以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る圧力式炊飯器を説明する。但し、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための圧力式炊飯器を例示するものであって、本発明をこれらに特定することを意図するものではなく、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のもの、例えば炊飯器以外の圧力調理器などにも等しく適用し得るものである。
(全体構成)
主に図1〜図3及び図6、図7を参照して、本発明の実施形態に係る圧力式炊飯器の全体構成を説明する。なお、図1は本発明の実施形態に係る圧力式炊飯器を示し、図1Aは正面図、図1Bは側面図、図2は図1の圧力式炊飯器の上面図、図3は図1の圧力式炊飯器の蓋体を開いた状態の側面図、図6は図2の圧力式炊飯器をVI―VI線で切断した断面図、図7は図2の圧力式炊飯器をVII―VII線で切断した断面図である。
本発明の実施形態に係る圧力式炊飯器(以下、炊飯器という)1は、一度に大量の被炊飯物、例えば10カップを超え33カップ程度の米と水とを入れて炊飯ができる大型の圧力容器からなる鍋3を用い、炊飯時に鍋内の圧力を大気圧以上、例えば1.2気圧程度に昇圧して炊飯する炊飯器となっている。すなわち、この炊飯器1は、図6、図7に示すように、米と水とを含む被炊飯物が投入される鍋3と、上方にこの鍋3が収容される開口及び内部にこの鍋3内の被炊飯物を加熱する底面ヒータH1及び側面ヒータH2を有する大型の炊飯器本体(以下、本体容器という)2と、この本体容器2の一側にヒンジ機構54で枢支されて本体容器2及び鍋3の開口を覆う大判の蓋体5とを備えている。
蓋体5には、本体容器2にこの蓋体5をロックする蓋体ロック機構70(図11参照、この「蓋体ロック機構」が本発明の第1のロック機構に対応する。)と、鍋3内の圧力を調整する2組の内圧調整装置90A、90B及び炊飯中に旨み成分のおねばの一部を一時貯留するおねば貯留タンク(以下、貯留タンクという)100などが設けられている。蓋体ロック機構70は、図12に示すように、蓋体5を本体容器2にロックする蓋ロック機構71と、蓋体5を鍋3にロックする鍋ロック機構87(この「鍋ロック機構」が本発明の第2のロック機構に対応する。)とからなり、炊飯中に鍋3内の圧力上昇によって、蓋体5が不用意に開放されない機構となっている。また、この蓋体5には、鍋3内の圧力が異常上昇したときに開放される2個の安全弁SV(図35参照)が設けられている。また、これらの安全弁の他に異常圧力上昇時に、ヒンジ機構54部分の一部に隙間があいて、この隙間から異常圧力を外部へ逃がす安全装置がヒンジ機構部分に設けられている。貯留タンク100は、2組の内圧調整装置90A、90Bに共通なものとなっており、蓋体5に着脱自在に装着されている。以下、この炊飯器を構成する個々の部品を説明する。
鍋3は、図6、図7に示すように、比較的大きな底面積を有する略円盤状の底部3bと、この底部の周囲から所定高さに立設した側壁部3cとを有し、側壁部の上方が開口し、この開口3aの周縁に鍔状のフランジ部3dが設けられて、大量の被炊飯物、例えば33カップ程度の米と水とを収容できる大型の圧力容器で形成されている。この圧力容器は、熱伝導性の高い材料、例えば銅或いはアルミニウムなどからなる内層と、磁性材料、例えばステンレス鋼などからなる外層とをはり合わせたクラッド材で形成されている。また、内層面はフッ素樹脂などで被覆されている。なお、この圧力容器は、このものに限定されるものでなく、他の公知の板材を用いて作成した容器でもよい。
この鍋3は、鍋底、すなわち底部3bから加熱されて、炊飯中に内部に激しい沸騰現象、すなわち突沸現象を起こさせ、この突沸現象を利用して鍋内中央部の炊飯物を鍋側壁側へ移動攪拌させるようになっている。この突沸現象は、鍋3をその鍋底面積を小さくししかも背高、すなわち深底型に形成すると、発生し難くなるので、背低でしかも浅底型、例えば直径約400mm、深さ約180mmに形成されている。なお、この実施形態では、鍋を円形状の筒状容器で形成したが、楕円形状或いはその他の形状の容器にしてもよい。
炊飯器1は、大型の鍋3を使用し、この鍋3に一度に大量、例えば33カップ程度の米を収容し、しかも炊飯中に鍋3内を大気圧以上に昇圧するとともに、突沸現象を発生させて被炊飯物を攪拌するので、これまでの炊飯器に比べて、機械的強度を強くしなければならないとともに、より高い安全機構が必要となる。そこで、本体容器2及び蓋体5は、機械的強度の高いフレームを用い、これらのフレームで組立てた組立体で構成されている。
(本体容器)
図9〜図14を参照して、まず本体容器を説明する。なお、図9は図1の圧力式炊飯器の蓋体から蓋カバーを取外して蓋体内の状態を示した斜視図、図10は図1の圧力式炊飯器から本体カバー及び蓋カバーなどを取外して内部の骨格構造を示した斜視図、図11は図10の骨格構造で蓋体部分を開いた状態の斜視図、図12は図10の骨格構造から一部の部品を取外した状態の斜視図、図13は図12の骨格構造を別角度からみた斜視図、図14は図10のヒータ支持台の背面図、図15は図13の蓋体部分を背面から見た背面図である。
本体容器2は、図6及び図10、図11に示すように、本体枠組体20、この本体枠組体20の内部に取付けてその内部に鍋3を収容する内ケース4、底面ヒータH1、側面ヒータH2及び蓋ヒータH3並びに送風機FANなどを制御する制御装置C(図41参照))、本体枠組体20の外周囲を覆う本体カバー29、この本体カバー29に装着される操作表示部30(図1参照)などを備えている。本体枠組体20は、図10、図11に示すように、所定広さの設置台などに載置できる大きさの基台21と、この基台の上方に設置されて底面ヒータH1を固定支持するヒータ支持台22と、このヒータ支持台上に固定されてヒンジ機構54の軸受フレーム55が取付けられる中間枠フレーム23と、この中間枠フレームの上方にあって鍋3が挿入されるフレームカバー24とを有し、これら部品がこの順序で積層された組立体で構成されている。なお、内ケース4は、側面ヒータH2が装着される筒状ケース4aと、ヒータ支持台22とで構成されている。
基台21は、図11に示すように、所定の肉厚及び所定の直径を有する円盤状の底壁部21aと、この底壁部の周縁から所定高さ立設した環状の側壁部21bとを有し、浅底の円形皿状の台座からなり、合成樹脂成型体で形成されている。底壁部21aは、所定直径を有し、また、底壁部21aには略格子状に補強リブが設けられている。側壁部21bは、比較的肉薄の板状体からなり、その側壁部21bには所定間隔を空けて補強リブが設けられている。底壁部21a及び側壁部21bは、補強リブで補強されるので、機械的強度が高くなり、しかもこれらの薄肉化が可能になり重量が低減される。
この基台21は、側壁部21b頂部の外周囲に本体カバー29(図6参照)が装着される切欠き部21cと、この切欠き壁から上方へ立設した複数本の支柱211が所定の間隔をあけて略等間隔に配設されている。複数本の支柱211は、中間枠フレーム23との間にヒータ支持台22が配置される隙間があく高さとなっている。これらの支柱211の頂部にヒータ支持台22が固定される。この基台21は、その底面部の外周囲付近に複数本の脚柱21dが取付けられている。これらの脚柱21dにより、炊飯器は置き台との間に所定の隙間をあけて設置される。
ヒータ支持台22は、図12、図14に示すように、所定の肉厚及び所定の直径を有する円盤状の底壁部22aと、この底壁部の周縁から所定高さ立設した環状の側壁部22bとを有し、浅底の円形皿状の支持台からなり、耐熱性及び機械的強度の強い合成樹脂成型体で形成されている。すなわち、底壁部22aは、中心部に鍋底温度センサーS1(図6参照)が挿通されるセンサー挿通孔223と、この挿通孔223の外周に同心円状の内側筒状体22e1及び外側筒状体22e2と、この外側筒状体22e2から側壁部22bに向かって放射状に設けた複数本の凹状溝222とが形成されている。なお、この複数本の凹状溝222が形成されることにより突出した部分により底面ヒータH1が支持される。内側筒状体22e1及び外側筒状体22e2は、両筒状体間に所定の隙間があきこの隙間が底壁部22aを貫通している。複数本の凹状溝222は、底壁部22aの表面に略等角度に形成されている。これらの凹状溝222の形成により、底壁部22aの表面が三角形状の複数個の領域22a1〜22a8に区画される。これらの区画された領域22a1〜22a8のうち、一部の区画領域22a1、22a8及び領域22a5の側壁部22bが切除されて、隙間22b1,22b2が形成されて、隙間22b1が送風機FANに対向し、隙間22b2が送風の出口になっている。また、これらの領域22a1〜22a8には、送風機FANからの風量を調節する風量調節手段22A1〜22A3が設けられている。領域22a1、22a8は、送風機FANに対向しているので、領域22a1の風量調節手段22A1は、送風をブロックする隔壁22cと、この隔壁でブロックした送風を底壁部22aの背面側へ送る送風穴22dとからなり、領域22a8の風量調節手段22A2は、送風をブロックする隔壁22fと、この隔壁でブロックした送風を底壁部22aの背面側へ送る送風穴22gとからなり、他の領域の風量調節手段22A3は、底壁部22aを貫通する貫通孔となっている。この風量調節手段により、ヒータ支持台22で支持される底面ヒータH1を効率よく冷却して過加熱(オーバーヒート)を防止できる。特に、この本体容器は、大型になり、これをすべて金属材で構成すると、その重量が重くなるので、その重量を低減するために、合成樹脂成型体で構成するものとなっている。そうすると、この炊飯器は高出力のヒータ(4.8KW)を使用するので、この高出力のヒータからの熱で成型体が高温に晒されて熱変形を生じるなどの課題が出現するが、この課題は、この風量調節手段を設けることにより解決できる。また、センサー挿通孔223は、その周囲が内側筒状体22e1及び外側筒状体22e2で囲まれているので、鍋底温度センサーS1が送風機FANにより冷却されて誤検出することを防止できる。底壁部22aの背面には、センサー挿通孔223に対応する箇所に、排水口Dr(図6、図7参照)及びこの排水口に接続された排水管(図示省略)からなる排水装置が設けられている。この排水装置を設けることにより、内ケース4に漏れた水などが底部に貯まることなく外部へ排出される。
中間枠フレーム23は、図12、図13に示すように、所定の肉厚を有し内部に中空孔を設けた環状体からなり、耐熱性及び機械的強度の強い合成樹脂成型体で形成されている。この中間枠フレーム23は、基台21とフレームカバー24とを連結するとともに、一対の軸受フレーム55が固定される部材となっている。この中間枠フレーム23は、内部に所定径の中空孔23aと、この中空孔から外方へ延設された肉厚の周壁部23bとを有している。この周壁部23bは、環状体が所定の肉厚となっているので、上下の開口縁23c、23dを有している。中空孔23aは、円形穴からなり、その内径は鍋3の外径より若干大きくなっている。上方の開口縁23cには、所定の間隔をあけて複数本の支柱231が設けられている。それぞれの支柱231は、内部にネジ挿通孔が形成されて、この挿通孔は環状体を貫通し下方の開口端へ達している。上方の開口縁23cの端周辺には、内壁面側が所定高さ立設した突起壁23c'が形成されている。また、下方の開口縁23dには、壁面が所定高さ立設した一対の取付け台23d'が形成されている。これらの取付け台23d'には、一対の軸受フレーム55の下方端部が固定される。
フレームカバー24は、図20、図21に示すように、所定の肉厚を有し内部に中空孔を設けた環状体からなり、耐熱性及び機械的強度の強い合成樹脂成型体で形成されている。このフレームカバー24は、一対の軸受フレーム55が取付けられて、中間枠フレーム23の上方に固定される。このフレームカバー24は、内部に所定径の中空孔24aと、この中空孔から外方へ延設された周壁部24bとを有している。この周壁部24bは、環状体が所定の肉厚となっているので、上下の開口縁24c、24d及び内外周壁24e、24fを有している。中空孔24aは、円形穴からなり、その内径は鍋3の外径より若干大きくなっている。周壁部24bは、下の開口縁24dより若干幅広に形成されている。内周壁24eは、図21に示すように、上の開口縁24c部分が上方へ所定高さ立設され、この立設部に鍋3のフランジ部3dが載置される載置部24gが形成されている。また、内周壁24eには、所定の間隔をあけて複数本の支柱241が設けられている。外周壁24fには、内部に係止爪251を有する本体係止部25及び一対の軸受フレーム55を取付ける軸受固定部26が設けられている。これらの本体係止部25及び軸受固定部26は、図20に示すように、外周壁24fの対向する位置に設けられている。本体係止部25は、図21に示すように、外周壁24fの一部を外方へ所定大きさで突出させた突起壁25Aを加工して形成されている。すなわち、この突起壁25Aは、所定大きさの上下壁25a、25b及び外壁25cを有し、上下壁が貫通孔25dで貫通されている。貫通孔25dは、上下壁25a、25b面にそれぞれ上下の開口25a'、25b'を有し、上の開口25a'は、係止枠体77(図39参照)が差し込まれる大きさになっており、下の開口25b'は上の開口25a'より大きくなっている。この貫通孔25dは、その内部に係止爪251が形成されている。この係止爪251は、外周壁24f側に形成されている。また、この本体係止部25は、ヒンジ機構54部分とで炊飯器1を持上げ移動する際の取っ手部ともなっている。
