JP6005536B2 - アーク蒸発源を備えたプラズマcvd装置 - Google Patents

アーク蒸発源を備えたプラズマcvd装置 Download PDF

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Description

本発明は、基材にCVD皮膜を形成するプラズマCVD法により保護膜を形成する装置に関し、特に、金属元素を蒸発させてCVD皮膜に混入させるアーク蒸発源を備え、十分な金属添加量で長時間に亘り安定的な成膜が可能なプラズマCVD装置に関する。
ピストンリングのような自動車のエンジン部品などには、良好な耐摩耗性、耐熱性、耐焼付き性等が求められる。そのため、これら機械部品には、DLC(Diamond-Like-Carbon)のような耐摩耗性コーティングがプラズマCVD法を用いて施される。
ところで、上述した基材にプラズマCVD法を施す際は、生産性を考えて真空チャンバ内に多数の基材を収容して一度に処理を行うのが好ましい。このように多数の基材を一度に処理する場合には、それぞれの基材に形成される皮膜の厚さや膜質を基材同士で均一にしなくてはならないので、従来のプラズマCVD装置では、基材をテーブル上に並べて自公転させた状態で成膜処理する方法が採用されている。
また、このような成膜処理を行うにあたって、皮膜の特性を改良する目的で、スパッタ蒸発源やアーク蒸発源から金属元素を蒸発させて、CVDの皮膜に混入させることが行なわれる。
たとえば、特許文献1は、耐摩耗性、密着性及び耐焼き付き性に優れ、摩擦係数を低減させた非晶質炭素被膜を形成する方法、及びこの非晶質炭素被膜を表面に有し、十分な摩擦抵抗の低減を図り、特に内燃機関においては燃費を向上することができる非晶質炭素被覆摺動部品を提供することを目的として、真空槽内に固体カーボンターゲットと、IVa、Va、VIa族及びSiから選ばれた少なくとも1種の添加金属からなる金属ターゲットとを配置し、これらのターゲットをスパッタリングしながら、同時に炭化水素ガスと不活性ガスを真空槽内に導入することにより、基材上に添加金属と炭素と水素とからなる非晶質炭素被膜を形成する装置が開示されている。
一方、特許文献2には、炭素を含む炭素含有ガスと希ガスとを主成分とする雰囲気ガスを供給しつつ、その雰囲気ガス中でアーク放電を行うことにより金属ターゲットを蒸発してイオン化し、金属原子のイオンおよび炭素含有分子のイオンやラジカルを負の電圧を印加した被処理体に供給して成膜する方法が開示されている。その際、環状の電磁石によってターゲットの蒸発面Sにほぼ直交して前方に発散ないし平行に進行する磁力線を形成し、この磁力線によって被処理体Wの近傍付近で雰囲気ガスのプラズマ化を促進し、希ガスイオンによるスパッタエッチングを行いつつ成膜する。希ガス流量:炭素含有ガス流量は1:9〜9:1が望ましい。また、このときの被処理体に印加するバイアス電圧は、アース電位に対して−50V〜−500Vが望ましいとされている。
さらに、特許文献3には、固体カーボンターゲットを使用せず、金属ターゲットのみをアーク放電で昇華させつつ炭化水素ガスを導入し、金属及び炭化水素をイオン化して基材上に形成されたことを特徴とする金属複合ダイヤモンドライクカーボン(DLC)皮膜の形成手段を開示されている。
特開2003−247060号公報 特開2001−172763号公報 特開2007−100189号公報
しかしながら、特許文献1に開示された装置でDLC被膜を成膜しつつ、金属元素をスパッタ蒸発源から添加しようとする場合、皮膜形成時に導入するプロセスガス中の炭化水素ガスの量が制約される。これは、スパッタ蒸発源もグロー放電を発生させる装置であり、一定量以上の成膜ガスが導入された雰囲気下でスパッタ蒸発源を作動させると、スパッタ蒸発源のターゲット上でプラズマCVDによる皮膜形成が起こり、金属のスパッタ蒸発ができなくなってしまう。このため、皮膜の原料である炭化水素の供給量が制約され、プラズマCVDによる皮膜形成の速度も制約され、高速の成膜ができない。
一方、特許文献2および特許文献3に開示された装置によると、上述のようなスパッタ蒸発源のターゲット表面でのCVD成膜が起こる問題は発生しない。これは、特許文献2および特許文献3に開示された装置は、いずれも真空アーク放電現象を用いたアーク蒸発源を用いて金属を蒸発させているためである。アーク蒸発源は低電圧で作動するため、アーク蒸発源を作動させてもグロー放電は発生せず、したがって、蒸発源の表面でプラズマCVDによる皮膜形成は発生しない。このため、成膜ガスの圧力に特許文献1に開示された装置のような制約は生じず、原理的に成膜速度を制約する要素はない。
このようにスパッタ蒸発源で発生する問題をアーク蒸発源は備えない一方、特許文献2および特許文献3に開示された装置はいずれもアーク蒸発源で生成するプラズマを使って皮膜の原料である成膜ガス(炭化水素ガス)を活性化している。このため、以下のような問題が生じる。
プラズマCVDのための成膜ガスの活性化は、アーク放電プラズマでにより行なわれるので、その程度(すなわちCVDの成膜速度)は、アーク蒸発源に投入する電力の影響を強く受ける。一方、アーク蒸発源の蒸発量も同様に投入する電力とおよそ比例関係にある。このため、CVD皮膜に対するアーク蒸発源の蒸気からの金属添加量の制御には制約がある。
さらに、アーク蒸発源のプラズマは、基材周辺に到達することになるので、チャンバ全体にプラズマが及ぶ。この結果として、アーク蒸発源の陽極として動作するチャンバ内面にもCVD皮膜が形成される。DLC成膜の場合、形成される皮膜は絶縁性であり、チャンバに堆積する絶縁性の皮膜がアーク放電の安定性を損なってしまい長時間の安定的な成膜が困難になる。
