JP6012326B2 - 電子ビーム溶接方法 - Google Patents
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特に、比較的大型の構造部品において電子ビーム溶接を適用する場合には、その突合せ部が、サブマージアーク溶接やTIG溶接で通常用いられる突き合わせ時に断面U字型となる開先とは異なり、通常、I型開先とされる。したがって、開先加工にともなう手間を省略することが可能であるとともに、溶接自体も1パスで行われることとなり、従来に比べて大幅に工数を低減することが可能である。
さらに、電子ビーム溶接は、溶接ビードが鋼板中の細かい磁気によって偏向され易いため、厚みが厚くなるほど目はずれによる溶接欠陥が生じやすい。つまり、板厚が厚くなるほど、目はずれを防止するために溶接ビード幅を広げる必要があり、入熱も大きくなってしまうため、溶接金属の機械的性質は板厚を増加させるほど低下する傾向にある。
特許文献1に記載の技術では、開先から左右に少しずらして複数パスを施す。複数の溶接ビードによって開先を溶接することで、幅広い溶接ビードを形成し目はずれによる欠陥が生じない接合を行う。そして、最終パスで、幅広い溶接ビード内の中心付近に、入熱の小さい細い溶接ビードを施し、焼き入れ効果を生じさせることで、強度を母材並みに回復させる方法がある。
さらに、TMCP(Thermo−Mechanical Control Process)を用いた高張力鋼のような鋼材では、より溶接金属の強度を求められるが、合金元素を大幅に減少させているため十分な溶接金属の強度を得ることがさらに難しいという問題がある。
また、従来の電子ビーム溶接の方法は、各パスを施工する毎に溶接ビード幅を変更する必要があるため、一箇所の開先を溶接するために何度も条件調整を行うという手間がかかっている。
本発明の一態様に係る電子ビーム溶接方法は、2つの母材の突合せ部に形成された開先を含むように、一次溶接ビードを施工する工程と、前記一次溶接ビードと幅が等しい複数の二次溶接ビードを、前記一次溶接ビードと重なり、かつ、これら複数の二次溶接ビードが互いに重ならない位置に順次施工する工程と、を備え、前記二次溶接ビードを前記2つの母材の前記開先の対向する面に傾斜させて施工することを特徴とする。
具体的には、本実施形態の電子ビーム溶接方法は、開先5を形成する準備工程S0と、一次溶接ビードである第一溶接ビード1を形成する第一溶接工程S1と、第1の二次溶接ビードである第二溶接ビード2を形成する第二溶接工程S2と、第2の二次溶接ビードである第三溶接ビード3を形成する第三溶接工程S3とから構成されており、これらの工程が順次施される。
母材4である被溶接物には、電子ビーム溶接が施工可能な材料が使用できる。中でも、TMCPを用いた高張力鋼などに使用されることが好ましい。
なお、本実施形態における溶接ビードの幅は、最も狭い部分の長さを意味する。
なお、第二溶接ビード2と第三溶接ビード3とは第一溶接ビード1の中心線O1を境界として線対称に配置されていることが好ましく、開先5を境界として線対称に配置されていることがより好ましい。
上記のような電子ビーム溶接方法によれば、第一溶接ビード1と第二溶接ビード2と第三溶接ビード3とが重なることで、開先5に対して形成した第一溶接ビード1の幅を、第二溶接ビード2と第三溶接ビード3の幅の分だけさらに広くとることができ、目はずれを防止できる。さらに、第二溶接ビード2と第三溶接ビード3とが互いに重ならないことで、冷却された第一溶接ビード1の中央部分を二重、三重に加熱することがないため、入熱を小さくすることができ、再溶融による第一溶接ビード1の強度の低下を防止できる。さらに、等しい溶接ビード幅とすることで最後まで同一の条件で溶接を行うことができるため、母材4に対し溶接を容易に施工することが出来る。
第二実施形態においては第一実施形態と同様の構成要素には同一の符号を伏して詳細な説明を省略する。この第二実施形態の電子ビーム溶接方法は、第二溶接工程S2と第三溶接工程S3について第一実施形態と相違する。