本体容器2の組立ては、まず、本体枠組体20が組立てられる。この本体枠組体20は、まず、基台21の上方に、ヒータ支持台22が載置固定される。次いで、このヒータ支持台22に底面ヒータH1が配置されて、その上に中間枠フレーム23が固定される。その後、この中間枠フレームの上に、フレームカバー24が固定されて本体枠組体20が形成される。底面ヒータH1には、ドーナツ状に巻装された電磁誘導コイルが使用される。鍋3は、側壁部3cに比べて鍋底面積が大きくなっており、この鍋底の底部3b及びこの底部に近接した側壁部3cに底面ヒータH1を設けて、大量の被炊飯物を加熱するので、これらの底面ヒータH1は、比較的大きい容量のヒータ、例えば4.8KW程度のものが使用されている。なお、このヒータは、電磁誘導コイルに限定されるものでなく、他のヒータを使用してもよい。
この本体枠の組立てにより、図6、図7に示すように、本体枠組体20には、基台21とヒータ支持台22との間に下空間28A及びヒータ支持台22とフレームカバー24間に、中間枠フレーム23を間に挟んで上空間28Bが形成される。これらの上下空間28A、28Bは、所定の大きさのものとなっており、これらの空間のうち、下空間28Aには各種の制御装置、インバータ27及び送風機FANなど、また、上空間28Bには鍋3を収容する有底の内ケース4が配置される。制御装置C(図41参照)は、ICチップなどを搭載した制御基板からなり、この基制御板は、図示を省略したが下空間28Aなどの隙間に設置されている。また、送風機FANは、吸気口29bから外気を取り込み、この外気でインバータ27を冷却するとともに、ヒータ支持台22に支持された底面ヒータH1をも冷却するようになっている。
内ケース4は、図6、図7に示すように、側面ヒータH2が装着される筒状ケース4aと、ヒータ支持台22とからなり、これらは耐熱性を有する樹脂成型体で形成されている。ヒータ支持台22の底部には、鍋底温度センサーS1が設けられている。この鍋底温度センサーS1により鍋底の温度を検知することで鍋3内の炊飯量などが検出される。また、筒状ケース4aは、その外周壁面、すなわち鍋3が収容される側の外側壁面に、側面ヒータH2が装着される取付け部が形成されている。この取付け部は、上方の開口と底部との間にあって、鍋3が収容される側の内周壁面から外周壁面に向かって所定の深さに窪んだ凹み穴となっている。この凹み穴に側面ヒータH2が装着されている。側面ヒータH2は、線状ヒータ線などで構成されている。
本体枠組体20には、図1、図6に示すように、外周囲に本体カバー29が装着される。この本体カバー29には、炊飯のスタート、タイマー予約及び保温などの操作を行なう操作表示部30(図1A参照)が設けられている。この操作表示部30は、各種の操作キー類を配設した操作パネル30aと、この操作パネルによって設定される設定状態を表示する表示パネル30bとで構成されている。この操作パネル30aには、スタートキー、メニューキー、予約キー、保温キーなどが設けられている。また、本体カバー29の側壁面に吸気口29bが形成されて、この吸気口29bには複数個の小孔を設けたメッシュ板31が装着される。
(蓋体構造)
主に図9〜図13を参照して、蓋体の構造を説明する。
蓋体5は、図6〜図8に示すように、鍋3の開口3aを閉蓋する内蓋5Aと、この内蓋の上方に位置して本体容器2の開口部を閉蓋する上蓋5Bと、この上蓋の上方に所定の隙間をあけて覆う蓋カバー69とを有し、上蓋5Bなどが複数本のフレームで組立てられた蓋枠組体50に固定されている。
蓋枠組体50は、図9、図10に示すように、2本のフレームをセットにした2組の蓋枠体F1、F2を長さ方向の中間部で十字状に交差させた組立体で形成されている。すなわち、この蓋枠組体50は、2本のフレームを所定の間隔をあけて略平行に配設した平行フレームと、同じように2本のフレームを所定の間隔をあけて略平行に配設した平行フレームとを長さ方向の中間部で十字状に交差させた井桁状の組立体で形成されている。
これらの蓋枠体F1、F2のうち、一方の蓋枠体F1は、蓋体5の直径と略同じ長さを有し、所定の間隔をあけて対向する一対の平行フレーム51で構成され、他方の蓋枠体F2も蓋体5の直径と略同じ長さを有し、所定の間隔をあけて対向する一対の平行フレーム52で構成されている。これらの蓋枠体F1、F2は、十字状に交差され、交差部に略正方形の枠組開口F12(図15参照)が形成されている。
これらの蓋枠体F1、F2のうち、一方の蓋枠体F1、すなわち一対の平行フレーム51は、一端部にヒンジ機構54及び他端部に蓋ロック機構71が連結され、他方の蓋枠体F2、すなわち一対の平行フレーム52は、その両端部に鍋3のフランジ部3dをホールドする鍋ロック機構87が連結される。蓋枠体F1は、それぞれの平行フレーム51が同じ構成となっている。一方の平行フレーム51を説明する。この平行フレーム51は、図15に示すように、比較的長尺及び幅広の細長の底板部51aと、この底板部の長手方向の両側縁から略直角に所定高さ立設した一対の対向する側板部51bとからなる略U字型枠体で形成されている。この平行フレーム51は、図10、図11に示すように、一端が軸受フレーム55、他端がフレームカバー24の引掛け部に係止されて大型の蓋体5を支持するので、機械的強度の強い梁フレームとなっている。すなわち、この平行フレーム51には、大型の蓋体5の重量及び炊飯時に蓋体に加わる大きな圧力が荷重として掛かるので、肉厚の厚い金属板材を折曲加工した機械的強度が強いもので構成されている。この平行フレーム51は、また、一端に軸受フレーム55を連結する連結部及び他端に蓋ロック機構71を固定する固定部が設けられている。さらに、これらの端部には、作動部材88(図27参照)を連結する連結部511、512が設けられている。この蓋枠体F1を構成する1本の平行フレーム51の幅長は、例えば50mm、2本の対向する平行フレーム51間の間隔は例えば143mmである。また、平行フレーム51の肉厚は、例えば2.5mmである。
他方の蓋枠体F2も各平行フレーム52が同じ構成となっている。この平行フレーム52を説明する。この平行フレーム52は、図15に示すように、平行フレーム51と比べて幅狭の細長の底板部52aと、この底板部の長手方向の両側縁から略直角に所定高さ立設した一対の対向する側板部52bとからなる略U字型枠体で形成されている。この平行フレーム52は、また、両端に作動部材88を連結する連結部が設けられている。この平行フレーム52の幅長は、例えば30mm、2本の対向する平行フレーム52、52間の間隔は、例えば159mmである。また、平行フレーム52の肉厚は2.5mmである。この実施形態では、蓋枠体F1の上に蓋枠体F2を配設して井桁状に形成したが、これらの蓋枠体F1、F2を逆配置してもよい。
この蓋体5は、2組の蓋枠体F1、F2からなる蓋枠組体50で構成されているので、少ない材料で機械的強度を高めることができる。すなわち、従来技術では、蓋体の補強手段は、上蓋を機械的強度の強い材料で形成したもの、或いはこの上蓋を覆う補強板材を用いたものがあるが、このような補強手段は、本発明のように大量の炊飯物、例えば33カップ程度の炊飯物を鍋内で突沸現象を発生させて炊飯する炊飯器に適用できない。この実施形態のように、2組の蓋枠体F1、F2を用いて蓋枠組体50を構成することにより、少ない材料で機械的強度を高めることができるとともに、蓋体の組立てが簡単になり、しかもその重量も軽量にできる。また、各蓋枠体F1、F2は、それぞれ2本の平行フレーム51、52から構成され、しかもこれらの平行フレーム間に隙間があけられているので、この隙間を利用して、鍋をホールドするリンク機構などを配設でき、スペースを有効利用できるとともに、リンク機構が他の部材に衝突などして悪影響を受けることがなくなる。
これらの蓋枠体F1、F2は、交差部に略正方形状の枠組開口F12(図15参照)が形成されて、この枠組開口F12部分に、図24〜図26に示すように、一対の圧力弁91(図8参照)が挿入される中筒体60と、この中筒体の外周囲に円板状の円盤状カム板63(図32参照)と、この円盤状カム板に結合されて回転される回転リング66などが取付けられる。
図31〜図33を参照して、この枠組開口F12部分に取付ける中筒体60、円盤状カム板63、回転リング66などの部品を説明する。なお、図31は図25の蓋体部分を背面からみた背面図、図32は図6の蓋体部分を拡大した拡大断面図、図33は図6の蓋体部分を別の角度からみた拡大断面図である。
中筒体60は、図31〜図33に示すように、所定の外径、高さ及び内部に中空孔を有し、所定の肉厚の円形筒状体からなり、耐熱性及び機械的強度の強い合成樹脂成型体で形成されている。すなわち、この中筒体60は、高温に加熱されたおねばなどと接触するので、耐熱性に加え、有害物を析出しない合成樹脂材で形成されている。この中筒体60は上蓋とは別体の部品で構成されている。別部品にすることにより、合成樹脂の選定が容易になる。この中筒体60は、内部に中空孔60a、両端部にそれぞれ所定大きさの開口60b、60cが形成されて、一方の開口60bに貯留タンク100の筒状部100a(図5参照)が嵌合され、他方の開口60cに内蓋5Aに配設された一対の圧力弁91が挿入される(図8参照)。すなわち、この中筒体60は、その外径が枠組開口F12の一辺より短長で、中空孔の内径が内蓋5Aに配設された一対の圧力弁91が挿入される大きさになっている。一方の開口60bは、その端部が肉厚にされて、この肉厚端縁の内側周壁に環状パッキンPaが装着される装着溝601と、この装着溝の外周囲に凹状溝602とが形成されている。凹状溝602を設けることにより、沿面距離が長くなり、内部からの蒸気漏れ及び外部からの水などの浸入を防止できる。装着溝601には、環状パッキンPaが装着される。他方の開口60c部は、その端縁外壁が外部へ膨出し、この膨出部60dを利用して、中筒体60が上蓋5Bに固定される。すなわち、上蓋5Bの開口縁に嵌入される凹状溝を有しシール面積を大きくした環状シールパッキンPa1を用いて、上蓋5Bに固定されている。中筒体60は、図33、図34に示すように、内部に対向した位置に2個の貫通孔603と、これらの貫通孔の間に1個の貫通孔604が筒壁を貫通して形成されている。2個の貫通孔603は、弁開放機構94のシリンダ95(図8参照)に対応する箇所に設けられて、これらの貫通孔603には、図8、図32に示すように、シールパッキン99が固定される。他の貫通孔604には、蒸気温度センサーS2(図41参照)が設けられる。
中筒体60には、装着溝601に環状パッキンPaが装着されて、この環状パッキンPaが固定リング61で固定される。この固定リング61は、内部に中筒体60の内径と略同じ内径の中空孔を有する円形の筒体61aと、この筒体の略中央部から外方向へ所定幅長延設され所定の肉厚の環状辺部61bとを有する環状体からなり、耐熱性を有する合成樹脂成型体で形成されている。筒体61aは、図32、図33の状態で、下方の開口端縁61a'が環状パッキンPaの押さえ部となっている。環状辺部61bは、図32、図33の状態で、この環状辺部61bの上面に所定の隙間をあけて所定高さの環状リブ61b'が形成されている。この環状リブ61b'と筒体61aとの隙間には、凹状溝611が形成されている。この凹状溝611には、ロック操作レバー68の環状リブ68b'が挿入される。また、環状辺部61bは、図32、図33の状態で、その背面に、下方へ所定長さ垂下した環状リブ61cが形成されている。この環状リブ61cは、後述する回転リング66の接触部となる。
中筒体60は、その外周囲に円板状の円盤状カム板63が配設される。
図22、図23を参照して、この円盤状カム板63を説明する。なお、図22は図1の圧力式炊飯器の蓋体に装着される円盤状カム板部分の斜視図、図23は図22の円盤状カム板の斜視図である。
