しかし、上記特許文献1の構成では、シートバックフレーム自体が変形する構成であるので、着座乗員の通常着座時には変形しないようにしつつ、車両の後突時には変形するように、シートバックフレームの変形強度の調整が必要となる。また、ネット部材が弾性を有するため、後突時にシートバックフレームを変形させる力がネット部材の伸びに吸収されて、シートバックフレームが安定して変形し難くなる。一方、ネット部材の伸びを抑えるようにすると、着座乗員の通常着座時には、座り心地が悪化する。
また、上記特許文献2では、受圧部がスプリングであり、その前側に厚いウレタンパッドが設けられているので、上記特許文献1と同様に、シートバックフレームを揺動させる力が、ウレタンパッドやスプリングに吸収されてしまう。
そこで、ネット部材を使用したシート装置において、上記特許文献2のように、車両の後突時に着座乗員からの荷重を受ける、剛性が高い受圧部を、例えば着座乗員の腰部に対応する高さ位置でかつネット部材の直ぐ後側に設けて、この受圧部が着座乗員からの荷重を受けることで、可動部材(着座乗員の通常着座時には変位が阻止されている)が変位して、着座乗員の上体(特に腰部)が後方へ移動できるようにすることが考えられる。
しかしながら、ネット部材の直ぐ後側に、剛性が高い受圧部を設けると、着座乗員の通常着座時に、その受圧部が着座乗員に当接して、座り心地が悪化してしまう。
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ネット部材を使用した車両用シート装置において、車両の後突時に、該車両用シート装置の着座乗員の上体の後方移動を許容する構成とする場合に、上記着座乗員の通常着座時の座り心地を犠牲にすることなく、車両の後突時には、上記着座乗員の上体を安定して後方へ移動させ得るようにすることにある。
上記の目的を達成するために、本発明では、上下方向に延びる左右一対のサイドフレーム部を有するシートバックフレームが設けられたシートバックと、該シートバックの上部に固定されたヘッドレストとを備えた車両用シート装置を対象として、上下方向に延びかつ上記左右一対のサイドフレーム部に対し軸支点回りにそれぞれ回動可能に軸支された左右一対の上下延設フレーム部を有する可動部材と、上記左右一対のサイドフレーム部の間に張設され、上記車両用シート装置の着座乗員の荷重を支持しかつクッション機能を有する第1ネット部材と、上記左右一対の上下延設フレーム部の間に張設された状態で、上記第1ネット部材の下側に該第1ネット部材と一体又は別体に設けられ、上記着座乗員の荷重を支持しかつクッション機能を有する第2ネット部材とを備え、上記可動部材は、上記軸支点よりも下側に設けられかつ車両の後突時に上記着座乗員からの荷重を受けて上記上下延設フレーム部における上記軸支点よりも下側部分を該軸支点回りに車両後方へ回動させる受圧部を更に有し、上記受圧部は、上記第1及び第2ネット部材よりも剛性が高いとともに、上記第2ネット部材の張設位置の最下端と略同じ高さ位置又は該張設位置よりも下側の高さ位置に位置し、上記上下延設フレーム部と上記シートバックフレームとの間に、上記着座乗員の通常着座時には、上記上下延設フレーム部における上記軸支点よりも下側部分の該軸支点回りの車両後方への回動を阻止する一方、車両の後突時には、上記受圧部が上記着座乗員からの荷重を受けることで、上記上下延設フレーム部における上記軸支点よりも下側部分の該軸支点回りの車両後方への回動を許容する回動阻止手段が設けられている、という構成とした。
上記の構成により、受圧部は、第2ネット部材の張設位置の最下端と略同じ高さ位置又は該張設位置よりも下側の高さ位置に位置するので、受圧部を、特にネット部材がなくても、乗員の快適性に影響を与えない高さ位置(例えば着座乗員の臀部に対応する位置)に設けることができ、受圧部による座り心地の悪化を抑制することができる。また、受圧部よりも第2ネット部材の張設位置の方が軸支点に近いため、車両の後突時に、第2ネット部材を介して上下延設フレーム部を回動させようとしても、受圧部を介して上下延設フレーム部を回動させる場合よりも大きな荷重が必要になるため、クッション機能を有する第2ネット部材を介して上下延設フレーム部を回動させることは困難であり、この結果、上下延設フレーム部は、受圧部が着座乗員からの荷重を受けることで回動することになる。これにより、第2ネット部材の張力を、後突時の伸びを考慮することなく、通常着座時のみにフォーカスして設定することができ、このことによっても、乗員の座り心地の悪化を抑制することができる。
