JP6003770B2 - 火花点火式エンジンの制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、燃料としてアルコール、ガソリン、またはこれらの混合燃料が供給される火花点火式エンジンを制御する装置に関する。
近年、地球温暖化等の環境問題を改善する視点から、植物資源(例えばサトウキビやトウモロコシ)から精製されたいわゆるバイオマスエタノールを車両用のエンジンに使用することが考案され、実用化されている。
バイオマスエタノールは、しばしばガソリンと混合された状態で使用される。例えば、ブラジルでは、エタノールが25%混合されたE25と呼ばれる燃料と、エタノール100%のE100と呼ばれる燃料とが主に流通している。ところが、車両を使用するユーザは、そのときどきの値段等によってどちらの燃料を給油するかを決めるため、車両の燃料タンク内の燃料は、E25とE100とが任意の割合で混合したものになる。このため、燃料中のエタノールの濃度は、給油のたびに変動し、25%から100%まで任意の数値を取り得る。
そこで、エタノール含有燃料が使用される国では、エタノール濃度が変動しても対応できるように、燃料中のエタノール濃度を推定したりその濃度推定値に応じて燃料噴射量を変更したりする等の機能を備えたエンジンが車両に搭載される。このように任意のエタノール濃度の燃料を使用可能な車両のことを、FFV(Flexible Fuel Vehicle)という。
ここで、エタノールのようなアルコールを含有した燃料においては、ガソリン100%の燃料と比べて、アルコール濃度が高いほど燃料の気化性能が悪化するという問題がある。このため、アルコール濃度の高い燃料を使用した場合には、特にエンジンの冷間始動時に、燃料が充分に気化せず、失火等を引き起こすことが懸念される。
このような問題を解消すべく、例えば下記特許文献1に示されるように、2種類の燃料タンクを備えた車両が考案されている。具体的に、この特許文献1に示されるFFVでは、任意のエタノール濃度の燃料を貯留可能なメインタンクと、気化性能に優れたガソリン濃度の高い燃料が貯留されるサブタンクとが別々に設けられている。そして、エンジンの始動時やアイドリング運転時といった燃料が気化し難い条件のときには、サブタンクからガソリン濃度の高い燃料が供給され、それによってエンジンの始動性やアイドリング運転の安定性が確保されるようになっている。
特開2010−133288号公報
上記特許文献1のように、メインタンクとは別にサブタンクを必要とするFFVでは、燃料の供給系が2系統になるので、構造の複雑化やコストアップを招くことが避けられないという問題がある。しかしながら、FFV用のエンジンでは、燃料に含まれるアルコール濃度にかかわらず、冷間時であっても安定してエンジンを始動させる必要があるので、上記のようにコストアップ等の要因となるサブタンクであっても、これを省略できなかったのが現実である。
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、燃料の供給系を簡略化しつつ、冷間始動時の燃焼安定性を確保することが可能な火花点火式エンジンの制御装置を提供することを目的とする。
上記課題を解決するためのものとして、本発明は、気筒と、気筒内に往復摺動可能に設けられたピストンと、アルコール、ガソリン、またはこれらの混合燃料を気筒内に噴射するインジェクタと、噴射された燃料に点火する点火プラグと、気筒への吸気充填量を調節する吸気調節手段とを備えた火花点火式エンジンを制御する装置であって、上記インジェクタに供給される燃料に含まれるアルコールの濃度を推定または検出する濃度特定部と、エンジンの冷却水の温度が所定温度未満となるエンジンの冷間運転時に、上記インジェクタ、点火プラグ、および吸気調節手段を制御する冷間運転制御部とを備え、上記冷間運転制御部は、少なくとも一部のアルコール濃度範囲において、上記濃度特定部により特定されたアルコール濃度が高いほど吸気充填量が減少して吸気行程中の気筒内の負圧が強くなるように上記吸気調節手段を制御するとともに、上記点火プラグの近傍ほどリッチな混合気が形成されるように吸気行程と圧縮行程とに分けて上記インジェクタから燃料を噴射させ、そのうち少なくとも吸気行程中に噴射される燃料の量を上記アルコール濃度が高いほど増大させる、ことを特徴とするものである(請求項1)。
本発明によれば、エンジンの冷間運転時に、圧縮行程と吸気行程とに分けて燃料が噴射されることにより、点火プラグの近傍が特にリッチになる成層化された混合気が形成されるので、気筒の壁面温度が低い状態であっても、点火プラグの火花点火をきっかけに混合気を確実に着火させることができる。しかも、ガソリンよりも気化性能が悪いアルコールの濃度が高い場合には、気筒への吸気充填量が減らされるとともに、吸気行程中の燃料の噴射量が増やされるので、吸気行程中における気筒内の圧力を低下させて強い負圧を発生させながら、その環境下により多くの燃料を噴射することにより、噴射した燃料を確実に気化させることができる。さらに、高アルコール濃度時に吸気行程中の燃料の噴射量が増やされることで、圧縮行程中の噴射量については特に増大させる必要がないので、圧縮行程中の噴射期間が混合気を成層化するための適正期間を外れるのを回避することができる。これにより、着火性に有利な成層化された混合気を確実に気筒内に形成しつつ、主に吸気行程中の噴射量の調節によってアルコール濃度に応じた適切な量の燃料を噴射し、これを確実に気化させて燃焼させることができる。
