以下、図面を用いて、本実施形態に係るシリンダー錠10について詳細に説明する。まず、図1から図9を参照して、第1実施形態について説明する。
[第1実施形態]
<全体構成>
最初に、図1および図2を用いて、第1実施形態のシリンダー錠10の全体構成について説明する。なお、図1は、シリンダー錠10を前方上側から見た外観斜視図であり、図1(a)が全体図であり、図1(b)が要部を抽出した拡大図である。図2は、シリンダー錠10の一部を分解して示す分解斜視図である。なお、以降の説明で用いる図面においては、説明の都合上、構成部材の図示を一部省略することがある。
本実施形態に係るシリンダー錠10は、コンストラクション機能の作動状態から、コンストラクション機能の解除状態に切り替え可能なコンストラクション機能を備えたシリンダー錠10である。コンストラクション機能とは、コンストラクションキーの有効と無効とを切り替え可能な機能であり、当該機能の作動中はコンストラクションキーが有効となり、当該機能が解除後はコンストラクションキーが無効になる。
また本実施形態に係るシリンダー錠10は、2つのシリンダー錠(第1シリンダー錠10A、第2シリンダー錠10B)をその長軸方向(図1におけるX方向)に直列に配列したものである。具体的には、第1シリンダー錠10Aは、長軸方向の第1の端部T1の鍵穴20が例えば室外側に露出し、第2シリンダー錠10Bは長軸方向の第1の端部T1の鍵穴22部分が例えば室内側に露出するように、互いの第2の端部T2(内奥端部)を対向させて配置される。
図1および図2に示すように、第1シリンダー錠10Aは、外筒102と、外筒102に対して相対回転可能な内筒104と、複数配列されるピンタンブラ106およびドライバピン108と、第2の端部T2側に配置される複数(例えば2枚)のディスクタンブラ110を有する。つまり、第1シリンダー錠10Aは、ピンタンブラ方式とディスクタンブラ方式を組み合わせたものである。ピンタンブラ方式とディスクタンブラ方式のそれぞれの原理は既知のものと同様であるので詳細は省略するが、以下簡単に説明する。
内筒104と外筒102はこれらの径方向に連続する孔132(図2参照)が複数形成されている。そして、各孔132には、径方向の内側から外側の順に、ピンタンブラ106、ドライバピン108、圧縮されているコイルスプリング(不図示)が嵌め込まれている。ピンタンブラ106とドライバピン108は、コイルスプリングの復元力によって、径方向の内側に常時押されている。また、ピンタンブラ106とドライバピン108は、鍵穴20に鍵が挿入された場合、その鍵によって、径方向の外側に押し返される。
鍵穴20に鍵が挿入されていない場合、径方向の内側に押されているドライバピン108が、内筒104から外筒102にわたって位置し、内筒104が回動することの障害になる。なお、この場合、ピンタンブラ106は、内筒104内に収まっている。
そして、鍵穴20に適合する正しい鍵が挿入されることで、その鍵によって、内筒104が回動することの障害となっていたドライバピン108が、ピンタンブラ106と共に径方向の外側に押し返される。これにより、ドライバピン108は、外筒102内に収まる。また、ピンタンブラ106は、内筒104内に収まったままになる。すなわち、ドライバピン108とピンタンブラ106の境界(シャーライン)が、外筒102と内筒104の境界と一致する。これにより、内筒104は外筒102に対して回転可能となる。内筒104を回転させることで、扉(図示省略)を解錠し又は施錠することができる。
一方、鍵穴20に不正な鍵が挿入されることで、その鍵によって、ピンタンブラ106とドライバピン108が、間違った量だけ径方向の外側に押し返される。押し返す量が少ない箇所については、ドライバピン108が内筒104から外筒102にわたって位置したままで、内筒104が回動することの障害になる。また、押し返す量が多い箇所については、ピンタンブラ106が内筒104から外筒102にわたって位置することになり、内筒104が回動することの障害になる。これにより内筒104は回転せず、シリンダー錠10が設けられた扉(図示省略)等を解錠し又は施錠することができない。
ディスクタンブラ110は、不図示の付勢手段(ばね)で内筒104および外筒102の半径方向外側に向かって付勢されており、鍵穴20に鍵が挿入されていない場合または不正な鍵が挿入された場合は、その端部が外筒102の内面に形成された不図示の溝(ロック溝)と係合している。このため、内筒104は外筒102に対して回転しない。一方、鍵穴20に正しい鍵を挿入した場合は、鍵の形状によってディスクタンブラ110が適正な量だけスライドし、ディスクタンブラ110とロック溝との係合がはずれるため、内筒104は外筒102に対して回転可能となる。
本実施形態の第1シリンダー錠10Aは、ピンタンブラ106が例えば上下方向(図1におけるY方向)に移動するのに対し、ディスクタンブラ110は、それに直交する左右方向(図1におけるZ方向)に移動する。また、2つのディスクタンブラ110の付勢手段による付勢方向は互いに逆向きとなっており、一方のディスクタンブラ110が右方向に付勢され、他方のディスクタンブラ110が左方向に付勢されている。
このようにタンブラの移動方向が異なるピンタンブラ方式とディスクタンブラ方式を併用した構造とすることにより、ピッキングを困難にすることができる。またキーの溝も、キーの表面(ピンタンブラ用)と側面(ディスクタンブラ用)に形成する必要があるため、単一の装置では形成できず、キーの複製を困難にすることができる。
第2シリンダー錠10Bは、外筒122と、外筒122に対して相対回転可能な内筒124と、複数配列されるピンタンブラ126と、ドライバピン128と、第2の端部T2側に配置される複数(例えば2枚)のディスクタンブラ130を有しており、これらの構成および動作は、第1シリンダー錠10Aと同様であるので説明は省略する。
更に、本実施形態の第1シリンダー錠10Aは、その第2の端部T2に、内筒104と係合する第1連結部材24が設けられる。第1連結部材24は、その内側に、第1シリンダー錠10Aの長軸方向に沿って摺動可能となるようにダミーキー32(図1(b)、図2参照)を保持する。
また第2シリンダー錠10Bは、その第2の端部T2に、内筒124と係合する第2連結部材28が設けられる。第2連結部材28は、第1シリンダー錠10Aの第1連結部材24と常時当接している。
