JP5179073B2 - ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ - Google Patents

ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ Download PDF

Info

Publication number
JP5179073B2
JP5179073B2 JP2007058786A JP2007058786A JP5179073B2 JP 5179073 B2 JP5179073 B2 JP 5179073B2 JP 2007058786 A JP2007058786 A JP 2007058786A JP 2007058786 A JP2007058786 A JP 2007058786A JP 5179073 B2 JP5179073 B2 JP 5179073B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
slag
flux
bead
wire
oxide
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2007058786A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2008221231A (ja
Inventor
政男 鎌田
雄己 栢森
Original Assignee
日鐵住金溶接工業株式会社
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by 日鐵住金溶接工業株式会社 filed Critical 日鐵住金溶接工業株式会社
Priority to JP2007058786A priority Critical patent/JP5179073B2/ja
Publication of JP2008221231A publication Critical patent/JP2008221231A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5179073B2 publication Critical patent/JP5179073B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Nonmetallic Welding Materials (AREA)

Description

本発明は、軟鋼および490N/mm級高張力鋼をはじめとする各種鋼構造物を製造する際に使用するガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤに係わるものであり、特に表面のショットブラスト加工がなく熱延スケールが付着したままの無塗装鋼板(以下、黒皮鋼板という。)の水平すみ肉溶接に使用して、良好なスラグ剥離性、ビード形状およびビード外観が得られるとともに、耐気孔性および溶接部の衝撃靱性を向上させたガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ(以下、フラックス入りワイヤという。)に関する。
船舶、橋梁などの建造分野では、製造コスト低減のために高速水平すみ溶接が可能なフラックス入りワイヤの開発要望が強い。これに対し、ショッププライマ塗装鋼板の耐気孔性向上の観点から、すみ肉溶接用フラックス入りワイヤが提案されている(例えば、特許文献1及び2参照)。しかし、製造現場においては黒皮鋼板のすみ肉溶接の機運があり、これに従来のすみ肉溶接用フラックス入りワイヤを使用して水平すみ肉溶接を行った場合、スラグの被包むらやビード上脚側のスラグ被包がなくなるなどスラグ被包状態が悪く、スラグ剥離性が不良となる。また、このスラグ被包性の劣化は、アンダーカット、ビード止端部の不揃いや下脚側の膨らみ、ビード凸状化などビード形状およびビード外観を不良にする。
図1は、黒皮鋼板の水平すみ肉溶接において発生しやすいビード形状の欠陥例を説明するために示した模式図である。下板1と上板2の表面には酸化スケール6が付着しており、4はビード上脚側のアンダーカット、5はビード下脚側止端部の膨らみで全体的に凸状のビード形状になる。
このような黒皮鋼板の水平すみ肉溶接における特有な問題は、これまでに提案されている2電極高速水平すみ肉溶接方法(例えば、特許文献3参照)で黒皮鋼板の溶接を行った場合、高速化にともないスラグ剥離性、ビード形状およびビード外観の劣化は顕著となる。
