以下、本発明の一実施の形態に係る記録装置10(電子機器の一例に対応)について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明において、図1〜図10および図12および図13に示す矢示X1方向を「前」、矢示X2方向を「後(後ろ)」、X1方向とX2方向の両方向に対し水平方向で直交する方向となる矢示Y1方向を「左」、矢示Y2方向を「右」、XY平面と直交する矢示Z1方向を「上」および矢示Z2方向を「下」とそれぞれ規定する。
<記録装置の概略構成について>
図1および図2に示す記録装置10は、記録対象物に記録を行うものであり、図示を省略する設置面に設置される。記録装置10の本体11の前方には各種操作を行うための操作部12が設けられている。なお、本明細書における「記録」には、印刷が含まれるものとする。
図1および図2に示すように、記録装置10は、その左方に開閉可能なカバー13を有している。このカバー13は、インターフェース部14に形成される接続口15を覆う形態で設けられている。図2および図3に示すように、接続口15には、記憶媒体となるメモリーカード16が、インターフェース部14の後方パネル部21(後述)から外側(前方)に飛び出す状態で挿入される。ここで、接続口15に挿入されるメモリーカード16をインターフェース部14から外側に飛び出させるという構成を採用するのは、メモリーカード16のための空間を、本体11のインターフェース部14よりも内部に大きく確保する必要がなくなり、記録装置10の小型化が可能となるためである。このため、接続口15から前方に飛び出た状態でメモリーカード16はカバー13によって覆われることになる。本実施の形態では、図1および図2に示すように、カバー13は左側方からインターフェース部14の前側全体を覆うため、本体11にカバー13の稜線が複数現れることがなくなり、記録装置10の意匠性の向上を図ることができる。
図2、図3および図4に示すように、カバー13にはフック体17が設けられていて、このフック体17はカバー13を閉じたときに本体11の内側に向かって突出する。一方、インターフェース部14には前方に向かって開口する差込口18が設けられている。カバー13を閉じると、フック体17が差込口18に嵌まり込んで、カバー13の閉状態が維持される。また、インターフェース部14は、差込口18が設けられる前方部20と、該前方部20よりも後方に奥まった位置に形成される後方パネル部21とを有する。後方パネル部21には、接続口15が設けられている。このような構成により、接続口15に挿入されたメモリーカード16の前方に飛び出た部分が、前方部20よりも前方に飛び出すことがなくなる。このため、カバー13とメモリーカード16が干渉することなく、カバー13を閉じることが可能となる。
<外装部に対するカバーの保持構造について>
図1〜図3および図5等に示すように、本体11の外側は外装部22によって覆われている。なお、外装部22には、上述したインターフェース部14も含まれるものとする。図4および図5に示すように、カバー13が閉状態のときには、カバー13の後端部に設けられる第1のヒンジ部24がカバー13の回動支点となっている。具体的には、外装部22に設けられる回動軸23に、該第1のヒンジ部24が嵌り込むことにより、カバー13が外装部22に対して回動可能に支持されている。図5に示すように、回動軸23は、外装部22の後端部近傍において上下の2箇所の位置に設けられている。また、外装部22の左側方には側方部25が設けられていて、この側方部25からは左側方に延出する平板状の載置部26が設けられている。そして、載置部26には、その上方に向かって円柱状に形成された回動軸23が突出している。第1のヒンジ部24は、回動軸23と対応するように、カバー13の上下の2箇所の端部に設けられている。該第1のヒンジ部24は、上から見て略C型の形状を呈しており、その内側に回動軸23が嵌まり込んでいる。