そして、第1連結部材24および第2連結部材28の当接面に跨る位置にカム30(図2参照)が設けられている。後述するが、第1連結部材24および第2連結部材28は、シリンダー錠10の長軸方向(X方向)に沿って摺動が可能であり、カム30は、第1連結部材24および第2連結部材28が摺動することによって、これらの一方と少なくとも係合可能である。
図3を参照して、シリンダー錠10の主要な構成について説明する。図3は、シリンダー錠10の主要な構成部品を抽出して示す外観斜視図であり、図3(a)がディスクタンブラ110、130、図3(b)が内筒104、124、図3(c)が第1連結部材24、図3(d)がダミーキー32、図3(e)が第2連結部材28、図3(f)がカム30の外観斜視図である。
図3(a)に示すように、ディスクタンブラ110、130は略矩形状の板状体であり、外周部に内筒のロック溝と係合可能な係合部110a、130aが設けられている。また係合部110a、130aはスプリングコイル(不図示)によって一方向に付勢されており、それによりロック溝と係合する。ディスクタンブラ110、130のほぼ中央部には鍵の挿通孔110b、130bが設けられており、その一部には突起部110c、130cが設けられている。突起部110c、130cと鍵の形状が合致した場合は、ディスクタンブラ110、130が所定量スライドし、係合部110a、130aとロック溝の係合が解除される。なお、ここでは1つの形状を用いて説明しているが、複数のディスクタンブラ110、130において係合部110a、130aおよび突起部110c、130cの形状はそれぞれ異なっている。また本実施形態ではそれぞれ2枚のディスクタンブラ110、130を採用しているが、3枚以上配置されるものであってもよい。
図3(b)に示すように、内筒104、124は同様の構成であり、その内部に長軸方向に延在する鍵穴20、22が設けられ、外周面にはピンタンブラ106、126やドライバピン108、128が挿通される複数の孔132が、図示の状態において略上下方向に延在するように設けられる。また外周面にはディスクタンブラ110、130が図示の状態において略左右方向にスライド移動可能となるロック溝134が設けられている。
そして鍵が挿入される第1の端部T1とは逆側の第2の端部T2(内奥端部側)に、係合穴104a、124aが設けられている。第1シリンダー錠10Aの内筒104の係合穴104aは第1連結部材24と係合し、第2シリンダー錠10Bの内筒124の係合穴124aは第2連結部材28と係合する。また、内筒104、124の第2の端部T2側は、鍔状部104c、124cとなっている。鍔状部104c、124cは、カム30の一部に内包される。
図3(c)に示すように、第1連結部材24は短円柱形状の本体24aと、本体24aの外周面から半径方向の外側に向かって突出する2つの係合凸部24bを有する。また本体24aのほぼ中央部にはダミーキー保持部34が形成されている。ダミーキー保持部34は、後述するダミーキー32の外形に沿った形状となっており、ここにダミーキー32を摺動可能に保持する。第1連結部材24は、2つの係合凸部24bが内筒104の係合穴104aの係合凹部104bと噛み合って、内筒104と係合する。そして第1連結部材24は、内筒104に対してその長軸方向に沿う移動(摺動)が可能となっており、且つ、内筒104がその回転軸を中心に回転する場合はこれと一体的に回転する。
図3(d)に示すように、ダミーキー32は、第1シリンダー錠10Aのディスクタンブラ110を解錠位置に保持可能なキーの形状を表面に備えた略矩形状の板状片であり、その長手方向が第1シリンダー錠10Aの長軸方向に沿うように第1連結部材24のダミーキー保持部34に挿通され、保持される。ダミーキー32は長手方向に円形状の第1固定孔321と第2固定孔322を有している。第1固定孔321は第2固定孔322よりその直径が小さく、ダミーキー32の厚み方向の深さも浅くなっている。第1固定孔321と第2固定孔322には、固定ピン(ここでは不図示)が係合する。固定ピンは、その先端を曲面球状にした円柱形状であり、第1連結部材24の内部を図示の状態では上下方向に貫通して設けられ、一端が第1連結部材24に固定されるとともに付勢手段(スプリングコイルなど)によって第1連結部材24の中心方向に向かって付勢され、他端(先端)は曲面状となっている。また、第1固定孔321は固定ピンの先端部分(曲面状部分)と合致する大きさであり、第2固定孔322は固定ピンの本体部分(円柱部分)と合致する大きさである。つまり、ダミーキー32を、第1連結部材24のダミーキー保持部34に挿通した場合、第1固定孔321に固定ピンの先端(曲面状部分)が係合することで、ダミーキー32を第1の位置で保持固定することができる。また、第1連結部材24に対してダミーキー32を摺動させて第2固定孔322に固定ピンの円柱部分が係合することで、ダミーキー32を第2の位置で保持固定することができる。このように、第1連結部材24のダミーキー保持部34に挿通されたダミーキー32は、固定ピンが第1固定孔321、第2固定孔322のいずれとも係合していない場合は、第1連結部材24に対して摺動可能であるが、第1固定孔321に固定ピンが係合した場合は、第1連結部材24に対して第1の位置で固定されて第1連結部材24とともに内筒104に対して摺動可能となり、第2固定孔322に固定ピンが係合した場合は、第1連結部材24に対して第2の位置で固定されて第1連結部材24とともに内筒104に対して摺動可能となる。
図3(e)に示すように、第2連結部材28は短円筒形状の本体28aと、本体28aの外周面から半径方向の外側に向かって突出する2つの係合凸部28bを有する。第2連結部材28は、同図の左方(空洞部分)が第1連結部材24と対向して配置され、2つの係合凸部28bが内筒124の係合穴124aの係合凹部124bと噛み合って、内筒124と係合する。そして第2連結部材28は、内筒124に対してその長軸方向に沿う移動(摺動)が可能となっており、且つ、内筒124がその回転軸を中心に回転する場合はこれと一体的に回転する。