図2は2電極高速水平すみ肉溶接状況を説明するために示した模式図である。良好なビードを形成するために電極角度θ1を持たせた先行電極ワイヤ7と電極角度θ2を持たせた後行電極ワイヤ8との間に安定した湯溜り9を形成することが肝要であるが、酸化スケール6が付着したままの黒皮鋼板の溶接を従来のフラックス入りワイヤを用いた場合は、湯溜り9が安定して継続されなくなり、後行電極ワイヤ8の後方に形成される溶融プール10が不安定になる。このような不安定現象は高電流の溶接条件で行う高速溶接になる程に激しくなり、溶融スラグ11の凝固が遅れて溶接ビード3の立板(図1の6)側では凝固スラグ12が全体に薄く、部分的に溶接ビード3が露出する。このような不均一なスラグ被包は、スラグ剥離性を劣化させ、ビード形状の不等脚やビード止端部の不揃い、スラグ焼き付によるビード外観不良となる。
黒皮鋼板の水平すみ肉溶接の高速化要望に対し、本出願人は先にすみ肉溶接用フラックス入りワイヤを提案した(例えば、特許文献4参照)。本技術によれば溶融スラグの粘性を増して十分なスラグ被包性を与えることでき、良好なスラグ剥離性、ビード形状およびビード外観を得ることができる。しかし、高速水平すみ肉溶接における耐気孔性および溶接部の衝撃靱性が十分ではなかった。
特開平3−180298号公報 特開平11−5193号公報 特開昭63−235077号公報 特開2006−224178号公報
本発明は、黒皮鋼板の高速水平すみ肉溶接において問題となるスラグ剥離性、ビード形状およびビード外観が良好で、さらに、耐気孔性および溶接部の衝撃靱性を向上させたガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤを提供することを目的とする。
本発明の要旨は、鋼製外皮内にフラックスを充填してなるガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤにおいて、ワイヤ全質量に対する質量%で、フラックスに、
Ti酸化物:TiO換算値で3.1〜4.4%、
Si酸化物:SiO換算値で1.1〜2.0%、
Zr酸化物:ZrO換算値で0.1〜0.5%、
Al酸化物:Al換算値で0.1〜0.4%、
Fe酸化物:FeO換算値で0.1〜0.6%、
NaおよびK:NaO換算値およびKO換算値の合計で0.03〜0.30%、
弗素化合物:F換算値で0.03〜0.20%、
Mg:0.2〜0.6%を含有し、
さらに、鋼製外皮およびフラックスの合計で、
C:0.03〜0.08%、
Si:0.2〜0.7%、
Mn:3.1〜4.0%、
但し、Mn/Si:5.5以上、Mn/SiO換算値:2.0〜3.3、
Al:0.30%以下、Nb:0.20%以下およびV:0.20%以下の1種または2種以上の合計で0.05〜0.30%を含有し、
残部は、Feおよび不可避的不純物からなることを特徴とする。
また、B:0.002〜0.010%を含有すること、さらに、Ni:0.1〜2.5%を含有することも特徴とするガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤにある。
本発明のガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤによれば、黒皮鋼板の高速水平すみ肉溶接に使用した場合でも、良好なスラグ剥離性、ビード形状、ビード外観および耐気孔性が得られ、溶接部の衝撃靱性も優れているので、溶接の高能率化および溶接部の品質向上が図れる。
本発明者らは、黒皮鋼板の表面酸化スケールの悪影響を防止するために、スラグ形成剤としてTiOとともにSiOをある程度多めに含有させて、十分なスラグ被包性を与えた。しかし、TiOとSiOは溶融スラグの粘性を高める成分であり、粘性が過剰になると黒皮鋼板であっても耐気孔性が劣化する。これは、溶融スラグの生成量が多く、粘性が高くなると溶融スラグの後退距離が小さく、溶融プールが小さくなるので、黒皮鋼板表面の付着水分やフラックス入りワイヤのポテンシャル水分に起因した水素ガスが溶融プールから放出されにくくなることによる。また、SiOは溶融スラグの塩基度を急激に酸性側に移行させて衝撃靱性を低下させる成分でもある。
このようなTiO、SiOを主成分とするフラックス入りワイヤの上記欠点に対しては、合金脱酸剤のMnおよび強脱酸剤のMgの脱酸反応によって生成するMnOおよびMgOが溶融スラグの粘性および塩基度の調整に有効に作用して、耐気孔性および衝撃靱性を向上させることを確認した。MnはSiおよびSiO換算値との関係で制約され、Mgは必須成分として適量が必要であった。