このように、本発明の構成によれば、燃料のアルコール濃度が高かったとしても、失火を確実に防止することができるので、例えばガソリン濃度の高い燃料を貯留する専用の燃料タンクを通常の燃料タンクとは別に設けるといった措置をとらなくても、冷間始動時の燃焼安定性を充分に確保することができる。
本発明において、好ましくは、上記ピストンの上面に、上記インジェクタから圧縮行程後半の特定のクランク角範囲に噴射された燃料の噴霧が入り込む凹状のキャビティが設けられるとともに、当該キャビティの上方に点火プラグが設けられる(請求項2)。
この構成によれば、圧縮行程中に噴射される燃料の噴射期間を上記特定のクランク角範囲に収めることにより、噴射された燃料の噴霧をキャビティに入り込ませることができるので、点火プラグの周りに確実にリッチな混合気を形成し、着火性を改善することができる。
一方で、圧縮行程中に噴射すべき燃料量が多すぎると、噴射期間が上記特定のクランク角範囲に収まり切らなくなり、燃料の噴霧がキャビティから外れてしまうことになる。これに対し、上記構成では、アルコール濃度が高いときは吸気行程中の燃料の噴射量が増やされるので、圧縮行程中の噴射量を極端に多くする必要がない。このため、噴霧がキャビティから外れる上記のような事態を回避して、点火プラグの近傍に確実にリッチな混合気を形成することができる。
本発明において、好ましくは、上記冷間運転制御部は、気筒内の平均の空燃比が理論空燃比よりもリッチになるように上記インジェクタからの燃料の噴射量を決定し、しかも上記平均空燃比の理論空燃比に対するリッチ度合いをアルコール濃度が高いほど増大させる(請求項3)。
この構成によれば、気化性能が悪いアルコールの濃度が高ければ、これに応じて気筒内の平均空燃比が大幅にリッチにされるので、アルコール濃度にかかわらず充分な着火性を確保することができる。このことは、上述した混合気の成層化と相俟って、失火をより確実に回避することにつながるので、冷間運転時であっても充分な燃焼安定性を確保することができる。
より具体的な冷間運転時の制御態様として、吸気充填量を次のように設定することが好ましい。すなわち、上記冷間運転制御部は、予め定められた所定濃度よりも低いアルコール濃度範囲において、アルコール濃度にかかわらず吸気充填量が一定となるように上記吸気調節手段を制御するとともに、上記所定濃度以上のアルコール濃度範囲において、アルコール濃度が高いほど吸気充填量が減少するように上記吸気調節手段を制御することが好ましい(請求項4)。
この場合、さらに、上記冷間運転制御部は、上記所定濃度よりも低いアルコール濃度範囲において、吸気行程中および圧縮行程中に噴射される燃料の双方がアルコール濃度が高いほど増大するように上記インジェクタを制御するとともに、上記所定濃度以上のアルコール濃度範囲において、圧縮行程中に噴射される燃料の量が一定とされつつ吸気行程中に噴射される燃料の量がアルコール濃度が高いほど増大するように上記インジェクタを制御することが好ましい(請求項5)。
以上説明したように、本発明の火花点火式エンジンの制御装置によれば、燃料の供給系を簡略化しつつ、冷間始動時の燃焼安定性を確保することができる。
本発明の一実施形態にかかる火花点火式エンジンの全体構成を示す図である。 燃料中のエタノール濃度と理論空燃比との関係を示すグラフである。 AWSモード実行時のスロットル開度、吸気充填量、燃料噴射量、および目標空燃比をエタノール濃度との関係で示すグラフである。 AWSモード実行時の燃料噴射のパルス幅を複数のエタノール濃度の場合について図示した説明図である。 圧縮行程中に噴射された燃料の噴霧の動きを示す説明図である。 エンジンのブースト圧、未燃燃料量、および燃焼安定性指標が、吸気充填量との関係でどのように変化するかを示したグラフである。
(1)エンジンの全体構成
図1は、本発明の一実施形態にかかるエンジンの全体構成を示す図である。本図に示されるエンジンは、走行用の動力源として車両に搭載される4サイクルの火花点火式エンジンである。具体的に、このエンジンは、紙面に直交する方向に列状に並ぶ複数の気筒2(図1にはそのうちの1つの気筒のみを示す)を有するエンジン本体1と、エンジン本体1に空気を導入するための吸気通路20と、エンジン本体1で生成された排気ガスを排出するための排気通路30と、エンジン本体1に供給される燃料を貯留する燃料タンク40とを備えている。
エンジン本体1は、車両のエンジンルーム(図示省略)に配設されている。当実施形態において、車両は、エタノールとガソリンとが任意の割合で混合された燃料を使用可能なFFVである。このため、燃料タンク40に貯留されている燃料は、エタノール100%の燃料(E100)、ガソリン100%の燃料(E0)、またはエタノールとガソリンとが混合された混合燃料(E1〜E99)のいずれかである。なお、エタノール100%の燃料(E100)といっても、エタノールの精製過程で充分に水分が除去されていないものがあり、このような水分含有のエタノール(例えばブラジルでは5%程度の水分を含有するE100が流通している)も燃料タンク40に貯留されることがある。
エンジン本体1は、上記複数の気筒2が内部に形成されたシリンダブロック3と、シリンダブロック3の上部に設けられたシリンダヘッド4と、各気筒2に往復摺動可能に挿入されたピストン5とを有している。
ピストン5は、エンジン本体1の出力軸であるクランク軸15とコネクティングロッド16を介して連結されており、上記ピストン5の往復運動に応じてクランク軸15が中心軸回りに回転するようになっている。
ピストン5の上方には燃焼室10が形成されており、この燃焼室10には、後述するインジェクタ11からの噴射によって燃料が供給される。そして、噴射された燃料が燃焼室10で燃焼し、その燃焼による膨張力で押し下げられたピストン5が上下方向に往復運動する。