図3(f)に示すように、カム30は、略環状の連結部材係合部30aと、その外周部分の一部を半径方向の外側に突出させた閂(不図示)の駆動部30bとからなり、シリンダー錠10の内筒の回転を閂に伝達して閂を移動させ、それによりシリンダー錠10が設けられた扉体等の施解錠を行う。すなわち、連結部材係合部30aの第1内周面30cは、第1連結部材24および第2連結部材28の外周面に沿う形状を有しており、両者と係合可能となっている。そして第1連結部材24と第2連結部材28は当接した状態で、カム30に対して、シリンダー錠10の長軸方向に摺動可能となっている。つまりカム30は、第1連結部材24と第2連結部材28の摺動によって、第1連結部材24のみと係合可能となり、第2連結部材28とも係合可能となる。そして、カム30が第1連結部材24と係合した場合は、第1シリンダー錠10Aの内筒104の回転に応じて回転し、カム30が第2連結部材28と係合した場合は、第2シリンダー錠10Bの内筒124の回転に応じて回転する。また、連結部材係合部30aの第2内周面30dは、内筒104、124のそれぞれの鍔状部104c、124cを内包する。
図4を参照して本実施形態の主要部分の構成について説明する。図4は、カム30と、内筒104、124と、第1連結部材24、第2連結部材28との係合関係を示す図であり、図1に示すシリンダー錠10のX方向およびY方向の中心を通るXY面の断面図である。
第1シリンダー錠10Aと第2シリンダー錠10Bは互いの第2の端部T2(内奥部)同志を対向させて直列に配置され、それぞれの内筒104、124の鍔状部104c、124cは、カム30の両面の第2内周面30dに内包されるが、互いに固定はされていない。つまりシリンダー錠10の長軸方向(X方向)においてはそれぞれの内筒104、124とカム30の位置は固定されている(移動しない)が、X方向に平行なシリンダー錠10の回転軸を中心とした回転は、それぞれに自在となっている。
また、内筒104は第1連結部材24と係合し、内筒124は第2連結部材28と係合して、第1連結部材24と第2連結部材28は対向面が当接している(同図では、説明の便宜上、第1連結部材24と第2連結部材28の外周を破線で示した)。ここで、第1シリンダー錠10Aの内筒104と、第2シリンダー錠10Bの内筒124は、これらの間で、第1連結部材24と第2連結部材28とが一体的に長軸方向に所定の距離の摺動が可能となるように離間して固定されている。つまり、内筒104、124は長軸方向において移動はしないが、第1連結部材24は内筒104との係合を維持し、第2連結部材28は内筒124との係合を維持した状態で、第1連結部材24と第2連結部材28は、係合穴104a、124aにより形成された、太実線で示す空間S内を、一体的に移動可能となっており、これにより、第1連結部材24と第2連結部材28の当接面(境界面B)は、内筒104、124に対して長軸方向の移動が可能となっている。なお、第1連結部材24と第2連結部材28は、付勢手段38(例えば、スプリングコイルなど)によって長軸方向の一方側に付勢されており、この付勢力によって、またこの付勢力に抗する力によって移動が可能となる(これについては後に詳述する)。
また、カム30は、第1シリンダー錠10Aと第2シリンダー錠10Bのそれぞれの第2の端部T2に配置される。そして、第2内周面30dに、内筒104、124のそれぞれの鍔状部104c、124cを内包することで内筒104、124に対して長軸方向の移動が無いように固定されている。つまり、第1連結部材24と第2連結部材28は、それぞれ内筒104、124との係合を維持した状態で、カム30の連結部材係合部30aに対して、長軸方向の移動が可能となっている。
これにより、第1連結部材24と第2連結部材28(の境界面B)がカム30と内筒104、124に対して移動し、第1連結部材24がカム30と係合した場合には、内筒104の回転が第1連結部材24を介してカム30に伝達可能となり、第2連結部材28がカム30と係合した場合には、内筒124の回転が第2連結部材28を介してカム30に伝達可能となる。
以下、図5から図9を参照して、本実施形態のシリンダー錠10の動作について説明する。
<使用するキー>
図5を参照して、シリンダー錠10で使用するキーについて説明する。図5(a)がコンストラクションキー(以下、コンスキーという)を示す上面図であり、図5(b)が子鍵を示す上面図であり、図5(c)は、第1シリンダー錠10Aにコンスキー40を挿入した状態の断面概要図である。
コンスキー40は、建設物の工事中においてコンストラクション機能(以下、コンス機能という)が作動している場合に、シリンダー錠10を施解錠するキーであり、子鍵は、工事完了後にコンス機能を解除する場合に使用するキーであって、コンス機能を解除後には住戸鍵としてシリンダー錠10を施解錠するキーである。
図5(a)(b)に示すようにコンスキー40は子鍵42の先端から長さL1分が切除された形状であり、子鍵42よりキーの長さが短く、それ以外のキーの溝形状は、子鍵42と同じ形状を有している。この所定長さL1は、同図(c)に示すように、2枚のディスクタンブラ110の配置領域のシリンダー錠10の長軸方向の長さL11と、第1連結部材24および第2連結部材28の、空間部S内の移動可能距離の長さL12の和に等しい。つまり、第1シリンダー錠10Aにコンスキー40を挿入した場合、その先端はP1の位置にあり、子鍵42を挿入した場合には、その先端はP2の位置にある。また、ダミーキー32の第1シリンダー錠10A側の端部から第1固定孔321までの長さは、コンスキー40と子鍵42の長さの差(L1)と等しい。
<コンストラクション機能(コンス機能)の作動状態>
≪施錠状態(待機状態)≫
図6は、コンス機能の作動中で且つ施錠状態の、シリンダー錠10の要部を示す図であり、図6(a)が図4の断面図の一部を拡大した概要図である。また、図6(b)は図6(a)のA−A線断面における断面概要図である。ここでは、図6の左側を室外側とし、図6の右側を室内側としている。
コンス機能の作動中では、ダミーキー32が第1シリンダー錠10Aのディスクタンブラ110を解錠位置に保持した状態で、第1連結部材24に保持される。つまり、この状態にある場合をコンス機能の作動状態、という。
より詳細には、コンス機能作動中のダミーキー32は、第1連結部材24に保持されるとともに固定ピン36によって第1連結部材24と固定される。この場合、ダミーキー32は、第1固定孔321に固定ピン36の曲面部分が浅く嵌合することで、シリンダー錠10の長軸方向(X方向)に沿う第1の位置F1において第1連結部材24と固定されている。
