以上のような超音波診断においては、第1走査面と第2走査面の設定に際して、それらの空間的関係を正確にかつ容易に認識できることが望まれる。特に、設定済み第1走査面に対して第2走査面を相対的に正しく設定することが求められる。特許文献1の図5A、図5B、図5C及び図5Dには2つの走査面の位置関係を表した像(アイコン)が示されている。その像においては、2つの走査面が単純な2つのラインで表現されているだけなので、2つの走査面の空間的関係を直感的に理解し難い。特に、そのような表示態様では、各走査面の回転状態、傾斜状態(走査面に交差する方向への傾斜状態)及び偏向状態(電子走査方向への傾斜状態)を表現することが困難である。特許文献2の図7には走査面の三次元表現が示されている。しかし、それはバイプレーンを表示するものではない。
以上の要請に応えるために、第1走査面を示す三次元像と第2走査面を示す三次元像とを含む三次元ガイダンス像を表示することが考えられる。しかし、第1走査面の実際の回転角度如何によって、ガイダンス像内において第1走査面を示す三次元像が単なる直線又はそれに近い形態になってしまうなら、第1走査面の形状等を認識することが不可能又は困難となる。第1走査面は超音波診断における主断面に合わされる面であるから、それについては検査者において常に明確に認識できる状況が保たれる必要がある。
なお、第2走査面は、通常、第1走査面の設定が完了した上で、補助的に設定される面である。それ故、仮に、第2走査面を表す三次元像が第2走査面の回転角度によって単純な直線又はそれに近い形態になるとしても、それによる問題は相対的に見て小さいと言いうる。第2走査面の位置及び姿勢の調整では、第2走査面が第1走査面に対して相対的に見てどのような位置及び姿勢にあるのかを観念できることの方が寧ろ大切となる。
本発明の目的は、第1走査面及び第2走査面の空間的関係を認識し易くすることにある。あるいは、本発明の目的は、第1走査面を基準としてそれに対して第2走査面を相対的に正しく設定するための情報を提供することにある。あるいは、経食道用プローブを用いて超音波診断を行う場合において、2つの走査面の設定を支援することにある。
本発明に係る超音波診断装置は、中心軸周りにおいてそれぞれ独立して回転可能な第1走査面及び第2走査面を形成する二次元アレイ振動子と、前記第1走査面と前記第2走査面の空間的関係を三次元的に表現したガイダンス像を形成するガイダンス像形成部と、を含み、前記ガイダンス像は、前記第1走査面を表した第1走査面模擬図形と、前記第2走査面を表した第2走査面模擬図形と、を含み、前記第1走査面の実回転角度にかかわらず、前記ガイダンス画像内において前記第1走査面模擬図形の表示回転角度が固定され、前記第1走査面に対する前記第2走査面の相対的な実回転角度に応じて、前記ガイダンス像内において前記第1走査面模擬図形に対する前記第2走査面模擬図形の相対的な表示回転角度が定められる、ことを特徴とするものである。
上記構成によれば、ガイダンス像において、第1走査面模擬図形に対する第2走査面模擬図形の位置や姿勢を観察することにより、生体内三次元空間における第1走査面と第2走査面の空間的な関係を直感的に認識することが可能となる。例えば、第1走査面を目的断面に正しく位置決めした上で、ガイダンス像の内容を観察しながら、第1走査面との間に所定の空間的関係が成立するように、第2走査面の回転角度が定められる。
三次元表現されるガイダンス像において、第1走査面の実回転角度に応じて第1走査面模擬図形の表示回転角度を変化させることも可能である。しかし、その場合、第1走査面模擬図形の表示回転角度如何によっては、第1走査面模擬図形の表示態様が単なる1本の線あるいはそれに近い形態になってしまう。そのようなケースでは、第1走査面の広がり等を認識することが困難となる。第1走査面模擬図形に対する第2走査面模擬図形の相対的関係を空間的に認識する際にも支障が生じる。第1走査面模擬図形と第2走査面面図形の両方が自由に回転すると、空間的認知上、混乱を招きやすいという点も指摘できる。そこで、上記構成では、第1走査面の実回転角度にかかわらず、第1走査面模擬図形の表示回転角度(ガイダンス像における、仮想的な中心軸周りの第1走査面模擬図形の回転角度)を固定値にしている。第1走査面模擬図形として、例えば下向きに広がった扇状の図形を斜め上方から見たような図形が表示される。第1走査面の実回転角度を認識することが必要であれば、その実回転角度を数値表示したり、回転角度を表す回転子で表示したりしてもよい。ガイダンス像において、第1走査面模擬図形は、回転方向に不動であるが、実際の第1走査面の状態が現されるように、第1走査面模擬図形が他の方向(傾斜方向、偏向方向)に運動してもよい。また、第1走査面模擬図形の電子走査方向の幅が変化してもよい。