また、車両の後突時には、上下延設フレーム部が回動するので、着座乗員の上体が安定して後方へ移動するようになる。ここで、左右一対の上下延設フレーム部の間に張設される第2ネット部材は、第1ネット部材の下側に設けられるので、第2ネット部材を、着座乗員の腰部に対応する位置に設けることで、着座乗員の、後突時に最も後方へ移動させたい腰部を、後方へ移動させることができるようになる。
したがって、着座乗員の通常着座時の座り心地を犠牲にすることなく、車両の後突時における着座乗員の上体(特に腰部)の後方移動を安定して行わせることができる。
上記車両用シート装置において、上記上下延設フレーム部は、上記軸支点から上記シートバックの下端近傍まで下方に延び、上記受圧部は、上記上下延設フレーム部の下端近傍に設けられている、ことが好ましい。
このことにより、受圧部を、着座乗員の臀部の高さ位置に設けることができ、着座乗員の臀部とシートバックの背凭れ面との間には或る程度の隙間が生じるので、着座乗員の座り心地の悪化を最小にすることができる。また、その隙間があることで、受圧部を着座乗員に対し比較的近くに配設することができ、この結果、車両の後突時には、着座乗員からの荷重を受圧部に素早く伝達することができるようになる。
以上説明したように、本発明の車両用シート装置によると、左右一対のサイドフレーム部に対し軸支点回りにそれぞれ回動可能に軸支される左右一対の上下延設フレーム部を有する可動部材が、上記軸支点よりも下側に設けられかつ車両の後突時に車両用シート装置の着座乗員からの荷重を受けて上記上下延設フレーム部における上記軸支点よりも下側部分を該軸支点回りに車両後方へ回動させる受圧部を更に有し、この受圧部が、左右一対の上下延設フレーム部に張設されかつ第1ネット部材の下側に設けられる第2ネット部材の張設位置の最下端と略同じ高さ位置又は該張設位置よりも下側の高さ位置に位置し、上記上下延設フレーム部と上記シートバックフレームとの間に、上記着座乗員の通常着座時には、上記上下延設フレーム部における上記軸支点よりも下側部分の該軸支点回りの車両後方への回動を阻止する一方、車両の後突時には、上記受圧部が上記着座乗員からの荷重を受けることで、上記上下延設フレーム部における上記軸支点よりも下側部分の該軸支点回りの車両後方への回動を許容する回動阻止手段が設けられていることにより、シート装置の着座乗員の通常着座時の座り心地を犠牲にすることなく、車両の後突時における着座乗員の上体(特に腰部)の後方移動を安定して行わせることができて、着座乗員の頚部が鞭打ち状態になるのを防止することができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1〜図3は、本発明の実施形態に係る車両用シート装置1を示す。このシート装置1は、シート幅方向(左右方向)が車両の車幅方向と一致しかつシート前側が車両前側を向くように車両に設けられるものである。
シート装置1は、シートクッション2と、下端部が該シートクッション2の後端部に回動(リクライニング)可能に連結されたシートバック4と、該シートバック4の上部に取付固定されたヘッドレスト5とを備えている。本実施形態では、ヘッドレスト5は、シートバック4から取り外すことはできないが、シートバック4に対して着脱自在に取付固定されるものであってもよい。要するに、車両の後突時にシート装置1の着座乗員に作用する荷重によりヘッドレストを前方に変位させるアクティブヘッドレスト構造ではなく、車両の後突時にヘッドレストが可動しない固定式のヘッドレスト構造であればよい。
シートクッション2のシート右側(図1では、左側)には、シート装置1の着座乗員が手動で操作する、シートクッション2を上下揺動させるためのチルトレバー6と、同じく着座乗員が手動で操作する、シートバック4をリクライニングさせるためのリクライニングレバー7(図2及び図3参照)とが設けられている。
上記シートクッション2の下側には、シートクッション2を車体フロアに対してシート前後方向(車両前後方向)に摺動自在に支持するスライド機構8が設けられている。このスライド機構8は、車両前後方向に延びかつ車体フロアに固定される左右一対のガイドレール10と、これら両ガイドレール10に対してそれぞれ摺動可能に係合する左右一対のスライダ12とで構成されている。
シートクッション2は、上記一対のスライダ12にそれぞれ固定された左右一対の板状のサイドフレーム14と、これら一対のサイドフレーム14の間に配設され、該サイドフレーム14に支持された、平面視で後方に開口した略U字状のパイプフレーム16と、一対のサイドフレーム14の前部をシート幅方向に連結するフロントスタビパイプ18と、一対のサイドフレーム14の後部をシート幅方向に連結するリアスタビパイプ20とを有している。各サイドフレーム14の後端部には、ナックル部材15がそれぞれ固定されている。
