以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、本発明の一実施形態によるバルブタイミング調整装置1は、車両の内燃機関に搭載される。装置1は、作動液である作動油の圧力を利用することで、内燃機関のバルブタイミングを調整する。装置1は、内燃機関においてクランク軸(図示しない)からのクランクトルクの伝達によりカム軸2が開閉する動弁のバルブタイミングとして、吸気弁のバルブタイミングを調整する。装置1は、回転機構系10及び制御系40等から構成されている。
(回転機構系)
まず、図1,2に示す回転機構系10の構成を説明する。回転機構系10は、クランクトルクをクランク軸からカム軸2へと伝達する伝達経路に、設置される。回転機構系10は、ハウジングロータ11及びベーンロータ14を備えている。
金属製のハウジングロータ11は、シューハウジング12の軸方向両端部にリアプレート13及びフロントプレート15を締結してなる。シューハウジング12は、ハウジング本体120、複数のシュー121,122,123及びスプロケット124を有している。円筒状のハウジング本体120は、水平面上の車両においては水平方向(図1の左右方向)に軸合わせして配置される。略扇形状の各シュー121,122,123は、ハウジング本体120において回転方向に互いに間隔をあけた箇所から、それぞれ径方向内側へと突出している。回転方向に隣り合うシュー121,122,123同士の間には、それぞれ収容室20が形成されている。スプロケット124は、タイミングチェーン(図示しない)を介してクランク軸と連繋する。かかる連繋により内燃機関の回転中は、クランクトルクがクランク軸からスプロケット124へと伝達されることで、ハウジングロータ11がクランク軸と連動して一定方向(図2の時計方向)に回転する。
金属製のベーンロータ14は、ハウジングロータ11内に同軸上に収容され、軸方向両端部にてリアプレート13及びフロントプレート15と摺接する。ベーンロータ14は、回転軸140及び複数のベーン141,142,143を有している。円筒状の回転軸140は、水平面上の車両においては水平方向(図1の左右方向)に軸合わせして配置され、カム軸2に対して同軸上に固定される。かかる固定によりベーンロータ14は、カム軸2と連動してハウジングロータ11と同一方向(図2の時計方向)に回転可能しつつ、ハウジングロータ11に対して相対回転可能となっている。
本実施形態の回転軸140は、軸本体140aの軸方向両側にそれぞれ、ボス140b及びブッシュ140cを同軸上に締結してなる。ボス140bは、円環状のリアプレート13を貫通する中心孔を通じて、カム軸2に当接している。ブッシュ140cは、円環状のフロントプレート15を貫通する中心孔を通じて、ハウジングロータ11外へと突出している。
図2に示すように略扇形状の各ベーン141,142,143は、軸本体140aにおいて回転方向に互いに間隔をあけた箇所から、それぞれ径方向外側へと突出している。各ベーン141,142,143はそれぞれ、対応する収容室20に収容されて、当該対応収容室20を回転方向の両側に分割している。かかる分割により各ベーン141,142,143は、ハウジングロータ11内において作動油の入出する進角室22,23,24及び遅角室26,27,28を、回転方向に区画している。具体的に、シュー121及びベーン141の間には進角室22が形成され、シュー122及びベーン142の間には進角室23が形成され、シュー123及びベーン143の間には進角室24が形成されている。一方、シュー122及びベーン141の間には遅角室26が形成され、シュー123及びベーン142の間には遅角室27が形成され、シュー121及びベーン143の間には遅角室28が形成されている。
図1,2に示すようにベーン141は、ハウジングロータ11に対するベーンロータ14の回転位相を所定のロック位相にロックするためにロック部材16を、リアプレート13のロック孔130へ嵌合可能に収容している。それと共にベーン141は、ロック部材16をロック孔130から離脱させて回転位相のロックを解除するために、作動油が導入されるロック解除室17を、形成している。
以上の構成により回転機構系10では、ロック部材16による回転位相のロック解除下、進角室22,23,24への作動油導入且つ遅角室26,27,28からの作動油排出により、回転位相は進角方向へと変化する。その結果としてバルブタイミングは、進角調整される。一方、回転位相のロック解除下、遅角室26,27,28への作動油導入且つ進角室22,23,24からの作動油排出により、回転位相は遅角方向へと変化する。その結果としてバルブタイミングは、遅角調整される。さらに、回転位相のロック解除下、進角室22,23,24及び遅角室26,27,28に対する作動油の入出が規制されることで、それら進角室22,23,24及び遅角室26,27,28のいずれにも作動油が閉込められる。このとき回転位相は、作動油によっては変化せず、その結果としてバルブタイミングは、実質保持される。
こうしたバルブタイミング調整において回転機構系10により実現可能な回転位相のうち、内燃機関の始動時に規制する規制位相領域として本実施形態では、最遅角位相及び最進角位相の間の所定位相から最進角位相に至るまでの領域が設定されている。また特に本実施形態では、規制位相領域の中でも特に最適な始動性を確保するための中間位相として、ロック部材16によりロックが実現されるときの回転位相、即ちロック位相が設定されている。こうした設定によれば、内燃機関の始動時に、気筒への吸入空気量が吸気弁の閉弁遅延により過度に減少する事態を抑制して、内燃機関の始動を許容することができる。
