JP6035669B2 - 非水電解質二次電池用正極活物質およびその製造方法 - Google Patents
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Description
このような要求を満足する二次電池としては、リチウムイオン二次電池が挙げられ、このリチウムイオン二次電池は、負極および正極と電解液等で構成され、負極および正極の活物質として、リチウムを脱離および挿入することが可能な材料を用いている。
しかしながら、上記酸化物は、充電状態で高温環境下に放置しておくと、分解による酸素放出を起こし、放出された酸素と有機電解液が反応して発火しやすくなるという安全性の問題があった。そのため、現在実用化されているリチウムイオン二次電池では、厳密な電圧制御や、内部回路の工夫など何重もの安全機構を施した設計で対応している。
例えば、リチウムイオン二次電池正極材料の熱安定性を向上させることを目的として、一般式:LiaMbNicCodOe(式中、Mは、Al、Mn、Sn、In、Fe、V、Cu、Mg、Ti、Zn及びMoからなる群から選ばれる少なくとも一種の金属であり、かつa、b、c、d、eは、0<a<1.3、0.02≦b≦0.5、0.02≦d/c+d≦0.9、1.8<e<2.2、b+c+d=1である。)で表されるリチウム金属複合酸化物等が提案されている(例えば、特許文献1参照) 。
しかしながら、これらの提案では、層状酸化物やスピネル型酸化物においては、充電状態(リチウムを放出した状態)で高温にしたときに酸素を離しやすいという根本的な問題が解決されないため、安全性の面ではさらなる改善が求められていた。
一方、LiFePO4粒子は微粒子化されているため、高密度に充填することが難しく、放電容量を十分に向上できない問題を抱えている。
特許文献5ではリチウム・ニッケル複合酸化物(LixNi1−yMyOz、0.9<x≦1.1、0≦y≦0.7、1.9≦z≦2.1、MはAl、Co、Mnの少なくとも一種を含む)と、リチウム・鉄・リン複合酸化物(LiFePO4) と導電性炭素源を焼成する製造法であり、放電容量が高く、高温保存特性に優れた非水電解質二次電池が得られるとしている。
しかしながら、この技術では、高温保存特性が十分でないという問題がある。
しかしながら、リン酸鉄・リチウムとコバルト酸リチウムを混合しただけであり、リン酸鉄・リチウムは熱安定性に優れるが、コバルト酸リチウムの表面は電解液に接触するため全体として熱安定性の向上は望めない。
ここで、本発明に係る非水電解質二次電池用正極活物質の技術的特徴は、リチウム金属複合酸化物粒子の表面をリン酸処理してリン酸塩皮膜で被覆し、さらに、炭素で被覆した構造にあるので、本発明の非水電解質二次電池用正極活物質およびその製造方法について詳細に説明する。
本発明の非水電解質二次電池用正極活物質について図面を参照しながら、具体的に説明する。
図1は、本発明に係る非水電解質二次電池用正極活物質の実施形態を具体的に示す断面図である。
図1に示すように、本発明に係る非水電解質二次電池用正極活物質11は、リチウム金属複合酸化物粒子3の表面にリン酸処理によるリン酸塩皮膜2が形成されていることを特徴とし、さらに、そのリン酸塩皮膜表面に炭素皮膜1が形成されているリチウム金属複合酸化物粒子である。
本発明の正極活物質を主として構成するリチウム金属複合酸化物粒子3は、NiまたはCoを主成分として含み、具体的には、一般式:LixNi1−yMyO2(式中、0.05≦x≦1.2、0≦y≦0.7、MはFe、Co、Mn、Cu、Zn、Al、Sn、B、Ga、Cr、V、Ti、Mg、Ca、Srからなる群より選ばれる一種以上である。)、またはLixCo1−yMyO2(式中、0.9≦x≦1.2、0≦y≦0.1、MはMg、Al、Ti及びZrからなる群より選ばれる一種以上である。)で表されるリチウム金属複合酸化物粒子である。
本発明のリン酸塩皮膜2は、上記リチウム金属複合酸化物粒子3の表面を被覆し、温度上昇時に酸素の脱離を抑制するものであればよい。