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、基材にCVD皮膜を形成するプラズマCVD法により保護膜を形成する装置であって、金属元素を蒸発させてCVD皮膜に混入させるアーク蒸発源を備え、十分な金属添加量で長時間に亘り安定的な成膜が可能なプラズマCVD装置を提供することを目的とする。
上述した課題を解決するため、本発明の保護膜の形成方法は以下の技術的手段を講じている。
即ち、本発明に係るプラズマCVD装置は、真空チャンバと、前記真空チャンバ内を真空排気する真空排気手段と、前記真空チャンバ内で成膜対象である基材を保持する保持部と、成膜ガスを含むプロセスガスを前記真空チャンバ内に供給するガス供給部と、前記基材周辺にグロー放電プラズマを生成させる電力を供給するプラズマ発生電源と、アーク蒸発源とを備え、プラズマCVD法により前記基材に皮膜を形成する装置である。このプラズマCVD装置におけるアーク蒸発源は、アーク放電プラズマにより金属元素を蒸発する蒸発源と、前記蒸発源と前記基材との間に設けられ、前記蒸発源周辺をグロー放電プラズマからの影響を受けないように覆う区画部材とを備え、前記区画部材には蒸気開口部が設けられていることを特徴とする。
好ましくは、前記区画部材が前記アーク蒸発源の陽極として作用するように構成することができる。
さらに好ましくは、前記区画部材により区画された空間には、前記成膜ガスとは別の種類のガスが供給されるように構成することができる。さらに好ましくは、前記ガスは、不活性ガスであるように構成することができる。さらに好ましくは、前記ガスは、前記アーク蒸発源の蒸発材料と化合したときに絶縁性の化合物を生成しないガスであるように構成することができる。
さらに好ましくは、前記蒸気開口部には、グロー放電プラズマとアーク放電プラズマとを遮断する磁場が形成されているように構成することができる。さらに好ましくは、前記磁場の磁束密度は、1mT〜10mTであるように構成することができる。
さらに好ましくは、前記磁場は、前記アーク蒸発源で発生するアークスポットを走査するための磁場の形成手段によって、形成されるように構成することができる。
さらに好ましくは、前記区画部材の少なくとも一部は、前記磁場の形成手段における磁気回路を構成することができる。
本発明にかかるプラズマCVD装置の最も好ましい形態は、真空チャンバと、前記真空チャンバ内を真空排気する真空排気手段と、前記真空チャンバ内で成膜対象である基材を保持する保持部と、成膜ガスを含むプロセスガスを前記真空チャンバ内に供給するガス供給部と、前記基材周辺にグロー放電プラズマを生成させる電力を供給するプラズマ発生電源と、アーク蒸発源とを備え、プラズマCVD法により前記基材に皮膜を形成するプラズマCVD装置であって、前記アーク蒸発源は、アーク放電プラズマにより金属元素を蒸発する蒸発源と、前記蒸発源と前記基材との間に設けられ、前記蒸発源周辺をグロー放電プラズマからの影響を受けないように覆う区画部材とを備え、前記区画部材には蒸気開口部が設けられていて、前記区画部材が前記アーク蒸発源の陽極として作用することを特徴とする。
本発明にかかるプラズマCVD装置の最も好ましい他の形態は、真空チャンバと、前記真空チャンバ内を真空排気する真空排気手段と、前記真空チャンバ内で成膜対象である基材を保持する保持部と、成膜ガスを含むプロセスガスを前記真空チャンバ内に供給するガス供給部と、前記基材周辺にグロー放電プラズマを生成させる電力を供給するプラズマ発生電源と、アーク蒸発源とを備え、プラズマCVD法により前記基材に皮膜を形成するプラズマCVD装置であって、前記アーク蒸発源は、アーク放電プラズマにより金属元素を蒸発する蒸発源と、前記蒸発源と前記基材との間に設けられ、前記蒸発源周辺をグロー放電プラズマからの影響を受けないように覆う区画部材とを備え、前記区画部材には蒸気開口部が設けられていて、前記蒸気開口部には、グロー放電プラズマとアーク放電プラズマとを遮断する磁場が形成されていることを特徴とする。
本発明に係るプラズマCVD装置を用いることにより、基材にCVD皮膜を形成するプラズマCVD法により保護膜を形成する場合において、金属元素を蒸発させてCVD皮膜に混入させるアーク蒸発源を備え、十分な金属添加量で長時間に亘り安定的に成膜することが可能になる。
本発明の実施形態に係るプラズマCVD装置の全体構成を示す斜視図である。 図1に示すプラズマCVD装置の上面図である。 自転テーブルへの基材の設置例を示す図である。 図1に示すプラズマCVD装置におけるプラズマ発生電源の出力波形を示す図である。 図2の詳細図である。 アーク蒸発源の断面図(その1)である。 蒸気開口部を説明するための斜視図である。 アーク蒸発源の断面図(その2)である。 本発明の実施形態の変形例に係るプラズマCVD装置の全体構成を示す斜視図である。 図9に示すプラズマCVD装置の上面図である。
以下、本発明の実施形態に係るプラズマCVD装置を、図面に基づき詳しく説明する。なお、このプラズマCVD装置により保護膜が形成される対象は、基材(符号W(ワークの意味)を付す)であるとする。
<プラズマCVD装置:全体構成>
図1は、本発明のプラズマCVD装置1の全体構成を示している。
このプラズマCVD装置1は、真空チャンバ2と、真空チャンバ2内を真空排気する真空排気手段(真空ポンプ)3と、成膜対象である基材Wを自転する状態で保持する複数の自転テーブル4と、を有している。これら複数の自転テーブル4は公転テーブル5に配備されており、このプラズマCVD装置1には複数の自転テーブル4が設けられた公転テーブル5を自転テーブル4の回転軸(自転軸P)と軸心平行な公転軸Q回りに公転させる公転機構8が設けられている。
なお、本発明において「基材Wが自転する」とは、基材Wを貫通する軸P回りに基材Wが回転する(スピンする)ことをいう。また、「基材Wが公転する」とは、基材Wが自分自身から離れた軸Q回りに回転すること、言い換えれば基材Wが軸Qの周りを周回することをいう。