また、図5等に示すように、外装部22には、側方部25と傾斜する状態で対向する外側方部28が設けられている。側方部25と外側方部28とは、図6(B)等に示すように、略V字状をなす状態で対向している。この略V字状の部分には平板状の形態を有する3つのリブ部27が設けられている。リブ部27は、弾性変形をしないように強い剛性を有するように形成されている。図5に示すように、リブ部27は、上下方向に3つ並んで設けられている。リブ部27の開口側には前方に向かって略弧状に窪む凹状部30が形成されている。一方、カバー13の左側方かつ後端側には、左方向に向かって略弧状に突出する第2のヒンジ部31が設けられている。第2のヒンジ部31は、2つの第1のヒンジ部24,24の間に存在し、上下方向に沿って設けられている。
図5および図6に示すように、カバー13が閉状態のときには、第2のヒンジ部31は、外装部22とは接触していない。また、外装部22において、第1のヒンジ部24および第2のヒンジ部31よりも後方側で対向する箇所には、第1のヒンジ部24および第2のヒンジ部31の側に向かって突出する突出部32が設けられている。この突出部32の存在により、カバー13を開いたときにそのカバー13が外装部22と接触しやすくなり、カバー13の開方向への回動を容易に規制することができることになる。また、突出部32を設けることで、外装部22と各ヒンジ部24,31との間の隙間を小さくすることができ、外側から外装部22の内部が目視され難くすることができる。さらに、インターフェース部14の底部には、外装部22からカバー13の落下を防止するための受け部33が設けられている。受け部33は、カバー13の下側に位置している。
図6は、カバー13が閉状態のときの各ヒンジ部24,31の外装部22との位置関係を示す図であり、図6(A)が第1のヒンジ部24の位置関係を示す図であり、図6(B)は第2のヒンジ部31の位置関係を示す図である。図6(A)に示すように、カバー13が閉状態のときには、第1のヒンジ部24は、回動軸23の外側に位置し、その回動軸23に対して回動可能な状態で嵌まり込んでいる。すなわち、第1のヒンジ部24が外装部22に対するカバー13の回動支点となっている。
上述したように、第1のヒンジ部24は、上から見て略C型の形状を呈している。このため、第1のヒンジ部24は、カバー13に対して外側に設けられる略弧状の外側部34と、カバー13に対して内側に設けられる略弧状の内側部35とを有する。そして、外側部34の略弧状の先端と内側部35の略弧状の先端との間には隙間が存在している。したがって、回動軸23を外側部34と内側部35で外側から挟み込む形態で、第1のヒンジ部24は回動軸23に対して回動可能に支持される。図6(A)に示すように、外側部34よりも内側部35の肉厚の方が小さく形成されている。このため、外側部34は内側部35よりも大きな剛性を有し、外側部34よりも内側部35の方が撓み易くなっている。それにより、カバー13に外力が加わった際には、外側部34よりも内側部35の方が弾性変形しやすい構成となっている。また、外装部22のうち外側方部28の先端と非接触で対向する部分(奥側部29とする)には逃げ部38Aが設けられている。逃げ部38Aは、奥側部29において回動軸23と対向する位置に存在し、上方に向かって略弧状に切り欠かれている。この逃げ部38Aにより、第1のヒンジ部24は外装部22と干渉することなく自由に回動することが可能となる。
一方、図6(B)に示すように、カバー13が閉状態のときには、第2のヒンジ部31は、外装部22と接触することなく、外装部22に対して開放された状態で位置している。具体的には、第2のヒンジ部31は、リブ部27と外装部22の奥側部29とによって形成される開口空間部36の開口部37に差し掛かっている。この状態では、カバー13は、第1のヒンジ部24によって保持されている。この開口空間部36には上方に向かって略弧状に切り欠かれた逃げ部38Bが面している。逃げ部38Bは、外装部22の奥側部29においてリブ部27と対向する位置に形成されている。