円盤状カム板63は、枠組開口F12(図15参照)の一辺より若干短い外径直径を有し、中央部に所定内径の円形の開口63aを設けたドーナツ状円盤からなり、所定肉厚の金属板で形成されている。中央部の開口63aは、中筒体60の外径より若干大きくなっている。円盤状カム板63は、開口63aから外周縁までが所定幅長の周辺部63bとなっている。この円盤状カム板63は、円板の中心点O(この中心点Oは、円形開口63aの中心に位置している)を通る中心線上の周辺部63bと、この中心線と90度で交差する交差線の一方の周辺部63bとに、3個のカム溝64が所定の間隔をあけて形成されている。すなわち、3個のカム溝64は、中心点Oを通る中心線と周辺部63bとが交差する周辺部63b及びこの中心線と直交する中心線が周辺部63bとが交差する周辺部63bに配設されている。これらのカム溝64は、同じ形状となっている。
図23を参照して、一つのカム溝を説明する。このカム溝64は、周辺部63bの形状に沿って所定長さを有する細溝で形成されている。この溝幅は、アームバー65の係止ピン651が入り込み移動される幅長となっている。このカム溝64は、その一端部に第1のカム溝64aと、他端部に第2のカム溝64bと、両第1、第2のカム溝を繋ぐ第3のカム溝64cとからなり、第1のカム溝64aが中心点Oからの距離が最も短く、第2のカム溝64bが中心点Oから距離が最も長く、第3のカム溝64c間が所定形状に湾曲した湾曲溝となっている。これら第1〜第3のカム溝のうち、第1のカム溝64aは同じ形状の略直線状の細溝からなり、長さ方向の略中間部で二分、すなわち溝64a1、64a2に区分され、一方の溝64a1の長さは中心点0との間でなす角度がθ2(例えば5°)となっている。また、第2のカム溝64bは同じ形状の略直線状の細溝からなり、長さ方向の略中間で二分、すなわち溝64b1、64b2に区分され、一方の溝64b1の長さは中心点0との間でなす角度がθ2となっている。第3のカム溝64cは、対数螺旋曲線状をなした溝で形成されて、この第3のカム溝64cは、中心点0との間でなす角度がθ1(例えば45°)となっている。この角度θ1の範囲でロック操作レバー68が回転される。第1、第2のカム溝64a、64bが長さ方向の略中間で2分されていることによって、これらのカム溝に挿入された係止ピン651の移動が両溝端部まで移動可能となる。ロック操作レバー68が角度θ1の範囲で回転されても、このロック操作レバーを角度θ2だけ余分に回転可能になり、ロック操作レバー68が若干回転されても、鍋ロック機構の誤動作を防止できる。
この円盤状カム板63には、3本のアームバー65が連結される。これらのアームバーは、同じ形状となっている。その1本のアームバーを説明する。このアームバー65は、図22に示すように、一端に円盤状カム板63のカム溝64に取付ける第1の連結部65a及び他端に鎖錠部材80(図38参照)に連結される第2の連結部65bを有し、細長の板状片で形成されている。第1の連結部65aには、カム溝64内に挿入されてこのカム溝内を移動可能な係止ピン651が固定されている。この係止ピン651は、小型のボルトネジ、ピンなどで構成されている。この係止ピンに回転ロール(図示省略)を装着するのが好ましい。この回転ロールを装着することにより、カム溝64内での移動が円滑になる。また、この連結部65aの近傍には、長手方向に設けた長孔653が形成されている。この長孔653は、アームバー65が長手方向へ移動するときのガイド孔となっている。この長孔653には、小型のボルトネジが挿通される。このボルトネジは、平行フレーム51又は52に固定される。第2の連結部65bは、アームバー65の長手方向の両側縁の一部を延設して同じ方向へ折曲した一対の連結片65b1が形成されて、これらの連結片65b1に回転軸89b1(図26参照)を挿通する挿通孔652が設けられている。
円盤状カム板63は、外周縁の一部にカムストッパー部材97が入るロック穴63cが形成されている。カムストッパー部材97は、図24に示すように、ロック穴63cに入り込む係止爪97aと、蓋枠体F1の平行フレーム51の側辺に当接して移動を規制する当接部97bと、弁開放機構のプランジャ枠96a(図34参照)に連結される連結部97cと、フレームなどの支持体への固定孔971とを有し、金属板材の折曲加工によって形成されている。このカムストッパー部材97は、枠組開口F12の隅部に、その固定孔971にネジを挿通して支持体に回転自在に固定される。連結部97cは、プランジャ枠96aに連結される。
図22〜図24及び図34を参照して、このカムストッパー部材の作用を説明する。
円盤状カム板63は、ロック操作レバー68の操作によって所定角度だけ回転される。このロック操作レバー68が所定角度回転されると、図23、図24に示すように、係止ピン651がカム溝64の第1のカム溝64a、第3のカム溝64cを経て第2のカム溝64bの中間点64b'を通過し、この通過の際にスイッチSWをオンさせ、その後、係止ピン651が最終位置に移動される。この状態は、ロック操作レバー68が45°回転されて、炊飯を開始できる正規位置になっている。
この状態で炊飯工程が開始されると、ソレノイドが励磁されて、プランジャ96が引込められると、弁口921が調圧ボール93で閉塞される。このプランジャ96の引込みにより、プランジャ枠96aが後退して、カムストッパー部材97が回転されて係止爪97aがロック穴63c内へ移動される。このときは、未だ、係止爪97aはロック穴63cの略中央部付近にあって、ストッパー壁63c1に当接していない。この状態において、なんらかの原因で、ロック操作レバー68が誤操作されて戻されると、係止ピン651が中間点64b'を通り、この通過時に、スイッチSWがオフされて、誤操作であることが警報される(図44参照)。この警報により、ユーザーがロック操作レバー68を正規位置へ戻せば支障なく炊飯工程が続行される。しかしながら、正規位置とは逆方向へ回転されると、カムストッパー部材の係止爪97aがロック穴63cのストッパー壁63c1に突当り、しかも、当接部97bが平行フレーム51のフレーム壁に当り、円盤状カム板63の回転が規制されて、ロック操作レバー68の回転が不能になる。そして、ロック操作レバー68と係止ピン651との関係では、ロック操作レバー68の操作でこの操作力の数倍の力が係止ピン651に掛かろうとするが、カムストッパー部材97が平行フレーム51に当接して、その回転を規制するので、無理な力が係止ピンに掛かることがなくなる。
この円盤状カム板63は、回転リング66に固定される。この回転リング66は、図32、図33に示すように内部に所定径の中空孔を有し、比較的肉厚が厚い環状体からなり、耐熱性を有する合成樹脂成型体で形成されている。中空孔は円形の中空孔からなり、その直径は、固定リング61の外周径より若干大きくなっている。この回転リング66は、上下壁面66a、66b及び円形孔の内外側壁面66c、66dを有し、内側壁面66cが固定リング61の環状リブ61cの外周囲に接触する接触面となっている。
上壁面66aには、ロック操作レバー68が固定される複数個のネジ穴(図示省略)が穿設されている。下壁面66bには、円盤状カム板63が固定される複数個のネジ穴(図示省略)が穿設されている。なお、この下壁面66bには、周方向に凹み溝が設けられている。外側壁面66dには、外周囲に凹み溝661が形成されている。
この回転リング66は、固定リング61と押さえリング67との間で所定角度θ3(図31参照)だけ回転可能に固定される。すなわち、回転リング66は、所定角度θ3に制限された回転となる。この回転制限は、図31に示すように、回転リング66の下壁面66bに設けた回転を制限するストッパー突起66b1と、押さえリング67の下壁67dに設けたストッパー突起66b1の回転を許容する所定長さの切欠溝67b1とでなされる。この回転制限は、回転リング66がロック操作レバー68に固定されて、このロック操作レバー68の回転により、回転リングが回転されるので、回転リング66の回転制限は、ロック操作レバー68の回転を制限することになる。所定角度θ3は、円盤状カム板63の回転角度θ1と略同じになっている。ロック操作レバー68の回転制限は、ロック操作レバーの過度の回転を阻止し、円盤状カム板63の損傷を防止できる。押さえリング67は、内部に回転リング66の外径より若干大きい内径の中空孔67aと、この中空孔から外方へ所定長さ延設され所定の肉厚を有する環状辺部67bとを備えた環状体からなり、合成樹脂成型体で形成されている。環状辺部67bの上下壁67c、67dのうち、下壁67d面には、中空孔67aの内壁が一部切除され、この切除部に凹み溝671が形成されている。この凹み溝671は、環状溝となり、この環状溝に回転リング66の凹状溝と結合されて回転される。上壁67c面には、ロック操作レバー68が当接される。
この回転リング66は、ロック操作レバー68に連結されて、所定の角度だけ回転される。すなわち、ロック操作レバー68により、円盤状カム板63が所定角度回転されると、カム溝64に連結されたアームバー65は、一対の平行フレーム51又は52間にあって、これらの平行フレームと略平行に前後方向へ移動する。すなわち、アームバー65の係止ピン651がカム溝64の第1のカム溝64aに嵌り込んでいる状態で円盤状カム板63が回転されると、係止ピン651がカム溝64の第3のカム溝64cを経て第2のカム溝64bへ移動される。このアームバー65の係止ピン651の移動により、アームバー65が前方へ押出される。また、ロック操作レバー68により円盤状カム板63が逆方向へ戻されると、このアームバー65が元の状態、すなわち押出し方向から引込められる。このアームバー65の前後方向への移動により、このアームバー65に連結された鍋ロック機構87のホールド爪88b、88b'のホールド又はそのホールド解除が行われる。
蓋枠組体50は、図5に示すように、その表面が蓋カバー69で覆われる。この蓋カバー69は、表面加工した化粧カバーからなり、その略中央部にロック操作レバー68及び貯留タンク100を取付ける開口69a、外周部に取っ手ハンドルを取付けるハンドル取付け部69b及びヒンジ機構54を覆うヒンジカバー69cが固定されている。
ロック操作レバー68は、図5、図32、図33に示すように、中心部に貯留タンク100が挿入される開口68aと、この開口から外方へ延設されて固定リング61、回転リング66及び押さえリング67の上面を覆う延設部68bと、この延設部の外周囲の一部から外方へ延びた所定長さのレバー部68cとを有し、合成樹脂成型体で形成されている。延設部68bには、所定深さの凹み部681が設けられて、この凹み部の底壁に回転リング66にネジ止めする複数個のネジ穴が形成されている。開口の周辺に凹み部681を設け、この凹み部に回転リング66に固定するネジ穴が形成されている。ロック操作レバー68は、レバー部68cを時計方向又は反時計方向へ所定角度、例えば45度回動されると、回転リング66を介して、円盤状カム板63が回転し、鍋ロック機構87のホールド爪88b、88b'が作動して、鍋3のフランジ部3dにホールド爪88b、88b'がホールドされ又はこのホールドが解放されるようになっている。ロック操作レバー68は、その延設部68bが蓋体5の略中心部に固定されて、この延設部68bに形成された開口68aに貯留タンク100が着脱自在に装着される。この構成によれば、ロック操作レバー68及び貯留タンク100が蓋体5の中央部に纏めて配設されるので、分散させる配設に比べてコンパクト化されるとともにデザイン性がよくなる。
(ヒンジ機構)
図16〜図19を参照して、ヒンジ機構を説明する。なお、図16は図13のヒンジ部分を拡大した拡大図、図17は図7のヒンジ機構部分を拡大した断面図、図18は図17のヒンジ機構の作用を説明する断面図、図19は図18のヒンジ機構の作用を説明する曲線図である。
蓋枠組体50は、ヒンジ機構54で本体枠組体20に固定される。このヒンジ機構54は、図16に示すように、一対の軸受フレーム55と、これらの軸受フレームを所定の隙間をあけて両軸受フレームを連結する連結フレーム56とを有し、両軸受フレーム55には、蓋体5の開閉をスムーズにするとともに、この蓋体5を所定の位置で静止させるバネ機構57が設けられている。このヒンジ機構54は、図5、図7に示すように、ヒンジカバー54aで覆われている。一対の軸受フレーム55及びバネ機構57は同じ構成となっている。一方の軸受フレーム及びバネ機構を他方の軸受フレーム及びバネ機構を図16、図17を参照して説明する。
軸受フレーム55は、図16、図17に示すように、比較的長尺及び幅狭の細長の底板部55aと、この底板部の長手方向の両側縁から略直角に所定高さ立設した一対の対向する側板部55bとからなる略U字型枠体で形成されている。この軸受フレーム55は、大型の蓋体5の重量及び炊飯時にこの蓋体に加わる大きな圧力が荷重として掛かるので、肉厚の厚い金属板材を折曲加工した機械的強度の強いもので構成されている。底板部55aは、図16の状態で、上方端から下方端へ向かって所定長さ部分が切除されて、この切除された隙間55sに底板部55aから内部へ折曲した折曲部55a'が設けられて、この折曲部55a'にバネ圧縮棒57Bが挿通される貫通孔551が形成されている。また、底板部55aの下方端部は、内部へ略直角に折曲した折曲部55cが形成されて、この折曲部55cを利用して中間枠フレーム23の取付け台23d'(図12参照)に固定部材を使用して固定される。