ガイダンス像において、第2走査面模擬図形の表示回転角度は、第1走査面に対する第2走査面の相対的な実回転角度を表す。よって、ガイダンス像を参照することにより、第1走査面に対する第2走査面の相対的な回転角度を認識しながら、当該第2走査面の実回転角度を定めることが可能である。第2走査面模擬図形の実際の表示態様がたまたま単なる1本の線あるいはそれに近い形態になったとしても、第1走査面に対する第2走査面の相対的角度は正しく認識され得る。各走査面模擬図形の基本形態を下向きに広がる扇状図形とし、2つの扇状図形を斜め上方から見たようなガイダンス像を構成すれば、特定の場合を除いて、第1走査面模擬図形及び第2走査面模擬図形を、それぞれ立体感をもって視認することが可能である。なお、三次元表現に際し、視点を任意に変更できるようにしてもよいが、簡易な演算のためには視点を固定するのが望ましい。
望ましくは、前記ガイダンス像内においては前記第1走査面模擬図形の一方面が常に現れており、前記ガイダンス像生成部は、前記第1走査面模擬図形の一方面に対して第1識別処理を適用し、前記ガイダンス像内において前記第2走査面模擬図形の一方面が現れている場合にはその一方面に対して第2識別処理を適用し、前記ガイダンス像内において前記第2走査面模擬図形の他方面が現れている場合にはその他方面に対して第3識別処理を適用し、前記第1識別処理、前記第2識別処理及び前記第3識別処理は互いに異なる。この構成によれば、それぞれの面を区別して認識することが可能である。特に、第2走査面模擬図形の表面が見えているのか裏面が見えているのかを容易に識別できる。識別処理は、望ましくは着色処理であるが、他の処理を利用してもよい。
望ましくは、前記第1識別処理は前記第1走査面模擬図形の一方面を第1色で表現する処理であり、前記第2識別処理は前記第2走査面模擬図形の一方面を前記第1色とは異なる第2色で表現する処理であり、前記第3識別処理は前記第2走査面模擬図形の他方面を前記第1色及び前記第2色とは異なる第3色で表現する処理である。この構成によれば、色相をもって各面を容易に識別できる。
望ましくは、前記ガイダンス像生成部は、前記第1走査面模擬図形中において前記第2走査面模擬図形を隠してしまう部分に対して半透明処理を施す。この構成によれば、第2走査面模擬図形の手前側に存在する部分を半透明表現して、その部分を通じて奥側の部分を観察することが可能となる。つまり、第2走査面模擬図形を認識し易くなる。手前側に存在する部分に対する半透明処理に加えて、奥側の部分に対して半透明処理を施してもよい。
望ましくは、前記ガイダンス像は、前記第1走査面及び前記第2走査面を含む生体内三次元空間の仮想的な基底面を表した基底面模擬図形を含む。望ましくは、前記基底面模擬図形上において、前記第1走査面模擬図形が静止し、且つ、前記第2走査面模擬図形が前記第2走査面の実回転角度に応じて回転する。基底面は、座標系を表す面であり、それを模擬した図形が基底面模擬図形である。その表示により三次元空間を直感的に認識し易くなる。
望ましくは、前記基底面模擬図形は、枠図形と、その内部に表現されたクロス図形と、を含む。この構成によれば、第2走査面模擬図形の回転角度を認識し易くなる。望ましくは、枠図形は四角形を斜め上方から見たような図形であり、クロス図形は十字図形を斜め上方から見たような図形である。基底面模擬図形の内で、いずれかの走査面模擬図形に隠れてしまう部分については非表示としてもよいし、半透明表現されてもよい。
望ましくは、前記ガイダンス像は、更に、前記第1走査面を形成するためのビーム走査における基準端を示す静止図形としての第1基準端図形と、前記第2走査面を形成するためのビーム走査における基準端を示す運動図形としての第2基準端図形と、を含み、前記ガイダンス像内において前記中心軸に対応する仮想的な中心軸周りで前記第2走査面模擬図形が回転する際、それに伴って前記第2基準端図形も回転する。各基準端は望ましくは電子走査開始端である。基準端図形は、基準端がいずれの側であるのかを示す図形である。