図7は、カバー13が閉状態から開方向に90度移動したときの各ヒンジ部24,31の外装部22との位置関係を示す図であり、図7(A)は第1のヒンジ部24の位置関係を示す図であり、図7(B)は第2のヒンジ部31の位置関係を示す図である。カバー13を閉状態から開方向に向かって90度回動させると、第1のヒンジ部24は、図7(A)に示すように、回動軸23の中心を支点として、開方向に向かって90度回動する。一方、第2のヒンジ部31は、図7(B)に示すように、開口空間部36の内部に入り込んで、リブ部27の凹状部30と接触し始める。回動角が0度から90度の間においては、カバー13は第1のヒンジ部24を回動支点として回動する。また、回動角が90度の状態では、カバー13は、第1のヒンジ部24によって保持されるとともに、第2のヒンジ部31によっても保持され始める。このときのカバー13は、第1のヒンジ部24によって外装部22の外側に外れるのが防止される。しかしながら、第2のヒンジ部31によるカバー13の保持され始めることにより、第2のヒンジ部31によってもカバー13が外装部22の外側に外れるのが防止され始める。
図8は、カバー13が閉状態から開方向に100度移動したときの各ヒンジ部24,31の外装部22との位置関係を示す図であり、図8(A)は第1のヒンジ部24の位置関係を示す図であり、図8(B)は第2のヒンジ部31の位置関係を示す図である。カバー13の90度から100度までの回動は、図8(A)に示すように、第1のヒンジ部24を回動支点として行われる。
一方、カバー13が90度の回動角を超えて開いていくと、第2のヒンジ部31は、図8(B)に示すように、開口空間部36の内部にさらに入り込んでいく。そして、回動角が大きくなるにつれて、第2のヒンジ部31と凹状部30との接触面積も大きくなっていき、回動角が100度となったときに、第2のヒンジ部31は、凹状部30と最大の面積で接触する。このとき、凹状部30の対向部位であって第2のヒンジ部31の形状に倣う部分は、その大部分が第2のヒンジ部31と接触する。また、回動角が90度を超えると、第2のヒンジ部31は凹状部30と接触するため、第2のヒンジ部31には凹状部30との間で摩擦抵抗が働く。このため、回動角が90度を超えると、カバー13の開動作に対してブレーキをかける力が作用する。したがって、同じ力でカバー13を開くとすると、90度から100度まで回動する際のカバー13の速度は、カバー13を閉状態から90度まで開く際の速度よりも遅くなる。また、90度から100度までの開動作では、カバー13は第1のヒンジ部24を回動支点として回動する。また、上述したように、回動角が100度になると、第2のヒンジ部31は凹状部30と最大の面積で接触する。このため、回動角が100度の状態では、カバー13は、第1のヒンジ部24および第2のヒンジ部31の双方によって、外装部22の外側に外れるのが防止される。
図9は、カバー13が開方向に110度移動したときの各ヒンジ部24,31の外装部22との位置関係を示す図であり、図9(A)は第1のヒンジ部24の位置関係を示す図であり、図9(B)は第2のヒンジ部31の位置関係を示す図である。カバー13を100度の回動角を超えて開いてゆくと、図9(A)に示すように、第1のヒンジ部24が回動軸23から外れかける。これは、カバー13を開く際の外力により内側部35が径方向外方に向かって大きく弾性変形することにより生じる。すなわち、図9(A)に示すように、カバー13を100度の回動角を超えてさらに開方向にカバー13を移動させようとすると、カバー13において開方向に加えられる外力Dが、側面部40(外側の側面部)と突出部32の接触部分を支点として、第2のヒンジ部31に伝達される。そして、伝達された力が第2のヒンジ部31の内側部35において径方向外方に向かって力Eとして作用し、該内側部35が弾性変形する。ここで、回動角が110度のときにおける、第1のヒンジ部24の回動軸23に対する外れ量は、100度を超えた直後の回動角のものよりも大きくなる。その結果、回動角が100度を超えると、第1のヒンジ部24はカバー13の回動支点として機能しなくなってゆく。