一対の側板部55bは、その一方の側板部55bを図17に示すように、一端、すなわち底板部55aが切除された側の端部に軸取付け部55b1と、この軸取付け部の下方から底板部55aと反対方向へ略直角に延設されたフレーム取付け部55b2と、他端に向かって先細に比較的長く延設された延長部55b3とを有している。軸取付け部55b1には、図17、図18の状態で、上下方向へ延びた所定長さの長孔552が形成されて、この長孔552に回転軸58が挿通される。回転軸58は長孔552にガイドされて上下動される。
バネ機構57は、図17に示すように、内部に所定大きさの孔を有するコイルバネ57Aと、このコイルバネの内部孔に挿通されるバネ圧縮棒57Bとを有している。コイルバネ57Aは、圧縮可能なコイル状バネ体、すなわち伸張バネ体からなり、軸受フレーム55のU字型枠体内に収容される。バネ圧縮棒57Bは、軸受フレーム55より若干短長でコイルバネ57Aの内部孔に挿通される大きさの細棒からなり、機械的強度の強い金属棒で形成されている。軸受フレーム55へのバネ機構57の組込みは、バネ圧縮棒57Bの一端を折曲部55a'の貫通孔551に挿通し、このバネ圧縮棒57Bにコイルバネ57Aを挿通して、このバネ圧縮棒57Bの一端をコイルバネ57Aの端部57aに固定板を用いて固定して組立てる。バネ圧縮棒57Bの他端は、蓋枠体F1の平行フレーム51の最端の連結部に連結されている。この組立てにより、バネ圧縮棒57Bの他端が上方へ引かれると、コイルバネ57Aは、軸受フレーム55内で圧縮される。バネ圧縮棒57Bの他端の上方への牽引力がなくなると、コイルバネ57Aの復元力により、元の状態へ復帰する。このバネ機構57のコイルバネ57Aの圧縮力及び復元力により、蓋体5の開閉がスムーズになるとともに、この蓋体5を所望の位置で停止させることができる。すなわち、所望位置での蓋体5の開閉はコイルバネ57Aに所定のバネ力を有するものを使用することによって達成できる。図19の曲線は、横軸に蓋体の開閉状態の角度及び縦軸はモーメント(Nmm)を示している。コイルバネ57Aに曲線X1のモーメントを有するバネ体を選定し、蓋体5の重心モーメントが曲線X2にあるとすると、トータルモーメント、すなわち蓋体5の開閉モーメントは曲線X12となる。これらの曲線X1、X2及びX12から、蓋体5が閉状態、すなわち角度ゼロではマイナスの力が働き、この蓋体の閉状態が保持される。蓋体5が閉から所定角度開、例えば角度20°から70°に開かれたときに、蓋体5はこの状態に安定した状態で保持される。蓋体5がさらに70°以上に開かれると、この開状態も安定した状態で保持される。
このヒンジ機構54は、以下の特徴を有している。蓋体5と本体容器2とは、ヒンジ機構54により連結されている。すなわち、ヒンジ機構54によって本体枠組体20と蓋枠組体50とが連結されている。一対の軸受フレーム55は、図18の状態で、上方の軸取付け部55b1と下方の折曲部55cとの長さA1及びフレーム取付け部55b2の長さA2を有している。各長さA1、A2は、A1がA2より数倍(例えば5倍)長くなっている。軸受フレーム55は、上方の軸取付け部55b1が回転軸58により蓋枠体F1の平行フレーム51に結合され、フレーム取付け部55b2が上方の軸取付け部55b1から若干下方に位置してフレームカバー24に固定されている。蓋枠組体50、すなわち蓋体5は、回転軸58を支軸にして開閉される。この開閉時に、蓋体が大型になっており、その重量が重いので大きな荷重が軸受フレーム55の軸取付け部55b1及びフレーム取付け部55b2に掛かるが、この軸受フレーム55がその長さA1、A2がA1>A2となっているので、梃子作用が働き、フレーム取付け部55b2などに大きな荷重が加わっても小さい力でこの荷重に耐えることが可能になる。すなわち、折曲部55cと中間枠フレーム23との結合は小さい力で固定できる。また、炊飯時には、鍋3内の昇圧により、蓋体5を上方へ持上げ開放しようとする大きな開放力が働き、ヒンジ機構54に大きな荷重が掛かる。しかしながら、本体容器2と蓋体5とが上記のヒンジ機構54で連結されているので、同様の梃子作用を利用してこの荷重に耐えることができる。さらに、回転軸58には、蓋体5が枢支されるので、炊飯時に鍋3内の内圧が異常上昇して、蓋体5に高い圧力が加わったときに、蓋体5が枢支された回転軸58が長孔552に沿って上方へ持上げられて、鍋3との間に隙間があき、この隙間から異常圧力が外部へ放出されて、安全性が保証される。また、このヒンジ機構54は、コイルバネ57Aのバネ力の選定により、蓋体の開閉をスムーズにできるとともに、この蓋体を所望の位置で停止させこの状態を保持できる。
回転軸58と、平行フレーム51の端部にあってバネ圧縮棒57Bの連結端部57bとは、図16、図18に示すように、水平方向にあって上下方向に若干ずれて、回転軸58を中心にして、この回転軸を通る水平線と、回転軸58及び連結端部57bとを結ぶ線との間に所定の角度θとなる。なお、連結端部57bには、バネ機構57により、蓋体5を開放させる開放力が働いている。この角度は、回転軸及び連結端部の固定時に設定される初期角度となっている。この実施形態では、初期角度を45°に設定したが、この初期角度を変更すると、図19に示すように、蓋体のトータルモーメントが変化する。初期角度を例えば30°にすると、トータルモーメント曲線はXaのようになる。このトータルモーメント曲線から、蓋体は、開角度が0°から20°において、蓋体5に対して働く閉塞力が小さく、一方20°より大きくなると、この閉塞力が大きくなる。また、初期角度を50°にすると、トータルモーメント曲線はXbのようになり、蓋体の開角度が0°から20°では、蓋体5に対して働く閉塞力が大きく、一方20°より大きくなると、この閉塞力が小さくなる。したがって、この初期角度を変更することにより、蓋体の閉塞力を調節して、蓋体を任意の角度に開状態を保持などができる。
(蓋体ロック機構)
主に図12、図13、図25、図26及び図38〜図40を参照して、蓋体ロック機構を説明する。なお、図25は図13の蓋体部分を拡大した拡大図、図26は図25の蓋体部分を別角度からみた拡大図、図38は図12の蓋ロック機構の斜視図、図39は図38の蓋ロック機構の一部断面図、図40は図38の蓋ロック機構の分解斜視図である。
蓋体ロック機構70は、図12に示すように、蓋体5を本体容器2にロックする蓋ロック機構71と、蓋体5を鍋3にホールドロックする鍋ロック機構87とで構成されている。
(蓋ロック機構)
蓋ロック機構71は、図38〜図40に示すように、フレームカバー24にロック及びこのロックの解除ができる蓋ロック・解除機構71Aと、鍋ロック機構87のロック操作レバー68の回動を鎖錠するロックレバー鎖錠機構71Bとを有し、これらの機構は、ヒンジ機構54の反対側に設けられている。
蓋ロック・解除機構71Aは、図40に示すように、一端部に解除釦72aと、他端部に係止枠体77が連結される連結部72bと、両端部を繋ぐ中間部72cとを有し、この中間部に枢支軸74が挿通される軸孔721が設けられて、この枢支軸74を支軸にして揺動できる比較的長尺の揺動枠体72からなり、合成樹脂成型体で形成されている。中間部72cには、枢支軸74が挿通される軸孔721が設けられるとともに、軸孔721と解除釦72aとの間にガイド部72dが設けられている。ガイド部72dは、中間部72cから鎖錠部材80方向へ略水平へ所定の間隔をあけて所定長さ突出した一対の腕部からなり、これらの腕部の対向面にガイド溝722が形成されている。このガイド部72dには、鎖錠枠体73がスライド移動自在に装着される。この鎖錠枠体73は、対向するガイド溝722に挿入される対向する一対の鎖錠片部73aと、これらの鎖錠片部の一端部を連結する連結部73bとを有し、一対の鎖錠片部73aの他端部に隙間が開いた枠体からなり、金属又は合成樹脂材で形成されている。一対の鎖錠片部73aは、連結部73bの近傍部分の面積が拡大されて、この拡大部分には図40に示す状態で、上下に延びた長孔731が形成されている。これらの長孔731には、第1のリンクレバー75の一端部に固定された連結ピン751が移動可能に装着される。また、この鎖錠枠体73は、各鎖錠片部73aの先端が鎖錠突起73cとなっている。鎖錠枠体73と枢支軸74とは、一対の第1のリンクレバー75で連結される。これらの第1のリンクレバーは、同じ形状となっている。すなわち、この第1のリンクレバー75は、一端部に鎖錠片部73aの長孔731に連結される連結ピン751が固定されるピン固定部75aと、他端部に枢支軸74に固定される軸固定部75bとを有し、この軸固定部に引掛け突起75cが設けられている。引掛け突起75cには、第2のリンクレバー76が連結される。この第2のリンクレバー76は、一端部に一対の第1のリンクレバー75の各引掛け突起75cに引掛ける引掛け部76aと、他端部に係止枠体77に固定される固定部76bとを有している。係止枠体77は、一端部に一対の第2のリンクレバー76に固定される固定部77aと、他端部に本体容器2の係止爪251に係止される鉤部77bと、内部にコイル状スプリングが収納される空間77cを有する枠体からなり、機械的強度の強い金属板材或いは合成樹脂成型体で形成されている。
蓋ロック・解除機構71Aは、図38〜図40に示すように、枢支軸74などを用いて上蓋5Bの外周壁に固定される。この蓋ロック・解除機構71Aは、まず、揺動枠体72の連結部72bの隙間に伸張スプリング79b及び係止枠体77の固定部77aを入れて、伸張スプリング79bを伸張させた状態にして固定部77aに第2のリンクレバー76の固定部76bがネジ固定される。この固定により、係止枠体77は、伸張スプリング79bの伸張力で図39の状態で押下げた状態になっている。この伸張スプリング79bは、鍋内圧力の上昇に連動して圧縮されるバネ力をもっている。なお、係止枠体77は、伸張スプリング79bの伸張力に抗して揺動枠体72の連結部72bの隙間で上下動される。揺動枠体72には、ガイド部72dのガイド溝722に鎖錠枠体73を挿入し、一方、一対の第1のリンクレバー75のピン固定部75aに係止ピン751を固定して、この係止ピン751を鎖錠枠体73の長孔731に挿入して揺動枠体72が組立てられる。
次いで、この組立てた揺動枠体72は、リンク固定枠78を介して、軸孔721に枢支軸74を挿通して揺動枠体72が上蓋5Bに揺動自在に固定される。この枢支軸74には、バネ体79aが巻回されて揺動枠体72の解除釦72aが蓋体から離れる方向、この揺動枠体72に結合される係止枠体77が本体容器2側へ接近するように付勢されている。
ロックレバー鎖錠機構71Bは、図38、図39に示すように、一対の第1の鎖錠孔811を有する鎖錠部材80と、この第1の鎖錠孔811と位置合わせされる一対の第2の鎖錠孔841を有する鎖錠板材84とを有している。鎖錠部材80は、細長の底辺部81aと、この底辺部の長手方向の両縁から所定高さ立設されて対向する一対の側辺部81bとを有する略U字状枠からなり、金属板材の折曲加工により形成されている。このU字状枠からなる鎖錠部材80は、一端の両側辺部81bにそれぞれ挿通孔812、813及び他端の両側辺先端の一部が外方へ直角に折曲されて、これらの折曲部81cに縦長の第1の鎖錠孔811が形成されている。この鎖錠部材80は、挿通孔812、813にそれぞれ回転軸が挿通されて平行フレーム51に回動可能に固定される。
鎖錠板材84は、所定の幅長及び長さを有する帯状片84aからなり、一端の一部が直角に折曲されて、この折曲部84bに第2の鎖錠孔841が形成されている。この鎖錠板材84は、上蓋5Bの表面に固定される。