略U字状のパイプフレーム16の左右両側部16aの間には、上記着座乗員の荷重を支持しかつクッション機能を有する、シートクッション2用のネット部材40が張設されている。このネット部材40は、伸張性布地からなっていて、シートクッション2用の表皮材41(図1参照)で覆われている。表皮材41とネット部材40との間には、薄いウレタンが配設されていてもよい。
上記ネット部材40の左右両端部には、各々、複数のスリット40aがシート前後方向に並んで形成されている。一方、パイプフレーム16の左右両側部16aには、各々、複数のフック部材28が、上記スリット40aに対応するように設けられている。そして、各スリット40aにフック部材28を挿通することにより、ネット部材40の左右両端部がフック部材28に係止され、こうしてパイプフレーム16の左右両側部16aの間に、ネット部材40がシート幅方向に張設されることになる。
シートバック4は、シートバック4自体を支持するためのシートバックフレーム24を有している。このシートバックフレーム24は、上下方向に延びる左右一対のサイドフレーム部24aと、これら一対のサイドフレーム部24aの上端部同士を連結する、シート幅方向に延びるアッパフレーム部24bと、一対のサイドフレーム部24aの下端部同士を連結する、シート幅方向に延びるロアフレーム部24cとを有する。
アッパフレーム部24bは、略逆U字状に形成されたパイプ材25で構成され、ロアフレーム部24cは、略U字状に形成された板状部材26で構成されている。各サイドフレーム部24aの上部は、上記パイプ材25で構成され、下部は、上記板状部材26で構成され、上下方向中央部は、上記パイプ材25と上記板状部材26とで構成されていて、パイプ材25と板状部材26とがシート幅方向に重なった状態で溶接により互いに結合されてなる。アッパフレーム部24bには、ヘッドレストフレーム31が固定されている。こうしてヘッドレスト5は、シートバック4のシートバックフレーム24に固定されることになる。
各サイドフレーム部24aの下端部は、シートバック4のリクライニング用の回動支軸27によって支持されている。この回動支軸27は、左右一対のサイドフレーム14にそれぞれ固定された左右一対のナックル部材15の間に設けられて、該回動支軸27の両端部が左右一対のナックル部材15にそれぞれ支持されている。これにより、シートバック4が、その下端部に位置する回動支軸27の回りにシート前後方向に回動(揺動)することが可能になっている。
図2に示すように、シートバック4には、車両の後突時に可動(回動)する可動部材51が設けられている。この可動部材51は、上下方向に延びる左右一対の上下延設フレーム部52(図3では、右側の上下延設フレーム部しか見えていない)と、これら一対の上下延設フレーム部52の下端部同士を連結する、シート幅方向に延びる棒状の連結部材53とで構成されている。この連結部材53は、後述の如く本発明の受圧部を構成する。本実施形態では、上下延設フレーム部52及び連結部材53は、金属製である。
各上下延設フレーム部52は、各サイドフレーム部24aの下部(サイドフレーム部24aを構成するパイプ材25及び板状部材26のうち板状部材26のみで構成された部分)におけるシート内側の面にそれぞれ設けられている。図4に示すように、各上下延設フレーム部52の上端部が、軸支点となる段付きボルト55によって、板状部材26に回動自在に支持されている。これにより、連結部材53がシート前側から荷重を受けたときに、一対の上下延設フレーム部52における上記軸支点よりも下側部分が該軸支点回りに車両後方(シート後方)へ回動することになる。但し、本実施形態では、後述の如く、連結部材53が車両の後突時のように所定値以上の荷重を受けたときでないと、上下延設フレーム部52が回動しないようになされている。
図3に示すように、上記左右一対のサイドフレーム部24aにおけるパイプ材25の間には、上記着座乗員の荷重(腰部よりも上側部分の背凭れ荷重)を支持しかつクッション機能を有する、シートバック3用の第1ネット部材43,44が張設されている。左右両パイプ材25には、各々、上記フック部材28と同様の複数のフック部材29が上下方向に並んで設けられ、第1ネット部材43の左右両端部には、該フック部材29が挿通される、ネット部材40のスリット40aと同様の複数のスリット43aが上下方向に並んで形成されている。