各気筒2の幾何学的圧縮比、つまり、ピストン5が下死点にあるときの燃焼室10の容積とピストン5が上死点にあるときの燃焼室10の容積との比は、ガソリンエンジンとしては高めの値である12.5以上20以下に設定されている。
一方で、各気筒2の有効圧縮比、つまり、後述する吸気弁8の閉時期に対応する位置にピストン5があるときの燃焼室10の容積とピストン5が上死点にあるときの燃焼室10の容積との比は、上述した幾何学的圧縮比(12.5〜20)よりも小さい値になるが、当実施形態では、気化性能の悪いエタノールを充分に気化させて燃焼させるため、有効圧縮比は最小の場合でも10以上に設定される。
燃焼室10の天井面に対応するシリンダヘッド4の下面は、いわゆるペントルーフ型に形成されており、天井面の中央部から吸気側および排気側にそれぞれ延びる2つの傾斜面を有している。
ピストン5の上面は、上述したペントルーフ型の燃焼室10の天井面に対応するように、周縁部から中央部に向かって***する***部を有し、この***部の中央部には、概ね球面状に凹陥したキャビティ17が形成されている。ピストン5の上面がこのように***していることで、ピストン5が上死点に達したときの燃焼室10の容積が小さくなり、12.5以上の高い幾何学的圧縮比が実現されている。
シリンダヘッド4には、吸気通路20から供給される空気(吸気)を各気筒2の燃焼室10に導入するための吸気ポート6と、各気筒2の燃焼室10で生成された排気ガスを排気通路30に導出するための排気ポート7と、吸気ポート6の燃焼室10側の開口を開閉する吸気弁8と、排気ポート7の燃焼室10側の開口を開閉する排気弁9とが設けられている。
吸気弁8および排気弁9は、それぞれ、シリンダヘッド4に配設された一対のカム軸18a,19a等を含む動弁機構18,19により、クランク軸15の回転に連動して開閉駆動される。
シリンダヘッド4には、燃焼室10に向けて燃料を噴射するインジェクタ11と、インジェクタ11から噴射された燃料と空気との混合気に対し火花放電による点火エネルギーを供給する点火プラグ12とが、各気筒2につきそれぞれ1組ずつ設けられている。
点火プラグ12は、各気筒2の中心線に沿い、かつピストン5の上面のキャビティ17を上から臨むような姿勢でシリンダヘッド4に取り付けられている。
インジェクタ11は、各気筒2の吸気側の側方から燃焼室10に向けて斜め下方に燃料を噴射し得る姿勢でシリンダヘッド4に取り付けられている。各気筒2のインジェクタ11にはそれぞれ燃料供給管13が接続されており、各燃料供給管13には、燃料タンク40に貯留された燃料が図略の高圧燃料ポンプを通じて圧送される。
吸気通路20は、1本の共通通路21(図1には紙面に直交する方向に延びる通路の断面を示す)と、共通通路21の下流端部に接続された所定容積のサージタンク22と、サージタンク22から下流側に延びて各気筒2の吸気ポート6とそれぞれ連通する複数本の独立通路23(図1にはそのうちの1本のみを示す)とを有している。
吸気通路20の共通通路21には、吸気通路20を流通する吸気の流量を調節するための開閉可能なスロットル弁25が設けられている。スロットル弁25は、バタフライ式の弁本体25aと、弁本体25aを駆動する電動式のアクチュエータ25bとを有している。
排気通路30には、その内部を流通する排気ガス中に含まれる有害成分(HC、CO、NOx)を浄化するための三元触媒を内蔵した触媒装置35が設けられている。なお、詳しい図示は省略するが、排気通路30は、各気筒の排気ポート7と連通する複数本の独立通路と、独立通路の下流端部が集合した排気集合部と、排気集合部から下流側に延びる1本の共通通路とを有しており、このうちの共通通路の途中部に、上述した触媒装置35が設けられている。
(2)制御系
次に、エンジンの制御系について説明する。当実施形態のエンジンは、その各部がECU(エンジン制御ユニット)50によって統括的に制御される。ECU50は、周知のとおり、CPU、ROM、RAM等を含むマイクロプロセッサからなるものである。
ECU50には、エンジンの各部に設けられた複数のセンサから種々の情報が入力される。具体的に、当実施形態のエンジンには、そのエンジン本体1のクランク軸15の回転速度を検出するエンジン速度センサSN1と、エンジン本体1の冷却水の温度を検出する水温センサSN2と、サージタンク22を通過する吸気の流量を検出するエアフローセンサSN3と、触媒装置35の温度を検出する触媒温度センサSN4と、触媒装置35よりも上流側の排気通路30を流通する排気ガスに含まれる酸素の濃度を検出するリニアO2センサからなる酸素濃度センサSN5と、燃料タンク40に貯留されている燃料の液位を検出する燃料レベルセンサSN6とが設けられている。また、車両には、運転者により操作されるアクセルペダル60の開度(アクセル開度)を検出するアクセル開度センサSN7が設けられている。ECU50は、これらのセンサSN1〜SN7と電気的に接続されており、それぞれのセンサから入力される信号に基づいて、上述した各種情報(エンジンの回転速度、冷却水温、吸気流量‥‥など)を取得する。
また、ECU50は、上記各センサSN1〜SN7からの入力信号に基づいて種々の判定や演算等を実行しつつ、エンジンの各部を制御する。すなわち、ECU50は、インジェクタ11、点火プラグ12、およびスロットル弁25と電気的に接続されており、上記演算の結果等に基づいて、これらの機器にそれぞれ駆動用の制御信号を出力する。
ECU50のより具体的な機能について説明する。ECU50は、本発明に特有の機能的要素として、濃度推定部50aおよび冷間運転制御部50bを有している。
