雄スプライン83C1が形成されている。
84は旋回体側電動モータ82の出力軸82Cと走行体側電動モータ83の出力軸83Cとの間に設けられたデファレンシャル機構(差動機構)を示している。このデファレンシャル機構84は、太陽歯車81のデファレンシャル収容部81A内に収容され、これにより、太陽歯車81に取囲まれている。
デファレンシャル機構84は、下側がフランジ部85Aとなって開口する有蓋円筒体として形成され、上側の中心軸線位置に軸挿通孔85Bを有するデフケース85と、該デフケース85のフランジ部85Aに対面して取付けられ中心軸線位置に軸挿通孔86Aを有するカバー86と、前記デフケース85内の軸方向の中間位置に設けられ水平方向に十字状に延びる4本の軸部87A(2本のみ図示)からなる十字軸87と、該十字軸87の各軸部87Aに互いに対面するように回転可能に取付けられたかさ歯車からなる4個のピニオンギヤ88と、前記デフケース85内の上側に位置して4個のピニオンギヤ88と同時に噛合した旋回体側サイドギヤ89と、該旋回体側サイドギヤ89と前記各ピニオンギヤ88を挟んで反対側に配置され前記各ピニオンギヤ88と同時に噛合した走行体側サイドギヤ90とにより構成されている。
デファレンシャル機構84は、デフケース85を太陽歯車81のデファレンシャル収容部81Aに挿入しつつ、フランジ部85Aを拡径段部81Bに当接させ、カバー86と一緒に複数本のボルト91によって太陽歯車81内に一体的に取付けられている。この状態で、旋回体側サイドギヤ89に形成された雌スプライン89Aには、旋回体側電動モータ82の出力軸82Cの雄スプライン82C1が挿嵌され、同様に、走行体側サイドギヤ90に形成された雌スプライン90Aには、走行体側電動モータ83の出力軸83Cの雄スプライン83C1が挿嵌されている。
このように構成されたデファレンシャル機構84は、旋回体側電動モータ82の出力軸82Cと走行体側電動モータ83の出力軸83Cとを同一方向に回転させると、各出力軸82C,83Cと一緒に十字軸87、デフケース85等が回転するから、太陽歯車81を回転駆動することができる。一方、旋回体側電動モータ82の出力軸82Cだけを回転した場合には、旋回体側サイドギヤ89が各ピニオンギヤ88を回転するから、該各ピニオンギヤ88に噛合した走行体側サイドギヤ90を旋回体側サイドギヤ89と逆方向に回転させることができる。
ここで、第3の実施の形態による油圧ショベル1の旋回動作と走行動作における旋回体側電動モータ82、走行体側電動モータ83の動作状態について、図17を参照しつつ説明する。
まず、下部走行体2上で上部旋回体4を旋回動作させる場合について述べる。上部旋回体4を停止状態から旋回を起動(開始)させるとき、または旋回動作の途中で旋回速度を加速させるときには、旋回体側電動モータ82、走行体側電動モータ83の両方に給電し、各出力軸82C,83Cを同一方向に回転させる。このときには、旋回体側電動モータ82、走行体側電動モータ83の両方による回転力をデファレンシャル機構84を介して太陽歯車81に伝え、該太陽歯車81を回転駆動する。これにより、旋回体側電動モータ82を走行体側電動モータ83によって補助することができるから、高い駆動トルクを得ることができ、上部旋回体4の旋回動作を円滑に開始させることができる。
次に、上部旋回体4を定常の速度(等速)で旋回動作させるときには、前述した起動時と同様に、旋回体側電動モータ82に給電しつつ、補助の走行体側電動モータ83にも給電することにより、2つの電動モータ82,83によって上部旋回体4を旋回させるようになっている。
一方、上部旋回体4の旋回動作を停止させるとき、または旋回動作の途中で旋回速度を減速させるときには、旋回体側電動モータ82と走行体側電動モータ83への給電を停止し、該各電動モータ82,83が惰性で回転するときの回転力(負荷)を利用して電力を回生し、蓄電装置21,25に蓄える。
