以下、本明細書で開示する実施例の技術的特徴の幾つかを記す。なお、以下に記す事項は、各々単独で技術的な有用性を有している。
(特徴1) 本明細書で開示する蓄電装置では、隔壁は、隔壁の変形に伴って変位する隔壁変位部を有していてもよい。導電部材は、第1の導電部と第2の導電部の間に設けられ、かつ第1の導電部および第2の導電部よりも破断強度が低い脆弱部を有していてもよい。第1の導電部は、隔壁変位部に接合されていてもよい。
上記の蓄電装置では、ケース内の圧力が上昇すると、導電部材が脆弱部において破断し、絶縁体が第1の導電部の破断面と第2の導電部の破断面との間に位置する状態となる。これにより、蓄電装置が再び通電することを抑制することができる。
(特徴2) 本明細書で開示する蓄電装置では、絶縁体は、導電部材において、隔壁変位部が接合される側とは反対側に配置され、かつ第1の導電部に固定された第1の固定部と、第1の固定部から第2の導電部の表面に延在した第1の変形部とを有していてもよい。第1の固定部が、隔壁変位部の変位に伴って変位し、かつ第1の変形部が変形してもよい。
上記の蓄電装置では、通電遮断後に絶縁体の第1の固定部が第1の導電部と共に変位しつつ弾性変形し、絶縁体が第1の導電部の破断面と第2の導電部の破断面との間に位置する状態となる。これにより、蓄電装置が再び通電することを抑制することができる。
(特徴3) 本明細書で開示する蓄電装置では、絶縁体は、隔壁と導電部材との間に配置され、絶縁体は、隔壁と導電部材との接合部を取り囲んでいてもよい。絶縁体は、第2の導電部に固定された第2の固定部と、第2の固定部から第1の導電部の表面に延在した第2の変形部とを有していてもよい。第2の変形部が、隔壁変位部の変位にともなって変形してもよい。
上記の蓄電装置では、通電遮断後に第1の導電部が変位すると、第2の導電部に固定されている絶縁体が弾性変形し、絶縁体が第1の導電部の破断面と第2の導電部の破断面との間に位置する状態となる。これにより、蓄電装置が再び通電することを抑制することができる。
(特徴4) 本明細書で開示する蓄電装置では、絶縁体には、切り込みが形成されていてもよい。
上記の蓄電装置では、切り込みによって絶縁体の弾性変形が促進される。
(特徴5) 本明細書で開示する蓄電装置は二次電池であってもよい。
第1実施例の蓄電装置2は、例えばニッケル水素電池やリチウムイオン電池等の二次電池である。蓄電装置2は、ハイブリッド自動車や電気自動車等の車両に搭載されて、モータに電力を供給する。また、蓄電装置2は、モータが回生発電した電力によって充電される。
図1に示すように、蓄電装置2は、ケース4と、ケース4に収容された電極組立体6と、ケース4に設けられた電極端子としての正極端子12a、及び負極端子12bと、ケース4内に設けられた電流遮断装置40とを備えている。
ケース4は、金属製で略直方体である。ケース4の上側の壁の、図1右側の端には正極端子12aが、図1左側の端には負極端子12bが設けられている。正極端子12a、負極端子12bは、それぞれ正極、負極とケース4内で電気的に接続されている(後に詳しく説明する)。正極端子12a、負極端子12bは、電極組立体6との間で電気を授受する。正極端子12a、及び負極端子12bには、蓄電装置2の充・放電を行うための配線部材(図示しない)が接続される。
図1に示すように、正極端子12aは、金属製のボルト24a、内側ナット26a、外側ナット28aを備えている。ボルト24aと内側ナット26aは、シール座金32aを介してケース4を挟持している。ボルト24a及び内側ナット26aと、ケース4との間は絶縁性を有するスリーブ30aによって絶縁されている。外側ナット28aは、配線部材との結線に用いられる。
負極端子12bは、金属製のボルト24b、内側ナット26b、外側ナット28bを備えている。ボルト24bと内側ナット26bは、シール座金32bを介してケース4を挟持している。ボルト24b及び内側ナット26bと、ケース4との間は絶縁性を有するスリーブ30bによって絶縁されている。外側ナット28bは、配線部材との結線に用いられる。
電極組立体6は、正極と、負極と、正極と負極の間に介在しているセパレータを備えている(図示しない)。正極と負極は、それぞれ金属箔と、金属箔上に形成されている活物質層を有する(図示しない)。正極又は負極の金属箔からは、正極タブ55a、負極タブ55bが伸びている。
電極組立体6は、液状の電解液に浸漬されている。電解液は、溶媒中に、リチウム塩を含む支持塩を含有している。溶媒としては、例えばFEC(フルオロエチレンカーボネート)が使用できる。支持塩としては、例えば、LiPF6(六フッ化リン酸リチウム)が使用できる。電解質には、芳香族系のモノマー添加剤が含まれている。電極組立体6に過電圧が加わると、電解質に含まれるモノマー添加剤が重合し、水素ガスが発生する。これによって、ケース4の内部空間41の圧力を上昇させる。