濃度推定部50aは、燃料タンク40に貯留されている燃料に含有されるエタノールの濃度を推定するものである。具体的に、濃度推定部50aは、エタノール濃度によって理論空燃比が異なるという性質を利用して、燃料中のエタノール濃度を推定する。
図2は、燃料中のエタノール濃度と理論空燃比との関係を示している。本図に示すように、理論空燃比、つまり、混合気中の酸素と燃料とが過不足なく反応するとき(当量比φ=1のとき)の空燃比は、エタノール濃度が高いほど低下する。例えば、エタノール濃度が0%(ガソリン濃度が100%)のときの理論空燃比が14.7であるのに対し、エタノール濃度が100%(ガソリン濃度が0%)のときの理論空燃比は9.0である。エタノール濃度が0%より高く100%より低いときは、9.0から14.7の範囲で任意の値を取り得るが、その値はエタノール濃度が大きいほど小さく(9.0に近く)なる。例えば、エタノール濃度が50%のおきの理論空燃比は約11.9である。
上記のようなエタノール濃度に応じた理論空燃比の変化に合わせて、エンジンの通常運転時においては、現在分かっているエタノール濃度を考慮してインジェクタ11からの燃料噴射量が決定される。例えば、気筒2への吸気充填量が同じでかつ当量比φ(燃料の過濃度合い)の目標値が同じであると仮定すると、エタノール濃度が100%であるときの燃料の噴射量は、エタノール濃度が0%のときに比べて、約1.6倍(=14.7/9.0)に設定される。このとき、エタノール濃度100%が正しい値であれば、上記約1.6倍の燃料を噴射することで、当量比φは目標値と一致するはずであるが、仮にエタノール濃度100%が間違った値であれば、当量比φは目標値からずれることになる。この当量比φの目標値からのずれ量は、エタノール濃度の見当違いが大きいほど大きくなる。このため、当量比φのずれ量が分かれば、そのずれ量に基づいて、正しいエタノール濃度を推定することができる。
例えば、真のエタノール濃度が50%であるにもかかわらず、エタノール濃度が誤って100%と推定され、その結果、燃料の噴射量がQに設定されたとする。これに対し、本来必要な噴射量は、真のエタノール濃度50%に対応する値、つまり0.76Q(=Q×9.0/11.9)である。したがって、上記決定された噴射量Qは、本来必要な噴射量に対し0.24Qだけ多いことになる。このような噴射量の余剰は、当量比φのずれとなって現れる(燃料の余剰分0.24Qの分だけ当量比φが大きくなる)ので、その当量比φのずれ量に基づいて、真のエタノール濃度を推定することができる。
ここで、当量比φが目標値からずれているかどうかは、酸素濃度センサSN5の検出値に基づいて判断される。酸素濃度センサSN5は、上述したとおり、触媒装置35に導入される前の排気ガスに含まれる酸素(O2)の濃度をリニアに検出するリニアO2センサであるので、当該センサが検出する酸素濃度に基づいて、当量比φを特定することができる。つまり、気筒2で燃焼する混合気の空燃比がリッチなほど(つまり当量比φが大きいほど)、多くの酸素が消費されて排気ガス中に含まれる酸素の濃度が低下するので、この酸素濃度の値に基づいて当量比φを特定することができる。
ただし、酸素濃度センサSN5は、そのセンサ素子の性質上、所定の基準温度(製品にもよるが、例えば500〜600℃のいずれか)以上にならないと安定した検出精度を出すことができない。このため、上述した当量比φのずれ量に基づくエタノール濃度の推定は、酸素濃度センサSN5が上記基準温度以上の活性状態にあるときにしか行うことができない。例えば、エンジンが冷間始動された直後は、酸素濃度センサSN5の温度が低く、当該センサSN5が未活性状態にある(よって酸素濃度の検出精度が悪い)ので、エタノール濃度を推定することはできない。
以上のように、当実施形態では、酸素濃度センサSN5が活性化しているとき(基準温度以上まで上昇しているとき)に、この酸素濃度センサSN5の検出値に基づいて、ECU50の濃度推定部50aによって、燃料に含まれるエタノールの濃度が推定される。このことから、当実施形態では、酸素濃度センサSN5および濃度推定部50aにより、本発明にかかる「濃度特定部」が構成されている。
上記濃度推定部50a等によるエタノールの濃度推定はエンジンの運転中に定期的に行われるが、少なくとも、燃料タンク40に燃料が補充(給油)されたりバッテリが交換されたときには、必ずエタノールの濃度推定が行われる。給油時にエタノールの濃度推定が必要となるのは、給油が行われると、燃料タンク40内で新旧の燃料が混じり合う結果、真のエタノール濃度が不明となるからである。また、バッテリ交換時にエタノールの濃度推定が必要となるのは、バッテリが交換されると過去の推定値が消去されてしまうからである。なお、給油が行われたか否かは、燃料レベルセンサSN6による検出液位の変動によって知ることができる。
冷間運転制御部50bは、水温センサSN2により検出されるエンジン冷却水の温度が所定の水温閾値(例えば30℃程度)未満となるエンジンの冷間運転時に必要な種々の制御を実行するものである。例えば、エンジンの冷間運転時は、インジェクタ11から噴射された燃料の気化性能が悪化するので、通常よりも燃料の噴射量を増大させる等の制御が必要であり、そのような制御を司るのが上記冷間運転制御部50bである。
特に、エンジンが冷間始動された直後であって、触媒装置35の温度が所定の活性閾値(例えば300℃程度)未満である場合、冷間運転制御部50bは、触媒装置35の活性化を早めるAWS(Accelerated Warm-up System)モードとして、排気ガスの温度が通常よりも上昇するようにインジェクタ11、点火プラグ12、およびスロットル弁25を制御する。
