以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
−内燃機関の全体構成−
まず、図1を参照して、本発明を適用する内燃機関(以下、エンジンともいう)について説明する。この例のエンジン1は、車両に搭載される4気筒ガソリンエンジンであって、シリンダブロック1aに形成された4つの気筒(図1には1気筒のみを示す)それぞれにピストン1cが収容されており、その往復運動はコネクティングロッド16を介してクランクシャフト15の回転運動に変換される。
クランクシャフト15には、図2(a)に拡大して示すようにシグナルロータ17が取り付けられており、その外周面には複数の歯17aが等角度毎に設けられるとともに、その歯17aが欠落した欠け歯部17bも設けられている。図示の例ではシグナルロータ17には10°毎に34枚の歯17aが設けられていて、そのうちの2枚分が欠落した欠け歯部17bの角度範囲は30°になっている。
そして、シグナルロータ17の側方近傍には、クランクシャフト15の回転角、即ちクランク位置を検出するためのクランクポジションセンサ31が配置されている。クランクポジションセンサ31は、例えば電磁ピックアップであって、クランクシャフト15が回転する際にシグナルロータ17の歯17aの通過に応じてパルス状の信号(以下、クランク信号という)を出力する。
クランクポジションセンサ31から出力されたクランク信号は後述するECU200に入力され、エンジン回転数の算出に用いられる。また、ECU200においてクランク信号は、以下に説明するカム信号とともに720°、即ちクランクシャフト15の2回転を1周期とするクランクカウンタの生成に用いられる(図3を参照)。エンジン1の運転中にはクランクカウンタに基づいて種々の制御が実行される。
また、クランクシャフト15には、エンジン1の始動時に起動されるスタータモータ10が接続されるようになっており、このスタータモータ10によってクランクシャフト15を強制的に回転させる(クランキング)ことができる。このクランクシャフト15を覆うようにシリンダブロック1aの下端には、潤滑油(エンジンオイル)を貯留するオイルパン18が設けられている。
一方、シリンダブロック1aの上端にはシリンダヘッド1bが締結されて、各気筒毎の燃焼室1dの上端を閉ざしている。シリンダヘッド1bには点火プラグ3が配置されており、これによる点火のタイミングを調整するイグナイタ4は、ECU200によって制御される。また、4つの気筒を取り囲むシリンダブロック1aの側壁にはエンジン水温センサ32が配置されている。
前記燃焼室1dには吸気通路11と排気通路12とがそれぞれ連通され、新気の吸入と燃焼ガスの排気とを行う。吸気通路11の下流側(吸気流れの下流側)はシリンダヘッド1bに形成された吸気ポート11aであり、その下流端には燃焼室1dに臨んで吸気弁13が配設されている。一方、吸気ポート11aの上流端にはインテークマニホールド11bが接続され、その上流側にはサージタンク11cが設けられている。
サージタンク11cよりも上流の吸気通路11には、エアクリーナ7、エアフロメータ33(吸気温センサ34を内蔵)、スロットルバルブ5などが配置されている。スロットルバルブ5はスロットルモータ6によって駆動され、エンジン1の吸入空気量を調整する。スロットルバルブ5の開度はスロットル開度センサ35によって検出され、ECU200がスロットルモータ6を制御して、エンジン1の運転状態に応じて好適な吸入空気量となるようにスロットル開度をフィードバック制御する。
また、各気筒毎に吸気ポート11aにはインジェクタ(燃料噴射弁)2が配置されている。これらのインジェクタ2は共通のデリバリパイプ101に接続され、燃料供給系100から燃料が供給される。一例として燃料供給系100は、デリバリパイプ101に接続された燃料供給管102、燃料ポンプ103および燃料タンク104などを備えている。
