この種の燃焼圧検知センサ付きセラミックグロープラグ(以下、単にグロープラグともいう)としては各種のものが知られている(例えば、特許文献1、2)。図10は、これと同種のグロープラグ901の断面構造を簡略化して示した破断縦断面図である。同図のものは、筒状をなすハウジング110内に、通電することによって発熱する棒状(円軸状)のセラミックヒータ10を、自身の先端(燃焼室内に突出する側の端。図示下端)10aが、ハウジング110の先端から突出するように備えている。本願においてグロープラグ、若しくはその構成部品、又は構成部位、部分に関して先端とは、図10におけるそれらの下端をいい、後端とはその逆の端(上端)をいう。なお、図10中の2点鎖線は、エンジンヘッドHのプラグホールにおける燃焼室の近傍部分を示すものである。
このようなグロープラグ901では、燃焼圧を検知するためにセラミックヒータ(以下、単にヒータともいう)10がハウジング110内において、その軸(軸線)G方向(先後方向)に、数十μm程度と微小ではあるが変位可能に配置されている。このため、ヒータ10は、それ自身とハウジング110の内周面との間に空隙(環状空隙)を保持して配置されている。そしてこのヒータ10の後方には、これに同軸で突き合わせ状に配置された通電用の軸部材25が接続用の短管(円管)19を介して設けられている。これにより、ヒータ10が燃焼圧によって先端10aから後方に押されることによって発生する変位又は圧力を、センサ(歪ゲージや圧電素子)にて検出(測定)して燃焼圧を検知するように構成されている。例えば、同図においては、この軸部材25を介して、その変位又は圧力は、後方に設けられた例えば歪部材210に与え、これに取付けられた歪ゲージ220にて、その歪量を検出し、燃焼圧を検知するように構成されている。
ところで、このグロープラグ901では、高温、高圧の燃焼ガスが、同図中、プラグホールの下方に破線矢印で示したように、ハウジング110の先端に向けて突進するから、このガスが、その先端部位の内周面とヒータ10の外周面との間の環状空隙(隙間)Kを通ってハウジング110内の後方に入り込むのを防止する(シールを確保する)必要がある。このため、同図のグロープラグ901では、ハウジング110の先端部位(先端側ハウジング131)の内側に形成された環状空隙内に、燃焼ガスの侵入を防止する金属製のシール部材60を備えている。このシール部材60は、ハウジング110に対するヒータ10の軸線G方向の変位を許容する必要があるため、それ自体が容易に変形できる金属製の薄膜(メンブレン)など、十分な可撓性のある金属製(例えば、ステンレス鋼製又はニッケル合金製)の薄肉材からなるベローズやダイアフラム(環状ダイヤフラム)のように、環状又は筒状のものとされるのが普通である。因みに、その膜厚は、0.1〜0.2mm程度である。
同図のシール部材60は、後端側が大径部で、先端側が小径部をなすベローズとされている。このようなシール部材60は、後端側をハウジング110の内周面に、先端側をセラミックヒータ10の外周面に、それぞれ周方向に沿って溶接されている。ハウジング110内の環状空隙Kは、このようにシール部材60を配置することにより、その先後が気密状に遮断され、奥の空間K2と先端側の外部(グロープラグの外側)との間におけるシール(気密)が保持されている。なお、上記セラミックヒータ10は、棒状をなすセラミック基体11内に発熱体12を形成してなるセラミックヒータであることから、その外周面11bに、金属製のシール部材60を直接溶接することはできない。このため、セラミック基体11に、薄肉(0.3〜0.5mm)の金属製(例えば、SUS630製)のパイプ20を圧入により外嵌めし、このパイプ20の外周面にシール部材60の先端寄り部位を、外側から所定位置で、周方向に沿って例えばレーザ溶接している。なお、発熱体12に対する通電用の電極端子(接地用電極)16は、このパイプ20の内周面22にて圧接され、溶接されたシール部材60を介して、ハウジング110に電気的に接続されている。なお、他方の電極17は上記した、接続用の短管19を介して軸部材25に接続されている。
一方、セラミック基体11の外周面11b、及びパイプ20の内周面22とも、その表面粗さは高度に、例えば、Raで、0.15〜0.2μm以下に仕上げられていた。これにより、シール部材60が溶接されているパイプ20の内周面22と、セラミック基体11の外周面11bとの間の気密保持が図られていた。
ところが、上記した燃焼圧検知センサ付きセラミックグロープラグにおいては、圧力検知精度の低下がみられるということがあった。これは、ヒータ10をなすセラミック基体11の外周面11bと、これに外嵌めされたパイプ20の内周面22との間を通って、先端側から後方に向けて燃焼ガス(GAS)が侵入することに起因している。すなわち、このガスが、シール部材60で仕切られたグロープラグの奥(内部)の空間K2に、図10中、破線矢印で示したように入り込んでしまうことによるものである。
この種のグロープラグ901では、燃焼圧(燃焼ガス圧)を、ヒータ10の先端10aと共に、シール部材60のうち、燃焼室内側を向く面で受圧することで、ヒータ10が後方に押圧されることによる圧力又は変位をセンサ(歪ゲージや圧電素子)にて検出(測定)して、燃焼圧を検知するように構成されている。このため、シール部材60で仕切られた奥の空間K2に燃焼ガス(以下、単にガスともいう)が入り込むと、その空間K2内は、高温、高圧となるため、センサにノイズを発生させる等の影響がでる上に、シール部材60には逆向きの圧力がかかることになるため、ヒータ10を後方へ押す圧力や変位の低下を招いてしまう。こうしたことに基づき、圧力検知精度は低下するのである。