図1に示すように、正極タブ55a、第1リード10a、正極端子12a、が順に接続されることで、正極と正極端子12aとを接続する通電経路が形成されている。第1リード10aの上面とケース4の上側の壁の内面との間には絶縁シート34aが配置されている。負極タブ55b、第2リード10b、電流遮断装置40、導電部材14、負極端子12b、の順に接続されることで、負極と負極端子12bとを接続する通電経路が形成されている。ケース4内の圧力が所定の電流遮断圧力値まで上昇した場合には、電流遮断装置40は、この通電経路を遮断する。
電流遮断装置40は、ケース4の上側の壁の内面に設けられている。第2リード10bの上面及び電流遮断装置40の上端部と、ケース4の上側の壁の内面との間には、絶縁シート34bが配置されている。電流遮断装置40は、感圧式の電流遮断装置である。電流遮断装置40は、ケース4内の圧力が電流遮断圧力値未満の場合は、負極と負極端子12bとの間の通電経路を電流が流れる状態とする。また、電流遮断装置40は、ケース4内の圧力が電流遮断圧力値以上の場合は、負極と負極端子12bとの間の通電経路を遮断し、電流が流れない状態とする。
以下に、電流遮断装置40について詳しく説明する。電流遮断装置40の、ケース4内の圧力が電流遮断圧力値未満のときの状態を図2に示し、電流遮断圧力値以上となったときの状態を図3に示す。電流遮断装置40は、図2の状態から、図3の状態に変化することで、負極と負極端子12bとの間の通電経路を遮断する。
電流遮断装置40は、図2に示すように、隔壁38を有している。隔壁38は、図2の上方向から見て円形の導電性のダイアフラムである。隔壁38は、下側の面にケース4内の内部空間41の圧力を受けており、上側の面にはケース4内の内部空間41とは隔離された空間である空間42の圧力を受けている。隔壁38は、ケース4内の圧力が電流遮断圧力値未満のとき、図2に示すように下側に膨出した状態である。隔壁38の外周縁部72は、第2リード10bと、絶縁性を有する支持部材36とで挟持されている。隔壁38のうち、外周縁部72以外の部分は、ケース4内の圧力によって変位する隔壁変位部73である。
第2リード10bは開口部11を有し、開口部11は隔壁38の外周縁部72を挟持している部分の内側の部分に位置している。隔壁38は、その中央部に中央平坦部76を有している。隔壁38の外周縁部72の上面と第2リード10bの下面とは接触しており、両者は電気的に接続されている。
隔壁38の下側(ケース4内の圧力を受圧する側)では、導電部材14が支持部材36に支持されている。隔壁38の外周縁部72と導電部材14との間は、絶縁性を有する支持部材36によって絶縁されている。隔壁38の中央平坦部76の下面と、導電部材14の上面とは固定され、電気的に接続されている。隔壁38の中央平坦部76と導電部材14は、溶接部78において溶接されている。支持部材36には通気孔37が設けられている。通気孔37は、支持部材36の内側の空間(詳細には、隔壁38の下側の空間)と電極組立体6が収容されている空間とを連通している。なお、以下の説明では、支持部材36の内側の空間(隔壁38の下側の空間)を単にケース4内の内部空間41と呼ぶことがある。
導電部材14の下側の面には、脆弱部20が形成されている。脆弱部20は、導電部材14の溶接部78の下側に位置する範囲を取り囲むように円弧状に形成されている。脆弱部20は、断面が三角形の溝であり刻印により形成されている。導電部材14の下面のうちの、脆弱部20の内側の部分は移動側導電部17となっており、脆弱部20の外側の部分は固定側導電部16となっている。移動側導電部17と固定側導電部16とは隣接している。なお、移動側導電部17は、請求項でいう「第1の導電部」の一例であり、固定側導電部16は、請求項でいう「第2の導電部」の一例である。
第2リード10b、隔壁38、導電部材14が順に電気的に接続されることで、負極と負極端子12bとの間の通電経路に電流が流れる状態となる。
導電部材14の図2下側には、絶縁体60が配置されている。絶縁体60は、絶縁性を有し、かつ弾性を有する材質で形成されている。具体的には、例えばポリプロピレン(PP)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルエーテルケトン (PEEK)等が使用できる。絶縁体60は、板状に形成されており、図2の上から見て円形である。絶縁体60は、図2の上から見たとき、脆弱部20と同心に配置されている。絶縁体60の直径は、脆弱部20の直径よりも大きい。絶縁体60は、図2の上から見たときに脆弱部20の内側に位置する部分である中央部60dと、脆弱部20の外側に位置する部分である外周縁部60eとを有する。