なお、外側部34は内側部35よりも肉厚が厚いので、外側部34の弾性変形は内側部35の弾性変形よりも小さい。また、カバー13を110度まで回動させると、図9(A)に示すように、第1のヒンジ部24に連接しているカバー13の側面部40が外装部22の突出部32と当接して、カバー13の開方向への回動が規制される。
一方、第2のヒンジ部31は凹状部30と全面で接触しているため、カバー13を100度の回動角を超えて開く際には、カバー13は第2のヒンジ部31を回動支点として開方向に回動しようとする。すなわち、回動角が100度を超えると、回動支点が第1のヒンジ部24から第2のヒンジ部31に移行していく。そして、図9(B)に示すように、回動角が110度になると、カバー13の側面部40が外装部22の突出部32と当接する。この状態では、第2のヒンジ部31が凹状部30と全面で接触するとともに、側面部40が突出部32と当接している状態となる。すなわち、カバー13は、第2のヒンジ部31と側面部40の2点において外装部22に接触している。このとき、カバー13に加えられる外力Dは、第2のヒンジ部31を支点とし、側面部40のうち突出部32との当接部位を作用点として、外装部22に力Gとなって伝達される。このとき、カバー13は、側面部40において突出部32と当接するため、該カバー13の開方向への移動が規制される。
以上のような力の作用により、カバー13には、第2のヒンジ部31を支点として突出部32を後方に押すような回転モーメントが作用することになる。そして、その回転モーメントが外装部22の突出部32において受け止められることにより、カバー13の開方向への移動が規制される。その結果、カバー13に過負荷Dがかかったときの該カバー13の開方向への移動は、外装部22を利用して規制されることになる。しかしながら、外力D(過負荷D)が十分に大きい場合には、その外力Dの作用によって、記録装置10は回転させられる。
この記録装置10の回転について詳述する。まず、カバー13にゆっくりと外力Dを及ぼし、その外力Dを徐々に増加させる場合を考える。そのとき、外力Dが記録装置10の静摩擦による力(反力)を超えると、記録装置10は、外力Dの作用によって動き始める。この場合において、記録装置10が仮に図9に示される部分程度の大きさしかなければ、第2のヒンジ部31が前側(X1側)、突出部32と側面部40との接触部位が後方側(X2側)に向かうように回転するが、記録装置10は図9に示される部分以外にも大きな部分を有している。そのため、記録装置10は第2のヒンジ部31が前側(X1側)に向かうような回転は行わず、記録装置10の左方を右方よりも後方側に押し込むように記録装置10を旋回させる状態で移動させる。
また、図9に示すように、カバー13の背面側には外装部22からの反力Hが加えられる。したがって、カバー13に外力Dがかかると、カバー13には、開方向に向かう外力Dとともに、背面側から押し返される反力Hが作用する。ここで、カバー13の剛性が小さいと、該カバー13に過負荷Dがかかったときに、外装部22からの反力Hに耐え切れず、カバー13が破損してしまうおそれがある。このため、カバー13には、記録装置10の本体11と該本体11が設置される不図示の設置面との摩擦抵抗を超えて本体11を移動させるだけの剛性を持たせるようにしてある。このため、カバー13に過負荷Dがかかった場合でも、本体11側からカバー13に加わる反力Hを押し返して本体11を旋回させることが可能となる。
したがって、カバー13に過負荷Dがかかっても、カバー13を破損させることなく、当該反力Hを本体11の旋回による移動によって逃がすことが可能となる。この際、外装部22の突出部32が力点となって本体11に力が伝達され、本体11が旋回する。なお、リブ部27を外装部22のより右方側に設け、凹状部30と突出部32との距離を大きくすると、第2のヒンジ部31を支点としてカバー13に作用する回転モーメントがより大きなものとなる。これにより、図9に示す場合よりも小さな外力で本体11を旋回させることが可能となり、本体11の旋回を容易に行うことが可能となる。