すなわち、リチウム金属複合酸化物粒子を正極とした場合、充電時にはリチウム金属複合酸化物粒子からLiが引き抜かれるため、構造が不安定となり、リチウム金属複合酸化物粒子と電解液との界面で、結合の弱い酸素の脱離が起こる。そこで、リチウム金属複合酸化物粒子の表面をリンと酸素の共有結合による強固な(PO4)3−ポリアニオンで被覆することにより、酸素の脱離を抑制するものである。
さらに、リチウム金属複合酸化物粒子表面と連続的につながり、剥離しにくい構造でLiイオンの拡散が容易であればよい。
炭素皮膜1による被覆は、上記リン酸塩皮膜2で被覆されたリチウム金属複合酸化物粒子の表面を被覆し、電子伝導性を向上させるものである。
炭素源には、酢酸、クエン酸等の有機酸や、セルロース、グルコース、スクロース、ラクトース、マルトース等の糖、ポリビニルアルコール等のポリマー等を用いることができる。なお、リン酸塩皮膜で被覆されたリチウム金属複合酸化物粒子に対する炭素材料の質量比率は限定されるものではないが、炭素材料の質量比率は低いほど正極活物質量を低減できる。
[リチウム金属複合酸化物粒子の製造方法]
リチウム金属複合酸化物粒子の製造方法は特に限定されず、LiにNi、Coを主体とする少なくとも一種以上の遷移金属元素を固溶させられる方法であればよい。
例えば、Li2 CO3(炭酸リチウム)とNiCO3(炭酸ニッケル)とCoCO3(炭酸コバルト)とを、LiとNiとCoとのモル比が1:0.5:0.5となるように乳鉢で混合した後、この混合物を空気中850℃で20時間熱処理して、LiNi0.5Co0.5O2 から成るリチウム金属複合酸化物粒子を作製する方法などが挙げられる。
リン酸塩皮膜による被覆方法は、リン酸存在下に、有機溶剤中で粉砕する方法が使用できる。この方法によれば、アトライタ等によってリチウム金属複合酸化物粒子を粉砕する際にリン酸を添加することにより、粉砕によって凝集粒子に新生面が生じても瞬時に溶媒中のリン酸と反応し、粒子表面に安定なリン酸塩皮膜が形成される。また、その後、粉砕されたリチウム金属複合酸化物粒子が凝集しても、接触面はすでに安定化されており、解砕により被覆の不完全領域が生じることはない。
リン酸塩皮膜の形成に用いるリン酸としては、特に制限はなく、市販されている通常のリン酸、例えば、85%濃度のリン酸水溶液を使用することができる。
即ち、0.1mol/kg未満であるとリチウム金属複合酸化物粒子の表面処理が十分に行なわれないために酸素の脱離抑制が十分ではない。
たとえば、リン酸塩皮膜で被覆したリチウム金属複合酸化物粒子をアセトンに溶解した酢酸セルロース溶液に含浸する。乾燥後、加熱炉でアルゴン雰囲気中にて昇温して保持する。次いで、アルゴン雰囲気中にて段階的に冷却する。この工程によりリン酸塩皮膜で被覆したリチウム金属複合酸化物粒子表面を、さらに、炭素で被覆することができる。
上記非水電解質二次電池用正極活物質を用いて、例えば、以下のようにして正極を作製する。
まず、粉末状の正極活物質、導電材、結着剤を混合し、さらに必要に応じて活性炭、粘度調整等の目的の溶剤を添加し、これを混練して正極合材ペーストを作製する。正極合材ペースト中のそれぞれの混合比も、二次電池の性能を決定する重要な要素となる。
溶剤を除いた正極合材の固形分の全質量を100質量部とした場合、一般の非水系電解質二次電池の正極と同様、正極活物質の含有量を50〜95質量部とし、導電材の含有量を1〜30質量部とし、結着剤の含有量を1〜20質量部とすることが望ましい。
このようにして、シート状の正極を作製することができる。このシート状の正極は、目的とする電池に応じて適当な大きさに裁断等をして、電池の作製に供するものである。ただし、正極の作製方法は、前記例示のものに限られることなく、他の方法によってもよい。
用いる結着剤は、活物質粒子をつなぎ止める役割を果たすもので、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ素ゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、スチレンブタジエン、セルロース系樹脂、ポリアクリル酸などを用いることができる。
負極としては、例えば、金属リチウム、リチウム合金等、また、リチウムイオンを吸蔵・脱離できる負極活物質に結着剤を混合し、適当な溶剤を加えてペースト状にした負極合材を、銅等の金属箔集電体の表面に塗布、乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成したものを使用する。