第2シリンダー錠10Bの内筒124と係合する第2連結部材28は、同図(a)に示すように、付勢手段(例えばスプリングコイルなど)38によって、第1連結部材24側に付勢されている。既述の如く、第1連結部材24および第2連結部材28は一体的に、第1シリンダー錠10Aの内筒104の係合穴104a、第2シリンダー錠10Bの内筒124の124aと、カム30の第1内周面30cとで区画される空間S(ここでは太破線で示す)内を、シリンダー錠10の長軸方向に摺動可能である。つまり、この空間Sの長軸方向の長さは、第1連結部材24と第2連結部材28の長軸方向の長さより大きくなっており、その差が第1連結部材24と第2連結部材28の最大移動量となる。そして、第1連結部材24と第2連結部材28の移動量によって、カム30は常に、第1連結部材24と第2連結部材28の一方と少なくとも係合可能となっている。
そして、第1連結部材24と第2連結部材28は摺動可能であるので、コンス機能作動中の施錠状態(つまりコンスキー40の挿入を待機している状態)など、いずれかのキーの挿入を待機している状態では、第1連結部材24と第2連結部材28(これらの境界線B)を、キーの先端と接触が可能となる位置(待機位置)に位置合わせしておく必要がある。このため、常時、第2連結部材28を付勢手段38で、例えば第1連結部材24側に付勢し、境界線Bを第1連結部材24側に移動させている。これにより、コンス機能が作動中の施錠状態では、常に、第2連結部材28がカム30と係合した状態となっている。また、この状態に限らず、子鍵42の挿入を待機している状態においても、に、第2連結部材28がカム30と係合した状態となっている。
≪コンスキーによる施解錠≫
次に図7を参照して、コンス機能の作動中における、コンスキー40による施解錠の動作を説明する。図7(a)は、コンスキー40を鍵穴20に挿入した第1の状態を示す、図6(a)に相当する断面図であり、図7(b)は、コンスキー40を鍵穴に挿入した第2の状態を示す、図6(a)に相当する断面図であり、図7(c)は、図7(b)の状態における、図6(b)に相当する断面図である。
第1シリンダー錠10Aにコンスキー40が挿入された場合には、第1シリンダー錠10Aの内筒104の回転がダミーキー32と第1連結部材24とを介して、カム30に伝達可能となる。
まず、図6(a)に示すように、コンスキー40を鍵穴20に挿入した第1の状態では、コンスキー40の先端が、ダミーキー32の一端と当接する。コンスキー40の溝形状によって、第1シリンダー錠10Aのピンタンブラ106とドライバピン108(ここでは不図示)のシャーラインが、外筒(不図示)と内筒104の境界と一致する。またディスクタンブラ110はダミーキー32によって解錠状態が保持されているため、内筒104は外筒102に対して回転可能となる。
この状態から、図7(b)に示すように、更にコンスキー40を付勢手段38の付勢力に抗して第2シリンダー錠10B側に押し込むと、ダミーキー32が第2シリンダー錠10B側に移動する。ダミーキー32は、第1の位置F1(同図(a)(c)参照)で第1連結部材24に保持固定されているため、ダミーキー32の移動に伴い、第1連結部材24もその分、第2シリンダー錠10B側に移動する。これにより第1連結部材24と第2連結部材28の境界線Bが図7(a)の状態からカム30のX方向の中心線Cに向かって(ここでは、一例として中心線Cを超えて)第2シリンダー錠10B方向に移動し、第1連結部材24がカム30と係合する。
これにより、第1シリンダー錠10Aではその内筒104の回転が、これと係合する第1連結部材24を介してカム30に伝達され、カム30が所定方向に回転する。内筒104の回転方向に応じて、カム30の駆動部30bが所定方向(図7(c)では上方向または下方向)に移動し、これにより不図示の閂を移動させてシリンダー錠10が設けられた扉体等の施解錠が可能となる。
なお第1実施形態では、コンス機能が作動中の場合、第1シリンダー錠10Aのみがコンスキー40を有効に受付ける。つまり、第2シリンダー錠10Bはダミーキーを有しないため、コンスキー40を挿入してもディスクタンブラ130に到達せず、これを解錠状態にできない。このため、コンスキー40では内筒124を回転させることはできず、カム30も回転させることはできない。
<コンストラクション機能(コンス機能)の解除状態>
コンス機能は第1シリンダー錠10Aに子鍵42を挿入することによって解除される。図8は、第1シリンダー錠10Aでコンス機能を解除する様子を示す図であり、図8(a)が、図4の断面を左前方からみた断面斜視図であり、図8(b)(c)が図6(a)(b)に相当する断面図である。
図8に示すように、コンス機能の作動中(図7)に、第1シリンダー錠10Aの鍵穴20にコンスキー40よりも長さL1分長い子鍵42を挿入すると、ダミーキー32が第2シリンダー錠10B方向に押し出され、第1連結部材24に保持された状態でダミーキー保持部34内を摺動する。つまり、ダミーキー32は子鍵42によって第2シリンダー錠10B側に押し出されることで、第1固定孔321に浅く係合していた固定ピン36がばねの付勢力に抗して内筒104の半径方向の外側に押し戻され、第1連結部材24とダミーキー32の固定が解除されるため、ダミーキー32が摺動する。
そして、ダミーキー32は第2固定孔322が固定ピン36と一致する位置まで(ダミーキー32が、第1連結部材24の内部、および第2連結部材28の円筒形の空間内に完全に格納さる位置まで)摺動すると、固定ピン36がばねの付勢力で内筒104の中心方向に押され、第2固定孔322に固定ピン36の円柱部分が嵌合してダミーキー32が第1連結部材24に固定される。このようにしてダミーキー32は、第1連結部材24の内部、および第2連結部材28の円筒形の空間内に完全に格納された状態で、第2の位置F2で第1連結部材24に保持固定される。その後は、ダミーキー32は、第1連結部材24および第2連結部材28に格納されたまま、これらと一体的に移動する。つまり、コンス機能が解除された後は、第1連結部材24および第2連結部材28内のダミーキー32の格納が維持される。つまり、コンス機能の解除によってダミーキー32が外部に排出されることがないため、ダミーキー32とコンスキー40を組み合わせることによる子鍵42の形状の推測を回避でき、防犯性を高めることができる。
