<実施形態1>
本発明の一実施形態を、図1〜図9を参照しつつ説明する。本実施形態では、車両用ドアにおけるドアトリム20の補強構造10を例示する。図1は、本発明の一本実施形態に係るドアトリム20の斜視図である。図1には、車室内側から見た状態のドアトリム20が示されている。つまり、図1には、ドアトリム20の表面20a側が示されている。なお、図1の左上側が車両前方側に対応し、右下側が車両後方側に対応している。また、図1の紙面手前側が車両内側に対応し、その紙面奥側が車両外側に対応している。また、図1の上下方向は、車両上下方向に対応している。
ドアトリム20は、車両用ドアの車室内側部分を構成するものであり、車両用ドアが備える図示されないドアインナパネル(ドアパネルの一種)に対して車室内側から取り付けられる。ドアトリム20は、図1に示されるように、所定の厚みを有する板状のトリムボード(ドアトリム本体部)21を備えている。
トリムボード21は、例えば、ポリプロピレン等の合成樹脂材料(熱可塑性樹脂材料)等によって構成されている。なお、トリムボード21を構成する材質としては、合成樹脂材料に限られず、例えば、植物繊維と合成樹脂を混合した混合材料等が用いられてもよい。
トリムボード21は、複数の部分に分割可能な構成となっている。図1に示されるように、トリムボード21は、トリムボード18の下部を構成するロアボード22、トリムボード21の上部を構成するアッパーボード23、ロアボード22とアッパーボード23との間に配されるミドルボード(オーナメントボード)24等が、互いに組付けられたものからなる。
トリムボード21のうち、ミドルボード24には、インサイドドアハンドル(不図示)を取り付けるための貫通孔状の取付孔部25が設けられている。また、ドアトリム20の上下方向における略中央部分には、車室内側に膨出された形状のアームレスト26が設けられている。アームレスト26は、主として、ロアボード21の一部及びミドルボード24の一部を車室内側に膨出させることによって形成されている。なお、アームレスト26の上面には、スイッチベース(不図示)を取り付けるための貫通孔状の取付孔26aが設けられている。なお、前記スイッチベースには、ウインドウガラスの昇降用スイッチ等のスイッチ操作部が設けられる。
また、トリムボード21が備えるロアボード22の車両前方側には、スピーカ27が設けられている。そして、そのスピーカ27の後方側部分のロアボード22には、ドアポケット30が設けられている。
図2は、ドアトリム20が備えるドアポケット30の斜視図である。ドアポケット30は、ドアトリム20(トリムボード21)の下方に設けられており、車室内において、車両シート(不図示)に着座した状態の乗員の足元付近に配置される。ドアポケット30は、車室内側に対して斜め上方に開口した収納口31と、その収納口31に続く収納室32とを備えている。ペットボトルや小物類等の被収納物は、収納口31から差し入れられる形で、収納室32に収納される。なお、収納室32は、主として、トリムボード21(ロアボード22)の裏面側に配置される形となっている。つまり、ドアポケット30の収納室32は、上述したドアインナパネル(不図示)側に配置されている。
なお、ドアインナパネルとトリムボード21(ドアトリム20)との間には、ドアポケットの収納室32以外に、図示されない補強用のパイプ状部材(ドアビーム)等が配設されている。
ドアポケット30の収納口31は、図2に示されるように、車両前後方向に亘って細長く延びた形をなしている。そして、収納口31の後方部分の幅(開口幅)は、その前方部分の幅(開口幅)よりも狭くなっている。
ドアポケット30は、主として、トリムボード(トリム本体部)21の下部を構成するロアボード22と、このロアボード22とは別体であり、ロアボード22の裏側に取り付けられるポケット部材40とを備えている。
ロアボード22には、ドアポケット30の収納口31を構成する開口部(ポケット開口部)28が設けられている。図3は、トリムボード21が備える開口部28の斜視図である。図3には、図2に示されるロアボード22からポケット部材40が取り外された状態が示されている。