この場合、負極結着剤としては、正極同様、ポリフッ化ビニリデン等の含フッ素樹脂等を用いることができ、これら活物質および結着剤を分散させる溶剤としてはN−メチル−2−ピロリドン等の有機溶剤を用いることができる。
用いる有機溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、トリフルオロプロピレンカーボネート等の環状カーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジプロピルカーボネート等の鎖状カーボネート、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメトキシエタン等のエーテル化合物、エチルメチルスルホン、ブタンスルトン等の硫黄化合物、又はリン酸トリエチル、リン酸トリオクチル等のリン化合物等から選ばれる少なくとも1種を用いることができる。
いずれの形状を採る場合であっても、正極および負極を、セパレータを介して積層させて電極体とし、この電極体に上記非水系電解液を含浸させる。正極集電体と外部に通ずる正極端子との間、並びに負極集電体と外部に通ずる負極端子との間を集電用リード等を用いて接続する。以上の構成のものを電池ケースに密閉して電池を完成させる。
[1.リチウム・ニッケル複合酸化物粒子の作製]
先ず、Li2CO3(炭酸リチウム)とMnCO3(炭酸マンガン)とNiCO3(炭酸ニッケル)とCoCO3(炭酸コバルト)とを、LiとNiとCoとMnのモル比が1:0.45:0.45:0.1となるように乳鉢で混合した後、この混合物を空気中850℃で20時間熱処理して、LiNi0.45Co0.45Mn0.1O2から成るリチウム・ニッケル複合酸化物粒子を作製した。
次に、容器内部を窒素で置換したアトライタを用い、回転数200rpmで、リチウム・ニッケル複合酸化物粒子1kgを1.5kgのイソプロパノール中で2時間粉砕し、リチウム・ニッケル複合酸化物粒子を作製した。
リン酸塩皮膜で被覆したリチウム・ニッケル複合酸化物粒子をアセトンに溶解した酢酸セルロース(アセチル基の含有率:39.7質量%、重量平均分子量Mw50000)溶液に含浸する。添加した酢酸セルロースの量は、処理したリン酸塩皮膜で被覆したリチウム・ニッケル複合酸化物粒子の5質量%である。
炭素前駆体の溶液としての利用は、リン酸塩皮膜で被覆したリチウム・ニッケル複合酸化物粒子上への完全な分配を可能とする。乾燥後、加熱炉でアルゴン雰囲気中にて700℃まで6℃/minで昇温して、1hr保持する。次いで、アルゴン雰囲気中にて段階的に冷却する。
図1に、この炭素皮膜1およびリン酸塩皮膜2で被覆した実施例1に係るリチウム・ニッケル複合酸化物粒子11aの断面図を示す。3aは、リン酸塩及び炭素による被覆前のリチウム・ニッケル複合酸化物粒子である。
この試料は、1質量%の炭素を含み、これは酢酸セルロースの炭化効率20%に相当する。
得られたリチウム・ニッケル複合酸化物粒子のリン酸塩皮膜厚みは、XPSにてP、Oスペクトルをモニターした。皮膜のPのプロファイルから、最大強度の50%に低下する位置を皮膜と下地の界面位置とし、表面から界面位置までのスパッタリング時間L(sec)を読み取った。このLに標準試料であるSiO2におけるスパッタリング速度5nm/minを乗じてSiO2換算膜厚とした。その結果を表1に示す。
正極活物質粉末60質量部にアセチレンブラック(電気化学工業株式会社製)30質量部およびPTFE(ダイキン工業株式会社製)10質量部を混合し、ここから150mgを取り出して、圧力100MPaで直径11mmのペレットを作製し、正極とした。負極としてリチウム金属を用い、電解液には1MのLiPF6を支持塩とするエチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)の等量混合溶液(富山薬品工業株式会社製)を用いた。
これらを用いて、露点が−80℃に管理されたAr雰囲気のグローブボックス中で、2032型のコイン電池を作製した。
作製した電池は24時間程度放置し、OCVが安定した後、初期放電容量の測定を行った。