ここで、記録装置10が旋回させられるときでも、回動軸23は第1のヒンジ部24から完全には外れない。そのため、カバー13に外力Dが作用しなくなると、外側部34と内側部35の弾性復帰が作用し、この弾性復帰の力によって、あるいは外力の作用によって回動軸23が第1のヒンジ部24に嵌まり込む。
また、110度開いた状態からカバー13を閉める際には、第1のヒンジ部24および第2のヒンジ部31は上述した開動作のときと逆の動作を行う。110度開いた状態から、カバー13を閉める場合において第1のヒンジ部24が回動軸23から外れかけていると、カバー13の回動角が100度になるまでの間に、外側部34と内側部35の弾性復帰により回動軸23が第1のヒンジ部24に嵌まり込む(図8(A)参照)。それにより、以後の閉方向への動作においては第1のヒンジ部24はカバー13の回動支点となる。同時に、カバー13の側面部40が突出部32から離れる(図8(A)参照)。
回動角が100度の状態から、さらに、カバー13を閉じていくと、回動角が90度より小さくなった時点で第2のヒンジ部31がリブ部27から離れる(図7(B)参照)。このため、第2のヒンジ部31は、カバー13の回動支点とはならなくなる。一方、第1のヒンジ部24はカバー13の回動支点となって回動軸23の周りを回動する(図7(A)参照)。この時点で、カバー13の回動支点は第2のヒンジ部31から第1のヒンジ部24に完全に移行する。このため、回動角が90度以下での閉動作は、第1のヒンジ部24を回動支点として行われる。したがって、回動角が90度の状態から、さらに、カバー13を閉じていくと、該カバー13は第1のヒンジ部24を回動支点として閉状態まで回動する(図6(A)参照)。一方、第2のヒンジ部31は閉動作に従って開口空間部36から離脱していき、閉状態のときには開口空間部36の開口部37近傍まで移動する(図6(B)参照)。
<外装部からカバーが外れる構造について>
記憶媒体となるメモリーカード16には多様な形状のものが存在し、その中でも形状が大きなものを使用した場合には、図10に示すように、メモリーカード16の一部が接続口15から前方に飛び出すことになる。この状態で、カバー13を閉じると、該カバー13はメモリーカード16の先端部16aと当接し、該カバー13の閉動作は阻止される。このため、カバー13は一部開いたままの状態で維持されることになる。
図4、図10、図12および図13に示すように、カバー13には、係合部50が設けられている。係合部50は、メモリーカード16の先端部16aが衝突して、この先端部16aを受け止めるための部分である。この係合部50には、凹部51と凸部52とが設けられている。凹部51はメモリーカード16の先端部16aが入り込む部分であり、凸部52よりもヒンジ部24側に設けられている。また、凹部51は、メモリーカード16の入り込みに対応した長さおよび幅を有して形成されている。
この凹部51には、カバー13の裏面13a(インターフェース部14と対向する側の面)に対して略平行となる底部51aと、底部51aから裏面13a側に向かうように傾斜して設けられるテーパ部51bと、急斜面部51cとを有している。
テーパ部51bは、底部51aと凸部52との間に存在している。このテーパ部51bは、急斜面部51cよりも裏面13aに対する傾斜角度が緩やかとなるように設けられている。一方、急斜面部51cは凸部52とは反対側のヒンジ部24側に設けられている。この急斜面部51cは、テーパ部51bよりも裏面13aに対する傾斜角度が急角度となるように設けられている。そのため、この急斜面部51cでは、メモリーカード16の先端部16aのうち、図10等における左角側が引っ掛り易い状態となっている。
また、凸部52は、裏面13aよりも突出している部分である。ただし、凸部52の裏面13aに対する突出高さは、接続口15にメモリーカード16が位置していない状態でカバー13を閉じた場合に、良好にカバー13が閉じる程度のものとなっている。