インジェクタ2はECU200によって制御され、吸気ポート11a内に燃料を噴射する。この燃料は吸気と混合されて、吸気弁13の開弁に伴い各気筒内の燃焼室1dに導入される。そして、気筒の圧縮行程の終盤に点火プラグ3によって点火されて、混合気が燃焼・爆発すると、高温高圧の燃焼ガスがピストン1cを押し下げた後に、排気弁14の開弁に伴い排気通路12に排出される。
排気通路12の上流側(排気流れの上流側)はシリンダヘッド1bに形成された排気ポート12aであり、その上流端は燃焼室1dに臨んで吸気弁14が配設されている。一方、排気ポート12aの下流端にはエキゾーストマニホールド12bが接続され、それよりも下流の排気通路12には触媒8が配設されている。触媒8の上流側には空燃比センサ37が、また下流側にはO2センサ38がそれぞれ配置され、これらのセンサ37,38の出力がECU200にフィードバックされて、空燃比の制御に供される。
前記のように4つの気筒のそれぞれにおいて好適なタイミングで吸気および排気を行うために、吸気弁13および排気弁14を同期して開閉させる動弁系が設けられている。一例として本実施形態ではDOHCタイプの動弁系を備え、図示しないチェーンなどを介してクランクシャフト15により回転される吸気側および排気側の各カムシャフト21,22によって、吸気弁13および排気弁14がそれぞれ所定のタイミングで開閉される。
すなわち、吸気カムシャフト21および排気カムシャフト22はそれぞれ、クランクシャフト15の1/2の回転速度で回転し、ピストン1cが吸気、圧縮、膨張および排気の各行程を行う間に1回転して、それぞれの気筒の吸気行程で吸気弁13を開き、排気行程で排気弁14を開くようになっている。言い換えると各カムシャフト21,22は、クランクシャフト15が2回転(720°回転)する1燃焼サイクル毎に、1回転する。
こうして回転する吸気カムシャフト21の近傍には、その回転位相(即ち吸気側のカム位相)を検出するために、カム信号を生成するカムポジションセンサ39が設けられている。具体的には図2(b)に示すように吸気カムシャフト21には、外周に複数の突出部23a〜23cが形成されたタイミングロータ23が取り付けられており、その側方近傍にカムポジションセンサ39が配置されている。
このカムポジションセンサ39は、磁気抵抗素子型(Magneto Resistive Element:MRE)のセンサであって、タイミングロータ23の回転に伴い、図の例では3つの突出部23a〜23cがそれぞれ通過するのに対応して、図3に示すような矩形波状の信号(カム信号)を出力する。すなわち、各突出部23a〜23cの通過に応じてカムポジションセンサ39は、タイミングロータ23の回転角に対応する期間、ハイ(Hi)信号を出力し、隣り合う突出部の間ではロー(Lo)信号を出力する。
前記したように吸気カムシャフト21の1回転は、クランクシャフト15の2回転に対応するので、突出部23aの通過に対応してカム信号は、例えばクランク角で180°の期間、Hiになる。次に2つの突出部23a,23bの間でクランク角では例えば60°の期間、Loになり、突出部23bの通過に対応してクランク角では例えば120°の期間、Hiになる、というようにカム信号はHi,Loの反転を繰り返す。
このようなカム信号の出力(Hi,Lo)およびその反転の際の出力(Hi→Lo、Lo→Hi)から、タイミングロータ23の回転角、即ち吸気側のカム位相を検出することができる。そして、そのカム信号とクランク信号とを用いてクランクカウンタを生成し、このクランクカウンタに基づいて後述の燃料噴射や点火およびVVT40の制御などを好適なタイミングで行うことができる。
具体的に図3に示す例では、クランクカウンタは、第1気筒#1の圧縮上死点(TDC)を基準(0)として生成される。このときカムポジションセンサ39は、タイミングロータ23の突出部23bの終端部のエッジの通過に対応して、Hi→Loの信号(カムエッジ信号)を出力し、このカムエッジ信号の入力に応じてECU200はクランクカウンタをリセットする。
その後、クランクカウンタはクランク信号の入力に応じてカウントアップされる。なお、クランクカウンタは、クランク信号の入力する10°CA毎にカウントアップされる10°CAカウンタと、クランク信号が3回、入力する毎に(30°CA毎に)カウントアップされる30°CAカウンタとがあり、エンジン1の始動時やアイドル運転時など所定の低回転域では10°CAカウンタが用いられ、それ以外の回転域では30°CAカウンタが用いられる。