また、図2に示すように、上述したプラズマCVD装置1は、真空チャンバ2内に原料ガスを含むプロセスガスを供給するガス供給部9と、真空チャンバ2内に供給されたプロセスガスにプラズマを発生させるプラズマ発生電源10とを備えていて、自転テーブル4に保持された基材WにプラズマCVD法を用いて皮膜を形成する構成となっている。また、真空チャンバ2内には、基材Wの温度を制御して膜質を調整する加熱ヒータ17が適宜配備されていても良い。
<プラズマCVD装置:詳細構成 真空チャンバ>
真空チャンバ2は、その内部が外部に対して気密可能とされた筺体である。真空チャンバ2の側方にはこの真空チャンバ2内にある気体を外部に排気して真空チャンバ2内を低圧状態(真空状態)にする真空ポンプ(真空排気手段)3が設けられていて、この真空ポンプ3により真空チャンバ2内は真空状態まで減圧可能である。そして、この真空チャンバ2の内部には、複数の基材Wが後述する自転テーブル4にそれぞれ保持された状態で収容されている。
<プラズマCVD装置:詳細構成 基材配備>
このプラズマCVD装置1で成膜される基材Wは、均一な成膜を可能とするため上下に長尺な円柱状空間内に基材セットWSとして配備するとよい。
たとえば、基材Wが図3(a)に示すようなピストンリングである場合は、そのままでは不均一に成膜される可能性がある。このため、図3(a)に示すように基材Wを積み重ねた基材セットWSとすればよい。この場合において、基材Wを積み重ねて基材セットWSとしたときに周方向の一部が欠落して完全な円筒にならない場合は、必要に応じてカバー11で開口部分に蓋をした基材セットWSとすることにより、均一な成膜が可能となる。
また、成膜しようとする基材Wが図3(b)に示すような小型部材(たとえば小さなピストンピン)の場合は、円板12が上下方向に多段に積み重ねられた設置ジグ13を用意し、それぞれの円板12に基材Wを配備して基材セットWSとして、この基材セットWSが円柱状空間内に収まるように配備するとよい。
さらに、基材Wが前記以外の形状物である場合であっても、適宜固定用のジグを製作し、ジグと基材が円柱状空間内に収まるようにすればよい。
<プラズマCVD装置:詳細構成 回転テーブル>
自転テーブル4は、たとえばその上面が水平となっている円形の載置台である。自転テーブル4は、上下方向を向く回転軸回りに回転自在となっており、上面乃至は上方に配備された基材Wを回転軸回りに自転させつつ保持できるようになっている。自転テーブル4へは給電可能な状態となっており、供給された電圧は基材Wにも印加される。
図1に示すプラズマCVD装置1の場合、自転テーブル4は全部で6つ配備されている。これら6つの自転テーブル4は、平面視で一つの円の上に並ぶように公転テーブル5の上面に起立状態で配備されている。
公転テーブル5の中心軸(公転軸Q)は上下方向を向き、この軸回りに公転テーブル5は回転する。公転テーブル5の上面には上述したように複数(6つ)の自転テーブル4が、公転テーブル5の公転軸Qから等しい距離(半径)となるように且つ公転軸Q回り(周方向)に等間隔を開けて配備されている。この公転テーブル5の下側には、公転テーブル5を公転軸Q回りに回転させる公転機構8が設けられている。
公転機構8は、公転テーブル5の下面から公転軸Qに沿って下方に向かって伸びる軸部14と、この軸部14を駆動回転させる回転駆動部15とを有している。このように公転機構8を用いて公転軸Q回りに公転テーブル5を回転させれば、基材Wが保持された自転テーブル4が公転軸Q回りに公転する。それと同時に、自転テーブル4がその軸心回りに回転する構成とされている故、自転テーブル4に保持された基材Wが自転するようになる。
係る機構により、基材Wを真空チャンバ2内で各自転テーブル4を自転させつつ全体を公転させながら(自公転させながら)成膜させることが可能となる。
なお、隣り合う基材は、回転位相を考慮したり隣接する基材のサイズの調整などで、自公転時に相互に機械干渉しないように適切に設置する。
<プラズマCVD装置:詳細構成 ガス供給部>
一方、図2に示すように、真空チャンバ2内には、真空チャンバ2内に原料ガスを含むプロセスガスを供給するガス供給部9が設けられている。このガス供給部9は、CVD皮膜の形成に必要な原料ガスや、成膜をアシストするアシストガスを、ボンベ16から所定量だけ真空チャンバ2内に供給する構成とされている。
プロセスガスとしては、具体的には、金属含有のDLC(ダイヤモンドライクカーボン、非晶質カーボン膜)などのカーボン系のCVD皮膜を成膜する場合には、炭化水素(アセチレン、エチレン、メタン、エタン、ベンゼン、トルエンなど)を含む原料ガスに、不活性ガス(アルゴン、ヘリウムなど)の不活性ガスをアシストガスとして加えたものが用いられる。また、金属含有のシリコン酸化物系のCVD皮膜(SiOx膜、SiOC膜、SiNx膜、SiCN膜)を成膜する場合には、シリコン系有機化合物(モノシラン、TMS、TEOS、HMDSOなど)やシランなどシリコン含む原料ガスに、酸素などの反応ガスを加え、さらにアルゴンなどの不活性ガスをアシストガスとして加えたものを用いることができる。
また、主たる原料ガスに少量の添加原料ガスを混合させることもある。たとえば、金属含有DLC皮膜の形成の際に、炭化水素を主たる原料ガスとして、シリコン系有機化合物ガスを少量添加することにより、DLC中にSiと金属元素を含む皮膜を形成することができる。
なお、これらの原料ガス、反応ガス及びアシストガスは、使用するガスの種類を適宜組みあわせて用いることができる。
また、図2の如く、真空チャンバ2内には、アーク蒸発源(皮膜供給源)6が設けられている。このアーク蒸発源6についての詳細は後述する。
<プラズマCVD装置:詳細構成 プラズマ発生電源>