上記第1ネット部材43の下側には、上記着座乗員の荷重(腰部の背凭れ荷重)を支持しかつクッション機能を有する、シートバック3用の第2ネット部材44が、第1ネット部材43と一体に設けられている。第2ネット部材44は、第1ネット部材43と同じ伸張性布地からなり、第1ネット部材43と一体形成されたものである。第2ネット部材44は、左右一対の上下延設フレーム部52の間に張設されている。すなわち、上下延設フレーム部52には、複数のフック部52aが上下方向に並んで設けられ、第2ネット部材44の左右両端部には、該フック部52aが挿通される複数のスリット44aが上下方向に並んで形成されている。尚、第2ネット部材44を、第1ネット部材43とは別体に設けることも可能であり、その際、第2ネット部材44の材料を第1ネット部材43とは異ならせてもよい。
第2ネット部材44は、上記着座乗員の腰部に対応する高さ位置に設けられている。また、上下延設フレーム部52の上記軸支点(段付きボルト55)は、該腰部よりも高い位置(本実施形態では、腰部の上側近傍位置)に設けられ、上下延設フレーム部52は、上記軸支点からシートバック4の下端近傍まで下方に延びている。連結部材53は、上記軸支点よりも下側の位置であって、本実施形態では、上下延設フレーム部52の下端近傍、つまり上記着座乗員の臀部に対応する位置に設けられている。これにより、連結部材53は、第2ネット部材44の張設位置の最下端と略同じ高さ位置又は該張設位置よりも下側の高さ位置に位置することになる。
第1及び第2ネット部材43,44は、シートバック3用の表皮材45(図1参照)で覆われている。表皮材45と第1及び第2ネット部材43,44との間には、薄いウレタンが配設されていてもよい。
車両の後突時には、シート装置1の着座乗員の上体がシートバック4に対して相対的に後方に移動し、これにより、上記着座乗員の臀部が連結部材53を後方へ押圧する。このため、連結部材53は、車両の後突時に上記着座乗員からの荷重を受ける受圧部となる。ここで、連結部材53は、金属製であるため、第1及び第2ネット部材43,44よりも剛性が高くされている。このように連結部材53の剛性が高くても、連結部材は着座乗員の臀部に対応する位置(特にネット部材がなくても乗員の快適性に影響を与えない高さ位置)にあるので、座り心地を悪化させることはない。
図4に示すように、上下延設フレーム部52の下端部とシートバックフレーム24の板状部材26との間には、引張コイルバネ58が架け渡されている。この引張コイルバネ58は、上記着座乗員の通常着座時には、上下延設フレーム部52における上記軸支点よりも下側部分の該軸支点回りの車両後方への回動を阻止することが可能な硬いバネである。これにより、上記着座乗員がシートバック4に凭れても、第2ネット部材44が伸びるだけで、この第2ネット部材44を介して上下延設フレーム部52が回動することはない。一方、車両の後突時には、上記連結部材53が上記着座乗員からの所定値以上の荷重を受けることで、上下延設フレーム部52における上記軸支点よりも下側部分が該軸支点回りに車両後方に回動しようとし、このとき、引張コイルバネ58は伸びることが可能であり、引張コイルバネ58が伸びながら上下延設フレーム部52が上記軸支点回りに回動する。したがって、引張コイルバネ58は、上記着座乗員の通常着座時には、上下延設フレーム部52における上記軸支点よりも下側部分の該軸支点回りの車両後方への回動を阻止する一方、車両の後突時には、連結部材53(受圧部)が上記着座乗員からの荷重を受けることで、上下延設フレーム部52における上記軸支点よりも下側部分の該軸支点回りの車両後方への回動を許容する回動阻止手段を構成する。尚、上記車両後突時において、引張コイルバネ58は弾性変形するように構成されていてもよく、例えばバネの巻き数を少なくすることで、塑性変形するように構成されていてもよい。
図5は、シート装置1の着座乗員の通常着座時における体の後側外形ラインL1及び上下延設フレーム部52を示し、図6は、車両の後突初期における上記着座乗員の体の後側外形ラインL1及び上下延設フレーム部52を示し、図8は、車両の後突後期における上記着座乗員の体の後側外形ラインL1及び上下延設フレーム部5を示す。一点鎖線で示すラインL2は、第1及び第2ネット部材43,44のシート幅方向端部の位置のラインであるが、第1及び第2ネット部材43,44のシート幅方向中間部の位置は、上記着座乗員からの背凭れ荷重を受けて第1及び第2ネット部材43,44がシート後側に伸びることにより、ラインL2よりもシート後側に位置し、その最も後側のラインは、上記着座乗員の体の後側外形ラインL1と一致することになる。