望ましくは、前記第1基準端図形の色は前記第1走査面模擬図形に対して施されている色と同じであり、前記第2基準端図形の色は前記第2走査面模擬図形に対して施されている色と同じである。この構成によれば、図形間の対応関係を見誤ることを防止できる。望ましくは、前記第1基準端図形及び前記第2基準端図形はそれぞれ球体のように表現される。球体であれば、つまり立体表現されれば、ガイダンス像内において、回転しても常に同じようなサイズ及び形態で表示されるから、視認性を向上できる。球体表現に際しては陰影処理を施すのが望ましい。
望ましくは、前記第1走査面及び前記第2走査面の内で少なくとも一方の走査面が当該一方の走査面に交差する傾斜方向に運動可能であり、前記一方の走査面の傾斜角度に応じてそれに対応する走査面模擬図形の傾斜角度が定められる。望ましくは、前記第1走査面及び前記第2走査面の内で少なくとも一方の走査面が当該一方の走査面の電子走査方向としての偏向方向に運動可能であり、前記一方の走査面の偏向角度に応じてそれに対応する走査面模擬図形の偏向角度が定められる。このように、ガイダンス像内において、第2走査面の相対的な回転に加え、一方又は両方の走査面についての傾斜状態や偏向状態が表現されてもよい。
本発明に係る超音波診断装置は、中心軸周りにおいてそれぞれ独立して回転可能な第1走査面及び第2走査面を形成する二次元アレイ振動子を有する経食道用プローブと、前記第1走査面に対応する第1断層画像及び前記第2走査面に対応する第2断層画像を形成する断層画像形成部と、前記第1走査面と前記第2走査面の空間的関係を三次元的に表現したガイダンス像を形成するガイダンス像形成部と、表示画面上に前記第1断層画像及び前記第2断層画像を左右方向に並べて表示すると共に、前記表示画面上における前記第1断層画像と前記第2断層画像との間の中間領域に前記ガイダンス像を表示する表示部と、を含み、前記ガイダンス像は、前記第1走査面を表した第1走査面模擬図形と、前記第2走査面を表した第2走査面模擬図形と、を含み、前記第1走査面の実回転角度にかかわらず、前記ガイダンス画像内において前記第1走査面模擬図形の表示回転角度が固定され、前記第1走査面に対する前記第2走査面の相対的な実回転角度に応じて、前記ガイダンス画像内において前記第1走査面模擬図形に対する前記第2走査面模擬図形の相対的な表示回転角度が定められる、ことを特徴とするものである。
望ましくは、前記第1断層画像の近傍に、前記第1走査面を形成するための第1ビーム走査における第1基準端を示す第1基準端マーカーが表示され、前記第2断層画像の近傍に、前記第2走査面を形成するための第2ビーム走査における第2基準端を示す第2基準端マーカーが表示され、前記ガイダンス像は、更に、前記第1基準端を示す静止図形としての第1基準端図形と、前記第2基準端を示す運動図形としての第2基準端図形と、を含む。
本発明によれば、第1走査面及び第2走査面の空間的関係を認識し易くなる。あるいは、本発明によれば、第1走査面を基準としてそれに対して第2走査面を相対的に正しく設定するための情報を提供できる。あるいは、経食道用プローブを用いて超音波診断を行う場合において、2つの走査面の設定を支援できる。
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
図1には、本発明に係る超音波診断装置の好適な実施形態が示されている。この超音波診断装置は病院等の医療機関に設置され、被検者に対する超音波の送受波により超音波画像を形成する装置である。本実施形態に係る超音波診断装置は以下に詳述するように経食道プローブを備えている。経食道プローブを用いて心臓に対する体内からの超音波診断が実施される。
図1において、超音波診断装置は、経食道プローブ10と装置本体12とを有している。経食道プローブ10は、挿入管、操作部、ケーブル及びコネクタ等で構成され、図1においては、挿入管における先端部としてのヘッド14が示されている。ヘッド14は、被検者の口から食道へ差し込まれる。ヘッド14の基端側には図示されていない関節部が設けられている。操作部における1又は複数のつまみを操作することにより、ヘッド14を任意の方向に向けることが可能である。