初期放電容量については、正極に対する電流密度を0.5mAとし、カットオフ電圧を4.3−3.0Vとして充放電試験を行い評価した。表1にその結果を示す。
熱安定性の評価としては、充電した正極合材の発熱挙動についてDSC(示差走査熱量計)(株式会社リガク製:DSC−10A)を用いて調べた。具体的には、発熱ピーク強度、1回目の充電を行った後の正極合材が発する熱の総量である初期総発熱量、充放電20サイクル目の正極合材が発する熱の総量である20サイクル目総発熱量を測定した。その測定結果を表1に示す。
まず、作製した図2に示す2032型コイン電池を24時間程度放置してOCVを安定させた。その後、正極に対する電流密度を0.5mA/cm2 として、電圧4.3Vまで充電し、電圧規定で電流値が0.01mA以下になったら充電終了とする定電流定電圧(CCCV)方式による充電を行った。
実施例1においてリン酸塩皮膜による被覆工程を省いた以外は、全て同様の方法にて2032型コイン電池を製造した。
作製した電池の初期放電容量の測定は、実施例1と同様の方法で行い、熱安定性の評価も、実施例1と同様に、充電した正極合材についてDSC(示差走査熱量計)を用いて発熱挙動を調べることで行った。
電池の初期放電容量、発熱ピーク強度、初期総発熱量、20サイクル目総発熱量の測定結果を表1に示す。
[1.リチウム・ニッケル複合酸化物粒子の作製]
先ず、Li2CO3(炭酸リチウム)とMnCO3(炭酸マンガン)とNiCO3(炭酸ニッケル)とCoCO3(炭酸コバルト)とを、LiとNiとCoとMnのモル比が1:0.33:0.33:0.33になるように乳鉢で混合した以外は実施例1と同様にして炭素皮膜およびリン酸塩皮膜で被覆した後、この混合物を空気中850℃で20時間熱処理して、LiNi0.33Co0.33Mn0.33O2から成るリチウム・ニッケル複合酸化物粒子を作製し、それらを正極活物質として用いた。
次に、容器内部を窒素で置換したアトライタを用い、回転数200rpmで、リチウム・ニッケル複合酸化物粒子1kgを1.5kgのイソプロパノール中で2時間粉砕し、リチウム・ニッケル複合酸化物粒子を作製した。
粉砕途中または粉砕後に、表2の記載に従って所定量の85%オルトリン酸水溶液をリチウム・ニッケル複合酸化物粒子に添加、混合した。その後、リチウム・ニッケル複合酸化物粒子を真空中120℃で4時間乾燥させ、厚み12nmのリン酸塩皮膜で被覆したリチウム・ニッケル複合酸化物粒子を得た。
リン酸塩皮膜で被覆したリチウム・ニッケル複合酸化物粒子をアセトンに溶解した酢酸セルロース(アセチル基の含有率:39.7質量%、重量平均分子量Mw50000)溶液に含浸する。添加した酢酸セルロースの量は、処理したリン酸塩皮膜で被覆したリチウム・ニッケル複合酸化物粒子の5質量%である。炭素前駆体の溶液としての利用は、リン酸塩皮膜で被覆したリチウム・ニッケル複合酸化物粒子上への完全な分配を可能とする。
この試料は、1質量%の炭素を含み、これは酢酸セルロースの炭化効率20%に相当する。
得られたリチウム・ニッケル複合酸化物粒子のリン酸塩皮膜厚みは、XPSにてP、Oスペクトルをモニターした。皮膜のPのプロファイルから、最大強度の50%に低下する位置を皮膜と下地の界面位置とし、表面から界面位置までのスパッタリング時間L(sec)を読み取った。このLに標準試料であるSiO2におけるスパッタリング速度5nm/minを乗じてSiO2換算膜厚とした。表2にその結果を示す。
正極活物質粉末60質量部にアセチレンブラック(電気化学工業株式会社製)30質量部およびPTFE(ダイキン工業株式会社製)10質量部を混合し、ここから150mgを取り出して、圧力100MPaで直径11mmのペレットを作製し、正極とした。負極としてリチウム金属を用い、電解液には1MのLiPF6を支持塩とするエチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)の等量混合溶液(富山薬品工業株式会社製)を用いた。これらを用いて、露点が−80℃に管理されたAr雰囲気のグローブボックス中で、2032型のコイン電池を作製した。
実施例4においてリン酸塩皮膜による被覆工程を省いた以外は全て同様の方法にてコイン電池を製造した。