絶縁体60の中央部60dの上側の面と、導電部材14の下側の面(移動側導電部17の下側の面)とは固定されている。固定方法は、例えば超音波溶着が使用できる。絶縁体60の外周縁部60eの上側の面と、導電部材14の下側の面(固定側導電部16の下側の面)とは固定されていない。外周縁部60eは、中央部60dから、固定側導電部16の表面に延在している。
図3に示すように、ケース4内の圧力が電流遮断圧力値以上となると、導電部材14は脆弱部20の部分で破断し、隔壁変位部73と移動側導電部17とが一体となって上側に移動する。すなわち、ケース4内の圧力が電流遮断圧力値以上となると、固定側導電部16側の破断面16cと、移動側導電部17側の破断面17cとが分断して離間する。このとき、開口部11が形成されているため、隔壁変位部73はより移動しやすい。なお、導電部材14が電流遮断圧力値で破断するように、隔壁38の受圧面積と導電部材14の破断強度とが設計されている。導電部材14が破断することにより、負極と負極端子12bとの間の通電経路に電流が流れない状態となる。
絶縁体60は、移動側導電部17の移動に伴って上側に移動する。絶縁体60は、移動側導電部17と一体となって上側に移動する。絶縁体60が上側に移動する際、絶縁体60の外周縁部60eが、固定側導電部16と干渉して弾性変形する。移動側導電部17が上側に移動する際、絶縁体60は弾性変形しつつ、脆弱部20の内側(すなわち固定側導電部16側の破断面16cの内側)を通過する。移動側導電部17が、絶縁体60と固定側導電部16とが干渉しない位置に達すると、絶縁体60の弾性変形が回復する。これにより、絶縁体60が導電部材14の上側に位置している状態となる。この状態では、絶縁体60の外周縁部60eは、脆弱部20の外側に位置している(図3)。この状態では、絶縁体60は、導電部材14の移動側導電部17側の破断面17cと、導電部材14の固定側導電部16側の破断面16cとの間に位置している。
本実施例の蓄電装置2では、通電遮断後に振動が加わる等した場合にも、絶縁体60によって、固定側導電部16側の破断面16cと移動側導電部17側の破断面17cとの再接触が妨げられる。これにより、蓄電装置2が再び通電することが抑制される。
なお、本実施例における中央部60dは請求項における「第1の固定部」の一例であり、外周縁部60eは請求項における「第1の変形部」の一例である。
本実施例の蓄電装置2では、負極端子12bと隔壁38との間は、導電部材15により接続されている。図4に示すように、導電部材15と隔壁38とは、溶接部78において溶接されている。導電部材15の下側の面には、脆弱部21が形成されている。脆弱部21は、図4下から見て円弧状に形成されている。本実施例の脆弱部21は、第1実施例における導電部材14に形成された脆弱部20と異なり、導電部材15の溶接部78の下側に位置する範囲よりも広い範囲を取り囲むように形成されている。導電部材14の下面の内、脆弱部21の内側の部分は移動側導電部87となっており、脆弱部20の外側の部分は固定側導電部86となっている。
本実施例の蓄電装置2は、絶縁体62を有する。絶縁体62は、第1実施例における絶縁体60と同様に絶縁性を有し、かつ弾性を有する材質で形成されている。絶縁体62は、第1実施例における絶縁体60とは異なり、導電部材15の図4上側(隔壁38と導電部材15との間の位置)に配置されている。絶縁体62は、図4上側から見て円形の板状であり、中央部に円形の開口部81を有する。隔壁38と導電部材15との溶接部78は、開口部81の内側に位置している。つまり、絶縁体62は、隔壁38と導電部材15との溶接部78を取り囲むように配置されている。
絶縁体62の外周側の辺縁部は支持部材36と導電部材15との間に挟持されている。絶縁体62の開口部81の直径は、脆弱部21の直径(すなわち移動側導電部87の外周の直径)よりも小さい。絶縁体62は、図4の上から見たときに脆弱部21の内側に位置する部分である中央部62dと、脆弱部21の外側に位置する部分である外周縁部62eとを有する。絶縁体62の外周縁部62eの下側の面は、導電部材15(固定側導電部86)の上側の面と固定されている。一方、絶縁体62の中央部62dの下側の面は、導電部材15(移動側導電部87)の上側の面と固定されていない。中央部62dは、外周縁部62eから、移動側導電部87の表面に延在している。
図6に示すように、絶縁体62の開口部81側の辺縁部には複数の切り込み80が形成されている。切り込み80は、それぞれ開口部81から絶縁体62の外周縁部62eの方向に向かう放射状であり、複数形成されている。
図5に示すように、ケース4内の圧力が電流遮断圧力値以上となると、導電部材15が破断し、移動側導電部87が上側に移動する。移動側導電部87が上側に移動することにより、移動側導電部87側の破断面87cと固定側導電部86側の破断面86cとが離間する。