この蓋ロック機構71によれば、本体容器2に鍋3が収容されて、これらの開口が蓋体5で塞がれると、蓋ロック・解除機構71Aの鉤部77bが本体容器2の係止爪251に係止ロックされる。この状態ではロックレバー鎖錠機構71Bが不作動、すなわち、鎖錠枠体73の鎖錠突起73cがガイド部72d内にある。したがって、この状態では、蓋体5は本体容器2に蓋ロック・解除機構71Aでロックされるが、解除釦72aを押すことにより、蓋体5を自由に開けることができる。また、ロック操作レバー68の操作、すなわち、鍋ロック機構87のホールド爪88b、88b'が鍋3のフランジ部3dへの移動、戻しが自由になっている。炊飯が開始されて鍋3内の圧力が上昇すると、この圧力上昇により蓋体5の全体が上方へ持上げられる。すなわち、ホールド爪88b、88b'とフランジ部3dとの間に隙間があいているので、この隙間分蓋体5が上方へ押上げ(持上げ)られる。蓋体5が上方へ持上げられると、揺動枠体72も上方へ移動し、この移動により、係止枠体77が伸張スプリング79bの伸張力に抗して連結部72b内へ引き込まれる。この引き込みと同時に、第1のリンクレバー75の係止ピン751が鎖錠枠体73の長孔731内を下方へ移動して、鎖錠枠体73の鎖錠突起73cがガイド部72dから突出する。このとき、ロックレバー鎖錠機構71Bは、鍋ロック機構87が作動しているので、鎖錠部材80の第1の鎖錠孔811と鎖錠板材84の第2の鎖錠孔841とが合致した状態になっている。鎖錠枠体73の鎖錠突起73cがこの合致した第1、第2の鎖錠孔811、841へ入り込み、これにより、ロック操作レバー68の操作移動がロックされる。このロックレバー鎖錠機構71Bは、伸張スプリング79bのスプリング力を調整して、鍋3内の圧力が所定の設定値、例えば1.05気圧以上に昇圧されたときに、鎖錠突起73cが第1、第2の鎖錠孔811、841へ入り込みロックするようになっている。この設定値を伸張スプリング79bで設定することにより、鍋内の昇圧を任意の圧力で蓋体をロックでき安全性が確保される。
(鍋ロック機構)
図11〜図13、図25〜図30を参照して、鍋ロック機構を説明する。
鍋ロック機構87は、図11、図30に示すように、蓋枠組体50の3方向の端部に3箇所に分散して設けた第1〜第3のホールド機構88A〜88Cからなり、これらのホールド機構88A〜88Cは、炊飯開始時に、ロック操作レバー68の操作で鍋3のフランジ部3dをホールドする。これらのホールド機構88A〜88Cのうち、第1のホールド機構88Aは、蓋枠体F1の蓋ロック機構71側に、他の第2、第3のホールド機構88B、88Cは蓋枠体F2の両端部に設けられている。これらのホールド機構88A〜88Cは、ヒンジ機構54側には設けられていない。このヒンジ機構部分は、鍋内の圧力が異常上昇したときに、この異常圧力を逃がす安全装置として働くようになっている。この鍋ロック機構87は、鍋3内の圧力が上昇したときに、フランジ部3dをホールドしてロックする機構となっており、鍋内の圧力が上昇しない間は、ロック操作レバー68の操作でホールド前の状態を解除できる。
第1〜第3のホールド機構88A〜88Cは、同じ機構となっている。その一つのホールド機構を説明する。
このホールド機構は、一対のホールド爪88b、88b'を有する作動部材88が一対の平行フレーム51(又は52)の両端部に回転自在に固定された構成となっている。
作動部材88は、図27に示すように、所定の間隔をあけて対向する一対のホールド爪88b、88b'と、これらのホールド爪を連結する連結バー88cとを有し、機械的強度の強い金属材で形成されている。なお、このホールド爪は図44ではフックとして表現されている。それぞれのホールド爪88b、88b'は、連結バー88cの両端部の略T字状板状体を折曲加工によって形成される。すなわち、略T字状板状体の短辺を同じ方向へ折曲した一対の耳片部88a、88a'と、長辺を折曲したホールド爪88b、88b'とで形成されている。各ホールド爪88b、88b'は、鍋3のフランジ部3dをホールドする方向へ略直角に折曲されて各爪片との間に隙間G(図26参照)があいている。この隙間Gは、本体容器2が蓋体5で閉塞された状態において、各ホールド爪88b、88b'と鍋3のフランジ部3dとの間に所定の隙間(例えば、1.5mm)があくようになっている。この隙間Gにより、ロック操作レバー68の操作時に、複数個のホールド爪88b、88b'が余裕をもって鍋3のフランジ部3dの係止部分に移動されるので、ロック操作レバー68の操作がスムーズになる。そして、鍋3内の圧力が上がっていない状態では、この隙間が維持されており、鍋3内の圧力が上昇し、この圧力上昇で蓋体5が上方へ持ち上がったときに、この隙間が短縮されて、各ホールド爪88b、88b'で鍋3のフランジ部3dが係止、すなわちホールドされる。
この作動部材88は、鍋3をロックするのに重要な機能を果たすものとなっている。以下、この作動部材の追加説明をする。
この作動部材88は、連結バー88cの両端部にこの連結バーの一端縁が所定長さ延設された延設部88e、88e'を設け、これらの延設部88e、88e'にそれぞれ耳片部88a、88a'及びホールド爪88b、88b'が形成されている。各ホールド爪88b、88b'間における両ホールド爪の中間長さLは、例えば143.4mmとなっている。
一対のホールド爪88b、88b'は、略同じ構造となっているが、それぞれ爪片88b3は鍋3のフランジ部3dをホールドするときに、このフランジ部の外周縁の湾曲部に沿ってホールドするように対向している。すなわち、図4、図28に示すように、一対のホールド爪88b、88b'は、その向きがフランジ部を掴むように対向している。両ホールド爪88b、88b'は、構造が同じで向きが異なるだけなので、一方のホールド爪88bを他方のホールド爪88b'を参照して説明する。
ホールド爪88bは、図27に示す状態で、連結バー88cの端縁から延びて該端縁から下方へ所定角度θ4傾斜した延長部88b1と、この延長部から下方へ垂下した垂下片部88b2と、この垂下片部から本体容器2の内側、すなわち、鍋3のフランジ部3d側へ略直角に折曲された爪片88b3とで構成されている。延長部88b1を所定角度傾斜させると、この部分の機械的強度が強くなるとともに、垂下片部の長さを短縮できる。延長部88b1は、連結バー88cの最外側と内側とでその垂下長が若干異なっており、この違いにより、延長部88b1が角度θ4を有する三角形状をなし、細長な連結バー88cの端部がその面積が膨らんだものとなる。この面積の拡大に伴い、機械的強度が増大する。また、垂下片部88b2は、所定の幅長を有し、延長部88b1の端縁から垂下されるが、この垂下長さが最外部と内側部とで若干異なり、この違いにより、鍋3のフランジ部3dをホールドするときに、このフランジ部3dの外周縁の湾曲部に沿って当接される。
爪片88b3は、鍋のフランジ部3dに係止されるもので、垂下片部88b2からフランジ部3d側へ所定長さ略直角に折曲されている。この爪片88b3は、細長の矩形状をなし、図28に示すように、この矩形状の全面が鍋のフランジ部3dに接触し係止される。このホールド爪88bの寸法は、例えば垂下長は19.0mm、長手方向の幅長は29.0mmおよび爪片の折曲長さは8.5mmである。このホールド爪88bは、例えば3.0mmの金属板を打ち抜きおよび折曲加工によって形成されている。他方のホールド爪88b'もホールド爪88bと同じ構造となっている。
この作動部材88は、炊飯中に鍋内の圧力が上昇すると、所定の間隔をあけて対向する一対のホールド爪88b、88b'に大きな応力および荷重が掛かり、この荷重などに耐えるように幾つかの工夫がされている。その一つの工夫は、ホールド爪の垂下片部88b2の垂下長が短長にしてあることである。この垂下片部88b2は、上蓋5Bとの関係で短長になっている。すなわち、この実施形態では、上蓋5Bの厚さを部分的に薄くして、垂下片部の長さを短長にしてある。
上蓋5Bは、図3に示すように、中心部から外方へ向かって所定の領域までが内蓋5Aが装着される内蓋装着領域5B1と、その外周辺部が鍋のフランジ部3dに当接される当接領域5B2となっている。当接領域5B2は、フランジ部3dと対向する平らな平坦部5aと、この平坦部から所定高さ及び幅長で***し、頂部が平坦な***部5bとを有し、この***部5bは3箇所に分けられて、これらの***部5b1〜5b3が第1〜第3のホールド機構88A〜88Cに対応して設けられ、また、これらの***部5b1〜5b3の間は平坦部5a1〜5a3となっている。
3箇所の***部5b1〜5b3には、第1〜第3のホールド機構88A〜88Cの各ホールド爪88b、88b'が挿通される所定大きさの開口を有する貫通孔5cが形成されている。
3箇所の***部5b1〜5b3は、平坦部5aの平坦面を基準にして、この基準平坦面から所定高さ(例えば2.5mm)下方、すなわち本体容器側へ***し、本体容器2内に鍋3を収容し、蓋体5で閉塞したときに各***部5b1〜5b3の頂部が鍋のフランジ部3dが当接される。このとき、平坦部5aの基準平坦面は、フランジ部3dに接触せず***部の高さだけ隙間があいている。なお、この隙間があっても、炊飯に支障がなく、炊飯時の鍋内の圧力上昇により塞がり、しかも安全機構としても機能する。3箇所の***部5b1〜5b3は、ヒンジ機構54から離れた箇所に形成されて、ヒンジ機構54を間に挟む2箇所の***部5b2、5b3間の平坦部5a3が他の部分より広くなっている。鍋内の圧力が異常上昇したときに、この広い平坦部分から内部の異常圧力が噴出される。なお、操作部が炊飯器の前方にあるので、この部分から圧力が噴出されても安全性に問題がない。
3箇所の***部5b1〜5b3は、同じ構造となっている。一箇所の***部を説明する。この***部5bは、図29に示すように、平坦部5aの基準平坦面から下方へ所定高さ***しているが、ホールド爪88bが挿通される貫通孔5cの付近は、平坦部5aの基準平坦面をそのまま延長するのでなく、切欠き形状にして、所定の段差5dを介して***部分の内側を凹ませてこの凹み部分5eに貫通孔5cが形成されている。***部分の内側を基準平坦面より凹ませることにより、ホールド爪88bは、傾斜した延長部88b1がこの凹み部に対向して回動される。その結果、ホールド爪88bの垂下片部88b2の垂下長を短長にできる。なお、延長部を傾斜させないと、垂下片部の長さが長くなり、そのために、大きな応力(荷重)が掛かると容易に塑性変形し、機能を失うことがある。
また、この他には、作動部材88を蓋枠組体50の平行フレーム51(又は52)へ回転自在に固定する回転軸89aとの関係で、一対の耳片部88a、88a'の第1の挿通孔が工夫されている。以下、この工夫を説明する。
一対の耳片部88a、88a'は、平行フレーム51(又は52)の連結部より若干幅長の間隔をあけて対向して設けられ、外側の耳片部88aには、回転軸89aが挿通される第1の挿通孔881、内側の耳片部88a'には第1の挿通孔881及びアームバー65が連結される装着軸89bが挿通される第2の挿通孔882が形成されている。連結バー88cは、その略中央部に突出片部88dが設けられている。この突出片部88dはアームバー65の端部65cに当接する。突出片部88dにはネジ孔883が設けられて、このネジ孔に調節ネジを装着して、アームバー65の端部65cとの当接量を調節できるようになっている。
一対の耳片部88a、88a'の各第1の挿通孔881は、各挿通孔881に回転軸89aが挿通されたときに、図28に示すように、この回転軸89aが矩形状の爪片88b3の対角線の略真上に位置する箇所に形成されている。回転軸89aが各爪片88b3の対角線の略真上に位置すると、鍋のフランジ部3dに係止された各爪片88b3は、回転軸89aとの距離が最短距離となって、しかも、この回転軸89aで各爪片88b3をその対角線の真上部分で支持するので、矩形状の爪片88b3の全体がフランジ部3dに接触し、且つ、対角線の真上部分で支持するので、爪片88b3のa、b部分で均衡しバランスよく支持される。この回転軸89aは、堅固な平行フレーム51(又は52)に連結されているので、各爪片88b3がこのフレームによって、堅固に支持されることになる。
この作動部材88は、対向する一対のホールド爪88b、88b'が所定距離離れて鍋のフランジ部3dを接触しホールドするので、フランジ部に分散した状態で、このフランジ部をバランスよくホールドすることができる。また、一対のホールド爪88b、88b'が分散されているので、軽量になり、円盤状カム板を用いたロック機構での作動が容易になる。さらに、円盤状カム板からの1本のアームバーで2個のホールド爪88b、88b'が作動されるので、円盤状カム板からのホールド爪を作動させる部品数が少なくなる。
作動部材88の取付けは、図26に示すように、作動部材88を両平行フレーム51(又は52)両端の連結部に耳片部88a、88a'を合わせて、第1の挿通孔881に回転軸89aを挿通して、両平行フレーム間に回転自在に装着する。また、各耳片部88a、88a'は、その第2の挿通孔882に装着軸89bを挿通し、この装着軸にアームバー65の連結部を固定する。装着軸89bは、弾性力を吸収できる弾性体で形成した棒状体にするのが好ましい。装着軸89bを弾性体にすることにより、係止ピンに過荷重が掛かることなくこの係止ピン651の損傷を防止できる。すなわち、ロック操作レバー68の操作により、円盤状カム板63が回転して、係止ピン651を介してアームバー65が直線移動して作動部材88を作動させる。このとき、装着軸89bが剛体であると係止ピン651に大きな荷重が掛かるが、装着軸89bが弾性体であると、この過荷重を吸収できる。