図3の例では10°CAカウンタの値で12〜14および48〜50の部分が、シグナルロータ17の欠け歯部17bに相当し、ここではクランク信号が所定期間、抜け落ちることによって、ECU200が欠け歯部であることを検出できる。このクランクカウンタの欠け歯相当部においてカム信号がHiであれば、ECU200は10°CAカウンタの値が12〜14(30°CAカウンタの値は4)であると認識し、カム信号がLoであれば、10°CAカウンタの値が48〜50(30°CAカウンタの値は5)であると認識する。
そして、クランクシャフト15が2回転して10°CAカウンタが、欠け歯相当部における疑似カウントを含めて71カウントされた後に(または30°CAカウンタが23カウントされた後に)、それらのカウンタ値が零にリセットされる(720→0°CA)。このようにクランクカウンタは、互いに180°CAずつ位相のずれた4つの気筒が、順番に(図の例では第1、第3、第4および第2の順に)1回の燃焼サイクルを行う間、カウントアップされる。
また、図1にのみ仮想線で示すが、本実施形態では吸気カムシャフト21に可変動弁機構40(以下、VVTと略称する)が取り付けられており、その動作によって吸気カムシャフト21の回転位相(カム位相)を変化させて、吸気弁13の開閉するタイミングを進角側、遅角側に連続的に変化させることができる。VVT40については種々の構成が公知であるから、その具体的な説明は省略するが、本実施形態ではVVT40は電動式であり、その動作もECU200によって制御される。
−ECU−
ECU200は、図示は省略するが、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)およびバックアップRAMなどを備えた公知のものである。CPUは、ROMに記憶された各種制御プログラムやマップに基づいて各種の演算処理を実行する。また、RAMは、CPUでの演算結果や各センサから入力されたデータ等を一時的に記憶し、バックアップRAMは、例えばエンジン1の停止時にその保存すべきデータ等を記憶する。
ECU200には、前記したクランクポジションセンサ31、エンジン水温センサ32、エアフロメータ33、吸気温センサ34、スロットル開度センサ35、空燃比センサ37、O2センサ38、カムポジションセンサ39が接続されている。この他、ECU200には、アクセル開度センサ36、車両のイグニッションスイッチ(IG−SW)48、スタータスイッチ(スタータSW)49なども接続されている。
そして、ECU200は、前記の各種センサおよびスイッチなどから入力する信号に基づいて各種制御プログラムを実行し、各気筒毎のインジェクタ2、イグナイタ4、スロットルモータ6、スタータモータ10、およびVVT40などの制御を実行する。例えば、ECU200は、クランクカウンタに基づいて認識される各気筒毎の好適なタイミングでインジェクタ2による燃料の噴射制御や点火プラグ3による点火制御を実行する。
また、ECU200は、アクセル開度センサ36からの信号やエンジン回転数に基づいてスロットル開度を制御し、吸気弁13の開閉するタイミングがエンジン1の運転状態に応じた好適なものとなるようにVVT40を制御する。ECU200は、スタータSW49がオン操作されるとスタータモータ10を動作させ、エンジン1のクランキングを開始するとともに、始動時の燃料噴射および点火の制御も開始して、エンジン1を始動させる。
さらに、以下に説明するようにECU200は、車両の停止時など所定の状況下においてIG−SW48の操作に依らず、自動的にエンジン1を停止させるとともに、その後の乗員の所定操作に応じて、スタータSW49の操作に依らず自動的にエンジン1を再始動させるスタートアンドストップ制御(S&S制御)も実行する。
−S&S制御−