移動側導電部87が上側に移動する際に、移動側導電部87と絶縁体62の中央部62dとが干渉する。絶縁体62は、移動側導電部87との干渉によって弾性変形する。切り込み80は、絶縁体62と移動側導電部87との干渉によって、切り込み80の開口部81側が広がるように変形する。これにより、絶縁体62の弾性変形が促進される。移動側導電部87は、絶縁体62を弾性変形させつつ、開口部81の内側を通過して、上側に移動する。なお、切り込み80における外側から、開口部81の中央までの長さは、移動側導電部87の幅の半分と略等しくなっている。これらの距離が等しくなることで、絶縁体62が確実に移動側導電部87と固定側導電部86との間に移動しつつも、これらを絶縁させることができる。
移動側導電部87が、移動側導電部87と絶縁体62とが干渉しない位置に達すると、絶縁体62の弾性変形が回復する。これにより、絶縁体62が導電部材15の下側に位置している状態となる。この状態では、絶縁体62の中央部62dは、脆弱部21の内側に位置している(図5)。この状態では、絶縁体62は、導電部材15の移動側導電部87の破断面87cと、固定側導電部86の破断面86cとの間に位置している。
本実施例の蓄電装置2では、通電遮断後に振動が加わる等した場合にも、絶縁体62によって、固定側導電部86側の破断面86cと移動側導電部87側の破断面87cとの再接触が妨げられる。これにより、蓄電装置2が再び通電することが抑制される。
なお、本実施例における外周縁部62eは請求項における「第2の固定部」の一例であり、中央部62dは請求項における「第2の変形部」の一例である。
第3実施例の蓄電装置2は、第2実施例の蓄電装置2の絶縁体62を、図7に示す絶縁体68に変更したものである。第3実施例の蓄電装置2の絶縁体68以外の構成は、第2実施例の蓄電装置2と同様であるので図示を省略する。絶縁体68は、第2実施例の絶縁体62と同様に円形の板状であり、中央部に円形の開口部481を有する。絶縁体68の開口部481側の辺縁部には、複数の切り込み82が形成されている。切り込み82は、それぞれ開口部481から絶縁体68の外周側に向かって形成されている。本実施例の切り込み82は、第2実施例とは異なり、絶縁体68の半径線(すなわち、図7において絶縁体68の中心から絶縁体68の外周側に向けて引いた線)に対して斜めに形成されている。また、切り込み82の端部(絶縁体68の外周側に位置する端部)から、開口部481の中央までの長さは、移動側導電部87の図4左右方向の幅の半分と略等しくなっている。
本実施例の蓄電装置2でも、第2実施例と同様に、ケース4内の圧力が電流遮断圧力値以上となると絶縁体68が固定側導電部86と干渉しつつ上側に移動する。本実施例の蓄電装置2では、上述のように切り込み82が絶縁体68の半径線に対して斜めに形成されている。このため、切り込み82が、絶縁体68の半径線に重なる様に(すなわち放射状に)形成されている場合と比較して、切り込みの長さを長くし易い。このため、絶縁体68の剛性を効果的に低減することができる。その結果、絶縁体68が上側に移動する際に、絶縁体68の弾性変形が促進される。これにより、本実施例の蓄電装置2では、絶縁体62が、導電部材15の移動側導電部87の破断面87cと、固定側導電部86の破断面86cとの間により確実に位置することができる。
図8、図9、及び図10を用いて第4実施例の蓄電装置2について説明する。第4実施例の蓄電装置2は、第1実施例の蓄電装置2の電流遮断装置40を電流遮断装置92に変更したものである。ここで、第4実施例の電流遮断装置92は、第1実施例の蓄電装置2の電流遮断装置40の絶縁体60を、図10に示す絶縁体64に変更したものである。絶縁体64は、図8の上から見たときに脆弱部20の内側に位置する部分である中央部64dと、脆弱部20の外側に位置する部分である外周縁部64eとを有する。図10に示すように、絶縁体64の外周側には複数の切り込み88が設けられている。切り込み88は、絶縁体64の半径線(すなわち、図10において絶縁体64の中心から絶縁体64の外周側に向けて引いた線)に重なるように形成されている。換言すると、切り込み88は、放射状に形成されている。なお、切り込み88の端部(絶縁体64の中心側に位置する端部)は、絶縁体64を導電部材14に投影したときに移動側導電部17の外周に重なる位置(つまり、脆弱部20に重なる位置)に位置している。
ケース4内の圧力が電流遮断圧力値以上となると、第1実施例の電流遮断装置40と同様に、導電部材14は脆弱部20の部分で破断する。導電部材14が脆弱部20で破断すると、移動側導電部17は上側に移動する。また、絶縁体64は移動側導電部17の移動に伴って上側に移動する。絶縁体64が上側に移動する際、絶縁体64の外周縁部64eが、固定側導電部16と干渉して弾性変形する。