(制御系)
次に、図1,2に示す制御系40の構成を説明する。制御系40は、回転機構系10を駆動するために、作動油の入出を制御する。制御系40は、進角主通路41、進角分岐通路42,43,44、遅角主通路45、遅角分岐通路46,47,48、ロック解除通路49、主供給通路50、副供給通路52、ドレン回収通路54、制御弁60及び制御回路96を備えている。
進角主通路41は、回転軸140の内周部に沿って形成されている。進角分岐通路42,43,44は、回転軸140を貫通することで、それぞれ対応する進角室22,23,24及び共通の進角主通路41と連通している。遅角主通路45は、回転軸140の内周部に沿って形成されている。遅角分岐通路46,47,48は、回転軸140を貫通することで、それぞれ対応する遅角室26,27,28及び共通の遅角主通路45と連通している。ロック解除通路49は、回転軸140を貫通することで、ロック解除室17と連通している。
主供給通路50は、回転軸140を貫通することで、供給源としてのポンプ4に搬送通路3を介して連通している。ここで、内燃機関に設けられるポンプ4は、クランクトルクを受けて駆動されるメカポンプである。かかるポンプ4は、クランクトルクの発生する内燃機関の回転中は、ドレン回収系としてのドレンパン5から吸入した作動油、を継続して搬送通路3へと吐出供給する。また、搬送通路3は、カム軸2及びそれを支持する軸受(図示しない)等を貫通して形成され、ポンプ4から供給される作動油を主供給通路50へと搬送する。
副供給通路52は、回転軸140を貫通することで、主供給通路50から分岐している。副供給通路52は、ポンプ4からの供給作動油を、主供給通路50を通じて受ける。副供給通路52の中途部と、主供給通路50において当該副供給通路52の分岐部よりもポンプ4側の中途部とには、それぞれリード式の逆止弁(リード弁)520,500が設けられている(図4も参照)。ここで副逆止弁520は、副供給通路52において作動油が主供給通路50側に逆流するのを防止し、また主逆止弁500は、主供給通路50において作動油がポンプ4側に逆流するのを防止する。
図1に示すようにドレン回収通路54は、回転機構系10及びカム軸2の外部に形成されている。ドレン回収通路54は、大気に開放されるドレンパン5へと向かって、作動油を排出可能となっている。
制御弁60は、駆動源90への通電により発生する駆動力と、付勢調整構造94により発生する弾性復原力とを利用することで、図1,2に示すスリーブ66内のスプール70を往復移動させるスプール弁である。制御弁60は、進角ポート661、遅角ポート662、ロック解除ポート663、主供給ポート664、副供給ポート665及びドレンポート666を有している。進角ポート661は進角主通路41と連通し、遅角ポート662は遅角主通路45と連通し、ロック解除ポート663はロック解除通路49と連通している。また、主供給ポート664は主供給通路50と連通し、副供給ポート665は副供給通路52と連通し、一対のドレンポート666はドレン回収通路54と連通している。制御弁60は、スプール70の移動に応じて、これらポート661,662,663,664,665,666間の接続状態を切替える。かかる切替えにより制御弁60は、進角室22,23,24及び遅角室26,27,28に対する作動油の入出を、後に詳述の如く制御する。
図1に示す制御回路96は、例えばマイクロコンピュータ等を主体に構成される電子回路であり、駆動源90及び内燃機関の各種電装品(図示しない)と電気接続されている。制御回路96は、内部メモリに記憶のコンピュータプログラムに従って、駆動源90への通電を含む内燃機関の作動を、制御する。
(カムトルク)
次に、カム軸2からベーンロータ14に伝達されるカムトルクにつき、詳細に説明する。内燃機関の回転中は、吸気弁からのスプリング反力等に起因してカム軸2にカムトルクが作用し、当該カムトルクがベーンロータ14へと伝達される。図3に例示するようにカムトルクは、ハウジングロータ11に対する進角方向へ作用する負トルクと、ハウジングロータ11に対する遅角方向へ作用する正トルクとの間にて、交番変化する。本実施形態のカムトルクについては、カム軸2及びその支持軸受間のフリクション等に起因して、正トルクのピークトルクT+が負トルクのピークトルクT−よりも大きくなっており、それらの平均トルクTaveが正トルク側に偏っている。したがって、内燃機関の回転中においてベーンロータ14は、カム軸2から伝達されるカムトルクにより平均的には、ハウジングロータ11に対する遅角方向へと偏って付勢される。
(付勢構造)
次に、ベーンロータ14をロック位相へ向かって付勢するための付勢構造につき、詳細に説明する。図1に示すようにフロントプレート15には、第一係止ピン150が設けられている。第一係止ピン150は、ハウジングロータ11外へ向かってフロントプレート15から突出する円柱状に形成され、ロータ11,14に共通の回転中心線Oに対して偏心且つ実質平行に配置されている。
ブッシュ140cにおいてハウジングロータ11外へ突出した箇所には、アーム140d及び第二係止ピン140eが設けられている。アーム140dは、フロントプレート15に対して実質平行な平板状に形成されている。第二係止ピン140eは、アーム140dからフロントプレート15へ向かって突出する円柱状に形成され、回転中心線Oに対して偏心且つ実質平行に配置されている。第二係止ピン140eは、回転中心線Oから第一係止ピン150と実質同一の距離偏心し、且つ回転中心線Oに沿う方向では当該第一係止ピン150の回転軌跡上から外れるように、配置されている。