開口部28は、図3に示されるように、ロアボード22を表裏方向(厚み方向)に貫通する形で設けられている。ロアボード22を表面22a側から見た際、開口部28の上方部分が車室外側に向かって膨らんだような凹み200が形成されている。その凹み200は、開口部28の上方側(上縁部分281a)から車両前方側に傾いた形をなしている。そして、開口部28の上方側の部分(上縁部分281a)が、開口部28の下方側の部分(下縁部分281b)と比べて、車室外側(ドアインナパネル側)に向かって膨らむように湾曲した形をなしている。また、開口部28(収納口31)は、上述したように、全体的には、車室内側に対して斜め上方を向く形をなしている。
このような開口部28を取り囲む環状(ループ状)の開口縁281のうち、車幅方向において、車室外側(ドアインナパネル側)寄りの部分を、車室上方側に配される上縁部分281aと称し、反対に車室内側寄りの部分を、車室下方側に配される下縁部分281bと称する。上縁部分281a及び下縁部分281bは、互いに、開口縁281における前端部281a1及び後端部281bにおいて繋がっている。
図4は、裏面側から見たトリムボード21の平面図である。図4の右側が車両前方側に対応し、左側が車両後方側に対応する。なお、図4には、トリムボード21のうち、ロアボード22及びミドルボード24が互いに組付けられた状態が示されている。図4に示されるように、開口縁281のうち、上縁部分281aは、車幅方向においてトリムボード21(ロアボード22)を平面視した際、前後方向に沿って略水平に配されている。これに対して、開口縁281の下縁部分281bは、車幅方向においてトリムボード21(ロアボード22)を平面視した際、前方から後方に向かって徐々に上昇するように配されている。
ロアボード22のうち、開口部28の周辺部分は、不連続的な形状となっている等の理由により、応力が集中し易い。具体的には、開口部28に沿った開口縁281及びその周辺部分に応力が集中し易い。また、その中でも、上縁部分281a及びその周辺部分に応力が集中し易く、更には、前端部281a1及びその周辺部分、並びに後端部281a2及びその周辺部分に応力が集中し易く、特に、後端部281a2及びその周辺部分に応力が集中し易い。
本実施形態の場合、急角度で湾曲したような形状の開口縁281の端部(開口部28の角部)に相当する後端部281a2及びその周辺部分において、特に応力が集中し易くなっている。
ロアボード22の裏面22b(ドアトリム20の裏面20b)において、開口部28(開口縁281)の上方には、上縁部分281aに沿う形でポケット部材40を取り付けるための取付ボス部51が複数立設されている。
取付ボス部51は、内側に中空部を有する略円柱状をなしており、ロアボード22(トリムボード21)の裏面22b上に突出する形で設けられている。本実施形態の場合、上縁部分281aに沿って、4個の取付ボス部51が略等間隔で一列に並ぶ形となっている。これらの取付ボス部51は、ポケット部材40をロアボード22の裏面22b上に取り付ける際に利用されるものであり、具体的には、ポケット部材40の上縁部分が係止される個所となっている。4個の取付ボス部51のうち、最も前方側に配されるものを、取付ボス部51Aと称する。そして、それから後方に向かって順に、取付ボス部51B、取付ボス部51C(車両前方側の副係止部の一例)及び取付ボス部51D(本係止部の一例)と称する。
本実施形態の場合、図4に示されるように、取付ボス部51Aは、開口縁281の前端部281a1の上方の周辺部分に配置されている。また、取付ボス部51Dは、開口縁281の後端部281a2における上方の周辺部分に配置されている。
なお、ロアボード22(トリムボード21)の裏面22bには、上述した取付ボス部51以外に、ポケット部材40を取り付けるために利用される他の取付ボス部52,53が設けられている。これらの取付ボス部52,53は、取付ボス部51と同様の形状を備えている。
取付ボス部52は、ロアボード22の裏面22b上に2個設けられており、それぞれに対して、ポケット部材40の前端側と後端側とが取り付けられる。また、取付ボス部53は、ロアボード22の裏面22b上に3個設けられており、それぞれに対して、ポケット部材40の下縁側の部分が取り付けられる。