作製した電池の初期放電容量の測定は、実施例4と同様の方法で行い、熱安定性の評価も、実施例4と同様に、充電した正極合材についてDSC(示差走査熱量計)を用いて発熱挙動を調べることで行った。
初期放電容量、発熱ピーク強度、初期総発熱量、20サイクル目総発熱量の測定結果を表2に示す。
[1.リチウム・ニッケル複合酸化物粒子の作製]
先ず、Li2CO3(炭酸リチウム)とMnCO3(炭酸マンガン)とNiCO3(炭酸ニッケル)とCoCO3(炭酸コバルト)とを、LiとNiとCoとMnのモル比が1:0.5:0.5:0になるように乳鉢で混合した以外は実施例1〜3と同様にして炭素皮膜およびリン酸塩皮膜で被覆した後、この混合物を空気中850℃で20時間熱処理して、LiNi0.5Co0.5O2から成るリチウム・ニッケル複合酸化物粒子を作製し、それらを正極活物質として用いた。
次に、容器内部を窒素で置換したアトライタを用い、回転数200rpmで、リチウム・ニッケル複合酸化物粒子1kgを1.5kgのイソプロパノール中で2時間粉砕し、リチウム・ニッケル複合酸化物粒子を作製した。
粉砕途中または粉砕後に、表3の記載に従って所定量の85%オルトリン酸水溶液をリチウム・ニッケル複合酸化物粒子に添加、混合した。その後、リチウム・ニッケル複合酸化物粒子を真空中120℃で4時間乾燥させ、厚み12nmのリン酸塩皮膜で被覆したリチウム・ニッケル複合酸化物粒子を得た。
リン酸塩皮膜で被覆したリチウム・ニッケル複合酸化物粒子を、アセトンに溶解した酢酸セルロース(アセチル基の含有率:39.7質量%、重量平均分子量Mw50000)溶液に含浸する。添加した酢酸セルロースの量は、処理したリン酸塩皮膜で被覆したリチウム・ニッケル複合酸化物粒子の5質量%である。炭素前駆体の溶液としての利用は、リン酸塩皮膜で被覆したリチウム・ニッケル複合酸化物粒子上への完全な分配を可能とする。
図1に、この炭素皮膜1およびリン酸塩皮膜2で被覆した実施例7に係るリチウム・ニッケル複合酸化物粒子11cの断面図を示す。3cは、リン酸塩及び炭素による被覆前のリチウム・ニッケル複合酸化物粒子である。
この試料は、1質量%の炭素を含み、これは酢酸セルロースの炭化効率20%に相当する。
得られたリチウム・ニッケル複合酸化物粒子のリン酸塩皮膜厚みは、XPSにてP、Oスペクトルをモニターした。
皮膜のPのプロファイルから、最大強度の50%に低下する位置を皮膜と下地の界面位置とし、表面から界面位置までのスパッタリング時間L(sec)を読み取った。このLに標準試料であるSiO2におけるスパッタリング速度5nm/minを乗じてSiO2換算膜厚とした。
表3にその結果を示す。
正極活物質粉末60質量部にアセチレンブラック(電気化学工業株式会社製)30質量部およびPTFE(ダイキン工業株式会社製)10質量部を混合し、ここから150mgを取り出して、圧力100MPaで直径11mmのペレットを作製し、正極とした。
負極としてリチウム金属を用い、電解液には1MのLiPF6を支持塩とするエチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)の等量混合溶液(富山薬品工業株式会社製)を用いた。
これらを用いて、露点が−80℃に管理されたAr雰囲気のグローブボックス中で、2032型のコイン電池を作製した。
電池の初期放電容量、発熱ピーク強度、初期総発熱量、20サイクル目総発熱量の測定結果を表3に示す。
実施例7においてリン酸塩皮膜による被覆工程を省いた以外は、全て同様の方法にてコイン電池を製造した。
作製した電池の初期放電容量の測定は、実施例7と同様の方法で行い、熱安定性の評価も、実施例7と同様に、充電した正極合材についてDSC(示差走査熱量計)を用いて発熱挙動を調べることで行った。
電池の初期放電容量、発熱ピーク強度、初期総発熱量、20サイクル目総発熱量の測定結果を表3に示す。
[1.リチウム・ニッケル複合酸化物粒子の作製]
硫酸ニッケル六水和物 、硫酸コバルト七水和物 、硫酸アルミニウムをNiとCoとAlのモル比が0.8:0.15:0.05になるように混合し、水溶液を調製した以外は実施例1と同様にして炭素皮膜およびリン酸塩皮膜で被覆した。この水溶液をアンモニア水および苛性ソーダ水溶液と同時に、50℃に保温された水をはった吐出口付攪拌反応槽中に滴下した。pHは11.5に保持し、滞留時間は11時間となるように制御した。