3箇所の第1〜第3のホールド機構88A〜88Cは、上記の構成を有し、これらのホールド機構で鍋3のフランジ部3dがホールドされる。すなわち、これらのホールド機構のうち、第1のホールド機構88Aは、蓋枠体F1の蓋ロック機構71側に、他の第2、3のホールド機構88B、88Cは蓋枠体F2の両端部に設けられて、鍋3のフランジ部3dをホールドするので、円環状のフランジ部3dは、一対のホールド爪88b、88b'が組みになって、6個のホールド爪でバランスよくホールドされる。また、一対のホールド爪88b、88b'が作動部材88の両端部に固定されて、この作動部材88がフランジ部の円周辺と近接乃至交差するようにして平行フレーム51(又は52)に固定されるので、安定した状態で確実に鍋3のフランジ部3dがホールドされる。一対のホールド爪88b、88b'及び回転軸89aは、鍋3のフランジ部3dの周辺に平面視(上方から透視などして目視したときに)で周辺部に対角線上でクロスしている。すなわち、これらのホールド爪88b、88b'は、フランジ部3dの背面側にあって、このフランジ部をホールドする位置にあり、また、回転軸89aは、フランジ部3dの上面側にあって、このフランジ部の周辺部と交差する位置にある。
その結果、鍋3は、図30に示すように、その円環状のフランジ部3dが所定の間隔をあけて対向する一対のホールド爪88b、88b'とこれらのホールド爪を連結した作動部材88とで、バランスよく安定した状態でホールドされることになる。すなわち、ホールド爪は、フランジ部に掛かる位置にあるのは当然の構成であるが、これらのホールド爪もフランジ部にクロスした状態で掛かるので、その掛かり量が多くなり、しかも、回転軸もフランジ部にクロスした状態になるので、ホールド爪を安定状態でホールドさせることができる。ホールド爪及び支持回転軸が、フランジ部から離れた位置或いは一部しか交差していないと、ホールド爪との距離が長くなり、ホールド位置への移動距離が長くなり不安定になる。また、従来技術には、ホールド爪をフランジ部の外周囲に幅広く掛かるように、幅広にしたものがあるが、幅広にすると、大型になりその重量も増大して、円盤状カム板を用いたロック機構では操作できず、他のロック機構が必要になる。この機構に比べても、上記のホールド機構は、構成が簡単で軽量化になり、安定したホールドができる。したがって、このような構成を有する3箇所の第1〜第3のホールド機構88A〜88Cにより、鍋をバランスよく安定した状態でホールドすることができる。
ホールド機構88Bは、図24〜図26に示すように、アームバー65を介して円盤状カム板63に連結されるが、この連結でアームバー65が装着軸89bの長手方向へシフト移動して、ホールド機構が円滑に作動しないことがある。このシフト移動を防ぐために、装着軸89bに位置決めスリーブ89b1(図26参照)が装着されている。なお、位置決めスリーブ89b1を設けたが、連結軸89bに位置決め用の溝を設けてもよい。アームバー65は、一端部の長孔653が平行フレーム51にボルトネジで固定され、他端部が連結軸89bに位置決め固定されるので、アームバー65が横振れすることなく円滑な直線移動が可能になる。
これらのホールド機構88A〜88Cは、それぞれアームバー65を介して円盤状カム板63に連結されている。蓋体5が開いた状態では、図3に示すように、ホールド機構88A〜88Cのホールド爪の各爪片が蓋体5の外周囲の方向に向いて、鍋3のフランジ部3dのホールド準備状態になっている。この状態から、本体容器2内に鍋3が収容され、本体容器2及び鍋3の開口が蓋体5で閉じられて、ロック操作レバー68が所定角度回動されると、このロック操作レバー68に連結された回転リング66を介して円盤状カム板63が所定方向へ回転される。この円盤状カム板63の回転により、アームバー65を介して各ホールド機構88A〜88Cのホールド爪88b、88b'の爪片が鍋3のフランジ部3dのホールド位置へ移動される。
この蓋体ロック機構によれば、鍋ロック機構87により、鍋3が第1〜第3のホールド機構88A〜88Cで3方からホールドロックされるので、バランスよく鍋3がホールドロックされるとともに、蓋ロック・解除機構71Aの鉤部77bがフレームカバー24の係止爪251に掛かる荷重を一部肩代わりすることが可能になる。すなわち、蓋体ロック機構70は、蓋体5を本体容器2にロックする蓋ロック機構71と、蓋体5を鍋3にロックする鍋ロック機構87とで蓋体5をロックするが、蓋体5は鍋ロック機構87により、炊飯時の鍋内圧力上昇時に、鍋3のフランジ部3dが3箇所の第1〜第3のホールド機構88A〜88Cで3方からバランスよくホールドロックされるので、フレームカバー24の係止爪251に掛かる荷重が大きくならない。その結果、蓋ロック機構71を強固なものにする必要がなくなる。蓋体5は、蓋ロック機構71とこの鍋ロック機構87とにより、二重にロックされるので、炊飯時に内圧が上昇しても蓋体5が不意に開放されることがない。
(内圧調整装置)
図34〜図37を参照して、内圧調整装置を説明する。なお、図34は図6の蓋体部分を別の角度からみた拡大断面図、図35は図34の圧力弁を示した斜視図、図36は図35の弁座を示し、図36Aはその拡大斜視図、図36Bは図36AのXXXVIB−XXXVIB線の断面図、図37は図36の弁座の弁口を調圧ボールで開閉する説明図である。
蓋体5には、図8に示すように、2組の内圧調整装置90A、90Bが設けられている。
これらの内圧調整装置90A、90Bは、それぞれ圧力弁91及びこの圧力弁を強制的に開放させる弁開放機構94を有し、各圧力弁91は、図35に示すように、円盤状の基台91pに配設されて、この基台が内蓋5Aに固定されている。この基台91pには、2個の安全弁SVが固定されている。これらの圧力弁91及び安全弁SVの弁口は、内蓋5Aにそれぞれ各弁口に対応する箇所に貫通孔を設けて、本体容器2内と連通している。内圧調整装置90A、90Bは、図8に示すように、蓋体5に対向して配設されており、同じ構成となっている。一方の内圧調整装置90Aを他方の内圧調整装置90Bを参照して説明する。
内圧調整装置90Aは、図8、図34及び図35に示すように、圧力弁91と、この圧力弁を強制的に開放させる弁開放機構94とを有している。圧力弁91は内蓋5Aの表面に、弁開放機構94は上蓋5Bの上面に固定されている。圧力弁91は、所定径の弁口921を設けた貫通孔92dを有する弁座92と、この弁口921を塞ぐ調圧ボール93と、この調圧ボール93を収容しこの移動を規制するカバー体91c(図32参照)とで構成されている。カバー体91cは、調圧ボール93を覆う背部に所定大きさの切欠き開口911が形成されている。切欠き開口911は、弁開放機構94のプランジャ96の移動によって、調圧ボール93が押動する大きさになっている。調圧ボール93は、弁口921を塞ぐ大きさ(直径が例えば30.1625mm)で所定の重さ(例えば、113g)を有し、金属製ボールで形成されている。なお、従来技術のボールは、直径が20mm、重さが113gより小さくなっている。
弁座92は、図36に示すように、所定の面積を有する円形状の底壁面92aと、この底壁面の外周囲から所定高さ立設する側壁面92bと、この側壁面の上方にあって底壁面と対向する上壁面92cとを有する所定肉厚の円盤状体からなり、耐熱性を有する樹脂成型体で形成されている。
この弁座92は、その上壁面92cが調圧ボール93が載置される載置面となっている。そして、この弁座92は、その中心部に弁体を貫通する円形の貫通孔92dが形成されている。貫通孔92dは、上壁面92c及び底壁面に円形の開口を有し、上壁面の開口921は、その直径が調圧ボール93の直径より小さくして、この調圧ボールで該開口921が閉塞される円形の弁口(直径9.2mm)となっている。上壁面92cは、その弁口921の周辺が調圧ボール93が転がり易くなった凹み穴となっている。なお、底壁面の開口は、上壁面92cの開口よりその直径が若干大きくなっている。
弁座92は、図36に示すように、その載置面に、中心に位置し所定の直径を有する円形の弁口921と、この弁口から半径(側壁部)方向へ向けて所定の角度α1で立上げた第1の立上げ傾斜面92c1と、この第1の傾斜面から半径へ向かって所定角度で立上げた第2の立上げ傾斜面92c2と、この第2の傾斜面から更に半径へ向かって所定角度α2で立上げた第3の立上げ傾斜面92c3を設けられている。第1〜第3の立上げ傾斜面は、それぞれ半径方向に沿って所定の幅長を持っている。第1の立上げ傾斜面92c1の幅長は、図37に示すように、調圧ボール93が図の水平方向へ1.0mm移動したときの距離となっている。角度α1は、弁口周縁で調圧ボール93が接するときの接線がなす角度となっている。調圧ボール93は、この角度α1、すなわち接線上を転動することになる(図36参照)。角度α2は、角度α1より小さく設定されている。第2の立上げ傾斜面92c2の角度α2が第1の立上げ傾斜面の角度α1より小さく設定されるので、第1、第3の立上げ傾斜面92c1、92c3間に段差が生じ易くなるので、第2の傾斜面92c2はこれらの傾斜面間をスムーズ、すなわち段差を生じさせることなく連結させる繋ぎ面となっている。この繋ぎ面には、所定のRが付されたものとなっている。角度α1、α2は、弁口の直径と調圧ボール径との関係で設定されるが、この実施形態では、角度α1は17°〜18°、角度α2は8°になっている。角度α1は、接線角度となっている。
この弁座92は、カバー体91cで覆われるが、このカバー体の開口911方向におねばを逃がす逃がし溝9211、9212が形成される。この逃がし溝9211、9212は、弁口921付近におねばが溜まると圧力弁の閉塞が不十分となって、圧力漏れが生じるのを防止する機能を果たしている。この逃がし溝9211、9212は、所定形状、例えば凹状溝で形成されている。この凹状溝は、カバー体開口に向けて設けられる。他の方向、例えばカバー壁に向けるとおねばがその間に溜まり逃がすことができない。ところが、この逃がし溝を設ける転動面は、また、調圧ボール93の転動面となるので、この転動面を避けた箇所に設けるのが好ましい。この実施形態では、所定幅長の転動面を設定し、その両端部に逃がし溝を形成する。
図36、図37を参照して、調圧ボールによる弁口の閉塞作用を説明する。
弁口921は、調圧ボール93の自重で閉塞されている状態において、この調圧ボールがf1の押力で押されると、調圧ボールがその自重に抗して第1の立上げ傾斜面に沿って押上げられる。すなわち、調圧ボールは所定の自重をもっているので、このボールが押上げられると、一方で転げ落ちようとする力f2が働く。調圧ボールは、この力f1、f2との関係で上昇及び降下される。すなわち、f1、f2との関係で、f1>f2となると調圧ボールが傾斜面を登り、弁口が開口し、f1が小さくなると、逆に、転がり落ち弁口が閉塞される。したがって、調圧ボールは、接線をなす第1の立上げ傾斜面に沿って、すなわちf1とf2とが均衡(バランス)を保ちながら、f1が大きくなると登り、小さくなると逆に転げ落ちるので、調圧ボールはぶれることなく転動される。この転動は、第1の傾斜面の角度を接線角度にすることによって達成される。この接線角度より小さくすると、小さい押し力で、調圧ボールの転動が始まり、一方、f2が小さくなるので戻り難くなる。そうすると、調圧ボールは弁口の周りをスピンするように回り出して、弁口を塞ぐことができなくなり、圧力漏れが発生する。特に、水のみであるときは、問題なく閉塞されるが、おねばであると、上記のスピン回転が生じる。角度α1を接線角度より大きくすると、調圧ボールは、弁口の周縁から外れた箇所で閉塞するので、弁口の閉塞が不完全になる。また、第1〜第3の傾斜面の角度を全て第1の傾斜面の角度α1にしてしまうと、調圧ボールをf1の力で押上げなければならないので、調圧ボールを押動するスプリングSpを大きく、押動する力の強いものにしなければならず、第3の傾斜面の角度α2を小さくすることによって、このスプリングを小さくできる。
調圧ボール93は、弁開放機構94によって作動されるので、この弁開放機構を大型化することなく少ないエネルギーで作動させることが可能になる。すなわち、圧力弁91は、開状態では、電磁コイルが励磁されてプランジャ96がスプリングSpの伸張力に抗して引っ込められて弁口を開き、また、閉状態では電磁コイルへの通電が停止されて、スプリングSpの伸張力により、プランジャ96が突出して調圧ボール93を押動して圧力弁91を開放する。この炊飯器においては鍋の大型化に伴い、内圧調整装置90Aも大型化しなければならない。内圧調整装置90Aの大型化は、弁口の大口径及びこの大口径を塞ぐボールの大型化並びに、この大型の調圧ボールを移動させるためにスプリングSpの大型、ソレノイド及びプランジャの大型化が必須になる。これらを大型化すると、重量が増大し蓋体が重くなり、発熱量も多く、周囲が高温になる。しかしながら、圧力弁を上記の構成にすることにより、これらの問題を低減できる。
