JP5983731B2 - スタッドピン及び空気入りタイヤ - Google Patents
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Description
一般に、スタッドピンは、トレッド部に設けられたスタッドピン取付用孔に埋め込まれる。このとき、タイヤ転動中に路面から受ける制駆動力や横力によってスタッドピンがスタッドピン取付用孔から抜け落ちることがないようにスタッドピンは孔径を拡張して孔内にきつく埋め込まれている。
上記スタッドピンを装着した空気入りスタッドタイヤでも、コンクリート路面やアスファルト路面上において、制駆動時やコーナリング時にタイヤが路面から受ける力によってスタッドピンの抜け(以降、ピン抜けという)が多く発生する場合がある。スタッドピンの路面における引っ掻き力が増加すると、この引っ掻き力が、タイヤのトレッドゴム部材がスタッドピンを保持しようとする力に打ち勝って、スタッドピンが多数抜ける場合もある。このため、上記空気入りスタッドタイヤにおいても、ピン抜けをより一層改善することが求められる。
当該スタッドピンは、
トレッド部から突出して路面と接触する先端部と、
一方向に延在し、前記先端部と反対側の端に設けられるフランジ状の底部と、前記底部と前記先端部との間に設けられるフランジ状の胴体部と、を備え、装着される空気入りタイヤのトレッド部内に埋設され、前記底部及び前記胴体部がスタッドピン取付用孔の側面から押圧されることにより前記スタッドピンを固定する埋設基部と、を有する。
前記底部は、前記スタッドピン取付用孔の側面と接触する外周側面に、前記外周側面に沿って形成された複数の第1の凹部を備え、前記胴体部は、前記スタッドピン取付用孔の側面と接触する外周側面に、前記外周側面に沿って形成された複数の第2の凹部を備える。
前記底部における前記第1の凹部と前記胴体部における前記第2の凹部は、前記埋設基部の外周側面の同じ周上の位置に設けられている。
前記胴体部の前記最大寸法L2は、前記底部の前記最小寸法L4より長い、ことが好ましい。
前記先端部と反対側の前記埋設基部の底部の底面から前記先端部の端までの高さをH1とし、前記底面から前記底部の上端までの高さをH2としたとき、前記高さH2に対する前記高さH1の比H1/H2は、6.0〜9.0である、ことが好ましい。
前記埋設基部の延在方向と直交する幅方向における前記底部の最小寸法L4は、前記スタッドピン取付用孔の前記底部と当接する前記曲面の前記円筒形状の直径より長い、ことが好ましい。
前記埋設基部の延在方向と直交する幅方向における前記胴体部の最小寸法L5は、前記スタッドピン取付用孔の前記胴体部と当接する前記曲面の前記円筒形状の直径より長い、ことが好ましい。
以下、本実施形態の空気入りタイヤについて説明する。図1は、本実施形態の空気入りタイヤ(以降、タイヤという)10の断面を示すタイヤ断面図である。タイヤ10は、トレッド部にスタッドピンが埋め込まれたスタッドタイヤである。
タイヤ10は、例えば、乗用車用タイヤである。乗用車用タイヤは、JATMA YEAR BOOK 2012(日本自動車タイヤ協会規格)のA章に定められるタイヤをいう。この他、B章に定められる小型トラック用タイヤおよびC章に定められるトラック及びバス用タイヤに適用することもできる。
以降で具体的に説明する各パターン要素の寸法の数値は、乗用車用タイヤにおける数値例であり、空気入リタイヤはこれらの数値例に限定されない。
タイヤ10は、骨格材として、カーカスプライ層12と、ベルト層14と、ビードコア16とを有する。タイヤ10は、これらの骨格材の周りに、トレッドゴム部材18と、サイドゴム部材20と、ビードフィラーゴム部材22と、リムクッションゴム部材24と、インナーライナゴム部材26と、を主に有する。
この他に、タイヤ10は、ベルト層14のタイヤ径方向外側からベルト層14を覆う、有機繊維をゴムで被覆したベルトカバー層28を備える。