さらに、図2に示す2電極高速水平すみ肉溶接方法に適用した場合は、後行電極ワイヤ8後方の溶融プール10が1電極溶接に比べて大きくなるので、ガスシールド性が弱まることによる気孔発生に対しては、浸入した窒素を固定するAl、Nb、Vを微量添加することによる効果を確認した。
衝撃靱性の一層の向上にはB、Niの適度な含有量が必要であること、その他の限定した成分についても種々の試作ワイヤにより詳細に検討し、所期の目的を達したものである。
以下に、本発明のフラックス入りワイヤの成分限定理由を述べる。
Ti酸化物:TiO換算値で3.1〜4.4質量%
ルチール、チタンスラグなどのTi酸化物は、溶融スラグの粘性を高めスラグ被包性を向上させる作用を有する。しかし、Ti酸化物のTiO換算値の合計が3.1質量%(以下、%という。)未満では、スラグ量の不足とともに溶融スラグの粘性が不足してスラグ被包性が不十分となり、スラグ剥離性、ビード形状およびビード外観が不良となる。一方、TiO換算値が4.4%を超えると、溶融スラグの粘性および生成量とも過剰で、ビード形状および耐気孔性が不良となる。したがって、Ti酸化物のTiO換算値は3.1〜4.4%とする。
Si酸化物:SiO換算値で1.1〜2.0%
珪砂やジルコンサンドなどのSi酸化物は、溶融スラグの粘性を高めスラグ被包性を向上させる作用を有する。しかし、Si酸化物のSiO換算値が1.1%未満では、溶融スラグの粘性が不足してスラグ被包性が不十分となり、スラグ剥離性、ビード形状およびビード外観が不良となる。一方、SiO換算値が2.0%を超えると、溶融スラグの粘性および生成量が過剰になり、耐気孔性が不良で衝撃靱性は急激に低下する。また、ビード形状は下脚部の脚長が著しく大きい不等脚となる。したがって、Si酸化物のSiO換算値は1.1〜2.0%とする。
Zr酸化物:ZrO換算値で0.1〜0.5%
ジルコンサンド、酸化ジルコンなどのZr酸化物は、溶融スラグの粘性および凝固温度を調整し、スラグ被包性を高める作用を有する。しかし、Zr酸化物のZrO換算値が、0.1%未満では、ビード表面の凹凸が大きくなるとともに下脚側が大きい著しく不等脚のビード形状となる。一方、ZrO換算値が0.5%を超えると、スラグ被包むらが生じてスラグ剥離性およびビード外観が不良で、ビード形状は丸く凸状になる。したがって、Zr酸化物のZrO換算値は0.1〜0.5%とする。
Al酸化物:Al換算値で0.1〜0.4%
アルミナなどのAl酸化物も、溶融スラグの粘性および凝固温度を調整し、スラグ被包性を高める作用を有する。しかし、Al酸化物のAl換算値が0.1%未満では、ラグ被包性が不十分でアンダーカットが発生しやすくビード形状およびビード外観が不良なる。一方、Al換算値が0.4%を超えると、スラグ被包むらが生じてスラグ剥離性、ビード形状およびビード外観が不良となる。したがって、Al酸化物のAl換算値は0.1〜0.4%とする。
Fe酸化物:FeO換算値で0.1〜0.6%
酸化鉄、ミルスケールなどのFe酸化物は、溶融スラグの粘性および凝固温度を調整し、ビード表面のなめらかさと下脚側止端部のなじみ性およびスラグ剥離性を良好にする作用を有する。しかし、Fe酸化物のFeO換算値が0.1%未満では、ビード形状およびスラグ剥離性が不良となる。一方、FeO換算値が0.6%を超えると、溶融スラグの過剰な粘性低下および凝固温度の低下によりビード形状が不良となる。したがって、Fe酸化物のFeO換算値は0.1〜0.6%とする。
NaおよびK:NaO換算値およびKO換算値の合計で0.03〜0.30%
珪酸ソーダや珪酸カリなどの水ガラス、氷晶石、カリ長石などからのNaおよびKは、アークを安定にして、安定した溶接状況をもたらす。しかし、NaおよびKのNaO換算値およびKO換算値の合計が0.03%未満では、アークが不安定となり、スラグ被包状態が乱れてスラグ剥離性、ビード形状およびビード外観が不良となる。一方、NaO換算値およびKO換算値の合計が0.30%を超えると、溶融スラグの粘性が低下しすぎてスラグ被包状態が悪くなり、スラグ剥離性およびビード形状が不良となる。したがって、NaおよびKのNaO換算値およびKO換算値の合計は0.03〜0.30%とする。
弗素化合物:F換算値で0.03〜0.20%