本実施例の電流遮断装置92では、絶縁体64に切り込み88が形成されている。このため、ケース4内の圧力が電流遮断圧力値以上となり絶縁体64が上側に移動する際に、絶縁体64の弾性変形が促進される。したがって、絶縁体64が固定側導電部16の上側に確実に移動することができる。
第5実施例の蓄電装置2は、第4実施例の蓄電装置2の絶縁体64を、図11に示す絶縁体66に変更したものである。絶縁体66以外の構成は、第4実施例の蓄電装置2と同様であるので図示を省略する。図11に示すように、絶縁体66の外周側には、複数の切り込み89が設けられている。ただし、本実施例の切り込み89は、第5実施例とは異なり、絶縁体66の半径線に対して斜めに形成されている。なお、切り込み89の端部(絶縁体66の中心側に位置する端部)も、切り込み88と同様に、絶縁体66を導電部材14に投影したときに移動側導電部17の外周に重なる位置(つまり、脆弱部20に重なる位置)に位置している。
本実施例では、切り込み89が絶縁体66の半径線に対して斜めに形成されている。このため、切り込みが絶縁体66の半径線に重なる様に形成されている場合と比較して、切り込みの長さを長くし易い。このため、絶縁体66の剛性を効果的に低減させることができる。これにより、ケース4内の圧力が電流遮断圧力値以上となり絶縁体66が上側に移動する際に、絶縁体66の弾性変形を促進することができる。
(他の形態1)
以下に、本明細書で開示する他の形態の蓄電装置2を説明する。第1の形態の蓄電装置2を図12、図13を用いて説明する。第1の形態の蓄電装置2は、実施例1の蓄電装置2の電流遮断装置40を電流遮断装置202に変更したものである。電流遮断装置202は、実施例1の電流遮断装置40と同様に、ケース4の上側の壁の内面に配置されている。第1の形態でも、実施例1と同様に、負極タブ55b(図1参照)、電流遮断装置202、負極端子12b(図1参照)、の順に接続されることで、負極と負極端子12bとを接続する通電経路が形成されている。ケース4内の圧力が上昇した場合には、電流遮断装置202は、この通電経路を遮断する(後に詳しく説明する)。
電流遮断装置202は、変形板203、通電板204、接点板205、蓋体240、絶縁性の支持部材211、及び、カシメ部材220を備えている。また、電流遮断装置202は、絶縁体160をさらに備えている。絶縁体160については後に詳しく説明する。変形板203、通電板204、接点板205、及び蓋体240は、蓄電装置2の図12の下側(ケース4の内側)から、図12の上側(ケース4の外側)に向けて順に配置されている。
変形板203は、薄板のダイアフラムである。変形板203を形成する材料としては、例えば、金属を使用することができる。変形板203の外周部は、後述する絶縁性の支持部材211で固定されている。変形板203の外周部と、通電板204の外周部との間には、絶縁性のシール部材214が配置されている。これにより、変形板203の外周部と通電板204の外周部との間は電気的に絶縁されている。変形板203の中央部は受圧部222となっている。受圧部222の図12下側の面は、ケース4内の圧力を受けている。ケース4内の内圧が所定レベルを超えて上昇すると、受圧部222が変形する(後に詳しく説明する)。変形板203の中央部の上面には、接点板205の側に向けて突出する突起212が設けられている。突起212は、例えば、筒形状とすることができる。突起212の上側の面は、当接部224となっている。変形板203は、図12に示すように、ケース4内の圧力が電流遮断圧力値未満の状態では、ケース4の内側(図12下側)に膨出した状態となっている。
通電板204は、変形板203の上側に配置されている。図12に示すように、通電板204の中央部は、通電板204の外周部よりも上下方向の肉厚が薄くされている。通電板204の中央部の下面には、破断溝216が形成されている。破断溝216は、平面視で円環状に形成されている。破断溝216の断面形状は三角形である。但し、破断溝216の断面形状は他の形状(例えば半円等)であってもよい。また、破断溝216は、連続に形成されている。但し、破断溝216は、不連続に形成されていてもよい。破断溝216の直径は、平面視において当接部224の外周の直径よりわずかに大きい。通電板204は、破断溝216の内側に位置する移動側導電部117と、破断溝216の外側に位置する固定側導電部116とを有する。通電板204の外周部の一部(図12右側の端部)には、接続部材213が設けられている。接続部材213は、図示しない位置で電極組立体6と電気的に接続されている(後に詳しく説明する)。