図2は、タイヤ10のトレッドパターン30を平面上に展開したトレッドパターンの一部の平面展開図である。タイヤ10は図2に示されるように、タイヤ周方向の一方の向きを示す回転方向Rが指定されている。回転方向Rの向きは、タイヤ10のサイドウォール表面に設けられた数字、記号等によって表示され指定されている。図2では、トレッド部に装着されるスタッドピンの図示は省略されている。スタッドピン(図3参照)は、図2に示されるピン取付用孔(図2中の黒丸部分)に装着される。
第3傾斜溝40は、第1傾斜溝36の途中から、タイヤ周方向に隣り合う第2傾斜溝38を横切って、さらに、タイヤ周方向において第2傾斜溝38に隣り合う第1傾斜溝36を横切って、タイヤショルダー領域で閉塞する。第3傾斜溝40は、タイヤ周方向の一方向、すなわち、タイヤ回転方向Rと逆方向(図2では、上方向)に延び、かつタイヤ幅方向外側に延びている。
このようなトレッドパターン30において、スタッドピン取付用孔(図2中の黒丸部分)に、後述するスタッドピン50が装着される。
第1周方向主溝32,34、第1傾斜溝36、第2傾斜溝38、及び第3傾斜溝40の溝深さは、例えば8.5〜10.5mmであり、溝幅は、例えば最大12mmである。図2に示すトレッドパターンは一例であり、本実施形態のスタッドピンを装着するタイヤのトレッドパターンは、図2に示す形態に限定されない。
図3は、本実施形態のスタッドピン50の外観斜視図である。図4Aは、トレッド部に装着されたスタッドピン50の側面図であり、図4Bは、スタッドピン50の寸法を定義する図である。
スタッドピン50は、先端部52と、埋設基部54と、を主に有する。埋設基部54は、装着される空気入りタイヤのトレッド部のスタッドピン取付用孔内に埋設され、スタッドピン取付用孔の側面から押圧されて締め付けられることによりスタッドピン50がタイヤ10に固定される。埋設基部54は、先端部52と接続している。埋設基部54は、胴体部56と、底部58と、シャンク部60と、を含む。底部58は、先端部52と反対側の端に位置する。スタッドピン50は、底部58、シャンク部60、胴体部56、及び先端部52が、この順に方向Xに沿って形成されている。方向Xは、埋設基部54が延びる延在方向である。
胴体部56を具体的に説明すると、胴体部56の断面は、頂点が丸くなった略4角形形状の4辺が凹んで4つの第2の凹部56aがつくられた形状となっている。本実施形態では、第2の凹部56aは外周側面に4つ設けられるが、第2の凹部56aは少なくとも2つ以上、すなわち、2つ、3つ、5つ、6つ等設けられてもよい。胴体部56の断面は、頂点が丸くなった略4角形形状でなくてもよく、略3角形形状、5角形形状、6角形形状等の略多角形形状であってもよい。この場合、略多角形形状の少なくとも2辺において辺が凹んで第2の凹部56aがつくられているとよい。勿論、略多角形形状の一部の辺あるいは全ての辺、すなわち、2辺、3辺、4辺、5辺、6辺等において辺が凹んで複数の第2の凹部56aがつくられてもよい。
このとき、底部58の最大寸法L1は、胴体部56の最大寸法L2より長く、底部58の最小寸法L4は、胴体部56の最小寸法L5より長く、胴体部56の最大寸法L2は、底部58の最小寸法L4より長い、ことが好ましい。このような寸法を設定することにより、底部58と胴体部56がトレッドゴム部材18から受ける締め付け力のバランスを保ち、スタッドピン50の耐ピン抜け性を向上させる。
これに対して、比L1/L2が1.0より小さい場合、図6Bに示すように、空隙61の上部周辺で図中上方向に向いた力(図中の矢印)が発生し易い。このため、比L1/L2が1.0より小さい場合、スタッドピン50は、トレッドゴム部材18の外部(タイヤ径方向外側)の方向に力を受け、スタッドピン50はトレッドゴム部材18から抜け易くなる。
本実施形態のスタッドピンによる効果を確認するために、図1,2に示すタイヤ10を作製し、スタッドピンを装着した。このタイヤを乗用車に装着して、氷上性能を代表して氷上制動性能を調べるとともに、耐ピン抜け性を調べた。