弗化ソーダや珪弗化カリなどの弗素化合物からのFは、シールド性に寄与するとともに、溶融スラグの粘性を調整して耐気孔性を向上させる作用を有する。しかし、弗素化合物のF換算値が0.03%未満では、耐気孔性が劣化する。一方、F換算値が0.20%を超えると、溶融スラグの粘性が過剰に低下し、スラグ被包性が劣化してスラグ剥離性およびビード形状が不良となる。したがって、弗素化合物のF換算値は0.03〜0.20%とする。
Mg:0.2〜0.6%
Mg、Al−Mg、Ni−MgなどのMgは、強脱酸剤として作用して溶接金属の衝撃靱性を高める。また、脱酸生成物のMgOは溶融スラグの主要成分となり、スラグの粘性および凝固温度を調整して、ビード形状および耐気孔性を良好にする。しかし、Mgが0.2%未満では、衝撃靱性が低下し、また、MgOの生成量が不足してビード下脚側止端部のなじみ性がなくなり、ビード上脚側にはアンダーカットが発生しやすくなる。一方、Mgが0.6%を超えると、スラグ被包性が悪くなりスラグ剥離性、ビード形状およびビード外観が不良となる。したがって、Mgは0.2〜0.6%とする。
なお、マグネシアクリンカーや天然マグネシアのMgOをスラグ形成剤として0.15%を超えて含有させた場合、これら原料が保持する水分が高く耐気孔性を劣化させること、また、スラグ被包むらも発生しやすくなるので、本発明では特にMgを含有させて、その酸化生成物としてのMgOを溶融スラグの成分として利用する。
C:0.03〜0.08%
溶接構造物に要求される溶接金属の強度、衝撃靱性を得るために、Cは鋼製外皮およびフラックスの合計で0.03〜0.08%とする。Cが0.03%未満では衝撃靭性が低くなる。一方、Cが0.08%を超えると強度が高くなり衝撃靭性が低下する。
Si:0.2〜0.7%
Siが鋼製外皮およびフラックスの合計で0.2%未満では、スラグ被包性が不十分でビード形状が不良となる。一方、Siが0.7%を超えると強度が高くなり衝撃靱性が低下する。
Mn:3.1〜4.0%、Mn/Si:5.5以上、Mn/SiO:2.0〜3.3
Mnも同様に強度、衝撃靱性を確保する成分であるが、脱酸生成物のMnOはTiO2、SiOによる溶融スラグの過度の粘性を調整し、溶融プールを適度に後退させるように作用して耐気孔性を向上させる。しかし、Mnが鋼製外皮およびフラックスの合計で3.1%未満では、Mnの歩留まりが低く衝撃靱性が低下するとともに、MnOの生成量が不足して溶融プールの後退が小さくなり耐気孔性が劣化する。一方、Mnが4.0%を超えると強度が高くなり衝撃靭性の低下とともに、MnOの過剰生成によりスラグ被包性が悪くビード形状が不良となる。
また、Mn/Siを5.5以上にすることによって、衝撃靭性に対するSiの悪影響を緩和する必要がある。Mn/Siが5.5未満であると、衝撃靭性が低下する。
さらに、MnはSiO換算値との関係で、溶接金属への歩留りおよびMnO生成量が大きく左右されるので、Mn/SiO換算値を2.0〜3.3となるように含有させなければならない。Mn/SiO換算値が2.0未満では、Mnの歩留まりが低く衝撃靭性が低下し、溶融スラグに生成するMnOも不足して耐気孔性が劣化する。一方、Mn/SiO換算値が3.3を超えると、MnOが過剰となりビード形状が不良となる。
なお、酸化マンガンやマンガンスラグなどのMnOは、スラグ形成剤として耐気孔性および衝撃靭性の向上に効果が認められるが、0.3%を超えるとスラグ被包性を劣化させる。
Al:0.30%以下、Nb:0.20%以下およびV:0.20%以下の1種または2種以上の合計で0.05〜0.30%
溶融プールが後方に大きく延びてガスシールド性が弱まる2電極高速水平すみ肉溶接においては、大気から浸入した窒素による耐気孔性の劣化についても考慮しなければならない。Al、NbおよびVは、窒化物となりやすく、窒素を固定して耐気孔性を向上させる成分であり、上記限定した範囲で1種または2種以上の合計で0.05%以上含有させる。なお、Alは0.01%以上で耐気孔性に効果が認められるが、0.30%を超えると生成するAl酸化物がスラグ被包性を悪くしてスラグ剥離性、ビード形状およびビード外観に悪影響を及ぼす。NbおよびVは、0.005%以上で耐気孔性に効果が認められるが、0.20%を超えると衝撃靱性が低下する。一方、Al、NbおよびVの1種または2種以上の合計が0.30%を超えると衝撃靱性が低下する。
B:0.002〜0.010%
Bは、0.002%以上で窒素固定およびミクロ組織微細による効果を発揮し、低温域における衝撃靱性を向上させるので、必要に応じて添加する。しかし、0.010%を超えると、高速水平すみ肉溶接ではビードに高温割れが発生しやすくなるので、上限を0.010%とした。
Ni:0.1〜2.5%