次に、容器内部を窒素で置換したアトライタを用い、回転数200rpmで、リチウム・ニッケル複合酸化物粒子1kgを1.5kgのイソプロパノール中で2時間粉砕し、リチウム・ニッケル複合酸化物粒子を作製した。
粉砕途中または粉砕後に、表4の記載に従って所定量の85%オルトリン酸水溶液をリチウム・ニッケル複合酸化物粒子に添加、混合した。その後、リチウム・ニッケル複合酸化物粒子を真空中120℃で4時間乾燥させ、厚み12nmのリン酸塩皮膜で被覆したリチウム・ニッケル複合酸化物粒子を得た。
リン酸塩皮膜で被覆したリチウム・ニッケル複合酸化物粒子をアセトンに溶解した酢酸セルロース(アセチル基の含有率:39.7質量%、重量平均分子量Mw50000)溶液に含浸する。添加した酢酸セルロースの量は、処理したリン酸塩皮膜で被覆したリチウム・ニッケル複合酸化物粒子の5質量%である。
炭素前駆体の溶液としての利用は、リン酸塩皮膜で被覆したリチウム・ニッケル複合酸化物粒子上への完全な分配を可能とする。
図1に、この炭素皮膜1およびリン酸塩皮膜2で被覆した実施例10に係るリチウム・ニッケル複合酸化物粒子11dの断面図を示す。3dは、リン酸塩及び炭素による被覆前のリチウム・ニッケル複合酸化物粒子である。
この試料は、1質量%の炭素を含み、これは酢酸セルロースの炭化効率20%に相当する。
得られたリチウム・ニッケル複合酸化物粒子のリン酸塩皮膜厚みは、XPSにてP、Oスペクトルをモニターした。皮膜のPのプロファイルから、最大強度の50%に低下する位置を皮膜と下地の界面位置とし、表面から界面位置までのスパッタリング時間L(sec)を読み取った。
このLに標準試料であるSiO2におけるスパッタリング速度5nm/minを乗じてSiO2換算膜厚とした。表4にその結果を示す。
正極活物質粉末60質量部にアセチレンブラック(電気化学工業株式会社製)30質量部およびPTFE(ダイキン工業株式会社製)10質量部を混合し、ここから150mgを取り出して、圧力100MPaで直径11mmのペレットを作製し、正極とした。負極としてリチウム金属を用い、電解液には1MのLiPF6を支持塩とするエチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)の等量混合溶液(富山薬品工業株式会社製)を用いた。
これらを用いて、露点が−80℃に管理されたAr雰囲気のグローブボックス中で、2032型のコイン電池を作製した。
電池の初期放電容量、発熱ピーク強度、初期総発熱量、20サイクル目総発熱量の測定結果を表4に示す。
実施例10においてリン酸塩皮膜による被覆工程を省いた以外は全て同様の方法にてコイン電池を製造した。
作製した電池の初期放電容量の測定は、実施例10と同様の方法で行い、熱安定性の評価も、実施例10と同様に、充電した正極合材についてDSC(示差走査熱量計)を用いて発熱挙動を調べることで行った。
電池の初期放電容量、発熱ピーク強度、初期総発熱量、20サイクル目総発熱量の測定結果を表4に示す。
[1.リチウム・ニッケル複合酸化物粒子の作製]
先ず、Li2CO3(炭酸リチウム)とMnCO3(炭酸マンガン)とNiCO3(炭酸ニッケル)とCoCO3(炭酸コバルト)とを、LiとNiとCoとMnのモル比が1:1:0:0なるように乳鉢で混合した以外は実施例1と同様にしてリン酸塩皮膜および炭素皮膜で被覆した後、この混合物を空気中850℃で20時間熱処理して、LiNiO2から成るリチウム・ニッケル複合酸化物粒子を作製し、それらを正極活物質として用いた。
次に、容器内部を窒素で置換したアトライタを用い、回転数200rpmで、リチウム・ニッケル複合酸化物粒子1kgを1.5kgのイソプロパノール中で2時間粉砕し、リチウム・ニッケル複合酸化物粒子を作製した。
粉砕途中または粉砕後に、表5の記載に従って所定量の85%オルトリン酸水溶液をリチウム・ニッケル複合酸化物粒子に添加、混合した。
その後、リチウム・ニッケル複合酸化物粒子を真空中120℃で4時間乾燥させ、厚み12nmのリン酸塩皮膜で被覆したリチウム・ニッケル複合酸化物粒子を得た。