作製したタイヤのタイヤサイズは、205/55R16とした。乗用車は、排気量2000ccの前輪駆動のセダン型乗用車を用いた。タイヤの内圧条件は、前輪、後輪ともに230(kPa)とした。各タイヤの荷重条件は、前輪荷重を450kg重、後輪荷重を300kg重とした。
氷上制動性能は、走行速度40km/時から、ブレーキぺダルを最深位置まで一定の力で踏み込んで乗用車が停止するまでの距離(制動距離)を複数回(5回)測定し、測定値の平均値を算出した。
耐ピン抜け性は、アスファルト路面及びコンクリート路面を含む乾燥路面上を車両が1000km、一定速度で走行したときの、装着した全スタッドピンの数に対するトレッド部に残ったスタッドピンの数の比率を求めた。
上記制動距離の測定値の平均値の逆数と、残ったスタッドピンの数の比率とをそれぞれ、後述する従来例における制動距離の測定値の平均値の逆数と、残ったスタッドピンの数の比率を基準として(指数100として)、指数化した。
従来例のスタッドピンは、埋設基部54の底部58及び胴体部56の外周側面に凹部が設けられていない。比較例では、胴体部56に第2の凹部56aが設けられ、底部58に第1の凹部58aが設けられ、先端部52に窪みが設けられているが、第2の凹部56aと第1の凹部58aは、同じ周上の位置に設けられていない。
実施例1〜21、比較例、及び従来例のスタッドピンは、図1,2に示すタイヤ構造及
さらに、表2の実施例3〜6の比較より、R1<R3であること、R2<R4であることにより、耐ピン抜け性が向上するとともに氷上制動性能が向上することがわかる。特に、R1<R3であり、かつR2<R4であることでより、耐ピン抜け性が向上するとともに氷上制動性能が向上することがわかる。
12 カーカスプライ層
14 ベルト層
14a,14b ベルト材
15 ベルトカバー層
16 ビードコア
18 トレッドゴム部材
18a 上層トレッドゴム部材
18b 下層トレッドゴム部材
20 サイドゴム部材
22 ビードフィラーゴム部材
24 リムクッションゴム部材
26 インナーライナゴム部材
30 トレッドパターン
32,34 周方向主溝
36 第1傾斜溝
38 第2傾斜溝
40 第3傾斜溝
50 スタッドピン
52 先端部
52a 窪み
54 埋設基部
56 胴体部
56a 第2の凹部
56b 第2の凸部
56c,58b,60b 面取り
58 底部
58a 第1の凹部
58c 第1の凸部
60 シャンク部
Claims (14)
- 空気入りタイヤのトレッド部のスタッドピン取付用孔に装着されるスタッドピンであって、
トレッド部から突出して路面と接触する先端部と、
一方向に延在し、前記先端部と反対側の端に設けられるフランジ状の底部と、前記底部と前記先端部との間に設けられるフランジ状の胴体部と、前記底部と前記胴体部とを接続し前記底部および前記胴体部に比べて小さい円形状の断面を有するシャンク部とを備え、装着される空気入りタイヤのトレッド部内に埋設され、前記底部及び前記胴体部がスタッドピン取付用孔の側面から押圧されることにより前記スタッドピンを固定する埋設基部と、を有し、
前記先端部の外周側面には、前記外周側面の周に沿って少なくとも1つ以上の窪みが形成され、
前記底部は、前記スタッドピン取付用孔の側面と接触する外周側面に、前記埋設基部の延在方向に沿って前記底部の全長にわたって形成された複数の第1の凹部を備え、
前記胴体部は、前記スタッドピン取付用孔の側面と接触する外周側面に、前記埋設基部の延在方向に沿って前記胴体部の全長にわたって形成された複数の第2の凹部を備え、
前記窪み、前記第1の凹部および前記第2の凹部は、前記先端部の外周側面及び前記埋設基部の外周側面の同じ周上の位置に設けられている、ことを特徴とするスタッドピン。 - 前記先端部の外周側面における周上には、前記窪みの間に角部が形成され、
前記底部の外周側面における周上には、前記第1の凹部の間に第1の凸部が形成され、