この構成により、調圧ボール93は、弁座92の載置面の凹み穴に嵌り込み、弁口921を調圧ボール93の自重で閉塞し、この閉塞状態は凹み部の凹み湾曲が調圧ボール93の形状が略同じになっているので、安定した状態で凹み部に嵌り込まれる。この調圧ボール93は、弁開放機構94によって、弁口が開放させるようにスライド移動されるが、この調圧ボール93をスライド移動させる力がなくなると、調圧ボール93は、その自重により凹み穴の形状に沿って転がり落ちて、再び弁口を閉塞するようになる。
両圧力弁91の関係を説明する。両圧力弁91は、調圧ボール93の重さが同じで弁口921の口径が異なっている。すなわち、両圧力弁91の口径は、一方の口径をφ1、他方の口径をφ2とすると、これらの関係はφ1>φ2に設定されている。
圧力弁91の口径と調圧ボール93の重さとの関係は、鍋3内の内圧を所定値に維持乃至保持する、いわゆる閉塞保持力を決定するのに重要な要素となっている。例えば、調圧ボール93の重さを同じにして圧力弁91の口径を異ならせると閉塞保持力が変わる。すなわち、圧力弁91の口径を大きくすると、閉塞保持力が低くなり、反対に圧力弁91の口径を小さくすると、閉塞保持力が高くなる。また、圧力弁91の口径を同じにして、調圧ボール93の重さを軽くすると、閉塞保持力が低くなり、反対に調圧ボール93の重さを重くすると閉塞保持力が高くなる。
この関係から、一対の圧力弁91の各口径φ1、φ2は、φ1>φ2となっているので、両圧力弁91の各閉塞保持力は、一方の圧力弁91の閉塞保持力が後者の閉塞保持力より低くなる。この実施形態では、一方の圧力弁91の閉塞保持力を1.2気圧、他方の圧力弁91を1.3気圧に設定されている。これらの閉塞保持力は、調圧ボール93の重さを例えば113g、一方の口径φ1を例えば9.2mm、他方の口径φ2を例えば7.0〜8.0mmにすることによって設定できる。なお、圧力弁91の1.3気圧は、安全弁SVの開放圧力より低く設定されている。
両圧力弁91の閉塞保持力が、これらの値に設定されると、鍋3内は低い閉塞保持力の圧力弁91により1.2気圧に維持される。このとき、他方の圧力弁91は、その閉塞保持力が低い閉塞保持力の圧力弁91より高くなっているので、何ら影響を及ぼされることなく1.2気圧を維持している。この状態において、鍋3内の内圧が1.2気圧を超えて異常上昇すると、通常は低い閉塞保持力が設定されている圧力弁91が開放されて、この異常上昇が回避される。また、何らかの原因、例えば故障などで開放されない場合にも、異常上昇圧力が他の圧力弁91の閉塞保持力1.3気圧を超えると開放され、安全弁としての機能を果たすことになる。なお、両圧力弁91が開放されないときは、安全弁SVが作動することになる。
また、両圧力弁91は、炊飯中に、低い閉塞保持力以下、すなわち、1.2気圧以下の内圧で略同じタイミングで強制的に1回乃至複数回に亘って開放及び閉塞制御される。開放及び閉塞制御において、閉塞時には、一方の圧力弁91の閉塞保持力が他方の圧力弁91のそれより高く設定されているので、鍋3内の内圧は一方の圧力弁91に設定された閉塞保持力1.2気圧に確実に維持される。この内圧維持は、両圧力弁91のそれぞれの閉塞保持力に高低差を設けることによって達成される。例えば、両圧力弁91の各閉塞保持力に高低差がなく同じであると、両圧力弁91が開放された後に同時に閉塞されたときに、両圧力弁91のうち、一方の圧力弁91の閉塞が不完全になってしまうと、この圧力弁91から圧力漏れが発生して、鍋3内の圧力を所定の1.2気圧に維持できなくなり、所定の圧力炊飯ができなくなる。このような不完全閉塞は、何れか一方の圧力弁91の弁口921に、被炊飯物の一部、例えば旨み成分のおねばなどが挟まったとき、或いは、両圧力弁91が同じ仕様で製造されていても、その製造誤差があればそれによっても発生することがある。
そこで、このような不完全閉塞を無くして、所定の圧力炊飯をするために、両圧力弁91に、それぞれの閉塞保持力に高低差を設けたものを使用し、低い閉塞保持力の圧力弁91が閉塞されれば、高い閉塞保持力の圧力弁91が確実に閉塞するようにしてある。
この実施形態では、両圧力弁のうち、一方の圧力弁の閉塞保持力は1.2気圧、他方の圧力弁のそれを1.3気圧にしたが、これは、両圧力弁の閉塞保持力の高低差が、0.1気圧以上あれば、上記の圧力漏れを回避できることが確認されているためであり、この閉塞保持力の高低差は0.3気圧以上、すなわち他方の圧力弁のそれを1.5気圧以上とすることが、上記圧力漏れの回避をより確実とするため、より好ましい。また、内圧調整装置を2組配設したが、それ以上設けてもよく、その場合、3個以上の圧力弁は、その一つの圧力弁が所定の閉塞保持力、すなわち最低の閉塞保持力に設定されると、残りの圧力弁は、この最低の閉塞保持力より、高い閉塞保持力に設定すればよく、この場合、特に残りの圧力弁に高低差を設けてもよいし、設けなくともよい。しかしながら、安全弁が設けられている場合は、この安全弁より低い開放圧力に設定されていなければならない。勿論、圧力弁を3個以上設けることによって、さらに安全性が向上することになる。また、この実施形態では、調圧ボールの重さを同じにして圧力弁の口径を変更したが、圧力弁の各口径φ1、φ2を同じにして、調圧ボールの重さを変更しても、作用は同じになる。
一対の圧力弁91は、それぞれ弁開放機構94によって、開放及び閉塞される。これらの弁開放機構94は、上蓋5Bに装着されており、両弁開放機構94は同じ構成になっている。
図8、図34を参照して、一方の弁開放機構を説明する。この弁開放機構94は、電磁コイルが巻回されたシリンダ95と、電磁コイルの励磁により調圧ボール93を移動させるプランジャ96と、このプランジャの先端に装着されたスプリングSp及び押動棒98とで構成されている。スプリングSpは伸張コイルバネとなっている。押動棒98は、弾力性を有するシール部材で支持されている。弁開放機構94によって圧力弁91が開放制御される。すなわち、通常の状態では、スプリングSpの伸張により、プランジャ96が突出して調圧ボール93を押動して圧力弁91の弁口921を開放させている。制御装置C(図41参照)からの指令に基づいて電磁コイルが励磁されると、プランジャ96がスプリングSpの伸張力に抗してシリンダ95内へ引き込まれて、これまで押動棒98で調圧ボール93を押動していた押動力がなくなり、調圧ボール93が横へスライド移動して、調圧ボール93の自重により弁口921が閉塞される。また、この閉塞状態において、電磁コイルへの励磁がストップされると、再びスプリングSpの伸張力によって、プランジャ96が突出して調圧ボール93を押動して弁口921を開放させる。他方の弁開放機構94も同様に圧力弁91を開放制御する。この制御は、制御装置Cからの指令により行われる。
また、内圧調整装置90A、90Bのうち、ヒンジ機構54側の内圧調整装置90Bは、蓋体5が上方へ持上げられると、調圧ボール93が弁口921から転がって中筒体60に装着されたシールパッキン99に衝突する。このシールパッキン99には、弁開放機構94のシリンダ95に連結された押動棒98が固定され、このシールパッキン99の中央部が調圧ボール93側へ突出している。この状態において、蓋体5の開閉が繰り返されると、この開閉毎に調圧ボール93がシールパッキン99の突起部に衝突するので、この衝突により、シールパッキン99が破損して、この破損箇所から蒸気が漏れて内圧調整装置を構成する部品及びその他部品の故障の原因となる。そこで、この不都合を解消するために、蓋体5が上方へ持上げられたとき、シールパッキン99の突起部が調圧ボール93から離す引込め機構53が設けられている(図15参照)。この引込め機構53は、ヒンジ機構54側の内圧調整装置90Bとヒンジ機構54とを連結するアームバーとなっている。このアームバーは、一端が内圧調整装置90Bのシリンダ95の後端(前端は押動棒98に結合されている)に結合され、他端がカム部材53aを介してヒンジ回転軸58に結合されている。カム部材53aは、蓋体5が上方へ持上げらときに、ヒンジ機構54に連動してアームバーを牽引、すなわち、シールパッキン99を引っ込める働きをするものとなっている。
以上、2組の内圧調整装置を説明したが、この内圧調整装置の圧力弁は、弁口を閉塞し圧力漏れを防止する閉塞弁、沸騰維持工程で間歇的に開放させて鍋内の内圧を急峻に低減させて鍋内に突沸現象を起し被炊飯物を攪拌する攪拌弁、及び鍋内の圧力が異常上昇したときに開放しこの圧力の異常上昇を回避する安全弁としての3つの機能を備えたものとなっている。さらに、内圧調整装置が3個以上になれば、安全性が向上することになる。
貯留タンク100は、2組の内圧調整装置90A、90Bに共通なものとなっている。この貯留タンク100は、図8に示すように、中筒体60の中空孔に嵌入する筒状部100a及び内部におねばを一時貯留する所定大きさの空室100dを有する容器からなり、合成樹脂の成型体で形成されている。この貯留タンク100は、内部に一対の圧力弁91を介して放出される蒸気などを吐出させる吐出筒100cと、うまみ成分のおねばの一部を一時貯留する空室100dと、蒸気を外部へ放出する蒸気放出口1001(図5参照)を有し、空室100dの底部には、貯留されたおねばを鍋3内に戻す戻し弁100bが設けられている。このうまみ成分であるおねばは、各圧力弁91から蒸気が噴出する際に、この蒸気と一緒に鍋3内から各圧力弁91を通して導出されて、この貯留タンク100の空室100dに一時貯留される。この空室100dに貯留されたおねばは、所定量になると戻し弁100bが開いて鍋3内へ戻される。この貯留タンク100は、筒状部100aが中筒体60の中空孔に嵌入される。
内蓋5Aは、図6に示すように、大型の鍋3の開口3aを塞ぐ大きさを有する円盤状の板状体からなり、その上部の表面、すなわち外蓋側に一対の圧力弁91が設けられている。この内蓋5Aには、また、その上部表面に蓋ヒータH3、その外周囲に鍋3の開口3aに当接される鍋パッキン、この内蓋5Aの外周囲には外方へ突出して上蓋5Bの固定手段に着脱自在に係止される係止部材(図示省略)などが設けられている。鍋パッキンは、耐久性、耐熱性に優れているシリコンゴムからなり、円環状の取付け枠で固定されている。さらに、この内蓋5Aには、鍋3内の圧力が異常圧力に上昇したときに鍋3内の圧力を外部に逃がすための安全弁SVが設けられている。この安全弁は、所定の開放圧力で開放されるようになっている。
蓋体ロック機構70は、図11に示すように、蓋体5を本体容器2にロックする蓋ロック機構71と、蓋体5を鍋3にロックする鍋ロック機構87とを備え、2重のロック機構となっているので、炊飯中に蓋体が不用意に開放されることがなく安全性が向上する。すなわち、本体容器2内に鍋3が収容されて、該鍋3が鍋ロック機構87でロックされると、蓋ロック機構71の開放操作が無効になる。すなわち鍋ロック機構87でロックされている間は、蓋ロック機構71が開放操作されても、蓋体5が開放されないようなっている。
この蓋体ロック機構70は、蓋ロック機構71及び鍋ロック機構87で容器本体および鍋をロックするが、鍋ロック機構87でのロックを忘れて、蓋ロック機構71だけのロックで炊飯が開始されると危険であるため、鍋ロック機構87で完全にロックされた後でなければ炊飯が開始されない安全装置が設けられている。この安全装置は、3方向での係止状態を検知する第1の検知スイッチと、ロック操作レバー68の回動を検知する第2の検知スイッチとを設け、これらの検知スイッチからの信号が全て基準を満たしたときに炊飯が開始されるようになっている。
図41〜図43を参照して、制御装置及びこの制御装置による炊飯を説明する。なお、図41は制御装置を構成するブロック図、図42は炊飯工程を示すフローチャート、図43は炊飯工中における鍋内の温度及び圧力の変化を示した温度及び圧力曲線図である。
制御装置Cは、図41に示すように、CPU、ROM、RAMなどが搭載された回路基板からなるハードウェア、炊飯量判定手段などを備え、スタートキー、メニューキー、予約キー、鍋底温度センサーS1、蒸気温度センサーS2などにそれぞれ接続されて、これらの釦及びセンサーの信号がCPUに入力されるようになっている。また、CPUには、弁開閉タイマー及びROM、RAMが接続されている。さらに、出力部(ドライバ)には、側面ヒータH2、底面ヒータH1、蓋ヒータH3、内圧調整装置90A、90B、表示パネル30b及び送風機FANなどが接続されている。ROMには、炊飯メニューごとの炊飯プログラムが記憶されている。この炊飯プログラムは、図42に示すように、白米・ふつうコース、玄米・ふつうコース、白米・すしめしコースなどである。
以下、図42、図43を参照して、この制御装置Cにより「白米・ふつうコース」が選択されたときの炊飯を説明する。