Niは、0.1%以上で衝撃靭性の安定化に効果が認められるが、Niが2.5%を超えると高速水平すみ肉溶接ではビードに高温割れが発生しやすくなる。また、上記Bとの複合添加は低温用鋼の溶接鋼構造物に使用して安定して低温域で高い衝撃靭性が得られるので必要に応じて添加する。
以上、本発明のフラックス入りワイヤの構成要件の限定理由を述べたが、残部のFeは、鋼製外皮のFe、フラックスの鉄粉からのFeFe−Si、Fe−Mn或いはFe−Si−Mnの鉄合金(Ferroalloy)からのFeであり、その他は不可避的不純物である。
上記鋼製外皮については、フラックス充填後の伸線加工性が良好な軟鋼または低合金鋼でよいが、Cが0.01〜0.03%のものは低スパッタ、低ヒューム化に極めて有効である。フラックス充填率は、アーク安定性、高溶着性、伸線性などを考慮して10〜18%程度のものが好ましい。鉄粉については1%以上で、アークを安定にしてスパッタを低減する作用がある。しかし、ワイヤ生産性の面から鉄粉の上限は8.0%程度にすることが好ましい。フラックス入りワイヤが含有する水素量は、耐気孔性の観点からワイヤ全質量に対して40ppm以下にすることが好ましい。BiおよびBi酸化物を0.01%以上含有させることは、溶接後のスラグ除去作業の大幅な省略のために自然剥離のような抜群のスラグ剥離性が得られる。
その他のワイヤ成分としては、軟鋼および490N/mm級高張力鋼用以外にも、570〜590N/mm級高張力鋼用、低温用鋼用、耐候性鋼用などフラックス入りワイヤの品種毎に規定されている溶着金属試験の機械的性質および化学成分を満足するためにMo、Cu、Crなどの必要な成分を含有することができる。ワイヤ径は一般的な1.2〜2.0mm、断面構造も市販のフラックス入りワイヤと同様でよい。表面にCuなどのめっきを施して衝撃靭性向上や防錆効果を高めることも可能である。
なお、本発明のフラックス入りワイヤは、通常の1電極溶接および2電極高速溶接に使用でき、シールドガスはCOガスまたはAr−CO混合ガスとする。
以下、実施例により本発明の効果をさらに詳細に説明する。
軟鋼外皮(C:0.01%、Si:0.01%、Mn:0.40%、Al:0.01%、N:0.0015%)に、フラックスを充填後、縮径して、フラックス充填率15%でワイヤ径1.6mmのフラックス入りワイヤを各種試作した。表1および表2にそれぞれの試作ワイヤを示す。
Figure 0005179073
Figure 0005179073
これら試作ワイヤを各々両電極に使用して、黒皮鋼板のT字すみ肉試験体を用いて2電極高速水平すみ肉溶接試験(両側同時溶接)、さらに、JIS Z 3313およびJIS Z3111に準拠して溶着金属試験を行った。なお、シールドガスはCOガスである。表3にそれらの溶接条件を示す。
Figure 0005179073
2電極高速水平すみ肉溶接試験(以下、すみ肉溶接という。)の試験体は、板厚16mm、試験体長さ1.0mの黒皮鋼板(490N/mm級高張力鋼用)であって、下板および立板の全面に熱延による酸化スケールが黒色に厚く付着しているものを用いた。これらの黒皮鋼板を加圧して下板と立板の隙間がない状態で仮付け溶接して試験体とした。
各試作ワイヤについて、溶接状況(アーク安定性、2電極間の湯溜りの安定性)、スラグ被包性、スラグ剥離性、ビード形状、ビード外観および耐気孔性(ビード表面のピット、ガス溝)を評価した。表4にその溶接試験結果と溶着金属試験における衝撃靭性(吸収エネルギー)の試験結果を併記して示す。
Figure 0005179073
各試験の評価基準は、溶接状況は○:アークが安定で湯溜りも安定した状態、×:アークおよび湯溜りの一方または両方が不安定な状態を示す。スラグ被包性は○:良好、×:部分的、または全線で被包むらが生じたものを示す。スラグ剥離性は○:良好、×:部分的に所々、除去しにくい、または極めて除去しにくいを示す。ビード形状およびビード外観は○:良好、×:不良を示す。耐気孔性は○:気孔なし、×:気孔発生を示す。耐高温割れ性は○:割れなし、×:割れ発生を示す。衝撃靭性は試験温度0℃で吸収エネルギーが47J以上を合格とした。なお、一部試験温度−20℃での吸収エネルギーも調べた。
表3中ワイヤ記号W1〜W12が本発明例、ワイヤ記号W13〜W31は比較例である。
本発明例であるワイヤ記号W1〜W12は、フラックスの各酸化物、弗化物のF換算値、C、Si、Mn、Mn/Si、Mn/SiO換算値およびAl、Nb、Vの合計量を適量含んでいるので、すみ肉溶接における両電極間の湯溜りも安定し、スラグ被包性が十分で、スラグ剥離性、ビード形状、ビード外観および耐気孔性のいずれも良好で、溶着金属試験における吸収エネルギーも高く極めて満足な結果であった。