接点板205は、通電板204の上側に配置されている。接点板205は、いわゆるダイアフラムである。接点板205は、具体的には導電性の平板形状の薄板である。接点板205の材料として、例えば導電性金属が使用できる。接点板205の外周部は、後述する絶縁性の支持部材211によって固定されている。接点板205の中央部223の下面と、上述の通電板204の上面とは接触している。詳しく述べると、接点板205の中央部223の下面と、移動側導電部117の上面とは接触している。また、接点板205の中央部223の下面と、固定側導電部116の上面(破断溝216の周囲に位置する部分)とも接触している。なお、接点板205の中央部223の下面と、通電板204の上面とは、溶着等により固着していてもよい。接点板205の外周部と通電板204の外周部との間には、絶縁性のシール部材217が設けられている。接点板205の外周部と通電板204の外周部とは互いに電気的に絶縁されている。
蓋体240は、接点板205の上側に配置されている。また、蓋体240は、絶縁シート34bの下側に配置されている。蓋体240は、本体部241と、本体部241の図12左側の端部に設けられた接続部材242とを有している。蓋体240の外周部(詳しくは、蓋体240の本体部241の外周部)は、絶縁性の支持部材211によって固定されている。本体部241の外周部の下面と、上述の接点板205の外周部の上面とは、互いに接触することにより電気的に接続されている。本体部241の下面には、上方に窪んだ凹部218が形成されている。これにより、ケース4内の圧力が上昇して接点板205が上方に変形した際に、接点板205と蓋体240との干渉が防止される。接続部材242は、図示しない位置で、負極端子12bと電気的に接続されている(後に詳しく説明する)。
変形板203、通電板204、接点板205、蓋体240のそれぞれの外周部の外側には、絶縁性の支持部材211が配置されている。支持部材211は、例えば、樹脂モールドで成形されている。支持部材211は、リング状に形成されている。支持部材211の内面は、断面形状において、支持部材211の内側に向けて開口した略U字形となっている。変形板203の外周部、シール部材214、通電板204の外周部、シール部材217、接点板205の外周部、及び蓋体240の外周部は、支持部材211の略U字状となっている内面に覆われている。これにより、変形板203、シール部材214、通電板204、シール部材217、接点板205、及び蓋体240が、互いに積層された状態で一体的に保持されている。また、これにより、ケース4内の空間と、電流遮断装置202内の空間との間のガスの流通が防止されている。支持部材211の外周面、及び上下の面を覆うように、金属製のカシメ部材220が配置されている。カシメ部材220は、支持部材211を上下に挟んだ状態で保持している。これにより、ケース4内の空間と、電流遮断装置202内の空間との間のガスの流通がさらに確実に防止されている。なお、電流遮断装置202の上端部と、ケース4の上側の壁の内面との間には、絶縁シート34bが配置されている。
第1の形態の蓄電装置1における通電経路について説明する。電極組立体6、通電板204の接続部材213、通電板204の中央部、接点板205の中央部223、接点板205の外周部、蓋体240の外周部、蓋体240の接続部材242、負極端子12bが順に電気的に接続されて直列な通電経路が形成されている(この通電経路を矢印221で示す)。
通電板204の図12下側には、絶縁体160が配置されている。絶縁体160は、板状に形成されており、図12の上から見て円形である。絶縁体160は、図12の上から見たとき、破断溝216と同心に配置されている。絶縁体160の直径は、破断溝216の直径よりも大きい。絶縁体160は、図12の上から見たときに破断溝216の内側に位置する部分である中央部160dと、破断溝216の外側に位置する部分である外周縁部160eとを有する。
絶縁体160の外周側には、第4実施例の絶縁体64の切り込み88(図10参照)と同様に、切り込み188が形成されている。切り込み188は、実施例4の絶縁体64の切り込み88と同様に放射状に形成されている。絶縁体160の平面図は、図10と同様となるので図示を省略する。なお、切り込み188は、第5実施例の絶縁体66の切り込み89(図11参照)と同様に、絶縁体160の半径線に対して斜めに形成されていてもよい。
絶縁体160の中央部160dの上側の面と、移動側導電部117の下側の面とは固定されている。固定方法は、例えば超音波溶着が使用できる。絶縁体160の外周縁部160eの上側の面と、固定側導電部116の下側の面とは固定されていない。外周縁部260eは、中央部260dから、固定側導電部116の表面に延在している。