また、パイプ20の内周面22とセラミック基体11の外周面11bとの隙間にガスが入り込むということは、その隙間にガスの層が形成されることを意味する。このため、たとえ、それが奥の空間K2に迄は入り込まないとしても、セラミックヒータ10の熱が、そのパイプ20およびシール部材60を介して、ハウジング110やシリンダヘッドHへ放熱されにくくなる。これにより、グロープラグ901自体の高温化を招くという問題もある。
ところで、上記したガスの侵入の原因は次のように考えられる。シール部材60をパイプ20に溶接する際、薄肉パイプであるパイプ20には、その溶接部位に対応する部位の内周面に微量ではあるが溶接歪(凹み)が発生する。しかも、ヒータ10をなすセラミック基体11と、これに圧入されている金属製のパイプ20との熱膨張差により、高温、高圧のガス環境下では、パイプ20が相対的に大きく熱膨張する。このような熱膨張があると、パイプ20によるセラミック基体11の締付け力が大きく低下するため、そのパイプ20の内周面とセラミック基体11の外周面との間にガスが入り込みやすい状態となる。そして上記溶接歪(凹み)の存在は、締め付け力の低下が大きい薄肉のパイプの使用においては、ガス溜まりを形成するものともなり、ガスの侵入を助長する要因となると考えられる。
このような問題自体は、セラミック基体11に圧入するパイプ20を、肉厚が十分に厚い厚肉パイプとすることで対応できる、といえる。というのは、パイプ20の肉厚を十分厚くすることによって、同じ締め代(圧入代)でも、その圧入後おいては、セラミック基体11を強く(高い締め付け圧力で)締め付けることができるためである。しかも、その肉厚を厚くすることで、その内周面における溶接歪(凹み)の発生も低減できる。
しかし、ハウジング110の先端寄り部位における内周面と、ヒータ10をなすパイプ20の外周面との間の環状空隙は、ハウジングの径(又はプラグホールのネジ径)と、セラミック基体11の外径との寸法的な制約に基づき、もともと狭小な寸法しか確保できない。さらに、パイプ20に溶接されるシール部材60は、その機能からして、変形容易性が確保されている必要があり、したがって、そのためには、シール部材60における半径方向の寸法(片側の寸法)を、その狭い空隙内でも、できるだけ大きくする必要がある。一方、肉厚が十分な厚肉パイプを採用するとすれば、その半径方向の寸法を小さくする必要がある。とくに、シール部材が、ベローズのように先後長が長いものを使用できず、環状の金属薄膜(メンブレン)形状のものを用いざるを得ないような構造のグロープラグにおいては、その変形容易性を確保する観点からも、シール部材における半径方向の寸法を十分に確保する必要がある。こうしたことからして、従来、シール部材が溶接されるパイプには、厚肉パイプを採用することが困難であり、それ故、そのパイプ20には肉厚が、0.3〜0.5mm程度と薄い、いわゆる薄肉パイプが使用されており、上記問題を発生させていたのである。
本発明は、燃焼圧検知センサ付きセラミックグロープラグにおける上記問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、セラミックヒータをなす、パイプの内周面とセラミック基体の外周面との間の強い締め付けを確保して、パイプの内周面とセラミック基体の外周面との間における先後間の気密性を高め、しかも、シール部材の変形容易性を損なわないようにして、もって、燃焼圧の検知精度を高めることのできる同グロープラグラグを提供することにある。
請求項1に記載の発明とは別の参考発明1(以下、参考発明1)は、筒状をなすハウジング内に、その先端から自身の先端を突出させた棒状をなすセラミックヒータが、該ハウジングの先端寄り部位の内周面と該セラミックヒータの外周面との間に環状空隙を保持して軸方向に変位可能に配置されており、
該セラミックヒータが燃焼圧によって先端から後方に押されることによって発生する圧力又は変位に基づいて燃焼圧を検知するセンサを備えてなる燃焼圧検知センサ付きセラミックグロープラグであって、
前記セラミックヒータは、内部に発熱体を含む棒状をなすセラミック基体と、このセラミック基体の外周面に、内周面が圧接状態で外嵌された金属製のパイプとを含む構成を有しており、
前記環状空隙において、前記ハウジングの内外を気密状に遮断する配置で、前記セラミックヒータの変位を許容するように変形可能に形成された環状又は筒状の金属製のシール部材が、前記パイプに外嵌され、かつ、該パイプの外周面に周方向に沿って溶接されてなる構成を有する燃焼圧検知センサ付きセラミックグロープラグにおいて、
前記パイプは、その先後方向の一部に、前記環状空隙に位置する部位において、他の部位より外径が大きく、周方向において連続して肉厚が厚い環状厚肉部が設けられた異径パイプとされており、
前記シール部材は、該異径パイプのうち、該環状厚肉部でなく、相対的に肉厚が薄い薄肉パイプ部の外周面に溶接されていることを特徴とする。
請求項2に記載の発明とは別の参考発明2(以下、参考発明2)は、上記参考発明1において、前記異径パイプは、前記環状厚肉部の先端側に前記薄肉パイプ部を備えており、前記シール部材は、該薄肉パイプ部の外周面に溶接されていることを特徴とする、燃焼圧検知センサ付きセラミックグロープラグである。
請求項1に記載の発明は、筒状をなすハウジング内に、その先端から自身の先端を突出させた棒状をなすセラミックヒータが、該ハウジングの先端寄り部位の内周面と該セラミックヒータの外周面との間に環状空隙を保持して軸方向に変位可能に配置されており、
該セラミックヒータが燃焼圧によって先端から後方に押されることによって発生する圧力又は変位に基づいて燃焼圧を検知するセンサを備えてなる燃焼圧検知センサ付きセラミックグロープラグであって、
前記セラミックヒータは、内部に発熱体を含む棒状をなすセラミック基体と、このセラミック基体の外周面に、内周面が圧接状態で外嵌された金属製のパイプとを含む構成を有しており、
前記環状空隙において、前記ハウジングの内外を気密状に遮断する配置で、前記セラミックヒータの変位を許容するように変形可能に形成された環状又は筒状の金属製のシール部材が、前記パイプに外嵌され、かつ、該パイプの外周面に周方向に沿って溶接されてなる構成を有する燃焼圧検知センサ付きセラミックグロープラグにおいて、
前記パイプは、その先後方向の一部に、前記環状空隙に位置する部位において、他の部位より外径が大きく、周方向において連続して肉厚が厚い環状厚肉部が設けられた異径パイプとされており、しかも、前記環状厚肉部が、先方に向けて外径が縮径するテーパ部位を備えており、前記シール部材が、前記環状厚肉部のうち、相対的に肉厚が薄い前記テーパ部位の外周面に溶接されていることを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、前記シール部材には前記環状厚肉部における前記テーパ部位にテーパ嵌合するテーパ筒部が設けられており、該シール部材は、このテーパ筒部を前記テーパ部位にテーパ嵌合させ、該テーパ筒部において前記テーパ部位の外周面に溶接されていることを特徴とする請求項1に記載の燃焼圧検知センサ付きセラミックグロープラグである。
請求項3に記載の発明は、前記環状厚肉部が、前記異径パイプにおける後端又は後端寄り部位に設けられていることを特徴とする請求項1又は2のいずれか1項に記載の燃焼圧検知センサ付きセラミックグロープラグである。
請求項4に記載の発明は、前記セラミック基体の外周面には、その内部に設けられた前記発熱体に通電するための複数の電極端子が露出されており、
前記異径パイプは、その内周面のうち、前記環状厚肉部に対応する部位の内周面が、該電極端子のうちの一方に圧接する配置で、前記セラミック基体に外嵌されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の燃焼圧検知センサ付きセラミックグロープラグである。
請求項1にかかる本発明とは別の参考発明1では、セラミック基体に圧入されているパイプが、前記環状厚肉部を有する異径パイプとされており、前記シール部材は、その薄肉パイプ部の外周面に溶接されている。このため、その溶接箇所である薄肉パイプ部における溶接歪の発生は避けられないとしても、薄肉パイプ部ではない前記環状厚肉部には、薄肉パイプ部において発生するような溶接歪の発生は避けられる。そして、その環状厚肉部では、セラミック基体に薄肉パイプ部と同じ締め代(圧入代)による圧入で外嵌されているとしても、薄肉パイプ部に比べると、肉厚が厚い分、セラミック基体に対し、強い締付け力(圧接における接圧力)で外嵌されたものとなっている。このため、セラミックヒータが、高温、高圧のガスに曝されたとしても、その環状厚肉部においては、同じ他の部位に比べると、その内周面と、セラミック基体の外周面との間における緩みの発生が防止される。これにより、参考発明1では、この環状厚肉部がある分、異径パイプの内周面とセラミック基体の外周面との間の気密性の低下を防止する作用ないし効果が大きく得られる。すなわち、参考発明1では、環状厚肉部がある分、燃焼ガスのグロープラグの奥への侵入防止効果が高められるため、検知精度の低下防止が図られる。
しかも、前記環状厚肉部があるとしても、シール部材の溶接は、異径パイプにおける薄肉パイプ部においてなされているから、シール部材に要請される、環状の金属薄膜等の部位の半径方向の寸法も、従来と同様に確保できる。このため、燃焼ガス圧を受けてヒータが先後動する際において必要となるシール部材自体の変形容易性、及びヒータの先後動を害することもない。
前記したように、参考発明1にかかるグロープラグによれば、前記異径パイプは、その環状厚肉部において、セラミック基体に対して強い締め付けが得られることから、異径パイプの内周面とセラミック基体の外周面との間における先後方向の気密性を高いものとすることができる。このため、その分、ガスがその内、外周面の間にも入り込み難くなるので、ヒータの熱をシール部材を介してハウジング及びシリンダヘッドへ伝達しやすくなるという効果も得られる。
参考発明1における異径パイプに対し、シール部材を溶接するのは、前記環状厚肉部の先後のいずれでもよい。したがって、前記シール部材を溶接する前記薄肉パイプ部は環状厚肉部の後端側(後方)でも、先端側(先方)の部位でもよい。しかし、参考発明2のように、先端側とすることで、該環状厚肉部は、グロープラグ内の前記環状空隙において、前記シール部材が構造的な壁となって、その奥側に位置することになる。すなわち、前記環状厚肉部は、エンジンの燃焼室側において燃焼ガスの直撃を受ける前記シール部材によってカバーされた状態となるから、熱的影響を受け難くなる。これにより、前記環状厚肉部におけるセラミック基体に対する強い締付け力(圧接における接圧力)の低下防止、ないし気密性の低下防止が効率的に図られる。しかも、ヒータの熱も、その環状厚肉部の先方に位置する薄肉パイプ部に溶接されたシール部材を介して、ハウジングに向けて短い伝熱経路を経て熱伝達(熱引き)され得るため、該環状厚肉部は、その熱的影響も受け難くなる。
参考発明1において、前記環状厚肉部は、パイプの先後方向の一部において、他の部位(薄肉パイプ部)との境界を、パイプの軸線に垂直な平面となる端面(環状端面)を有する形となるように、外径が段付き状に急激に変化するものとして形成してもよいし、なだらかに変化するものとしてもよい。請求項1に記載の発明では、前記環状厚肉部を、先方に向けて外径が縮径するテーパ部位を備えているものとし、参考発明1において、前記シール部材は、該異径パイプのうち、前記環状厚肉部でなく、相対的に肉厚が薄い薄肉パイプ部の外周面に溶接されていること、に代えて、前記シール部材が、前記環状厚肉部のうち、相対的に肉厚が薄い前記テーパ部位の外周面に溶接されていることとしている。すなわち、参考発明1において、前記環状厚肉部は、適宜の断面形状(パイプの軸線を通る平面で切断したときの断面形状)とすればよいが、請求項1に記載の発明では、前記環状厚肉部を、先方に向けて外径が縮径するテーパ部位を備えており、シール部材は、前記環状厚肉部のうち、相対的に肉厚が薄い前記テーパ部位の外周面に溶接されていることとしている。この場合、溶接歪による影響を小さくするため、その溶接箇所は、前記テーパ部位のうち、なるべく外径が小さい部位とするのがよい。なお、本願において「テーパ」は、外径が直線状に縮径する(変化する)ものに限られず、曲線状に縮径するものも含まれる。
なお、請求項1の発明においては、請求項2に記載の発明のように、前記シール部材には、前記環状厚肉部における前記テーパ部位にテーパ嵌合するテーパ筒部を設けておき、該シール部材は、このテーパ筒部を前記テーパ部位にテーパ嵌合させ、該テーパ筒部において前記テーパ部位の外周面に溶接されるものとするのが好ましい。レーザ溶接等の溶接が容易となるためである。理由は後述する。また、本発明において前記環状厚肉部は、異径パイプにおける先後のいずれの位置に設けてもよいが、請求項3に記載の発明のように、前記異径パイプにおける後端又は後端寄り部位に設けておくとよい。すなわち、同じ肉厚のパイプ(薄肉パイプ)において、その後端又は後端寄り部位に環状厚肉部が存在するようにするのがよい。異径パイプの内周面が、該電極端子のうちの一方(例えば、接地側電極端子)に圧接して、それとの電気的接続を確保する構成においては、請求項4に記載の発明のように、前記環状厚肉部に対応する部位の内周面が、該電極端子に圧接する配置とするのが好ましい。このようにすることで、圧接におけるその面圧を高められる結果、電気的接続の信頼性を高められるところ、その電極端子の位置の設定上、請求項3に記載の発明では、こうした設定に対応しやすいためである。
とくに、前記環状厚肉部を後端寄り部位に設けるとした場合には、それより後方にも一部、薄肉パイプ部をなす小径部が連なって形成されることになる。このため、ヒータの圧力又は変位を伝達する圧力伝達用の軸部材の先端(筒状部)を、この小径部を用いて、その固定をする場合には、その軸部材の先端を、環状厚肉部の後端向き面(後端面)に当接させることができるので、その固定における先後方向の位置決めをすることができる。すなわち、前記環状厚肉部を後端寄り部位に設ける場合において、このように圧力伝達用の軸部材の取付けをする場合には、その軸線方向の位置決めが容易となるため、グロープラグの組立が容易となるためである。なお、本発明において異径パイプは、基本的には、ストレートの円管(内外径が先後において同じである円管)において、その一部に、同心状に大径部を設けたものとなるのが原則である。しかし、本発明における異径パイプは、例えば、1/200〜1/400といった緩やかなテーパで、先後において略同一の肉厚を有するテーパ管をベースとし、これにおいて「環状肉厚部」を形成したものも含まれる。
本発明を具体化した実施形態例(第1実施形態例)を説明する前に、本発明とは別の参考発明1を具体化した(参考形態例1)の燃焼圧検知センサ付きグロープラグについて、図1〜図6に基づいて詳細に説明する。参考形態例1(以下、本参考例又は上記参考例という)のグロープラグ101は、概略円筒状のハウジング110と、その先端136から自身の先端10aを突出させると共に、ハウジング110の先端寄り部位の内周面と、自身の外周面との間に環状空隙を保持して軸線G方向に変位可能に配置された棒状(円軸状)のセラミックヒータ10と、このヒータ10の後方に配置された燃焼圧を検知するセンサ等を主体として構成されている。なお、本参考例では、センサは圧電素子40であり、ヒータ10が燃焼圧によって先端10aから後方に押されることによって発生する圧力で、そのセンサを先後に圧縮することで発生、変化する電気信号を出力して燃焼圧を検知する構成のものとされている。以下、本参考例のグロープラグ101の全体構成について詳細に説明する。
本参考例において、ハウジング110は、概略円筒状のハウジング本体111と、セラミックヒータ10の後方において圧電素子40を支持するために、その内部に内挿、配置された圧電素子支持用の内部ハウジング121と、ハウジング本体111の先端部位に位置する先端側ハウジング131との3部品を主体として構成されている。この各ハウジングはいずれも概略円筒状又は円環状をなしている。このうち、ハウジング本体111は、後端寄り部位の外周面に、グロープラグ101をシリンダヘッドのプラグホールへねじ込み方式で取り付けるためのネジ113を備えている。そして、このネジ113の後方にはねじ込み用多角形部115を備えている一方、このネジ113より先端側は、そのネジ113の谷径より小径の円筒管部117を備えている。内部ハウジング121は、この円筒管部117の先端寄り部位内に、隙間嵌めで内挿、配置されており、自身の先端寄り部位の外周面において突出形成されたフランジ123における後端向き面を、ハウジング本体111の先端118に当接させて溶接されている。なお、このフランジ123は、外径がハウジング本体111の円筒管部117の外径と同じとされている。一方、図1の拡大図に示されるように、素子支持用の内部ハウジング121の後端125には、中央に円形孔を有するキャップ127が、その外周において先端に向けて突出する円筒状部128の先端を介して溶接されている。
そして、このキャップ127内側には、その円環状底板129に当接する配置で、いずれも円環状をなし、両端面に電極板43,44を介して、絶縁板47が配置された圧電素子40が配置されている。この圧電素子40は、詳細は後述するが、セラミックヒータ10の後端において同軸状で後方に延びるように配置された圧力伝達用の中空軸部材31の後端にて、下端側の絶縁板47を介して後方に押され、ハウジング110側の円環状底板129との間で、軸方向に圧縮されるように設けられている。なお、各電極板43,44からは、後方へ配線43b,44bが引き出されて、ECUに出力されるように構成されている。
一方、ハウジング本体111の先端118に溶接された内部ハウジング121のフランジ123における先端124には、後述するシール部材60がその後端における環状フランジ62を介して、先端側ハウジング131の後端が同軸状に当接されて溶接されている。先端側ハウジング131は短円筒状をなし、その内周面は先端寄り部位が後方より、2段階で小径をなすように形成されている。また、この先端側ハウジング131の外周面は、後端寄り部位が円筒部133をなし、先端寄り部位は、エンジンヘッドのプラグホールの奥のテーパ座面に対応するテーパ部135をなしている。
本参考例のグロープラグ101においてセラミックヒータ10は、円軸状をなすセラミック基体11と、これに圧入で、締り嵌めをなすように外嵌めされた金属製のパイプ(円管)20を主体として構成されている。このパイプ20は、内、外径が先後に同径の薄肉パイプ部21において、その後端寄り部位が先後方向に所定の幅W1で、相対的に大径をなし、周方向に沿って肉厚が厚い環状厚肉部24をなし、異径パイプ20をなしている。ただし、環状厚肉部24の肉厚は、薄肉パイプ部21の2〜3倍とされている。また、環状厚肉部24の先後は、軸線Gに垂直な平面で切断した端面を有するものとしている。なお、セラミック基体11内には、先端寄り部位において折り返す形でU字状に設けられた発熱体12を備えており、その各脚部の後端寄り部位においては、セラミック基体11における外周面に露出する電極端子16、17が設けられている。この異径パイプ20は、セラミック基体11の先後の中間部位から後方の後端寄り部の範囲におけるその外周面11bに内周面22が圧接状態をなしている(図2参照)。ただし、異径パイプ20における環状厚肉部24に対応する部位の内周面が、上記電極端子のうちの一方(接地側電極端子16)に圧接する配置とされている(図1参照)。なお、異径パイプ20における環状厚肉部24は、先端側ハウジング131における先端寄り部位より後方の内周面が大径をなす環状空隙K2において同軸状に位置するものとされ、先端側ハウジング131における先端寄り部位の内周面と、異径パイプ20における薄肉パイプ部20の外周面23との間は、相対的に狭い環状空隙K1をなすものとされている。
一方、セラミック基体11に外嵌された異径パイプ20の後端寄り部位の薄肉パイプ部21bの外周面には、それらと同軸状で後方に延びるように配置された圧力伝達用の中空軸部材31が、その先端(薄肉の筒部)32を介して外嵌され、溶接されている。そして、中空軸部材31の先端32は、異径パイプ20における環状厚肉部24における後端向き面24bに当接状とされて、先後方向の位置決めがなされている。なお、中空軸部材31は、内部ハウジング121の内周面との間に絶縁確保のための隙間(環状隙間)が保持されている。そして、その中空軸部材31の後端35には、中央に円形孔を有するように、内向きに突出する円環状フランジ36を有している(図1参照)。これにより、ハウジング110に対してセラミックヒータ10が後方へ押された際、その中空軸部材31の後端(後端面)35の円環状フランジ36と、ハウジング側の円環状底板129との間において、両端面に電極板43,44を備えた圧電素子40を、絶縁板47を介して軸線G方向に圧縮するように構成されている。
また、セラミックヒータ10の後方であって、中空軸部材31の内側には、それと電気的な絶縁を保持し、短管(金属管)19を介して、後方に延びる通電用軸部材(円軸部材)25が同軸で配置されている。ただし、短管19の先端部位は、セラミック基体11の後端に締り嵌め状に外嵌され、その内周面を、同基体11の外周面11bにおいて露出する他方の電極端子17に圧接している。また、短管19の後端部位は、通電用軸部材(円軸部材)25の先端の大径部26に締り嵌め状に外嵌され、導通が保持されている。そして、通電用軸部材(円軸部材)25の後方は、中空軸部材31の後端35の円形孔、そして、絶縁板47、圧電素子40、各電極板43,44の中央、及び内部ハウジング121の後端のキャップ127の円形孔を貫通状して後方に延びている。そして、その後端寄り部位は、ハウジング110内の後端において、図示しない絶縁材等にて絶縁が保持されて固定されており、外部に突出された後端部が端子25bとされている。なお、本参考例では、セラミックヒータ10は、異径パイプ20と共に、後端寄り部位を除く大部分が、ハウジング110の先端136から突出するよう構成されている。