ヘッド14内には積層体16が配置されている。積層体16は振動子18及び電子回路20を有している。振動子18は、X軸方向及びY軸方向に整列した複数の振動素子により構成される。例えば数千個の振動素子により構成される。振動子18は、いわゆる2Dアレイ振動子であり、それによって第1走査面24及び第2走査面26が電子的に形成される。図1に示す例においては、第1走査面24に対して直交関係をもって第2走査面26が形成されている。各走査面24,26は振動子18の中心軸22を回転軸として個別的に回転運動する。検査者すなわちユーザーにより個々の走査面24,26の回転角度を任意に定めることが可能である。超音波ビームの二次元走査により、いわゆるボリュームデータを取得することも可能である。
第1走査面24は、超音波ビームを電子走査することにより形成される。第2走査面26も超音波ビームを電子走査することにより形成される。本実施形態においては、振動子18として2Dアレイ振動子が設けられているため、任意の方向に超音波ビームを形成することが可能であり、すなわち各走査面24,26の位置及び姿勢を自在に定めることが可能である。一般に、心臓の超音波診断においては、心臓における、観察対象となる主断面に対して第1走査面24が合わせられ、次に、その状態を維持したまま、心臓における補助断面(副断面)に対して第2走査面が合わせられる。2つの走査面に対応する2つのリアルタイム断層画像を観察することにより、心臓の機能等が診断される。2つの走査面24,26の回転角度に加えて、2つの走査面24,26の走査範囲を自在に可変することが可能である。2つの走査面24,26の内の一方又は両方についての傾斜角度及び偏向角度を任意に可変できるように構成するのが望ましい。
電子回路20はチャンネルリダクション回路として機能する。すなわち、電子回路20は、複数の送信サブビームフォーマ及び複数の受信サブビームフォーマを構成するものである。電子回路20がヘッド14内に配置されていることにより、挿入管等を通過する信号線数を大幅に削減できる。ちなみに、図1においては、第1走査面24及び第2走査面26が振動子18の上側に描かれている。このような態様において、上方から見て角度θは反時計回り方向として定義される。
次に、装置本体12について説明する。送受信部28は、送信メインビームフォーマ及び受信メインビームフォーマとして機能する。送信時において、送受信部28は、振動子18に向けて複数の送信信号を供給する。また、受信時において、振動子18から出力される複数の受信信号が送受信部28に入力され、送受信部28において整相加算される。これにより、超音波ビームごとにビームデータが得られる。
例えば、三次元空間において超音波ビームの二次元スキャンを実行した場合、複数のビームデータからなるボリュームデータが取得され、それが三次元画像形成部30へ送られる。三次元画像形成部30は、ボリュームデータに基づいて生体内の三次元領域を立体的に表現した三次元画像を形成する。その画像データは表示処理部34へ送られる。
1Bモード(通常のBモード)が選択されている場合、1つの走査面が形成され、それに対応する複数のビームデータすなわちフレームデータが断層画像形成部32に送られる。断層画像形成部32は、フレームデータに基づいてBモード画像を形成する。その画像データが表示処理部34へ送られる。2Bモード(バイプレーン表示モード)が選択された場合、第1走査面24及び第2走査面26に対応する2つのフレームデータが断層画像形成部へ順次送られる。断層画像形成部32は、第1走査面24に対応する第1走査画像及び第2走査面26に対応する第2走査画像を順次形成し、それらの画像データを表示処理部34へ送る。
表示処理部34は、画像合成機能、カラー処理機能等を備える。表示処理部34から出力された信号が表示部42に送られる。表示部42の表示画面上には、三次元画像、2つの断層画像(バイプレーン画像)等が表示される。制御部36は、CPU及びプログラムによって構成される。その機能としてグラフィック画像形成部38が図示されている。グラフィック画像形成部38は、超音波画像に合成されるグラフィック画像を形成するモジュールである。本実施形態においては、グラフィック画像形成部38がガイダンス像形成部40を備えている。ガイダンス像形成部40は、2Bモードすなわちバイプレーンモードにおいて、2つの断層画像の間に表示されるガイダンス像を形成するモジュールである。ガイダンス像については後に詳述する。表示処理部34は、2Bモードが選択された場合、2つのガイダンス像の間にガイダンス像が含まれるように画像合成処理を実行する。