ケース4内の圧力が上昇し電流遮断圧力値以上となると、変形板203が変形し図13の状態となる。すなわち、変形板203の受圧部222が上側(ケース4の外側)に向けて移動する。受圧部222が上側に移動することにより、突起212の当接部224が、絶縁体160の中央部160dの下側の面に衝突する。上述のように、通電板204の移動側導電部117は、絶縁体160の中央部160dの上側に固定されている。このため、当接部224が中央部160dに衝突すると、通電板204が、破断溝216の部分で破断される。破断溝216が破断することにより、通電板204の固定側導電部116と移動側導電部117とが分離し、移動側導電部117は上側に移動する。上述のように、移動側導電部117は接点板205の中央部223に接触している。このため、接点板205が変形する。これにより、接点板205の中央部223が上側に移動する。接点板205の中央部223が上側に移動することにより、上述の接点板205の中央部223と、固定側導電部116の上面(破断溝216の周囲に位置する部分)との接触部が分離する。その結果、負極端子12bと電極組立体6との間に電流が流れない状態となる。
また、通電板204が破断溝216の部分で破断されることにより、通電板204の移動側導電部117側と固定側導電部116側のそれぞれに破断面が形成される。以下の説明では、移動側導電部117側に形成される破断面を破断面117cと呼び、固定側導電部116側に形成される破断面を破断面116cと呼ぶ。
絶縁体160は、移動側導電部117の移動に伴って上側に移動する。絶縁体160は、移動側導電部117と一体となって上側に移動する。絶縁体160が上側に移動する際、絶縁体160の外周縁部160eが、固定側導電部116と干渉して弾性変形する。移動側導電部117が上側に移動する際、絶縁体160は弾性変形しつつ、破断溝216の内側(すなわち固定側導電部116に形成された破断面116cの内側)を通過する。移動側導電部117が、絶縁体160と固定側導電部116とが干渉しない位置に達すると、絶縁体160の弾性変形が回復する。これにより、絶縁体160が固定側導電部116の上側に位置している状態となる。この状態では、絶縁体160の外周縁部160eは、破断溝216の外側に位置している(図13)。また、この状態では、絶縁体160は、通電板204の移動側導電部117に形成された破断面117cと、通電板204の固定側導電部116に形成された破断面116cとの間に位置している。
本形態の蓄電装置2では、通電遮断後に振動が加わる等した場合にも、絶縁体160によって、固定側導電部116側の破断面116cと移動側導電部117側の破断面117cとの再接触が妨げられる。これにより、蓄電装置2が再び通電することが抑制される。
本形態の蓄電装置2では、変形板203により、通電板204と接点板205との接触部が電解液雰囲気中と遮断されている。これにより、電解液や周囲環境によって接触部が劣化することを抑制することができる。また、通電経路が破断してアーク(火花)が発生した場合にも、水素ガスが発生しているケース4内への影響を抑制することができる。
また、本形態の蓄電装置2では、変形板203に設けられた突起212の衝撃力が破断溝216の破断荷重のバラツキを補うため電流遮断圧力が安定する。
(他の形態2)
第2の形態の蓄電装置2は、第1の形態の蓄電装置2の電流遮断装置202を電流遮断装置402に変更したものである(図14)。第1の形態の蓄電装置2の電流遮断装置202では、絶縁体160の中央部160dの上側の面と、移動側導電部117の下側の面とが固定されていた。これに対して、第2の形態の電流遮断装置402では、絶縁体160の中央部160dの上側の面と、移動側導電部117の下側の面とは固定されていない。一方、絶縁体160の中央部160dの下側の面と、突起212の当接部224とが固定されている。
ケース4内の圧力が上昇すると、突起212が上側に移動する。これにより、絶縁体160が上側に移動する。絶縁体160が上側に移動して通電板204に衝突することにより、通電板204が破断溝216の部分で破断される。これにより、負極端子12bと電極組立体6との間の通電経路が遮断される。
本形態の蓄電装置2でも、第1の形態の蓄電装置2と同様に、ケース4内の圧力が上昇すると、絶縁体160が、通電板204の移動側導電部117に形成された破断面117cと、通電板204の固定側導電部116に形成された破断面116cとの間に位置する。このため、通電遮断後に振動が加わる等した場合に、絶縁体160によって、固定側導電部116側の破断面116cと移動側導電部117側の破断面117cとの再接触が妨げられる。これにより、蓄電装置2が再び通電することが抑制される。
(他の形態3)
第3の形態の蓄電装置2は、第1の形態の蓄電装置2の電流遮断装置202を電流遮断装置302に変更したものである(図15、図16)。本実施例の電流遮断装置302は、絶縁体362を有する。絶縁体362は、第1の形態における絶縁体160と同様に絶縁性を有し、かつ弾性を有する材質で形成されている。絶縁体362は、第1の形態における絶縁体160とは異なり、通電板204の図15上側(接点板405と通電板204との間の位置)に配置されている。絶縁体362は、図15上側から見て円形の板状であり、中央部に円形の開口部381を有する。