なお、Bを添加したワイヤ記号W7およびW8は、溶着金属試験において高い吸収エネルギーが得られた。また、BおよびNiを添加したワイヤ記号W9、W10およびNiを添加したワイヤ記号W11、W12は、−20℃における吸収エネルギーも高値が得られた。
比較例中ワイヤ記号W13は、TiO換算値が少ないのですみ肉溶接のスラグ被包性が不十分で、スラグ剥離性、ビード形状およびビード外観が不良であった。また、Cが低いので溶着金属試験の吸収エネルギーが低かった。
ワイヤ記号W14は、TiO換算値が多いのですみ肉溶接のビード形状および耐気孔性が不良であった。また、Cが高いので溶着金属試験の吸収エネルギーが低かった。
ワイヤ記号W15は、SiO換算値が少ないのですみ肉溶接の溶接ビード全線においてスラグ被包性が不十分で、スラグ剥離性、ビード形状およびビード外観も不良であった。また、Mnが低いのですみ肉溶接の耐気孔性が不良で、溶着金属試験の吸収エネルギーも低かった。
ワイヤ記号W16は、SiO換算値が多くMn/SiO換算値も低いのですみ肉溶接のビード形状および耐気孔性が不良で、溶着金属試験の吸収エネルギーも低かった。
ワイヤ記号W17は、ZrO換算値が少ないのですみ肉溶接のビード形状が不良であった。また、Siが多いので溶着金属試験の吸収エネルギーが低かった。
ワイヤ記号W18は、ZrO換算値が多いのですみ肉溶接のスラグ被包性が不十分で、スラグ剥離性、ビード形状およびビード外観が不良であった。また、Mn/Siが低いので溶着金属試験の吸収エネルギーが低かった。
ワイヤ記号W19は、Al換算値が少ないのですみ肉溶接のスラグ被包性が不十分で、ビード形状およびビード外観が不良であった。また、Mn/SiO換算値が低いので耐気孔性が不良で、溶着金属試験の吸収エネルギーも低かった。
ワイヤ記号W20は、Al換算値が多いのですみ肉溶接のスラグ被包性が不十分で、スラグ剥離性、ビード形状およびビード外観が不良であった。また、Nbが多いので溶着金属試験の吸収エネルギーが低かった。
ワイヤ記号W21は、FeO換算値が少ないのですみ肉溶接のスラグ剥離性およびビード形状が不良であった。また、Vが多いので溶着金属試験の吸収エネルギーが低かった。
ワイヤ記号W22は、FeO換算値が多いのですみ肉溶接のビード形状が不良であった。
ワイヤ記号W23は、NaO換算値とKO換算値の合計が少ないのですみ肉溶接で不安定な溶接状況となりスラグ被包性が不十分で、スラグ剥離性、ビード形状およびビード外観が不良であった。また、Bが多いので高温割れも生じた。
ワイヤ記号W24は、NaO換算値とKO換算値の合計が多いのですみ肉溶接のスラグ被包性が不十分で、スラグ剥離性およびビード形状が不良であった。また、Niが多いので高温割れも生じた。
ワイヤ記号W25は、F換算値が少ないのですみ肉溶接の耐気孔性が不良であった。また、Mgが少ないのですみ肉溶接のビード形状が不良で、溶着金属試験の吸収エネルギーも低かった。
ワイヤ記号W26は、F換算値が多いのですみ肉溶接のスラグ被包が不十分で、スラグ剥離性、ビード形状およびビード外観が不良であった。
ワイヤ記号W27は、Mgが多いのですみ肉溶接のスラグ被包性が不十分で、スラグ剥離性、ビード形状およびビード外観が不良であった。
ワイヤ記号W28は、Siが少ないのですみ肉溶接のスラグ被包性が不十分で、ビード形状が不良であった。また、Al、NbおよびVの合計量が少ないので耐気孔性も不良であった。
ワイヤ記号W29は、Alが多いのですみ肉溶接のスラグ被包性が不十分で、スラグ剥離性、ビード形状および外観が不良であった。また、Al、NbおよびVの合計量が多いので溶着金属試験の吸収エネルギーが低かった。
ワイヤ記号W30は、Mnが多いのですみ肉溶接のスラグ被包性が不十分で、ビード形状が不良であった。また、溶着金属試験の吸収エネルギーも低かった。
ワイヤ記号W31は、Mn/SiO換算値が大きいのですみ肉溶接のビード形状が不良であった。
黒皮鋼板の水平すみ肉溶接において発生するビード形状の欠陥例を説明するために示した模式図である。 本発明の実施例に用いた2電極高速水平すみ肉溶接方法の溶接状況を説明するために示した模式図である。
符号の説明
1 下板
2 立板
3 溶接ビード
4 アンダーカット
5 ビード止端部の膨らみ
8 後行電極ワイヤ
6 酸化スケール
7 先行電極ワイヤ
9 湯溜り
10 溶融プール
11 溶融スラグ
12 凝固スラグ