一方、本発明のプラズマCVD装置1に備えられたプラズマ発生電源10は、真空チャンバ2内に供給したプロセスガスにグロー放電を発生させて、プラズマを発生させるために用いるもので、交流の電力を供給する。このプラズマ発生電源10が供給する交流の電力としては、正弦波の波形に従って電流や電圧が正負に変化する交流だけでなく、パルス状の波形に従って正負に入れ替わる矩形波の交流を用いても良い。また、この交流には、連続した同一極性のパルス群が交互に現れるものや、正弦波の交流に矩形波を重畳したものを用いることもできる。なお、実際のプラズマ発生中の電圧波形は、プラズマ生成の影響によって歪む場合がある。また、プラズマが発生すると交流電圧のゼロレベルがシフトし、各電極の電位を接地電位に対して測定すると、マイナス側電極に印加電圧の80−95%が、プラス側電極に印加電圧の5−20%が加わるのが多く観察される。
プラズマ発生電源10から供給される交流は、その周波数が1kHz〜1MHz、好ましい。周波数が1kHz未満では皮膜のチャージアップが起り易く、1MHzを超える周波数の電力を自転公転する基材に伝達する機構が難しいからである。さらに電源の入手性等を考慮すると、10kHz〜400kHzの範囲とするのがなお好ましい。また、プラズマ発生電源10から供給される交流の電圧は、波高値でグロー放電の維持に必要な300〜3000Vが好ましい。さらに、プラズマ発生電源10から供給される交流の電力は、基材Wの表面積によって変動するが、単位面積あたりの電力で0.05〜5W/cm2程度の電力密度であるのが好ましい。
ここで、プラズマ発生電源10から供給される交流の電源波形としては、電源の両極間で測定した波形で、図4(a)に示す正弦波状のものが使用できる。実際の運転時の波形はプラズマ生成の影響で歪んだ波形となる。プラズマ中の電子とイオンの移動度の差異が影響して、各極のチャンバに対する電位は、マイナス側が大きく、プラス側が小さくなる。同様に図4(b)に示すパルス状の電圧波形もプラズマ発生電源10から供給される交流の電源波形として使用できる。これも実際の運転時には歪んだ波形となる場合がある。このようなパルス状の電源は、電圧の高さに加えてパルス幅やそのデューティーの設定も可能であり、プラズマの制御性と言う観点で優れている。さらに、図4(c)に示すように、ひとつのパルスをさらに細かいパルスに分割して供給する方式は、異常放電の抑制等で有効であるので、プラズマ発生電源10から供給される交流の電源波形として好ましい。
このような周波数、電圧、電力(電力密度)の交流電流を真空チャンバ2内に配備された一対の電極間に作用させれば、グロー放電が電極間に発生し、発生したグロー放電で真空チャンバ2内に供給されたプロセスガスが分解されてプラズマが発生する。そして、プラズマにより分解されたこれらのガス成分が電極表面に堆積することで、CVD皮膜の成膜が行われる。つまり、一対の電極のいずれかに基材Wを用いれば、基材Wの表面にCVD皮膜を成膜することが可能となる。
ところで、図2に示すように、本発明のプラズマCVD装置1においては、複数の自転テーブル4の半数が、プラズマ発生電源10の一方極に接続された第1の群18とされている。併せて、複数の自転テーブル4の残り半数が、プラズマ発生電源10の他方極に接続された第2の群19とされている。互いに異なる極性とされた第1の群18の自転テーブル4に保持された基材Wと、第2の群19の自転テーブル4に保持された基材Wとの間にプラズマが発生できる。
詳しくは、公転テーブル5に自転テーブル4が全部で6つ配備されている状態においては、図2の「A」で示される第1の群18の自転テーブル4は全部で3つ、また図2の「B」で示される第2の群19の自転テーブル4も全部で3つ存在していて、第1の群18に属する自転テーブル4の数と第2の群19に属する自転テーブル4の数とは同数となっている。
これらの自転テーブル4については、第1の群18に属する自転テーブル4の両隣に第2の群19の自転テーブル4が設けられ、これらの第2の群19の自転テーブル4のさらに隣に別の第1の群18に属するある自転テーブル4が設けられている。つまり、第1の群18に属する自転テーブル4と第2の群19に属する自転テーブル4とは、公転テーブル5の公転軸Q回りに1つずつ交番に(交互に)並ぶように配備されている。
そして、第1の群18に属する3つの自転テーブル4はいずれも、プラズマ発生電源10の一方の電極に接続されている。また第2の群19に属する3つの自転テーブル4はいずれもプラズマ発生電源10の他方の電極に接続されている。つまり、電圧印加中は、第1の群18に属する自転テーブル4と、第2の群19に属する自転テーブル4とは、常に逆の極性となっている。
なお、各自転テーブル4を上記した極性とするためには、公転軸Qならびに自転軸Pにそれぞれブラシ機構(図示略)を設け、このブラシ機構を通じてそれぞれの極性の電圧を印加するとよい。公転軸Q及び自転軸Pはベアリング機構を介して回転時自在に保持されているが、このベアリング機構を通じて電圧を印加するようにしてもよい。
また、上述したように、基材Wを保持する自転テーブル4および公転テーブル5を備えプラズマ発生電源10から基材WへAC電力を供給する態様について説明したが、基材Wを回転保持するか否かに関わらず、基材Wへプラズマ発生電源10から直流電圧、パルス電圧、交流電圧(RFまたはMF領域)を印加しても構わない。このように構成しても、基材Wと真空チャンバ2との間でグロー放電が発生して、グロー放電中のプラズマにより成膜ガスが分解され、基材W上にプラズマCVDによる皮膜が形成可能である。
<プラズマCVD装置:詳細構成 アーク蒸発源>
次に、本発明の実施形態に係るプラズマCVD装置1が備える特徴であるアーク蒸発源6の詳細について説明する。
このプラズマCVD装置1には、その真空チャンバ2内に、更に区画された領域があり、この領域内にアーク蒸発源6が設置されている。