ところで、上述のような係合部50を有するカバー13に外力Jがかかる場合を考える。このとき、メモリーカード16の先端部16aの凸部52側(図10等において右角側)が、凸部52にぶつかる(または引っ掛かる)。そして、凸部52と先端部16aの衝突の後に、さらにカバー13を閉じると、メモリーカード16は矢示A方向に撓もうとする。
ここで、仮に凹部51がないと仮定する。その場合、メモリーカード16のうち図10において先端部16aのうち、図10等において左角側が、凸部52よりも裏面13aに先に衝突して、メモリーカード16の矢示A方向に向かう変形が開始される。その場合、裏面13aでの先端部16aの左角側の位置ずれが生じる等により、変形が安定的とならないが、本実施の形態のように凹部51が存在する場合には、凹部51にメモリーカード16が位置する。そのため、裏面13aに対して、凸部52よりも先に、先端部16aの図10等において左角側が接触するのが防止可能となる。
そして、メモリーカード16が矢示A方向に撓み始めると、今度は、メモリーカード16の先端部16aのうち図10等における右角側とは反対側の左角側が、底部51aまたは急斜面部51cに接触する。この接触により、メモリーカード16を矢示B方向(矢示Aとは逆方向)に撓ませる力が発生する。これら矢示A方向の力と矢示B方向の力の発生の結果、メモリーカード16とカバー13とが接触している地点を支点(支点Sとする)として、メモリーカード16が撓み変形により逃げていたモーメントが第1のヒンジ部24に掛かる。それによって、メモリーカード16は、破損することなく、第1のヒンジ部24から外れる。
ところで、図10に示すように、カバー13においては、第1のヒンジ部24が外装部22の回動軸23に嵌まり込む。そして、第1のヒンジ部24を回動支点としてカバー13の開閉の動作が行われる。また、上述したように、第1のヒンジ部24は略C型の形状を呈しており、外側部34と内側部35を有する。このため、第1のヒンジ部24は、外側部34と内側部35との間において開口する開口部45を有する。図10に示すように、第1のヒンジ部24に作用する力Kは、該第1のヒンジ部24の開口部45の開口方向とは逆方向に作用する。このため、力Kにより第1のヒンジ部24を弾性変形させることができれば、その力Kを利用して、第1のヒンジ部24を回動軸23から外すことが可能となる。ここで、カバー13において接続口15と対向する部分(メモリーカード16と接触する部分)は、可撓性を有している。これは、メモリーカード16と接触する部位に可撓性を持たせることにより、カバー13が可撓性を有しない場合のように反力Mによってカバー13が破損するのを防止するためである。
上述したように、内側部35の肉厚は、外側部34の肉厚よりも小さく形成されており、外側部34は、内側部35よりも大きな剛性を有している。このような構成により、内側部35は外力によって弾性変形しやすいものとなっている。したがって、第1のヒンジ部24に作用する力Kを第1のヒンジ部31に集中して作用させ、該内側部35を径方向外方に向かって弾性変形させることが可能となり、その結果、第1のヒンジ部24を回動軸23から外すことが可能となる。ここで、図11に示すように、第1のヒンジ部24における開口部45の幅寸法Qと回動軸23の直径寸法2Rとの間には、2R>Qの関係が成立している。このような関係を有することにより、第1のヒンジ部24は回動軸23から自然に抜けることがなくなり、回動軸23に対して回動可能に維持される。
図12に示すように、支点Sと、該支点Sから回動軸23の中心Oを通過する線が外側部34の内周面と交わる点Tとの距離Raとし、支点Sと外側部34における内周側の開口端部Uとの距離をRbとする。図11および図12では、開口端部Uは回動軸23に接触しているが、開口端部Uが回動軸23に対して若干離れていても良い。