また、ロアボード22(トリムボード21)の裏面22bには、その他に、後述する衝撃吸収部材60を取り付けるために利用される取付ボス部54や、トリムボード21(ドアトリム20)をドアインナパネルに対して取り付けるために利用されるクリップ座55等が設けられている。なお、取付ボス部54のうち、最も取付ボス部51Aに近く、取付ボス部51Aよりも車両後方側に配されているものを、特に、取付ボス部54A(車両後方側の副係止部の一例)と称する。
上述した取付ボス部51,52,53,54等は、ロアボード22等のトリムボード21に対して一体的に設けられている。そのため、本実施形態の場合、取付ボス部51等は、合成樹脂材料(熱可塑性樹脂等)から構成されている。
図5は、開口縁281の後端部281a2付近における拡大平面図である。図5に示されるように、開口部28を囲む開口縁281は、ロアボード22の裏面22b側に凸状に盛り上がった形をなしつつ、環状をなした部分を含んでいる。後端部281a2付近(後端部281a2の上方の周辺部分)には、取付ボス部51Dが立設されている。そして、その取付ボス部51Dの車両前方側には、取付ボス部51Cが立設されている。なお、各取付ボス部51の周囲には、ポケット部材40が備える後述の固定部41を支持しつつ、各取付ボス部51を補強等するためのリブ56が設けられている。また、隣り合った取付ボス51の間には、リブ56同士を繋ぐ形で配され、取付ボス部51付近を補強等するためのリブ57が設けられている。
また、図5に示されるように、取付ボス部51Dの車両後方側には、取付ボス部54Aが立設されている。この取付ボス部54Aは、取付ボス部51Dや取付ボス部51Cと比べて、上方(車両上方側)に配されている。この取付ボス部54Aの周囲にもリブ58が設けられている。このリブ58は、後述する補強部材70の車両後方側の部分(後方部71c)を支持しつつ、取付ボス部54Aを補強等するために利用される。
ロアボード22を、裏面22b側から平面視した際、車両前後方向において取付ボス部51Dの両側に、それぞれ少なくとも1つずつ取付ボス部54A,51Cが配置された状態となっている。取付ボス部51Dは、車両前後方向において、取付ボス部54Aと、取付ボス部51Cとの間に配置されている。
なお、ロアボード22の裏面22b上には、開口縁281の下縁部分281bに沿う形で、複数本のリブ29が互いに平行に並ぶ形で設けられている。
図6は、ドアトリム20の裏面20b側に取り付けられているポケット部材40及び衝撃吸収部材60の説明図である。
ポケット部材40は、ドアトリム20のドアポケット30を構成する部材であり、開口部28をロアボード22の裏面22b側から覆いつつ、ロアボード22の裏面22bとの間でドアポケット40の収納室32(図2参照)を形成する。ポケット部材40は、車室内側を向く形で開口した容器状をなしている。そのため、ポケット部材40は、車室内側から外側に向かって膨らんだ形をなしており、ロアボード22に取り付けられると、ロアボード22の裏面22bから車室外側に向かって盛り上がった状態となる。つまり、ポケット部材40は、ドアインナパネルとロアボード22(トリムボード21)との間に配置される形となる。
ポケット部材40は、ロアボード22等のトリムボード21とは、別体ではあるものの、本実施形態の場合、トリムボード21と同様の材質からなる。つまり、ポケット部材40は、合成樹脂材料の成形品等からなる。他の実施形態においては、トリムボード21とは異なる材質からなるポケット部材40であってもよい。ポケット部材40は、容器状の本体部40aと、この本体部40aの周縁40b等に設けられる固定部41等を備えている。図6に示されるように、ドアトリム20を裏面20b側から平面視した際、ポケット部材40の本体部40aは、前後方向に亘って延びた略長方形状をなしている。
本体部40aの周縁のうち、上縁部40bは、概ね車両前後方向に亘って細長く延びた板状(帯状)をなしている。そして、その上縁部40bには、ロアボード22に取り付けられる際に利用される扁平な複数個の固定部41が設けられている。本実施形態の場合、4個の固定部41が略等間隔で一列に並ぶ形で上縁部40に設けられている。各固定部41には、それぞれ取付ボス部51を挿通乃至挿入させるための孔部が設けられている。なお、取付ボス部51Aには、固定部41Aが割り当てられ、取付ボス部51Bには、固定部41Bが割り当てられ、取付ボス部51Cには、固定部41Cが割り当てられ、取付ボス部51Dには、固定部41Dが割り当てられている。