Claims (3)

  1. 鋼製外皮内にフラックスを充填してなるガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤにおいて、ワイヤ全質量に対する質量%で、フラックスに、
    Ti酸化物:TiO換算値で3.1〜4.4%、
    Si酸化物:SiO換算値で1.1〜2.0%、
    Zr酸化物:ZrO換算値で0.1〜0.5%、
    Al酸化物:Al換算値で0.1〜0.4%、
    Fe酸化物:FeO換算値で0.1〜0.6%、
    NaおよびK:NaO換算値およびKO換算値の合計で0.03〜0.30%、
    弗素化合物:F換算値で0.03〜0.20%、
    Mg:0.2〜0.6%を含有し、
    さらに、鋼製外皮およびフラックスの合計で、
    C:0.03〜0.08%、
    Si:0.2〜0.7%、
    Mn:3.1〜4.0%、
    但し、Mn/Si:5.5以上、Mn/SiO換算値:2.0〜3.3、
    Al:0.30%以下、Nb:0.20%以下およびV:0.20%以下の1種または2種以上の合計で0.05〜0.30%を含有し、
    残部は、Feおよび不可避的不純物からなることを特徴とするガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。
  2. B:0.002〜0.010%を含有することを特徴とする請求項1記載のガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。
  3. Ni:0.1〜2.5%を含有することを特徴とする請求項1または請求項2記載のガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。
JP2007058786A 2007-03-08 2007-03-08 ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ Expired - Fee Related JP5179073B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2007058786A JP5179073B2 (ja) 2007-03-08 2007-03-08 ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2007058786A JP5179073B2 (ja) 2007-03-08 2007-03-08 ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2008221231A JP2008221231A (ja) 2008-09-25
JP5179073B2 true JP5179073B2 (ja) 2013-04-10