図5に示すように、このアーク蒸発源6は、アーク放電プラズマにより金属元素を蒸発する蒸発源61と、蒸発源61と基材Wとの間に設けられ、蒸発源61周辺をグロー放電プラズマからの影響を受けないようにする区画部材62と、蒸発源61へ電力を供給するアーク電源64とを備え、区画部材62には蒸気開口部63が設けられている。なお、蒸発源61の形状は矩形の平板であり、この矩形の平板の周囲を覆うように区画部材62が設けられている。
図6を参照して、さらに詳しくアーク蒸発源6について説明する。この区画部材62はアーク蒸発源6の陽極としても機能する。アーク蒸発源6に搭載した蒸発材料(ターゲット)67は陰極として作用し、その表面に生成されるアークスポットからは、放電電流を形成する電子と、蒸発材料の蒸気がイオン化した状態で噴出し、蒸発源61の前方にアーク放電プラズマを形成する。このプラズマ中の電子は、区画部材62に流れ込み、区画部材62は陽極として作用する。なお、アーク蒸発源6の内部には、放電防止シールド65も設置されている。
この区画部材62には、蒸気開口部63が設けられており、この蒸気開口部63を通じてアーク放電により蒸発された金属蒸気が基材Wに照射可能であり、グロー放電プラズマで形成されるCVD皮膜の中に金属が混合した皮膜の形成が可能となる。
一方で、アーク蒸発源6からの金属蒸気の供給に伴いアーク蒸発源6で発生したプラズマはグロー放電の状態に影響を及ぼすが、グロー放電を励起する電力の調整によって(プラズマ発生電源10からの供給電力を制御することによって)、グロー放電によるプラズマ生成状態は制御可能であり、プラズマCVDの成膜速度に関してはアーク蒸発源6の動作で制限されるものではない。
区画部材62の内部(区画領域内)は、蒸気開口部63を通じて真空チャンバ2内の基材Wの周辺の成膜領域と連通しているが、それ以外は雰囲気を遮断しており、異なるガス雰囲気に制御可能である。特に、区画領域内にCVD成膜ガスとは別種のガス(非成膜ガス)が供給されると、区画領域内は成膜領域より高圧となり、この高圧の非成膜ガスにより、成膜ガスが区画領域内へ流入することを防止することができる。この非成膜ガスは、好ましくは、不活性ガス(Ar、Ne、He、Kr、Xe等)である。また、反応性のガスであってもアーク蒸発源6の蒸発材料(ターゲット)67と化合したときに絶縁性の化合物を生成しない、たとえば窒素ガスであっても構わない。
このような状態で、アーク蒸発源6を作動させると、区画領域内に成膜ガスが流入してきたとしても、陽極として動作している区画領域内の壁面には導電性を維持した皮膜が形成可能で、従来問題となった放電の安定性を損なう絶縁性の皮膜は堆積せず、安定した操業が可能である。すなわち、アーク蒸発源を備えたプラズマCVD装置1において、十分な金属添加量で長時間に亘り安定的に成膜することができる。
このようなアーク蒸発源6の基本的な構成に加えて、このプラズマCVD装置1のアーク蒸発源6は、さらに、以下の構成を備える。
図6に示すように、アーク蒸発源6の内部には、矩形の蒸発源61に加えて、アーク蒸発源6で生成するアークスポットの動きを制御するための磁場発生機構66が設置されている。磁場発生機構66により生成される磁場は、形状は所謂マグネトロンスパッタのレーストラック磁場と類似の形状であるが、磁場の強度は蒸発源61表面で10mT(ミリテスラ)(=100ガウス)未満である。このような磁場を形成することにより、図7(a)に示すように、蒸発材料(ターゲット)67の蒸発面でアークスポットは、レーストラック磁場領域を周回運動するように走査される。
一方、蒸気開口部63は、レーストラック磁場領域の前方に設けられる。蒸気開口部63の形状は、図7(b)に示すように2本の直線部だけとするか、または、図7(c)に示すようにレーストラック状とすると良い。
図8に示すように、蒸気開口部63を有する区画部材62は、磁場発生機構66で発生した磁力線が流れる磁気回路としても作用する。具体的には、磁場発生機構66の外周部から出る磁力線は、区画部材62の側壁を通った上で前面へと達し、蒸気開口部63を通過して前面の中央部から磁場発生機構66の中央部へと戻るようになる。それ故、磁場発生機構66によるレーストラック磁場は、蒸気開口部63の領域まで広がり、蒸気開口部63において、粒子が出入りする方向に垂直な磁場が形成されることになる。このため、プラズマを構成する電子が蒸気開口部63を通過しにくくなり、アーク放電とグロー放電との独立性を高める作用を発現する。なお、蒸気開口部63における磁場の強度としては電子を捕獲可能な数mT(ミリテスラ)(=数十ガウス)程度以上あれば十分であり(ここでは1mT以上あれば十分であるとする)、アーク蒸発源6から発生した金属のイオンを通過できるように、10mTを超えない方が良い。
上述したように、磁場の形成手段(言い換えれば、磁気回路)としてアーク走査用磁場の漏洩要素を用いる態様に代えて、さらに積極的に蒸気開口部63に磁場を形成する手段を設けても良い。
たとえば、図8に示すように区画部材62の一部を磁性体で構成して、蒸気開口部63への磁場形成を補助するようにしても構わない。また、さらに積極的に、区画部材62の一部に永久磁石を組み込むようにしても構わない。
なお、上述した説明は、蒸発源の形状が矩形平板の場合であるが、蒸発源の形状が円形の場合にも、蒸気開口部63の形状がアークの走査領域に相当するドーナツ状の形状に変更されるだけでその基本的な作用効果は発現する。さらに、アーク蒸発源を円筒回転型の蒸発源とすることも好ましい。このように、アーク蒸発源6の態様については以下のような態様がある。
アーク蒸発源6は、円形蒸発源が複数搭載されていても構わないし、アーク蒸発源6は、自転テーブル4または/および公転テーブル5の回転軸(P軸、Q軸)に平行な長軸をもつ矩形蒸発源であっても構わないし、アーク蒸発源6は、この回転軸(P軸、Q軸)に平行な回転軸を有する円筒回転型アーク蒸発源であっても構わない。アーク蒸発源6は、円形蒸発源を複数搭載しても構わず、このときは、蒸気開口部63は蒸発源61の正面に設けた円形の穴かドーナツ状の穴の形状が好ましい。このようにすると、基材Wの高さ方向に均一な金属元素(金属蒸気)を供給することができる。