図2(c)に示すように、第二傾斜溶接工程S21では、第一溶接工程S1で形成した第一溶接ビード1を充分に冷却した後に、第一の二次溶接ビードである第二傾斜溶接ビード21を形成する。第二傾斜溶接ビード21は、第一溶接ビード1の中心線O1が含まれない偏った位置で第一溶接ビード1と接しつつ、縦断面視にて、第一溶接ビード1の中心線O1に対して第二傾斜溶接ビード21の中心線O21が傾斜するように形成される。即ち、第二傾斜溶接ビード21の中心線O21は、電子ビームの照射方向に向かうに従って第一溶接ビード1の中心線O1に近接するように傾斜している。ここで、第二傾斜溶接工程S21では、表1の溶接施工条件で施工し、第一溶接工程S1から溶接施工条件の変更を行わない。
図2(d)に示すように、第三斜溶溶接工程S31では、第二傾斜溶接工程S21を充分に冷却した後に、第二の二次溶接ビードである第三傾斜溶接ビード31を形成する。第三傾斜溶接ビード31は、第二傾斜溶接工程S21とは逆側の第一溶接ビード1の中心線O1が含まれない偏った位置で第一溶接ビード1と接しつつ、縦断面視にて、第一溶接ビード1の中心線O1に対して第三傾斜溶接ビード31の中心線O31が傾斜するように形成される。即ち、第三溶接ビードの中心線O31は、電子ビームの照射方向に向かうに従って第一溶接ビード1の中心線O1に近接するように傾斜している。ここで、第三斜溶溶接工程S31では、表1の溶接施工条件で施工し、第一溶接工程S1から溶接施工条件の変更を行わない。
[実施例]
母材4として、TMCPを用いた高張力鋼を使用する。準備工程S0では、二つの母材4の端面を対向させ開先5に形成する。
第一溶接工程S1として、溶接ビーム幅2mmの第一溶接ビード1が開先5を含むように開先5に対して平行に形成した。溶接施工条件は、表1の条件である加速電圧130〜170kV、ビーム電流80〜180mA、溶接速度200〜450mm/minにて溶接を行った。
第二溶接工程S2として、第一溶接ビード1を充分に冷却した後に、溶接ビーム幅2mmの第二溶接ビード2を第一溶接ビード1の中心線O1が含まれない偏った位置で第一溶接ビード1と接しながら、第一溶接ビード1の中心線O1と第二溶接ビード2の中心線O2とが縦断面視で平行になるように形成した。
第三溶接工程S3として、溶接ビーム幅2mmの第三溶接ビード3を第一溶接ビード1の中心線O1から第二溶接ビード2と反対側にずらした位置で第一溶接ビード1と接しながら、第一溶接ビード1の中心線O1と第三溶接ビード3の中心線O3とが縦断面視で平行になるように形成した。溶接施工条件は、第一溶接工程S1と同様とした。
母材4として、TMCPを用いた高張力鋼を使用する。母材4の開先5に、第一溶接工程S1として、溶接ビーム幅2mmの第一溶接ビード1が開先5を含むように形成した。溶接施工条件は、実施例1と同様に表1の条件である加速電圧130〜170kV、ビーム電流80〜180mA、溶接速度200〜450mm/minにて溶接を行う。
なお、第二溶接工程S2及び第三溶接工程S3については施工しない点について実施例と異なる。
実施例では、第一溶接工程S1から第三溶接工程S3までを順次施工することで溶接ビードの幅が4mmの溶接を開先5に行った。また、比較例では、第一溶接工程S1のみを施工したため溶接ビードの幅が2mmの溶接を開先5に行った。
図3に示すように、実施例と比較例の電子ビーム溶接について、溶接金属の強度を比較した。実施例は、比較例よりも高い強度を示し、1.06倍程度の強度となることが分かった。
なお、施工される二次溶接ビードは第一溶接ビード1の中心線O1を境界として、片側に方よって形成されるのではなく、左右に均等に順次形成されることがより好ましい。
Claims (2)
- 2つの母材の突合せ部に形成された開先を含むように、一次溶接ビードを施工する工程と、
前記一次溶接ビードと幅が等しい複数の二次溶接ビードを、前記一次溶接ビードと重なり、かつ、これら複数の二次溶接ビードが互いに重ならない位置に順次施工する工程と、を備え、
前記二次溶接ビードを前記2つの母材の前記開先の対向する面に傾斜させて施工することを特徴とする電子ビーム溶接方法。 - 前記一次溶接ビード及び前記二次溶接ビードの幅を1mmから3mmの範囲に設定することを特徴とする請求項1に記載の電子ビーム溶接方法。
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