より具体的に、冷間運転制御部50bは、触媒温度センサSN4により検出される触媒装置35の温度が上記活性閾値未満のときに、触媒装置35内の触媒が活性化されていないと判定し、上記AWSモードを実行する。すなわち、触媒は、排気ガス自身の熱や排気ガスとの反応熱によって所定の高温度(ライトオフ温度)まで昇温しなければ、充分な浄化性能を発揮することができない。そこで、冷間運転制御部50bは、特に触媒の温度が低下し易いエンジンの冷間始動時に、触媒温度センサSN4による検出値が活性閾値(上記ライトオフ温度に対応する値)未満であるか否かを判定し、活性閾値未満であるとき(触媒が未活性であるとき)には、触媒の活性化を早めるAWSモードを実行する。
上記AWSモードでは、触媒が活性化している通常運転時と比べて、インジェクタ11からの燃料噴射量が増大されるとともに、点火プラグ12が火花を放電する時期である点火時期がより遅角側に設定される。これにより、気筒2内の熱発生量が増大するとともに、排気損失(排気ガスとともに気筒2の外に捨てられる熱量)が増大するので、排気ガスの温度が上昇し、触媒装置35の早期活性化が図られる。
(3)AWSモード時の制御
次に、AWSモードの実行時に行われる具体的な制御の内容について説明する。ECU50は、エンジンが冷間始動されたとき、触媒温度センサSN4により検出された温度が上記活性閾値未満(つまり触媒装置35が未活性)か否かを判定し、活性閾値未満である場合には、AWSモードと両立できない他の制御の要求がないことを確認した上で、AWSモードを開始する。このような状況は、典型的には、エンジンが冷間始動された直後の軽負荷運転時(特にアイドリング運転時)に起こり得る。
図3(a)は、AWSモードの実行時に設定されるスロットル弁25の開度(スロットル開度)を、燃料中のエタノール濃度との関係で示した図である。本図に示すように、スロットル開度は、エタノール濃度が比較的低い領域では一定の開度に設定されるが、エタノール濃度が比較的高い領域では、エタノール濃度が高いほど小さい開度に設定される。より具体的に、スロットル開度は、エタノール濃度が0%以上50%未満の領域で、一定の開度T1に設定される。一方、エタノール濃度が50%以上の領域では、スロットル開度が上記開度T1よりも低下させられ、しかもその値はエタノール濃度が高いほどより低下させられる。ここでは、濃度50%のときの開度をT2、濃度100%のときの開度をT3としている。濃度50%のときのスロットル開度T2は、濃度50%未満のときのスロットル開度T1よりも小さく、濃度100%のときのスロットル開度T3は、全ての濃度領域の中で最も小さい値となる。ECU50は、この図3(a)に相当するマップデータと、現在分かっているエタノール濃度の推定値とに基づいて、エタノール濃度に応じたスロットル開度を決定し、その開度に合わせてスロットル弁25のアクチュエータ25bを駆動する。
上記のようにスロットル開度が設定されることで、気筒2への吸気充填量は、エタノール濃度との関係で図3(b)のように設定される。すなわち、エタノール濃度が0%以上50%未満の領域では、吸気充填量がC1で一定とされ、エタノール濃度が50%以上100%以下の領域では、吸気充填量がC1よりも減らされ、しかもその低下幅はエタノール濃度が高いほど大きくされる(つまり濃度50%から100%にかけて吸気充填量が徐々に減らされる)。その値は、濃度50%のときでC2(<C1)、濃度100%のときでC3(<C2)である。なお、この場合における濃度50%は、本発明における「所定濃度」に相当する。
また、図3(c)は、AWSモードの実行時に設定される燃料の噴射量(より詳しくは各気筒2において1サイクル中に噴射されるトータルの燃料量)をエタノール濃度との関係で示した図である。本図に示すように、AWSモード時の燃料の噴射量は、エタノール濃度50%を境にステップ状に低下することを除けば、総じてエタノール濃度が高いほど増やされる。より具体的に、燃料の噴射量は、エタノール濃度が0%以上50%未満の範囲において、濃度に比例して徐々に増やされ、濃度50%になると一旦減らされる。そして、濃度50%以上100%以下の範囲では、再びエタノール濃度に比例して燃料の噴射量が徐々に増やされる。エタノール濃度0%のときの噴射量をQ1、50%のときの噴射量をQ2、100%のときの噴射量をQ3とすると、Q2はQ1より大きく、Q3はQ2より大きい。
ここで、図3(c)に示した噴射量は、図3(d)に示すような目標空燃比を実現するために設定されたものである。すなわち、ECU50は、エアフローセンサSN3の検出値から各気筒2への吸気充填量(図3(b))を特定するとともに、この吸気充填量と目標空燃比(図3(d))とに基づいて、当該目標空燃比が実現されるような燃料の噴射量を演算により決定する。さらに、酸素濃度センサSN5の検出値に基づき特定される実測空燃比に基づいて、実測空燃比が正しく目標空燃比に一致するように燃料の噴射量を補正する。このように、ECU50は、酸素濃度センサSN5の検出値(実測空燃比)を利用したフィードバック制御により、図3(d)に示した目標空燃比が正確に実現されるように燃料の噴射量を決定し、その噴射量に応じた期間だけ開弁するようにインジェクタ11を制御する。そして、このような制御の結果として、燃料の噴射量がエタノール濃度に応じて図3(c)に示すようなプロフィールをとるように設定される。なお、エタノール濃度50%のときに噴射量がステップ状に低下するのは、同50%を境に吸気充填量がC1からC2に低下することに対応している。