以上をまとめると、アーク蒸発源6として矩形の蒸発源を用いるときは、自転テーブル4または/および公転テーブル5(まとめて回転テーブルと記載)の回転軸(P軸、Q軸)に平行に長軸を設けると、回転テーブル上の高さ方向の有効な成膜領域を1台の蒸発源で有効にカバーできる。矩形蒸発源を用いるときには、蒸発源内部にレーストラック状磁場を生成する磁場発生機構を設けると良い。蒸気を送出する蒸気開口部63としては、レーストラック状の開口であってもよいし、レーストラックの直線部に該当する二つの直線状の開口であってもよく、このように構成すると、1台の矩形蒸発源で、回転テーブル上の高さ方向に形成された成膜領域に均一に蒸気を供給できる。さらに、アーク蒸発源としては、所謂ロータリーマグネトロンスパッタカソードと類似の、回転円筒型の蒸発源とすると、蒸発材料の有効な利用という観点で好ましい。
<プラズマCVD成膜方法>
上述した構成を備える本発明の実施形態に係るプラズマCVD装置1を用いたプラズマCVD成膜方法について説明する。
・基材セット〜真空排気
真空チャンバ2内の回転テーブルに、たとえば図3に示すように、基材Wをセットする。基材Wをセットしたら、真空チャンバ2内が一旦高真空になるまで、真空ポンプ3により真空チャンバ2内を排気する。
・加熱(オプション)
必要に応じて、真空チャンバ2内の加熱ヒータ17により、基材Wの予備加熱を行なう。このとき、自転テーブル4および公転テーブル5を回転させる。
・イオンボンバード(オプション)
その後、ガス供給部9からAr等の不活性ガスを導入し、必要に応じてHやOなどのガスも混合し、プラズマ発生電源10から電力を供給して基材W間にグロー放電を発生させる。この工程により基材Wの表面が清浄化される。このときの圧力雰囲気は、通常は0.1〜100Paである。
また、このイオンボンバード処理を、アーク蒸発源6から供給する金属イオンを照射しながら、基材に500−1000Vの負の電圧を加えて行なうことも可能である。この処理はメタルイオンボンバードと呼ぶこともある。
・成膜
成膜処理においては、プロセスガス(分解して皮膜を形成する原料ガス、原料ガスと反応して皮膜中に取り込まれる反応ガス、および、プラズマ生成を助ける補助ガスを単独または混合したガス)を、真空チャンバ2内に導入して、プラズマ発生電源10から電力を供給して基材Wの周辺にグロー放電を発生させて、基材Wの表面に皮膜を形成する。これと同時に、アーク蒸発源6を作動させて、基材Wの表面に形成されるCVD皮膜中にアーク蒸発源6から蒸発した金属元素を供給する。
ここで、プロセスガスとアーク蒸発源の蒸発材料は、基材Wの表面に形成しようとする皮膜により異なる。たとえば、金属含有の非晶質炭素膜(メタル含有DLC膜)を形成する場合は、プロセスガスの中の成膜ガスとして炭化水素ガス、より具体的には、アセチレン、メタン、エタン、エチレン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素ガスを用いるのが良い。プロセスガスには、必要に応じて、放電を補助する補助ガス、具体的にはAr、He、Ne、Kr、Xe、Hなどを混合させ、プラズマの状態を変化させるのも良い。アーク蒸発源の蒸発材は金属であり、具体的にはTi、Zr、Hf、Cr、Mo、W、Nb、Ta、V、Cuなどが好ましい。形成される皮膜は金属含有非晶質炭素皮膜である。
また別の皮膜を形成する方法としては、プロセスガス中のは成膜ガスとして炭化水素ガスに加えてSiの有機化合物含有ガス、具体的にはTMS(テトラメチルシラン)、HMDSN、HMDSO、TMDSO、TEOSなどを含み、また、必要に応じて、放電を補助する補助ガス、具体的にはAr、He、Ne、Kr、Xe、Hなどを混合させ、アーク蒸発源の蒸発材はTi、Zr、Hf、Cr、Mo、W、Nb、Ta、V、Cuなど金属であり、形成される皮膜はSiと金属含有非晶質炭素皮膜である。
たとえば、SiOxのようなシリコン酸化物系の皮膜金属を含有した皮膜を形成する場合には、Siの有機化合物含有ガス、具体的にはTMS(テトラメチルシラン)、HMDSN、HMDSO、TMDSO、TEOSなどを含み、反応ガスとして、酸素を混合させ、また、必要に応じて、放電を補助する補助ガス、具体的にはAr、He、Ne、Kr、Xe、Hなどを混合させ、アーク蒸発源の蒸発材はTi、Zr、Hf、Cr、Mo、W、Nb、Ta、V、Cu、Ag、Au、Ptなど金属を混合させることによって、SiOx系の透明皮膜に金属元素を分散させた皮膜の形成も可能である。
成膜時の圧力は、皮膜の種類によって好適な値は異なるが、0.1Pa〜10Pa程度の圧力が好ましい。ガスの成分にもよるが、0.1Pa未満では安定なグロー放電の発生が難しく、成膜速度はガス圧に依存するため、1Pa以上の圧力がより好ましい。10Paを超える圧力では圧力が高すぎてアーク蒸発源から供給される金属元素が基材Wにまで到達しにくくなる点で好ましくない。
プラズマ発生電源10から供給される電力は、電圧をグロー放電の維持に必要な100V〜1500Vの間の電圧(両極間の電圧の波高値)となる。プラズマ発生電源10の出力電力は基材Wの表面積によって変動し、単位面積あたりの電力では0.01〜1W/cm程度の電力密度であるのが好ましい。
各アーク蒸発源の放電電流は、アーク蒸発源に取り付けた蒸発材料により異なるが、数十〜数百アンペア程度であり、必要とする金属元素の混入量およびアーク蒸発源の安定性により決定する。
・大気開放〜取り出し
皮膜形成が終わったら、アーク放電を停止し、プラズマ発生電源10の出力を停止し、ガス供給部9からのプロセスガスの導入を停止し、成膜を終了する。基材Wの温度が高い場合には、必要に応じて基材Wの温度低下を待ち、真空チャンバ2内を大気に開放し、基材Wを取外す。