図4には、S&S制御の全体的な処理の流れを示している。この処理ルーチンはECU200において所定の時間間隔で繰り返し実行されるものであり、まず、ステップST101において、エンジン1の運転中に所定のアイドルストップ条件が成立したか否か判定する。そして、否定判定(NO)であればリターンする一方、肯定判定(YES)になればステップST102に進んでエンジン1の自動停止処理を実行する。
なお、前記のアイドルストップ条件としては、一例としてIG−SW48がオンであること、アクセルオフ(アクセル開度が所定閾値以下でほぼ0)であること、ブレーキ踏力が所定の閾値以上であること、車両停止状態(車速が所定閾値以下でほぼ0)であること、などを含むように設定すればよい。
そして、前記ステップST102の停止制御により、インジェクタ2からの燃料噴射と点火プラグ3による点火とを停止させ、これによりクランクシャフト15の回転が完全に停止したか否か判定する(ステップST103)。この判定が否定判定(NO)であれば待機する一方、肯定判定(YES)になればステップST104に進んで、クランクカウンタの値を停止クランク位置として記憶する。
その後、ECU200は、所定のアイドルストップ解除条件が成立するまで待機する。すなわち、ステップST105においてアイドルストップの解除条件が成立したかどうか判定し、否定判定(NO)であればステップST106に進んで、IG−SW48がオフになったなどのS&S制御の終了条件の成立を判定する。この条件の成立について肯定判定(YES)であれば処理を終了する(END)。
一方、S&S制御の終了条件が成立しておらず否定判定(NO)であれば前記のステップST105に戻る。そして、アイドルストップの解除条件が成立したと肯定判定(YES)すれば、ステップST107に進んでエンジン1の再始動処理を実行する。なお、アイドルストップの解除条件としては例えば、ブレーキペダルの踏力が緩められて所定の閾値よりも小さくなったこと、シフトレバーの所定の操作がなされたこと、などを含むように設定すればよい。
前記の再始動処理について詳しくは以下に説明するが、ECU200はスタータモータ10を作動させてクランキングを開始するとともに、インジェクタ2による燃料の噴射を開始させ、さらに点火プラグ3による点火制御も開始する。そして、いずれかの気筒において燃焼が始まり(初爆)、これによりエンジン回転数が所定値まで上昇して始動完了と判定すれば(ステップST108でYES)、処理を終了する(END)
−再始動処理の詳細−
次に、前記ステップST107における再始動処理について詳細に説明する。図5に模式的に示すように、エンジン1の4つの気筒はそれぞれ吸気、圧縮、膨張および排気の各行程の途中で停止しており、そのうちで最初のTDC(1stTDC)を迎えるのは圧縮行程で停止している第3気筒#3であるが、この気筒には再始動の際に燃料を供給することができない。つまり、1stTDCは点火不能である。
そこで、再始動時に2番目にTDC(2ndTDC)を迎える気筒、即ち、図の例では吸気行程の途中で停止している第4気筒#4のインジェクタ2に燃料を噴射させるとともに、クランキングを開始してピストン1cを下降させ、気筒内の燃焼室1dに混合気を吸入させる。そして、その後の圧縮行程の終盤からTDC(2ndTDC)にかけて点火(符号Sとして示す)することにより、始動時間の短縮を図ることができる。
すなわち、通常のエンジン始動時であれば、クランキングの開始と共にカウントアップするクランクカウンタ(10°CAカウンタ)の値を、その欠け歯相当部において確定し、その後に点火制御を開始することになるが、S&S制御の場合は、前記したようにエンジン1の自動停止の際にクランクカウンタの値(停止クランク位置)を記憶しているので、欠け歯相当部が現れる前にクランクカウンタを確定することが可能になる。
より具体的には図6に示すように、第4気筒#4が吸気行程の途中で停止していて、停止クランク位置が10°CAカウンタの値で「9」のとき、クランキングによって最初(1番目)にカムエッジ信号が入力するであろうクランク位置(予測クランク位置)は、10°CAカウンタの値で「23」と予測される。なお、図の例では、10°CAカウンタの値が「12」のときに最初に欠け歯相当部が現れるが、このときにはクランキングの開始直後であるため検出できない。