入力部44はキーボードやトラックボール等を含む操作パネルである。入力部44を用いて、検査者はモード選択等を行うことができる。送受信部28は電子回路として構成され、断層画像形成部32及び三次元画像形成部30は専用のハードウェアとして構成される。表示処理部34もハードウェアとして構成される。グラフィック画像形成部38は実質的にソフトウェアの機能として実現されているが、それが専用のハードウェアによって構成されてもよい。ガイダンス像形成部40についても同様である。
図2には、表示部における表示画面46が示されている。そこではバイブレーン表示が行われている。すなわち、表示画面46には、第1断層画像48と第2断層画像50とが表示されている。それらはいずれもリアルタイムBモード断層画像である。第1断層画像48は第1走査面に対応する画像であり、第2断層画像50は第2走査面に対応する画像である。第1断層画像48の上部右隣には開始端マーカー52が表示されている。それは、第1走査面を形成する際における超音波ビーム走査における電子走査の開始側を示すものである。同様に、第2断層画像50の上部右側には開始端マーカー54が示されている。それは第2走査面を形成する際における超音波ビーム走査における電子走査の開始端を示すものである。そのようなマーカー52,54によって、表示された各断層画像が表面であるか裏面であるかを容易に識別できる。断層画像48にはマーカー56が示されている。このマーカー56は、第1走査面を横切る第2走査面の位置を示すものである。
第1断層画像48と第2断層画像50との間には逆三角形の形を有する隙間が生じている。その隙間に本実施形態においては三次元的なガイダンス像58が表示されている。ガイダンス像58は、第1走査面に対する第2走査面の相対的な空間的な関係を表す模式図である。ガイダンス像58には、後に説明するように、第1走査面の絶対的な回転角度を表す数値及び第2走査面についての絶対的な回転角度を示す数値が含まれる。隙間にガイダンス像58を表示したのでデッドスペースを有効活用できるという利点を得られる。あるいは、ガイダンス像58の表示によりいずれかの断層画像が部分的に隠されてしまう問題を回避できる。ガイダンス像58を他の位置に表示するようにしてもよい。
図3には、ガイダンス像の第1例が示されている。ガイダンス像は、第1走査面及び第2走査面を含む三次元空間を模擬した像であって、三次元空間を斜め上方から観察した三次元表現態様を有するものである。ガイダンス像58は、この第1例において、第1走査面模擬図形60と、第2走査面模擬図形62と、を有している。第1走査面模擬図形60は、第1色相としてのグレーで表現される。それは扇状の形態を有している。各走査面の形成にあたってはいわゆる電子セクタ方式が適用され、それによって形成される走査面は扇状であるため、第1走査面模擬図形60も扇状の形態を有している。第2走査面模擬図形62も扇状の形態を有している。ちなみに、図3における上方が振動子側であり、下方が心臓側である。第2走査面模擬図形62は、図3に示す態様において、いわゆる表(おもて)面を示しており、それに対しては赤の着色が施されている。仮想的な中心軸68すなわちZ軸を境として、第1走査面模擬図形60は、一方側部分60Aと他方側部分60Bとに区別される。同様に、第2走査面模擬図形62は中心軸68を境として、一方側部分62Aと他方側分62Bとに区別される。第1走査面模擬図形60における一方側部分60Aの内で、一部76が第2走査面模擬図形62における一方側部分62Aの一部を覆っている。本実施形態においては、その一部76(すなわち手前側部分)に対して半透明処理が施されている。その部分は例えばグレーと赤の中間色をもって表現される。この構成によれば一部76を介してその裏側にある第2走査面模擬図形62の全部を観察することが可能である。