また、第1連結部材24および第2連結部材28の内部に格納されたダミーキー32は、これらの軸としても機能するため、これらの移動の際のブレ(がたつき)を防止することも可能となる。
コンス機能を解除すると、子鍵42によって、第1シリンダー錠10Aの内筒104の回転が第1連結部材24を介してカム30に伝達可能となり、第2シリンダー錠10Bの内筒124の回転が第2連結部材28を介してカム30に伝達可能となる。
≪子鍵による第1シリンダー錠の施解錠≫
図8を引き続き参照して、コンス機能解除後の、子鍵42による第1シリンダー錠10Aの施解錠の動作を説明する。
まず、図8(a)に示すように、コンス機能解除直後の状態では、ダミーキー32は第1連結部材24に完全に格納されているが、第1連結部材24と第2連結部材28の境界線Bは、コンス機能の作動中の施錠状態の場合と変化していない。つまりこの状態は、第2連結部材28が付勢手段38によって第1シリンダー錠10A側に付勢され、第2連結部材28がカム30と係合した状態となっている。従ってこの状態から子鍵42を付勢手段38の付勢力に抗してさらに第2シリンダー錠10B方向に押し込むと(子鍵42の所定の差し込み位置まで差し込むと)、ダミーキー32の移動に伴い、これを保持固定する第1連結部材24もその分第2シリンダー錠10B側に移動する。これにより図7に示したように境界線Bがカム30の中心線Cに向かって(例えば、中心線Cを超えて)第2シリンダー錠10B方向に移動し、第1連結部材24がカム30と係合する。
そして、子鍵42の溝形状によって、第1シリンダー錠10Aのピンタンブラ106とドライバピン108のシャーラインが、外筒(不図示)と内筒104の境界と一致する。またディスクタンブラ110も内筒104の中に退避して、内筒104は外筒(ここでは不図示)に対して回転可能となる。
これにより、第1シリンダー錠10Aではその内筒104の回転が、これと係合する第1連結部材24を介してカム30に伝達され、カム30が所定方向に回転する。内筒104の回転方向に応じて、カム30の駆動部30bが所定方向(図8(c)では上方向または下方向)に移動し、これにより不図示の閂を移動させてシリンダー錠10が設けられた扉体等の施解錠が可能となる。
≪子鍵による第2シリンダー錠の施解錠≫
図9を参照して、コンス機能解除後の、子鍵42による第2シリンダー錠10Bの施解錠の動作を説明する。図9(a)〜(c)はそれぞれ、第2シリンダー錠10Bに子鍵42を挿入した状態を示す、図8(a)〜(c)に相当する断面図である。
まず、図9(a)に示すように、コンス機能解除直後の状態では、ダミーキー32は第1連結部材24に完全に格納された状態で固定されているが、第2連結部材28は、付勢手段38によって第1シリンダー錠10Aの方向に付勢されているので、第1連結部材24と第2連結部材28の境界線Bは、第1シリンダー錠10A側に移動(ここでは一例として、カム30の中心線Cを超えて第1シリンダー錠10A側に移動)しており、第2連結部材28がカム30と係合した状態となっている。従ってこの状態から第2シリンダー錠10Bに子鍵42を差し込むと、子鍵42の溝形状によって、第2シリンダー錠10Bのピンタンブラとドライバピンのシャーライン(いずれも不図示)が、外筒(不図示)と内筒124の境界と一致する。またディスクタンブラ(不図示)も内筒124の中に退避して、内筒124は外筒に対して回転可能となる。
これにより、第2シリンダー錠10Bではその内筒124の回転が、これと係合する第2連結部材28を介してカム30に伝達され、カム30が所定方向に回転する。内筒124の回転方向に応じて、カム30の駆動部30bが所定方向(図9(c)では上方向または下方向)に移動し、これにより不図示の閂を移動させてシリンダー錠10が設けられた扉体等の施解錠が可能となる。
このように本実施形態では、コンス機能を解除した場合であっても、ダミーキー32が外部に排出されることがないため、ダミーキー32とコンスキー40を組み合わせることによる子鍵42の形状の推測を回避でき、防犯性を高めることができる。
また、第1連結部材24および第2連結部材28の内部に格納されたダミーキー32は、これらの軸としても機能するため、これらの移動の際のブレ(がたつき)を防止することも可能となる。
また、ダミーキー32の外部への排出が不要となるので、室外側と室内側とにシリンダー錠を備える錠(2つのシリンダー錠の内奥同志を対向配置した錠)の場合にも、コンストラクション機能を備えることが可能となる。
また、ダミーキー32を抜き取る手間も不要となるため、特に集合住宅のように戸数が多い場合には、工数の削減が図れる。
また、第1シリンダー錠10Aおよび第2シリンダー錠10Bは、ピンタンブラ方式とディスクタンブラ方式を併用した構成であるので、ピッキングが困難となる上、キー(コンスキー40、子鍵42)の複製がしにくく、これによっても防犯性を高めることができる。
[第2実施形態]
次に、図10から図15を参照して本発明の第2実施形態のシリンダー錠50について説明する。なお、第1実施形態と同一構成要素は同一符号で示し、その説明は省略する。
<全体構成>
最初に、図10および図11を用いて、第2実施形態のシリンダー錠50の全体構成について説明する。なお、図10は、シリンダー錠50を前方上側から見た外観斜視図であり、図10(a)が全体図であり、図10(b)が要部の拡大図であり、図10(c)が第1連結部材52および第2連結部材54の外観斜視図である。また、図11は、シリンダー錠50の一部を分解して示す分解斜視図である。
第2実施形態に係るシリンダー錠50も、第1実施形態と同様に2つのシリンダー錠(第1シリンダー錠50A、第2シリンダー錠50B)を、その長軸方向(X方向)に直列に配列したものである。また、第1シリンダー錠50Aおよび第2シリンダー錠50Bはそれぞれ、第1実施形態と同様にピンタンブラ方式とディスクタンブラ方式を組み合わせたものである。
第2実施形態では、第1シリンダー錠50Aの第1連結部材52および第2連結部材54の構成が第1実施形態とは異なっている。また、第1シリンダー錠50Aと第2シリンダー錠50Bは同一の構成要素(共通の部品)からなり、その点も第1実施形態と異なっている。
すなわち、図10(c)に示すように、第1連結部材52は単体でその内部(ダミーキー保持部64)にダミーキー(第1ダミーキー)32が格納できるように、第1実施形態の第1連結部材24と比べて長軸方向の長さが長いものとなっている。