そのため、次の欠け歯相当部(10°CAカウンタが「48〜50」)が現れるまでクランクカウンタ(10°CAカウンタ)を確定できないとすれば、点火制御の開始が遅れてしまう。これに対し本実施形態では、前記の予測クランク位置「23」において実際にカムエッッジ信号が入力すれば、この時点でクランクカウンタの信頼性が高いと判定して、これを確定することができる。
以下に図7のフローチャートを参照し、再始動処理について具体的に説明する。まず、ステップST201では2ndTDC点火の前提条件が成立しているか否か判定する。この前提条件は例えば、エンジン1が迅速な再始動に好適なクランク位置に停止していること、VVT40が迅速な再始動に好適な位置に停止していること、クランクポジションセンサ31やカムポジションセンサ39などが故障していないこと、などを含むように設定すればよい。
このような前提条件が成立しておらず、否定判定(NO)になれば、前記のように2ndTDCでの点火を行って始動時間の短縮を図るのではなく、始動性の確保を優先して後述のステップST211へ進む。一方、肯定判定(YES)であればステップST202へ進み、ECU200のRAMに記憶されている停止クランク位置から、クランキングによって最初(1番目)にカムエッジ信号が入力するであろうクランク位置を予測する。
例えば、図6を参照して前述したように、停止クランク位置が10°CAカウンタの値で「9」であれば、同「23」が予測クランク位置になる。なお、この最初のカムエッジ信号を検出し損ねた場合やノイズによる誤認なども考慮して、その次に(2番目に)カムエッジ信号が入力するであろうクランク位置も予測する。図6の例では、次のカムエッジ信号の予測クランク位置は、10°CAカウンタの値で「41」になる。
続いてステップST203では、前記の予測クランク位置の進角側および遅角側にそれぞれ10〜20°CAの余裕を持たせて、予測クランク位置を含む所定の範囲を、カムエッジ信号の入力するであろう予測クランク範囲とする。こうして余裕を持たせるのは、動弁系のスプロケットやチェーンなどの部品の公差やその組み付け公差を考慮したものである。
例えば図8(a)に模式的に示すように、前記1番目のカムエッジ信号の入力する予測クランク位置「23」(図にはクロスハッチで示す)に対して、予測クランク範囲は「22〜25」(斜めハッチで示す)と設定される。すなわち、予測クランク位置「23」を進角側に一つ、遅角側には二つ拡大して予測クランク範囲を設定する。こうして遅角側により広い範囲を設定するのは、動弁系のチェーンが経年変化によって延びると、カム位相が遅角側に変化することを考慮したものである。
続いてステップST204では、エンジン1の停止から再始動までの間のVVT40の動作状態に応じて、前記の予測クランク範囲を変更する。例えば、VVT40を進角(または遅角)動作させた場合、カム位相が進角(または遅角)側に変化する分、カムエッジ信号の入力するクランク位置も進角(または遅角)側に変化するから、これに応じて予測クランク範囲を進角側(または遅角)に変更する。
なお、そのようにVVT40を動作させるのはエンジン1の始動性を確保するためである。例えば、前記のステップST201でエンジン1の停止クランク位置やVVT40の停止位置をチェックした上で、現在の温度状態なども加味してVVT40を進角側に動作させれば、気筒の有効圧縮比を高めにして着火性を向上できる。一方、停止クランク位置によっては気筒の充填効率が高めになることがあり、このときに再始動時の温度も高めになっていれば、反対にVVT40を遅角側に動作させて有効圧縮比を低下させることにより、プレイグニッションの抑制が図られる。
前記の予測クランク範囲の変更について具体的には、例えば図8(b)に模式的に示すように、一例としてVVT40が15°CA進角動作した場合でも、クランク信号が10°CA刻みであるため、VVT進角量の1の位は切り捨てて、予測クランク位置は「1」だけ進角させる。つまり、予測クランク位置は「23」から「22」に変更され、これに伴い予測クランク範囲の遅角側限度は「25」から「24」に変更される。
