JP6048169B2 - オーステナイト系耐熱合金部材およびオーステナイト系耐熱合金素材 - Google Patents
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質量%で、C:0.01〜0.15%、Si:1%以下、Mn:2%以下、P:0.03%以下、S:0.01%以下、Ni:40〜55%、Cr:20〜35%、W:3〜10%、Ti:0.01〜1.2%、Al:0.3%以下、B:0.0001〜0.01%、N:0.02%以下およびO:0.01%以下を含み、残部がFeおよび不純物からなる化学組成を有し、
表層がASTM粒度番号7番以上の再結晶粒からなる金属組織を有し、
部材の厚さ中央部がASTM粒度番号4番以下の結晶粒からなる金属組織を有することを特徴とするオーステナイト系耐熱合金部材。
第1群:Ca:0.05%以下およびREM:0.1%以下
第2群:Co:1%以下、Cu:1%以下、Mo:1%以下、V:0.5%以下、Nb:0.5%以下およびZr:0.5%以下
部材の厚さ中央部がASTM粒度番号4番以下の結晶粒からなる金属組織を有するオーステナイト系耐熱合金部材を製造するのに用いられるオーステナイト系耐熱合金素材であって、
厚さが20mm以上であり、
質量%で、C:0.01〜0.15%、Si:1%以下、Mn:2%以下、P:0.03%以下、S:0.01%以下、Ni:40〜55%、Cr:20〜35%、W:3〜10%、Ti:0.01〜1.2%、Al:0.3%以下、B:0.0001〜0.01%、N:0.02%以下およびO:0.01%以下を含み、残部がFeおよび不純物からなる化学組成を有し、
前記素材の表層の硬さがHV0.1で300以上であることを特徴とするオーステナイト系耐熱合金素材。
第1群:Ca:0.05%以下およびREM:0.1%以下
第2群:Co:1%以下、Cu:1%以下、Mo:1%以下、V:0.5%以下、Nb:0.5%以下およびZr:0.5%以下
C:0.01〜0.15%
Cは、オーステナイトを安定にするとともに粒界に微細な炭化物を形成し、高温でのクリープ強度を向上させる。この効果を十分に得るためには、0.01%以上のC含有量が必要である。しかしながら、Cが過剰に含有された場合には、炭化物が粗大となり、かつ多量に析出するので、粒界の延性が低下し、さらに、靱性およびクリープ強度の低下も生じる。したがって、上限を設け、Cの含有量を0.01〜0.15%とする。C含有量の望ましい下限は0.03%、より望ましい下限は0.04%、さらに望ましい下限は0.05%である。また、C含有量の望ましい上限は0.12%、より望ましい上限は0.10%である。
Siは、脱酸作用を有するとともに、高温での耐食性および耐酸化性の向上に有効な元素である。しかしながら、Siが過剰に含有された場合にはオーステナイトの安定性が低下して、靱性およびクリープ強度の低下を招く。そのため、Siの含有量に上限を設けて1%以下とする。Siの含有量は望ましくは0.8%以下、より望ましくは0.6%以下である。
Mnは、Siと同様、脱酸作用を有する。Mnは、オーステナイトの安定化にも寄与する。しかしながら、Mnの含有量が過剰になると脆化を招き、さらに、靱性およびクリープ延性の低下も生じる。そのため、Mnの含有量に上限を設けて2%以下とする。Mnの含有量は望ましくは1.8%以下、より望ましくは1.5%以下である。
Pは、不純物として合金中に含まれ、多量に含まれる場合には、熱間加工性および溶接性を著しく低下させ、さらに、長時間使用後のクリープ延性も低下させる。そのため、Pの含有量に上限を設けて0.03%以下とする。Pの含有量は、望ましくは0.025%以下、より望ましくは0.02%以下である。
Sは、Pと同様に不純物として合金中に含まれ、多量に含まれる場合には、熱間加工性および溶接性を著しく低下させ、さらに、長時間使用後のクリープ延性も低下させる。そのため、Sの含有量に上限を設けて0.01%以下とする。Sの含有量は、望ましくは0.008%以下、より望ましくは0.005%以下である。なお、Sの含有量は可能な限り低減することが好ましい。
Niは、オーステナイトを得るために有効な元素であり、長時間使用時の組織安定性を確保するために必須の元素である。後述の20〜35%という本発明のCr含有量の範囲で、上記したNiの効果を十分に得るためには、40%以上のNi含有量が必要である。しかしながら、Niは高価な元素であり、多量に含有させるとコストの増大を招く。そのため、上限を設けて、Niの含有量を40〜55%とする。Ni含有量の望ましい下限は41%、より望ましい下限は42%である。また、Ni含有量の望ましい上限は54%、より望ましい上限は53%である。