また、第2連結部材54も、その内側に、第2シリンダー錠50Bの長軸方向に沿って摺動可能となるように他のダミーキー(第2ダミーキー62)を保持するダミーキー保持部68を備える。第2ダミーキー62は、第1ダミーキー32(第1実施形態のダミーキー32)と同様の構成を有している。すなわち、第2ダミーキー62は、第2シリンダー錠50Bのディスクタンブラ130を解錠位置に保持可能なキーの形状を表面に備えた略矩形状の板状片であり、その長手方向が第2シリンダー錠50Bの長軸方向に沿うように第2連結部材54のダミーキー保持部68に挿通され、保持される。
また、第2ダミーキー62を保持する第2連結部材54は、第1連結部材52と同様に、第2ダミーキー62を単体で完全に格納可能なように、第1実施形態の第2連結部材28より長軸方向の長さが長いものとなっている。そして、第2ダミーキー62は第1実施形態のダミーキー32と同様に内筒124の長手方向の2か所で第2連結部材54に保持、固定されるが、その詳細については後述する。
第1連結部材52と第2連結部材54はいずれも同一の形状で、その長さが第1実施形態の場合より長いことを除き、内筒104、124やカム30との係合関係は、第1実施形態と同様である。
つまり、第1シリンダー錠50Aと第2シリンダー錠50Bは互いの第2の端部T2(内奥部)同志を対向させて直列に配置され、それぞれの内筒104、124の鍔状部104c、124cは、カム30の両面の第2内周面30dに内包されるが、互いに固定はされていない。つまりシリンダー錠50の長軸方向においてはそれぞれの内筒104、124とカム30の位置は固定されている(移動しない)が、シリンダー錠10の回転軸を中心とした回転は、それぞれに自在となっている(図4、図10(b)参照)。
また、内筒104は第1連結部材52と係合し、内筒124は第2連結部材54と係合して、第1連結部材52と第2連結部材54は対向面が当接している。2つの内筒104、124は、これらの間で、第1連結部材24と第2連結部材28とが一体的に長軸方向(X方向)に所定の距離の摺動が可能となるように離間して固定され、第1連結部材52は内筒104との係合を維持し、第2連結部材54は内筒124との係合を維持した状態で、これらの境界面Bは、内筒104、124およびカム30に対して長軸方向の移動が可能となっている。また、第1連結部材52と第2連結部材54は、付勢手段(例えば、図10、図11では不図示のスプリングコイルなど)によって長軸方向の一方側に付勢されており、この付勢力によって、またこの付勢力に抗する力によって移動が可能となる。
これにより、第1連結部材52と第2連結部材54の境界面Bがカム30と内筒104、124に対して移動し、第1連結部材52がカム30と係合した場合には、内筒104の回転が第1連結部材52を介してカム30に伝達可能となり、第2連結部材54がカム30と係合した場合には、内筒124の回転が第2連結部材54を介してカム30に伝達可能となる。
このように、第1実施形態ではダミーキー32は第1シリンダー錠10Aのみに設けられていたのに対し、第2実施形態では、第1シリンダー錠50Aに第1ダミーキー32が設けられることに加え、第2シリンダー錠50Bにも第2ダミーキー62が設けられ、室内側及び室外側の両方においてコンス機能を作動させることができる。
以下、図12から図15を参照して、本実施形態のシリンダー錠50の動作について説明する。なお、使用するキー(コンスキー40および子鍵42)は、第1実施形態と同様である。
<コンストラクション機能(コンス機能)の作動状態>
≪施錠状態≫
図12は、コンス機能の作動中で且つ施錠状態の、シリンダー錠50の要部を示す図であり、図12(a)(b)がそれぞれ図6(a)(b)に相当する断面図である。また、図12(c)は、この場合のシリンダー錠50の要部を模式的に示した図4に相当する断面概要図である。ここでは、図12の左側を室外側とし、図12右側を室内側としている。
コンス機能の作動中では、第1ダミーキー32が第1シリンダー錠50Aのディスクタンブラ110を解錠位置に保持した状態で、第1連結部材52に保持される。また、第2ダミーキー62が第2シリンダー錠50Bのディスクタンブラ130を解錠位置に保持した状態で、第2連結部材54に保持される。つまり、第1シリンダー錠50A、第2シリンダー錠50Bの少なくとも一方がこの状態にある場合をコンス機能の作動状態、という。
第2実施形態において、第1シリンダー錠50Aと第2シリンダー錠50Bのコンス機能は同じであり、第1実施形態では第1シリンダー錠10Aのコンス機能について説明したので、以下では主に、第2シリンダー錠50Bのコンス機能について説明する。
第2ダミーキー62は、長手方向に円形状の第1固定孔621と第2固定孔622を有しており、第1固定孔621は第2固定孔622よりその直径が小さく、ダミーキー62の厚み方向の深さも浅くなっている。第1固定孔621と第2固定孔622には、固定ピン66が係合する。第2連結部材54のダミーキー保持部68に挿通されたダミーキー62は、固定ピンが第1固定孔621、第2固定孔622のいずれとも係合していない場合は、第2連結部材54に対して摺動可能であるが、第1固定孔621に固定ピンが係合した場合は、第2連結部材54に対して第1の位置F1で固定されて第2連結部材54とともに内筒124に対して摺動可能となり、第2固定孔622に固定ピンが係合した場合は、第2連結部材54に対して第2の位置F2で固定されて第2連結部材54とともに内筒124に対して摺動可能となる。
コンス機能作動中の第2ダミーキー62は、第2連結部材54に保持されるとともに固定ピン66によって第2連結部材54と固定される。この場合第2ダミーキー62は、第1固定孔621に固定ピン66の曲面部分が浅く嵌合することで、シリンダー錠50の長軸方向に沿う第1の位置F1において第2連結部材54と固定されている。