絶縁体362の開口部381側の辺縁部には、第2実施例の絶縁体62の切り込み80(図6参照)と同様に、切り込み380が形成されている。なお、絶縁体362の平面図は、図6と同様となるので図示を省略する。切り込み380は、それぞれ開口部381から絶縁体362の外周縁部362e(外周縁部362eについては後述する)の方向に向かう放射状であり、複数形成されている。なお、切り込み380は、第3実施例の絶縁体68の切り込み82(図7参照)と同様に、絶縁体362の半径線に対して斜めに形成されていてもよい。後述する突起部364は、開口部381の内側に位置している。つまり、絶縁体362は、突起部364を取り囲むように配置されている。
絶縁体362の外周側の辺縁部の下面は、通電板204の上面に固定されている。絶縁体362の開口部381の直径は、破断溝216の直径(すなわち移動側導電部117の外周の直径)よりも小さい。絶縁体362は、図4の上から見たときに破断溝216の内側に位置する部分である中央部362dと、破断溝216の外側に位置する部分である外周縁部362eとを有する。絶縁体362の外周縁部362eの下側の面は、通電板204(詳しくは、通電板204の固定側導電部116)の上側の面と固定されている。一方、絶縁体362の中央部362dの下側の面は、通電板204(詳しくは、通電板204の移動側導電部117)の上側の面と固定されていない。中央部362dは、外周縁部362eから、移動側導電部117の表面に延在している。
第1の形態の電流遮断装置202は接点板205を備えていた。これに対して本形態の電流遮断装置302は接点板405を備えている。接点板405の中央部423の中心には、下側に突出した突起部364が形成されている。突起部364の下面と移動側導電部117の上面とは接触している。また、突起部364の下面と移動側導電部117の上面とは溶着されていてもよい。突起部364の下面と移動側導電部117の上面とが接触することにより、通電板204と接点板405とが電気的に接続されている。
第3の形態の電流遮断装置302でも、第1の形態の電流遮断装置202と同様に、ケース4内の圧力が上昇し電流遮断圧力値以上となると、変形板203が変形する(図16の状態となる)。第1の形態の電流遮断装置202では、受圧部222が上側に移動することにより、突起212の当接部224が、絶縁体160の中央部160dの下側の面に当接した。これに対して、本形態の電流遮断装置302では、突起212の当接部224が、通電板204の下面(詳しくは、通電板204の移動側導電部117の下面)に衝突する。突起212の当接部224が、通電板204の下面に衝突することにより、通電板204の破断溝216が破断する。これにより、負極端子12bと電極組立体6との間の通電経路が遮断され、負極端子12bと電極組立体6との間に電流が流れない状態となる。移動側導電部117が上側に移動する際に、移動側導電部117と絶縁体362の中央部362dとが干渉する。絶縁体362は、移動側導電部117との干渉によって弾性変形する。切り込み380は、絶縁体362と移動側導電部117との干渉によって、切り込み380の開口部381側が広がるように変形する。
移動側導電部117が、移動側導電部117と絶縁体362とが干渉しない位置に達すると、絶縁体362の弾性変形が回復する。これにより、絶縁体362が移動側導電部117の下側に位置している状態となる。この状態では、絶縁体362の中央部362dは、破断溝216の内側に位置している(図16)。この状態では、絶縁体362は、通電板204の移動側導電部117の破断面117cと、固定側導電部116の破断面116cとの間に位置している。
第3の形態の蓄電装置2では、通電遮断後に振動が加わる等した場合にも、絶縁体362によって、固定側導電部116側の破断面116cと移動側導電部117側の破断面117cとの再接触が妨げられる。これにより、蓄電装置2が再び通電することが抑制される。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組合せに限定されるものではない。
例えば、各実施例において、第2リード10bの開口部11は無くてもよい。同様に、通気孔37も無くてもよい。また、導電部材14の脆弱部20としての溝は、断面が三角形でなくてもよく、板厚が薄くなっていればよい。また、他の第1〜第3の形態において、変形板と通電板とは、外縁部で溶接されていてもよい。この場合、溶接によって気密性が確保しておけば、シール部材214は不要である。また、本明細書または図面に例示した技術は複数の目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。