一方、予測クランク範囲の進角側限度は「22」から「21」に変更されるのではなく、図示のように「20」に変更される。すなわち、前記のようにVVT進角量の1の位を切り捨てる場合、10°CAカウンタの値の変更量が「1」であっても実際のVVT進角量は10〜19°CAであることを考慮して、予測クランク範囲は進角側に一つ余分に拡大するのである。
このように本実施形態では、予測クランク位置を進角側に補正する際には、進角量の1の位を切り捨てて、予測クランク範囲の全体を進角させるとともに、その進角側限度は一つ余分に進角させる。同様に遅角側に補正する際にも遅角量の1の位は切り捨てて、予測クランク範囲の全体を遅角させるとともに、その遅角側限度を一つ余分に遅角させるようにしている。
ところで、図6などに表れているように本実施形態では、カムエッジ信号の一つが10°CAカウンタの値で「47」のクランク位置で入力するようになっており、仮に停止クランク位置が10°CAカウンタの「43〜46」辺りであると、その「47」のカムエッジ信号が始動時の最初のカムエッジ信号になる。つまり、予測クランク位置は「47」になり、予測クランク範囲は「46〜49」になる。
そして、仮にVVT40が進角側に前記と同じ15°CA動作すると、これに応じて予測クランク範囲は、図9に斜めハッチで示すように「44〜48」に変更されることになるが、「48」は欠け歯相当部に重なっている。すなわち、クランク角で480°CAのクランク信号が入力した後、490°CAおよび500°CAのクランク信号は実際には入力しないため、このときに入力したカムエッジ信号が予測クランク範囲にあるかどうか正確には判定できなくなってしまう。
この点を考慮して本実施形態では、前記の予測クランク範囲「44〜48」の遅角側限度「48」を、欠け歯相当部の遅角側限度「50」を越えるように、図の例では「51」まで拡大する。こうすれば、予測クランク範囲「44〜51」の進角側限度「44」が欠け歯相当部の進角側限度「48」を越えるとともに、遅角側限度「51」も欠け歯相当部の遅角側限度「50」を越えることになる。これにより、カムエッジ信号と予測クランク位置との整合をチェックできるようになる。
前記のように予測クランク範囲を変更した後にECU200は、まず、吸気行程で停止している第4気筒#4のインジェクタ2に燃料の噴射を行わせ(ステップST205)、スタータモータ10を作動させてクランキングを開始するとともに、前記の停止クランク位置を初期値としてクランクカウンタ(10°CAカウンタ)のカウントアップを開始する(ステップST206)。
続いてステップST207では、クランク信号が所定期間、抜け落ちる欠け歯相当部が現れたか否か判定し、肯定判定(YES)であれば後述のステップST209に進んでクランクカウンタ(10°CAカウンタ)を確定する。図6を参照して前述したように、例えば停止クランク位置が10°CAカウンタの「9」である場合、同「12〜14」の欠け歯相当部は検出できないので、クランキングの開始後、暫くの間は否定判定(NO)して、ステップST208に進む。
そして、ステップST208では前記の予測クランク範囲においてカムエッジ信号が入力したか否か判別する(カムエッジ信号と予測クランク位置とが整合?)。この結果、肯定判定(YES)であればステップST209に進んでクランクカウンタを確定し、このクランクカウンタに基づいて第4気筒#4への点火(2ndTDC点火)制御を開始して(ステップST210)、処理を終了する(END)。
一方、前記のステップST208においてカムエッジ信号と予測クランク位置との整合が否定判定(NO)された場合は、ステップST211に進んで点火制御の開始を遅延する。すなわち、第4気筒#4への点火(2ndTDC点火)は行わず、次のカムエッジ信号の予測クランク範囲(10°CAカウンタの「41」を含む範囲)において整合が肯定判定されたときにクランクウンタを確定して、第4気筒#4の次の点火順の第2気筒#2への点火(再始動時の3rdTDCでの点火)を実行することになる。