本体部40aの周縁のうち、車両前方側の側端部40cと、車両後方側の側端部40dとは、それぞれ概ね車両上下方向に沿って細長く延びた板状(帯状)をなしている。各側端部40c,40dには、それぞれ固定部42,42が割り当てられている。固定部42の構造は、上述した固定部41と同様であり、取付ボス部52を挿通させるための孔部が設けられている。
また、本体部40aの周縁のうち、下縁部40eは、概ね車両前後方向に亘って細長く延びた板状(帯状)をなしており、車両前後方向において等間隔で並ぶ3個の固定部43を備えている。各固定部43の構造は、上述した固定部41と同様であり、それぞれ取付ボス部53を挿通させるための孔部が設けられている。
本実施形態の場合、ポケット部材40が、ロアボード22の裏面22b側に取り付けられる際、取付ボス部51Aと固定部41Aとの固定、及び取付ボス部51Bと固定部41Aとの固定には、超音波溶着等の溶着手段を利用した超音波カシメが利用される。具体的には、各取付ボス部51A,51Bが各固定部41A,41Bの各孔部に挿通された状態で、各取付ボス部51A,51Bの先端部分が、超音波溶着等の溶着手段を利用して溶融されつつ、各固定部41A,41Bに溶着される。
また、取付ボス部52と固定部42との固定、及び取付ボス部53と固定部43との固定にも、上述した超音波カシメが利用される。
なお、本実施形態の場合、取付ボス部51Dと固定部41Dとの固定と、取付ボス部51Cと固定部41Cとの固定とは、後述するように、補強部材70が取り付けられた状態で、いわゆるビス止め(ビス締め)によって行われる。
衝撃吸収部材60は、いわゆるEA(Energy Absorption)パッドからなり、硬質ウレタンフォームをブロック状に成形したものからなる。この衝撃収集部材60は、側面衝突時における衝撃を吸収し、ドアトリム20の車室内側の車両シート(不図示)に着座した乗員に加えられる衝撃を低減する機能等を備えている。本実施形態の場合、衝撃吸収部材60は、ドアトリム20の車両後方側の裏面20b上に配置されている。なお、衝撃吸収部材60には、ドアトリム20側の各取付ボス部54を挿通させるための取付孔を備えた樹脂製のワッシャー状(リング状)をなした複数個の固定部64が設けられている。衝撃吸収部材60は、各固定部65の各取付孔に各取付ボス部54の先端部分が挿通された状態で、各取付ボス部54の先端部分が、超音波溶着等の溶着手段を利用して溶融されつつ、各固定部64に溶着されることにより、ロアボード22(トリムボード21)に取り付けられる。
(ドアトリムの補強構造10)
図6において二点鎖線で輪郭が示されるように、ロアボード22(トリムボード21)を補強する補強部材70が、ロアボード22の裏面22b側に取り付けられている。この補強部材70は、開口縁281の後端部281a2付近に立設されている取付ボス部51Dを中心として、車両前後方向に延びた状態で、ロアボード22の裏面22b上に取り付けられている。図7は、補強部材70の斜視図であり、図8は、ドアトリム20の補強構造10の説明図であり、図9は、図8のA−A線断面図である。
補強部材70は、図7に示されるように、全体的には板状をなしており、鉄等の金属材料や、ABS樹脂等の高強度の樹脂材料等から構成される。本実施形態の補強部材70は、鉄製の板材が所定形状にプレス加工等されたものからなる。補強部材70として、少なくともトリムボード(ドアトリム本体部)21よりも剛性の高いものが利用される。ただし、鉄等の金属製の補強部材70は、トリムボード21と比べて剛性が遥かに高く、高荷重にも耐え得るため、特に好ましい。
補強部材70は、長手状の本体部71と、この本体部71の一端側を貫通する形で設けられた取付孔72と、その他端側を貫通する形で設けられた取付孔73と、取付孔72と取付孔73との間にある中央付近の本体部71を貫通する形で設けられた取付孔74とを備える。なお、本体部71は、取付孔74を含む中央部71aと、この中央部71aから車両前方側に向かって延び取付孔72を含む前方部71bと、前記中央部71aから車両後方側に向かって延び取付孔73を含む後方部71cとからなる。