フロントプレート15及びアーム140dの間においてブッシュ140cの外周側には、アシストスプリング18が配置されている。アシストスプリング18は、実質同一平面上にて金属製の素線を巻いてなる渦巻きスプリングであり、その渦巻き中心は、回転中心線Oと心合わせされている。アシストスプリング18の内周側端部は、ブッシュ140cの外周部に巻装されることで、巻装部180を形成している。アシストスプリング18の外周側端部は、U字状に屈曲されることで、係止部181を形成している。係止部181は、第一係止ピン150及び第二係止ピン140eのうち回転位相に応じたピンにより、係止可能となっている。
以上の構成により、回転位相がロック位相よりも遅角方向へ変化しているときに係止部181は、第一係止ピン150により係止される。このとき第二係止ピン140eは、係止部181から離間するので、アシストスプリング18の復原力を受けるベーンロータ14は、進角方向のロック位相へと向かって付勢される。ここでアシストスプリング18の復原力は、遅角方向に偏ったカムトルクの平均値よりも大きくなるように、設定されている。一方、回転位相がロック位相よりも進角方向へ変化しているときに係止部181は、第二係止ピン140eにより係止される。このとき第一係止ピン150は、係止部181から離間するので、アシストスプリング18によるベーンロータ14の付勢は、制限される。
(ロック構造)
次に、回転位相をロックするためのロック構造につき、詳細に説明する。図1,2に示すようにリアプレート13は、ロック孔130と共に規制孔131を有している。規制孔131は、回転方向に沿って延伸し且つ両端部の閉塞された有底溝状に、形成されている。ロック孔130は、規制孔131の進角方向端部の底面に開口した有底円筒孔状に、形成されている(図4も参照)。
ベーン141は、円筒状のロック部材16を収容する収容孔141aを、有している。収容孔141aは、回転中心線Oに対して実質平行な軸方向にベーン141を貫通することで、当該軸方向へロック部材16を案内可能となっている。収容孔141aは、規制位相領域にて規制孔131と軸方向に対向し、また特にロック位相にてロック孔130と軸方向に対向する。収容孔141aには、ロックスプリング19がロック部材16と同軸上に収容されている。ロックスプリング19は、金属製の圧縮コイルスプリングであり、ベーン141に固定のリテーナ141bと、ロック部材16との間に介装されている。ロックスプリング19は、リテーナ141bとロック部材16との間にて圧縮弾性変形することで、復原力を発生する。この復原力を受けるロック部材16は、リアプレート13側へと付勢される。さらに、かかるロック部材16を軸方向に挟んでロックスプリング19とは反対側においては、ロック解除室17が収容孔141aにより形成されている。ロック部材16は、ロック解除室17へと導入される作動油の圧力を受けることで、ロックスプリング19の復原力に抗してリアプレート13とは反対側へ移動可能となっている。
以上の構成により、ロック部材16が規制孔131及びロック孔130の双方から離脱した状態下、ロック解除室17から作動油が排出されると、ロック部材16がリアプレート13側へと移動して、規制孔131に進入する。これにより、回転位相が規制位相領域に規制される。さらにかかる規制下、アシストスプリング18の復原力及びカムトルク等の作用により回転位相がロック位相に達すると、ロック部材16が規制孔131からリアプレート13側へと移動して、ロック孔130に嵌合する。これにより、回転位相がロック位相にロックされることで、回転位相に応じたバルブタイミングの調整は制限される。
一方、ロック部材16が規制孔131を通してロック孔130に嵌合した状態下、ロック解除室17に所定圧力以上の作動油が導入されると、ロック部材16がリアプレート13とは反対側へと移動して、それら双方の孔131,130から離脱する。これにより、回転位相の規制もロックも解除されるので、回転位相に応じたバルブタイミングの自由な調整が可能となる。
(制御弁)
次に、制御弁60の詳細構造につき、説明する。図1,4に示す制御弁60において金属製のスリーブ66は、有底円筒状に形成され、回転軸140とカム軸2と跨って同軸上に内蔵されている。かかる内蔵形態によりスリーブ66は、水平面上の車両においては水平方向(図1,4の左右方向)に軸合わせして配置されている。スリーブ66は、カム軸2に螺着固定される雄螺子状の固定部667を、底側に有している。また、スリーブ66は、カム軸2との間に回転軸140を挟持する円環鍔状のフランジ部668を、開口側に有している。スリーブ66は、一方のドレンポート666、進角ポート661、主供給ポート664、遅角ポート662、ロック解除ポート663、副供給ポート665及び他方のドレンポート666を、軸方向の開口側から底側へ向かってこの順で形成している。
制御弁60において金属製のスプール70は、有底円筒状に形成され、可動線としての回転中心線Oに垂直な径方向の外側から、スリーブ66により同軸上に摺動支持されている。かかる支持形態によりスプール70は、水平面上の車両においては水平方向(図1,4の左右方向)に軸合わせして配置されることで、回転中心線Oに沿った軸方向へ往復移動可能となっている。そこで、図4〜8に示すように本実施形態では、軸方向のうちスプール70がスリーブ66の底側へと向かう方向を、往方向Dgと定義する一方、軸方向のうちスプール70がスリーブ66の開口側へと向かう方向を、復方向Drと定義する。