上記目標空燃比は、気筒2内の平均の空燃比、つまり、気筒2への吸気充填量をインジェクタ11からの総噴射量で割った値の目標値であって、図3(d)に示すように、エタノール濃度に応じた値に設定される。具体的に、AWSモードのときの目標空燃比は、理論空燃比(当量比φ=1となる空燃比)よりもリッチな値に設定され、しかもそのリッチ度合いは、エタノール濃度が高いほど大きくされる(φ=1のラインの傾きよりも目標空燃比のラインの傾きが大きいことが、そのことを表している)。
なお、酸素濃度センサSN5は、上述したとおり、所定の基準温度(例えば500〜600℃)まで昇温しないと検出精度が安定しない。このため、酸素濃度センサSN5の温度が上記基準温度未満となる冷間始動後のごく短い期間に限れば、上記のようなフィードバック制御は不可能となる。このようなフィードバック制御が不能な期間については、酸素濃度センサSN5の検出値(実測空燃比)によらないオープンループ制御により噴射量を決定することになる。この場合は、安全を見越して(失火を確実に防ぐために)、目標空燃比を図3(d)よりもさらにリッチ側に設定するのがよい。
図3(c)のようにして決定された噴射量に相当する燃料は、図4に示すように、吸気行程と圧縮行程とに2分して噴射される。図4において、吸気行程と圧縮行程の各領域に図示されたハッチングの区間は、インジェクタ11が開弁される区間、つまり噴射パルス幅を表している。上述したように、各気筒2において1サイクル中に噴射されるトータルの燃料量は、エタノール濃度が0〜50%の範囲と、50〜100%の範囲とにおいて、それぞれエタノール濃度が高いほど増やされるので、吸気行程および圧縮行程のそれぞれの噴射パルス幅の合計は、エタノール濃度に応じて変化する。図4には、代表的に、エタノール濃度0%、50%、100%のときの噴射パルス幅を図示している。濃度0%のときの噴射量Q1、50%のときの噴射量Q2、および100%のときの噴射量Q3は、Q1<Q2<Q3の関係であるので、このことに対応して、噴射パルス幅の合計は、濃度0%、50%、100%の順に大きくなっている。
行程別に噴射パルス幅を比較すると、吸気行程中の噴射パルス幅は、エタノール濃度0%、50%、100%の順に大きくなっている。一方、圧縮行程中の噴射パルス幅は、エタノール濃度50%のときの噴射パルス幅の方が0%のときよりも大きいのに対し、エタノール濃度100%のときの噴射パルス幅は50%のときと変わっていない。このことから、吸気行程中の燃料の噴射量は、エタノール濃度に応じて常に変化するのに対し、圧縮行程中の燃料の噴射量は、必ずしもエタノール濃度に応じて変化するわけではなく、濃度範囲によってはエタノール濃度にかかわらず一定に維持されるということが分かる。
より具体的に、当実施形態では、エタノール濃度が0%以上50%未満の範囲のとき、吸気行程および圧縮行程での各噴射量は、ともにエタノール濃度が高いほど増大される。一方、エタノール濃度が50%以上100%以下の範囲では、吸気行程中の噴射量がエタノール濃度が高いほど増大されるのに対し、圧縮行程中の噴射量はエタノール濃度にかかわらず一定に維持される。
図5は、圧縮行程中に噴射された燃料の噴霧の動きを示した説明図である。本図に示すように、インジェクタ11から圧縮行程中に噴射された燃料は、図中の矢印Fsのように、斜め下方へと向かう噴霧となってピストン5の上面に向けて飛翔する。このとき、ピストン5の位置によっては、燃料噴霧の少なくとも一部がピストン5上面の中央部に設けられたキャビティ17に入り込む。キャビティ17に入り込んだ噴霧は、上方に反転して点火プラグ12の電極部に近傍へと移動しようとするので、燃料の多くは、点火プラグ12の電極部の近傍に集中する。このように点火プラグ12の近傍に集約された燃料は、吸気行程中に先行して噴射された燃料(この燃料は気筒2内にまんべんなく分布している)と合わさることで、成層化された混合気、つまり、点火プラグ12の電極部近傍がリッチで電極部から離れるとリーンになる混合気を形成する。
成層化された混合気は、ピストン5が圧縮上死点を過ぎてから行われる点火プラグ12の火花点火により強制着火されて燃焼する(成層燃焼)。このとき、点火プラグ12の近傍の空燃比が特にリッチであることから、エンジンの冷間始動直後のAWSモードであるにもかかわらず、混合気の着火性は充分に確保され、失火が防止される。しかも、火花点火の時期が遅めに設定されることから、排気損失が増大し、排気ガスの温度が上昇する。これにより、触媒装置35が迅速に暖められ、その早期活性化が図られる。
ここで、図5に矢印Fsで示したように、インジェクタ11から噴射された燃料の少なくとも一部をピストン5上面のキャビティ17に入り込ませようとすれば、ピストン5の位置がある特定のクランク角範囲に存在している必要がある。この特定のクランク角範囲は、少なくとも圧縮行程の後半(圧縮上死点前90〜0°CA)に含まれる。図4に示したように、圧縮行程中に噴射される燃料の噴射パルス幅(噴射開始から終了までの期間)が圧縮行程後半の一部に限られているのは、このためである。すなわち、圧縮行程中の噴射パルス幅は、燃料の少なくとも一部をキャビティ17に入り込ませるために、いずれも上記特定のクランク角範囲(圧縮行程後半の所定期間)に含まれている。特に、エタノール濃度50%、100%のときの噴射パルス幅は、上記特定のクランク角範囲に目一杯含まれるように設定されており、噴霧がキャビティ17に入り込む下限のピストン位置から上限のピストン位置までの間に対応するクランク角範囲に設定されている。
(4)作用等