補強部材70の本体部71のうち、中央部71aは、取付ボス部51D(本係止部の一例)に対して係止される。また、前方部71bは、取付ボス部51C(車両前方側の副係止部の一例)に対して係止され、後方部71cは、取付ボス部54A(車両後方側の副係止部の一例)に対して係止される。補強部材70は、開口縁281の上縁部分281aに沿う形で、各取付ボス部51D,51C,54Aに係止されている。
取付ボス部51Dは、ロアボード22の裏面22b上において、開口縁281の後端部281a2付近(後端部281a2の上方の周辺部分)に立設されている。つまり、取付ボス部51Dは、ロアボード22の裏面22b側にポケット部材40を取り付けるために利用される取付ボス部51等の中でも、特に応力が集中し易い個所に配置されている。
例えば、車両の側面衝突時等において、車室外側から大きな衝撃荷重が加えられた際に、取付ボス部51Dが倒れる等して破損すると、その取付ボス部51Dの破損を起点とした、割れや折れ等の破断不良が、開口部28付近(特に、開口部28の上方側にあるロアボード22)に発生する虞がある。つまり、ドアポケット30の上方側に、開口部28から延びる形で前記破断不良が発生する虞がある。ドアポケット30は、上述したように、車室内において、車両シート(不図示)に着座した状態の乗員の足元付近に配置されているため、ドアポケット30付近に破断不良を発生させないことが望まれている。
そのため、本実施形態の補強部材70は、主として、取付ボス部51D及びその付近を補強する構成となっている。補強部材70は、取付ボス部51Dを中心として、車両前後方向において両側から挟むような構造となっている。このような補強部材70は、それ自体の強度(剛性)によって、取付ボス部51D等を保護する機能や、荷重を受けた際に、取付ボス部51Dに荷重が集中しないように、中央部71aから車両前方側に延び取付ボス部51Cに係止される前方部71b側と、車両後方側に延び取付ボス部54Aに係止された後方部71c側とにそれぞれ荷重(力)を分散させる機能等を備えている。このような補強部材70によって、取付ボス部51D付近に応力が集中することが抑制され、取付ボス部51D付近のトリムボード21(ロアボード22)の曲がり(変形)が抑制される。その結果、トリムボード21(ロアボード22)が備える開口部28から上方に向かって割れや折れ等の破断不良が発生することが抑制される。
補強部材70は、本係止部である取付ボス部51D以外に、少なくとも2つの副係止部(取付ボス部51C及び取付ボス部54A)に対して係止される。つまり、補強部材70は、少なくとも合計3点でトリムボード21(ロアボード22)側に係止される。補強部材70は、図9に示されるように、表面70a側が、概ね車室外側を向きつつ、裏面70b側が、概ね車室内側(トリムボード21側)を向く形となっている。なお、補強部材70は、ドアトリム20の裏面形状に倣う形で車両前後方向に延びつつ、車両上下方向に沿った第1板状部分171と、この板状部分からトリムボード21側に向かって略垂直に延設された第2板状部分172とからなる。上述した、中央部71a、前方部71b及び後方部71cは、主として、第1板状部分171により構成されている。なお、第2板状部分172は、第1板状部分171に対して略垂直に交わる形で隣接されており、第1板状部分171と、第2板状部分172とが互いに補強し合っている。
ここで、補強部材70が各取付ボス部51D,51C,54Aに係止されている状態を図9を参照しつつ説明する。
取付ボス部51Dは、ポケット部材40をロアボード22に取り付けるために利用されるものであり、補強部材70の中央部71aの取り付けにも利用される。つまり、取付ボス部51Dは、ポケット部材40の取付構造と、補強部材70の取付(係止)構造において、共用される。中央部71aを係止させるための取付ボス部51Dの先端は、ポケット部材40が備える扁平な固定部41Dの孔部41aに挿入されている。そして、固定部41Dは、取付ボス部51Dの周囲に設けられているリブ56の上端に載せられた状態となっている。リブ56の高さ(ロアボード22の裏面22bからの高さ)は、取付ボス部51Dの高さ(ロアボード22の裏面22bからの高さ)よりも低く設定されており、リブ56の上端に固定部41Dが載せられると、固定部41Dの表面と、取付ボス部51Dの先端の位置が略同じとなる(本実施形態の場合、固定部41Dの表面位置の方が、取付ボス部51Dの先端位置よりも若干、高く設定されている)。なお、取付ボス部51Dの内側には、図9における上方(車両外側)に向かって開口した中空部51Daが設けられており、この中空部51Daの開口端が固定部41Dの孔部41aから露出する形となっている。