第1走査面模擬図形60における他方側部分60Bの内で一部分が第2走査面模擬図形62における一部74によって覆われている。本実施形態においては、そこに対しては半透明処理が施されていないが、その一部74に対して半透明処理を施すようにしてもよい。少なくとも表側にある部分に対して半透明処理を施せば、裏側にある部分が完全に隠されてしまう事態を回避できる。本実施形態よれば、第2走査面模擬図形62の全体をより明確にかつ立体的に認識できるという利点を得られる。
ガイダンス像58は、第1走査面模擬図形60及び第2走査面模擬図形62の他、第1球66、第2球67及び基底面模擬図形64等を有している。第1球66は、第1走査面についての電子走査開始端を表すグラフィック要素であり、第2球67は第2ビーム走査における電子走査開始端を示すグラフィック要素である。第1球66は、第1走査面模擬図形60と共に中心軸68回りにおいて回転運動する。同じく、第2球67は第2走査面模擬図形62と共に中心軸68回りにおいて回転運動する。第1球66は第1走査面模擬図形60と同じ色で表示され、具体的にはグレー表現されている。第2球67は、第2走査面模擬図形62に対して施された色により着色されており、図示の例においては赤色で表現されている。2つの球66,67とも、印影処理が施されており、すなわち立体的な球のように表現されている。その結果、どの回転位置にあっても各球66,67を明瞭に認識することが可能である。ちなみに、2つの球が重なりあった場合には、手前側の球が優先的に表示される。
基底面模擬図形64は、三次元空間の広がりを表現するグラフィック要素であり、本実施形態において、基底面模擬図形64は、枠64Aと十字64Bとからなる。十字64BはX軸線66xとY軸線66yとからなる。それらの軸線66x,66yは中心軸68においてクロスしている。2つの走査面を含む立方体状の三次元空間を想定した場合、この基底面模擬図形64は三次元空間の底面に相当するものである。このような基底面模擬図形64を2つの走査面模擬図形60,62の下側に描くことにより、それらの回転角度を直感的に認識し易くなる。
ガイダンス像58は、2つのインジケータ70,72を有している。インジケータ70は絶対角度インジケータであり、それは第1走査面の絶対的な回転角度すなわち実回転角度を表している。図3においては0度が示されている。つまり、第1走査面の実回転角度は0度である。インジケータ72も絶対角度インジケータであり、それは第2走査面の絶対的な回転角度を示すものである。図3においてインジケータ72は45度を示している。
本実施形態においては、ガイダンス像58において、第1走査面模擬図形60の表示回転角度は常に固定されている。すなわち、第1走査面の実回転角度が変動しても、ガイダンス像58内において、第1走査面模擬図形60の姿勢は回転方向に変化しない。表示回転角度は、中心軸68周りにおける図形の回転角度である。第1走査面模擬図形60が固定的に表示されるとしても、絶対角度インジケータ70の値を読み取ることにより、第1走査面の絶対的な回転角度を正しく認識することが可能である。
第2走査面模擬図形62の表示回転角度は、第1走査面に対する第2走査面の相対的な回転角度に従って、定められる。例えば第1走査面に対して第2走査面が相対的に45度回転している場合、図3に示すように、第1走査面模擬図形60からθ方向(時計回り方向)に45度回転した姿勢をもって第2走査面模擬図形62が表現される。その際、インジケータ72を参照することにより、第2走査面の絶対的な回転角度を具体的に認識することができる。通常の超音波検査においては、第1走査面を定めた上で第2走査面を設定する際、医師は第2走査面の絶対的な回転角度として定めるべき角度を知っているので、本実施形態ではインジケータ72として絶対的な回転角度を表示するようにしている。但し、インジケータ72により、第1走査面に対する第2走査面の相対的な回転角度を表示するようにしてもよい。あるいは、第2走査面について絶対的な回転角度と相対的な回転角度の両方を表示するようにしてもよい。ちなみに、第2走査面模擬図形62が一定角度回転して、見えている面(表示面)が表面から裏面に切り替わった場合、その裏面は赤色とは別の色相、例えば黄色で示される。したがって、第2走査面62に施されている色相を見ることにより、現状において表面が表示されているのか裏面が表示されているのかを誤りなく認識することが可能である。ちなみに、その表示色と第2球67との表示色は同一とされているため、第2球67と第2走査面模擬図形62との対応関係を誤認することはない。