以上説明したように、当実施形態の火花点火式エンジンは、エタノール、ガソリン、またはこれらの混合燃料を貯留する燃料タンク40と、この燃料タンク40から供給される燃料を気筒2に噴射するインジェクタ11と、噴射された燃料に点火する点火プラグ12と、気筒2への吸気充填量を調節するスロットル弁25(吸気調節手段)と、インジェクタ11、点火プラグ12、スロットル弁25等を制御するECU50とを備える。さらに、ECU50は、インジェクタ11に供給される燃料に含まれるエタノールの濃度を酸素濃度センサSN5の検出値に基づき推定する機能(濃度推定部50a)と、エンジンの冷間始動後、触媒装置35を迅速に暖めるためのAWSモードとして、排気ガスを上昇させるための所定の制御を実行する機能(冷間運転制御部50b)とを有している。
特に、上記推定されたエタノール濃度が50%以上100%以下であるときのAWSモードでは、図3(a)(b)に示したように、エタノール濃度が高いほど(100%に近いほど)吸気充填量が少なくなるようにスロットル弁25が制御されるとともに、点火プラグ12の近傍ほどリッチな混合気が形成されるように吸気行程と圧縮行程とに分けてインジェクタ11から燃料が噴射される(図4)。このうち、少なくとも吸気行程中に噴射される燃料の量は、上記エタノール濃度が高いほど増大される。
このような構成によれば、燃料の供給系を簡略化しつつ、冷間始動時の燃焼安定性を確保できるという利点がある。
すなわち、上記実施形態では、エンジンの冷間始動後に行われるAWSモードの実行中に、圧縮行程と吸気行程とに分けて燃料が噴射されることにより、点火プラグ12の近傍が特にリッチになる成層化された混合気が形成されるので、気筒2の壁面温度が低い状態であっても、点火プラグ12の火花点火をきっかけに混合気を確実に着火させることができる。しかも、ガソリンよりも気化性能が悪いエタノールの濃度が高い場合には、気筒2への吸気充填量が減らされるとともに、吸気行程中の燃料の噴射量が増やされるので、吸気行程中における気筒2内の圧力を低下させて強い負圧を発生させながら、その環境下により多くの燃料を噴射することにより、噴射した燃料を確実に気化させることができる。さらに、高アルコール濃度時に吸気行程中の燃料の噴射量が増やされることで、圧縮行程中の噴射量については特に増大させる必要がないので、圧縮行程中の噴射期間が混合気を成層化するための適正期間(圧縮行程後半の所定のクランク角範囲)を外れるのを回避することができる。これにより、着火性に有利な成層化された混合気を確実に気筒2内に形成しつつ、主に吸気行程中の噴射量の調節によってエタノール濃度に応じた適切な量の燃料を噴射し、これを確実に気化させて燃焼させることができる。
このように、上記実施形態の構成によれば、燃料タンク40に貯留された燃料のエタノール濃度が高かったとしても、失火を確実に防止することができるので、例えばガソリン濃度の高い燃料を貯留する専用の燃料タンクを通常の燃料タンクとは別に設けるといった措置をとらなくても、冷間始動時(AWSモード)のときの燃焼安定性を充分に確保することができる。
図6(a)〜(c)は、ある特定の運転条件におけるエンジンのブースト圧(気筒2に吸入される空気の圧力)、未燃燃料量、および燃焼安定性指標が、吸気充填量との関係でどのように変化するかを示したグラフである。各グラフにおいて、エタノール濃度および空燃比(当量比φ)はともに同一であるとする。このため、吸気充填量が多いグラフ右側ほど、燃料の噴射量も多いことになる。また、図6(c)の燃焼安定性指標とは、エンジンの図示平均有効圧の最小値を同有効圧の平均値で割った値のことであり、縦軸の上側ほど燃焼安定性が良好なことを表す。
上記実施形態のようにスロットル弁25を用いて吸気充填量を減らすことは、図6(a)〜(c)において、吸気充填量をYからXに変化させることを意味する。このうち、図6(a)(c)から明らかなように、吸気充填量が減少すれば、これに伴いブースト圧が減少し、燃焼安定性が改善される。これは、吸気充填量が減らされることで、吸気行程中の気筒2内の圧力が低くなり(負圧が強くなり)、それに伴い吸気行程中に噴射された燃料の気化性が改善されたためである。さらに、吸気充填量の減少および気化性能の改善に伴って未燃燃料量も減少するので、主に未燃燃料が原因で生じるHCやCOの発生量を削減することができ、エミッション性を向上させることができる。
また、上記実施形態では、ピストン5の上面に、圧縮行程後半の特定のクランク範囲に噴射された燃料が入り込む凹状のキャビティ17が設けられるとともに、当該キャビティ17の上方に点火プラグ12が設けられている。このような構成によれば、圧縮行程中に噴射される燃料の噴射期間を上記特定のクランク角範囲に収めることにより、噴射された燃料の噴霧をキャビティ17に入り込ませることができるので、点火プラグ12の周りに確実にリッチな混合気を形成し、着火性を改善することができる。
一方で、圧縮行程中に噴射すべき燃料量が多すぎると、例えば図4に2点鎖線で示すZ部に示すように、噴射期間が上記特定のクランク角範囲に収まり切らなくなり、燃料の噴霧がキャビティ17から外れてしまうことになる。これに対し、上記実施形態では、エタノール濃度が高いときは吸気行程中の燃料の噴射量が増やされるので、圧縮行程中の噴射量を極端に多くする必要がない。このため、噴霧がキャビティ17から外れる上記のような事態を回避して、点火プラグ12の近傍に確実にリッチな混合気を形成することができる。
また、上記実施形態では、AWSモード時に、気筒2内の平均の空燃比(目標空燃比)が理論空燃比よりもリッチになるようにインジェクタ11からの燃料の噴射量が決定され(図3(c)(d))、しかも上記平均空燃比の理論空燃比に対するリッチ度合いが、エタノール濃度が高いほど増大される。このような構成によれば、気化性能が悪いエタノールの濃度が高ければ、これに応じて気筒2内の平均空燃比が大幅にリッチにされるので、エタノール濃度にかかわらず充分な着火性を確保することができる。このことは、上述した混合気の成層化と相俟って、失火をより確実に回避することにつながるので、AWSモードのような冷間運転時であっても充分な燃焼安定性を確保することができる。