第2実施形態では、第1シリンダー錠50Aの内筒104と係合する第1連結部材52は、同図(a)(b)に示すように、付勢手段(例えばスプリングコイルなど)88によって、第2連結部材54側に付勢されている。これにより、第1連結部材52と第2連結部材54の境界面Bは、(ここでは一例としてカム30の中心線Cを超えて)第2シリンダー錠50B側に位置しており、コンス機能が作動中の施錠状態では、常に、第1連結部材52がカム30と係合した状態となっている。このように、第1連結部材52と第2連結部材54の待機位置を決める付勢手段による付勢方向は、本実施形態のように第1シリンダー錠50Aから第2シリンダー錠50Bに向かう方向であってもよいし、第1実施形態のように第2シリンダー錠10Bから第1シリンダー錠10Aに向かう方向であってもよい。
≪コンスキーによる施解錠≫
次に図13を参照して、コンス機能の作動中における、コンスキー40による施解錠の動作を説明する。図13(a)は、コンスキー40を第2シリンダー錠50Bの鍵穴22に挿入し、更に第1シリンダー錠50A側に押し込んだ状態(第2の状態)を示す、図8(a)に相当する断面図であり、図13(b)(c)(d)は、コンスキー40を鍵穴に挿入した第2の状態を示す、図12(a)(b)(c)に相当する断面図である。また、図13(e)は、第1シリンダー錠50A側にコンスキーを挿入した場合の、図13(d)に相当する断面図である。
第2シリンダー錠50Bにコンスキー40が挿入された場合には、第2シリンダー錠50Bの内筒124の回転が第2ダミーキー62と第2連結部材54とを介して、カム30に伝達可能となる。
まず、コンスキー40を第2シリンダー錠50Bの鍵穴22に挿入した第1の状態では、コンスキー40の先端が、第2ダミーキー62と当接する。この状態では、第1連結部材52と第2連結部材54の境界線Bは、付勢手段88の付勢力によって図13(a)(b)に示す位置よりも、第2シリンダー錠50B側に位置している。そして、コンスキー40の溝形状によって、第2シリンダー錠50Bのピンタンブラとドライバピンのシャーライン(いずれも不図示)が、外筒(不図示)と内筒124の境界と一致する。またディスクタンブラ130は第2ダミーキー62によって解錠状態が保持されているため、内筒124は外筒に対して回転可能となる。
この状態から、図13(a)(b)に示すように更にコンスキー40を付勢手段88の付勢力に抗して第1シリンダー錠10A側に押し込むと、第2ダミーキー62が第1シリンダー錠50A側に移動する。第2ダミーキー62は、第1の位置F1で第2連結部材54に保持固定されているため、第2ダミーキー62の移動に伴い、第2連結部材54もその分第1シリンダー錠50A側に移動する。これにより第1連結部材52と第2連結部材54の境界線Bが(例えば、カム30の中心線Cを超えて)第1シリンダー錠50A方向に移動し、第2連結部材54がカム30と係合する。
これにより、第2シリンダー錠50Bではその内筒124の回転が、これと係合する第2連結部材54を介してカム30に伝達され、カム30が所定方向に回転する。内筒124の回転方向に応じて、カム30の駆動部30bが所定方向(図13(c)では上方向または下方向)に移動し、これにより不図示の閂を移動させてシリンダー錠50が設けられた扉体等の施解錠が可能となる。
また、図13(e)に示すように、コンス機能が作動中の施錠状態では、第1連結部材52と第2連結部材54の境界面Bは付勢手段88の付勢力によって待機位置(カム30の中心線Cより第2シリンダー錠50B側)にあり、第1連結部材52がカム30と係合しているので、この状態で第1シリンダー錠50Aにコンスキー40を挿入した場合には、内筒104の回転が第1連結部材52を介して、カム30に伝達する。
このように、第1実施形態では、コンス機能が作動中の場合、第1シリンダー錠50A、第2シリンダー錠50Bのいずれもがコンスキー40を有効に受付ける。
<コンストラクション機能(コンス機能)の解除状態>
コンス機能は第1シリンダー錠50Aおよび第2シリンダー錠50Bにそれぞれ子鍵42を挿入することによって解除される。図14(a)〜(d)はそれぞれ、第2シリンダー錠50Bでコンス機能を解除する様子を示す、図13(a)〜(d)に相当する断面図である。なお、図14(a)〜(c)では、説明の便宜上、第1シリンダー錠50Aにおいてコンス機能を解除する様子も合わせて示しているが、第1シリンダー錠50Aと第2シリンダー錠50Bの解除は同時に行われることを示すものではなく、それぞれに子鍵42を挿入することによって個別に解除されるものである。
図14に示すように、コンス機能の作動中に、第2シリンダー錠50Bの鍵穴22にコンスキー40よりも長さL1分長い子鍵42を挿入すると、第2ダミーキー62が第2シリンダー錠50B方向に押し出され、第2連結部材54に保持された状態でダミーキー保持部68内を摺動する。つまり、第2ダミーキー62は子鍵42によって第1シリンダー錠50A側に押し出されることで、第1固定孔621に浅く係合していた固定ピン66がばねの付勢力に抗して内筒124の半径方向の外側に押し戻され、第2連結部材54と第2ダミーキー62の固定が解除されるため、第2ダミーキー62が摺動する。
そして、第2ダミーキー62は第2固定孔622が固定ピン66と一致する位置まで(第2ダミーキー62が、第2連結部材54の内部に完全に格納さる位置まで)摺動すると、固定ピン66がばねの付勢力で内筒124の中心方向に押され、第2固定孔622に固定ピン66の円柱部分が嵌合して第2ダミーキー62が第2連結部材54に固定される。このようにして第2ダミーキー62は、第2連結部材54の内部に完全に格納された状態で、第2の位置F2で第2連結部材54に保持固定される。その後は、第2ダミーキー62は、第2連結部材54に格納されたまま、これらと一体的に移動する。つまり、コンス機能が解除された後は、第2連結部材54内の第2ダミーキー62の格納が維持される。
図14に合わせて示すように、第1シリンダー錠50Aにおけるコンス機能の解除動作も同様である。すなわち、第1シリンダー錠50Aの鍵穴20に子鍵42を挿入した場合は、第1ダミーキー32は、第1連結部材52の内部に完全に格納された状態で、第2固定孔322に固定ピン36が嵌合することで第2の位置F2で第1連結部材52に保持固定される。その後は、第1ダミーキー32は、第1連結部材52に格納されたまま、これらと一体的に移動する。つまり、コンス機能が解除された後は、第1連結部材52内の第1ダミーキー32の格納が維持される。