Crは、高温での耐酸化性および耐食性の確保のために必須の元素である。上記40〜55%という本発明のNi含有量の範囲で、上記したCrの効果を得るためには、20%以上のCr含有量が必要である。しかしながら、Crの含有量が35%を超えると、高温でのオーステナイトの安定性が劣化してクリープ強度の低下を招く。したがって、Crの含有量を20〜35%とする。Cr含有量の望ましい下限は20.5%、より望ましい下限は21%である。また、Cr含有量の望ましい上限は34.5%、より望ましい上限は34%である。
Wは、マトリックスに固溶して高温でのクリープ強度の向上に大きく寄与する元素である。その効果を十分に発揮させるためには少なくとも3%以上のW含有量が必要である。しかしながら、Wを過剰に含有させても効果は飽和し、却ってクリープ強度を低下させる場合もある。さらに、Wは高価な元素であるため、過剰に含有させるとコストの増大を招く。そのため、上限を設けて、Wの含有量を3〜10%とする。W含有量の望ましい下限は3.5%、より望ましい下限は4%である。また、W含有量の望ましい上限は9.5%、より望ましい上限は9%である。
Tiは、微細な炭窒化物として粒内に析出し、高温でのクリープ強度に寄与する。その効果を得るためには0.01%以上のTi含有量が必要である。しかしながら、Tiの含有量が過剰になると炭窒化物として多量に析出し、クリープ延性および靱性の低下を招く。このため、上限を設けて、Tiの含有量を0.01〜1.2%とする。Ti含有量の望ましい下限は0.03%、より望ましい下限は0.05%である。また、Ti含有量の望ましい上限は1.0%、より望ましい上限は0.8%である。
Alは、脱酸作用を有する元素である。しかしながら、Alの含有量が過剰になると合金の清浄性が著しく劣化して、熱間加工性および延性が低下する。そのため、Alの含有量に上限を設けて0.3%以下とする。Alの含有量は望ましくは0.2%以下、さらに望ましくは0.1%以下である。
Bは、高温での使用中に粒界に偏析して粒界を強化するとともに粒界炭化物を微細分散させることにより、クリープ強度を向上させるのに必要な元素である。この効果を得るためには、B含有量を0.0001%以上とする必要がある。しかしながら、Bの含有量が過剰になると、溶接性が劣化することに加えて、熱間加工性が劣化する。そのため、上限を設けて、Bの含有量を0.0001〜0.01%とする。B含有量の望ましい下限は0.0005%、より望ましい下限は0.001%である。また、B含有量の望ましい上限は0.008%、より望ましい上限は0.006%である。
Nは、オーステナイトを安定にするのに有効な元素であるものの、過剰に含有されると、高温での使用中に多量の微細窒化物が粒内に析出してクリープ延性および靱性の低下を招く。そのため、Nの含有量に上限を設けて0.02%以下とする。Nの含有量は望ましくは0.018%以下、より望ましくは0.015%以下である。
O(酸素)は、不純物として合金中に含まれ、その含有量が過剰になると熱間加工性が低下し、さらに靱性および延性の劣化を招く。このため、Oの含有量に上限を設けて0.01%以下とする。Oの含有量は望ましくは0.008%以下、より望ましくは0.005%以下である。
Caは、熱間加工性を改善する作用を有する。具体的には、Caは、CaSを生成しSの粒界偏析を抑制することで、熱間加工性を改善する効果を有する元素である。このため、Caを含有させても良い。しかしながら、Caの含有量が過剰になるとOと結合して、清浄性を著しく低下させ、却って熱間加工性を劣化させる。このため、Caを含有させる場合には、その含有量を0.05%以下とする。Ca含有量の上限は、望ましくは0.04%である。
REMは、熱間加工性を改善する作用を有する。すなわち、REMは、Sとの親和力が強く、熱間加工性の向上に寄与する。このため、REMを含有させても良い。しかしながら、REMの含有量が過剰になると、Oと結合して、清浄性を著しく低下させ、却って熱間加工性を劣化させる。このため、REMを含有させる場合には、その含有量を0.1%以下とする。REM含有量の上限は、望ましくは0.08%である。
Coは、クリープ強度を向上させる作用を有する。すなわち、Coは、Niと同様オ−ステナイト生成元素であり、相安定性を高めてクリープ強度の向上に寄与する。したがって、Coを含有させても良い。しかしながら、Coは極めて高価な元素であるため、Coの過剰の含有は大幅なコスト増を招く。このため、Coを含有させる場合には、その含有量を1%以下とする。Co含有量の上限は、望ましくは0.8%である。
Cuは、クリープ強度を向上させる作用を有する。すなわち、Cuは、NiおよびCoと同様オ−ステナイト生成元素であり、相安定性を高めてクリープ強度の向上に寄与する。したがって、Cuを含有させても良い。しかしながら、Cuが過剰に含有された場合には熱間加工性の低下を招く。このため、Cuを含有させる場合には、その含有量を1%以下とする。Cu含有量の上限は、望ましくは0.8%である。