リン酸塩皮膜で被覆したリチウム・ニッケル複合酸化物粒子をアセトンに溶解した酢酸セルロース(アセチル基の含有率:39.7質量%、重量平均分子量Mw50000)溶液に含浸する。添加した酢酸セルロースの量は、処理したリン酸塩皮膜で被覆したリチウム・ニッケル複合酸化物粒子の5質量%である。炭素前駆体の溶液としての利用は、リン酸塩皮膜で被覆したリチウム・ニッケル複合酸化物粒子上への完全な分配を可能とする。
図1に、この炭素皮膜1およびリン酸塩皮膜2で被覆した実施例13に係るリチウム・ニッケル複合酸化物粒子11eの断面図を示す。3eは、リン酸塩及び炭素による被覆前のリチウム・ニッケル複合酸化物粒子である。
この試料は、1質量%の炭素を含み、これは酢酸セルロースの炭化効率20%に相当する。
得られたリチウム・ニッケル複合酸化物粒子のリン酸塩皮膜厚さは、XPSにてP、Oスペクトルをモニターした。皮膜のPのプロファイルから、最大強度の50%に低下する位置を皮膜と下地の界面位置とし、表面から界面位置までのスパッタリング時間L(sec)を読み取った。このLに標準試料であるSiO2におけるスパッタリング速度5nm/minを乗じてSiO2換算膜厚とした。
表5にその結果を示す。
正極活物質粉末60質量部にアセチレンブラック(電気化学工業株式会社製)30質量部およびPTFE(ダイキン工業株式会社製)10質量部を混合し、ここから150mgを取り出して、圧力100MPaで直径11mmのペレットを作製し、正極とした。負極としてリチウム金属を用い、電解液には1MのLiPF6を支持塩とするエチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)の等量混合溶液(富山薬品工業株式会社製)を用いた。これらを用いて、露点が−80℃に管理されたAr雰囲気のグローブボックス中で、2032型のコイン電池を作製した。
電池の初期放電容量、発熱ピークの大きさ、初期総発熱量、20サイクル目総発熱量の測定結果を表5に示す。
実施例13においてリン酸塩皮膜による被覆工程を省いた以外は全て同様の方法にてコイン電池を製造した。
作製した電池の初期放電容量の測定は、実施例13と同様の方法で行い、熱安定性の評価も、実施例13と同様に、充電した正極合材についてDSC(示差走査熱量計)を用いて発熱挙動を調べることで行った。
初期放電容量、発熱ピークの大きさ、初期総発熱量、20サイクル目総発熱量の測定結果を表5に示す。
図1に、この炭素皮膜1およびリン酸塩皮膜2で被覆した実施例16に係るリチウム・ニッケル複合酸化物粒子11fの断面図を示す。3fは、リン酸塩及び炭素による被覆前のリチウム・ニッケル複合酸化物粒子である。
この試料は、1質量%の炭素を含み、これは酢酸セルロースの炭化効率20%に相当する。
作製した電池の初期放電容量の測定は、実施例1と同様の方法で行い、熱安定性の評価も、実施例1と同様に、充電した正極合材についてDSC(示差走査熱量計)を用いて発熱挙動を調べることで行った。
電池の初期放電容量、発熱ピークの大きさ、初期総発熱量、20サイクル目総発熱量の測定結果を表6に示す。
実施例16においてリン酸塩皮膜による被覆工程を省いた以外は、全て同様の方法にてコイン電池を製造した。
作製した電池の初期放電容量の測定を実施例1と同様の方法で行い、熱安定性の評価も、実施例1と同様に、充電した正極合材についてDSC(示差走査熱量計)を用いて発熱挙動を調べることで行った。
電池の初期放電容量、発熱ピークの大きさ、初期総発熱量、20サイクル目総発熱量の測定結果を表6に示す。
図1に、この炭素皮膜1およびリン酸塩皮膜2で被覆した実施例19に係るリチウム・ニッケル複合酸化物粒子11gの断面図を示す。3gは、リン酸塩及び炭素による被覆前のリチウム・ニッケル複合酸化物粒子である。
この試料は、1質量%の炭素を含み、これは酢酸セルロースの炭化効率20%に相当する。
作製したリチウム・コバルト複合酸化物粒子を正極活物質として用い、コイン電池を作製した。
電池の初期放電容量、発熱ピークの大きさ、初期総発熱量、20サイクル目総発熱量の測定結果を表7に示す。
実施例19においてリン酸塩皮膜による被覆工程を省いた以外は全て同様の方法にてコイン電池を製造した。