Family

ID=39840429

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2007058786A Expired - Fee Related JP5179073B2 (ja) 2007-03-08 2007-03-08 ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5179073B2 (ja)

Families Citing this family (12)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR101042209B1 (ko) 2008-09-26 2011-06-20 현대종합금속 주식회사 가스실드 아크 용접용 티타니아계 플럭스 충전 와이어
JP5400461B2 (ja) * 2009-04-22 2014-01-29 株式会社神戸製鋼所 フラックス入りワイヤ
JP5400472B2 (ja) * 2009-05-20 2014-01-29 株式会社神戸製鋼所 フラックス入りワイヤ
JP5409132B2 (ja) * 2009-06-11 2014-02-05 日鐵住金溶接工業株式会社 ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ
KR101647148B1 (ko) * 2009-12-23 2016-08-09 주식회사 포스코 고장력강용 플럭스 코어드 아크 용접 와이어 및 이를 이용한 플럭스 코어드 아크 용접 금속부
JP5662086B2 (ja) * 2010-09-03 2015-01-28 日鐵住金溶接工業株式会社 Ar−CO2混合ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ
JP5557790B2 (ja) * 2011-04-13 2014-07-23 日鐵住金溶接工業株式会社 2電極水平すみ肉co2ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ
JP5824403B2 (ja) * 2012-04-04 2015-11-25 日鐵住金溶接工業株式会社 炭酸ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ
JP6061809B2 (ja) * 2013-08-07 2017-01-18 株式会社神戸製鋼所 付加溶接用フラックス入りワイヤ及び溶接方法
JP6509007B2 (ja) * 2015-03-30 2019-05-08 株式会社神戸製鋼所 ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤの製造方法
JP2016187828A (ja) * 2015-03-30 2016-11-04 株式会社神戸製鋼所 ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ
JP6953869B2 (ja) * 2017-07-31 2021-10-27 日本製鉄株式会社 ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ、及び溶接継手の製造方法

Family Cites Families (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR100427546B1 (ko) * 2001-09-06 2004-04-30 고려용접봉 주식회사 용접성이 우수한 염기성계 플럭스 코어드 와이어
JP4300153B2 (ja) * 2004-05-11 2009-07-22 日鐵住金溶接工業株式会社 ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ
JP4425756B2 (ja) * 2004-09-28 2010-03-03 日鐵住金溶接工業株式会社 水平すみ肉溶接用フラックス入りワイヤ
JP4531586B2 (ja) * 2005-02-21 2010-08-25 日鐵住金溶接工業株式会社 ガスシールドアークすみ肉溶接用フラックス入りワイヤ
JP4531617B2 (ja) * 2005-04-07 2010-08-25 日鐵住金溶接工業株式会社 ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ

Also Published As

Publication number Publication date
JP2008221231A (ja) 2008-09-25

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5179073B2 (ja) ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ
JP4531617B2 (ja) ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ
JP6437327B2 (ja) 炭酸ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ
JP5557790B2 (ja) 2電極水平すみ肉co2ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ
JP6033755B2 (ja) Ar−CO2混合ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ
JP6786427B2 (ja) ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ
JP6382117B2 (ja) Ar−CO2混合ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ
JP2014113615A (ja) 炭酸ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ
JP6437419B2 (ja) 炭酸ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ
JP5014189B2 (ja) 2電極すみ肉ガスシールドアーク溶接方法
JP4300153B2 (ja) ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ
JP6669613B2 (ja) ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ
JP6017406B2 (ja) セルフシールドアーク溶接用ステンレス鋼フラックス入りワイヤ
JP2017094360A (ja) Ar−CO2混合ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ
JP4838100B2 (ja) 耐候性鋼用水平すみガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ
JP6385879B2 (ja) ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ
JP4425756B2 (ja) 水平すみ肉溶接用フラックス入りワイヤ
JP5938375B2 (ja) 2電極水平すみ肉co2ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ
JP4531586B2 (ja) ガスシールドアークすみ肉溶接用フラックス入りワイヤ
JP2012051021A (ja) Ar−CO2混合ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ
JP2010064087A (ja) ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ
JP2017164772A (ja) 炭酸ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ
JP2020168651A (ja) 9%Ni鋼溶接用被覆アーク溶接棒
JP5448497B2 (ja) 2電極水平すみ肉ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ
JP5824403B2 (ja) 炭酸ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20090526

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20120717

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20120913

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20130108

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20130109

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees