この種の燃焼圧検知センサ付きグロープラグ(以下、単にグロープラグともいう)としては各種のものが知られている(例えば、特許文献1(図5)参照)。図10は、このようなグロープラグのうち、セラミックヒータを用いたグロープラグ101の一例を簡略化して示した破断縦断面図である。同図のものは、筒状をなすハウジング40内に、通電することによって発熱する棒状(円軸状)のセラミックヒータ(以下、単にヒータともいう)10を、自身の先端(燃焼室内に突出する側の端。図示下端)10aが、そのハウジング40の先端から突出するようにして備えている。
このようなグロープラグ101では、ヒータ10は、燃焼圧を受圧させるため、ハウジング40内において、その軸(軸線)G方向(先後方向)に、数十μ程度と微小ではあるが変位可能に配置されている。そのために、ヒータ10は、ハウジング40の内周面との間に空隙(環状空隙)を保持して配置されている。そして、このヒータ10の後方には、これに同軸で突き合わせ状に配置された通電用の軸部材30が設けられており、ヒータ10が燃焼圧によって先端10aから後方に押されることによって発生する変位(又は圧力)を、この軸部材30の先後動を介して検出させ得る検知手段として、後方に、例えば歪部材210と、これに取付けられた歪センサ(歪ゲージ)220が設けられている。すなわち、燃焼圧によって、ヒータ10への電圧印加を兼ねた軸部材30を介し、その歪部材210を歪ませ、歪センサ220にて、その歪量を検出(測定)することで、燃焼圧を検出するように構成されている。
上記したような燃焼圧検知センサ付きグロープラグ101では、その構成上、ヒータ10の先後動を微量とはいえ許容する必要があるため、ヒータ10はハウジング40内に隙間嵌め状態で配置されている。一方、この種のグロープラグ101では、グロープラグ内部への燃焼ガスの流入(侵入)を防止する必要がある。このため、ハウジング40の先端寄り部位の内周面と、ヒータ10の外周面との間(環状空隙)に、その先後を遮断する配置で、ヒータ10の先後動(変位)に追随して変形可能な、環状をなす環状体又は筒状体からなるシール部材18が配置される。図10ではシール部材18に金属製で薄肉のベローズ形のものが用いられているが、これに代えて、メンブレンや環状のダイヤフラム等も用いられる。なお、ヒータ10がセラミックヒータであるため、その外周面には、金属製のパイプ15が圧入等により外嵌めされており、ベローズ18(又はメンブレン)の例えば先端寄り部位18aがこのパイプ15の外周面に、周方向に溶接され、後端寄り部位18bがハウジング40の内周面側に溶接されている。なお、外嵌されているパイプ15もセラミックヒータを構成する部材とする。
ところで、セラミックヒータ10は、自身の先端10a部位における発熱、又はエンジンの燃焼熱の受熱により高温となるが、このような熱は、グロープラグの構成上、ヒータ10から、ベローズ等のシール部材18、及びハウジング40へと伝熱される。一方、このプラグは、図10中に2点鎖線で示したように、エンジンヘッドHにおけるプラグホールのシール用の座面Zに、ハウジング40の先端部を押付ける形で取付けられる。このため、ヒータ10の熱は、シール部材18を介してハウジング40の先端寄り部位に伝わり、プラグホールにおけるシール座面Zを介してエンジンヘッドHへ伝達される。ところが、ベローズ等のシール部材18における熱伝達性(効率)はその肉の薄さに基づき極めて低い。すなわち、この種の燃焼圧検知センサ付きのグロープラグでは、そのシール部材18にガスシールと共に、ヒータの先後動を許容させるべく、変形容易の薄肉材しか使用できないことから、ヒータ10における熱引き性が悪く、ヒータの後端側部位であっても高温となりやすいという問題があった。
この問題は具体的には次のようである。ヒータ10がセラミックヒータの場合には、セラミック基体11の内部に埋設して設けられた抵抗発熱体12の電極16,17が、その棒状をなすヒータ10の後端寄り部位の外周面に露出するように設けられる。一方、このうちの、先端側の接地側電極16は、外嵌めされたパイプ15に圧接され、これに溶接されたシール部材18をなすべローズをハウジング40に電気的に接続している。また、後端側の電極17は、これを覆うように嵌められた金属リング19に、上記した軸部材30の先端を圧入することで圧接され、電気的に接続されている。これら各電極16、17との接続をするためにヒータ10に外嵌めされている金属パイプ(又はリング)15,19は、ヒータ10をなすセラミックよりも大きく熱膨張する。このため、このようなヒータ10の後端側の電極16,17と金属パイプ15,19との圧接による電気的接続(導通)では、ヒータ10の後端側まで高温となると、各電極16,17との金属パイプ15,19との接触(圧接)面圧が低下することになり、電気抵抗の増大を招いてしまう。また、電気的接続がこのような圧接ではなく、リード線(電線)の先端を各電極にロウ付けする場合でも、熱サイクルを受ける結果、そのロウ付け部において分離等の接続不良を発生させることがある。このように、燃焼圧検知センサ付きのグロープラグでは、そのシール部材18にガスシールと共に、ヒータ10の先後動を許容させるべく、変形容易の薄肉材しか使用できないことから、ヒータ10における熱引き性が悪く、ヒータの後端側が高温となりやすく、これにより、電気的接続の信頼性を低下させるという問題があった。
また、ヒータに、金属チューブ(シース管)内に抵抗発熱体(発熱コイル)を配置したものを用いたメタルグロープラグにおいては、そのコイルの後端に接続されて、同チューブの後端側から突出するように配置された導電用の軸部材(中軸)を備える構造とされたものがある。このものでは、シース管の後端において、内部に充填された絶縁粉末の封止のためと、その内周面と軸部材の外周面との間の電気的な絶縁の保持のため、軸部材の同部位には、筒状のゴムなどの絶縁材が外嵌される。すなわち、このゴムに対応する管の後端を加締め、軸部材を保持することが行われる。このため、このようなメタルグロープラグにおいては、上記したような熱伝導の問題から、そのゴムが熱劣化してしまい、封止不良や電気的絶縁の信頼性を低下させる問題があった。
こうした中、上記ヒータ(セラミックヒータ、シース管)に相当する圧力伝達部材の外周面と、ハウジングの内周面との間に、別途の部品である放熱部材を、ヒータに相当する圧力伝達部材に対し、摺動可能に配置した技術(燃焼圧センサ。放熱部材付き燃焼圧センサ)が提案されている(特許文献1)。この燃焼圧センサにおける放熱部材は、ハウジングの内周面と、ヒータに相当する圧力伝達部材の外周面との間に、緊密な状態で配置されている。このため、ヒータに相当する圧力伝達部材の熱は、この放熱部材を介してハウジングに向けて短い経路で伝達されるので、ヒータの放熱性ないしその熱の熱伝達性がよいといえる。
しかし、上記燃焼圧センサにおける放熱部材は、ハウジングの内周面と、上記グロープラグにおいてヒータに相当する圧力伝達部材の外周面との間において、緊密な状態で配置されていることから、放熱部材と、圧力伝達部材との間の面圧や摩擦(抵抗)が大きいものとなる。したがって、この構造のものを上記グロープラグに用いる場合には、ヒータの受ける圧力ないし先後動を後方へ伝達する精度、感度が低くなり、結果としてセンサの感度や出力の低下を招くという問題がある。これは、その放熱部材に、たとえ、金属メッシュ体等の弾力性部材を用いるとしても、これが、ハウジングの内周面と、ヒータの外周面との間において緊密な状態で配置されていることに変わりはないから、その低下は免れない。すなわち、ヒータに相当する圧力伝達部材の先後方向への変位(移動)においては、放熱部材を弾性変形させることに費やされる応力分の抵抗が大きいためである。
上記したように、この燃焼圧センサにおける放熱構造のものでは、その放熱部材により、ヒータに相当する圧力伝達部材が受ける熱のエンジンヘッドへの熱伝達性ないし放熱性は、この放熱部材がある分、よいといえるが、燃焼圧センサとしては、緊密に配置された放熱部材が存在する分、圧力伝達部材(グロープラグのヒータに相当)の自由な先後動(変位)を抑制ないし阻害することから、圧力の検知精度の低下を招くという問題がある。
本発明は、如上の問題点を解消するためになされたもので、燃焼圧検知センサ付きグロープラグにおいて、ヒータの先後動を抑制又は阻害することなく、ヒータの熱を、効率的にエンジンヘッドに逃がすことができるようにすることにある。
請求項1に記載の発明は、筒状をなすハウジング内に、その先端から自身の先端を突出させた棒状をなすヒータが、前記ハウジングの内周面と該ヒータの外周面との間に環状の空隙を保持して軸方向に変位可能に配置されており、該ヒータが燃焼圧によって先端側から後方向きに押されることによって発生する前記変位に基づき燃焼圧を検知可能のセンサを備えてなる燃焼圧検知センサ付きのグロープラグであって、
前記ハウジングは、その先端部の内周面において内向きに突出するフランジ状の先端環状部を備えており、この先端環状部の後方の内周面が、該先端環状部の内周面よりも内径が拡径された拡径環状内周面をなしており、
この拡径環状内周面と、前記ヒータの外周面との間の環状の空隙に、該空隙の先後を遮断してハウジング内外の気密を保持すると共に、該ハウジングに対する前記ヒータの先後動を許容するよう変形する横断面が環状で環状体又は筒状体をなすシール部材が配置されてなる燃焼圧検知センサ付きのグロープラグにおいて、
前記ハウジングにおける前記先端環状部の内周面と、前記ヒータの外周面との間の環状の空隙において、該ヒータの軸線に対して傾斜し、偏心し、又は一定の範囲でのみ先後方向に動くことができ、しかも、該先端環状部及び該ヒータの双方に同時に接触することが可能であり、その同時接触によって、該ヒータの熱を前記ハウジングに伝達可能に形成された熱伝達部材が、前記空隙に遊嵌状態で配置されていることを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、前記熱伝達部材は筒状をなし、前記ヒータの外周面及び前記先端環状部の内周面の双方に、隙間を保持して配置され得るよう構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の燃焼圧検知センサ付きのグロープラグである。
請求項3に記載の発明は、前記熱伝達部材は筒状をなし、前記ヒータの外周面及び前記先端環状部の内周面の双方に、隙間を保持して配置され得るよう構成されているものを、該ヒータの軸線回りで分割してなる複数の熱伝達部材片にて構成されていることを特徴とする請求項1に記載の燃焼圧検知センサ付きのグロープラグである。
請求項4に記載の発明は、前記熱伝達部材は、複数の熱伝達部材片にて構成されていることを特徴とする請求項1に記載の燃焼圧検知センサ付きのグロープラグである。
請求項5に記載の発明は、前記熱伝達部材が、一定の範囲でのみ先後方向に動くことができるように、
前記ハウジングの先端から先方へ抜け出て分離するのを防止するため、前記熱伝達部材はその外周面に前記先端環状部の後端向き面に係合する後端側凸部を備えており、
該熱伝達部材が、該ハウジングの内部の後方へ入り込み過ぎとなるのを防止するため、該熱伝達部材が後方に移動した際に、前記ヒータの外周面に、前記後端側凸部が当る突出部を設けてなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の燃焼圧検知センサ付きのグロープラグである。
請求項6に記載の発明は、前記突出部が、前記シール部材の先端に形成されていることを特徴とする請求項5に記載の燃焼圧検知センサ付きのグロープラグである。
請求項7に記載の発明は、前記熱伝達部材が、一定の範囲でのみ先後方向に動くことができるように、
前記熱伝達部材はその外周面の先後において、前記先端環状部を跨ぎ、該先端環状部の後端向き面と先端向き面とにそれぞれ係合する後端側凸部と先端側凸部とを備えていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の燃焼圧検知センサ付きのグロープラグである。
請求項8に記載の発明は、前記先端環状部の内周面又は前記ヒータの外周面に、凹部又は凸部が設けられており、前記熱伝達部材には、これらの凹部又は凸部に緩く嵌る凸部又は凹部を備えていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の燃焼圧検知センサ付きのグロープラグである。
本発明の燃焼圧検知センサ付きのグロープラグは、通常、その先端を下にしてエンジンヘッドのプラグホールにねじ込み方式で取付けられる。このとき、熱伝達部材は、前記ハウジングにおける前記先端環状部の内周面と、前記ヒータの外周面との間の環状の空隙に、該ヒータの軸線に対して傾斜し、偏心し、又は、一定の範囲でのみ先後方向に動くことができ、該ハウジング及び該ヒータの双方に同時に接触可能にして配置されている。すなわち、熱伝達部材は、前記ハウジングにおける前記先端環状部の内周面と、前記ヒータの外周面との間の環状の空隙において、該ハウジング及び該ヒータの双方に同時に接触可能に、遊嵌状態で配置されている。一方、エンジン始動後、グロープラグの先端は常に燃焼圧を受け、振動に曝されている。これにより、前記熱伝達部材は、該ハウジングの先端環状部及び該ヒータの双方に同時に接触する。したがって、このような構成を有する本発明の燃焼圧検知センサ付きのグロープラグにおいて、この熱伝達部材は、ハウジングに対するヒータの先後動を抑制又は阻害することなく、ヒータの熱をハウジングに伝達する経路をなす。これにより、ヒータ自身が発する熱、及びヒータが受熱することによる熱は、熱伝達部材、ハウジングの先端部を介してエンジンヘッドのプラグホールの座面に伝わるため、短経路で効率的にエンジンヘッドに逃がすことができる。このように本発明の燃焼圧検知センサ付きのグロープラグにおいては、熱伝達部材は、前記ハウジングにおける前記先端環状部の内周面と、前記ヒータの外周面との間の環状の空隙において遊嵌状態で、その双方に接触するように配置されているため、燃焼圧検知の精度、感度の低下もなく、ヒータの後方が異常高温となることを有効に防止される。
本発明において、前記熱伝達部材は、前記ハウジングにおける前記先端環状部の内周面と、前記ヒータの外周面との間の環状の空隙に、該ヒータの軸線に対して傾斜し、偏心し、又は、一定の範囲でのみ先後方向に動くことができることによって、該ハウジング及び該ヒータの双方に同時に接触可能であればよい。これは、熱伝達部材が、前記ハウジングにおける前記先端環状部の内周面と、前記ヒータの外周面との間の環状の空隙において遊び嵌め状態(ルーズ)にあればよいことを意味し、その傾斜、偏心、又は先後動のいずれか1つ又はそれらの組合せ動で、前記接触ができればよい。なお、本発明において、前記熱伝達部材が、一定の範囲でのみ先後方向に動くことができる、というのは、該熱伝達部材が、該ハウジングの先端から先方へ抜け出て分離してしまうことなく、かつ、該先端環状部及び該ヒータの双方に同時に接触することができなくなることなく、該ハウジングの内部の後方へ入り込み過ぎとならない範囲で、先後方向に動くことができることを意味する。
本発明において、前記熱伝達部材は、一体のリング状のもの(例えば、筒体又は管)でもよいし、筒体をその軸線回りに複数に分割したものでもよいなど、適宜の形状、構造のものとすればよい。したがって、請求項2に記載の発明のように、前記熱伝達部材は筒状をなし、前記ヒータの外周面及び前記先端環状部の内周面の双方に、隙間を保持して配置され得るよう構成されていることとしてもよいし、請求項3に記載の発明のように、前記ヒータの外周面及び前記先端環状部の内周面の双方に、隙間を保持して配置され得るよう構成されているものを、該ヒータの軸線回りで分割された複数の熱伝達部材片にて構成されていることとしてもよい。さらに、前記熱伝達部材は、筒状であることとは無関係に、複数の熱伝達部材片で構成されていることとしてもよい。
前記熱伝達部材は、一体のものより分割されているもの、すなわち、複数の熱伝達部材片(熱伝達部材)からなるものとすると、ヒータとハウジングとの接触部(箇所)の数、すなわち、その双方間の熱伝導経路数、及び接触面積が増大するため、熱伝達性を高めることができる。そして、熱伝達部材の目的より、これは、熱伝達性(熱伝導率)に優れた素材で形成するのが好ましい。熱伝達部材は、温度変化がある中で、ヒータとハウジングとの間において、常に、上記したような、傾斜、偏心、又は先後動といった動きができるべきである。したがって、ヒータがセラミックヒータでは、熱伝達部材は、ハウジングと同じ金属素材か、それに近い熱膨張係数の素材で形成するのが好ましい。また、メタルグロープラグのようにヒータがシース管等からなるものでは、シース管とハウジングとの双方と熱膨張係数が同じか、近い金属で形成するのが好ましい。
本発明を具体化した実施形態例(第1実施形態例)の燃焼圧検知センサ付きグロープラグについて、図1〜図4に基づいて説明する。本例のグロープラグ101をなすハウジング40は、金属製で概略円筒状をなすハウジング本体41と、その先端に同心で突合せ状に固定された先端側筒状ハウジング50とから構成されている。このグロープラグ101は、ハウジング40の内側において、自身の先端(図示、下方端)10aを、先端側筒状ハウジング50の先端部53から突出させてなるセラミックヒータ10と、同ハウジング40内においてこのヒータ10の後端から後方に延びるように同軸で配置された、電圧印加用の軸部材(軸部材)30、及びこの軸部材30の後端においてハウジング40の内側の空間に設けられた燃焼圧検知センサを構成する歪部材210、及びこれに取付けられた歪センサ220等から構成されている。本例では、先端側筒状ハウジング(先端側ハウジングともいう)50の先端部53において、内向きに突出するフランジ状の先端環状部54の内周面54aと、ヒータ10の外周面10bとの間の環状空隙に、遊嵌状態で熱伝達部材20を配置することで、ヒータ自身が発する熱(又はエンジンの燃焼による熱)を、この熱伝達部材20を介して先端側ハウジング50に伝達し、この先端側ハウジング50における先端部53から、グロープラグ101がねじ込み方式で取り付けられているエンジンヘッドHのプラグホールの座面Zを介し、そのエンジンヘッドHに熱を伝達するようにしたものである。本発明は、この熱伝達部材20、及びその配置に係わる構成に要部となすものであるが、以下、このグロープラグ101の全体構成を説明しつつ、その要部について説明する。
本例において、ハウジング40は、例えばSUS303からなり、概略円筒状のハウジング本体41と、その先端側に同軸で突合せ状に嵌合され、溶接された先端側筒状ハウジング50等とから構成されている。先端側ハウジング50は、先端部53の内径がその後方より小さくなるように、周方向に沿って内向きに突出するフランジ状の先端環状部54を備えている。したがって、この後方の内周面は、先端環状部54の内周面54aより拡径された拡径環状内周面55をなしている。先端側筒状ハウジング50の先端部53の先端面54bは、プラグホールの座面Zに押付けられて燃焼室のシール(気密)を確保するところであり、本例では先細りのテーパ面とその内側の平坦面とからなる。先端環状部54の後端向き面54cは、平坦でもよいが、本例では先端面54bと同様なテーパが付けられている。
セラミックヒータ10は円柱状をなし、ハウジング40の軸線Gと同軸状に配置されている。このヒータ10は、そのセラミック基体11の内部に先端10aにおいて折り返し状(U字状)に配置された抵抗発熱体(導電性セラミック)12を有しており、ヒータ10の後端寄り部位の側面(外周面)には、通電用の各電極端子16、17を露出させている。ただし、ヒータ10には、その軸線G方向の中間部位に金属パイプ(例えばSUS630製)15が圧入で外嵌めされており、その後端寄り部位の内周面にて、相対的に先端側に位置する接地用の電極端子16に電気的に接続されている。
先端側筒状ハウジング50における拡径環状内周面55と、ヒータ10の外周面10bとの間の空隙(環状空隙)には、ヒータ10をなす金属パイプ15に外嵌めされる形で、金属薄肉材(インコネル製)からなるシール部材(以下、ベローズとも言う)18が配置されている。すなわち、この金属パイプ15には、ハウジング40内において遊挿された金属製のベローズ18が外嵌され、そのベローズ18の先端部18aが、ヒータ10をなす金属パイプ15の外周面10bに、その周方向に沿ってシール状に溶接されている。また、このベローズ18の後端部18bは、ハウジング本体41の先端と先端側筒状ハウジング50の後端においてその周方向に沿ってシール状に溶接されている。このベローズ18は、それ自身が先後方向も含めて変形容易とされており、これにより、ハウジング40に対してヒータ10が先後動する際に、シール部材18自身が変形して、その先後動(変位)を許容するように形成されている。
また、ベローズ18は、ヒータ10の接地用の電極端子16とハウジング40との中継導通部をなし、かつ、ヒータ10をハウジング40内において保持すると共に、その先端側内部の環状空隙を先後において遮断して封止(気密保持)する役割を担っている。なお、ヒータ10の外周面10bに位置する、ベローズ18の先端部18aには、本例では半径方向外向きに一定幅で折り曲げられ、或いはカール状に曲げ形成されたフランジからなる突出部18fを備えている(図2参照)。熱伝達部材20は、この突出部18fと、先端側筒状ハウジング50の先端環状部54の内周面54aとの先後方向の間で、先後方向の動きが許容された状態で配置されている。すなわち、本例では、熱伝達部材20は、その後端の外周面にフランジ状をなす後端側凸部24を備えている。これが、先端環状部54の後端向き面54cに係合することで、ハウジン40の先端から先方へ抜け出て分離しないように構成されており、この後端側凸部24が、突出部18fに当ることで、後方への過度の動き(後方への入り込み過ぎ)を規制ないし防止する手段(ストッパ)をなしている。なお、熱伝達部材20自体、及びその配置に係わる構成の詳細についてはさらに後述する。
また、ヒータ10の後端には、上記したようにそれと同軸で電圧印加用の軸部材30が配置されている。そして、この軸部材30の先端とヒータ10の後端には、金属製の連結用のパイプ19が両者に圧入により外嵌されている。ヒータ10の相対的に後方に位置する電極端子(正電位側端子)17は、この連結用のパイプ19の内周面にてそれと導通が保持され、軸部材30に電気的に接続されている。すなわち、連結用のパイプ19は、ヒータ10と軸部材30との一体化とともに、その導通確保も担っている。
一方、ハウジング本体41の外周面には、エンジンヘッドHのプラグホールにねじ込み方式でグロープラグ101を固定するためのネジ43が所定長さ形成されている。また、このハウジング本体41の後端寄り部位は、相対的に大径をなすように拡径された拡径筒部45を備えている。そして、この拡径筒部45の後端には、後端側筒状ハウジングであるシール用保護筒(キャップ)60が、センサ用の歪部材210の外周寄り部位を挟んで取り付けられている。なお、この歪部材210は、全体としてみると円環状(又は円筒状)をなすもので、その内周寄り部位において、絶縁を介して軸部材30の後端寄り部位に固定されている。これにより、ヒータ10が燃焼圧により先後動すると、それと一体の軸部材30の動きに対応して歪部材210が変形し、この歪部材210に取付けられた歪センサ220にて燃焼圧(電気信号)を取り出すように設定されている。なお、後端のシール用保護筒60における後端側の小径部位内には、封止用のゴム部材69が装填されており、軸部材30の後端に設けられた端子金具75が、このゴム部材69を貫通して後方に突出させられている。
さて、次に本発明の要部をなすところの先端側ハウジング50の先端部53近傍、及びその内部に配置されている熱伝達部材20等の構成の詳細について説明する。上記もしたが、ハウジング40をなす先端側ハウジング50は、その内周面のうち、先端部53にはフランジ状(円環フランジ状)の先端環状部54を備えている。本例では、この先端環状部54は、内向き半径方向に、周方向に沿って一定量、突出させられた円環フランジ形状を呈している。これにより、先端側ハウジング50の内周面は、上記もしたように、先端環状部54の内周面54aより、その後方において拡径されてなる拡径環状内周面55が大径をなしている。一方、拡径環状内周面55と、ヒータ10の外周面10bとの間の空隙(環状空隙)には、上記したように、ベローズからなるシール部材18が配置されており、その環状空隙の先後の気密を保持しつつ、ヒータ10の先後動変位を許容している。
一方、ハウジング40における先端環状部54の内周面54aと、ヒータ10の外周面10bとの間の環状をなす空隙(環状空隙)には、熱伝達部材20(例えば、SUS303製)が遊嵌状にて配置されている。本例では、この熱伝達部材20は、円筒状部22とその後端の外周面に、半径方向外向きに一定量突出する円環状をなす後端側凸部24を備えた筒状体(円筒状部の壁厚0.5〜1mm)をなしている。なお、円筒状部22は、その外径が先端環状部54の内周面54aの内径より微量(0.01〜0.05mm)小さく、内径がヒータ10の外径(パイプ15の外径)より微量(0.01〜0.05mm)大きくされている。これにより、熱伝達部材20は筒状をなし、ヒータ10の外周面10b及び先端環状部の内周面54aの双方に、隙間を保持して配置され得るよう構成されている。
そして、後端側凸部24の外径は、先端環状部54の内周面54aの内径より大きく、拡径環状内周面55の内径より小さく設定されている。これにより後端側凸部24は、先端環状部54の後端向き面54cに係合するよう設定されているが、後端側凸部24の先端向き面は、後端向き面54cと同様のテーパが付けられている。なお、その係合状態において、後端側凸部24と、シール部材18の先端の突出部18fとは間隔があり、したがって、上記したように、後端側凸部24は熱伝達部材20が後方に移動したとき、この突出部18fにて止められ、その移動範囲が規制されるように設定されている。これにより熱伝達部材20が奥、すなわち、ハウジング40の内部の後方へ入り込みすぎとならないようにされている。なお、突出部18fをシール部材18の先端に設けたが、これは、シール部材とは無関係にヒータ10の外周面に設けることもできる。
しかして、本例では、熱伝達部材20が筒状をなし、先端環状部54の内周面54aとヒータ10の外周面10bとの間の環状空隙に、ヒータ10に外嵌される形で遊嵌状にて配置されている。そして熱伝達部材20は、この状態において、ヒータ10の軸線Gに対して、図2、図3に示したように、偏心し、或いは図4のA、Bに示したように、傾斜するように動くことができ、その動きによってハウジング40の先端環状部54、及びヒータ10の双方に同時に接触可能とされている。また、熱伝達部材20は、上記した先後の移動範囲において先後動できる。こうして、熱伝達部材20は、これらの各動きや、その動きの組合せにより、先端環状部54、及びヒータ10の双方に同時に接触可能とされている。なお、図3ではセラミックヒータ自体の内部構造を省略。
このような本例の燃焼圧検知センサ付きのグロープラグ101は、エンジンヘッドHのプラグホール内のネジ穴にねじ込まれ、プラグホールの先端の環状をなすシール用の座面Zに、ハウジング40の先端部53の先端面54bを押付けるように着座する形で取付けられる(図2参照)。このとき、熱伝達部材20は、ヒータ10の外周面10bと、先端環状部54の内周面54aとの間において、それぞれ微小な隙間を保持した遊嵌状態にある。他方、この状態においてエンジンの始動後は、グロープラグ101をなすヒータ10及び熱伝達部材20等は、燃焼圧及び振動を常に受ける。このため、熱伝達部材20は、ヒータ10の軸線Gに対して傾斜し、若しくは偏心し、又は先後動するように動く。これにより、例えば、熱伝達部材20の一方の内周面はヒータ10の外周面10bに接触し、この接触箇所の反対側の熱伝達部材20の外周面は先端環状部54の内周面54aに接触する(図2、図3参照)。すなわち、熱伝達部材20は、ハウジング40の先端環状部54の内周面54a及びヒータ10の両方に同時に接触する。
このように、本例の燃焼圧検知センサ付きのグロープラグ101においては、熱伝達部材20はハウジング40に対するヒータ10の先後動を抑制又は阻害することなく、ヒータ10の熱をハウジング40の先端部53に伝達する経路をなすことができる。すなわち、ヒータ10の先端部の熱は、図2中、破線矢印で示したように、熱伝達部材20、先端側ハウジング50の先端部53を介してプラグホールの座面Zに伝わるため、エンジンヘッドHへ短経路で効率的に逃がすことができる。この結果、燃焼圧検知の精度、感度の低下もなく、ヒータ10の後方が異常高温となることを有効に防止されるので、ヒータ10の後方の通電用の電極16,17に圧接するよう嵌められていたパイプ15,19が、ヒータ10をなすセラミックより大きく熱膨張することに起因する面圧低下による抵抗増大等、電気的接続の信頼性が失われるのが防止される。
別の言い方をすると、この熱伝達部材20がない場合、ヒータ10の熱はその先端寄り部位では、ベローズ18を介してのみハウジング40に伝わり、エンジンヘッドHへと伝達されるため、伝達経路が長くなる。その上、ベローズ18は、薄肉材であるから熱伝達性がよくない。これに対し、本例では、ハウジング40の先端に位置する熱伝達部材20が熱伝達経路をなして、その熱をハウジング(先端側ハウジング50)に伝達することができるため、エンジンヘッドHにその熱を効率的に逃がすことができる。このように、本例の熱伝達部材20は、ヒータ10とハウジング40との間に緊密に配置されているものではないため、ヒータ10の先後動を妨げることもないから、燃焼圧検知の精度、感度の低下を招くこともなく、ヒータ10の後方がその発熱による熱、又はエンジンの燃焼熱によって異常高温となることが有効に防止される。
なお、熱伝達部材20の接触の相手部材であるハウジング40及びヒータ10との各隙間(半径方向の隙間)は、熱伝達部材20が、ヒータ10の軸線Gに対して偏心し、若しくは傾斜し、又は先後方向への移動、さらには、これらの組合せからなる動きで、相手部材の両者に接触できればよい。なお、上記形態例では、熱伝達部材20を筒状体とし、しかも、周方向に連なる(周方向に無端の)筒(パイプ)構造としたが、このように筒構造とする場合、図示はしないが、軸線Gに例えば平行に(母線に沿って)、切れ目のある横断面がC形(ランドルト環)形状の筒構造のもの(有端環筒状のもの)としてもよい。
また、熱伝達部材20は、円筒体をその軸線Gを通る平面で、例えば2分割として、横断面が半円をなす2つの熱伝達部材片からなる熱伝達部材としてもよいし、3分割以上としてもよい。すなわち、図5に示したように、熱伝達部材20は筒状をなし、ヒータ10の外周面10b及び先端環状部54の内周面54aの双方に、隙間を保持して配置され得るよう構成されているもの、すなわち、上記形態の熱伝達部材20から、ヒータ10の軸線G回りで分割された複数(例えば2つ割り)の熱伝達部材片25にて構成されているものとしてもよい。なお、図5ではセラミックヒータ自体の内部構造を省略。
このように、例えば2分割として、横断面が半円をなす2つの熱伝達部材片25からなる熱伝達部材20としたものでは、各熱伝達部材片25が動きやすくなり、各相手部材と接触しやすくなる。このため、その分、熱伝達性を高めることができるので、放熱効率を高めることができる。すなわち、ハウジング40の先端環状部54の内周面54aは円筒面で、及びヒータ10は丸棒とされる。したがって、熱伝達部材20を1つの筒状体とする場合、その筒状部は円筒状になる。そうすると、熱伝達部材20が偏心したり傾斜したりする場合、その熱伝達部材20がハウジングの先端環状部54の内周面54a、ヒータ10の外周面10bに接する箇所、すなわち、接触箇所は対向する各一部となる(図3参照)。これに対して、熱伝達部材20を、周方向において分割してなる複数の熱伝達部材片25で構成した場合には、その各熱伝達部材片25が傾斜等して動く分、その接触箇所を分割数に対応して増加させることができるため、熱伝達経路を増やすことができ、したがって、熱伝達性ないし放熱性を高めることができる。これより、理解されるが、複数の熱伝達部材片25で構成する場合、上記のように筒状体を周方向で分割したものではない、複数の熱伝達部材片で構成することもできる。