このように、第2実施形態では、コンス状態の解除によって、第1ダミーキー32が第1連結部材52内に完全に格納され、第2ダミーキー62が第2連結部材54内に完全に格納される。そしてコンス機能の解除によっては、第1ダミーキー32および第2ダミーキー62が外部に排出されることがないため、第1ダミーキー32、第2ダミーキー62とコンスキー40を組み合わせることによる子鍵42の形状の推測を回避でき、防犯性を高めることができる。
また、第1連結部材52および第2連結部材54の内部にそれぞれ格納された第1ダミーキー32、第2ダミーキー62は、これらの軸としても機能するため、これらの移動の際のブレ(がたつき)を防止することも可能となる。
コンス機能を解除すると、子鍵42によって、第1シリンダー錠50Aの内筒104の回転が第1連結部材52を介してカム30に伝達可能となり、第2シリンダー錠50Bの内筒124の回転が第2連結部材54を介してカム30に伝達可能となる。
≪子鍵による第2シリンダー錠の施解錠≫
図14を引き続き参照して、コンス機能解除後の、子鍵42による第2シリンダー錠50Bの施解錠の動作を説明する。
コンス機能解除直後の状態では、第2ダミーキー62は第2連結部材54に完全に格納されているが、第1連結部材52と第2連結部材54の境界線Bは、コンス機能の作動中の施錠状態の場合と変化しておらず、境界線Bとしては図12に示す位置にあり、第1連結部材54が付勢手段88によって第2シリンダー錠50B側に付勢され、第1連結部材54がカム30と係合した状態となっている。
つまり、図14(a)では子鍵42によってコンス機能を解除するとともに、さらに子鍵42を付勢手段88の付勢力に抗して第1シリンダー錠10B方向に押し込んだ(子鍵42の所定の差し込み位置まで差し込んだ)状態を示している。
このように子鍵42を所定位置まで差し込むと、第2ダミーキー62の移動に伴い、これを保持固定する第2連結部材54もその分第1シリンダー錠50A側に移動する。これにより境界線Bが例えば、カム30の中心線Cを超えて第1シリンダー錠50A方向に移動し、第2連結部材54がカム30と係合する。
そして、子鍵42の溝形状によって、第2シリンダー錠50Bのピンタンブラとドライバピンのシャーラインが、外筒と内筒124の境界と一致する。またディスクタンブラ130も内筒124の中に退避して、内筒124は外筒122に対して回転可能となる。
これにより、第2シリンダー錠50Bではその内筒124の回転が、これと係合する第2連結部材54を介してカム30に伝達され、カム30が所定方向に回転し、カム30の駆動部30bが所定方向(図14(b)では右方向または左方向)に移動し、これにより不図示の閂を移動させてシリンダー錠10が設けられた扉体等の施解錠が可能となる。
≪子鍵による第1シリンダー錠の施解錠≫
図15を参照して、コンス機能解除後の、子鍵42による第1シリンダー錠50Aの施解錠の動作を説明する。図15(a)〜(d)はそれぞれ、第2シリンダー錠50Bでコンス機能を解除する様子を示す、図14(a)〜(d)に相当する断面図である。
まず、図15(a)に示すように、コンス機能解除直後の状態では、第1ダミーキー32は第1連結部材52に完全に格納された状態で固定されているが、第1連結部材52は、付勢手段88によって第2シリンダー錠50Bの方向に付勢されているので、第1連結部材52と第2連結部材54の境界線Bは、例えば、カム30の中心線Cを超えて第2シリンダー錠50B側に移動しており、第1連結部材52がカム30と係合した状態となっている。従ってこの状態から第1シリンダー錠50Aに子鍵42を差し込むと、子鍵42の溝形状によって、第1シリンダー錠50Aのピンタンブラとドライバピンのシャーラインが、外筒と内筒104の境界と一致し、ディスクタンブラ110も内筒104の中に退避して、内筒104は外筒に対して回転可能となる。
これにより、第1シリンダー錠50Aではその内筒104の回転が、これと係合する第1連結部材52を介してカム30に伝達され、カム30が所定方向に回転する。内筒104の回転方向に応じて、カム30の駆動部30bが所定方向(図15(c)では上方向または下方向)に移動し、これにより不図示の閂を移動させてシリンダー錠50が設けられた扉体等の施解錠が可能となる。
このように本実施形態では、コンス機能を解除した場合であっても、第1ダミーキー32および第2ダミーキー62が外部に排出されることがないため、第1ダミーキー32、第2ダミーキー62とコンスキー40を組み合わせることによる子鍵42の形状の推測を回避でき、防犯性を高めることができる。
また、第1連結部材52および第2連結部材54の内部にそれぞれ格納された第1ダミーキー32および第2ダミーキー62は、これらの軸としても機能するため、これらの移動の際のブレ(がたつき)を防止することも可能となる。
また、ダミーキーの外部への排出が不要となるので、室外側と室内側とにシリンダー錠を備える錠(2つのシリンダー錠の内奥同志を対向配置した錠)の場合にも、コンストラクション機能を備えることが可能となる。
また、第1ダミーキー32、第2ダミーキー62を抜き取る手間も不要となるため、特に集合住宅のように戸数が多い場合には、工数の削減が図れる。
また、第1シリンダー錠50Aと第2シリンダー錠50Bのそれぞれにコンス機能を備える場合であっても、これらの部品を共通化できるので、部品点数の削減が可能となる。また、第1シリンダー錠50Aと第2シリンダー錠50Bの組み立て時に部品の取り違えが起こらないため、部品取り違え等による製造工数の不要な増加を回避できる。
また、第1シリンダー錠10Aおよび第2シリンダー錠10Bは、ピンタンブラ方式とディスクタンブラ方式を併用した構成であるので、ピッキングが困難となる上、キー(コンスキー40、子鍵42)の複製がしにくく、これによっても防犯性を高めることができる。
なお、本実施形態では、第1連結部材24、52と第2連結部材28、54のと境界線Bがカム30の中心線Cを超えて移動する場合を例に説明した。すなわち、境界線Bがカム30の中心線Cを超えて、第1シリンダー錠10A,50A側に位置する場合に、第2連結部材28、54がカム30と係合し、境界線Bがカム30の中心線Cを超えて、第2シリンダー錠10B,50B側に位置する場合に、第1連結部材24、52がカム30と係合する場合を例に説明した。しかし空間S内を移動する境界線Bはカム30の中心線Cを超えなくてもよく、境界線Bの移動によって、カム30と係合する第1連結部材24,52と第2連結部材28、54とが切り替えられる構成であればよい。