上記もしたように、ハウジング110をなす先端側ハウジング131の先端寄り部位の内周面と、ヒータ10をなす異径パイプ20の薄肉パイプ部21の外周面23との間には、相対的に狭い環状空隙K1が形成されている。一方、その後方の先端側ハウジング131の内周面と異径パイプ20との間は、相対的に広い環状空隙K2をなしている。また、異径パイプ20における環状厚肉部24は、先端側ハウジング131の内周面が大径をなす環状空隙K2に位置するものとされている。
さて、本参考例において、金属製のシール部材60は、この先端側ハウジング131における内周面が大径をなす環状空隙K2において、ハウジング110の内外を気密状に遮断する配置で設けられている。そして、このシール部材60は、その後端側は、上記したように、その環状フランジ62を介して、先端側ハウジング131の後端と、内部ハウジング121のフランジ123とに挟まれて溶接されているが、その先端側は、異径パイプ20における環状厚肉部24の近傍であってその先端側の薄肉パイプ部21の外周面23に、黒塗り三角で示したように溶接されている。すなわち、図2、図3に示したように、本参考例のシール部材60は、先端側に軸線Gに略垂直な平面を通る環状の金属薄膜(ダイヤフラム部位、又はメンブレン部位)63を有して異径パイプ20に外嵌状とされている。このシール部材60は、その金属薄膜(環状薄膜)63が、異径パイプ20における前記環状厚肉部24より先方に位置しており、その環状薄膜63の内周縁において先方に延びる環状部65において、異径パイプ20における環状厚肉部24より相対的に肉厚が薄い薄肉パイプ部21の外周面23に溶接されている。すなわち、シール部材60におけるその環状部65自身の外周面側から、その周方向に沿って1周にわたり、例えばレーザ溶接で黒塗り三角で示したように溶接されている。
一方、このシール部材60における環状薄膜63の外周縁においては、先端側ハウジング131の内周面に沿って後方に延びる筒部61を有しており、この筒部61の後端において外向きに突出する環状フランジ62を、上記したように、ハウジング本体111の先端118に溶接された内部ハウジング121のフランジ123における先端124と、短円筒状をなす先端側ハウジング131の円筒部133の後端とで挟み付けるようにさせ、その環状フランジ62の両端面において、各当接面間が周方向に沿って溶接されている。本参考例では、このように配置されたシール部材60により、ハウジング110の先端寄り部位、すなわち、先端側ハウジング131の内周面と、ヒータ10の外周面との間の環状空隙は、ハウジング110の内外において気密状に遮断されている。そして、ハウジング110に対してヒータ10が燃焼ガス圧によって後方に押されて変位する際には、シール部材60は主としてその環状の金属薄膜(ダイヤフラム部位、又はメンブレン部位)63において、あおられるように変形し、ハウジング110の内外における気密を保持しつつその変位を許容するよう構成されている。
しかして、上記構成の本参考例のグロープラグ101は、これをエンジンのシリンダヘッドに取り付けて使用され場合においては、燃料の着火を促進するグロープラグとして機能することに加えて、その燃焼ガス圧(爆風)が、ヒータ10をその先端10aから後方に押すことで、圧電素子40を圧縮することで得られる電気信号に基づいて燃焼圧が検知され、燃焼圧検知センサ付きグロープラグとして機能する。そして、次のような特有の効果が得られる。
本参考例では、セラミック基体11に圧入されているパイプが、上記したような環状厚肉部24を有する異径パイプ20とされており、そのシール部材60は、その環状厚肉部24の先端側の近傍の薄肉パイプ部21の外周面23に溶接されている。このため、その溶接箇所である薄肉パイプ部21における溶接歪の発生は避けられないとしても、環状厚肉部24には、薄肉パイプ部21において発生するような溶接歪の発生は避けられる。そして、その環状厚肉部24では、セラミック基体11に、薄肉パイプ部21と同じ締め代(圧入代)による圧入で外嵌されているとしても、薄肉パイプ部21に比べると、肉厚が格段と厚い分、セラミック基体11に対し、強い締付け力(圧接における接圧力)で外嵌されたものとなっている。このため、セラミックヒータ10が、高温、高圧のガスに曝されたとしても、その環状厚肉部24においては、他の部位に比べると、その内周面と、セラミック基体11の外周面との間における緩みの発生を低減できる。すなわち、環状厚肉部24がある分、異径パイプ20の内周面とセラミック基体11の外周面との間の気密性の低下が防止される。これにより、燃焼ガスのグロープラグの奥への侵入防止効果が高められる。
また、環状厚肉部24があるとしても、シール部材60の溶接は、薄肉パイプ部21においてなされているから、シール部材60の変形容易性が損なわれることはない。すなわち、変形を受け持つ環状の金属薄膜63をなす部位自体の半径方向の寸法も、従来と同様に確保できるため、ヒータ10の先後動を阻害することもない。