なお、熱伝達部材20が、環状空隙で、傾斜し、偏心し、又は一定の範囲でのみ先後方向に動くことができることとするための手段としては、図6〜図8に示したようにすることとしてもよい。図6では、熱伝達部材20における外周面の先後に、先端環状部54を跨ぎ、この先端環状部54の後端向き面54cと先端向き面54bとにそれぞれ係合する後端側凸部24と先端側凸部26とを設けたものである。また、図7では、先端環状部の内周面54aに、周方向に沿って凹部54eが設けられており、熱伝達部材20を、円筒体を基体として、この凹部54eに緩く嵌る凸部127をその外周面に周方向に沿って設け、これらを遊び嵌としたものである。さらに、図8では、ヒータ10の外周面10bに、周方向に沿って凹部110eが設けられており、熱伝達部材20を、円筒体を基体として、この凹部110eに緩く嵌る凸部128をその内周面に周方向に沿って設け、これらを遊び嵌としたものである。なお、いずれにおいても、凹部、又は凸部はその逆の相手方部材に設けることができるが、遊び嵌め状態次第では、先後方向の動きを小さくでき、主として、軸線Gに対する傾斜と、偏心にて相手部材との接触が確保されるものとすることができる。
なお、上記例ではセラミックヒータ10を備えるグロープラグにおいて具体化したが、所謂、メタルグロープラグとして使用されるようなヒータを有するグロープラグにおいても、本発明は同様に適用できる。図9は、ヒータ10のみの構成が上記実施形態(図1−図4)と異なる、メタルグロープラグ形式の燃焼圧検知センサ付きグロープラグの先端寄り部位を示したものである。なお、このものは、ヒータ10の構成が異なるのみで、上記形態のものと基本的な構成は同じであり、したがって、それと同様の効果が得られるものである。このため、同一部位には同一の符号を付し、その相違点のみ簡単に説明する。
このものでは、ヒータ10は、先端(底部)10aが閉じられた金属チューブ(シース管)10c内に、その底部に発熱コイル13の先端を接続し、コイル13の後端には、通電用の軸部材30が、その先端を介して接続されている。そして、この軸部材30は、金属チューブ10cの後端寄り部位内に同軸で内挿され、後方に延びる形で配置されている。このようなものでは、チューブ10c内には図示しないが絶縁粉末14が充填されると共に、チューブ10cの後端の内周面と、軸部材30の外周面との間には、例えば、絶縁性のあるゴム筒35が介在されて、チューブ10cの後端を縮径状に加締めることで、このゴム筒35を圧縮して内部を封止しつつ両者の固定が行われる。このようなものでは、ゴム筒35には耐熱性の高いものが使用されるが、ヒータ10をなすチューブ10cの後方が高温となると、そのゴムの劣化が早くなる。これに対して、図9においては、上記したのと同様に、熱伝達部材20が配置されているため、この熱伝達部材20を介してヒータ10の熱を、先端側ハウジング50の先端環状部54の内周面54aに向けて短経路で伝達できるから、その分、チューブ10cの後方が高温となるのを防止できる。これにより、ゴムの劣化を遅くすることができるため、その封止、絶縁の寿命を延長できる。
本発明のグロープラグは、上記した各例のものに限定されるものではなく、適宜に変更して具体化できる。例えば、上記例ではシール部材を、蛇腹状のベローズとしたが、円環板状の単なるダイヤフラム(薄膜)形状のものや、メンブレン構造のもの、或いはその他の環状又は筒状の膜体とするなど適宜の形状、構造のものであってよい。また、ハウジングをハウジング本体と、その先端に同軸状で突き合わせ固定した先端側ハウジングとを含むものからなるものとしたが、ハウジングの構成はこれに限定されるものではなく、1つの筒体からなるものであってもよい。
また、本発明のような燃焼圧検知センサ付きグロープラグにおけるそのセンサ(検知手段)は、上記例ではヒータが燃焼圧によって先端から後方に押されることによって発生する先後動(変位)により、歪部材を変形させ、歪センサ(歪ゲージ)にて、その検知を行うものを例示したが、これに限定されるものではない。ピエゾ抵抗体を備えた半導体素子のような、半導体歪ゲージを用いたものでも、或いは、燃焼圧にて圧電素子を圧縮することで発生する電圧変化を検知するものなど、各種のセンサ(センサ素子)方式を用いた燃焼圧検知センサ付きグロープラグに広く適用できる。