図4〜9に示すようにスプール70は、軸方向に延伸する円筒孔状の連通通路705を、有している。連通通路705は、スプール70の軸方向両端部(即ち、開口側端部及び底側端部)においてそれぞれ、開口部705aを形成している。これらの開口部705aは、スプール70の移動位置に拘らず、各別のドレンポート666に対して連通可能となっている。また、開口部705aとは別に連通通路705は、図4〜8に示すスプール70の軸方向中間部において、開口部705bを形成している。この開口部705bは、遅角ポート662及びロック解除ポート663のうちスプール70の移動位置に応じた少なくとも一方に対して、連通又は遮断可能となっている。
さらにスプール70は、図4,5に示す所定の移動位置にて進角ポート661及び主供給ポート664間を流通する作動油の流通量を絞るために、絞り部706を有している。尚、スリーブ66の内周面の内径よりも絞り部706の外周面の外径を小さくして、それら周面間に隙間を形成することで、流通量を絞る構成としてもよい。あるいは図示はしないが、スリーブ66の内周面と絞り部706の外周面とを嵌合により摺動させて、当該摺動界面のシール長さを短くすることで、流通量を絞る構成としてもよい。
以上の構成により、図10(a)のロック領域Rlへスプール70が移動した状態では、図4,5に示すように進角ポート661が主供給ポート664と接続される。かかる接続形態によりポンプ4からの供給作動油は、通路3,50,41,42,43,44を通じて進角室22,23,24に導入される。このとき、進角室22,23,24への導入作動油の量は、絞り部706により絞られる。また、スプール70のロック領域Rlへの移動状態では、遅角ポート662が通路705を介して各ドレンポート666と接続される。かかる接続形態により遅角室26,27,28の作動油は、通路46,47,48,45,54を通じてドレンパン5に排出される。さらに、スプール70のロック領域Rlへの移動状態では、ロック解除ポート663が通路705を介して各ドレンポート666と接続される。かかる接続形態によりロック解除室17の作動油は、通路49,54を通じてドレンパン5に排出される。
ロック領域Rlに対して往方向Dgに並ぶ図10(a)の進角領域Raへスプール70が移動した状態では、図6に示すように進角ポート661が主供給ポート664と接続される。かかる接続形態によりポンプ4からの供給作動油は、通路3,50,41,42,43,44を通じて進角室22,23,24に導入される。また、スプール70の進角領域Raへの移動状態では、遅角ポート662が通路705を介して各ドレンポート666と接続される。かかる接続形態により遅角室26,27,28の作動油は、通路46,47,48,45,54を通じてドレンパン5に排出される。さらに、スプール70の進角領域Raへの移動状態では、ロック解除ポート663が副供給ポート665と接続される。かかる接続形態により、ポンプ4からの供給作動油は、通路3,50,52,49を通じてロック解除室17に導入される。
進角領域Raに対して往方向Dgに並ぶ図10(a)の保持領域Rhへスプール70が移動した状態では、図7に示すように進角ポート661及び遅角ポート662が他のいずれのポートに対しても遮断される。かかる遮断形態により進角室22,23,24及び遅角室26,27,28には、作動油が留められる。また、スプール70の保持領域Rhへの移動状態では、ロック解除ポート663が副供給ポート665と接続される。かかる接続形態によりポンプ4からの供給作動油は、通路3,50,52,49を通じてロック解除室17に導入される。
保持領域Rhに対して往方向Dgに並ぶ図10(a)の遅角領域Rrへスプール70が移動した状態では、図8に示すように進角ポート661が通路705を介して各ドレンポート666と接続される。かかる接続形態により進角室22,23,24の作動油は、通路42,43,44,41,54を通じてドレンパン5に排出される。また、スプール70の遅角領域Rrへの移動状態では、遅角ポート662が主供給ポート664と接続される。かかる接続形態により、ポンプ4からの供給作動油は、通路3,50,45,46,47,48を通じて遅角室26,27,28に導入される。さらに、スプール70の遅角領域Rrへの移動状態では、ロック解除ポート663が副供給ポート665と接続される。かかる接続形態により、ポンプ4からの供給作動油は、通路3,50,52,49を通じてロック解除室17に導入される。
ここで特に、図4〜6,8に示す各領域Rl,Ra,Rrでは、スリーブ66の開口が形成する一方のドレンポート666(以下、この一方のドレンポート666を、ドレンポート666aという)に対して、ドレンパン5へと向かう作動油が排出される。故に、かかる排出作動油は、ドレンポート666においてスリーブ66の内周部660とスプール70の外周部700との間を、流通することになる。
(駆動構造)
次に、制御弁60の駆動構造につき、詳細に説明する。図1に示すように駆動源90は、通電に応じて作動する電磁ソレノイドであり、内燃機関における例えばチェーンカバー等の固定節に固定されている。駆動源90は、ロッド状に形成される金属製の駆動軸91を、有している。駆動軸91は、スプール70を軸方向に挟んでスリーブ66の底とは反対側において、それら要素66,70と同軸上に配置されている。駆動軸91は、スリーブ66の開口により形成されるドレンポート666aに進入することで、スプール70と常に当接している。こうした構成の駆動源90は、指令値として制御された通電電流を制御回路96からソレノイドコイル(図示しない)へと流すことで、駆動軸91によりスプール70を図4〜8の往方向Dgへと押圧する。かかる押圧により駆動源90は、制御回路96からの通電電流に従う往方向Dgの駆動力を、駆動軸91からスプール70へと与える。