鍋3内に所定量の白米を入れた後に、所定量の水を入れて、内ケース4内にセットして蓋体5を閉める。次いで、スタートキーを押して、表示パネル30bに初期画面を表示させて、「白米・ふつうコース」を選択する(S101〜S103)。これにより、制御装置Cは図42の吸水工程I(S104)を実行する。
この吸水工程Iでは、底面ヒータH1への通電が所定時間間隔でオン・オフされて、鍋3内の温度を所定温度A1にして所定時間tを掛けて所定量の水を被炊飯物に吸水させる。なお、この吸水工程Iでは、内圧調整装置90A、90Bの各圧力弁91が開放されている。所定時間経過後に、立上加熱工程II(S105)へ移行する。
この立上加熱工程IIでは、制御装置Cは、2組の内圧調整装置90A、90Bの各弁開放機構94により各圧力弁91を閉塞させるとともに、底面ヒータH1などへの通電率をアップしてフルパワーで鍋3を加熱し、被炊飯物を沸騰温度A2まで昇温加熱する。この立上加熱工程IIでは、鍋3内の圧力が大気圧から例えば1.2気圧まで昇圧させる。このとき制御装置Cは、鍋底温度センサーS1からの検出値に基づいて、炊飯量判定手段により、鍋内の炊飯量を判定する。立上加熱工程IIでは、昇圧加熱により鍋3内が沸騰し、次の沸騰維持工程III(S106)へ移行する。
この沸騰維持工程IIIでは、制御装置Cは、底面ヒータH1への通電を所定時間間隔で行って沸騰状態を維持し、一方、炊飯量判定手段での判定に基づいて、炊飯量が多い、例えば最大炊飯量又はこれより若干少ないときは、閉塞状態にある両圧力弁91を同時に1回乃至複数回に亘って間歇的に開放させる。また、炊飯量が少ないときには、両圧力弁91を同時に開放してしまうと、鍋3内の突沸現象が最大炊飯量のときに比べて激しくなり、米粒を損傷してしまうことがあるので、何れか一方の圧力弁91を開放させて調整する。これらの圧力弁91の開放により、鍋3内の圧力は、1.2気圧から略大気圧近傍まで一気に低下される。この圧力変化により、鍋3内が激しく沸騰、いわゆる突沸現象が発生する。この突沸現象を利用して鍋3内の米が攪拌される。特に、沸騰維持工程IIIの初期段階に両圧力弁91の開放が行われると、この段階では鍋内の水が多いので米が効率よく攪拌される。なお、この沸騰維持工程IIIでは、両圧力弁91が所定時間間隔で開放及び閉塞されるが、閉塞時には、一方の圧力弁91の閉塞保持力が他方の圧力弁91のそれより高く設定されているので、鍋3内の内圧は一方の圧力弁91に設定された閉塞保持力1.2気圧に確実に維持される。また、鍋3内の圧力が異常上昇しても他方の圧力弁91が開放するので、安全性が確保される。この沸騰維持工程IIIは、所定時間掛けて実行され、この沸騰維持工程IIIの後半になると、鍋3内の水分が少なくなり鍋3内の温度が上昇する。この沸騰維持工程IIIが終了すると蒸らし工程へと移行する。この蒸らし工程では、蒸らし工程1、追炊き工程及び蒸らし工程2が実行される(S107〜S109)。
以上、白米・ふつうコースを選択した炊飯を説明したが、他のコースも略同じようにして炊飯する。特に、玄米や発芽玄米コースを選択したときは、両圧力弁91を同時に開放させると突沸現象により玄米の米皮を取ることができる。
この実施形態では、蓋体ロック機構は、蓋ロック機構及び鍋ロック機構で構成したが、蓋ロック機構を省き、鍋ロック機構を一部変更して、この変更した鍋ロック機構と蓋ロック機構を兼用するようにしてもよい。この鍋ロック機構の変更は、新たに本体容器に係止する係止爪を設け、この係止爪をロック操作レバーで他の係止爪(鍋に係止する)と、所定のタイミング、すなわち同時又は段階的に作動されるようにする。これにより、蓋体ロック機構は、1つのロック機構で本体容器及び鍋にロックできるので、部品点数が減り、操作性がよくなり、しかもデザイン性が向上する。
本発明の実施形態に係る蓋体ロック機構は、蓋ロック機構及び鍋ロック機構を機械的な機構で構成したが、これらの機構に電気的制御の安全制御装置を付設することにより、より安全性を高めるようになっている。
以下、図44を参照して、安全制御装置を説明する。なお、図44は安全制御装置の制御ブロック図である。
安全制御装置は、蓋ロック機構及び鍋ロック機構に設けたセンサーからの検知信号を入力して、蓋体5を電気的にロック制御するものとなっている。
蓋体5には、この蓋体で本体容器が覆われたことを検知する蓋センサー、ロック操作レバーには、この操作レバーの開閉、すなわち、ロック操作レバーは、炊飯時に所定角度回転させるが、この回転した状態を検知するレバーセンサーがロック操作レバーの回転経路に、また、鍋ロック機構の3個のホールド機構には、これらの機構が作動されたことを検知するフックセンサーが配設されている。炊飯スイッチは、レバーセンサー、第1〜第3のフックセンサーからの検知信号が全て入力されたときに、炊飯スイッチが電気的にオンされる。
図45〜図51を参照して、鍋ロック機構及び蓋ロック機構の変形例を説明する。なお、図45は変形例の鍋ロック機構及び蓋ロック機構を備えた蓋体の平面図、図46は図45の蓋体の一部を拡大した拡大斜視図、図47は図45の蓋体の蓋枠組体の斜視図、図48は図45の一部を切断した断面図、図49は図45のアームバーの斜視図、図50は図45の蓋ロック機構の分解斜視図である。図51は変形例における安全制御装置のブロック図である
上記炊飯器1は、大型の鍋に大量の炊飯物を入れ、鍋内を大気圧以上に昇圧すると共に、炊飯中に突沸現象を発生させ、この突沸現象を利用して鍋内の炊飯物を攪拌して炊飯するので、使用を誤ると沸騰した炊飯物が外部へ飛散して危険な状態になる恐れがある。そのために、この炊飯器では、二重三重の安全装置が設けてあるが、それでも使用形態によっては、メーカーが予期しない使用および操作が行われることがある。その例として、炊飯器は炊飯中に蓋体を開放してはならないのが常識となっているが、それでも、誤って蓋体の開放操作が行われることがある。そこで、この炊飯器では、炊飯中にロック操作レバーが操作されてもロック状態が維持されて移動できないようになっている。このロック状態が維持された場合でも、ユーザーが故障を疑い、誤ってロック操作レバーを操作し開放を試みることがある。このような操作がなされると、ロック操作レバーとホールド爪との間に存在する円盤状カム板及びアームバーなどの伝達機構に異常な力が掛かり、伝達機構を構成する部品を損傷及び破損させてしまう恐れがある。そこで、この蓋体5Dは、このような操作がなされたときにロック操作レバーの回転力がホールド爪に伝達されず、途中でこの回転力を吸収する機構を3箇所のホールド機構88A'〜88C'に設けられている。また、この蓋体5Dを設けた炊飯器は、蓋ロック機構の構成が簡素化されている。
鍋ロック機構87'は、3箇所のホールド機構88A'〜88C'を有している。こられの機構88A'〜88C'は、上記のホールド機構88A〜88Cのアームバー65の形状変更及びこのアームバーと装着軸との間にバネ体を設けたものとなっている。以下、両ホールド機構の共通する構成には同じ符号を付して重複説明を省略し、異なる構成を説明する。また、3箇所のホールド機構88A'〜88C'は、同じ構成を有しているので、その一つのホールド機構88A'を説明する。
ホールド機構88A'は、図45、図46に示すように、アームバー65Aと、伸張自在なバネ体Sとを有している。アームバー65Aは、図49に示すように、伸張バネ体Sを装着する装着部65sと、このアームバーを長手方向へ移動可能にする長孔6521とが設けられている。長孔6521は、第2の連結部65bを構成する一対の連結片65b1にそれぞれ形成されている。これらの長孔6521には、装着軸89bが挿通される。この長孔6521はガイド孔となっている。装着部65sは、アームバー65Aの平坦部の一端を所定高さ切り起した切り起し片65dと、この切り起し片65dに設けたバネ装着孔65d1とで構成されている。装着軸89bと切起し片65dとの間には、アームバー65Aをその長手方向の外方へ移動させておく伸張バネ体Sを懸架する。この伸張バネ体Sの懸架により、回転軸89bは長孔6521の内側、すなわち、円盤状カム板63側へ移動されている。アームバー65Aの長孔6521と、伸張バネ体Sとで、吸収機構を構成している。
この吸収機構により、鍋のフランジ部3dがホールド爪88b、88b'でホールドされている状態でロック操作レバー68が回転されても、このロック操作レバーが回転されるだけで、ホールド爪が解除されない。すなわち、ロック操作レバー68が回転されると、円盤状カム板63が所定角度回転され、アームバー65Aが円盤状カム板63方向へ引かれるが、長孔6521に挿通されている装着軸89bがアームバーのガイド孔内のみ移動するとともに、伸張バネ体Sが伸びることにより、ホールド爪88b、88b'へ伝達されない。すなわち、ホールド爪88b、88b'のホールド状態を解除させる解除力が働かない。これにより、誤操作されても、鍋ロック機構のロックが解除されることがない。勿論、このロック操作レバーの操作は誤操作なので、予定された加圧プロセスを経ず炊飯を継続する、警報装置が作動しアラーム信号が発せられる、又は炊飯を停止する等の外部への伝達及び炊飯プロセス変更の処置が取られる(図51参照)。なお、図51に示す吸収機構を用いた変形例の安全制御装置のブロック図は、図44に示す安全制御装置のブロック図にくらべ簡素化されているのがわかる。
伸張バネ体Sの役割について説明すると、鍋のフランジ部3dとホールド爪88b、88b'とは、鍋の内圧が上昇するとこの圧力により蓋体が持ち上がり、鍋のフランジ部3dとホールド爪88b、88b'との隙間がなくなり完全に係止された状態となる。この状態になると、鍋のフランジ部3dとホールド爪88b、88b'との間には鍋の内圧に比例して大きな力が発生するため、伸張バネ体Sの伸縮力ではアームバー65Aが引き戻されホールド爪88b、88b'が解除されることはない。このとき、伸張バネ体Sは鍋の内圧が高い状態、例えば1.05気圧以上あるような場合はホールド爪が解除できないような強さに設定されている。そして、鍋の内圧が安全な状態、例えば大気圧程度に低下したとき、はじめてホールド爪が解除されるような強さに伸張バネ体Sが設定されている。
なお、上記では3箇所のホールド機構88A'〜88C'は同じ構成をしており伸張バネ体Sも同じ構成をしている場合を説明したが、これに限らず、ホールド機構88A'〜88C'の3箇所の伸張バネ体Sのバネの強さをそれぞれ異なるものとしてもよい。一例としてはホールド機構88B'及び88C'における左右の2箇所のバネ体の強さを鍋内の圧力が例えば1.03気圧以下となったときホールド爪88b、88b'が解除されるように設定し、同様にホールド機構88A'における前方の1箇所のバネ体の強さを鍋内の圧力が例えば1.02気圧以下となったときホールド爪88b、88b'が解除されるように設定することができる。このようにすることで、圧力がより低い状態にならないとホールド機構88A'における前側のホールド爪88b、88b'と連動されたロックレバー鎖錠機構711Bの鎖錠部材80が蓋ロック・解除機構711Aのストッパー片72dに衝突することで解除釦72a(図50参照)を押すことができなくなる。そのため、ロックレバー誤操作時に生じてしまうハンドルボタンを押すという可能性に対して、蓋ロック・解除機構711Aへ荷重負荷を低減することができ、装置の耐久性を増すことが可能となる。また例えば、各ホールド爪は、設定した圧力以下となったときはじめて鍋のフランジ部3dから解除されるようになるので、安全な圧力以下になるまでは、すべてのホールド爪が外れてしまうことがなくなり、より高い安全性を得ることができる。なお、バネ体の強さの設定は使用される炊飯器の大きさ等により適宜変更することができる。
蓋ロック機構711(図6参照)は、図45〜図50に示すように、フレームカバー24にロック及びこのロックの解除ができる蓋ロック・解除機構711Aを有し、鍋ロック機構87のロック操作レバー68の回動を鎖錠するロックレバー鎖錠機構711Bを有している。
蓋ロック・解除機構711Aは、上記蓋ロック・解除機構71Aから鎖錠枠体73及びこの鎖錠枠体を移動させる機構、例えばリンクレバー75などを省いて簡略にした構成となっている。すなわち、この蓋ロック・解除機構711Aは、図50に示すように、揺動枠体72Aにストッパー片72dを設けた構成となっている。他の構成、すなわち、解除釦72a及び係止枠体77などは同じで、ストッパー片72dは解除釦72aと中間部72cとの間に設けられている。この蓋ロック・解除機構711Aは、揺動枠体72Aが上蓋5Bに固定されて、本体容器とのロックは上記蓋ロック・解除機構71Aと同じになっている。また、蓋ロック・解除機構711Aの係止枠体77がフレームカバー24に係止されている状態では、ストッパー片72dがロックレバー鎖錠機構711Bの鎖錠部材80の折曲部81c'に衝突し、解除釦72aの操作が無効になる。そのため、蓋ロック・解除機構が誤操作により解除されるのを抑制することができる。