そして、図9に示されるように、固定部41Dの孔部41aから露出する取付ボス部51Dの開口端(中空部51Da)と、取付孔74とが車幅方向(取付ボス部51Dの立設方向)において重なる形で、補強部材70の中央部71aが固定部41Dの扁平な上端に載せられる。このように固定部41D上に載せられ中央部71aの取付孔74に、ねじ状の金属製の締結部材(ビス)151Dが挿通され、更にその締結部材151Dが取付ボス部51Dの中空部51Daに挿入される。そして、締結部材151Dが、中空部51Da内に挿入された状態で取付ボス部51Dの内周面に螺着されることにより、補強部材70の中央部71aが、取付ボス部51Dに対して係止される。つまり、補強部材70の中央部71aは、取付ボス部51Dに対して、ポケット部材40の固定部41Dと共に、締め付け固定(いわゆる共締め)されている。
取付ボス部51Cは、ポケット部材40をロアボード22に取り付けるために利用されるものであり、補強部材70の前方部71bの取り付けにも利用される。つまり、取付ボス部51Cは、ポケット部材40の取付構造と、補強部材70の取付(係止)構造において、共用される。前方部71bを係止させるための取付ボス部51Cは、図9に示されるように、取付ボス部51Dよりも車両外側(図9の上方側)に近付く形で配されている。ロアボード22は、取付ボス部51Dが立設されている部分から取付ボス部51Cが立設されている部分に亘って車室外側に膨らんだ形をなしている。特に、取付ボス部51D付近がそれ以外の部分と比べて、幾分、急激に膨らんだ形となっている。そのため、上記のように、取付ボス部51Cが取付ボス部51Dよりも車両外側に近付く形となっている。
また、取付ボス部51Cの先端は、ポケット部材40が備える扁平な固定部41Cの孔部41aに挿入されている。そして、固定部41Cは、取付ボス部51Cの周囲に設けられているリブ56の上端に載せられた状態となっている。リブ56の高さ(ロアボード22の裏面22bからの高さ)は、取付ボス部51Cの高さ(ロアボード22の裏面22bからの高さ)よりも低く設定されており、リブ56の上端に固定部41Cが載せられると、固定部41Cの表面と、取付ボス部51Cの先端の位置が略同じとなる(本実施形態の場合、固定部41Cの表面位置の方が、取付ボス部51Cの先端位置よりも若干、高く設定されている)。なお、取付ボス部51Cの内側には、図9における上方(車両外側)に向かって開口した中空部51Caが設けられており、この中空部51Caの開口端が固定部41Cの孔部41aから露出する形となっている。
そして、図9に示されるように、固定部41Cの孔部41aから露出する取付ボス部51Cの開口端(中空部51Ca)と、取付孔72とが車幅方向(取付ボス部51Cの立設方向)において重なる形で、補強部材70の前方部71bが固定部41Cの扁平な上端に載せられる。このように固定部41C上に載せられ前方部71bの取付孔72に、ねじ状の金属製の締結部材(ビス)151Cが挿通され、更にその締結部材151Cが取付ボス部51Cの中空部51Caに挿入される。そして、締結部材151Cが、中空部51Ca内に挿入された状態で取付ボス部51Cの内周面に螺着されることにより、補強部材70の前方部71bが、取付ボス部51Cに対して係止される。つまり、補強部材70の前方部71bは、取付ボス部51Cに対して、ポケット部材40の固定部41Cと共に、締め付け固定(いわゆる共締め)されている。