前記第1の凸部の前記底部の外周側面に沿った形状は、前記埋設基部の延在方向と直交する幅方向における前記底部の最大寸法の半分より大きな曲率半径R 1 を持つ第1の円弧形状であり、
前記胴体部の外周側面における周上には、前記第2の凹部の間に第2の凸部が形成され、
前記第2の凸部の前記胴体部の外周側面に沿った形状は、前記埋設基部の延在方向に直交する幅方向における前記胴体部の最大寸法の半分より大きな曲率半径R 2 を持つ第2の円弧形状であり、
前記角部、前記第1の凸部および前記第2の凸部は、前記先端部の外周側面及び前記埋設基部の外周側面の同じ周上の位置に設けられている、請求項1に記載のスタッドピン。 - 前記第1の凹部の前記外周側面に沿った形状は、第3の円弧形状であり、前記第3の円弧形状の曲率半径R3は、前記第1の円弧形状の曲率半径R1よりも大きい、請求項2に記載のスタッドピン。
- 前記第1の凹部の前記外周側面に沿った長さは、前記第1の凸部の前記埋設基部の外周側面に沿った長さに比べて長い、請求項2または3に記載のスタッドピン。
- 前記第2の凹部の前記外周側面に沿った形状は、第4の円弧形状であり、前記第4の円弧形状の曲率半径R4は、前記第2の円弧形状の曲率半径R2よりも大きい、請求項2〜4のいずれか一項に記載のスタッドピン。
- 前記第2の凹部の前記外周側面に沿った長さは、前記第2の凸部の前記埋設基部の外周側面に沿った長さに比べて長い、請求項2〜5のいずれか一項に記載のスタッドピン。
- 前記埋設基部の延在方向と直交する幅方向における前記底部の最大寸法L1は、前記胴体部の前記幅方向における最大寸法L2より長く、前記底部の前記幅方向における最小寸法L4は、前記胴体部の前記幅方向における最小寸法L5より長く、
前記胴体部の前記最大寸法L2は、前記底部の前記最小寸法L4より長い、請求項1〜6のいずれか1項に記載のスタッドピン。 - 前記埋設基部の延在方向と直交する幅方向における前記胴体部の最大寸法L2に対する前記底部の前記幅方向における最大寸法L1の比L1/L2は、1.0より大きく1.5以下である、請求項1〜7のいずれか1項に記載のスタッドピン。
- 前記スタッドピンの前記埋設基部の延在方向と直交する幅方向における前記先端部の最大寸法L3に対する、前記胴体部の前記幅方向における最大寸法L2の比L2/L3は、1.5以上3.5以下である、請求項8に記載のスタッドピン。
- 前記スタッドピンの前記埋設基部の延在方向を高さ方向とし、
前記先端部と反対側の前記埋設基部の底部の底面から前記先端部の端までの高さをH1とし、前記底面から前記底部の上端までの高さをH2としたとき、前記高さH2に対する前記高さH1の比H1/H2は、6.0〜9.0である、請求項1〜9のいずれか1項に記載のスタッドピン。 - 前記窪みと前記第2の凹部との間には、前記埋設基部の先端面が設けられている、請求項1〜10のいずれか一項に記載のスタッドピン。
- 請求項1〜11のいずれか1項に記載のスタッドピンを、空気入りタイヤのトレッド部の前記スタッドピン取付用孔に装着したことを特徴とする空気入りタイヤ。
- 前記スタッドピン取付用孔の前記底部と当接する前記スタッドピン取付用孔の側面は、前記スタッドピン取付用孔の周上に沿った円筒形状の曲面であり、
前記埋設基部の延在方向と直交する幅方向における前記底部の最小寸法L4は、前記スタッドピン取付用孔の前記底部と当接する前記曲面の前記円筒形状の直径より長い、請求項12に記載の空気入りタイヤ。 - 前記スタッドピン取付用孔の前記胴体部と当接する前記スタッドピン取付用孔の側面は、前記スタッドピン取付用孔の周上に沿った円筒形状の曲面であり、
前記埋設基部の延在方向と直交する幅方向における前記胴体部の最小寸法L5は、前記スタッドピン取付用孔の前記胴体部と当接する前記曲面の前記円筒形状の直径より長い、請求項12に記載の空気入りタイヤ。
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