Moは、クリープ強度を向上させる作用を有する。すなわち、Moは、マトリックスに固溶して高温でのクリープ強度を向上させる作用を有する。したがって、Moを含有させても良い。しかしながら、Moが過剰に含有された場合にはオーステナイトの安定性が低下して、却ってクリープ強度の低下を招く。そのため、Moを含有させる場合には、その含有量を1%以下とする。Mo含有量の上限は、望ましくは0.8%である。
Vは、クリープ強度を向上させる作用を有する。すなわち、Vは、CまたはNと結合して微細な炭化物または炭窒化物を形成し、クリープ強度を向上させる作用を有する。したがって、Vを含有させても良い。しかしながら、Vが過剰に含有された場合、炭化物または炭窒化物として多量に析出し、クリープ延性の低下を招く。そのため、Vを含有させる場合には、その含有量を0.5%以下とする。V含有量の上限は、望ましくは0.4%である。
Nbは、Vと同様にCまたはNと結合して微細な炭化物または炭窒化物として粒内に析出し、高温でのクリープ強度向上に寄与する。したがって、Nbを含有させても良い。しかしながら、Nbの含有量が過剰になると炭化物や炭窒化物として多量に析出し、クリープ延性および靱性の低下を招く。そのため、Nbを含有させる場合には、その含有量を0.5%以下とする。Nb含有量の上限は、望ましくは0.4%である。
Zrは、クリープ強度を向上させる作用を有する。すなわち、Zrは、粒界強化元素であり、高温でのクリープ強度向上に寄与し、さらに、クリープ延性の向上にも寄与する。したがって、Zrを含有させても良い。しかしながら、Zrの含有量が0.5%を超えると熱間加工性が低下する場合がある。そのため、Zrを含有させる場合には、その含有量を0.5%以下とする。Zr含有量の上限は、望ましくは0.4%である。
本発明のオーステナイト系耐熱合金部材は、表層が平均結晶粒度でASTM粒度番号7番以上の再結晶粒からなる金属組織を有し、部材の厚さ中央部が平均結晶粒度でASTM粒度番号4番以下の粗粒な結晶粒からなる金属組織を有する。
本発明のオーステナイト系耐熱合金部材は、熱間加工時の表面欠陥を防止できるものである。一方、部材内部の微小な割れについては、生じないのが最も望ましいことは言うまでもないが、たとえ生じたとしても、割れの深さが小さければ、実プラントにおいて重大な事故につながる可能性は低く、大きな問題とはならない。
Claims (5)
- 厚さ20mm以上のオーステナイト系耐熱合金部材であって、
質量%で、C:0.01〜0.15%、Si:1%以下、Mn:2%以下、P:0.03%以下、S:0.01%以下、Ni:40〜55%、Cr:20〜35%、W:3〜10%、Ti:0.01〜1.2%、Al:0.3%以下、B:0.0001〜0.01%、N:0.02%以下およびO:0.01%以下を含み、残部がFeおよび不純物からなる化学組成を有し、
表層がASTM粒度番号7番以上の再結晶粒からなる金属組織を有し、
部材の厚さ中央部がASTM粒度番号4番以下の結晶粒からなる金属組織を有することを特徴とするオーステナイト系耐熱合金部材。 - Feの一部に代えて、質量%で、さらに下記に示す群から選択される1種以上の元素を含有することを特徴とする請求項1に記載のオーステナイト系耐熱合金部材。
第1群:Ca:0.05%以下およびREM:0.1%以下
第2群:Co:1%以下、Cu:1%以下、Mo:1%以下、V:0.5%以下、Nb:0.5%以下およびZr:0.5%以下 - 前記表層を含む試験片を、1100℃において0.0001s−1のひずみ速度で引張試験を行い、伸びが10%となった時の試験片内部における割れの深さが20μm以下(0を含む)であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のオーステナイト系耐熱合金部材。
- 表層がASTM粒度番号7番以上の再結晶粒からなる金属組織を有し、
部材の厚さ中央部がASTM粒度番号4番以下の結晶粒からなる金属組織を有するオーステナイト系耐熱合金部材を製造するのに用いられるオーステナイト系耐熱合金素材であって、
厚さが20mm以上であり、
質量%で、C:0.01〜0.15%、Si:1%以下、Mn:2%以下、P:0.03%以下、S:0.01%以下、Ni:40〜55%、Cr:20〜35%、W:3〜10%、Ti:0.01〜1.2%、Al:0.3%以下、B:0.0001〜0.01%、N:0.02%以下およびO:0.01%以下を含み、残部がFeおよび不純物からなる化学組成を有し、
前記素材の表層の硬さがHV0.1で300以上であることを特徴とするオーステナイト系耐熱合金素材。 - Feの一部に代えて、質量%で、さらに下記に示す群から選択される1種以上の元素を含有することを特徴とする請求項4に記載のオーステナイト系耐熱合金素材。
第1群:Ca:0.05%以下およびREM:0.1%以下
第2群:Co:1%以下、Cu:1%以下、Mo:1%以下、V:0.5%以下、Nb:0.5%以下およびZr:0.5%以下
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