さらに、上記参考例では、シール部材60を溶接する薄肉パイプ部21を、環状厚肉部24より先端側における薄肉パイプ部21としている。このため、環状厚肉部24は、シール部材60によって、燃焼ガスに直接曝されない。参考発明1では、環状厚肉部24をシール部材60より先端側に位置させることもできるが、それに比べると、上記参考例では、環状厚肉部24は燃焼ガスの熱的影響を受け難いものとなっている。これにより、セラミック基体11の締付け力、及び気密性の低下防止が図られる。しかも、ヒータ10の熱は、その環状厚肉部24の先方に位置する薄肉パイプ部21から、シール部材60を介して、ハウジング110に向けて短い伝熱経路を経て熱伝達されるため、それによる環状厚肉部24の高温化防止も図られている。
なお、上記参考例では、環状厚肉部24に対応する部位の内周面が、電極端子16に圧接する配置で異径パイプ20をセラミック基体11に外嵌している。このため、その電極端子16に対する締め付け力が高く得られるから、信頼性の高い電気的接続が得られる。また、上記もしたように、環状厚肉部24を後端寄り部位に設け、それより後方(後端部)にも一部、薄肉パイプ部(小径部)21bが存在している。そして、圧力伝達用の中空軸部材31を、この小径部21bに外嵌して、環状厚肉部24の後端向き面24bに当接させていることから、その固定の先後方向の位置決めを容易にすることができる。また、上記参考例では、シール部材60は、変形を担う環状膜部63が、軸線Gに垂直となるよう形成されているものとしたが、先細りテーパ状をなすように形成されたものとしてもよいし、図3中、破線で示したように、ベローズ状のものとしてもよいなど、その形状構造は、ヒータ10の先後動にともなう、その変位を許容できるものである限り、適宜のものとすればよい。
なお、上記参考例のグロープラグ101の組立ては、例えば、次のようにすればよい。図4−Aに示したように、セラミック基体11に異径パイプ20を圧入してなるヒータ10に、上記したように短管19を介して通電用軸部材25を固定する。次に、図4−Bに示したように、圧力伝達用の中空軸部材31を、その先端32を介して異径パイプ20の後端に外嵌して溶接する。そして、図4−Cに示したように、シール部材60を外嵌して、異径パイプ20における所定位置に対し溶接する。一方、図5に示したように、このようにして組付けた組付け品201における圧力伝達用の中空軸部材31の後端に圧電素子40等を配置しておき、円筒状キャップ127を溶接した圧電素子支持用の内部ハウジング121を、中空軸部材31に後端側から外嵌する等して組付ける。すなわち、図6の左図に示したように、円筒状キャップ127を溶接した圧電素子支持用の内部ハウジング121を、中空軸部材31に後端側から外嵌するとともに、先端側ハウジング131をセラミックヒータ10の先端10aから外嵌する。さらに、図6の右図に示したように、ハウジング本体111も外嵌して、シール部材60における環状フランジ62を、それら三者で挟み付けるようにする。その状態で、上記したように、各当接面間において周方向に沿って溶接する。このように、所定の圧入、組付け、溶接を行うことで、図1のように組立てられる。
ここで、上記参考例の変形例について、図7に基づいて説明する。ただし、以下、本発明を具体化した第1実施形態例、及びその変形例も含め、上記参考例との相違点を中心として説明し、同一又は対応する部位には、同一の符号を付すに止め、適宜、その説明を省略する。すなわち、上記参考例では、環状厚肉部24を異径パイプ20における後端寄り部位に設け、それより後方(後端部)にも一部、薄肉パイプ部(小径部)21bを設けることで、ここに圧力伝達用の中空軸部材31の先端を嵌合した構造のものとしたが、図7においては、環状厚肉部24を異径パイプ20における後端に設けたものとしている。そして、中空軸部材31の先端を、セラミック基体11の後端と、その後方に延びる通電用軸部材(円軸部材)25の先端とを接続している短管(金属管)19に、外嵌して溶接等により固定したものとしている。すなわち、参考発明1においては、本変形例に示したように、環状厚肉部24は、異径パイプ20の後端に設けてもよい。また、その断面形状は例えば、同図中に、破線で示したように、凸となす半円断面としてもよいなど、シール部材60の変形容易性を損なわない範囲で、しかも、強い締め付け力が得られるように、適宜の形状とすることができる。
さて次に、本発明(請求項1)の燃焼圧検知センサ付きグロープラグの第1実施形態例について、図8に基づいて説明する。ただし、このものは、上記参考例の燃焼圧検知センサ付きグロープラグにおいて、セラミック基体11に圧入されている異径パイプ20における環状厚肉部24の断面形状と、これに溶接されているシール部材60の断面形状、そして、両者の溶接部位(位置)を変更した点のみが、その相違点である。
すなわち、上記参考例では、異径パイプ20の環状厚肉部24が、先後に所定の幅W1において一定厚さのものとし、その先後は、軸線Gに垂直な平面で切断した端面を有するものとしている。そして、その環状厚肉部24の近傍であってその先端側に位置する薄肉パイプ部21に対して、シール部材60を溶接したものとしている。これに対し本第1実施形態例では、異径パイプ20に設けられた環状厚肉部24は、上記参考例における環状厚肉部24の先端から先方に向けて外径が縮径するテーパ部位24cを備えたものとしている。
一方、シール部材60には、その環状薄膜63と、先端に延びる環状部65との間に、環状厚肉部24におけるテーパ部位24cにテーパ嵌合するテーパ筒部67が設けられてている。そして、シール部材60は、このテーパ筒部67をテーパ部位24cにテーパ嵌合させた状態で、テーパ筒部67においてテーパ部位24cの外周面に、図8中、黒塗り三角で示したように溶接されている。すなわち、環状厚肉部24において、相対的に肉厚が薄いテーパ部位24cにおける外周面に対し、シール部材60を溶接したものであり、いわば、先後に所定の幅W1の部位を環状厚肉部24とし、テーパ部位24cを薄肉パイプ部とみなしたものともいえる。なお、シール部材60の変形容易性を高めるため、その溶接箇所は、テーパ部位24cにおける最小径(外径)部に近い位置とするのが好ましい。