図1に示すように付勢調整構造94は、駆動源90の駆動力に抗してスプール70を軸方向へと付勢する付勢力を調整するために、スリーブストッパ680、スプールストッパ72、第一弾性部材80及び第二弾性部材82を有している。
図4,9に示すようにスリーブストッパ680は、スリーブ66において開口を形成するドレンポート666aに、設けられている。本実施形態のスリーブストッパ680は、ドレンポート666aに設けられた金属製のスナップリング68により、四つ形成されている。具体的にスナップリング68は、それらのスリーブストッパ680をリング本体681と一体にして構成されている。リング本体681は、部分円環状に形成されてスリーブ66の筒状本体に同軸上に固定されることで、当該筒状本体と共にスリーブ66の内周部660を形成している。各スリーブストッパ680は、かかる内周部660を形成したリング本体681において、回転中心線O周りとなる周方向に互いに間隔をあけた箇所から、それぞれ径方向内側へと突出している。突片状の各スリーブストッパ680は、図4〜9に示すいずれの領域Rl,Ra,Rh,Rrにおいてもスプール70には達しない突出高さを、径方向に有している。かかる突出高さの各スリーブストッパ680は、径方向隙間682をスプール70との間に挟むことで、全ての領域Rl,Ra,Rh,Rrにおいてスプール70から径方向に離間可能となっている。
図4,9に示すようにスプールストッパ72は、スプール70においてドレンポート666aに進入する開口側端部に、設けられている。本実施形態のスプールストッパ72は、スプール70におけるスプール二面幅部702から突出する形態に、二つ形成されている。具体的にスプール二面幅部702は、所定の径方向(図9の上下方向)及び軸方向に沿って広がる二面幅の板状に、形成されている。各スプールストッパ72は、スプール二面幅部702において外周部700を形成する径方向両縁部(以下、二面幅縁部という)702aから、それぞれ径方向外側へと突出している。各スプールストッパ72は、一体のスプール二面幅部702から復方向Drに連続する二面幅の突片状に、形成されている。各スプールストッパ72は、図4〜9に示すいずれの領域Rl,Ra,Rh,Rrにおいてもスリーブ66には達しない突出高さを、径方向に有している。かかる突出高さの各スプールストッパ72は、周方向に連続する径方向隙間722をスリーブ66との間に挟むことで、全ての領域Rl,Ra,Rh,Rrにおいてスリーブ66から径方向に離間可能となっている。
ここで各領域Rl,Ra,Rh,Rrでは、図4,9では上側に示すスプールストッパ72とそれに連続する二面幅縁部702aとの少なくとも一方は、当該上側にて対をなす二つのスリーブストッパ680により周方向に挟まれる箇所Uを、移動する。この挟み箇所Uにおいてスプールストッパ72及び二面幅縁部702aの少なくとも一方は、周方向両側の各スリーブストッパ680との間にそれぞれ周方向隙間724をあけて離間する。一方、各領域Rl,Ra,Rh,Rrでは、図9では下側に示すスプールストッパ72とそれに連続する二面幅縁部702aとの少なくとも一方は、当該下側にて対をなす二つのスリーブストッパ680により周方向に挟まれる箇所Lを、移動する。この挟み箇所Lにおいてスプールストッパ72及び二面幅縁部702aの少なくとも一方は、周方向両側の各スリーブストッパ680との間にそれぞれ周方向隙間724をあけて離間する。
このように本実施形態では、対毎に各別箇所U,Lを周方向に挟むように、二対のスリーブストッパ680が設けられている。また特に、図6〜8に示す領域Ra,Rh,Rrにおいて箇所U,Lを移動する各スプールストッパ72は、それぞれ別対のスリーブストッパ680により周方向に挟まれる形態を、維持するようになっている。
図4,9に示すようにスプール70は、各対のスリーブストッパ680により係合されるスプール係合部704を、有している。スプール係合部704は、スプール70において復方向Drを向く円環面状に、形成されている。スプール係合部704は、スプール70においてスプール二面幅部702の形成されていない空間部703に露出することで、各スプールストッパ72及びスプール二面幅部702よりも往方向Dgに位置している。以上の構成から各対のスリーブストッパ680は、図4に示すロック領域Rlの復方向Drの移動端R0(図10,11も参照)に達したスプール70のスプール係合部704と係合することで、スプール70の復方向Drへの移動を止めることが可能となっている。
これに対してスリーブ66は、各対のスリーブストッパ680よりも往方向Dgに位置する箇所に、スリーブ係合部669を有している。スリーブ係合部669は、スリーブ66において復方向Drを向く円環面状に、形成されている。ここで、図6に示す進角領域Raでは、各スプールストッパ72が各対のスリーブストッパ680よりも往方向Dgへと移動する。故に進角領域Raでは、スリーブ係合部669に対して各スプールストッパ72は、各対のスリーブストッパ680よりも往方向Dgに近接する。これは、図7に示す保持領域Rh及び図8に示す遅角領域Rrにおいても同様である。一方、図4,5に示すロック領域Rlでは、各スプールストッパ72が各対のスリーブストッパ680よりも復方向Drへと移動する。故にロック領域Rlでは、スリーブ係合部669に対して各スプールストッパ72は、各対のスリーブストッパ680よりも復方向Drに離間する。即ち、ロック領域Rlでは、各スプールストッパ72よりも往方向Dgに位置する各対のスリーブストッパ680が、スリーブ係合部669と近接した状態となる。