図4に示すフローチャートは操作及び動作を示す流れ図である。S10においては、挿入管が食道内に挿入される。S12においては、検査者の操作によりヘッド位置及び姿勢が調整される。S14においては、この例において、まず1Bモードが選択され、表示された断層画像を見ながら、第1走査面の回転角度等が調整される。その場合においては、経食道プローブの操作部に設けられたつまみあるいは操作パネル上のつまみが操作される。第1走査面の回転角度が適切に設定された上、S16において、2Bモードへの切替が実施される。これにより、図2に示したように2つの断層画像が並列表示される。それらの画像の間にガイダンス像が表示される。S18では、ガイダンス像における表示内容を参照しつつ、2Bモードにおいて、第2走査面の回転角度等が調整される。その場合においても、操作部上あるいは操作パネル上のつまみが操作される。例えば、第1走査面に対して直交した第2走査面を設定する場合、2つのインジケータを参照しつつ、第2走査面が正しく直交するように回転角度が調整される。ガイダンス像においては、第2走査面模擬図形が第1走査面模擬図形に対する相対的な回転位置に表示されるので、第1走査面を基準としつつ、それとの関係において第2走査面を適切かつ迅速に設定することが可能である。S20においては、必要であれば、第1走査面又は第2走査面の回転角度等が再調整される。
なお、図4に示す例においては、2Bモードからガイダンス像が表示されたが、最初からガイダンス像が表示されていてもよい。
図5には、ガイダンス像の第2例が示されている。ガイダンス像82は、図3に示した第1例と同様に、第1走査面模擬図形84と第2走査面模擬図形86とを有し、更に第1球90及び第2球92を有している。インジケータ88に示すように、第2走査面の相対的な回転角度は225度であり、つまり図5において、第2走査面模擬図形86においては裏面86Aが現れている。この面は本実施形態において黄色で表現されている。これに伴い第2球92も黄色で表現されている。第1走査面模擬図形84及び第1球90はいずれもグレーで表現されている。
図6には、ガイダンス像の第3例が示されている。ガイダンス像100は、第1走査面模擬図形102及び第2走査面模擬図形104を有する。第2走査面模擬図形104においては表面104Aが表れており、それは赤色で表現されている。ガイダンス像100で示されるように、第2走査面模擬図形104は、それに交差(直交)する傾斜方向に傾斜している。すなわち、第2走査面模擬図形104の傾斜角度として、第2走査面の実際の傾斜角度が表現されている。傾斜状態にある第2走査面模擬図形104が更に回転運動するように構成してもよい。
図7にはガイダンス像の第4例が示されている。ガイダンス像106は、第1走査面模擬図形108と第2走査面模擬図形110とを有する。第1走査面模擬図形108は、第1ビーム走査方向に偏向した姿勢を有している。すなわち、第1走査面模擬図形108の中心線が第1ビーム走査方向に傾斜しており、第1走査面模擬図形108において回転中心軸に対して非対称の状態が生じている。図7においては、絶対回転角度0度が付された第1走査面模擬図形に対して、絶対的回転角度45度が付された第2走査面模擬図形110が45度の角度をもって交差している。なお、各走査面模擬図形108,110は、各走査面の実際の走査範囲に対応した広がり角度をもって表現されている。
上記実施形態においては、各走査面模擬図形の基本形態として扇状の形態が採用されたが、便宜的に三角形の形態を採用することも可能である。本実施形態においては、2つの走査面を含む三次元空間に対してその斜め上方に視点を設定したが、その視点を自由に変更できるようにしてもよい。本実施形態のような視点設定によれば、2つの模擬図形の空間的な関係を俯瞰的に認識し易いという利点を得られる。本実施形態に示したガイダンス像を倒立させるようにしてもよい。その場合においては基底面模擬図形をガイダンス像の上側に表示してもよいし、その下側に表示するようにしてもよい。