図12において2R>Qの関係に加え、Ra>Rbの関係が成り立つときには、第1のヒンジ部24が回動軸23から外れる際に、カバー13の支点Sはメモリーカード16上を滑ろうとする。具体的には、上記関係が成り立つときには、図12に示すように、外側部34の開口端部Uが、点T(点Tは支点Sから回動軸23の中心Oを通過する線が外側部34の内周面と交わる点)よりも周方向において開口部45側に位置している。すなわち、外側部34は、周方向において点Tを開口部45側に超えて回動軸23の外周面を略弧状の形態で覆っている。このため、カバー13にかかる外力J(図10参照)が、支点Sを介して第1のヒンジ部24に力Kとして作用しても、第1のヒンジ部24の回動軸23からの外れ動作は外側部34によって阻止される。
したがって、第1のヒンジ部24が回動軸23から外れ難くなるものの、内側部35は外側部34よりも撓み易いため、外力Jが所定より大きくなると、図13に示すように、その外力Jにより、カバー13は、破線で示す元の状態から右斜め下方にずれる。それに伴い、メモリーカード16に対するカバー13の支点Sがから図13において左斜め下に移行しようとするが、その移動は、先端部16aが底部51aまたは急斜面部51cに衝突することで規制される。この場合、図13に示すように、外側部34が矢示V方向に移動する。このように外側部34が回動軸23上において矢示V方向にずれるため、内側部35が撓むことで外側部34によって第1のヒンジ部24の回動軸23からの外れ動作が阻止されることがなくなる。その結果、内側部35が径方向外方に向かって撓み、それによって第1のヒンジ部24は支点Sを中心として、図13中の矢示X方向に向かって回動軸23から外れる。
一方、2R>Qの関係に加え、図14に示すように開口端部Uが点Tよりも周方向において開口部45から離れる側に位置しているときには、支点Sはカバー13の裏面13a(凹部51を含む)をほとんど移動することなく、第1のヒンジ部24は回動軸23から外れる。このとき、外力Jが作用しても、外側部34によっては回動軸23からの外れ動作は阻止されず、内側部35が撓むことにより、第1のヒンジ部24は回動軸23から外れる。したがって、支点Sはメモリーカード16上において維持され、該支点Sを中心として、第1のヒンジ部24は、図13中の矢示X方向に向かって回動軸23から外れる。
<本実施の形態における効果>
以上のような構成の記録装置10によると、カバー13を閉じる方向に外力Jを加えると、該カバー13とメモリーカード16とが接触し、カバー13には、メモリーカード16の先端部16aを支点Sとして第1のヒンジ部24を外装部22の回動軸23から外す方向に力Kが作用する。このため、カバー13におけるメモリーカード16との接触部位を支点Sとして、カバー13に加わる外力Jを第1のヒンジ部24に伝えることができ、該第1のヒンジ部24を回動軸23から外すことが可能になる。このため、カバー13に外力Jがかかってもカバー13が外装部から外れることで、カバー13およびメモリーカード16が破損するのを防止できる。
また、本実施の形態では、カバー13の裏面13aには、凸部52が設けられている。このため、メモリーカード16の先端部16aの凸部52側(右角側)が、凸部52にぶつかる(または引っ掛かる)。それにより、メモリーカード16が裏面13aでの位置ずれを防ぎながら、当該メモリーカード16を良好に撓ませることが可能となる。さらに、凸部52以外に凹部51も設けられている。このため、メモリーカード16の先端部16aを凹部51に位置させることが可能となり、凸部52よりも先にメモリーカード16の先端部16aがカバー13に衝突するのを防止可能となる。それにより、メモリーカード16の変形が生じた後に、凸部52側に位置ずれが生じるのを防止可能となる。ここで、カバー13の閉じ動作のときに、先端部16aの接触部位が凸部52側に移動すると、メモリーカード16の曲げ量が大きくなるが、凸部52と先端部16aとの間の衝突により、そのような曲げ量が大きくなるのを防止可能となり、メモリーカード16の破損を良好に防止可能となる。
また、第1のヒンジ部24は、メモリーカード16の先端部16aを支点Sとして該第1のヒンジ部24に作用する力Kにより弾性変形する。このように、第1のヒンジ部24が弾性変形することにより、第1のヒンジ部24を回動軸23からより外れやすくすることが可能となる。したがって、外力Jが大きなものでなくても、カバー13を外装部22から外すことが可能となり、カバー13とメモリーカード16の破損を良好に防止可能となる。
