JP6046022B2 - 低水素系被覆アーク溶接棒 - Google Patents
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Description
鋼心線のCは、溶接金属の強度を支配する元素であるとともに、直流電源で溶接を行う場合においても安定したアークを保つために必要である。鋼心線のCが0.06%未満では、アークの吹付けが弱くなってアークが不安定になり、直流電源下でも安定した裏波ビードが得られない。また鋼心線のCが0.06%未満では、却って溶接金属の強度が低くなる。一方、鋼心線のCが0.11%を超えると、アークの吹付けが強くなりすぎてスパッタの発生量が多くなり、表ビードの形状も不揃いになる。また、溶接金属の強度が過剰となり靱性が低下する。したがって、鋼心線全質量に対する鋼心線のCは、0.06〜0.11%とする。
被覆剤のCは、鋼心線のCと同様に、直流電源で溶接を行う場合においても安定したアークを保つために必要で、溶接金属の強度確保においても極めて重要な成分である。被覆剤のCが0.20%未満では、アークの吹付けが弱くなってアークが不安定になり、直流電源下でも安定した裏波ビードが得られない。また被覆剤のCが0.20%未満では、却って溶接金属の強度が低くなる。一方、被覆剤のCが0.35%を超えると、溶接金属の強度が過剰となり靭性が低下する。したがって、被覆剤全質量に対する被覆剤のCは、0.20〜0.35%とする。
金属炭酸塩は炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マンガン、炭酸マグネシウムなどを指し、アーク中で分解してCO2ガスを発生させて溶着金属を大気から遮断しアーク雰囲気中の水素分圧を下げる効果がある。金属炭酸塩の1種または2種の合計が40%未満であると、上述したようにCO2ガスを発生させることによるシールド効果が不足してブローホールが発生しやすくなる。また金属炭酸塩の1種または2種の合計が40%未満であると、拡散性水素量が多くなって耐割れ性が劣化する。一方、金属炭酸塩の1種または2種の合計が55%を超えると、アークの吹きつけが弱くなってアークが不安定になり安定した裏波ビードが得られない。したがって、被覆剤全質量に対する金属炭酸塩の1種または2種以上の合計は、40〜55%とする。
金属弗化物は蛍石、弗化バリウム、弗化マグネシウム、弗化アルミニウムなどを指し、いずれも溶融スラグの粘性を下げて流動性のよいスラグを作り、優れたビード形状とする。また金属弗化物は、アーク雰囲気中の水素分圧を下げて耐割れ性を向上させる。金属弗化物の1種または2種以上の合計が4%未満であると、適当な溶融スラグの粘性が得られず表ビードの形状が劣下し、また拡散性水素量が多くなって耐割れ性が劣化する。一方、金属弗化物の合計が11%を超えると、スラグ剥離性が不良となる。したがって、被覆剤全質量に対する金属弗化物の1種または2種以上の合計は、4〜11%とする。
ルチールはアーク安定剤及びスラグの粘性を調整する。ルチールが3%未満であると、アークが不安定となり良好な裏波ビードを得ることが困難となる。一方、ルチールが9%を超えると、立向姿勢及び上向姿勢の溶接時に溶融スラグの粘性が高くなりスラグの流れが低下するので、表ビードの形状が凸状となる。したがって、被覆剤全質量に対するルチールの含有量は、3〜9%とする。
カリ長石は、溶融スラグの粘性を高め裏波溶接時には適切な粘性のスラグを得ることができると共に、アークの集中性を向上するので、良好な裏波ビードを得ることができる。しかし、カリ長石は含水鉱物であるため拡散性水素量が多くなり耐割れ性が劣化する。カリ長石が4%未満であると、溶融スラグの粘性が低く、またアークが集中しないので良好な裏波ビードを得ることが困難となる。一方、カリ長石が10%を超えると、拡散性水素量が多くなり耐割れ性が劣化する。したがって、被覆剤全質量に対するカリ長石の含有量は、4〜10%とする。
Siは、金属Si、及びFe−Si、Fe−Si−Mn等のSi合金から添加され、溶接金属の脱酸を目的として使用されるが、溶接作業性確保の上からも必要である。金属Si及びFe−Si、Fe−Si−MnのSi合金の1種または2種以上のSi換算値の合計が4%未満では、脱酸不足で溶接金属中にブローホールが発生し易く、アークが不安定で立向姿勢での溶接の継続が困難となる。一方、金属Si及びFe−Si、Fe−Si−MnのSi合金の1種または2種以上のSi換算値の合計が7%を超えると、溶接金属組織の粒界に低融点酸化物を析出させ靱性が低下する。したがって、被覆剤全質量に対する金属Si及びFe−Si、Fe−Si−MnのSi合金の1種または2種以上のSi換算値の合計は、4〜7%とする。
Mnは、金属Mn、及びFe−Mn、Fe−Si−Mn等のMn合金から添加され、Siと同様に脱酸剤として添加する他、溶接金属の強度向上に有効である。金属Mn及びFe−Mn、Fe−Si−MnのMn合金の1種または2種以上のMn換算値の合計が1.5%未満では、溶接金属の強度が低下する。一方、金属Mn及びFe−Mn、Fe−Si−MnのMn合金の1種または2種以上のMn換算値の合計が5.0%を超えると、溶接金属の強度が高くなり靭性が低くなる。したがって、被覆剤全質量に対する金属Mn及びFe−Mn、Fe−Si−MnのMn合金の1種または2種以上のMn換算値の合計は、1.5〜5.0%とする。
ヘマタイトは、低級酸化物のため酸素を供給し、アークの吹きつけを強くさせ集中度を増すのに効果的である。ヘマタイトが0.2%未満では、その効果がなく裏波ビードがやや不安定になる。一方、ヘマタイトが1.5%を超えると、アークの吹付けが強くなりすぎてスパッタの発生量が多くなる。したがって、被覆剤全質量に対するヘマタイトの含有量は、0.2〜1.5%とする。ちなみに被覆剤中にヘマタイトを添加しなくても上述した所期の効果を奏することは勿論であるが、アークの安定性の観点からヘマタイトの添加量を上述の範囲に調整することが望ましい。
Claims (2)
- 鋼心線に被覆剤が塗装されている低水素系被覆アーク溶接棒において、
前記鋼心線は、鋼心線全質量に対する質量%で、
C:0.06〜0.11%を含有し、
被覆剤は、被覆剤全質量に対する質量%で、
C:0.20〜0.35%、
金属炭酸塩の1種または2種以上の合計:40〜55%、
金属弗化物の1種または2種以上の合計:4〜11%、
ルチール:3〜9%、
カリ長石:4〜10%、
金属Si及びFe−Si、Fe−Si−MnのSi合金の1種または2種以上:Si換算値の合計で4〜7%、
金属Mn及びFe−Mn、Fe−Si−MnのMn合金の1種または2種以上:Mn換算値の合計で1.5〜5.0%を含有し、
残部がスラグ生成剤、脱酸剤、塗装剤及びSi合金及びMn合金のFe分の不可避的不純物からなり、
前記被覆剤が前記鋼心線に塗装されることを特徴とする低水素系被覆アーク溶接棒。 - 被覆剤全質量に対する質量%で、ヘマタイト:0.2〜1.5%をさらに含有することを特徴とする請求項1に記載の低水素系被覆アーク溶接棒。
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