図4に示すように第一弾性部材80は、金属製の研削エンド型圧縮コイルスプリングであり、スリーブ66内に同軸上に収容されている。第一弾性部材80は、スリーブ66の底とスプール70の開口との間に介装されている。第一弾性部材80は、図4〜8に示すいずれのRl,Ra,Rh,Rrにおいても、スリーブ66とスプール70との間にて圧縮弾性変形することで、第一復原力F1を発生する。この第一復原力F1を受けるスプール70は、往方向Dgとは反対の復方向Drへと付勢される。
図4,9に示すように第二弾性部材82は、金属製の研削エンド型圧縮コイルスプリングであり、スリーブ66内に同軸上に収容されている。第二弾性部材82の一端部は、常にスリーブ係合部669と係合している。第二弾性部材82の他端部は、図4〜8に示すスプール70の移動位置に応じて、各スプールストッパ72又は各対のスリーブストッパ680と係合可能となっている。
具体的に、図6に示す進角領域Raにおいて第二弾性部材82は、スリーブ係合部669に近接した各スプールストッパ72と係合する。かかる係合により第二弾性部材82は、各スプールストッパ72とスリーブ係合部669との間にて圧縮弾性変形することで、第二復原力F2を発生する。こうして第二復原力F2を第一復原力F1と共に受ける状態になるスプール70は、往方向Dgとは反対の復方向Drへと付勢される。即ち、このときのスプール70には、往方向Dgの駆動力に抗した復方向Drの付勢力として、図11に示す如き第一復原力F1及び第二復原力F2の合力が作用することになる。これは、図7に示す保持領域Rh及び図8に示す遅角領域Rrにおいても、同様となる。
一方、図4,5に示すロック領域Rlにおいて第二弾性部材82は、スリーブ係合部669に対して近接状態となる各対のスリーブストッパ680と係合することで、同係合部669から離間した各スプールストッパ72との係合を解除される。かかる係合解除によりスプール70は、第一復原力F1を受ける状態下、第二復原力F2による付勢を制限される。即ち、このときのスプール70には、往方向Dgの駆動力に抗した復方向Drの付勢力として、図11に示す如く第一復原力F1が単独作用することになる。
以上の作動特性により、軸方向に並ぶ進角領域Ra及びロック領域Rl間の境界位置では、図10,11に示すように、第一復原力F1の単独作用と第一復原力F1及び第二復原力F2の合力作用とが切替わる。かかる切替わりの結果、往方向Dgの駆動力に抗してスプール70に作用する復方向Drの付勢力は、ステップ状に変化する。ここで、図11に示す付勢力の変化幅Wは、領域Ra,Rl間の境界位置にて駆動源90がスプール70に作用させる駆動力の製品ばらつきに関する予測幅よりも、大きく設定される。こうした設定により、変化幅W内の付勢力に対して予測幅内の駆動力を釣合わせることが、確実に可能となっている。故に、駆動力及び付勢力の釣合いによって決まる移動位置(即ち、図11の一点鎖線グラフと実線グラフとの交点)の中でも、領域Ra,Rl間の境界位置については、駆動力の製品ばらつきには依存せず、付勢力の製品ばらつきのみに依存するようになっている。
尚、以上の説明から本実施形態では、進角領域Raが第一領域に相当し、ロック領域Rlが第二領域に相当する。また、第二領域に相当するロック領域Rlよりも、往方向Dgに位置する領域Ra,Rh,Rrが共同して第一領域に相当すると考えることも可能である。
(バルブタイミング調整作動)
次に、バルブタイミング調整装置1によるバルブタイミング調整作動について、説明する。
(1)ロック作動
内燃機関において、ポンプ4からの作動油の供給圧力が低圧となる回転停止時、始動時及びアイドル運転時等には、制御回路96が駆動源90への通電を制御することで、スプール70を図4又は図5のロック領域Rlへと移動させる。このロック領域Rlでは、進角室22,23,24への小流量の作動油導入と、遅角室26,27,28からの作動油排出と、ロック解除室17からの作動油排出とにより、ロック位相での回転位相のロックが実現される。ここで特に、ポンプ4からの作動油の供給及び駆動源90による駆動力の発生が止まる内燃機関の回転停止時にあっても、付勢力としての第一復原力F1がスプール70に単独作用する。かかる単独作用によりスプール70は、ロック領域Rlの復方向Drの移動端R0に達して各対のスリーブストッパ680により止められることで、ロック解除室17からの作動油排出を進行させる。このとき、進角方向に向けたアシストスプリング18の復原力と共に、カムトルクがベーンロータ14に作用することで、回転位相が規制位相領域に達すると、ロック部材16が規制孔131に進入して、回転位相を当該領域内に規制する。その結果、規制位相領域内のロック位相にてロック部材16がロック孔130に嵌合し易くなるので、内燃機関の回転が完全に停止するまでの間に確実に、ロック位相にロック可能となっている。
(2)進角作動
内燃機関において、回転位相の実位相が目標位相に対する許容偏差よりも遅角方向にある等の運転条件が成立するときには、制御回路96が駆動源90への通電を制御することで、スプール70を図6の進角領域Raへと移動させる。この進角領域Raでは、ロック解除室17への作動油導入による回転位相のロック解除下、進角室22,23,24への大流量の作動油導入と、遅角室26,27,28からの作動油排出とが実現される。その結果、回転位相が迅速に進角方向へ変化するので、バルブタイミングの進角応答性を高めることが可能となっている。ここで特に、進角領域Raのスプール70は、仮に通電電流のばらつき乃至は揺らぎ等に起因してロック領域Rl側に近づいたとしても、付勢力のステップ状変化が生じる領域Ra,Rl間の境界位置を超えることは、困難となっている。