また、第1のヒンジ部24の外側部34は内側部35よりも大きな剛性を有している。このため、第1のヒンジ部24に作用する力Kが剛性の小さい内側部35に集中することになり、内側部35を弾性変形させて、第1のヒンジ部24を回動軸23から外すことが可能となる。
また、第1のヒンジ部24の内側部35よりも外側部34の肉厚を大きく形成している。このため、第1のヒンジ部24に作用する力Kにより肉厚の小さい内側部35が大きく撓むことになるため、内側部35を弾性変形させて、第1のヒンジ部24を回動軸23から外すことが可能となる。
また、第1のヒンジ部24における開口部45の幅が、回動軸23の直径よりも小さく形成されている。このため、第1のヒンジ部24が回動軸23から外れるのを防止しつつ、第1のヒンジ部24を回動軸23に対して回動可能に支持することが可能となる。
また、カバー13において接続口15に対応する部分は可撓性を有している。このため、カバー13がメモリーカード16の先端部16aに当接した場合でも、メモリーカード16からカバー13に加わる反力Mを分散させて和らげることが可能となる。その結果、カバー13に加えられる外力Jによって容易にカバー13が破損するのを防止できる。
<変形例>
以上、本発明の一実施の形態について述べたが、本発明は、種々変形可能である。以下、それについて述べる。
上述の実施の形態では、第1のヒンジ部24はC型形状に形成されている。しかしながら、第1のヒンジ部24を略円弧状や多角形状等それ以外の形状で形成するようにしても良い。開方向に一定の負荷がかかった場合に、第1のヒンジ部が回動軸23から外れ、カバー13を閉じるときに、回動軸23が第1のヒンジ部24に再び嵌まり込む形態であれば、他の形状としても良い。
また、上述の実施の形態では、第1のヒンジ部24は上下に2つ設けられているが、第1のヒンジ部24の数は2つに限定されるものではなく、1つのみ、あるいは3つ以上設けるようにしても良い。また、第1のヒンジ部24を設ける位置はカバー13の上端部と下端部に限定されるものではなく、カバー13の上端部と下端部の間の位置に設けるようにしても良い。また、第2のヒンジ部31も縦方向に沿って1つ設けることに限定されるのもではなく、複数に分割して設けるようにしても良い。また、たとえば、第1のヒンジ部24を上下方向の中央側に設け、第2のヒンジ部31をカバー13の上下の端部に設けるようにしても良い。
また、上述の実施の形態では、内側部35は外側部34よりも肉薄に形成されている。しかしながら、内側部35が弾性変形可能となるならば、外側部34と内側部35とを同じ厚さ寸法で形成するようにしても良いし、外側部34を内側部35よりも肉薄に形成しても良い。
また、上述の実施の形態では、カバー13において接続口15に対向する部分は、可撓性を有しているが、当該部分を可撓性を有さないような構成としても良い。
また、上述の実施の形態では、差込対象物がメモリーカード16であると共に、カバー13は接続口15が設けられるインターフェース部14の外側を覆う用途で用いられている。しかしながら、差込対象物がメモリーカード16以外であり、そのメモリーカード16以外の他の接続口や他の部位をカバー13が覆う用途で用いられていても良い。ここで、差込対象物としては、たとえば、各種のケーブル、各種の通信機器等としても良く、カバー13はそれらの他の接続口や他の部位を覆う用途で用いるようにしても良い。
また、上述の実施の形態では、カバー13は左側方に設けられているが、カバー13の位置は当該部位に限定されるものではなく、たとえば、右側方に設けても良いし、上方に設けても良い。また、上述の実施の形態では、電子機器の一例として、記録装置10について説明している。しかしながら、電子機器は記録装置10に限られるものではなく、コンピューター、撮像装置、複写機能を有する装置、電話機、ファクシミリ装置、携帯型電子機器、ナビゲーション装置等を始めとする、各種の装置としても良い。