このものにおいても、薄肉パイプ部20に比べて肉厚が厚い環状厚肉部24があるから、その分、その部位を含む部位近傍において、セラミック基体11に対し、強い締付け力(圧接における接圧力)で外嵌されたものとなっている。なお、本第1実施形態例では、環状厚肉部24の先端向き端面にシール部材60が溶接されているといえるが、先端向き端面がテーパ部位24cをなしていることから、その溶接が好条件で行える。理由は次のようである。シール部材60の異径パイプ20への溶接に際しては、ヒータ10をなすセラミック基体11に圧入によって外嵌された異径パイプ20に対して、シール部材60を外嵌し、例えば、ヒータ10をその軸線回りに回転させながら、そのシール部材60の溶接箇所にレーザを照射して溶接することになる。このシール部材60の外嵌においては、それが隙間嵌めとなるようにするのが作業性がよい。一方、そのレーザ溶接において、溶接箇所となる異径パイプ20の外周面と、シール部材60の内周面との間には、隙間(空隙)があるのは好ましくない。これに対して、本第1実施形態例では、上記したようなテーパ嵌合となる設定とされているため、その溶接においては、シール部材60の溶接予定部位であるテーパ筒部67をテーパ部位24cに容易に密着させ、或いは、食い付かせることができるため、隙間のない状態での溶接ができる。しかも、レーザ溶接において、レーザの照射角度も、異径パイプ20の軸線に垂直な平面又はそれに近い状態で行えるなど、溶接を好条件下で行えるというメリットがある。なお、本第1実施形態例では、シール部材60に、異径パイプ20におけるテーパ部位24cの外周面にテーパ嵌合するテーパ筒部67を設けたものとしたが、このようなテーパ筒部67を設けることなく、そのテーパ部位24cの外周面に食い付き状となるように嵌合して、密着させるだけでもよい。この場合にもその密着ある部位において溶接することで、隙間のない状態での溶接ができるためである。
図9は、第1実施形態例の変形例であり、第1実施形態例では異径パイプ20に設けられた環状厚肉部24は、一定厚さで所定幅W1を有する環状厚肉部24の先端から、先方に向けて外径が縮径するテーパ部位24cを備えたものとしているのに対し、本例では環状厚肉部24が、異径パイプにおいて、それ自体が先方に向けて外径が縮径するテーパ部位24cを備えるものとして形成している。また、シール部材60には、その環状薄膜63に連なり、先端に延びる環状部を、環状厚肉部24におけるテーパ部位24cにテーパ嵌合するテーパ筒部67としている。そして、シール部材60は、このテーパ筒部67をテーパ部位24cにテーパ嵌合させた状態で、そのテーパ筒部67においてテーパ部位24cの外周面に、図9中、黒塗り三角で示したように溶接されている。第1実施形態例と同様に、テーパ部位24cにおける外周面に対し、シール部材60を溶接したものであるが、本例では、環状厚肉部24に、一定厚さの所定幅部位がないことから、シール部材60はテーパ部位24cのうち、肉厚が最小となる先端側に近い位置である、肉厚が相対的に薄い薄肉部位に溶接するのがよい。
なお、図8、図9において、図示はしないが、上記参考例における形状のシール部材を用い、その環状薄膜63の内周縁において先方に延びる環状部65において、異径パイプ20における環状厚肉部24をなすテーパ部位24cより先端側の肉厚が薄い薄肉パイプ部21の外周面23に溶接してもよい。すなわち、環状厚肉部は、その断面形状(パイプの軸線を通る平面で切断したときの断面形状)を、適宜の断面形とすることができる。断面形状にかかわらず、環状厚肉部において、セラミック基体に対して強い締め付けが得られることにより、異径パイプの内周面とセラミック基体の外周面との間における先後方向の気密性を高いものとすることができるためである。なお、環状厚肉部は、先後において複数に分割され、複数設けられていてもよい。また、シール部材は、ベローズ形状のものを用いる場合にも適用できる。なお、上記例では、センサが圧電素子である場合で具体化したが、燃焼ガスがヒータを後方に押圧する際の圧力又はこれによるヒータの先後方向の変位からその燃焼圧を検知可能のセンサであればよく、したがって、例えば、歪ゲージをセンサを用いるものにおいても、同様に適用できる。
また、上記例のグロープラグにおいては、ハウジングを、ハウジング本体、圧電素子支持用の内部ハウジング、及び先端側ハウジングからなる構成のものとして具体化したが、本発明においてはこのような構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜に、変更して適用できる。また、シール部材の外周縁の環状フランジが、この先端側ハウジングと内部ハウジングのフランジとで挟まれる形で、溶接されて固定されているものとして具体化したが、シール部材のハウジングに対する固定手段もこれに限定されるものではない。他の各部品の組付けにおいても、主として、溶接構造を採用したが、シール部材の異径パイプに対する周方向に沿う溶接以外については、カシメや、ねじ込み方式、ロウ付けなど、適宜の固定手段を用いることができる。なお、上記例では、シール部材の溶接にレーザ溶接を用いたが、電子ビーム溶接等、適宜の溶接手段を用いることができる。