<実施形態に係るプラズマCVD装置の作用効果>
以上のようにして、本発明の実施形態に係るプラズマCVD装置において、アーク蒸発源は、アーク放電プラズマにより金属元素を蒸発する蒸発源と、蒸発源と基材との間に設けられ、蒸発源周辺をグロー放電プラズマからの影響を受けないようにする区画部材とを備え、区画部材には蒸気開口部が設けるように構成した。このように構成したので、プラズマCVD皮膜を成膜するためのグロー放電生成の強度を、プラズマ発生電源の出力の設定により調整可能である。このため、CVD皮膜の成膜速度は、添加元素を供給するためのアーク蒸発源の運転状態の影響は受けるが、その中で、グロー放電の強度を調整することによって成膜速度の向上や抑制が可能になる。加えて、アーク放電プラズマは、アーク蒸発源周辺の区画領域に限定され、グロー放電領域とはある程度離隔された雰囲気となり、グロー放電領域の影響を抑制することができる。このため、十分な金属添加量で長時間に亘り安定的に成膜することが可能になる。
さらに、プラズマCVD装置において、区画部材がアーク蒸発源の陽極として作用するように構成した。このように構成したので、区画領域の内面はアーク放電の陽極として作動するが、グロー放電領域からの成膜ガスの流入は抑制されているため、絶縁性の皮膜の成長は起こりにくく、プラズマCVD装置を安定的に動作させることができる。
さらに、区画部材により区画された空間には、成膜ガスとは別の種類のガスが供給されるように構成した。また、このガスは、不活性ガスであるように構成した。また、このガスは、アーク蒸発源の蒸発材料と化合したときに絶縁性の化合物を生成しないガスであるように構成した。このように構成したので、区画領域には、CVD成膜ガスとは別種のガス(非成膜ガス)が供給され、この非成膜ガスが成膜ガスの区画領域への流入を防止するので、アーク放電の陽極の表面の導電性を安定的に維持することになる。これは、蒸気開口部から流出する成膜ガスの区画領域への流入を、外部から流入する非成膜ガスが抑制するためである。供給される非成膜ガスは、好ましくは、不活性ガス(Ar、Ne、He、Kr、Xe等)である。また、反応性のガスであってもアーク蒸発源の蒸発材料と化合したときに絶縁性の化合物を作らないガスとすることによりアーク放電の安定性を損なわない。アーク蒸発源の金属として、Ti、Zr、Hf、Cr、Mo、W、Nb、Ta、V、Cuなどであれば、窒素ガスと化合しても絶縁性の化合物を生成しないので、非成膜ガスとして窒素ガスも供給可能である。
さらに、蒸気開口部には、グロー放電プラズマとアーク放電プラズマとを遮断する磁場が形成されているように構成した。また、磁場の磁束密度は、1mT〜10mTであるように構成した。このように構成したので、蒸気射出用の蒸気開口部には、グロー放電プラズマとアーク放電プラズマとを遮断する形状の磁場が形成される。具体的には、蒸気開口部を粒子が出入りする方向に垂直な磁場が形成される。このように磁場が形成されると、プラズマを構成する電子が蒸気開口部を通過しにくくなり、アーク放電とグロー放電との独立性を高める作用を発現する。磁場の強度としては、電子を捕獲可能な1mT程度以上あれば十分であり、一方でアーク蒸発源から発生した金属のイオンを通過できるように、10mT未満が好ましい。
さらに、磁場は、アーク蒸発源で発生するアークスポットを走査するための磁場の形成手段(磁場発生機構)によって、形成されるように構成した。このように構成したので、アーク蒸発源のアークスポット走査用のレーストラック状磁場の漏洩磁場が、蒸気開口部に作用して、ひとつの磁場発生機構により2つの作用効果(アークスポット走査、蒸気開口部に遮断磁場形成)を発現することができる。アークスポットを走査するレーストラックの正面に位置する場所に蒸気開口部を設けると、磁場の形成の観点と蒸発した金属蒸気の効果的な送出のために有効である。
さらに、区画部材の少なくとも一部は、磁場の形成手段における磁気回路を構成するようにした。このように、区画部材の内部に設置された磁石や磁気回路により磁場を形成することで、アーク放電とグロー放電との独立性を高める作用をより発現することができる。
<変形例>
図9および図10を参照して、本発明の実施形態の変形例について説明する。なお、この変形例に係るプラズマCVD装置21は、上述した実施形態に係るプラズマCVD装置1と、基材Wの保持状態が異なる。それ以外は、上述した実施形態と同じであるので、上述した説明と重複する部分についてはここでは繰り返さない。
このプラズマCVD装置21においては、成膜対象である基材Wを自転する状態で保持する複数(ここでは4個)の自転テーブル4が2個の公転テーブル5上に設けられている点で上述した実施形態に係るプラズマCVD装置1と異なる。以下、このプラズマCVD装置21の構成について詳述する。
このプラズマCVD装置21は、真空チャンバ22と、真空チャンバ22内を真空排気する真空排気手段3と、成膜対象である基材Wを自転する状態で保持する複数(ここでは4個)の自転テーブル4と、を有している。これら複数の自転テーブル4は公転テーブル5に配備されており、このプラズマCVD装置21には複数の自転テーブル4が設けられた公転テーブル5を自転テーブル4の回転軸(自転軸P)と軸心平行な公転軸Q回りに公転させる公転機構8が設けられている。そして、このプラズマCVD装置21は、複数(ここでは2個)の公転テーブル5が、プラズマCVD装置21の中心線に対して対称に配置されている。また、真空排気手段3は、この中心線上に設けられている。ここで、公転テーブル5の数は、プラズマCVD装置21の中心線に対して対称になるように配置されていれば、特に限定されるものではない。1個の公転テーブル5あたりに配備される自転テーブル4の数は、特に限定されるものではないが、異なる公転テーブル5であっても同じ数になるように配置されていることが望ましい。さらに、複数の自転テーブル4の各々は、公転テーブル5の公転軸から等しい半径で且つ公転軸回りに等間隔となるように配備されている。