上記引張コイルバネ58によって、上記着座乗員の通常着座時には、第2ネット部材44が伸びるだけであり、第2ネット部材44を介して上下延設フレーム部52が上記軸支点回りに回動することはない。また、連結部材53は、上記着座乗員の臀部に対応する高さ位置に設けられており、この高さ位置では、着座乗員は第2ネット部材44と接触しておらず、連結部材53と着座乗員との間には隙間が生じている(図5参照)。これにより、剛性が高い連結部材53が着座乗員の体に当たって座り心地が悪化するようなことはない。
車両の後突時には、上記着座乗員にシートバック4側への衝撃荷重(例えば、通常着座時における背凭れ荷重の10倍以上の荷重)が作用し、上記着座乗員がシートバック4に対して相対的に後方に変位する。これにより、第1及び第2ネット部材43,44が通常着座時よりも大きくシート後側に伸びるとともに、上記着座乗員の臀部が連結部材53に当接する(図6参照)。そして、上記着座乗員の臀部が更にシート後側に変位すると、連結部材53が着座乗員からの荷重を受け、この連結部材53を介して上下延設フレーム部52における上記軸支点よりも下側部分が該軸支点回りに車両後方へ回動しようとする。このとき、上記引張コイルバネ58が伸びて、上下延設フレーム部52が上記軸支点回りに回動する(図7参照)。ここで、連結部材53よりも第2ネット部材44の張設位置の方が上記軸支点に近いため、車両の後突時に、第2ネット部材44を介して上下延設フレーム部52を回動させようとしても、連結部材53を介して上下延設フレーム部52を回動させる場合よりも大きな荷重が必要になるため、クッション機能を有する第2ネット部材44を介して上下延設フレーム部52を回動させることは困難であり、この結果、上下延設フレーム部52は、連結部材53が着座乗員からの荷重を受けることで回動することになる。これにより、第2ネット部材44の張力を、車両後突時の伸びを考慮することなく、通常着座時のみにフォーカスして設定することができ、このことによっても、乗員の座り心地の悪化を抑制することができる。また、上下延設フレーム部52の回動により、上記着座乗員の、後突時に最も後方へ移動させたい腰部を、安定して後方へ移動させることができるようになる。
したがって、本実施形態では、シート装置1の着座乗員の通常着座時の座り心地を犠牲にすることなく、車両の後突時における着座乗員の上体(特に腰部)の後方移動を安定して行わせることができて、着座乗員の頚部が鞭打ち状態になるのを防止することができる。
本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、請求の範囲の主旨を逸脱しない範囲で代用が可能である。
例えば、上記実施形態では、本発明の回動阻止手段を引張コイルバネ58で構成したが、これに限られるものではなく、例えば図8に示すような板バネ部材59で構成することも可能である。この板バネ部材59はシート前後方向に延び、上下延設フレーム部52に対して板状部材26側を通って交差している。板バネ部材59の後端部は、リベット60によるかしめにより板状部材26に固定されている。この板バネ部材59において板状部材26に固定された後端部の前側でかつ上下延設フレーム部52のシート後側に、上側から見て略三角形状に折り曲げられてシート内側に突出する突出部59aが形成されている。そして、板バネ部材59は、シート装置1の着座乗員の通常着座時には、上記突出部59aによって、上下延設フレーム部52における軸支点(段付きボルト55)よりも下側部分の該軸支点回りの車両後方への回動を阻止する。一方、車両の後突時には、連結部材53が上記着座乗員からの所定値以上の荷重を受けることで、上記突出部59aを変形させながら乗り越えることが可能であり、上下延設フレーム部52が突出部59aを乗り越えながら上記軸支点回りに回動する。
或いは、上記引張コイルバネ58に代えて、ワイヤ部材を上下延設フレーム部52と板状部材26との間に架け渡しておき、車両の後突時に、そのワイヤ部材における上下延設フレーム部52に引っ掛けるU字状の端部(引張コイルバネ58における上下延設フレーム部52に引っ掛ける端部と同様の形状)、及び、ワイヤ部材における板状部材26に引っ掛けるU字状の端部(引張コイルバネ58における板状部材26に引っ掛ける端部と同様の形状)の少なくとも一方が変形して外れるようにしてもよい。
上述の実施形態は単なる例示に過ぎず、本発明の範囲を限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は請求の範囲によって定義され、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。