なお、図9に示されるように、補強部材70は、中央部71aから前方部71bに亘って、車両外側に向かって徐々に近づく形となっている。つまり、補強部材70は、図9において、中央部71aから前方部71bに向かって上昇するように傾斜した形をなしている。なお、補強部材70は、取付ボス部51Dと取付ボス部51Cとの間に配されているポケット部材40の上縁部40bと車幅方向において接触しないように、前記上縁部40bとの間に隙間を備えている。
取付ボス部54Aは、衝撃吸収部材60をロアボード22に取り付けるために利用されるものであり、補強部材70の後方部71cの取り付けにも利用される。つまり、取付ボス部54Aは、ポケット部材40の取付構造と、補強部材70の取付(係止)構造において、共用される。後方部71cを係止させるための取付ボス部54Aは、図9に示されるように、取付ボス部51Dよりも車室内側(図9の下方側)に近付く形で配されている。ロアボード22は、取付ボス部51Dが立設されている部分から取付ボス部54Aが立設されている部分に亘って車室内側に向かって緩やかに膨らんだ形をなしている。換言すれば、取付ボス部54Aが立設されている部分から取付ボス部51Dが立設されている部分に亘って車室外側に向かって緩やかに膨らんだ形をなしている。そのため、取付ボス部54Aが取付ボス部51Dよりも車幅方向において車室外側から遠ざかる形となっている。
補強部材70の後方部71cは、取付ボス部54Aが取付孔73に挿通された状態で、取付ボス部54Aの周囲に設けられているリブ58の上端に載せられた状態となっている。このリブ58は、他の取付ボス部51D,51Cの周囲に設けられているボス56と比べて、高さ(ロアボード22の裏面22bからの高さ)が低く設定されており、取付ボス部54Aの根元側のみに形成されている。そのため、補強部材70の後方部71cは、取付ボス部54Aの根元側に配設される形となっている。また、後方部71cは、取付孔73内に取付ボス部54Aが圧入された状態で、取付ボス部54Aに係止されている。取付ボス部54Aの直径(後述する溶着前の直径)は、根元側が先端側よりも大きく設定されており、取付孔73を囲む開口縁が取付ボス部54Aの根元側を締め付ける形となっている。
このように後方部71cが配設されている状態で、取付ボス部54Aには、更に、衝撃吸収部材60が備える固定部64が取り付けられている。固定部64の内側には、車幅方向(図9の上下方向)に貫通する取付孔64aが設けられており、この取付孔64aに取付ボス部54Aが挿通された状態で、固定部64が取付ボス部54Aに対して取り付けられている。なお、取付ボス部54Aの先端部分は、超音波溶着等の溶着手段を利用して樹脂製の固定部64に対して溶着されている。つまり、取付ボス部54Aは、衝撃吸収部材60の固定部64に対して、超音波カシメにより係止されている。
図9に示されるように、補強部材70の後方部71cは、固定部64の周囲にある衝撃吸収部材60と、ロアボード22との間で挟み付けられた状態となっている。つまり、補強部材70のうち、少なくとも後方部71cは、衝撃吸収部材60に対して接触した形となっている。そのため、本実施形態の補強構造10では、補強部材70が荷重を受けた場合、その荷重を衝撃吸収部材60に分散させ、かつ衝撃吸収部材60により吸収させることもできる。
なお、図9に示されるように、補強部材70は、中央部71aから後方部71cに亘って、車両内側に向かって近づく形となっている。つまり、補強部材70は、図9において、中央部71aから後方部71cに向かって下降するように傾斜した形をなしている。なお、補強部材70は、取付ボス部51Dと取付ボス部54Aとの間に配されているロアボード22の裏面22bに対して接触しないように、裏面22bとに間に隙間を備えている。
このような補強部材70は、ロアボード22側に対して、新たに締結個所を設けることなく、既存の取付ボス部51D,51C,54Aを利用して取り付けることができる。つまり、ロアボード22等のトリムボード21に対して、補強部材70を取り付けるための新たな取付ボス部を設ける必要がない。
補強部材70は、ポケット部材40がロアボード22の裏面22側に、各取付ボス部51D,51C等を利用して取り付けられた後、各取付ボス部51D,51C,54Aを利用して取り付けられる。その後、後方部71cが挟み付けられる形で、衝撃吸収部材60が取付ボス部54Aに対して取り付けられる。