次に、下部走行体2を走行動作させる場合について述べる。この走行動作時は、旋回動作を行っていないときとなる。この走行動作時には、旋回体側電動モータ82だけに給電して出力軸82Cを回転駆動させることにより、デファレンシャル機構84によって走行体側電動モータ83の出力軸83Cを逆方向に回転駆動することができる。これにより、走行体側電動モータ83を発電装置として回転駆動することができ、回生した電力を各走行用電動モータ10L,10Rの電源として供給することができる。或いは、回生した電力を蓄電装置25に蓄えることができる。
さらに、走行動作を停止させたときには、旋回体側電動モータ82、走行体側電動モータ83への給電を停止している。
かくして、このように構成された第3の実施の形態においても、前述した第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、第2の実施の形態によれば、旋回体側電動モータ82の出力軸82Cと走行体側電動モータ83の出力軸83Cとの間にデファレンシャル機構84を設ける構成としている。これにより、太陽歯車81を回転駆動する場合には、旋回体側電動モータ82の出力軸82Cと走行体側電動モータ83の出力軸83Cとを同一方向に回転させることにより、各電動モータ83,84の回転力をデファレンシャル機構84を介して太陽歯車81に伝達することができ、遊星歯車34、旋回軸受装置3を介して上部旋回体4を旋回動作させることができる。
一方、旋回動作を行っていない走行動作時等では、旋回体側電動モータ82の出力軸82Cだけを回転させることにより、デファレンシャル機構84が太陽歯車81を回転することなく、走行体側電動モータ83の出力軸83Cを回転駆動するから、この走行体側電動モータ83を発電装置として回転駆動することができ、この回生によって発生した電力を下部走行体2の走行用電動モータ10L,10Rに使用したり、蓄電装置25に蓄えたりすることができる。この結果、旋回動作を行っていないときには、旋回体側電動モータ82と走行体側電動モータ83とによって下部走行体2側に電力を蓄えることができる。
なお、第1の実施の形態では、遊星歯車機構37には、3個の遊星歯車34を設けた場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば遊星歯車34を2個または4個以上設ける構成としてもよい。この構成は、他の実施の形態にも同様に適用することができるものである。
第1の実施の形態では、下部走行体2側に走行体側電動モータ40が回生した電力を蓄えるための蓄電装置25を設け、下部走行体2の走行時には、走行体側電動モータ40からの電力、または蓄電装置25からの電力によって走行用電動モータ10L,10Rを回転駆動する構成としている。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば、下部走行体2側から蓄電装置25を排除し、上部旋回体4側の蓄電装置21をスリップリング41を介して下部走行体2側の直流母線59A,59Bに接続し、蓄電装置21からの給電により走行体側電動モータ40、走行用電動モータ10L,10Rを回転駆動する構成としてもよい。この構成は、他の実施の形態にも同様に適用することができるものである。
第1の実施の形態では、スリップリング41を構成する電極台42上に4本の環状電極43A〜43Dを設けた場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、下部走行体2側に供給する電力の種類等の条件によっては、環状電極を2本、3本、または5本以上設ける構成としてもよい。この構成は、他の実施の形態にも同様に適用することができるものである。
さらに、各実施の形態では、旋回式建設機械として、クローラ式の下部走行体2を備えたハイブリッド式油圧ショベル1を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えばホイール式の下部走行体を備えた油圧ショベルに適用してもよい。この場合、走行用電動モータを1台とし、デファレンシャル機構等を用いて左,右のホイールを駆動する構成としてもよい。油圧ショベル以外にも、旋回軸受装置を備えた油圧クレーン等の他の旋回式建設機械にも広く適用することができる。さらに、ハイブリッド式油圧ショベル1以外にも、電動式油圧ショベルにも適用することができる。