なお、本発明において「基材Wが自転する」とは、基材Wを貫通する軸P回りに基材Wが回転する(スピンする)ことをいう。また、「基材Wが公転する」とは、基材Wが自分自身から離れた軸Q回りに回転すること、言い換えれば基材Wが軸Qの周りを周回することをいう。また、基材Wの自転方向及び公転方向は、図9及び図10に示す通りであって、プラズマCVD装置21の中心線に対して対称になるように設定されている。ただし、これは一例であって、図示した自転方向及び公転方向に限定されるものではない。
また、図10に示すように、上述したプラズマCVD装置21は、真空チャンバ22内に原料ガスを供給するガス供給部9と、真空チャンバ22内に供給されたプロセスガスにプラズマを発生させるプラズマ発生電源10とを備えていて、自転テーブル4に保持された基材WにプラズマCVD法を用いて皮膜を形成する構成となっている。
ここで、隣り合う基材Wは、回転位相を考慮したり隣接する基材Wのサイズの調整などで、自公転時に相互に機械干渉しないように適切に設置する。さらに、公転テーブル5A及び公転テーブル5Bについても、公転時に相互に機械干渉しないように適切に設置する。
なお、成膜処理において、プロセスガスを、真空チャンバ22内に導入して、プラズマ発生電源10から電力を供給して基材Wの周辺にグロー放電を発生させて、基材Wの表面に皮膜を形成する。これと同時に、アーク蒸発源6を作動させて、基材Wの表面に形成されるCVD皮膜中にアーク蒸発源6から蒸発した金属元素を供給する点は、上述した実施形態と同じであって、そのアーク蒸発源6の構成も同じである。このため、十分な金属添加量で長時間に亘り安定的に成膜することが可能になる。
ところで、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、発明の本質を変更しない範囲で各部材の形状、構造、材質、組み合わせなどを適宜変更可能である。また、今回開示された実施形態において、明示的に開示されていない事項、たとえば、運転条件や操業条件、各種パラメータ、構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な事項を採用している。
1 プラズマCVD装置
2 真空チャンバ
3 真空排気手段(真空ポンプ)
4 自転テーブル
5 回転テーブル
6 アーク蒸発源
8 公転機構
9 ガス供給部
10 プラズマ発生電源
11 カバー部材
12 円板
13 設置ジグ
14 軸部
15 回転駆動部
16 ボンベ
17 加熱ヒータ
18 第1の群
19 第2の群
61 蒸発源
62 区画部材
63 蒸気開口部
64 アーク電源
65 放電防止シールド
66 磁気回路
67 ターゲット(蒸発材料)
P 自転軸
Q 回転軸(公転軸)
W 基材
WS 基材セット
WH 基材ホルダー

Claims (8)

  1. 真空チャンバと、前記真空チャンバ内を真空排気する真空排気手段と、前記真空チャンバ内で成膜対象である基材を保持する保持部と、成膜ガスを含むプロセスガスを前記真空チャンバ内に供給するガス供給部と、前記基材周辺にグロー放電プラズマを生成させる電力を供給するプラズマ発生電源と、アーク蒸発源とを備え、プラズマCVD法により前記基材に皮膜を形成するプラズマCVD装置であって、
    前記アーク蒸発源は、
    アーク放電プラズマにより金属元素を蒸発する蒸発源と、
    前記蒸発源と前記基材との間に設けられ、前記蒸発源周辺をグロー放電プラズマからの影響を受けないように覆う区画部材とを備え、
    前記区画部材には蒸気開口部が設けられていて、
    前記区画部材が前記アーク蒸発源の陽極として作用することを特徴とするプラズマCVD装置。
  2. 真空チャンバと、前記真空チャンバ内を真空排気する真空排気手段と、前記真空チャンバ内で成膜対象である基材を保持する保持部と、成膜ガスを含むプロセスガスを前記真空チャンバ内に供給するガス供給部と、前記基材周辺にグロー放電プラズマを生成させる電力を供給するプラズマ発生電源と、アーク蒸発源とを備え、プラズマCVD法により前記基材に皮膜を形成するプラズマCVD装置であって、
    前記アーク蒸発源は、
    アーク放電プラズマにより金属元素を蒸発する蒸発源と、
    前記蒸発源と前記基材との間に設けられ、前記蒸発源周辺をグロー放電プラズマからの影響を受けないように覆う区画部材とを備え、
    前記区画部材には蒸気開口部が設けられていて、
    前記蒸気開口部には、グロー放電プラズマとアーク放電プラズマとを遮断する磁場が形成されていることを特徴とするプラズマCVD装置。
  3. 前記区画部材により区画された空間には、前記成膜ガスとは別の種類のガスが供給されることを特徴とする、請求項1又は2に記載のプラズマCVD装置。
  4. 前記ガスは、不活性ガスであることを特徴とする、請求項3に記載のプラズマCVD装置。
  5. 前記ガスは、前記アーク蒸発源の蒸発材料と化合したときに絶縁性の化合物を生成しないガスであることを特徴とする、請求項3に記載のプラズマCVD装置。
  6. 前記磁場の磁束密度は、1mT〜10mTであることを特徴とする、請求項に記載のプラズマCVD装置。
  7. 前記磁場は、前記アーク蒸発源で発生するアークスポットを走査するための磁場の形成手段によって、形成されることを特徴とする、請求項または請求項に記載のプラズマCVD装置。
  8. 前記区画部材の少なくとも一部は、前記磁場の形成手段における磁気回路を構成することを特徴とする、請求項に記載のプラズマCVD装置。
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