本実施形態の補強部材70において、少なくとも、各取付ボス部51C,51D,54Aに係止される部分(中央部71a,前方部71b,後方部71c)は、ロアボード22側に対して接触しているものの、それ以外の部分は、ロアボード22側から離されている。
以上のような構成を備えたドアトリム20は、最終的に、裏面20b側が車室外側を向く形で、ドアインナパネルに取り付けられる。
以上のように、本実施形態のドアトリム20の補強構造10は、ロアボード(ドアトリム本体部)22の裏面22bに別体のポケット部材40が固定され、ロアボード22を貫通する開口部(ポケット開口部)28からポケット部材40の内部に至るドアポケット30を備える。そして、ロアボード22の裏面22bには、ロアボード22を補強する補強部材70と、補強部材70を係止する取付ボス部(係止部)51D,51C,54Aが設けられる。取付ボス部51Dは、開口部28に沿った開口縁281のうち、上縁部分281aに設定された主係止部をなす。取付ボス部51Cは、取付ボス部(主係止部)51Dの車両前方側に設定された副係止部をなし、取付ボス部54Aは、取付ボス部(主係止部)51Dの車両後方側に設定された副係止部をなしている。
本実施形態のドアトリム20の補強構造10は、例えば、車室外側から車幅方向に荷重を受けた際に、ドアトリム20がドアインナパネルやパイプ状部材等により裏面20b側から押圧されても、補強部材70が開口部28の開口縁281に沿う形で、各取付ボス部51D,51C,54Aに係止されているため、取付ボス部51D及びその周辺部分の破損が抑制される。その結果、最も応力が集中し易い個所である後端部281a2付近に割れや折れ等の破断不良が発生することが抑制される。要するに、本実施形態のドアトリム20の補強構造10では、上記のように荷重を受けた際に、最も応力が集中し易い個所である後端部281a付近に立設されている取付ボス部51Dが、補強部材70によって保護されるため、取付ボス部51Dの破損に起因して開口部28から上方に向かって生じる破断不良の発生が抑制される。
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態において、補強部材70は、一枚の板状をなしていたが、本発明はこれに限られず、他の実施形態においては、例えば、剛性を向上させる等の目的で、板状の本体部71における長手方向の縁部分が、車室内側又は車室外側に折り返されているものであってもよい。また、補強部材70としては、本発明の目的を達成できるものであれば、板状以外の形状であってもよい。
(2)上記実施形態において、衝撃吸収部材60は、ブロック状の硬質ウレタンフォームからなるものが用いられていたが、本発明はこれに限られず、他の実施形態においては、他の形態の衝撃吸収部材が利用されてもよい。例えば、合成樹脂の成形品からなり、基板上に4つの壁状のリブ(交差リブ)が、互いに十字状をなす形で配されている形態のものを衝撃吸収部材として利用されてもあってもよい。このようなリブ形状を利用した衝撃吸収部材にも、ドアトリム本体部(トリムボード)に対する取付部(固定部)を設け、その取付部が取付ボス部54Aに対して係止されてもよい。なお、この取付部は、他の部分と同様、合成樹脂製であり、取付ボス部54Aを挿通可能な孔部と、この孔部を囲む扁平な開口縁部とを備えている。このよう取付部を、取付ボス部54Aに取り付ける場合には、上記実施形態の衝撃吸収部材60のように、硬質ウレタンフォーム部分とは別体のワッシャー状(環状)の固定部64を用意する必要はなく、直接、取付ボス部54Aを超音波カシメによって溶融し、前記扁平な開口縁部を含む取付部に対して溶着すればよい。
(3)上記実施形態では、ドアポケット30の開口部28(収納口31)は、車両前後方向に亘って細長く延びつつ後方側が前方側よりも細くなった形をなしていたが、本発明はこれに限られず、他の実施形態においては、例えば、円形状の開口部であってもよいし、楕円形の開口部であてもよい。ただし、上述した実施形態のように、車両前後方向において前方側又は後方側の何れかが他方側よりも細くなっている開口部の場合、特に、その細くなっている側の開口部の周辺部分に応力が集中し易い。そのため、このような開口部を備えたドアトリムに、本発明の補強構造を適用することが好ましい。