作製した電池の初期放電容量の測定を実施例1と同様の方法で行い、熱安定性の評価も、実施例1と同様に、充電した正極合材についてDSC(示差走査熱量計)を用いて発熱挙動を調べることで行った。
電池の初期放電容量、発熱ピーク強度、初期総発熱量、20サイクル目総発熱量の測定結果を表7に示す。
2 リン酸塩皮膜
3 リチウム金属複合酸化物粒子
3a 実施例1に係るリチウム・ニッケル複合酸化物粒子
3b 実施例4に係るリチウム・ニッケル複合酸化物粒子
3c 実施例7に係るリチウム・ニッケル複合酸化物粒子
3d 実施例10に係るリチウム・ニッケル複合酸化物粒子
3e 実施例13に係るリチウム・ニッケル複合酸化物粒子
3f 実施例16に係るリチウム・ニッケル複合酸化物粒子
3g 実施例19に係るリチウム・ニッケル複合酸化物粒子
4 リチウム金属負極
5 セパレータ(電解液含浸)
6 正極(評価用電極)
7 ガスケット
8 負極缶
9 正極缶
10 2032型のコイン電池
11 リン酸塩皮膜及び炭素皮膜を有するリチウム金属複合酸化物粒子(本発明の非水電解質正極活物質)
11a 実施例1に係るリン酸塩皮膜及び炭素皮膜を有するリチウム・ニッケル複合酸化物粒子
11b 実施例4に係るリン酸塩皮膜及び炭素皮膜を有するリチウム・ニッケル複合酸化物粒子
11c 実施例7に係るリン酸塩皮膜及び炭素皮膜を有するリチウム・ニッケル複合酸化物粒子
11d 実施例10に係るリン酸塩皮膜及び炭素皮膜を有するリチウム・ニッケル複合酸化物粒子
11e 実施例13に係るリン酸塩皮膜及び炭素皮膜を有するリチウム・ニッケル複合酸化物粒子
11f 実施例16に係るリン酸塩皮膜及び炭素皮膜を有するリチウム・ニッケル複合酸化物粒子
11g 実施例19に係るリン酸塩皮膜及び炭素皮膜を有するリチウム・ニッケル複合酸化物粒子
Claims (4)
- 一般式LixNi1−yMyO2(式中、0.05≦x≦1.2である。また、0≦y≦0.7である。そして、MはFe、Co、Mn、Cu、Zn、Al、Sn、B、Ga、Cr、V、Ti、Mg、Ca、Srからなる群より選ばれる一種以上である。)で表されるリチウム・ニッケル複合酸化物粒子であって、
前記リチウム・ニッケル複合酸化物粒子の粒子表面が、前記粒子表面の複合酸化物自体の金属元素と(PO4)3−ポリアニオンとからなるリン酸塩皮膜、炭素皮膜の順に被覆されていることを特徴とする非水電解質二次電池用正極活物質。 - 一般式LixCo1−yMyO2(式中、0.9≦x≦1.2である。また、0≦y≦0.1である。そして、MはMg、Al、Ti及びZrからなる群より選ばれる一種以上である。)で表される層状構造を有するリチウム含有コバルト複合酸化物粒子であって、
前記リチウム含有コバルト複合酸化物粒子の粒子表面が、前記粒子表面の複合酸化物自体の金属元素と(PO4)3−ポリアニオンとからなるリン酸塩皮膜、炭素皮膜の順に被覆されていることを特徴とする非水電解質二次電池用正極活物質。 - 一般式LixNi1−yMyO2(式中、0.05≦x≦1.2である。また、0≦y≦0.7である。そして、MはFe、Co、Mn、Cu、Zn、Al、Sn、B、Ga、Cr、V、Ti、Mg、Ca、Srからなる群より選ばれる一種以上である。)であるリチウム・ニッケル複合酸化物粒子の粒子表面をリン酸処理により生成した前記粒子表面の複合酸化物自体の金属元素と(PO4)3−ポリアニオンからなるリン酸塩皮膜で被覆する工程と、
前記リン酸塩皮膜により被覆された粒子表面を炭素皮膜により被覆する工程を含むことを特徴とする非水電解質二次電池用正極活物質の製造方法。 - 一般式LixCo1−yMyO2(式中、0.9≦x≦1.2である。また、0≦y≦0.1である。そして、MはMg、Al、Ti及びZrからなる群より選ばれる一種以上である。)であるリチウム含有コバルト複合酸化物粒子の粒子表面をリン酸処理により生成した前記粒子表面の複合酸化物自体の金属元素と(PO4)3−ポリアニオンからなるリン酸塩皮膜で被覆する工程と、
前記リン酸塩皮膜により被覆された粒子表面を炭素皮膜により被覆する工程を含むことを特徴とする非水電解質二次電池用正極活物質の製造方法。
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