(3)保持作動
内燃機関において、回転位相の実位相が目標位相に対する許容偏差内にある等の運転条件が成立するときには、制御回路96が駆動源90への通電を制御することで、スプール70を図7の保持領域Rhへと移動させる。この保持領域Rhでは、ロック解除室17への作動油導入による回転位相のロック解除下、進角室22,23,24及び遅角室26,27,28のいずれにも作動油が留められる。その結果、回転位相の変化がカムトルクの影響による変動の範囲内に規制されるので、バルブタイミングの保持性を確保することが可能となっている。
(4)遅角作動
内燃機関において、回転位相の実位相が目標位相に対する許容偏差よりも進角方向にある等の運転条件が成立するときには、制御回路96が駆動源90への通電を制御することで、スプール70を図8の遅角領域Rrへと移動させる。この遅角領域Rrでは、ロック解除室17への作動油導入による回転位相のロック解除下、遅角室26,27,28への大流量の作動油導入と、進角室22,23,24からの作動油排出とが実現される。その結果、回転位相が迅速に遅角方向へ変化するので、バルブタイミングの遅角応答性を高めることが可能となっている。
(作用効果)
以上説明した装置1による作用効果を、以下に説明する。
装置1によると、スプール70に設けられたスプールストッパ72に第二弾性部材82が係合する進角領域Raでは、当該部材82の第二復原力F2と第一弾性部材80の第一復原力F1との合力を、駆動力に抗する軸方向の付勢力としてスプール70が受ける。一方、スリーブ66に設けられたスリーブストッパ680に第二弾性部材82が係合するロック領域Rlでは、第二復原力F2による付勢の制限を受けるスプール70は、駆動力に抗する軸方向の付勢力として第一復原力F1を受ける。これらのことから、領域Ra,Rl間の境界位置では、第一復原力F1及び第二復原力F2の合力作用と第一復原力F1の単独作用とが切替わることで、付勢力がステップ状に変化する。その結果として、各領域Ra,Rlでの必要性能を適正に切替えることが可能となる。
しかも、領域Ra,Rlにおいてスプールストッパ72の移動する箇所は、スリーブ66からは径方向に離間し且つスリーブストッパ680からは周方向に離間した箇所U,Lとなる。これによりスプールストッパ72は、スプール70の移動抵抗となる摺動抵抗をスリーブ66との間及びスリーブストッパ680との間に生じさせることなく、合力作用と単独作用との切替えをスリーブストッパ680と共同して実現し得る。故に図12に示すように、駆動源90への指令値に対するスプール70の移動位置については、往方向Dgへの移動時と復方向Drへの移動時との間に生じるヒステリシスを、領域Ra,Rlの双方にて小さくできる。したがって、制御弁60における応答性ばらつきを抑制可能となる。
ここで装置1によると、スリーブ66の内周部660から径方向内側へ突出するスリーブストッパ680は、径方向隙間682を挟んだスプール70との間に、摺動抵抗を生じさせない。また、スプール70の外周部700から径方向外側へ突出するスプールストッパ72は、径方向隙間722を挟んだスリーブ66との間に、摺動抵抗を生じさせない。それと共にスプールストッパ72は、自身の移動する箇所U,Lから周方向隙間724をあけて離間するスリーブストッパ680との間にも、摺動抵抗を生じさせない。これらのことから、領域Ra,Rlの双方においてスプール70の移動抵抗、ひいてはスプール移動位置のヒステリシスを、往方向Dgへの移動時にも復方向Drへの移動時にも可及的に小さくできる。故に、制御弁60における応答性ばらつきの抑制度合いを高めることが可能となる。
さらに、装置1によると、作動油の入出制御に伴ってスリーブ66の内周部660及びスプール70の外周部700間を流通する当該作動油は、ストッパ680及びスプール70間、ストッパ72及びスリーブ66間並びにそれらストッパ間を通過できる。これによれば、摺動抵抗を生じさせないための隙間682,722,724を利用して、入出制御における作動油の必要流通量を確保し得る。故に、スプール移動位置のヒステリシスに起因した応答性ばらつきのみならず、入出制御における作動油の流通量変動に起因した応答性ばらつきも、制御弁60において抑制可能となる。
またさらに、装置1によると、スプールストッパ72は、自身の移動する箇所U,Lを周方向に挟んだスリーブストッパ680の対により、当該周方向への回転を制限される。これにより、スプールストッパ72とスリーブストッパ680とは、合力作用と単独作用との切替えに必要な状態、即ち周方向にずれた状態を確実に維持できる。それと共にスプールストッパ72は、自身の周方向片側のスリーブストッパ680に係止されて周方向への回転制限を受けたとしても、自身の周方向逆側のスリーブストッパ680との間では周方向への離間状態を確実に維持できる。こうしたことから、必要性能の適正な切替えをスプールストッパ72の回転制限機能により長きに亘って保証しつつ、当該機能により制御弁60に生じる応答性ばらつきの増大を抑制可能となる。
加えて、装置1によると、スリーブストッパ680の複数対は、それら対毎に各別のスプールストッパ72が移動する箇所U,Lを、それぞれ周方向に挟んでいる。これによれば、スプールストッパ72の回転制限機能を周方向の複数箇所にて発揮し得るので、必要性能の適正な切替えを長きに亘って確実に保証可能となる。
また加えて、装置1によると、スプール70において二面幅状のスプールストッパ72から軸方向に連続するスプール二面幅部702も、スリーブストッパ680の対により周方向に挟まれた箇所U,Lを移動する。これによれば、スプールストッパ72の軸方向サイズを小さくしても、スプール二面幅部702を利用することで、スプールストッパ72による場合と同様な回転制限機能を発揮できる。故に、そうした小型化を図った上での回転制限機能により、必要性能の適正な切替え保証を長きに亘って達成しつつ、当該機能により制御弁60に生じる応答性ばらつきの増大を抑制可能となる。
さらに加えて、装置1の進角領域Raでは、軸方向のうち往方向Dgの駆動力に抗した付勢力として、軸方向のうち復方向Drに発生する第一復原力F1及び第二復原力F2の合力をスプール70が受ける。一方、第二復原力F2による付勢が制限されるロック領域Rlでは、往方向Dgの駆動力に抗した付勢力として、復方向Drに発生する第一復原力F1をスプール70が受ける。これらによれば、領域Ra,Rl間の境界位置にて合力作用と単独作用とを確実に切替えることができるので、駆動力に抗する付勢力のステップ状変化を確固たるものとして現出させ得る。故に、必要性能の適正な切替え効果につき、信頼性を高めることが可能となる。
またさらに加えて、装置1によると、ロック領域Rlの復方向Drの移動端R0に達したスプール70は、スプールストッパ72よりも往方向Dgに位置するスプール係合部704にてスリーブストッパ680と係合することで、復方向Drへの移動を止められる。これによれば、合力作用と単独作用とを切替えるためのスリーブストッパ680を利用して、ロック領域Rlの復方向Drの移動端R0を正確に設定できる。故に、スプール70がスリーブ66内のロック領域Rlよりも復方向Drへと食み出して制御弁60による作動油の入出制御が困難となる事態につき、回避可能となる。
以上の他、装置1によると、領域Ra,Rlのうち回転位相を変化させるための一方と、回転位相を最進角位相及び最遅角位相の間の中間位相にロックするための他方との間の境界位置にて、駆動力に抗する付勢力のステップ状変化を現出させ得る。したがって、スプール70の移動位置に従って切替わる必要性能として、回転位相の変化に必要な性能と、中間位相でのロックに必要な性能とを、適正に切替え可能となる。
(他の実施形態)
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、当該実施形態に限定して解釈されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の実施形態に適用することができる。
具体的に変形例1としては、駆動源90の駆動力に抗してスプール70を付勢する付勢力をステップ状に変化させる位置につき、領域Ra,Rhの境界位置又は領域Rh,Rrの境界位置に設定してもよい。あるいは変形例2として、領域Rl,Ra,Rh,Rrのうちいずれかをさらに分割して、それら分割領域の境界位置にステップ状変化の位置を設定してもよい。
変形例3としては、スリーブストッパ680とスプールストッパ72とについては、各々の数を適宜に設定して、互いに周方向へ離間する形態に配置することが可能である。例えば一つのスプールストッパ72が移動する箇所U,Lを、一対のスリーブストッパ680により周方向に挟んでもよい。あるいは、一つ又は二つのスプールストッパ72が移動する箇所U,Lを、一つのスリーブストッパ680に対して周方向の片側又は両側に並べてもよい。
変形例4としては、スプールストッパ72を、スプール二面幅部702等のスプール70とは別体に形成して、当該スプール70に装着してもよい。また、変形例5としては、スリーブストッパ680を、スリーブ66に一体に形成してもよい。
変形例6としては、スプールストッパ72よりも往方向Dgに位置するスプール係合部704を設けないで、スプールストッパ72の復方向Drの端面をスリーブ66に係合させることにより、スプール70の復方向Drの移動を止めてもよい。
変形例7としては、図13,14に示すように、往方向Dgへスプール70を付勢し且つ進角領域Raにおいて第一復原力F1よりも小さい第二復原力F2を発生する第二弾性部材82を、採用してもよい。この場合、第一領域に相当するロック領域Rlでは、往方向Dgの駆動力に抗してスプール70を付勢する付勢力は、復方向Drに発生する第一復原力F1と、それよりも小さな往方向Dgに発生する第二復原力F2との合力になる。それと共に、第二領域に相当する少なくとも進角領域Raでは、往方向Dgの駆動力に抗した復方向Drの付勢力は、第一復原力F1の単独となる。故に、こうした変形例7の場合にも、スリーブストッパ680及びスプールストッパ72の共同により、上述した実施形態と同様の作用効果を発揮できる。
変形例8としては、スプール70及び弾性部材80,82を収容するスリーブ66を、要素140,2の一方に内蔵させてもよいし、要素140,2の外部に配置してもよい。また、変形例9としては、規制位相領域を設定するための規制孔131を、設けなくてもよい。
変形例10としては、回転位相をロックするロック位相を、最遅角位相又は最進角位相に設定してもよい。また、この場合等の変形例11としては、アシストスプリング18によるベーンロータ14の付勢構造を省いてもよい。
変形例12としては、動弁である排気弁のバルブタイミングを調整する装置や、動弁である吸気弁及び排気弁の双方のバルブタイミングを調整する装置に、本発明を適用してもよい。