以上、説明した再始動処理のルーチンは、ECU200により燃料噴射や点火など種々の制御プログラムが同期して実行されることによって、実現される。言い換えると本実施形態の内燃機関の制御装置は、主としてECU200によって構成されている。そして、一例を図10のタイムチャートに示すように、アイドルストップしたエンジン1の再始動時には、クランクカウンタの早期確定によって始動時間の短縮が図られる。
具体的には図10の時刻t1において、例えばブレーキ踏力が緩められることによって再始動要求が発生し(始動要求ON)、これに応じて再始動処理が開始されると、まず、吸気行程で停止している気筒(例えば第4気筒#4)のインジェクタ2による燃料噴射が行われる。そして、クランキングが開始されるとともに、クランクカウンタ(10°CAカウンタ)のカウントアップが開始される(時刻t2)。また、排気行程で停止している気筒(例えば第2気筒#2)のインジェクタ2による燃料噴射も行われる(時刻t3)。
そうしてクランキングが開始された直後はクランクシャフト15の回転が極めて遅いことから、クランク信号からはシグナルロータ17の欠け歯部17bを識別することができない。このため、図6を参照して前述したように10°CAカウンタの値で「12〜14」の欠け歯相当部(図の時刻t4に仮想線で欠け歯検出ONと示す)を検出することはできず、この欠け歯相当部によるクランクカウンタの確定は行われない。
そして、時刻t5に最初のカムエッジ信号が入力すると、このときのクランクカウンタの値が予測クランク範囲(図10にはAとして示す)にあることから、カムエッジ信号と予測クランク位置との整合が肯定されて、クランクカウンタが確定される。これにより、第4気筒#4への2ndTDC点火が実行されて(時刻t6)、エンジン回転数が立ち上がる(始動完了)。
したがって、本実施形態のエンジン1においては、S&S制御の際に停止クランク位置に基づいて、カムエッジ信号の入力するクランク位置を予測し、この予測クランク位置と実際にカムエッジ信号の入力したクランク位置とが整合すれば(予測クランク範囲にカムエッジ信号が入力すれば)、クランクカウンタを早期に確定することができる。これにより迅速なエンジン再始動が可能になる。
具体的に前記図10のタイミングチャートにおいて、従来一般的な欠け歯相当部に基づくクランクカウンタの確定を待つとすると、時刻t7における欠け歯相当部(図6に示す10°CAカウンタの「48〜50」の欠け歯相当部)が検出されるまで、クランクカウンタを確定できない。よって、本実施形態によれば図にΔtとして示す時間だけ早くクランクカウンタを確定でき、始動時間を短縮できる。
しかも、本実施形態では、前記のように停止クランク位置に基づいて予測した予測クランク位置を、エンジン1の自動停止から再始動までの間のVVT40の動作状態に応じて変更し、これによるカム位相の変化を織り込むようにしているので、この予測クランク位置と実際にカム信号が入力したクランク位置との整合について正確にチェックすることができる。つまり、早期にかつ間違いのないクランクカウンタの確定が可能になって、エンジン1の迅速な始動を図りつつ、高い始動性を安定的に確保できる。
−他の実施形態−
前記した実施形態の記載はあくまで例示に過ぎず、本発明の構成や用途などについても限定することを意図しない。例えば前記の実施形態では電動式のVVT40を吸気側のカムシャフト21に配設しているが、これには限定されず、例えば油圧動作式のVVTであってもよいし、電動式または油圧動作式のVVTを排気側のカムシャフト22に配設してもよい。
さらに、前記の実施形態では、本発明をポート噴射式のエンジン1に適用した例について説明したが、これに限ることなく本発明は、筒内直噴式のエンジンにも適用可能であるし、ポート噴射および筒内噴射の両方の燃料噴射弁を備えたエンジンにも適用可能である。また、実施形態のような4気筒エンジンにも限定されず、6気筒など任意の気筒数のエンジンにも本発明は適用できるし、直列多気筒エンジンにも限らず、V型多気筒エンジンにも本発明は適用可能である。