なお、上記実施形態では、エンジンが冷間始動された直後のAWSモード(触媒活性促進のために排気ガス温度を上昇させる制御)のときに吸気充填量および燃料噴射量がどのように制御されるかを主に図3、図4に基づき説明したが、図3、図4に示すような制御は、基本的に、AWSモード時に限らず、着火性の厳しい冷間運転時(エンジン冷却水の温度が所定値未満となる運転時)において全般的に適用することができる。ただし、AWSモードでは、排気ガスの温度を上昇させるために燃料の噴射量をかなり多めにする必要があるので、図3、図4のような制御は特に重要となる。
また、上記実施形態では、エタノール濃度が50%以上100%以下の範囲にあるときに限って、エタノール濃度が高いほど吸気充填量を減らす(濃度50%未満のときには吸気充填量を一定に維持する)ようにしたが(図3(a)(b))、全てのエタノール濃度範囲において、吸気充填量をエタノール濃度に比例して徐々に減らすようにしてもよい。また、図3(a)(b)のようにある特定のエタノール濃度を境に吸気充填量の設定の仕方を変える場合でも、その境界となるエタノール濃度は50%に限られず、適宜変更可能である。
また、上記実施形態では、エタノール濃度を特定する濃度特定部として、排気ガス中の酸素濃度を検出する酸素濃度センサSN5と、当該センサSN5の検出値から求まる空燃比に基づく演算により燃料中のエタノール濃度を推定する濃度推定部50aとを設けたが、上記濃度特定部はエタノール濃度を特定できるものであればよく、例えば、エタノール濃度を直接的に検出するアルコール濃度センサを濃度特定部として用いてもよい。アルコール濃度センサは、アルコール濃度に応じて出力が変化するセンサであり、例えば燃料タンク40内の燃料に浸漬された状態で使用される。
また、上記実施形態では、燃料としてエタノール、ガソリン、またはこれらの混合燃料を使用することを想定したが、ガソリン以外の燃料はアルコールであればよく、エタノールに代えてメタノールを使用してもよい。
1 エンジン本体
2 気筒
5 ピストン
11 インジェクタ
12 点火プラグ
17 キャビティ
25 スロットル弁(吸気調節手段)
50a 濃度推定部(濃度特定部)
50b 冷間運転制御部

Claims (5)

  1. 気筒と、気筒内に往復摺動可能に設けられたピストンと、アルコール、ガソリン、またはこれらの混合燃料を気筒内に噴射するインジェクタと、噴射された燃料に点火する点火プラグと、気筒への吸気充填量を調節する吸気調節手段とを備えた火花点火式エンジンを制御する装置であって、
    上記インジェクタに供給される燃料に含まれるアルコールの濃度を推定または検出する濃度特定部と、
    エンジンの冷却水の温度が所定温度未満となるエンジンの冷間運転時に、上記インジェクタ、点火プラグ、および吸気調節手段を制御する冷間運転制御部とを備え、
    上記冷間運転制御部は、少なくとも一部のアルコール濃度範囲において、上記濃度特定部により特定されたアルコール濃度が高いほど吸気充填量が減少して吸気行程中の気筒内の負圧が強くなるように上記吸気調節手段を制御するとともに、上記点火プラグの近傍ほどリッチな混合気が形成されるように吸気行程と圧縮行程とに分けて上記インジェクタから燃料を噴射させ、そのうち少なくとも吸気行程中に噴射される燃料の量を上記アルコール濃度が高いほど増大させる、ことを特徴とする火花点火式エンジンの制御装置。
  2. 請求項1記載の火花点火式エンジンの制御装置において、
    上記ピストンの上面に、上記インジェクタから圧縮行程後半の特定のクランク角範囲に噴射された燃料の噴霧が入り込む凹状のキャビティが設けられるとともに、当該キャビティの上方に点火プラグが設けられた、ことを特徴とする火花点火式エンジンの制御装置。
  3. 請求項1または2記載の火花点火式エンジンの制御装置において、
    上記冷間運転制御部は、気筒内の平均の空燃比である平均空燃比が理論空燃比よりもリッチになるように上記インジェクタからの燃料の噴射量を決定し、しかも上記平均空燃比の理論空燃比に対するリッチ度合いをアルコール濃度が高いほど増大させる、ことを特徴とする火花点火式エンジンの制御装置。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の火花点火式エンジンの制御装置において、
    上記冷間運転制御部は、予め定められた所定濃度よりも低いアルコール濃度範囲において、アルコール濃度にかかわらず吸気充填量が一定となるように上記吸気調節手段を制御するとともに、上記所定濃度以上のアルコール濃度範囲において、アルコール濃度が高いほど吸気充填量が減少するように上記吸気調節手段を制御する、ことを特徴とする火花点火式エンジンの制御装置。
  5. 請求項4記載の火花点火式エンジンの制御装置において、
    上記冷間運転制御部は、上記所定濃度よりも低いアルコール濃度範囲において、吸気行程中および圧縮行程中に噴射される燃料の双方がアルコール濃度が高いほど増大するように上記インジェクタを制御するとともに、上記所定濃度以上のアルコール濃度範囲において、圧縮行程中に噴射される燃料の量が一定とされつつ吸気行程中に噴射される燃料の量がアルコール濃度が高いほど増大するように上記インジェクタを制御する、ことを特徴とする火花点火式エンジンの制御装置。
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